JP5544800B2 - 表面保護フィルム - Google Patents
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Description
本発明では、粘着剤のベースポリマーとして、アクリル系樹脂を用いる。本発明に好適なアクリル系共重合体は、アルキレンオキサイド基を有するアクリルモノマー(以下、AO基含有モノマーと呼ぶ)及び水酸基を含有するアクリルモノマー(以下、OH基含有モノマーと呼ぶ)を含むモノマーを、適宜に選択し共重合することで得ることができる。例えば、反応に使用する全モノマー中におけるAO基含有モノマーの含有率が1〜50%程度、より好ましくは5〜20%、OH基含有モノマーの含有率が0.1〜10%程度、より好ましくは0.5〜5%となるような質量比率で共重合させるとよい。
本発明を特徴づける上記のベースポリマーに添加させる、その構造中にフッ素或いはケイ素を含む化合物としては、下記のものが挙げられる。例えば、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサンや、含フッ素アルキル基含有の、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の、各フッ素系界面活性剤等を用いることができる。市販されているものとしては、側鎖にポリエーテル鎖を有するポリエーテル変性ポリオルガノシロキサンである、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017、X−22−3939A、X−22−4741、KF−1002(商品名:以上、信越化学工業社製)や、両末端にポリエーテル鎖を有するポリエーテル変性ポリオルガノシロキサンである、X−22−4952、X−22−4272、X−22−6266(商品名:以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
上記式(1)中のR2、R4、R5は、アルキレン基であり、nは1〜100の整数、aおよびbはそれぞれ0〜100の整数である。
本発明で使用する帯電防止剤としては、従来、剥離帯電を低減させる目的で使用されている、金属塩、イオン性液体のような有機塩等をいずれも使用できる。本発明では、特に、剥離帯電により生じた電荷の偏りを速やかに中和するために帯電防止剤を使用しているので、高い電気伝導度のものが好ましい。具体的には、本発明で使用する帯電防止剤としては、電気伝導度の値が0.1mS/cm以上のものが好適である。下記に挙げる有機塩は、いずれも電気伝導度の値が0.1mS/cm以上のものであり、いずれも本発明に好適である。
本発明の表面保護フィルムを特徴づける粘着剤層は、上記以外に、さらに硬化剤(架橋剤)を配合して、その一部を架橋させるようにして形成してもよい。このようにすれば、粘着剤層の粘着性及び剥離性が改善され、表面保護フィルムを剥離した際に生じる被着体汚染の問題をより大幅に改善できる。この際に使用する硬化剤としては、イソシアネート系、エポキシ系、アジリジン系、メラミン系、金属系等をいずれも用いることができる。具体的には、デュラネートTPA−100(商品名:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、旭化成ケミカルズ製)や、デュラネートT4330−75B(商品名:ヘキサメチレンジイソシアネート/イソホロンジイソシアネート=70/30、旭化成ケミカルズ製)等を使用することができる。これらの硬化剤の添加量としては、粘着剤組成物中に、質量基準で、0.1〜5%程度、より好ましくは0.5〜3%の範囲で含有させるとよい。なお、この場合に、アセチルアセトン等の硬化遅延剤を併用して配合させることで、硬化(架橋)状態を適宜に調整してもよい。
本発明の表面保護フィルムは、上記のような成分からなる粘着剤組成物を使用して、下記のような方法で作成することができる。先ず、基材となるポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン及び塩化ビニル等のプラスチックフィルムを用意する。基材の厚みは、通常、40μm程度である。このようなフィルムに、直接、粘着剤組成物を、粘着剤層厚が25μm程度となるようにバーコーター等を用いて塗工する。これを90℃程度の温度で60秒程乾燥させて粘着剤層を形成後、得られた粘着剤層の上に、シリコーンコート等で一方の面が撥水処理されたポリエステル等のプラスチックフィルムからなるセパレーターを被覆することで、本発明の表面保護フィルムが得られる。本発明の表面保護フィルムは、特に硬化剤等を添加した場合は、この状態で、数日間、養生後、製品に適用するようにすれば、より安定した効果が得られるものとなる。
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応装置を用い、窒素ガスを封入後、反応容器に、酢酸エチル75部、アセトン15部、2−エチルヘキシルアクリレート80部、#400メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2部および重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.2部を仕込んだ。次に、攪拌機で攪拌しながら溶剤の還流温度で7時間反応させた。反応終了後、含ケイ素化合物であるグラノール100(商品名:AO末端水酸基型のポリエーテル変性ポリオルガノシロキサン、共栄社化学製)を0.1部、帯電防止剤としてリチウム=ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドを0.3部、及びトルエン95部を添加して混合し、該混合物を室温まで冷却し、30℃における粘度が3,000mPa・s、固形分30%の共重合体組成物溶液Aを得た。
