JP2009235572A - 耐熱性と形状凍結性に優れるフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Abstract
【課題】MoやW等の高価な元素を添加することなく、熱疲労特性と耐酸化性に優れると共に、Type429と同等以上の形状凍結性を有するフェライト系ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】C:0.015mass%以下、Si:0.2mass%以下、Mn:0.2mass%以下、P:0.030mass%以下、S:0.006mass%以下、Cr:16〜20mass%以下、N:0.015mass%以下、Nb:0.3〜0.55mass%、Ti:0.15mass%以下、Mo:0.1mass%以下、W:0.1mass%以下、Cu:1.0〜1.8mass%、Al:0.2〜0.6mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼。
【選択図】図3
【解決手段】C:0.015mass%以下、Si:0.2mass%以下、Mn:0.2mass%以下、P:0.030mass%以下、S:0.006mass%以下、Cr:16〜20mass%以下、N:0.015mass%以下、Nb:0.3〜0.55mass%、Ti:0.15mass%以下、Mo:0.1mass%以下、W:0.1mass%以下、Cu:1.0〜1.8mass%、Al:0.2〜0.6mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼。
【選択図】図3
Description
本発明は、Cr含有鋼に係り、とくに自動車やオートバイの排気管、コンバーターケースや火力発電プラントの排気ダクト等の高温環境下で使用される排気系部材に用いて好適な、高い耐熱性(耐熱疲労特性、耐酸化性)と形状凍結性を兼ね備えたフェライト系ステンレス鋼に関するものである。
自動車の排気系環境下で使用されるエキゾーストマニホールド、排気パイプ、コンバーターケース、マフラー等の排気系部材には、熱疲労特性や耐酸化性(以下、両特性をまとめて「耐熱性」と呼ぶ。)に優れることが要求されている。このような耐熱性が求められる用途には、現在、NbとSiを添加した、例えば、Type429(14Cr−0.9Si−0.4Nb系)のようなCr含有鋼が多く使用されている。しかし、エンジン性能の向上に伴って、排ガス温度が900℃を超えるような温度まで上昇してくると、Type429では、熱疲労特性が不十分となってきた。
この問題に対しては、NbとMoを添加して高温耐力を向上させたCr含有鋼や、JIS G4305に規定されるSUS444(19Cr−0.5Nb−2Mo鋼)、Nb,Mo,Wを添加したフェライト系ステンレス鋼等が開発されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、昨今におけるMoやW等の希少金属原料の異常な高騰から、安価な原料を用いて同等の耐熱性を有する材料の開発が要求されるようになってきた。
高価な元素であるMoやWを用いない耐熱性に優れた材料としては、例えば、特許文献2には、10〜20mass%Cr鋼に、Nb:0.50mass%以下、Cu:0.8〜2.0mass%、V:0.03〜0.20mass%を添加した自動車排ガス流路部材用フェライト系ステンレス鋼が、また特許文献3には、10〜20mass%Cr鋼に、Ti:0.05〜0.30mass%、Nb:0.10〜0.60mass%、Cu:0.8〜2.0mass%、B:0.0005〜0.02mass%を添加した熱疲労特性に優れたフェライト系ステンレス鋼が、また特許文献4には、15〜25mass%Cr鋼に、Cu:1〜3mass%を添加した自動車排気系部品用フェライト系ステンレス鋼が開示されている。これらの鋼はいずれも、Cuを添加することによって、熱疲労特性を向上させているのが特徴である。
しかしながら、発明者らの研究によれば、上記特許文献2〜4の技術のようにCuを添加した場合には、耐熱疲労特性は向上するものの、鋼自身の耐酸化性が却って低下し、総体的に見ると、耐熱性が劣化することが明らかとなってきた。また、SUS444は、Type429に比べて降伏応力が高く、プレス加工時の形状凍結性が劣るという問題点も残存していた。
そこで、本発明の目的は、Cu添加による耐酸化性の低下を防止する技術を開発することによって、MoやW等の高価な元素を添加することなく、熱疲労特性と耐酸化性に優れると共に、Type429と同等以上の形状凍結性を有するフェライト系ステンレス鋼を提供することにある。ここで、本発明でいう「優れた耐酸化性と耐熱疲労特性」とは、SUS444と同等以上の特性を有すること、具体的には、耐酸化性は、950℃における耐酸化性が、また、熱疲労特性は、100−850℃間での繰り返しの熱疲労特性が、SUS444と同等以上であることをいう。また、Type429と同等以上の形状凍結性とは、板厚2mmの冷延焼鈍板の室温における3方向(L,D,C方向)の平均降伏応力(あるいは平均0.2%耐力)がType429と同等以下であることをいう。
