JP5554958B2 - 野菜の軟化抑制剤、野菜の軟化抑制方法および加熱野菜 - Google Patents

野菜の軟化抑制剤、野菜の軟化抑制方法および加熱野菜 Download PDF

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Description

本発明は、野菜の軟化抑制剤、野菜の軟化抑制方法および加熱野菜に関する。
近年、女性の社会進出や生活の多様化に伴い、食事を手早く用意したいという要望が多く見られ、食品売り場では半調理品や調理済み食品が多数上市されている。調理済み食品は、手間が省けるという点で需要が高いが、これらの食品には食感や味の面で作り立ての品質を保つことができないという問題点がある。特に、レトルト食品では、高温高圧での加熱により、特に野菜に過度の軟化や煮溶けが見られ、本来の作りたての食感を維持できない。中でも、野菜を使用した調理済み食品では、調理後の保存期間が長くなると経時的に野菜の軟化や煮溶けが見られる。このため、加工食品における野菜の軟化抑制方法が強く求められている。
従来、加熱した野菜の軟化を防止または抑制させる技術として、野菜類を加熱するにあたり、あらかじめ根菜類または果実類を0.1〜0.7%のカルシウム塩水溶液に浸漬させる方法(例えば、特許文献1参照)や、あらかじめ野菜類を糖濃度50重量%以上の糖液および/または糖アルコール液に常圧下で浸漬させる方法(例えば、特許文献2参照)、あらかじめ野菜類をカルシウム塩またはマグネシウム塩に浸漬、または当該溶液に糖類を加えた溶液に浸漬させる方法(例えば、特許文献3参照)、あらかじめ野菜類を食塩水、糖液、糖アルコール液のいずれかに浸漬し、次いでカルシウム塩水とマグネシウム塩水の両方またはいずれかに浸漬させる方法(例えば、特許文献4参照)などが開発されている。
特公平3−71102号公報 特許第3058589号公報 特開平4−190756号公報 特許第3135520号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、野菜の表面のみが極端に固くなり、全体的に食感が不均一になったり、筋っぽくなったりするという課題があった。また、金属塩類の添加により苦みや渋み、えぐみなどの異味が生じてしまうという課題もあった。金属塩類を使用しない特許文献2に記載の方法では、十分な固さが得られないことに加え、糖類を大量に添加することにより味への影響が大きいという課題があった。金属塩類と糖類とを併用する特許文献3または4記載の方法では、十分な軟化防止効果が得られないことに加え、処理に時間と手間がかかり実用が困難であるという課題があった。
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、加熱処理後の野菜の軟化を抑えるとともに、筋っぽさを軽減し、均一で自然な食感を保つことができる野菜の軟化抑制剤、野菜の軟化抑制方法および加熱野菜を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明に係る野菜の軟化抑制剤は、イヌリンと金属塩とを含み、前記金属塩はカルシウム塩から成ることを、特徴とする。
本発明者らは、イヌリンを用いた野菜の処理について検討を行い、本願発明に至った。イヌリンを用いた背景として、以下の点が挙げられる。まず、イヌリンは、自然界において様々な植物に含まれる食物繊維であり、セルロースなどと共にゴボウなどのシャキシャキとした食感を構成する主成分に挙げられている。また、セルロースは水に不溶であるのに対し、イヌリンは水溶性であり、野菜の処理に用いることが可能である。同じく水溶性食物繊維であるペクチンは、すでに野菜類の軟化防止などに効果が実証されている。イヌリンは、分子量がペクチンより比較的小さいため植物組織への浸透性が高く、ペクチン以上の軟化防止効果が期待される。イヌリンは、甘味への影響が少なく、高温高圧下でも異味・着色が発生しにくい。さらに、イヌリンの添加により、塩味、苦味、臭味、渋み、酸味を和らげることが知られており、加熱により発生した他成分由来の異味低減にも効果が期待される。
