JP5528025B2 - Tg合成抑制剤 - Google Patents
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インスリン抵抗性は、糖尿病の原因の1つと考えられている。さらに、インスリン抵抗性及び糖尿病は、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、神経障害等を合併する原因となる上、高脂血症や高血圧を合併することにより、動脈硬化性疾患を発症するリスクが高まることが数多くの疫学的研究により示されている(非特許文献9及び10)。
以上のことから、一般に高脂血症、肥満、インスリン抵抗性及び糖尿病を予防及び/又は改善をすることは、健康な生活にとって重要なことであると考えられている。
11)。
以上のことから、DGAT活性を阻害することにより、高脂血症、肥満、インスリン抵抗性、及び糖尿病の予防・改善が可能となる。
一方、高脂血症、肥満、インスリン抵抗性及び糖尿病の予防・改善を目的としDGAT活性を阻害する物質の探索が行われ、DGAT活性を阻害する食品素材として、これまでに柑橘類に多く含まれるフラボノイド、タンゲレチンがヒト肝臓由来HepG2細胞のDGAT活性を阻害することが報告されている(非特許文献16)。
また、ミカン科の植物ゴシュユ(呉茱萸、Evodia rutaecarpa)の果実に含まれるキノ
ロンアルカロイドにも、DGAT阻害作用があると報告されている(非特許文献17)。しかしながら、これまでに見出されている食品素材は、その効果の面で十分満足のいくものではない。
しかしながら、ルゴシン、イソルゴシン、ユースピニン等の分子内に下記式で示される部分構造を有するエラジタンニン又はその誘導体に、高脂血症、肥満、インスリン抵抗性、及び糖尿病の予防又は改善作用があること、或いはDGAT阻害作用やTG合成抑制作用があることはこれまでに知られていない。
1)分子内に式(1)
2)分子内に前記式(1)で表される部分構造及びグルコース残基を有し、当該グルコース残基の4位と6位に式(1)で表される部分構造のヘキサヒドロジフェノイル基部分が置換したエラジタンニン又はその誘導体を有効成分とする高脂血症予防又は改善剤。
3)分子内に前記式(1)で表される部分構造及びグルコース残基を有し、当該グルコース残基の4位と6位に式(1)で表される部分構造のヘキサヒドロジフェノイル基部分が置換したエラジタンニン又はその誘導体を有効成分とする肥満予防又は改善剤。
4)分子内に式(1)で表される部分構造及びグルコース残基を有し、当該グルコース残基の4位と6位に式(1)で表される部分構造のヘキサヒドロジフェノイル基部分が置換したエラジタンニン又はその誘導体を有効成分とするインスリン抵抗性予防又は改善剤。
5)分子内に式(1)で表される部分構造及びグルコース残基を有し、当該グルコース残基の4位と6位に式(1)で表される部分構造のヘキサヒドロジフェノイル基部分が置換したエラジタンニン又はその誘導体を有効成分とする糖尿病予防又は改善剤。
また、エラジタンニンについても、式(1)で表される部分構造及びグルコース残基を有し、当該グルコース残基の4位と6位に上記式(1)で表される部分構造のヘキサヒドロジフェノイル基部分が置換したものが好ましい。
式(2)中、R2及びR3は、同一又は異なって水素原子又はガロイル基で表すか、又は一緒になってヘキサヒドロキシジフェノイル基を表す。
式(2)中、R4は、
式(2)中、nは0又は1を表す。
例えば、ルゴシンとしては、ハマナス(Rosa rugosa)やピンクローズ(Rosa centifolia)の果実或いは花弁から抽出、又はその抽出物を濃縮もしくは精製したものを使用することができ、ユースピニンとしては、コニシキソウ(Euphorbia supina)の全草やピンクローズ(Rosa centifolia)の果実或いは花弁から抽出、又はその抽出物を濃縮もしくは精製したものを使用することができる。
これら抽出溶剤うち、水及び/又は水溶性有機溶剤を用いるのが好ましく、更に、水、エタノール、水・エタノール混液、アセトン又は水・アセトン混液を用いるのがより好ましく、水・エタノール混液又は水・アセトン混液を用いるのがより好ましい。混液中のエタノール又はアセトン濃度は、20〜80容量%、より30〜70容量%、更に40〜60容量%であるのが好ましい。
また、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。
