JP5528780B2 - 成形同時転写用金型及び成形同時転写品の製造方法 - Google Patents
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境界部分1cが縁部に沿って大きな曲率で屈曲されると、境界部分1cが破れたり、境界部分1cの転写層14が基体フィルム15から剥離するなどの転写シート1の破損が起こり易くなり、成形同時転写品の成形品質が低下する。
特に、成形同時転写品の表面を硬くするための硬質の転写層や成形同時転写品の表面に耐磨耗性を付与するために厚さが厚い転写層などの曲げ剛性が高い転写層が設けられている転写シートを使用する場合は、一層、転写シートの破損が起こり易くなり、成形同時転写品の成形品質が低下するおそれが高くなる。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、成形同時転写品の成形品質が低下し難い成形同時転写用金型及び成形同時転写品の製造方法を提供することを目的とする。
型締めにより、前記転写シートとの間で樹脂充填用のキャビティを形成する第1金型と、前記転写シートが当接する凹状のキャビティ面、及び、当該キャビティ面の周囲にあって型締時に前記第1金型との間で転写シートを挟持する把持部を備えた第2金型と、前記型締時及び前記樹脂注入時に、前記転写シートを前記キャビティ面の側に吸引する吸引機構とを備え、
前記型締時の吸引に際し、前記転写シートのうち、前記キャビティ面に対向する対向領域と当該対向領域の周辺にあって前記把持部により挟持される把持領域との境界部分が、前記凹状のキャビティ面の縁部で過度に曲がるのを防止するよう、前記把持領域を前記縁部に対して前記第1金型の側に位置させる曲げ緩和部を前記第2金型の把持部に設けてある点にある。
したがって、転写シートが第2金型のキャビティ面の側に吸引されるにともなって境界部分が凹状のキャビティ面の縁部に強く押し付けられるおそれが少なくなり、当該境界部分が縁部に沿って大きな曲率で屈曲されるおそれが少ない。
よって、転写シートの破損が起こり難くなり、成形同時転写品の成形品質が低下し難い。
特に、曲げ剛性が高い転写層が設けられている転写シートを使用する場合でも、成形同時転写品の成形品質が低下し難い。
したがって、第1金型と第2金型との型締めを所望のタイミングで開始させ易い。
転写シートの温度が低くて境界部分の曲率が小さいときに突出部の引退速度を速くしてあると、転写シートの破損が起こり易い。
また、転写シートの温度が高くなって境界部分の曲率が大きくなっており、突出部の引退速度を速くしても境界部分の破損が起こり難くなっているときでも突出部の引退速度を遅くしてあると、成形に要する時間が長くなって能率良く成形することができない。
本構成であれば、このような場合に、転写シートの破損が生じないように、また、成形に要する時間が長くならないように、突出部の引退速度を調節することができる。
前記第2金型に、注入した樹脂によって前記転写シートを押し付ける凹状のキャビティ面と、当該キャビティ面の周囲にあって前記第1金型との型締めの際に前記転写シートを挟持する把持部とを備えると共に、前記把持部に、前記キャビティ面の縁部よりも前記第1金型の側に偏位した突出部を備えておき、
前記転写シートが有する、前記キャビティ面に対向する対向領域と、当該対向領域の周囲であって前記第1金型と前記第2金型とで挟持される把持領域とのうち、前記把持領域を前記突出部で受け止めつつ前記転写シートを前記第2金型の上に載置する載置工程と、
前記第2金型に設けた吸引機構によって、前記転写シートを前記第2金型の側に吸引する吸引工程と、
前記転写シートのうち、前記対向領域と前記把持領域との境界部分の曲がり状態を調節しつつ、前記第1金型と第2金型とを型締めする型締工程と、
