JP5540637B2 - 耐熱性に優れるフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents
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2×Si+Mn<1mass%
ただし、各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)を示す。
を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする熱疲労特性および繰り返し酸化特性に優れるフェライト系ステンレス鋼である。
C:0.02mass%以下
Cは、鋼の成形性や耐食性を低下させる元素であるので、0.02mass%以下に制限する。好ましくは、0.01mass%以下である。
Siは、鋼の酸化特性を向上する元素であり、本発明における重要元素の1つである。しかし、過剰なSiの添加は、Laves相の析出を促進し、熱疲労特性を低下させるため、0.3mass%以下に制限する。好ましくは0.2mass%以下である。
Mnは、スケール密着性を向上させ、繰り返し耐酸化性を向上する元素である。しかし、発明者らの研究によれば、Mnは、熱疲労特性に対して悪影響を及ぼす元素であることを新規に知見した。その原因はまだ明確にはなっていないが、Mnの添加によって、熱膨張挙動が変化するためと考えられる。そのため、Mnは1mass%以下とする。好ましくは0.1〜0.6mass%の範囲である。
Pは、鋼の耐食性、靭性を低下させる有害な元素であり、0.05mass%以下に制限する。好ましくは0.03mass%以下である。
Sは、鋼の発銹や孔食の起点となり耐食性を低下させる有害な元素であり、0.01mass%以下に制限する。好ましくは0.002mass%以下である。
Alは、一般には、製鋼段階において脱酸剤として添加される元素であり、Al脱酸を行う場合は不可避的に添加される元素である。また、耐酸化性を向上する効果があるので、必要に応じて積極的に添加してもよい。しかし、Alの過剰な添加は、靭性を低下させるため、上限は0.5mass%とする。好ましくは、0.3mass%以下である。
Nは、鋼の成形性や耐食性を低下させる有害な元素であるため、0.02mass%以下に制限する。好ましくは、0.01mass%以下である。
Crは、フェライト系ステンレス鋼の耐食性を確保するために必要な基本成分である。また、Crは、本発明で実施した熱疲労試験の全ての温度範囲において、強度を高め、熱疲労特性を向上する効果や、耐酸化性を向上させる効果を有する。しかし、Crが20mass%未満では、十分な熱疲労特性向上効果が得られず、一方、40mass%を超えると、加工性を損なう。よって、Crは20〜40mass%の範囲とする。好ましくは、21〜35mass%の範囲である。
Niは、鋼の靭性を向上する効果を有する元素である。しかし、Niは高価であるので、1mass%以下とする。
Nbは、鋼の高温強度を高めるとともに、熱疲労寿命を向上させる元素であり、本発明における重要元素の1つである。しかし、Nbの添加量が0.2mass%未満では、十分な高温強度が得られず、一方、1mass%を超える過剰な添加は、多量のLaves相が析出し、熱疲労特性の低下を招く。よって、Nbは0.2〜1mass%の範囲とする。好ましくは、0.3〜0.6mass%の範囲である。
Moは、鋼の高温強度を高めるとともに、熱疲労寿命を向上させる重要な元素である。Mo含有量が0.1mass%より少ないと、十分な高温強度が得られず、一方、3mass%を超える過剰な添加は、多量のLaves相やσ相を析出し、熱疲労特性の低下を招く。よって、Moは0.1〜3mass%の範囲とする。好ましくは、1〜2mass%の範囲である。
Cuは、繰り返して受ける熱サイクル中に微細なε−Cuの析出と固溶を繰り返すことで、長期間、低温域の強度を高く保持し、熱疲労特性を向上させる効果を有する元素であり、本発明における不可欠な元素の1つである。上記効果は、Cuを1mass%超添加することで発現するが、3mass%を超える過剰な添加は、鋼の靭性を低下させる。よって、Cuは1〜3mass%の範囲で添加する。好ましくは1.2〜2mass%の範囲である。
Bは、粒界近傍におけるLaves相の析出を抑制し、高温強度を高めるとともに、熱疲労特性を向上する効果を有する、本発明における重要元素の1つである。上記効果を得るには0.0003mass%以上の添加が必要である。しかし、0.01mass%を超える過剰な添加は、鋼の融点を下げ、溶接時の高温割れを引き起こす。よって、Bは0.0003〜0.01mass%の範囲とする。好ましくは、0.0005〜0.003mass%の範囲である。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、熱疲労特性と繰り返し酸化特性との両立を図るためには、SiとMnが上記組成範囲を満たすことに加えてさらに、下記式;
(2×Si+Mn)<1mass%
ただし、各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)を示す。
を満たして含有していることが必要である。
十分な熱疲労特性を得るには、SiやMnは低いほど好ましく、一方、酸化特性の向上には、SiやMnは高い方が好ましいという、相反する要求がある。しかし、本発明のフェライト系ステンレス鋼においては、低Si化、低Mn化による酸化特性の低下を、Crの添加によって補うことができるので、SiおよびMnを、上記関係式を満たす範囲に限定しても、優れた熱疲労特性と繰り返し酸化特性の両立を図ることが可能となった。なお、好ましくは、(2×Si+Mn)は0.7mass%以下である。
V:0.5mass%以下
Vは、鋼の成形性を高めるのに有効な元素である。しかし、0.5mass%を超える過剰な添加は、粗大なV(C,N)が析出して、表面性状を劣化させる。よって、Vを添加する場合は、0.5mass%以下とするのが好ましい。