抽出は、例えば、所望のエラジタンニン又はその誘導体を含有する植物体1重量部に対して1〜50重量部の溶剤を用い、常温(4℃)〜溶媒の沸点の範囲、更に4〜70℃の範囲で30分〜15日間、更に2時間〜10日浸漬又は加熱還流するのが好ましい。抽出物の分離精製手段としては、例えば、抽出物を活性炭処理、液々分配、カラムクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー、ゲル濾過、精密蒸留等を挙げることができる。
クロマトグラフィーに用いる固定相としては、例えば、強・弱酸性イオン交換樹脂又は強・弱塩基性イオン交換樹脂;オクタデシル化シリカゲル、オクチル化シリカゲル、ブチル化シリカゲル、トリメチルシリル化シリカゲル等の逆相樹脂;シリカゲル、フロリジール、アルミナ等の順相樹脂;スチレン−ジビニルベンゼン系、メタクリル酸エステル系等の芳香族系合成樹脂;修飾デキストラン系(例えば、Sephadex(登録商標) LH−20等)、親水性ビニルポリマー系(例えば、トヨパール HW−40等)等のゲルろ過クロマトグラフィー用充填剤;活性炭等が挙げられるが、このうち、逆相樹脂及び芳香族系合成樹脂等が好ましい。
ピンクローズ(花弁)から、水・エタノール混液(好ましくは、エタノール濃度が40〜60容量%)を用いて、水・エタノール抽出物を得る。この水・エタノール抽出物を水/ヘキサン溶剤(好ましくは、水:ヘキサン(容量比)=1:3〜3:1)で液液分液した後、水層を分取する。この水層にブタノールを加え、水/ブタノール溶剤(好ましくは、水:ブタノール(容量比)=1:3〜3:1)で液液分液した後、ブタノール層を分取する。このブタノール層を、芳香族系合成樹脂を用いたクロマトグラフィー(好ましくは、スチレン−ジビニルベンゼン系の芳香族系合成樹脂)に付し、低濃度エタノール水混液(好ましくは、エタノール濃度10〜30容量%)で溶出し、低濃度エタノール溶出画分を得る。更に、この低濃度エタノール溶出画分をゲルろ過クロマトグラフィー(好ましくは、修飾デキストラン系充填剤)に付し、メタノール水混液(好ましくは、メタノール濃度40〜60容量%)で洗浄後、エタノール、次いでエタノール/アセトン混液(好ましくは、エタノール:アセトン(容量比)=1:3〜3:1)で溶出して、ルゴシンBを含み、これを活性主成分とするエタノール画分;ルゴシンA、ルゴシンD及びユースピニンAを含み、これらを活性主成分とするエタノール/アセトン画分を得る。このエタノール画分及びエタノール/アセトン画分をそれぞれ逆相樹脂を用いたクロマトグラフィー(好ましくは、オクタデシル化シリカゲル逆相樹脂)に付し、トリフルオロ酢酸水溶液・アセトニトリル混液中のアセトニトリルの濃度を1段階以上勾配させて溶出し、エタノール画分からルゴシンBを、エタノール/アセトン画分からルゴシンA、ルゴシンD及びユースピニンAを、それぞれ単離する。
尚、飼料を製造する場合には、DGAT阻害剤を単独で、又はこの他に、牛、豚、羊等の肉類、蛋白質、穀物類、ぬか類、粕類、糖類、野菜、ビタミン類、ミネラル類等一般に用いられる飼料原料、更に一般的に飼料に使用されるゲル化剤、保型剤、pH調整剤、調味料、防腐剤、栄養補強剤等を必要に応じて配合し、常法により当該飼料を加工製造することがきできる。
また、飼料中におけるエラジタンニン又はその誘導体の含有量は、その使用形態により異なるが、通常、0.01〜20質量%であり、0.02〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
ルゴシンについては、ピンクローズ(Rosa centifolia)の花弁600gを、20倍量
(12リットル)の50容量%((以下、「容量%」を「%」とする))エタノールに常温で14日間浸漬し、不溶物を濾別後、減圧濃縮し抽出物を得た(固形分260g)。得られた抽出物をヘキサン/水系にて液々分配し、得られた水層をブタノールで液々抽出した。減圧濃縮し得られたブタノール抽出物(51g)を、ダイヤイオン(登録商標)HP−20(スチレン−ジビニルベンゼン系芳香族合成吸着剤)に吸着させ、20%エタノールで溶出した。得られた溶出画分を減圧濃縮、凍結乾燥し乾燥物とした。さらに、この乾燥物22gを50%メタノールに溶解し、セファデックス(登録商標)LH−20を用いたゲル濾過クロマトグラフィーに吸着させた。50%メタノールで洗浄した後、99.5%エタノール、エタノール/アセトン(1:1)で溶出した。各溶出画分を減圧濃縮、凍結乾燥し、99.5%エタノール画分(固形分4g)、エタノール/アセトン画分(固形分6.6g)を得た。