また、本発明に係る野菜の軟化抑制剤は、野菜の軟化抑制効果を有する金属塩に、イヌリンを併用しているため、金属塩を単独で使用したときに問題となる筋っぽさを軽減することができる。また、イヌリンにより、固さを補強する効果もあり、加熱処理後の野菜の軟化を抑える効果が高い。このように、イヌリンが金属塩の効果を助け、金属塩を単独で使用する場合よりも均一で自然な食感を保つことができる。また、野菜に浸漬させるだけで、容易に野菜の軟化を抑制することができる。金属塩は、毒性のないいかなる金属塩であってもよい。
イヌリンと金属塩との配合質量比は、1:0.01乃至1:10が好ましい。
なお、本明細書において、「野菜」には、サヤインゲン・ピーマン・トマトなどの果菜類、長ネギ・白菜・タマネギ・アスパラガス・タケノコ・シイタケなどの葉菜類、ダイコン・カブ・ニンジン・ゴボウ・サツマイモ・ジャガイモなどの根菜類を含む。
本発明に係る野菜の軟化抑制剤で、金属塩は、乳酸カルシウムから成ることが特に好ましい。この場合、野菜の軟化抑制効果、筋っぽさの軽減効果、自然な食感を保つ効果が特に高い。
本発明に係る野菜の軟化抑制剤は、さらに増粘剤を含むことが好ましい。増粘剤は、いかなる食用増粘剤であってもよいが、冷水可溶性であることが好ましい。増粘剤としては、例えば、α化デンプンなどのデンプン類やキサンタンガムを用いることができ、特に、顆粒状に造粒したものが好ましい。増粘剤を含む場合、野菜の軟化抑制効果や均一な食感を保つ効果が特に高い。
イヌリンと増粘剤との配合質量比は、1:0.01乃至1:10が好ましい。
本発明に係る野菜の軟化抑制剤は、pHが6.0以下の水溶液から成ることが好ましい。この場合、総合的な食感改良効果が特に高い。
本発明に係る野菜の軟化抑制方法は、本発明に係る野菜の軟化抑制剤の水溶液に野菜を浸漬することを、特徴とする。
本発明に係る野菜の軟化抑制方法によれば、浸漬処理後に加熱処理した野菜の軟化を容易に抑えるとともに、加熱処理した野菜の筋っぽさを軽減し、野菜の均一で自然な食感を保つことができる。浸漬後の加熱温度は、食品加工に用いられる温度であれば、何度でもよい。加熱方法は、湯煮、焙焼、油ちょう、電子レンジ加熱、加熱加圧殺菌、その他、方法を問わない。浸漬後の加熱は、本発明に係る野菜の軟化抑制剤の水溶液に浸漬させた状態で行っても、その水溶液から取り出してから行ってもよい。本発明に係る野菜の軟化抑制剤の水溶液をブランチングに用いてもよい。
軟化抑制剤の水溶液の濃度は、イヌリン濃度が0.01質量%乃至40質量%、金属塩濃度が0.01質量%乃至10質量%が好ましい。
本発明に係る加熱野菜は、本発明に係る野菜の軟化抑制剤の水溶液に野菜を浸漬後、加熱して製造されることを、特徴とする。
本発明に係る加熱野菜は、軟化を抑制されているとともに、筋っぽさが軽減され、均一で自然な食感が保たれる。加熱温度は、食品加工に用いられる温度であれば、何度でもよい。浸漬後の加熱は、本発明に係る野菜の軟化抑制剤の水溶液に浸漬させた状態で行っても、その水溶液から取り出してから行ってもよい。
本発明によれば、加熱処理後の野菜の軟化を容易に抑えるとともに、筋っぽさを軽減し、均一で自然な食感を保つことができる野菜の軟化抑制剤、野菜の軟化抑制方法および加熱野菜を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態の野菜の軟化抑制剤、野菜の軟化抑制方法および加熱野菜について説明する。
なお、本明細書において、特に説明しない限り、「%」は「質量%」を意味する。
本発明の実施の形態の野菜の軟化抑制剤は、イヌリンとカルシウム塩と増粘剤とpH調整剤とを含んでいる。本発明の実施の形態の野菜の軟化抑制剤の特徴や、各成文の配合量などを検討するために、以下の試験を行った。
[試験方法]