実施例1で使用したモノマー、含ケイ素化合物及び帯電防止剤の、種類と組成比を表1に示したように変えた以外は、実施例1と同様の方法で、それぞれ粘着剤組成物を得た。そして、得られた粘着剤組成物をそれぞれに用いて、実施例1と同様の方法で実施例2〜5の表面保護フィルムを得た。
実施例1で使用したモノマーの種類と組成比を表2に示したように変え、表2に示したように、含ケイ素化合物又は帯電防止剤のいずれかが含有されてなる粘着剤組成物をそれぞれ得た。そして、得られた粘着剤組成物をそれぞれに用いて、実施例1と同様の方法で比較例1〜4の表面保護フィルムを得た。比較例1及び2は、帯電防止剤のみを添加した構成であり、比較例3及び4は、含ケイ素化合物のみを添加した構成である。また、含ケイ素化合物及び帯電防止剤のいずれも含有しない粘着剤組成物を得、これを用いて、実施例1と同様の方法で比較例5の表面保護フィルムを得た。
フッ素系ハードコート剤でハードコートされたHC偏光板を被着体として、これらの表面に、上記で得た実施例及び比較例の表面保護フィルムをそれぞれに貼った後、下記のようにして剥離力及び剥離帯電圧をそれぞれ測定した。また、表面がフッ素系ハードコート剤でコートされていないAG偏光板についても同様にした。なお、このようなAG処理だけを施した偏光板は、機能性層を有するものの、帯電防止剤だけの添加でもある程度は剥離帯電を下げることができる。すなわち、本発明は、従来の表面保護フィルムでは不十分であった、含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いての処理によって形成された機能性層を被着体とする表面保護フィルムとして、特に有用である。
(1)低速剥離力
上記したAG偏光板及びHC偏光板のそれぞれの機能性層側の表面及びPTFE板に、先に得た各表面保護フィルムをそれぞれ2kgfローラー1往復で圧着して貼り付け、貼付してから24時間経過後に、テンシロン引張試験機RTG−1210(商品名:エーアンドディー製)を用い、低速剥離力を測定した。測定条件は、下記の通りである。また、測定結果は表1及び表2に示した。
・引張速度:0.3m/min
・剥離方向:180°
・試料サイズ:25mm×100mm
上記したAG偏光板及びHC偏光板のそれぞれの機能性層側の表面及びPTFE板に、先に得た各表面保護フィルムをそれぞれ2kgfローラー1往復で圧着して貼り付け、貼付してから24時間経過後に、高速剥離試験機(テスター産業製)を用い、高速剥離力を測定した。測定条件は、下記の通りである。また、測定結果は表1及び表2に示した。
・引張速度:30m/min
・剥離方向:180°
・試料サイズ:25mm×200mm
上記したAG偏光板及びHC偏光板のそれぞれの機能性層側の表面及びPTFE板に、先に得た各表面保護フィルムをそれぞれ2kgfローラー1往復で圧着して貼り付け、貼付してから24時間経過後に、高速剥離試験機(テスター産業製)を用い、フィルムを剥離する。そして、その際に発生する静電気量を、高精度静電器センサーSK−200、SK−030(商品名:キーエンス社製)で測定した。図1は、測定状態を示す模式図である。Aは、保護フィルムの貼付面となる側であり、基材フィルムBの表面に形成されてなる粘着剤層である。Cは、被着体の表面に設けられた機能性層を有するフィルムを示し、Eはガラス板であり、DはCとEとを固定するために用いられる粘着剤であり、Fはアルミ板である。Gは静電気センサーを示す。剥離する条件は、下記の通りである。
・引張速度:30m/min
・剥離方向:180°
・試料サイズ:A4(210mm×297mm)
上記したAG偏光板及びHC偏光板の機能性層側の表面に、先に得た各表面保護フィルムをそれぞれ2kgfローラー1往復で圧着して貼り付けた。そして、これらの試料を70℃の環境下で3日間放置する。その後、試料を取り出し、23℃、50%RH中で24時間放置した後、試料を被着体から剥がし、汚染の度合いを目視にて観察し、下記の基準で評価した。測定結果は表1及び表2に示した。
○:汚染は認められない
△:僅かに汚染が認められる
×:汚染が認められる
それぞれの表面保護フィルムの粘着面の表面抵抗値を、高抵抗率計MCP−HT450(商品名:三菱化学社製)を用いて測定した。測定結果は、表1及び表2に示した。
表1及び表2を比較した結果、下記の点がわかった。粘着剤自体の剥離力は、比較例5のデータでわかる。そして、粘着剤に帯電防止剤のみを添加した場合の剥離力は、比較例1又は2のデータと、比較例5のデータの比較から、この程度の添加量であれば若干の低下で留まることがわかる。ノニオン性のフッ素系界面活性剤を微少量添加した比較例3を比較例5の場合と比較すると、比較例3は添加量が少ないため、被着体汚染は生じず剥離力の低下も僅かではあるが、剥離帯電圧の抑制効果は認められない。一方、その添加量を非常に多くした比較例4では、対テフロン(登録商標)板やHC偏光板に対する剥離帯電圧が低いものの、剥離力がかなり低下する上に被着体汚染を生じている。これらのことから添加剤の添加量は0.005部より多く、5.0部より少ない場合に最適なことがわかる。
