JP5343444B2 - 熱疲労特性、耐酸化性および加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

熱疲労特性、耐酸化性および加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼 Download PDF

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本発明は、自動車やオートバイの排気管や触媒外筒材、火力発電プラントの排気ダクト等の高温環境下で使用される部材に用いて好適なCr含有鋼に関し、特に、優れた熱疲労特性、耐酸化性および加工性のいずれをも兼ね備えたフェライト系ステンレス鋼に関するものである。
自動車のエキゾーストマニホールドや排気パイプ、コンバーターケース、マフラー等に代表される排気系環境下で使用される部材には、熱疲労特性や耐酸化性(以降、上記両特性を総称して「耐熱性」ともいう。)に優れていることが要求される。そのため、このような用途には、NbとSiを添加したType429(14Cr−0.9Si−0.4Nb系)鋼のようなCr含有鋼が多く使用されている。しかし、エンジン性能の向上に伴って、排ガス温度が上昇し、現状より高温の900℃程度まで上昇してくると、Type429鋼では、熱疲労特性が不足してくるおそれがある。
この問題に対しては、NbとMoを複合添加して高温耐力を向上させたCr含有鋼、例えば、JIS G4305に規定されるSUS444(19Cr−2Mo−0.5Nb)鋼や、Nb,Mo,Wを複合添加したフェライト系ステンレス鋼などが開発されている。しかし、希少金属であるMo,Wの昨今における異常なまでの価格高騰から、これらの元素を用いないでも同等の耐熱性を有する材料の開発が求められるようになってきている。
高価な元素であるMoやWを用いないで、耐熱性に優れた材料を得る技術としては、例えば、特許文献1〜3に開示されたものがある。これらの技術は、熱疲労特性を主にCu添加により向上させているのが特徴である。しかし、発明者らの研究によれば、Cuは、鋼自身の耐酸化性を低下させるだけでなく、加工性をも低下させる元素であることが明らかになってきた。そこで、MoやW以外に、Cuの添加をも極力控えた成分設計を行う必要性に迫られている。
MoやW,Cuを用いずに耐熱性を高めた材料としては、特許文献4や特許文献5に開示された鋼がある。これらの鋼は、VN粒子の分散強化を利用して耐熱性の向上を図っているところに特徴がある。また、特許文献6には、V添加によって加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法が、特許文献7には、V添加によって高温疲労特性に優れたフェライト系ステンレス熱延鋼板が開示されている。
WO2003/004714号公報 特開2006−117985号公報 特開2000−297355号公報 特開2001−316774号公報 特開平07−070709号公報 特開平06−158162号公報 特開2000−144344号公報
しかしながら、発明者らの研究によれば、上記特許文献4〜7に開示された鋼は、開示された技術内容に沿って製造しても、本発明が目的とする熱疲労特性や耐酸化性は得られないことがわかり、さらなる検討が必要であることが明らかになった。また、上記従来技術の鋼は、優れた加工性を有さないことも明らかとなった。
そこで、本発明の目的は、VN粒子の分散強化を利用した従来鋼をさらに改良し、Mo,WおよびCuを添加することなく優れた熱疲労特性、耐酸化性および加工性の全てを兼備したフェライト系ステンレス鋼を提供することにある。ここで、本発明でいう「優れた熱疲労特性と耐酸化性」とは、SUS444と同等の特性を有すること、具体的には、200℃/850℃の熱疲労特性と1000℃における耐酸化性がSUS444と同等であることを、また、「優れた加工性」とは、室温における全伸びが36%以上の高い伸びを有することを意味する。