原料となる野菜を水洗し、皮があるものについては除去する。次いで、試験を行う各成分を水に溶解させ、その試験溶液を原料の野菜に添加する。その状態で6℃で4時間、試験溶液に浸漬する。浸漬後、試験溶液を液切りし、油ちょう(130℃で1.5分間)またはブランチング(95℃で1分間)して室温まで放冷する。その後、調味液を原料に対して等量添加し、レトルト殺菌(120℃で30分、または120℃で20分)を行い、その後、官能検査を行った。
官能検査では、それぞれの原料の食感を、固さ(軟化抑制効果)、筋っぽさ、均一性、色、味の5指標で、それぞれ4段階で点数を付けて、評価を行った。各指標の点数を、以下に示す。
(1)固さ 〔4点:非常に固い、 3点:比較的固い、
2点:比較的柔らかい、 1点:非常に柔らかい 〕
(2)筋っぽさ〔4点:滑らか、 3点:比較的滑らか、
2点:比較的筋っぽい、 1点:非常に筋っぽい 〕
(3)均一性 〔4点:全体的に食感が均一、 3点:比較的食感が均一、
2点:比較的食感に偏りがある、1点:非常に食感に偏りがある〕
(4)色 〔4点:白っぽく自然な色、 3点:比較的色が明るい、
2点:比較的暗い、 1点:黒っぽく不自然な色 〕
(5)味 〔4点:自然な味、 3点:わずかに異味を感じる、
2点:異味を感じる、 1点:強い異味を感じる 〕
[糖類の検討]
各種糖類について、食感の改良効果の検討を行った。原料の野菜として、ゴボウ、タマネギ、白菜、長ネギを使用した。また、糖類として、イヌリン、ブドウ糖、ショ糖、オリゴ糖、デキストリン、粉飴を用いた。用いたオリゴ糖の主成分はマルトトリオースであり、粉飴のDE値は18から22、デキストリンのDE値は6から8の範囲にある。各糖類のそれぞれについて、1%濃度の試験溶液を作成して、試験を行った。なお、対照区として、糖類を含まない試験溶液についても試験を行った。各野菜に対する試験結果を、それぞれ表1〜4に示す。
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表1に示すように、ゴボウに対しては、イヌリンを用いた場合が、最も固さと筋っぽさが改善され、組織の内側と外側との均一性も高いことが確認された。ブドウ糖やショ糖などでは、固さが出ず、外側と内側との均一性でも劣っていた。一方、デキストリンや粉飴などでは、固さが改善するものの、外側の筋っぽさが目立った。オリゴ糖は、イヌリンと類似した効果が見られたが、固さと味の両面でイヌリンより劣っていた。このように、糖類単品で使用した際には、イヌリンの高い優位性が認められた。
この原因として考えられることは、分子量による植物細胞の透過性の違いが挙げられる。イヌリンは、デキストリンや粉飴と比較して分子量が小さいため、表層をスムーズに透過するが、デキストリンや粉飴は透過が困難なため、表皮付近に蓄積して内部が脱水され、筋っぽさの原因になったと考えられる。また、ブドウ糖やショ糖では分子が小さく、細胞内で骨格を形成できないため、効果が弱かったと考えられる。さらに、オリゴ糖とイヌリンでは、固さの面でイヌリンが優れていた。今回用いたオリゴ糖はマルトトリオースが主成分であるため、イヌリンの含むフルクトース残基が何らかの影響を及ぼしたと考えられる。これらの結果から、イヌリンの持つ構造が、特に優れた食感改良効果を及ぼすといえる。
表2〜4に示すように、ゴボウ以外の野菜種(タマネギ、白菜、長ネギ)でも、ゴボウの場合とおおむね同様の結果が得られた。白菜では、イヌリンを用いた場合が最も固く、筋っぽさと均一性の面でも他の糖類よりも優位性が認められた。また、タマネギと長ネギでは、イヌリンを用いた場合、固さでは他の糖類からの優位性が認められなかったが、筋っぽさと均一性が顕著に優れ、全体的に食感が向上した。このように、他の野菜種でも、イヌリンを用いることで、他の糖類を用いた場合より本来の自然な食感を保つことができるといえる。
[糖類と金属塩類との併用効果の検討]
表1〜4に示すように、イヌリンを用いることで、筋っぽさの軽減効果や固さの向上効果(軟化抑制効果)が認められている。このことから、野菜の軟化抑制効果を有する金属塩類に、イヌリンを併用した場合、金属塩類を単独で使用したときに問題となる筋っぽさを軽減する効果が、他の糖類を用いた場合より高いと考えられる。ここでは、イヌリンまたはその他の糖類を、それぞれ金属塩類と併用したときの効果について検討を行った。