前記転写シートと前記第1金型との間に樹脂を注入し、前記転写シートを前記キャビティ面に押付けて樹脂成形を行う注入工程とを有する点にある。
したがって、転写シートの破損が起こり難くなり、成形同時転写品の成形品質が低下し難い。
特に、曲げ剛性が高い転写層が設けられている転写シートを使用する場合でも、成形同時転写品の成形品質が低下し難い。
また、転写シートの性状はその温度に応じて変化するので、転写シートの温度に応じて境界部分の曲率も変化する。
転写シートの温度が低くて境界部分の曲率が小さいときに、第1金型と第2金型とを高速で互いに近接させて型締めを行うと、境界部分の破損が起こり易い。
転写シートの温度が高くなって境界部分の曲率が大きくなっており、第1金型と第2金型とを高速で互いに近接させて型締めを行っても境界部分の破損が起こり難くなっているときに、第1金型と第2金型とを低速で互いに近接させて型締めを行うと、成形に要する時間が長くなって能率良く成形することができない。
本構成であれば、型締工程において、転写シートのうち、対向領域と把持領域との境界部分の曲がり状態を調節しつつ型締めするので、このような場合に、転写シートの破損が生じないように、また、成形に要する時間が長くならないように、型締めすることができる。
したがって、転写シートの破損が一層生じ難いと共に、転写シートをキャビティ面に沿うように吸引し易くなり、成形同時転写品の成形品質が一層低下し難い。
図1〜図8は、本発明による成形同時転写用金型を備えた成形同時転写装置を示す。
つまり、図7,図8に示す成形同時転写品Bの裏面を成形する凸状の第1キャビティ面C1を備えた可動の第1金型A1と、転写シート1が当接して成形同時転写品Bの意匠面(表面)を成形する凹状の第2キャビティ面C2を備えた固定の第2金型A2とを備えている。
吸引機構10は、第2金型A2に形成してある吸引通路10aを例えば0.08Mpa以下に減圧するための真空ポンプなどを接続して構成されている。
具体的には、第2金型A2の把持部8に、当該把持部8に対して第1金型A1の側に出退可能に構成してある突出部材を設けて構成してあり、この突出部材12を縁部に対して第1金型A1の側に突出させて、把持領域1bを縁部に対して第1金型A1の側に位置させるように構成してある。
突出部剤12の引退速度は、空気圧シリンダ又は油圧シリンダの作動圧力を調節することにより調節することができる。
尚、突出部材12は、複数の軸部材であっても、第2キャビティ面C2を囲むように配置された枠状の部材であってもよい。
したがって、突出部材12は、基体フィルム15に接触して把持領域1bを第1金型A1の側に位置させる。
吸引機構10は、溶融樹脂4を射出し終えると吸引を停止し、成形同時転写品Bを取り出すと吸引を再開する。
転写シート1は、温調回路による第1金型A1と第2金型A2の加熱により間接的に加熱される。したがって、第1金型A1と第2金型A2とが、転写シート1を加熱する温度調節機として機能する。
本発明による製造方法は、第1金型A1と第2金型A2とで転写シート1を挟持しつつキャビティ3を形成し、第1金型A1と転写シート1の転写層14との間に溶融樹脂4を注入する。
尚、突出部材12とは別に、転写シート1の加熱具(図示せず)を第1金型A1と第2金型A2との間に入り込ませて、突出部材12からの伝導熱に加えて、その加熱具の熱で転写シート1を加熱してもよい。
突出部材12の引退速度は、対向領域1aと把持領域1bとの境界部分1cの曲がり状態に応じて調節してもよい。
転写シート1は、注入された溶融樹脂4の熱により更に加熱されると共に、溶融樹脂4の注入圧力で第2キャビティ面C2に押し付けられ、成形同時転写品Bが樹脂成形される。
1.本発明による成形同時転写用金型及び成形同時転写品の製造方法は、意匠面を形成するための転写層を積層してある転写シート以外の、例えば、成形同時転写品の表面を硬くするための硬質の転写層や成形同時転写品の表面に耐磨耗性を付与するために厚さが厚い転写層が剥離層を介して基材フィルムに積層してある転写シートを使用して、成形同時転写品を成形してもよい。