発明者らは、従来のVN粒子の分散強化を利用した鋼では十分な耐熱性と加工性が得られない原因について、詳細な研究を重ねた。その結果、Nbを10×(C(mass%)+N(mass%))〜0.60mass%の範囲で含有する鋼において、Mo,WおよびCuを添加せずに高温強度を高めてSUS444と同等の熱疲労特性を実現し、併せて優れた加工性を確保するためには、Nb,VおよびNの含有量を適正範囲に制御する必要があること、具体的には、Nの含有量を0.015〜0.030mass%、Vの含有量を0.15〜0.35mass%の範囲に制御し、なおかつVとNの含有量(mass%)の積(V×N)を0.003〜0.008の範囲となるよう制御し、VNの粒子分散強化能を有効に活用する必要があること、さらに、熱疲労特性をより向上させるためには、上記Nb,V以外の窒化物形成元素であるTiやZr,Taの含有量をも規制する必要があることを見出した。また、1000℃における耐酸化性を向上し、SUS444と同等とするためには、Mnの含有量を規制する、具体的には、Mnを0.35mass%以下とする必要があることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、C:0.010mass%以下、Si:0.3mass%以下、Mn:0.35mass%以下、P:0.040mass%以下、S:0.010mass%以下、Al:0.10mass%以下、Cr:16〜18.5mass%、Ni:0.5mass%以下、N:0.015〜0.030mass%、V:0.15〜0.35mass%、Nb:10(C(mass%)+N(mass%))〜0.60mass%、Ti:0.01mass%以下、Zr:0.01mass%以下、Ta:0.01mass%以下、Mo:0.1mass%以下、W:0.1mass%以下含有し、かつ、VおよびNの含有量(mass%)の積(V×N)が、(V×N):0.003〜0.008を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする熱疲労特性、耐酸化性および加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼である。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、上記成分組成に加えてさらに、B:0.0004〜0.0020mass%を含有し、かつ、Alの含有量が0.03〜0.10mass%であることを特徴とする。
また、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、上記成分組成に加えてさらに、Co:0.05〜0.1mass%を含有することを特徴とする。
本発明によれば、高価なMoやWを用いることなく、かつ、耐酸化性を低下させるCuを添加することなくSUS444と同等以上の耐熱性(熱疲労特性と耐酸化性)と、優れた加工性を有するフェライト系ステンレス鋼を安価に提供することができる。したがって、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、自動車の排気部材用として好適であり、産業上格段の効果を奏する。
本発明の上記知見を得る契機となった基礎実験について説明する。
(実験1)まず、18mass%Cr含有鋼の熱疲労特性に及ぼすN含有量の影響について調査した。
C:0.005〜0.010mass%、Si:0.10〜0.30mass%、Mn:0.10〜0.30mass%、Al:0.042〜0.048mass%、Cr:17〜18.5mass%、Nb:0.38〜0.43mass%およびV:0.19〜0.22mass%を含有し、Nの含有量を0.008〜0.048mass%の範囲で種々に変化させた鋼を実験室で溶製し、得られた鋼塊を鍛造して30mm×30mmの角材とし、熱処理を施したのち、図1に示した形状、寸法の熱疲労試験片を作製した。次いで、この試験片を、図2に示したように、拘束率0.8で200℃と850℃の間で昇温・降温を繰り返す熱疲労試験に供し、200℃において検出された荷重が初期の80%を下回るまでのサイクル数で定義する「熱疲労寿命」を測定した。なお、比較材として、SUS444(18Cr−2Mo−0.5Nb鋼)についても、上記と同様にして熱疲労試験片を作製し、同様の熱疲労試験に供した。