原料の野菜として、ゴボウ、タマネギ、白菜、長ネギを使用した。また、糖類として、イヌリン、ブドウ糖、ショ糖、直鎖オリゴ糖、デキストリン、粉飴を用いた。用いたオリゴ糖の主成分はマルトトリオースであり、粉飴のDE値は18から22、デキストリンのDE値は6から8の範囲にある。金属塩類として、乳酸カルシウムを用いた。各糖類それぞれについて、乳酸カルシウムを2%、各糖類を0.5%含む試験溶液を作成して、試験を行った。なお、対照区として、糖類を含まず、乳酸カルシウムのみを含む試験溶液についても試験を行った。各野菜に対する試験結果を、それぞれ表5〜8に示す。
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表5に示すように、金属塩類との併用においても、イヌリンを用いることで他の糖類よりも高い食感改良効果が得られることが確認された。特に、固さ・筋っぽさの面で他の糖類からの優位性が認められた。ブドウ糖・ショ糖では、固さ・均一性が低く、味や色への影響が大きかった。デキストリンや粉飴では、固さが出るものの、筋っぽさが強く、均一性が低かった。直鎖オリゴ糖も多少の効果を得られたが、イヌリンと比較すると固さ・筋っぽさ・味の面で劣っていた。このように、糖類と金属塩類との併用においても、イヌリンの高い優位性が明らかになった。
表6〜8に示すように、ゴボウ以外の野菜種(タマネギ、白菜、長ネギ)でも、ゴボウの場合とおおむね同様の結果が得られた。白菜と長ネギでは、イヌリンを用いた場合が最も固く、筋っぽさと均一性の面でも他の糖類よりも優位性が認められた。タマネギでは、イヌリンを用いた場合、固さで他の糖類からの優位性が認められなかったが、筋っぽさと均一性が顕著に優れ、全体的に食感が向上した。このように、他の野菜種でも、イヌリンを用いることで、金属塩類の及ぼす筋っぽさなどの悪影響を打ち消し、固さを補強することができるといえる。
[イヌリンと金属塩類との併用効果の検討]
表5〜8に示すように、金属塩である乳酸カルシウムを使用した場合、イヌリンを用いることによる筋っぽさなどの悪影響を打ち消す効果が、他の糖類の場合よりも高いことが確認された。このことから、野菜の軟化抑制効果を有する一連の金属塩類に、イヌリンを併用した場合でも、金属塩類を単独で使用したときに問題となっている筋っぽさを軽減できると考えられる。このため、イヌリンと二価および三価の金属塩類とを併用したときの効果について検討を行った。
原料の野菜として、ゴボウを使用した。また、金属塩類として、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸1カルシウムのカルシウム塩、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウムを用いた。各金属塩類のそれぞれについて、2%濃度の試験溶液と、それにイヌリンを0.5%添加した試験溶液とを作成して、試験を行った。なお、対照区として、金属塩類を含まず、イヌリンのみを含む試験溶液についても試験を行った。試験結果を、表9に示す。
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表9に示すように、全ての試験区で、金属塩類にイヌリンを併用することによって食感改良効果が向上することが確認された。イヌリンを添加することにより、特に筋っぽさが軽減され、さらに固さを補強する効果(軟化抑制効果)も見られた。このように、イヌリンが金属塩類の効果を助け、金属塩類を単独で使用する場合よりも自然な食感を保つことができるといえる。
表9に示すように、金属塩類のうち、カルシウム塩をイヌリンと併用することにより、野菜の軟化抑制効果、筋っぽさの軽減効果、自然な食感を保つ効果が高くなっている。特に、乳酸カルシウムをイヌリンと併用したときに、それらの効果が最も高くなっている。