得られた99.5%エタノール画分の内、120mgを用い、さらにHPLCにより分画することにより、ルゴシンB(4.3mg)を得た。分画条件は次の通り。
カラム:Inertsil ODS−3(20x250mm、GLサイエンス)
溶媒:A液 0.5%トリフルオロ酢酸、B液 アセトニトリル
A/B=87/13→(30分)→87/13→(20分)→50/50
温度:40℃、流速:20mL/分、検出:UV=258nm
また、得られたエタノール/アセトン画分の内、300mgを用い、さらにHPLCにより分画することにより、ルゴシンA(70mg),ルゴシンD(59mg)、ユースピニンA(21mg)を得た。分画条件は次の通り。
カラム:Inertsil ODS−3(20x250mm、GLサイエンス)
溶媒:A液 0.5%トリフルオロ酢酸、B液 アセトニトリル
A/B=84/16→(30分)→84/16→(5分)→50/50
温度:40℃、流速:20mL/分、検出:UV=258nm
なお、これらについて、NMR分析(JEOL−500 spectrometer; 日本電子(株))を行なったところ、これらは文献に記されたルゴシンA、ルゴシンB(非特許文献8)、ルゴシンD(非特許文献9)、ユースピニンA(非特許文献11)のシグナルと一致した。
被験物質として、上記製造例1で調製されたルゴシンA、ルゴシンB、ルゴシンD、及びユースピニンAと、EGCG(エピガロカテキンガレート:入手先 長良サイエンス(株))を用いた。
マウス肝臓より、ミクロソーム画分を下記の様に調製し、DGAT活性測定に使用した。C57BL/6Jマウス(雄性、6週齢)の肝臓をショ糖緩衝液(250mM ショ糖,1mM EDTA,10mM Tris−HCl(pH7.5))中でホモジナイズし、4℃、12,500×g、15分間遠心し上清を回収した。上清をさらに4℃、100,000×g、60分間遠心し、沈殿をショ糖緩衝液に再懸濁し、肝臓ミクロソーム画分として使用した。
50μgの肝臓ミクロソーム画分を、表1中に示した濃度の被験物質を含む200μLのDGAT活性測定緩衝液(250mM ショ糖,10mM Tris−HCl(pH7.5),10 mM MgCl2,0.8mM EDTA,0.1%牛血清アルブミン,100μM oleoyl−CoA(0.05μCi/200μL、55mCi/mmol),1.2mM 1,2−diolein)中で、37℃、20分間インキュベートした。1.5mLのクロロホルム/メタノール(1:1)(体積比)を添加することで反応を止めた。次に、250μLのPBSを加えて攪拌し、遠心分離により水層と油層に分離(脂質抽出)した。下層であるクロロホルム層を回収し、窒素ガスで乾燥、クロロホルムに再溶解した。
クロロホルムに溶解した脂質の一部を液体シンチレーションカウンターに供し、放射活性を測定した。約2000dpmの抽出脂質の一部をHPTLCプレート(20×10 cm Silica gel 60,Merk)を用いて分画した。展開溶媒には、ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(80:20:1)(体積比)を使用した。BAS2500(富士フィルム)を用いてフルオログラフィー及び定量解析を行った。抽出脂質に取り込まれた総放射活性に対するTGに取り込まれた放射活性の割合をDGAT活性とした。
各被験物質の存在下でのDGAT活性を、表1に示す。DGAT活性は、溶媒コントロールのDGAT活性を100とした相対値で表す。
表1に示される様に、ルゴシンA、ルゴシンB、ルゴシンD及びユースピニンAは、DGAT活性に対し有意な阻害を示した。一方、比較対照としたエピガロカテキンガレート(EGCG)は、DGAT活性に対し阻害作用を示さなかった。
この様に、エラジタンニン又はその誘導体はDGAT活性について優れた阻害作用を示すことから、TG合成抑制剤、高脂血症予防改善剤、肥満予防改善剤、インスリン抵抗性予防改善剤、及び糖尿病予防改善剤として有用であると考えられる。
被験物質として、実施例1と同じものを使用した。
実施例1と同様に調製したマウス肝臓ミクロソーム画分を用いて、グルコース6リン酸脱リン酸化酵素(G6Pase)活性測定、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素A(HMG−CoA)還元酵素活性の測定を行った。
G6Pase活性測定は、マウス肝臓ミクロソーム画分(50μg)を、表中に示した濃度の被験物質の存在下で、100μLの反応液(50mM HEPES緩衝液 (pH7.2)、100mM KCl、2.5mM EDTA、2.5mM MgCl2、1m