図3は、上記試験結果を、熱疲労寿命とN含有量との関係として示したものである。この図3から、SUS444より優れた熱疲労寿命が得られるNの含有量は0.015〜0.040mass%の範囲であることがわかった。
(実験2)次に、18mass%Cr含有鋼の熱疲労特性に及ぼすV含有量の影響について調査した。
C:0.005〜0.010mass%、Si:0.10〜0.30mass%、Mn:0.10〜0.30mass%、Al:0.042〜0.048mass%、Cr:17〜18.5mass%、Nb:0.28〜0.32mass%、N:0.019〜0.022mass%を含有し、Vの含有量を0.11〜0.71mass%の範囲で種々に変化させた鋼を実験室で溶製し、その後、上記実験1と同様にして、図1に示した熱疲労試験片を作製し、図2に示した熱疲労試験に供して、熱疲労寿命を測定した。
図4は、上記試験の結果を、熱疲労寿命とV含有量との関係として示したものであり、Vの含有量が0.15〜0.60mass%の範囲においてSUS444より優れた熱疲労寿命が得られることがわかった。
(実験3)次に、18mass%Cr含有鋼の熱疲労特性に及ぼすVとNの含有量(mass%)の積(V×N)の影響について調査した。
上記実験1および実験2に加えて、VおよびN以外の成分組成を実験1および実験2と同じくし、VとNの含有量(mass%)の積(V×N)の値を種々に変化させた鋼を実験室で溶製し、上記実験1と同様にして、図1に示した熱疲労試験片を作製し、図2に示した条件の熱疲労試験に供して、熱疲労寿命を測定した。
図5は、熱疲労寿命と(V×N)との関係を示したものである。この図5から、V,Nの含有量がそれぞれ実験1および2で得られた好適範囲内にある場合でも、(V×N)の値が0.003未満もしくは0.015超えであるときには、SUS444と同等の熱疲労寿命は得られない、したがって、SUS444と同等の熱疲労寿命を得るためには、V,Nの含有量を上記実験1および2で得られた好適範囲に制御すると共に、(V×N)を0.003〜0.015の範囲に制御する必要があることがわかった。
このように、VとNの含有量(mass%)の積(V×N)に熱疲労寿命を高める最適範囲が存在する理由は、(V×N)の値が小さ過ぎると、600〜800℃の温度で鋼中に微細に析出するVNの量が少な過ぎるため、鋼を高強度化し熱疲労特性を向上する効果に乏しく、一方、(V×N)の値が大きくなり過ぎると、析出したVNが粗大化し、却って熱疲労特性を低下させてしまうためと考えている。
(実験4)次に、Nbと同様、窒化物を形成するZr,TiおよびTaが、18mass%Cr含有鋼の熱疲労寿命に及ぼす影響について調査した。
C:0.005〜0.010mass%、Si:0.19〜0.22mass%、Mn:0.25〜0.29mass%、Al:0.042〜0.048mass%、Cr:17.9〜18.1mass%、Nb:0.34〜0.37mass%、V:0.19〜0.24mass%、N:0.0.19〜0.022mass%を含有し、Zr,TiおよびTaの含有量をそれぞれ0.003〜0.020mass%、0.003〜0.014mass%、0.003〜0.015mass%の範囲で種々に変化させた鋼を実験室で溶製し、上記実験1と同様にして、図1に示した熱疲労試験片を作製し、図2に示した条件で熱疲労試験に供し、熱疲労寿命を測定した。
図6は、熱疲労寿命に及ぼすZr,TiおよびTaの含有量の影響を示したものである。図6から、Zr,TiおよびTaがそれぞれ0.01mass%を超えて含有すると、SUS444と同等の熱疲労寿命は得られないことがわかる。この理由は、Zr,TiおよびTaを過剰に添加すると、VNの析出が抑制されて、本発明の特徴であるVN析出による分散強化効果が得られなくなるためと考えられる。したがって、熱疲労寿命を改善するためには、前述したV,Nの含有量および(V×N)の値を適正化するだけでなく、Zr,TiおよびTaの含有量をも適正化する、具体的には、Zr,TiおよびTaのそれぞれを0.01mass%以下に規制する必要があることがわかった。
(実験5)次に、排気系部材に用いられる鋼において、熱疲労特性と並んで重要な特性である耐酸化性に及ぼすMn含有量の影響について調査した。