発明者らは、従来技術が抱えるCu添加による耐酸化性の低下を防止すると共に、MoやW等の高価な元素を添加することなく、熱疲労特性と耐酸化性が優れると共に、形状凍結性にも優れるフェライト系ステンレス鋼を開発すべく鋭意検討を重ねた。その結果、Nbを0.3〜0.55mass%、Cuを1.0〜2.5mass%の範囲で複合添加することによって幅広い温度域で高い高温強度が得られ、Mo,Wを添加しなくてもSUS444と同等以上の熱疲労特性が得られること、また、Cu添加による耐酸化性の低下は、Alを0.2mass%以上添加することにより防止し得ること、したがって、Nb,CuおよびAlを上記適正範囲に制御することによって、MoやWを添加しなくても、SUS444と同等以上の耐熱性(熱疲労特性、耐酸化性)が得られることを見出した。さらに、Cu,Al添加鋼の繰返し酸化試験による耐スケール剥離性は、Siの添加量を最適化(≦0.5mass%)することにより向上すること、および形状凍結性は、Cu,Si,Mn,PおよびAlの添加量を最適化(Cu:1.8mass%以下、Si:0.2mass%以下、Mn:0.2mass%以下、P:0.030mass%以下、Al:0.6mass%以下)することにより、Type429と同等以上とすることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、C:0.015mass%以下、Si:0.2mass%以下、Mn:0.2mass%以下、P:0.030mass%以下、S:0.006mass%以下、Cr:16〜20mass%以下、N:0.015mass%以下、Nb:0.3〜0.55mass%、Ti:0.15mass%以下、Mo:0.1mass%以下、W:0.1mass%以下、Cu:1.0〜1.8mass%、Al:0.2〜0.6mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼である。
また、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、上記の成分組成に加えてさらに、B:0.003mass%以下、REM:0.08mass%以下、Zr:0.5mass%以下、V:0.5mass%以下、Co:0.5mass%以下およびNi:0.5mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
本発明によれば、高価なMoやWを添加することなく、SUS444と同等以上の耐熱性(熱疲労特性、耐酸化性)を有すると共に、Type429と同等以上の形状凍結性を有するフェライト系ステンレス鋼を安価に得ることができる。したがって、本発明の鋼は、自動車排気系部材に用いて好適である。
まず、本発明を開発するに至った基礎実験について、説明する。
C:0.005〜0.007mass%、N:0.004〜0.006mass%、Si:0.15mass%、Mn:0.15mass%、Cr:17mass%、Nb:0.45mass%およびAl:0.35mass%からなる成分組成をベースとし、これにCuの添加量を種々に変化させた鋼を実験室的に溶製して50kg鋼塊とし、この鋼塊を1170℃に加熱後、熱間圧延して厚さ:30mm×幅:150mmのシートバーとした。その後、このシートバーを鍛造し、35mm×35mmのバーとし、1030℃の温度で焼鈍後、機械加工し、図1に示した寸法の熱疲労試験片に加工した。そして、図2に示したような、拘束率:0.35で100℃−850℃間を加熱・冷却する熱処理を繰り返し付与し、熱疲労寿命を測定した。なお、上記熱疲労寿命は、100℃において検出された荷重を、図1に示した試験片均熱平行部の断面積で割って応力を算出し、前のサイクルの応力に対して連続的に応力が低下し始めたときの最小のサイクル数とした。これは、試験片に亀裂が発生したサイクル数に相当する。なお、比較として、SUS444(Cr:19mass%−Nb:0.5mass%−Mo:2mass%鋼)についても、同様の試験を行った。
C:0.005〜0.007mass%、N:0.004〜0.006mass%、Si:0.15mass%、Mn:0.15mass%、Cr:17mass%、Nb:0.45mass%およびAl:0.35mass%からなる成分組成をベースとし、これにCuの添加量を種々に変化させた鋼を実験室的に溶製して50kg鋼塊とし、この鋼塊を1170℃に加熱後、熱間圧延して厚さ:30mm×幅:150mmのシートバーとした。その後、このシートバーを鍛造し、35mm×35mmのバーとし、1030℃の温度で焼鈍後、機械加工し、図1に示した寸法の熱疲労試験片に加工した。そして、図2に示したような、拘束率:0.35で100℃−850℃間を加熱・冷却する熱処理を繰り返し付与し、熱疲労寿命を測定した。なお、上記熱疲労寿命は、100℃において検出された荷重を、図1に示した試験片均熱平行部の断面積で割って応力を算出し、前のサイクルの応力に対して連続的に応力が低下し始めたときの最小のサイクル数とした。これは、試験片に亀裂が発生したサイクル数に相当する。なお、比較として、SUS444(Cr:19mass%−Nb:0.5mass%−Mo:2mass%鋼)についても、同様の試験を行った。