2.本発明による成形同時転写用金型及び成形同時転写品の製造方法は、曲げ緩和部を構成する突出部が、縁部に対して第1金型の側に突出するように、第2金型に一体に備えられていてもよい。
3.本発明による成形同時転写用金型及び成形同時転写品の製造方法は、曲げ緩和部を構成する突出部を吸引通路を備えた筒状に形成して、その吸引通路を通して転写シートを吸引してもよい。
1a 対向領域
1b 把持領域
1c 境界部分
3 キャビティ
4 樹脂
8 把持部
10 吸引機構
11 曲げ緩和部
12 突出部
A1 第1金型
A2 第2金型
C2 凹状のキャビティ面
Claims (4)
- 転写シートを挟持しつつ樹脂注入用のキャビティを形成可能な一対の金型を備えた成形同時転写用金型であって、
型締めにより、前記転写シートとの間で樹脂充填用のキャビティを形成する第1金型と、 前記転写シートが当接する凹状のキャビティ面、及び、当該キャビティ面の周囲にあって型締時に前記第1金型との間で転写シートを挟持する把持部を備えた第2金型と、
前記型締時及び前記樹脂注入時に、前記転写シートを前記キャビティ面の側に吸引する吸引機構と、
前記型締め時の吸引に際し、前記転写シートのうち、前記キャビティ面に対向する対向領域と当該対向領域の周辺にあって前記把持部により挟持される把持領域との境界部分が、前記凹状のキャビティ面の縁部で過度に曲がるのを防止するよう、前記把持領域を前記縁部に対して前記第1金型の側に位置させる、前記第2金型の把持部に設けられた突出部材とを備え、
前記突出部材は、前記転写シートの全幅に亘る長さの板状の金属からなり、その板面に沿った方向で前記把持部に対して前記第1金型の側に出退可能に構成され、先端面が突出方向に膨らんだ湾曲面に形成され、前記転写シートの把持領域を受け止めるときに前記転写シートを加熱する、成形同時転写用金型。 - 前記突出部の引退速度が調節可能に構成された、請求項1記載の成形同時転写用金型。
- 第1金型と第2金型とで転写シートを挟持しつつキャビティを形成し、前記第1金型と前記転写シートとの間に樹脂を注入する成形同時転写品の製造方法であって、
前記第2金型に、注入した樹脂によって前記転写シートを押し付ける凹状のキャビティ面と、当該キャビティ面の周囲にあって前記第1金型との型締めの際に前記転写シートを挟持する把持部とを備えると共に、前記転写シートの全幅に亘る長さの板状の金属からなり、その板面に沿った方向で前記把持部に対して前記第1金型の側に出退可能に構成され、先端面が突出方向に膨らんだ湾曲面に形成された突出部材を備え、
前記転写シートが有する、前記キャビティ面に対向する対向領域と、当該対向領域の周囲であって前記第1金型と前記第2金型とで挟持される把持領域とのうち、前記把持領域を、前記突出部材を前記把持部から前記第1金型の側に突出させて前記突出部材で受け止めつつ、前記突出部材で前記転写シートを加熱しながら、前記転写シートを前記第2金型の上に載置する載置工程と、
前記第2金型に設けた吸引機構によって、前記転写シートを前記第2金型の側に吸引する吸引工程と、
前記転写シートのうち、前記対向領域と前記把持領域との境界部分の曲がり状態を調節しつつ、前記第1金型と第2金型とを型締めする型締工程と、
前記転写シートと前記第1金型との間に樹脂を注入し、前記転写シートを前記キャビティ面に押付けて樹脂成形を行う注入工程とを備えた、成形同時転写品の製造方法。 - 前記第2金型に対する前記第1金型の型締動作に連動して前記突出部材を引退させる、請求項3記載の成形同時転写品の製造方法。
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