C:0.005〜0.010mass%、Si:0.19〜0.22mass%、Al:0.042〜0.048mass%、Cr:17.9〜18.1mass%、Nb:0.29〜0.43mass%、V:0.19〜0.24mass%、N:0.019〜0.022mass%Nを含有し、Mnの含有量を0.13〜0.97mass%の範囲で種々に変化させた鋼を実験室で溶製し、得られた鋼塊を熱間圧延し、冷間圧延し、仕上焼鈍して板厚2mmの冷延焼鈍板を得た。この冷延焼鈍板から30mm×20mm×板厚の酸化試験用サンプルを採取し、このサンプルの表面を#320のエメリー紙で研磨した後、1000℃に保持された大気雰囲気の炉中で200時間の連続酸化試験を行い、酸化試験前後における質量変化(酸化増量)から、耐酸化性を評価した。なお、比較材としてSUS444についても、同様の連続酸化試験を行い、耐酸化性を評価した。
図7は、酸化増量とMn含有量との関係を示したものである。この図7から、SUS444と同等以上の耐連続酸化性を得るには、Mnの含有量を0.5mass%以下に制限する必要があることがわかった。
(実験6)次に、18mass%Cr含有鋼の室温における全伸びに及ぼすNおよびVの含有量およびそれらの積(V×N)の影響について調査した。
実験1〜3で得た鋼塊の一部を1170℃に加熱後、熱間圧延して5mm厚の熱延板とし、次いで、この熱延板を、熱延板焼鈍(焼鈍温度:1040℃)し、酸洗し、冷間圧延(冷延圧下率:60%)し、仕上げ焼鈍(焼鈍温度:1040℃、平均冷却速度:30℃/s)し、酸洗して板厚2mmの冷延焼鈍板とした。
この冷延焼鈍板から、圧延方向に対して0°方向(L方向)、45°方向(D方向)および90°方向(C方向)のJIS13号B試験片を採取して引張試験を行い、破断するまでの全伸び(El)を測定し、下記式により平均伸びを算出し、加工性を評価した。
平均伸び=(El+2El+El)/4
ここで、El:L方向の全伸び、El:D方向の全伸び、El:C方向の全伸び
なお、SUS444についても、同様にして平均伸びを測定した。
図8〜10に、平均伸びに及ぼすN含有量、V含有量および(V×N)の影響を示した。この結果から、本発明が目標とする平均伸び:36%以上の優れた加工性を得るためには、N含有量は0.030mass%以下、V含有量は0.35mass%以下および(V×N)は0.008以下でなければならないことがわかった。
本発明は、上記の知見にさらに検討を加えてなされたものである。
次に、本発明のフェライト系ステンレス鋼の成分組成について説明する。
C:0.010mass%以下
Cは、鋼の強度を高める元素であるが、0.010mass%を超えて含有すると、靱性および加工性の劣化が顕著となる。また、本発明において重要なVの熱疲労特性改善効果を阻害する。よって、本発明では、Cは0.010mass%以下に制限する。
Si:0.3mass%以下
Siは、鋼の耐酸化性を向上する元素であり、脱酸剤としても添加される元素である。しかし、過剰な添加は加工性を低下させる。特に、室温において高い伸びを安定して確保するには、0.3mass%以下にする必要がある。
Mn:0.35mass%以下
Mnは、脱酸剤としての効果を有する元素である。しかし、過剰な添加は、高温でのγ相の生成を促進し、耐熱性、特に耐酸化性を低下させる。また、Mnは、加工性、特に全伸びを低下させる。したがって、室温において高い全伸びを安定的に得ると共に、良好な耐酸化性を確保するには、Mnは0.35mass%以下とする必要がある。
P:0.040mass%以下
Pは、鋼の靱性を低下させる元素であり、できる限り低減するのが望ましい。よって、本発明では、Pは0.040mass%以下とする。好ましくは0.030mass%以下である。
S:0.010mass%以下
Sは、鋼の伸びおよびr値を低下させて成形性を劣化させるとともに、ステンレス鋼の基本特性である耐食性を低下させる元素であり、できる限り低減するのが望ましい。よって、本発明では、Sを0.010mass%以下に制限する。
Al:0.10mass%以下