図3は、上記熱疲労試験の結果を示したものである。この図から、Cuを1.0mass%以上添加することにより、SUS444の熱疲労寿命(約1100サイクル)と同等以上の熱疲労寿命が得られること、したがって、熱疲労特性を改善するには、Cuを1mass%以上添加することが有効であることがわかる。
次に、C:0.006mass%、N:0.007mass%、Mn:0.15mass%、Si:0.15mass%、Cr:17mass%、Nb:0.49mass%およびCu:1.5mass%からなる成分組成をベースとし、これにAlの添加量を種々に変化させた鋼を実験室的に溶製し、50kg鋼塊とし、この鋼塊を、熱間圧延し、熱延板焼鈍し、冷間圧延し、仕上焼鈍して、板厚2mmの冷延焼鈍板とした。上記のようにして得た冷延鋼板から30mm×20mmの試験片を切り出し、この試験片上部に4mmφの穴をあけ、表面および端面を#320のエメリー紙で研磨し、脱脂後、下記の試験に供した。
<連続酸化試験>
上記試験片を、950℃に加熱された大気雰囲気の炉中に300時間保持し、加熱試験前後における試験片の質量の差を測定し、単位面積当たりの酸化増量(g/m2)を求めた。
<繰り返し酸化試験>
上記試験片を用いて、大気中において、100℃×1minと950℃×25minの温度に加熱・冷却を繰り返す熱処理を600サイクル行い、試験前後における質量差から、試験片表面から剥離したスケール量(g/m2)を測定した。なお、上記試験における加熱、冷却速度は、それぞれ5℃/sec、1.5℃/secで行った。
<連続酸化試験>
上記試験片を、950℃に加熱された大気雰囲気の炉中に300時間保持し、加熱試験前後における試験片の質量の差を測定し、単位面積当たりの酸化増量(g/m2)を求めた。
<繰り返し酸化試験>
上記試験片を用いて、大気中において、100℃×1minと950℃×25minの温度に加熱・冷却を繰り返す熱処理を600サイクル行い、試験前後における質量差から、試験片表面から剥離したスケール量(g/m2)を測定した。なお、上記試験における加熱、冷却速度は、それぞれ5℃/sec、1.5℃/secで行った。
図4は、酸化増量の測定結果を、また、図5は、スケール剥離量の測定結果を示したものである。これらの図から、Alを0.2mass%以上添加することで、SUS444と同等以上の耐酸化性(酸化増量:27g/m2以下、スケール剥離量:4g/m2未満)が得られることがわかる。
次に、C:0.006mass%、N:0.007mass%、Mn:0.15mass%、Al:0.45mass%、Cr:17mass%、Nb:0.49mass%およびCu:1.5mass%からなる成分組成をベースとし、これにSiの添加量を種々に変化させた鋼を実験室的に溶製し、50kg鋼塊とし、上記と同様にして板厚2mmの冷延焼鈍板とし、上記と同様にして、繰り返し酸化試験を行い、スケール剥離量を測定し、その結果を、図6に示した。これから、Alを適正量添加しても、Siが0.5%を超えるとスケール密着性が低下して剥離量が増え、SUS444と同等の耐熱性が得られなくなることがわかった。
次に、C:0.006〜0.007mass%、N:0.006〜0.007mass%、Si:0.12mass%、Mn:0.17mass%、P:0.022mass%、Al:0.36mass%、Cr:17mass%、Nb:0.45mass%およびCu:1.4mass%からなる成分組成をベースとし、これにCu,Si,Mn,AlおよびPの添加量を種々に変化させた鋼を実験室的に溶製し、50kg鋼塊とし、上記と同様にして板厚2mmの冷延焼鈍板とした。上記の各冷延鋼板から圧延方向に対して0°(L方向)、45°(D方向)および90°(C方向)の方向からJIS13号B引張試験片を採取して、室温で引張試験を行い、L,D,C3方向の降伏応力(YS)を測定し、下記式から、平均降伏応力を求めた。また、同様にして、Type429についても平均降伏応力を測定した。
平均降伏応力(MPa)=(YSL+2×YSD+YSC)/4
ここで、YSL、YSDおよびYSCは、L,DおよびC方向の降伏応力
平均降伏応力(MPa)=(YSL+2×YSD+YSC)/4
ここで、YSL、YSDおよびYSCは、L,DおよびC方向の降伏応力
図7〜図11は、平均降伏応力に及ぼすCu,Si,Mn,AlおよびPの含有量の影響を示したものである。これらの図から、Type429と同等以下の平均降伏応力(≦340MPa)、即ち、Type429と同等以上の形状凍結性を得るには、それぞれCu:1.8mass%以下、Si:0.2mass%以下、Mn:0.2mass%以下、Al:0.6mass%以下、P:0.030mass%以下とする必要があることがわかった。
本発明は、上記した知見にさらに検討を加えて完成したものである。
本発明は、上記した知見にさらに検討を加えて完成したものである。
次に、本発明のフェライト系ステンレス鋼の成分組成について説明する。
C:0.015mass%以下
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な元素であるが、0.015mass%を超えて含有すると、靭性および成形性の低下が顕著となる。よって、本発明では、Cは0.015mass%以下とする。なお、成形性を確保する観点からは、Cは低いほど好ましく、0.008mass%以下とするのが望ましい。一方、排気系部材としての強度を確保するには、Cは0.001mass%以上であることが好ましい。より好ましくは0.002〜0.008mass%の範囲である。