M DTT、10mM グルコース6リン酸、2mM EDTA)中で37℃、30分間インキュベートした。次に、400μLの反応停止液(0.42% ammononium molybdate tetrahydrate in 1N H2SO4、10%S
DS、10%アスコルビン酸6:2:1 混合液)(体積比)を添加し、50℃、30分間インキュベートした。生じた青色色素を吸光度測定(OD820)し、無機リン酸溶液を
用いて作製した標準曲線より、生じたリン酸濃度を算出することによりG6Pase活性を算出した。
HMG−CoA還元酵素活性は、マウス肝臓ミクロソーム画分(50μg)を、表中に示した濃度の被験物質の存在下で、14C標識HMG−CoAを含む反応液(0.128mM HMG−CoA(14C−HMG−CoA,72MBq/mmol),1mM NADPH、10mM DTT、10mM EDTA in 0.12 mM phosphate buffer(pH7.2))中で、37℃、30分間インキュベートした。次に、10分の1容量(20μL)の5N HClを添加し、さらに30分間インキュベート(酸性処理)した。内部標準として4−14C−testosterone(0.08nCi)を加えた後、酸性処理によりHMG−CoAの反応産物メバロン酸から変換、生成するメバロノラクトンを等量の酢酸エチルで抽出した。抽出物の一部を展開溶媒には、ベンゼン−アセトン(1:1)(体積比)を用いてTLC分画した。BAS2500を用いてフルオログラフィー及び定量解析を行い、メバロノラクトンに含まれる放射活性よりHMG−CoA還元酵素活性を算出した。
各被験物質の存在下でのHMG−CoA還元酵素活性、及びG6Pase活性を、それぞれ、表2及び表3に示す。これら酵素活性は、溶媒コントロールの酵素活性を100とした相対値で表す。
表2及び表3に示される様に、いずれのDOG型エラジタンニン又はその誘導体もHMG−CoA還元酵素活性、及びG6Pase活性に対して阻害作用を示さなかった。
この様に、エラジタンニン又はその誘導体はDGAT活性について優れた阻害作用を示す一方で、その他の酵素活性には阻害作用を示さないことから、DGAT活性に対する特異性が高い化合物であることが示された。このことは、エラジタンニン又はその誘導体が副作用の少ない化合物であることを意味するものと考えることができる。
下記の成分を混合後ゼラチンカプセルに充填し、1錠250mgの軟カプセル剤を得た。
(組成) (%)
ルゴシンB 2.5
大豆レシチン 10
菜種油 87.5
下記の成分を混合後ゼラチンカプセルに充填し、1錠250mgの軟カプセル剤を得た。
(組成) (%)
ルゴシンB 0.5
ユースピニンA 2.5
大豆レシチン 10
紅花油 87
下記成分を用い、常法に従って1錠200mgの錠剤を製造した。
(組成) (%)
ルゴシンD、又はユースピニンA 2.5
ヒドロキシプロピルセルロース 45.5
軽質無水ケイ酸 5
乳糖 13
結晶セルロース 13
タルク 13
ジアシルグリセロール 8
下記成分を用い、常法に従って1錠200mgの錠剤を製造した。
(組成) (%)
ルゴシンB又はユースピニンA 5
デンプン 90
ステアリン酸マグネシウム 5
緑茶葉30gを65℃の水1000mLで5分間抽出、ろ別することにより緑茶液を得
た。この緑茶液を用いて下記組成物を混合した後、重曹を用いてpH6.0に調整し、肥満・糖尿病予防・改善用緑茶飲料を製造した。
(組成)
ルゴシンB 50mg
ビタミンC 1000mg
緑茶液 1000mL
下記組成物を混合し、肥満・糖尿病予防・改善用果汁飲料を製造した。
(組成)
ルゴシンB 50mg
ビタミンC 500mg
レモン果汁 5mL
炭酸水 475mL
香料 若干量
アスパルテーム 5g
下記組成物を打錠し、1錠1000mgのチュアブルタイプのタブレット食品を製造した。
(組成) (%)
ユースピニンA 2.5
麦芽糖 11
乳糖 30
ブドウ糖 15
ビタミンC 20
ビタミンE 1
セルロース 10
キシリトール 10
香料 0.5
Claims (3)
- ルゴシンA、ルゴシンB、ルゴシンD及びユースピニンAから選ばれる1種以上を有効成分とするTG合成抑制剤。
- ルゴシンA、ルゴシンB、ルゴシンD及びユースピニンAから選ばれる1種以上を有効成分とする高脂血症予防又は改善剤。
- ルゴシンA、ルゴシンB、ルゴシンD及びユースピニンAから選ばれる1種以上を有効成分とする肥満予防又は改善剤。
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