Alは、鋼の耐酸化性および高温での耐塩害腐食性の向上に有効な元素である。しかし0.10mass%を超えて添加すると、鋼が硬質化し、加工性が低下する。よって、Alの上限は0.10mass%とする。好ましくは0.03〜0.08mass%の範囲である。
Cr:16〜18.5mass%
Crは、鋼の耐酸化性を向上させる重要な元素である。斯かる効果を得るためには、16mass%以上の添加が必要である。一方、Crは、鋼に固溶し、室温において硬質化、低延性化して加工性の低下を招く。特に、優れた延性を得るためには、Crは18.5mass%以下にする必要がある。よって、Crは16〜18.5mass%の範囲とする。
Ni:0.5mass%以下
Niは、鋼の靱性を向上させる元素であるが、高価である他、強力なγ相形成元素であるため、高温でのγ相の生成を促進し、耐酸化性を低下させる。よって、Niは0.5mass%以下とする。
N:0.015〜0.030mass%、V:0.15〜0.35mass%、かつ、(V×N):0.003〜0.008
VおよびNは、本発明では、鋼を高強度化し、熱疲労特性の向上を図るために重要な元素である。図3〜5に示したように、SUS444と同等以上の熱疲労特性を得るには、N:0.015〜0.040mass%、V:0.15〜0.60mass%およびVとNの含有量(mass%)の積(V×N):0.003〜0.015の全てを満たす必要がある。N含有量が0.015mass%未満、V含有量が0.15mass%未満あるいは(V×N)の値が0.003未満では、600〜800℃の温度でVNが鋼中に微細に析出しないため、本発明が目的とする熱疲労特性の改善効果が得られない。一方、N含有量が0.040mass%超え、V含有量が0.60mass%超えあるいは(V×N)が0.015超えでは、微細に析出したVNが粗大化し、却って熱疲労特性を低下させてしまうからである。
また、良好な熱疲労特性と同時に、良好な加工性、即ち、室温における平均伸び36%以上を得るには、図8〜10に示したように、N,Vの含有量および(V×N)の値がそれぞれ0.03mass%以下、0.35mass%以下、0.008以下の全てを満たす必要がある。よって、本発明では、N:0.015〜0.030mass%、V:0.15〜0.35mass%および(V×N):0.003〜0.008の範囲とする。
Nb:10(C(mass%)+N(mass%))〜0.60mass%
Nbは、C,Nを固定し、鋼の耐鋭敏化性、成形性、溶接部の粒界腐食性を高める作用を有するとともに、高温強度を高めて熱疲労特性を向上するのに有効な元素である。しかし、Nbの含有量がCとNの合計含有量(mass%)の10倍未満、即ち、10(C+N)未満では、鋼が鋭敏化を抑制する効果が得られない。一方、0.60mass%を超える添加は、Laves相の析出を促進して、脆化を起こし易くする。さらに、Nbの過剰添加は、本発明において重要なVNの析出が抑制され、熱疲労特性向上効果が得られなくなる。よって、Nbの含有量は、10(C+N)〜0.60mass%の範囲とする。好ましくは10(C+N)〜0.55mass%の範囲である。
Ti:0.01mass%以下、Zr:0.01mass%以下およびTa:0.01mass%以下
Ti,ZrおよびTaは、Nb,Vと同様、C,Nを固定して、耐食性、成形性、溶接部の粒界腐食性を向上させる作用を有する元素である。しかし、これらの元素がそれぞれ0.01mass%以上含有していると、本発明において重要役割を果たすVNの析出を抑制し、VNの析出効果を享受することができなくなり、熱疲労特性が低下してしまう。よって、本発明では、これらの元素はそれぞれ0.01mass%以下とする。
Mo:0.1mass%以下、W:0.1mass%以下
MoおよびWは、高温疲労特性および耐酸化性の向上に有効な元素であるが、いずれも高価な元素であり、安価な材料開発という本発明の目的から、積極的には添加しない。したがって、これらの元素は、製鉄原料のスクラップ等から混入する程度であり、その含有量は多くても0.1mass%以下である。よって、本発明では、MoおよびWの含有量はそれぞれ0.1mass%以下とする。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、上記必須とする成分に加えてさらに、BおよびCoを下記の範囲で含有することができる。