C:0.015mass%以下
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な元素であるが、0.015mass%を超えて含有すると、靭性および成形性の低下が顕著となる。よって、本発明では、Cは0.015mass%以下とする。なお、成形性を確保する観点からは、Cは低いほど好ましく、0.008mass%以下とするのが望ましい。一方、排気系部材としての強度を確保するには、Cは0.001mass%以上であることが好ましい。より好ましくは0.002〜0.008mass%の範囲である。
Si:0.2mass%以下
Siは、脱酸材として添加される元素であり、0.05mass%以上添加するのが好ましい。また、Siは、本発明が主眼とする耐酸化性を向上する効果を有するが、Alほどの効果は得られない。一方、図6からわかるように、0.5mass%を超えるSiの過剰な添加は、耐スケール剥離性が低下し、SUS444と同等以上の耐酸化性が得られない。さらに、0.2mass%を超えて添加すると、図8に示したように平均降伏応力が上昇し、Type429と同等以上の形状凍結性が得られなくなる。よって、Siの上限は0.2mass%とする。
Siは、脱酸材として添加される元素であり、0.05mass%以上添加するのが好ましい。また、Siは、本発明が主眼とする耐酸化性を向上する効果を有するが、Alほどの効果は得られない。一方、図6からわかるように、0.5mass%を超えるSiの過剰な添加は、耐スケール剥離性が低下し、SUS444と同等以上の耐酸化性が得られない。さらに、0.2mass%を超えて添加すると、図8に示したように平均降伏応力が上昇し、Type429と同等以上の形状凍結性が得られなくなる。よって、Siの上限は0.2mass%とする。
Mn:0.2mass%以下
Mnは、鋼の強度を高める元素であり、また、脱酸剤としての作用も有するため、0.05mass%以上添加するのが好ましい。しかし、過剰な添加は、高温でγ相が生成しやすくなり、耐熱性を低下させる。また、図9に示したように、Mnを、0.2mass%を超えて添加すると、平均降伏応力が上昇し、Type429と同等以上の形状凍結性が得られなくなる。よって、Mnは0.2mass%以下に制限する。
Mnは、鋼の強度を高める元素であり、また、脱酸剤としての作用も有するため、0.05mass%以上添加するのが好ましい。しかし、過剰な添加は、高温でγ相が生成しやすくなり、耐熱性を低下させる。また、図9に示したように、Mnを、0.2mass%を超えて添加すると、平均降伏応力が上昇し、Type429と同等以上の形状凍結性が得られなくなる。よって、Mnは0.2mass%以下に制限する。
P:0.030mass%以下
Pは、固溶強化により平均降伏応力(0.2%耐力)を上昇させる元素であり、図11に示したように、Type429と同等以上の形状凍結性を得るには0.030mass%以下とする必要がある。
Pは、固溶強化により平均降伏応力(0.2%耐力)を上昇させる元素であり、図11に示したように、Type429と同等以上の形状凍結性を得るには0.030mass%以下とする必要がある。
S:0.006mass%以下
Sは、伸びやr値を低下し、成形性に悪影響を及ぼすとともに、ステンレス鋼の基本特性である耐食性を低下させる有害元素でもあるため、できるだけ低減するのが望ましい。よって、本発明では、Sは0.006mass%以下とする。好ましくは、0.003mass%以下である。
Sは、伸びやr値を低下し、成形性に悪影響を及ぼすとともに、ステンレス鋼の基本特性である耐食性を低下させる有害元素でもあるため、できるだけ低減するのが望ましい。よって、本発明では、Sは0.006mass%以下とする。好ましくは、0.003mass%以下である。
Cr:16〜20mass%
Crは、ステンレス鋼の特徴である耐食性、耐酸化性を向上させるのに有効な重要元素であるが、16mass%未満では、十分な耐酸化性が得られない。一方、Crは、室温において鋼を固溶強化し、硬質化・低延性化する元素であり、特に20mass%を超えて含有すると、上記弊害が顕著となり、Type429と同等以上の形状凍結性が得られなくなる。よって、本発明では、Crは16〜20mass%の範囲とする。好ましくは、16〜19mass%の範囲である。
Crは、ステンレス鋼の特徴である耐食性、耐酸化性を向上させるのに有効な重要元素であるが、16mass%未満では、十分な耐酸化性が得られない。一方、Crは、室温において鋼を固溶強化し、硬質化・低延性化する元素であり、特に20mass%を超えて含有すると、上記弊害が顕著となり、Type429と同等以上の形状凍結性が得られなくなる。よって、本発明では、Crは16〜20mass%の範囲とする。好ましくは、16〜19mass%の範囲である。
N:0.015mass%以下
Nは、鋼の靭性および成形性を低下させる元素であり、0.015mass%を超えて含有すると、上記低下が顕著となる。よって、Nは0.015mass%以下とする。なお、Nは、より形状凍結性を向上する観点からは、0.010mass%未満とするのが望ましい。