[イヌリンと金属塩類と増粘剤との併用効果の検討]
イヌリンと金属塩類との併用により食感改良効果が向上することが認められた。ここでは、この効果をさらに向上させるために、さらに増粘剤を添加したときの効果の検討を行った。原料の野菜として、ゴボウ、タマネギ、白菜、カボチャを使用した。また、増粘剤として、冷水可溶性のα化デンプン、キサンタンガム、デンプンを用いた。金属塩類として、乳酸カルシウムを用いた。各増粘剤それぞれについて配合量を変えて、乳酸カルシウムを2%、イヌリンを0.5%含む試験溶液を作成し、試験を行った。なお、対照区として、増粘剤を含まず、乳酸カルシウムおよびイヌリンのみを含む試験溶液についても試験を行った。各野菜に対する試験結果を、それぞれ表10〜13に示す。
Figure 0005554958
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表10に示すように、増粘剤を添加することにより、固さ・均一性の向上が認められた。特に、α化デンプンの配合量が多い場合およびキサンタンガムを配合した場合に、最も固さが向上し、α化デンプンを配合した場合に、最も均一性が向上していることが確認された。また、試験溶液の粘度が上昇するに従って、固さや均一性が上昇し、より自然な食感に近づくことが確認された。これは、試験溶液の野菜表面への反応が穏やかに進むことに加え、野菜表面に皮膜が形成され、加熱時の水分移行が抑制されていることが原因として考えられる。また、α化していない状態のデンプンを添加しても効果が認められないことから、試験溶液の粘度がこの現象の要因であることが確認された。
また、表11〜13に示すように、ゴボウ以外の野菜種(タマネギ、白菜、カボチャ)でも、ゴボウの場合とおおむね同様の結果が得られた。タマネギ、白菜、カボチャのいずれにおいても、増粘剤の添加量が増えるほど、特に固さ・均一性の面で効果が向上した。α化デンプンとキサンタンガムの効果を比較すると、いずれも添加量が増えるほど効果が上がるが、粘度だけではなく増粘剤の種類によっても効果に違いが認められた。このため、野菜の種類によって、配合する増粘剤の種類を検討する必要があるといえる。
[pHの違いによる効果の検討]
野菜では、pHの違いが重要な要因となるため、ここでは、pH調整剤として有機酸(クエン酸)を用いて、試験溶液のpHを3〜6の範囲に調製し、その効果の検討を行った。原料の野菜として、ゴボウ、タマネギ、白菜、カボチャを使用した。また、金属塩類として乳酸カルシウム(乳酸Ca)を2%、イヌリンを0.5%、増粘剤としてα化デンプンを0.5%含み、pHを調整した試験溶液を作成し、試験を行った。なお、対照区として、pHの調整を行っていない、pH6.7の試験溶液についても試験を行った。各野菜に対する試験結果を、それぞれ表14〜17に示す。
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表14に示すように、試験溶液のpHを5.6以下に下げると、固さ・筋っぽさ・均一性に対する効果が顕著に向上する。この原因としては、pHを下げるほど、金属塩類の浸透性が高められることや、増粘剤などの成分が徐々に加水分解されて低分子化し、浸透性が増すことが考えられる。また、野菜の食感に深く関わるとされるペクチンは、中性〜アルカリ性域ではβ脱離によって分解してしまうが、ペクチン溶液は、カルシウムの存在下では、pH5.5付近まではpHを上げるほど粘度が上昇する。ペクチンが分解せず、かつ粘度を発揮するpHの範囲が、表14に示す試験溶液の効果が高い、pH5.6以下の範囲とほぼ一致していることが確認された。
また、表15〜17に示すように、ゴボウ以外の野菜種(タマネギ、白菜、カボチャ)でも、ゴボウの場合とおおむね同様の結果が得られた。タマネギ、白菜、カボチャのいずれにおいても、pHを下げたとき、pH6.0〜5.6付近で固さ・筋っぽさ・均一性が上昇する変換点が認められた。これらは、ゴボウの場合と同様に、ペクチンのβ脱離が阻害されるpH帯と一致しており、ペクチンを含むその他の野菜種においても同様の結果が得られると考えられる。