B:0.0004〜0.0020mass%
Bは、加工性、とくに2次加工性を向上するのに有効な元素である。この効果は、0.0004mass%以上の添加で発現する。しかし、0.0020mass%を超える添加は、BNを生成し、加工性の低下を招く。よって、Bを添加する場合は、0.0004〜0.0020mass%の範囲とする。
Co:0.05〜0.1mass%
Coは、鋼の靭性向上に有効な元素であり、その効果は0.05mass%以上の添加で認められる。しかし、Coは、高価な元素であり、0.1mass%を超えて添加しても上記効果は飽和してしまう。よって、Coを添加する場合は、0.05〜0.1mass%の範囲とする。
本発明のフェライト系ステンレス鋼において、上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。
次に、本発明のフェライト系ステンレス鋼の製造方法について説明する。
本発明鋼の製造方法は、特に限定されるものではなく、フェライト系ステンレス鋼の製造方法として一般的なものであれば、いずれも好適に用いることができる。例えば、前述した本発明に適合する成分組成の鋼を転炉、電気炉等の溶製炉、あるいはさらに取鍋精錬、真空精錬等の二次精錬を適用して溶製し、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法で鋼片(スラブ)とし、その後、熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上焼鈍、酸洗等の各工程を経て冷延焼鈍板とするのが好ましい。上記方法において、冷間圧延は、1回または中間焼鈍を挟む2回以上でもよい。また、冷間圧延、仕上焼鈍、酸洗の各工程は、必要に応じて繰り返し行ってもよく、熱延板焼鈍は、省略してもよい。さらに、鋼板表面の光沢性が要求される場合には、スキンパス等を施してもよい。
表1−1および表1−2に示した成分組成を有する鋼を真空溶解炉で溶製して50kg鋼塊とし、2分割し、その一方の鋼塊を1170℃に加熱後、熱間圧延して150mm幅×35mm厚の熱延シートバーとし、これを鍛造して30mm×30mmの角材とし、1040℃の焼鈍を施した。その後、その角材から、機械加工により図1に示した形状、寸法の熱疲労試験片を作製し、図2に示したように、拘束率0.8で200℃−850℃間を繰り返し昇温・降温させる熱疲労試験に供して、熱疲労寿命を測定した。なお、昇温・降温速度は5℃/sとし、850℃の保持時間は1分、200℃の保持時間は0分とした。また、熱疲労寿命の定義は、200℃において検出された荷重が、初期の80%を下回るまでのサイクル数とした。
また、参考例として、特許文献4〜7に開示された成分組成を有する鋼(No.1〜4)、およびSUS444(No.5)についても、上記と同様にして熱疲労特性を評価した。
実施例1で得たもう一方の鋼塊を1170℃に加熱後、熱間圧延して5mm厚の熱延板とした。次いで、この熱延板を、熱延板焼鈍(焼鈍温度:1040℃)し、酸洗し、冷間圧延(冷延圧下率:60mass%)し、仕上げ焼鈍(焼鈍温度:1040℃、平均冷却速度:30℃/s)し、酸洗して板厚2mmの冷延焼鈍板とした。
次いで、上記のようにして得た各冷延焼鈍板から、30mm×20mm×板厚のサンプルを切り出し、サンプル上部に4mmφの穴を開けてから、その表面および端面を#320のエメリー紙で研磨し、脱脂した。その後、そのサンプルを、1000℃に加熱・保持した大気雰囲気の炉内に吊り下げて200時間保持する大気中連続酸化試験に供した。試験後、サンプルの重量を測定し、試験前の重量との差を算出して、酸化増量を求めた。上記連続酸化試験は、各冷延焼鈍板のそれぞれについて2回実施し、その平均値で耐酸化性を評価した。
また、実施例1と同様、参考例として、従来鋼(No.1〜4)およびSUS444(No.5)についても、上記と同様にして耐酸化性を評価した。