Nは、鋼の靭性および成形性を低下させる元素であり、0.015mass%を超えて含有すると、上記低下が顕著となる。よって、Nは0.015mass%以下とする。なお、Nは、より形状凍結性を向上する観点からは、0.010mass%未満とするのが望ましい。
Nb:0.3〜0.55mass%
Nbは、C,Nと炭窒化物を形成して固定し、耐食性や成形性、溶接部の耐粒界腐食性を高める作用を有するとともに、高温強度を上昇させて熱疲労特性を向上する効果を有する元素である。このような効果は、0.3mass%以上の添加で認められる。一方、0.55mass%を超える添加は、Laves相が析出しやすくなり、加工性や靭性が低下する。よって、Nbは0.3〜0.55mass%の範囲とする。好ましくは、0.4〜0.5mass%の範囲である。
Nbは、C,Nと炭窒化物を形成して固定し、耐食性や成形性、溶接部の耐粒界腐食性を高める作用を有するとともに、高温強度を上昇させて熱疲労特性を向上する効果を有する元素である。このような効果は、0.3mass%以上の添加で認められる。一方、0.55mass%を超える添加は、Laves相が析出しやすくなり、加工性や靭性が低下する。よって、Nbは0.3〜0.55mass%の範囲とする。好ましくは、0.4〜0.5mass%の範囲である。
Ti:0.15mass%以下
Tiは、Nbと同様、C,Nを固定して、耐食性や成形性、溶接部の粒界腐食性を向上させる作用を有する。しかし、そのような効果は、Nbを添加している本発明の成分系では、0.15mass%を超えると飽和するとともに、固溶硬化によって鋼が硬質化する。よって、本発明では上限を0.15mass%とする。本発明では、Tiは積極的に添加するものではなく、上限を0.15mass%に制限する。
Tiは、Nbと同様、C,Nを固定して、耐食性や成形性、溶接部の粒界腐食性を向上させる作用を有する。しかし、そのような効果は、Nbを添加している本発明の成分系では、0.15mass%を超えると飽和するとともに、固溶硬化によって鋼が硬質化する。よって、本発明では上限を0.15mass%とする。本発明では、Tiは積極的に添加するものではなく、上限を0.15mass%に制限する。
Mo:0.1mass%以下
Moは、高価な元素であり、本発明の趣旨からも積極的な添加は行わない。しかし、原料であるスクラップ等から0.1mass%以下混入することがある。よって、Moは0.1mass%以下とする。
Moは、高価な元素であり、本発明の趣旨からも積極的な添加は行わない。しかし、原料であるスクラップ等から0.1mass%以下混入することがある。よって、Moは0.1mass%以下とする。
W:0.1mass%以下
Wは、Moと同様に高価な元素であり、本発明の趣旨からも積極的な添加は行わない。しかし、原料であるスクラップ等から0.1mass%以下混入することがある。よって、Wは0.1mass%以下とする。
Wは、Moと同様に高価な元素であり、本発明の趣旨からも積極的な添加は行わない。しかし、原料であるスクラップ等から0.1mass%以下混入することがある。よって、Wは0.1mass%以下とする。
Cu:1.0〜1.8mass%
Cuは、熱疲労特性の向上には非常に有効な元素である。図3に示したように、SUS444と同等以上の耐熱疲労特性を得るには、Cuを1.0mass%以上添加することが必要である。しかし、1.8mass%を超えて添加すると、図7に示したように、平均降伏応力が340MPaを超えるため、Type429と同等以上の形状凍結性が得られなくなる。さらに重要なことは、Cuの添加は、耐熱疲労特性は向上するものの、鋼自身の耐酸化性が却って低下し、総体的に見ると、耐熱性が低下してしまうことである。この原因は、十分に明らかとはなっていないが、生成したスケール直下の脱Cr層にCuが濃化し、ステンレス鋼本来の耐酸化性を向上する元素であるCrの再拡散を抑制するためと考えられる。よって、Cuは、1.0〜1.8mass%の範囲とする。好ましくは、1.1〜1.6mass%の範囲である。
Cuは、熱疲労特性の向上には非常に有効な元素である。図3に示したように、SUS444と同等以上の耐熱疲労特性を得るには、Cuを1.0mass%以上添加することが必要である。しかし、1.8mass%を超えて添加すると、図7に示したように、平均降伏応力が340MPaを超えるため、Type429と同等以上の形状凍結性が得られなくなる。さらに重要なことは、Cuの添加は、耐熱疲労特性は向上するものの、鋼自身の耐酸化性が却って低下し、総体的に見ると、耐熱性が低下してしまうことである。この原因は、十分に明らかとはなっていないが、生成したスケール直下の脱Cr層にCuが濃化し、ステンレス鋼本来の耐酸化性を向上する元素であるCrの再拡散を抑制するためと考えられる。よって、Cuは、1.0〜1.8mass%の範囲とする。好ましくは、1.1〜1.6mass%の範囲である。
Al:0.2〜0.6mass%
Alは、図4および図5に示したように、Cu添加鋼の耐酸化性を向上するために必要不可欠な元素である。特に、本発明の目的であるSUS444と同等以上の耐酸化性を得るには0.2mass%以上の添加が必要である。一方、図10に示したように、0.6mass%を超えて添加すると、Type429と同等以上の形状凍結性が得られなくなるので、上限は0.6mass%とする。好ましくは、0.3〜0.6mass%の範囲である。