Wは、鋼中に固溶することによって、高温強度および耐酸化性を高める効果がある元素である。これらの効果は、1mass%以上の添加で認められる。しかし、5mass%を超える過剰な添加は、原料コストの増大を招く。よって、Wを添加する場合には、1〜5mass%の範囲で添加するのが好ましくい。より好ましくは、2〜3.5mass%の範囲である。
Tiは、鋼の成形性を向上させる元素であり、また、C,Nとの親和力がNbより強いため、それらと優先的に結合して有効Nbの固溶量を増加させる効果がある。このような効果は、0.02mass%以上で認められるが、0.5mass%を超えて添加すると、粗大なTi(C,N)が析出して表面性状を劣化させる。よって、Tiは0.02〜0.5mass%の範囲で添加するのが好ましい。より好ましくは、0.02〜0.4mass%の範囲である。
Zrは、Tiと同様、成形性を向上させる元素であり、C,Nとの親和力がNbより強く、それらと優先的に結合するため、有効Nbの固溶量を増加させる効果がある。このような効果は、0.02mass%以上の添加で認められるが、0.5mass%を超える添加は、Zr金属間化合物が析出して鋼を脆化させる。よって、Zrは0.02〜0.5mass%の範囲で添加するのが好ましい。より好ましくは、0.02〜0.4mass%の範囲である。
Coは、鋼の高温強度を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。この効果は、0.05mass%以上の添加で認められる。しかし、過剰な添加はコストの上昇を招くため、上限を3mass%とするのが好ましい。より好ましくは、0.1〜1mass%の範囲である。
Taは、鋼の高温強度を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。しかし、2mass%を超える多量の添加は、Laves相の析出によって熱疲労特性を低下させるので、添加する場合は、2mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは1.5mass%以下である。
本発明の鋼の製造条件は、特に限定されるものではなく、Cr含有鋼の一般的な製造方法であれば好適に用いることができる。例えば、上記の適正な成分組成に調整した溶鋼を、転炉や電気炉等の溶製炉さらには取鋼精錬、真空精錬等の2次精錬を経て溶製した後、連続鋳造方法または造塊・分塊法でスラブとし、その後、そのスラブを、熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上焼鈍、酸洗の各工程を順次経て、冷延焼鈍板とする製造方法を採用することができる。なお、上記工程における冷間圧延は、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延としてもよく、また、冷間圧延、仕上焼鈍、酸洗の各工程は繰り返して行ってもよい。さらに、熱延板焼鈍工程は省略してもよい。
上記シートバーの一部を、鍛造して厚さ30mm×幅30mmの角棒とし、その角棒に、1000〜1150℃×1〜5分間保持後、20℃/s以上で冷却する仕上熱処理を施した後、その角棒から、図1に示した形状の熱疲労試験片(最細部直径8mmφ)を採取し、熱疲労試験に供した。なお、上記熱疲労試験は、図2に示したように、最低温度200℃で90s保持後、6℃/sで最高温度880℃まで昇温し、この温度に120s保持後、再び最低温度200℃まで6℃/sで降温するヒートサイクルを1サイクルとする熱処理を繰り返し付与する条件で行った。なお、上記熱疲労試験における見かけ歪は、電気機械システムによって、自由熱膨張収縮歪の60%(拘束率0.40)となるよう制御した。また、熱疲労寿命は、荷重−歪ヒステリシスループが安定する5サイクル目における最大荷重に対して、90%まで最大荷重が低下した時点のサイクル数とし、このサイクル数が1200を超えるものを熱疲労特性に優れる(○)と評価した。
熱間圧延して得た厚さ30mmの上記シートバーを、1000〜1200℃に加熱し、さらに熱間圧延して厚さ5mmの熱延板とし、この熱延板に1000〜1200℃の温度で熱延焼鈍板を施した後、酸洗し、圧下率60%で冷間圧延し、1000〜1200℃の温度で仕上焼鈍し、酸洗して、板厚2mmの冷延焼鈍板とした。
この冷延焼鈍板から厚さ2mm×幅20mm×長さ30mmの試験片を各2枚ずつ採取し、その試験片を、大気中で1000℃×8min加熱後、冷却して、200℃×1min保持するヒートサイクルを繰り返す酸化試験を1000サイクル実施した。なお、繰り返し酸化特性の評価は、試験後、試験片表面を目視観察してスケール剥離の無いものを良好(○)であると判定した。
Claims (2)
- C:0.02mass%以下、
Si:0.3mass%以下、
Mn:1mass%以下、
P:0.05mass%以下、
S:0.01mass%以下、
Al:0.5mass%以下、
N:0.02mass%以下、
Cr:20〜40mass%、
Ni:1mass%以下、
Nb:0.3〜1mass%、
Mo:0.1〜3mass%、
Cu:1〜3mass%、
B:0.0003〜0.01mass%を含有し、
SiとMnが、下記式を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする熱疲労特性および繰り返し酸化特性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
記
2×Si+Mn<1mass%
ただし、各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)を示す。 - 上記成分組成に加えてさらに、
V:0.5mass%以下、
W:1〜5mass%、
Ti:0.02〜0.5mass%、
Zr:0.02〜0.5mass%、
Co:0.05〜3mass%および
Ta:2mass%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
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