表14に示すように、ゴボウの場合、pHを5.6以下に下げると、固さ・筋っぽさ・均一性に対する効果が顕著に向上するが、pH5.0以下で、異味が強くなる。このため、pH5.1〜5.7の範囲で、総合的に食感改良効果が高いといえる。同様に、表15〜17に示すように、タマネギの場合、pH5.1〜5.9の範囲、白菜の場合、pH4.5〜5.7の範囲、カボチャの場合、pH5.1〜5.9の範囲で、総合的に食感改良効果が高いといえる。
以上の検討結果から、本発明の実施の形態の野菜の軟化抑制剤の最適な成分の組み合わせとして、糖類のイヌリンと、金属塩類の乳酸カルシウムと、増粘剤のα化デンプンとを含み、pHを5.6に調整したものを、野菜を含む実際の加工食品に使用した。
試料として、ニンジン・ジャガイモ・タマネギを用いてレトルトカレーを作成した。試験工程は、まず、各種野菜を水洗し、皮を除去し、一口大にカットした。次いで、イヌリン0.5%、乳酸Ca2.0%、α化デンプン0.5%を溶解し、フマル酸を用いてpH5.6に調整した水溶液から成る軟化抑制剤を、原料に対して等量添加し、その状態で、6℃で4時間以上浸漬した。浸漬液を液切りし、カレールーを野菜類と等量加えてレトルト殺菌(120℃で30分)を行い、その後、官能検査を行った。その試験結果を、表18に示す。
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表18に示すように、軟化抑制剤を使用すると、ニンジン・ジャガイモ・タマネギの全ての野菜で、食感が向上することが確認された。特に、ニンジンでは、固さ、筋っぽさ、均一性の面で高い効果が得られた。また、ジャガイモ・タマネギでは、固さ、均一性の面で高い効果が得られた。このように、レトルトカレーにおいて、軟化抑制剤により、野菜の軟化防止効果や食感改良効果が得られることが確認された。
次に、試料としてカボチャを用いて煮物を作成した。試験工程は、まず、カボチャを水洗し、一口大にカットした。次いで、イヌリン0.1%、乳酸Ca0.4%、α化デンプン0.1%を溶解し、フマル酸を用いてpH5.6に調整した水溶液から成る軟化抑制剤を、95℃まで加熱し、原料に対して等量添加し、その状態で95℃で5分間加熱し、液切りした。それらに調味液を等量加え、85℃で30分のボイル殺菌を行い、水冷した後冷凍した。冷凍品を85℃で10分のボイル加熱で解凍した後、官能検査を行った。その試験結果を、表19に示す。
Figure 0005554958
表19に示すように、軟化抑制剤を使用すると、カボチャの食感が向上することが確認された。特に、固さ、均一性の面で高い効果が得られた。このように、カボチャの煮物において、軟化抑制剤により、野菜の軟化防止効果や食感改良効果が得られることが確認された。
実際の加工食品であるレトルトカレーおよびカボチャの煮物の実施例から、本発明の実施の形態の野菜の軟化抑制剤は、現在販売されている加工食品の野菜の大部分に応用することができ、野菜の軟化防止効果や食感改良効果が得られるといえる。

Claims (6)

  1. イヌリンと金属塩とを含み、前記金属塩はカルシウム塩から成ることを、特徴とする野菜の軟化抑制剤。
  2. さらに増粘剤を含むことを、特徴とする請求項1記載の野菜の軟化抑制剤。
  3. 前記増粘剤は冷水可溶性であることを、特徴とする請求項2記載の野菜の軟化抑制剤。
  4. pHが6.0以下の水溶液から成ることを、特徴とする請求項1、2または3記載の野菜の軟化抑制剤。
  5. 請求項1、2、3または4記載の野菜の軟化抑制剤の水溶液に野菜を浸漬することを、特徴とする野菜の軟化抑制方法。
  6. 請求項1、2、3または4記載の野菜の軟化抑制剤の水溶液に野菜を浸漬後、加熱して製造されることを、特徴とする加熱野菜。
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