Alは、図4および図5に示したように、Cu添加鋼の耐酸化性を向上するために必要不可欠な元素である。特に、本発明の目的であるSUS444と同等以上の耐酸化性を得るには0.2mass%以上の添加が必要である。一方、図10に示したように、0.6mass%を超えて添加すると、Type429と同等以上の形状凍結性が得られなくなるので、上限は0.6mass%とする。好ましくは、0.3〜0.6mass%の範囲である。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、上記必須とする成分に加えてさらに、B,REM,Zr,V,CoおよびNiのうちから選ばれる1種または2種以上を、下記の範囲で添加することができる。
B:0.003mass%以下
Bは、加工性、とくに2次加工性を向上させるのに有効な元素である。その顕著な効果は、0.0005mass%以上の添加で得ることができるが、0.003mass%を超える多量の添加は、BNを生成して加工性を低下させる。よって、Bを添加する場合は、0.003mass%以下とする。より好ましくは、0.005〜0.002mass%の範囲である。
B:0.003mass%以下
Bは、加工性、とくに2次加工性を向上させるのに有効な元素である。その顕著な効果は、0.0005mass%以上の添加で得ることができるが、0.003mass%を超える多量の添加は、BNを生成して加工性を低下させる。よって、Bを添加する場合は、0.003mass%以下とする。より好ましくは、0.005〜0.002mass%の範囲である。
REM:0.08mass%以下、Zr:0.5mass%以下
REM(希土類元素)およびZrはいずれも、耐酸化性を改善する元素であり、上記効果を得るためには、それぞれ0.01mass%以上、0.05mass%以上添加するのが好ましい。しかし、REMの0.08mass%を超える添加は、鋼を脆化させ、また、Zrの0.5mass%を超える添加は、Zr金属間化合物が析出して、鋼を脆化させる。よって、REMを添加する場合は0.08mass%以下、Zrを添加する場合は0.5mass%以下とする。
REM(希土類元素)およびZrはいずれも、耐酸化性を改善する元素であり、上記効果を得るためには、それぞれ0.01mass%以上、0.05mass%以上添加するのが好ましい。しかし、REMの0.08mass%を超える添加は、鋼を脆化させ、また、Zrの0.5mass%を超える添加は、Zr金属間化合物が析出して、鋼を脆化させる。よって、REMを添加する場合は0.08mass%以下、Zrを添加する場合は0.5mass%以下とする。
V:0.5mass%以下
Vは、加工性および耐酸化性の向上に有効な元素であり、特に耐酸化性の向上効果を得るためには0.15mass%以上の添加が好ましい。しかし、0.5mass%を超える過剰な添加は、粗大なV(C,N)を析出し、表面性状を劣化させる。よって、Vを添加する場合は、0.5mass%以下添加するのが好ましく、0.15〜0.4mass%の範囲で添加するのがより好ましい。
Vは、加工性および耐酸化性の向上に有効な元素であり、特に耐酸化性の向上効果を得るためには0.15mass%以上の添加が好ましい。しかし、0.5mass%を超える過剰な添加は、粗大なV(C,N)を析出し、表面性状を劣化させる。よって、Vを添加する場合は、0.5mass%以下添加するのが好ましく、0.15〜0.4mass%の範囲で添加するのがより好ましい。
Co:0.5mass%以下
Coは、靭性の向上に有効な元素であり、0.02mass%以上添加するのが好ましい。しかし、Coは、高価な元素であり、また、0.5mass%を超えて添加しても、上記効果は飽和する。よって、Coを添加する場合は0.5mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは、0.02〜0.2mass%の範囲である。
Coは、靭性の向上に有効な元素であり、0.02mass%以上添加するのが好ましい。しかし、Coは、高価な元素であり、また、0.5mass%を超えて添加しても、上記効果は飽和する。よって、Coを添加する場合は0.5mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは、0.02〜0.2mass%の範囲である。
Ni:0.5mass%以下
Niは、靭性を向上させる元素である。しかし、Niは、高価であり、また、強力なγ相形成元素であるため、高温でγ相を生成し、耐酸化性を低下させる。よって、Niを添加する場合は、0.5mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.4mass%の範囲である。
Niは、靭性を向上させる元素である。しかし、Niは、高価であり、また、強力なγ相形成元素であるため、高温でγ相を生成し、耐酸化性を低下させる。よって、Niを添加する場合は、0.5mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.4mass%の範囲である。