実施例2で得た冷延焼鈍板から、圧延方向に対して0°方向(L方向)、45°方向(D方向)および90°方向(C方向)のJIS13号B試験片を採取して引張試験を行い、破断するまでの全伸び(El)を測定し、下記式により平均伸びを算出し、加工性を評価した。
平均伸び=(El+2El+El)/4
ここで、El:L方向の全伸び、El:D方向の全伸び、El:C方向の全伸び
なお、SUS444についても、同様にして平均伸びを測定した。
また、実施例1と同様、参考例として、従来鋼(No.1〜4)およびSUS444(No.5)についても、上記と同様にして加工性を評価した。
上記実施例1〜3の結果を、表1−2に併記して示した。この結果から、本発明の成分組成に適合する発明例の鋼(No.33〜47)は、いずれも、SUS444と同等以上の耐熱疲労特性(熱疲労寿命:520サイクル以上)と耐酸化性(酸化増量:33g/m以下)、および優れた加工性(平均伸び:36%以上)を兼備していることがわかる。一方、本発明の成分組成を満たさない比較例の鋼(No.6〜32)および従来技術の鋼(No.1〜4)は、耐熱疲労特性、耐酸化性のいずれか1以上の特性がSUS444(No.5)より劣っているか、または、目標とする平均伸び36%以上を満たさない。
Figure 0005343444
Figure 0005343444
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、自動車の排気部材用に限定されるものではなく、本発明の鋼と同様の特性が要求される火力発電システムの排気経路部材や固体酸化物タイプの燃料電池用部材としても好適に用いることができる。
本発明において用いた熱疲労試験片を説明する図である。 本発明において行った熱疲労試験を説明する図である。 18Cr鋼の熱疲労寿命に及ぼすN含有量の影響を示すグラフである。 18Cr鋼の熱疲労寿命に及ぼすV含有量の影響を示すグラフである。 18Cr鋼の熱疲労寿命に及ぼす(V×N)の影響を示すグラフである。 18Cr鋼の熱疲労寿命に及ぼすZr,TiおよびTa含有量の影響を示すグラフである。 18Cr鋼の耐酸化性に及ぼすMn含有量の影響を示すグラフである。 18Cr鋼の平均伸びに及ぼすN含有量の影響を示すグラフである。 18Cr鋼の平均伸びに及ぼすV含有量の影響を示すグラフである。 18Cr鋼の平均伸びに及ぼす(V×N)の影響を示すグラフである。

Claims (3)

  1. C:0.010mass%以下、
    Si:0.3mass%以下、
    Mn:0.35mass%以下、
    P:0.040mass%以下、
    S:0.010mass%以下、
    Al:0.10mass%以下、
    Cr:16〜18.5mass%、
    Ni:0.5mass%以下、
    N:0.015〜0.030mass%、
    V:0.15〜0.35mass%、
    Nb:10(C(mass%)+N(mass%))〜0.60mass%、
    Ti:0.01mass%以下、
    Zr:0.01mass%以下、
    Ta:0.01mass%以下、
    Mo:0.1mass%以下、
    W:0.1mass%以下含有し、かつ、
    VおよびNの含有量(mass%)の積(V×N)が、
    (V×N):0.003〜0.008
    を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする熱疲労特性、耐酸化性および加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
  2. 上記成分組成に加えてさらに、B:0.0004〜0.0020mass%を含有し、かつ、Alの含有量が0.03〜0.10mass%であることを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  3. 上記成分組成に加えてさらに、Co:0.05〜0.1mass%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
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