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応装置を用い、窒素ガスを封入後、反応容器に、酢酸エチル75部、アセトン15部、2−エチルヘキシルアクリレート73部、ブチルアクリレート20部、#400メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート7部、4−ヒドロキシエチルアクリレート3部および重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.2部を仕込んだ。次に、撹拌機で撹拌しながら溶剤の還流温度で7時間反応させた。反応終了後、帯電防止剤としてリチウム=ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドを1.0部、及びトルエン95部を添加して混合し、該混合物を室温まで冷却し、30℃における粘度が3,000mPa・s、固形分35%の共重合体組成物溶液A−1を得た。
(1)共重合体組成物溶液A−2の合成
モノマー組成を、2−エチルヘキシルアクリレートを90部、ブチルアクリレート10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2部とし、帯電防止剤として、1−オクチルピリジニウム=ビス(フルオロスルフォニル)イミドを1.0部を添加した以外は、実施例6で製造した共重合体組成物溶液A−1と同様の方法で、共重合体組成物溶液A−2を得た。
実施例6で製造した共重合体組成物溶液B−1のモノマー組成を、表4に示したように変えた以外は、それぞれ同様の方法で、共重合体組成物溶液B−2〜B−7を合成した。
上記で得た共重合体組成物溶液A−1又はA−2、添加剤用のポリマーである共重合体組成物溶液B−2〜B−7、及び硬化剤をそれぞれ表5に示した種類と量で使用した以外は、実施例6で行ったと同様の方法で、各粘着剤組成物を得た。そして、得られた粘着剤組成物を用い、実施例6で行ったと同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。さらに、得られた表面保護フィルムを、23℃、50%RH中で7日間養生し、各評価試験の試料とし、実施例6と同様に評価を行い、評価結果を表5及び6に示した。
表5及び表6を比較した結果、下記の点がわかる。粘着剤に帯電防止剤と含フッ素或いは含ケイ素を有するアクリル系ポリマーを添加した実施例では、これを含まない比較例と比べて剥離帯電圧が格段に低くなることを確認した。さらに、粘着剤層の表面抵抗値も、添加しないものと比較して低減しており、静電気の発生自体が低減していることを確認した。また、剥離試験時における被着体汚染を観察したところ、実施例の場合は、いずれも汚染は認められなかった。
Claims (5)
- 含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いての処理によって形成された機能性層を被着体とし、該被着体に貼付される表面保護フィルム(但し、偏光フィルムの表面に積層された偏光板を構成する保護フィルムを除く)であって、
基材フィルム表面に形成した再剥離性の粘着剤層を有し、
該粘着剤層は、該粘着剤層を構成するアクリル系粘着剤に、少なくとも、帯電防止剤と、その構造中にフッ素或いはケイ素を含有する化合物とが外添されてなり、
上記アクリル系粘着剤が、側鎖炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸エステルをベースとし、反応に使用する全モノマー中における質量比率で、アルキレンオキサイド基を持つ(メタ)アクリル酸エステルを5〜20%、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルのモノマーを0.1〜10%使用して共重合させたアクリル系共重合体をベースポリマーとするものであり、且つ、
上記アクリル系粘着剤100質量部に対して、その構造中にフッ素或いはケイ素を含有する化合物が、0.005質量部よりも多く5質量部よりも少ない範囲で外添されていることを特徴とする表面保護フィルム。 - 前記その構造中にフッ素或いはケイ素を含有する化合物が、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサン、含フッ素アルキル基含有のフッ素系界面活性剤、その構造中にフッ素或いはケイ素を含有するアクリル系ポリマー、のいずれかから選択される請求項1に記載の表面保護フィルム。
- 前記その構造中にフッ素或いはケイ素を含有する化合物が、アクリル系粘着剤100質量部に対して、0.05〜3質量部の範囲で、且つ、前記帯電防止剤が、アクリル系粘着剤100質量部に対して、0.1〜3質量部の範囲で外添されている請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
- 前記質量比率が、前記側鎖炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸エステルを75〜90質量部、アルキレンオキサイド基を持つ(メタ)アクリル酸エステルを5〜20質量部、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルのモノマーを2〜5質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。
- 前記被着体が、偏光板の表面に形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。
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