次に、本発明のフェライト系ステンレス鋼の製造方法について説明する。
本発明のステンレス鋼の製造方法は、フェライト系ステンレス鋼の通常の製造方法であれば好適に用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、転炉、電気炉等の溶製炉で鋼を溶製し、あるいはさらに取鍋精錬、真空精錬等の2次精錬を経て上述した本発明の成分組成を有する溶鋼とし、次いで、その溶鋼を連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法で鋼片(スラブ)とし、熱間圧延して熱延板とし、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、さらに、その熱延板を酸洗し、冷間圧延し、仕上焼鈍し、酸洗する等の工程を経て冷延焼鈍板とするのが好ましい。上記冷間圧延は、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ってもよく、また、冷間圧延、仕上焼鈍、酸洗の各工程は、繰り返して行ってもよい。さらに、場合によっては、熱延板焼鈍は省略してもよく、鋼板表面の光沢性が要求される場合には、冷延後あるいは仕上焼鈍後、スキンパスを施してもよい。なお、上記熱間圧延前のスラブ加熱温度は1000〜1250℃、熱延板焼鈍温度は900〜1100℃、仕上焼鈍温度は900〜1120℃の範囲であるのが好ましい。
本発明のステンレス鋼の製造方法は、フェライト系ステンレス鋼の通常の製造方法であれば好適に用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、転炉、電気炉等の溶製炉で鋼を溶製し、あるいはさらに取鍋精錬、真空精錬等の2次精錬を経て上述した本発明の成分組成を有する溶鋼とし、次いで、その溶鋼を連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法で鋼片(スラブ)とし、熱間圧延して熱延板とし、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、さらに、その熱延板を酸洗し、冷間圧延し、仕上焼鈍し、酸洗する等の工程を経て冷延焼鈍板とするのが好ましい。上記冷間圧延は、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ってもよく、また、冷間圧延、仕上焼鈍、酸洗の各工程は、繰り返して行ってもよい。さらに、場合によっては、熱延板焼鈍は省略してもよく、鋼板表面の光沢性が要求される場合には、冷延後あるいは仕上焼鈍後、スキンパスを施してもよい。なお、上記熱間圧延前のスラブ加熱温度は1000〜1250℃、熱延板焼鈍温度は900〜1100℃、仕上焼鈍温度は900〜1120℃の範囲であるのが好ましい。
上記のようにして得た本発明のフェライト系ステンレス鋼は、その後、それぞれの用途に応じて切断加工、曲げ加工、プレス加工等の加工を施されて、自動車やオートバイの排気管、コンバーターケースや火力発電プラントの排気ダクト等の高温環境下で使用される各種排気系部材とされる。なお、上記部材に用いる本発明のステンレス鋼は、冷延焼鈍板に限定されるものではなく、熱延板あるいは熱延板焼鈍として用いてもよく、さらに必要に応じて脱スケール処理して用いてもよい。また、上記部材に組み立てる際の溶接方法は、特に限定されるものではなく、MIG、TIG、MAG等の通常のアーク溶接や、スポット溶接、シーム溶接等の電気抵抗溶接および電縫溶接に用いられる高周波抵抗溶接、高周波誘導溶接、レーザ溶接などの方法を用いることができる。
表1に示す成分組成を有するNo.1〜17の鋼を真空溶解炉で溶製し、鋳造して50kg鋼塊とし、鍛造して2分割した。その後、2分割した片方の鋼塊を、1170℃に加熱後、熱間圧延して板厚5mmの熱延板とし、1020℃の温度で熱延板焼鈍し、酸洗し、圧下率60%の冷間圧延し、1030℃の温度で仕上焼鈍し、平均冷却速度20℃/secで冷却し、酸洗して板厚が2mmの冷延焼鈍板とし、以下の引張試験および耐酸化性試験に供した。なお、参考として、表1のNo.18〜22に示したSUS444、Type429および特許文献2〜4の発明鋼についても、上記と同様にして冷延焼鈍板を作製し、同様の評価試験に供した。
<引張試験>
上記のようにして得た各種冷延焼鈍板から、L,DおよびCの各方向からJIS13号B引張試験片を3枚ずつ採取し、引張り試験を行い、3方向の降伏応力から平均降伏応力を算出して形状凍結性を評価した。なお、引張試験のn数は3とした。
<大気中連続酸化試験>
上記のようにして得た各種冷延焼鈍板から30mm×20mmのサンプルを切り出し、サンプル上部に4mmφの穴をあけ、表面および端面を#320のエメリー紙で研磨し、脱脂後、950℃に加熱保持された大気雰囲気の炉内に吊り下げて、300時間保持した。試験後、サンプルの質量を測定し、予め測定しておいた試験前の質量との差を求め、酸化増量(g/m2)を算出した。なお、試験は各2回実施し、その平均値で耐連続酸化性を評価した。
<大気中繰り返し酸化試験>
上記各種の冷延焼鈍板から30mm×20mmのサンプルを切り出し、サンプル上部に4mmφの穴をあけ、表面および端面を#320のエメリー紙で研磨し、脱脂後、大気雰囲気中で、100℃と950℃との間を昇温・降温を繰り返す酸化試験を行った。なお、昇温、降温速度はそれぞれ5℃/sec、1.5℃/secとし、保持時間は100℃が1min、950℃が25minとし、これを600サイクル行った。耐繰り返し酸化性の評価は、試験後のサンプルの質量を測定し、予め測定しておいた試験前の質量との差を求め、スケール剥離量(g/m2)を求めた。なお、試験は各2回実施し、その平均値で耐繰り返し酸化性を評価した。
上記のようにして得た各種冷延焼鈍板から、L,DおよびCの各方向からJIS13号B引張試験片を3枚ずつ採取し、引張り試験を行い、3方向の降伏応力から平均降伏応力を算出して形状凍結性を評価した。なお、引張試験のn数は3とした。
<大気中連続酸化試験>
上記のようにして得た各種冷延焼鈍板から30mm×20mmのサンプルを切り出し、サンプル上部に4mmφの穴をあけ、表面および端面を#320のエメリー紙で研磨し、脱脂後、950℃に加熱保持された大気雰囲気の炉内に吊り下げて、300時間保持した。試験後、サンプルの質量を測定し、予め測定しておいた試験前の質量との差を求め、酸化増量(g/m2)を算出した。なお、試験は各2回実施し、その平均値で耐連続酸化性を評価した。
<大気中繰り返し酸化試験>
上記各種の冷延焼鈍板から30mm×20mmのサンプルを切り出し、サンプル上部に4mmφの穴をあけ、表面および端面を#320のエメリー紙で研磨し、脱脂後、大気雰囲気中で、100℃と950℃との間を昇温・降温を繰り返す酸化試験を行った。なお、昇温、降温速度はそれぞれ5℃/sec、1.5℃/secとし、保持時間は100℃が1min、950℃が25minとし、これを600サイクル行った。耐繰り返し酸化性の評価は、試験後のサンプルの質量を測定し、予め測定しておいた試験前の質量との差を求め、スケール剥離量(g/m2)を求めた。なお、試験は各2回実施し、その平均値で耐繰り返し酸化性を評価した。
実施例1において2分割した50kg鋼塊の残りの鋼塊を、1170℃に加熱後、熱間圧延して厚さ:30mm×幅:150mmのシートバーとした。その後、このシートバーを鍛造し、35mm×35mmのバーとし、1030℃の温度で焼鈍後、機械加工し、図1に示した寸法の熱疲労試験片に加工し、下記の熱疲労試験に供した。なお、参考例として、実施例1と同様、SUS444、Type429および特許文献2〜4の発明鋼についても同様に試料を作製し、熱疲労試験に供した。
<熱疲労試験>
熱疲労試験は、拘束率0.35で、100℃と850℃の温度間を繰り返して昇温・降温し、熱疲労寿命を測定した。この際、昇温・降温速度は、それぞれ10℃/secとし、100℃での保持時間は2min、850℃での保持時間は5minとした。また、熱疲労寿命は、100℃において検出された荷重を試験片均熱平行部の断面積で割って応力を算出し、前のサイクルの応力に対して連続的に応力が低下し始めたときの最小のサイクル数とした。
熱疲労試験は、拘束率0.35で、100℃と850℃の温度間を繰り返して昇温・降温し、熱疲労寿命を測定した。この際、昇温・降温速度は、それぞれ10℃/secとし、100℃での保持時間は2min、850℃での保持時間は5minとした。また、熱疲労寿命は、100℃において検出された荷重を試験片均熱平行部の断面積で割って応力を算出し、前のサイクルの応力に対して連続的に応力が低下し始めたときの最小のサイクル数とした。
上記実施例1の引張試験、耐酸化性試験の結果および実施例2の耐熱疲労性試験の結果を表2にまとめて示した。表2から明らかなように、本発明に適合している発明例の鋼は、いずれもSUS444と同等以上の耐酸化特性と耐熱疲労特性を有していると共に、Type429と同等以上の形状凍結性を有しており、本発明の目標を満たしている。これに対して、本発明の範囲を外れる比較例の鋼あるいは先行技術の参考例の鋼は、耐酸化特性、耐熱疲労特性および形状凍結性のすべてが同時に優れるものはなく、本発明の目標とする特性が得られていない。
本発明の鋼は、自動車等の排気系部材用として好適であるだけでなく、同様の特性が要求される火力発電システムの排気系部材や固体酸化物タイプの燃料電池用部材としても好適に用いることができる。
Claims (2)
- C:0.015mass%以下、
Si:0.2mass%以下、
Mn:0.2mass%以下、
P:0.030mass%以下、
S:0.006mass%以下、
Cr:16〜20mass%以下、
N:0.015mass%以下、
Nb:0.3〜0.55mass%、
Ti:0.15mass%以下、
Mo:0.1mass%以下、
W:0.1mass%以下、
Cu:1.0〜1.8mass%、
Al:0.2〜0.6mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼。 - 上記の成分組成に加えてさらに、B:0.003mass%以下、REM:0.08mass%以下、Zr:0.5mass%以下、V:0.5mass%以下、Co:0.5mass%以下およびNi:0.5mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
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