JP5524877B2 - アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜系太陽電池基板やプリント配線基板として好適に用いられる高温強度および耐電圧特性に優れたアルミニウム合金板およびその製造方法に関する。
太陽電池は、(1)単結晶Si太陽電池、(2)多結晶Si太陽電池、(3)薄膜系太陽電池の3種に大別される。Siウエハーを基板とする単結晶Si太陽電池および多結晶Si太陽電池に対し、薄膜系太陽電池は、ガラス基板、金属基板、樹脂基板といった多様な基板を用い、これらの基板上に薄膜の光吸収層を形成したものである。
前記光吸収層としては、アモルファスSiやナノ結晶SiのSi系薄膜、CdS/CdTe、CIS(Cu−In−Se)、CIGS(Cu−In−Ga−Se)等の化合物系薄膜が用いられる。また、可撓性を有する基板を用いることにより、基板をロールに巻き取りながら絶縁層や薄膜を形成するロール・ツー・ロール方式でフレキシブルな太陽電池セルを連続生産することが可能である。
薄膜系太陽電池用基板としてはガラス基板が主に使用されている。但し、ガラス基板は割れやすく取り扱いに十分な注意が必要であると共に、フレキシブル性に欠ける欠点があった。最近では住宅等の建造物用の電力供給源として太陽電池が注目を集めており、十分な供給電力を確保する上で太陽電池の大型化・大面積化・軽量化が望まれている。そのため、割れにくくフレキシブルであり、軽量化を図ることのできる基板材料として、樹脂板やアルミニウム合金板、Feなどの板にアルミニウムをクラッドした基板などが提案されている。
光吸収層として上記化合物系薄膜を形成するには、基板上に化合物を配置し、化合物の種類に応じて350〜650℃で焼結する。例えば、連続生産においてCIGS層を形成するには、350〜600℃、4〜20m/分のライン速度で焼結することが好ましく、この温度に耐える基板材料が望ましい。
しかし、アルミニウム基板では高温強度が不足して形状保持が困難であるため、焼結温度を下げる必要がある。
高温強度の高いアルミニウム合金としては、FeやMnを添加した合金が知られている。特許文献1は、高温強度に優れた薄膜系太陽電池基板用途に、Si:0.25〜0.35質量%、Fe:0.05〜0.3質量%、Cu:0.3〜0.5質量%、Mn:1.2〜1.8質量%、Sc:0.05〜0.4質量%、Zr:0.05〜0.2質量%を含有し、残部がAlおよび不純物からなることを特徴とし、さらにV:0.05〜0.2質量%、Sc濃度が0.07〜0.15質量%、Zr濃度が0.07〜0.1質量%、V濃度が0.07〜0.1質量%であるアルミニウム合金が提案されている。特許文献1には、絶縁層の材料はアルカリ金属を含む絶縁材料との記載があるがアルミニウムの陽極酸化皮膜の記載はない。
各元素の添加意義および濃度の限定理由については下記のように述べている。(特許文献1の26段落〜32段落)
「Siは、鋳造時に鋳造性を向上させるために添加する元素であり、その濃度を0.2〜0.45質量%とする。0.2質量%未満では前記効果が乏しい。一方、0.45質量%を超えても材料特性を低下させることはないものの、コスト高となり経済性の点で不利である。特に好ましいSi濃度は0.25〜0.35質量%である。
Feは、結晶粒を微細化して高温領域における強度および耐軟化性の向上に寄与する元素であり、その濃度を0.05〜0.3質量%とする。0.05質量%未満では前記効果が乏しく、0.3質量%を超えるとAl−Mn−Fe系の粗大晶出物を形成するため、やはり強度向上効果が乏しくなる。特に好ましいFe濃度は0.1〜0.2質量%である。
Cuは、固溶強化作用により高温領域における強度および耐軟化性の向上に寄与する元素であり、その濃度を0.3〜0.5質量%とする。0.3質量%未満では前記効果に乏しく、0.5質量%を超えると耐食性が低下するために好ましくない。特に好ましいCu濃度は0.4〜0.5質量%である。
Mnは、アルミニウムならびにアルミニウム中に含有されるSi、Feと微細な金属間化合物を形成することにより再結晶温度を高め、ひいては高温領域における強度および耐軟化性の向上に寄与する元素であり、その濃度を1.2〜1.8質量%とする。1.2質量%未満では前記効果に乏しく、1.8質量%超えると耐食性が低下するおそれがある。特に好ましいMn濃度は1.4〜1.6質量%である。
Scは、単独で再結晶抑制効果により高温領域における強度および耐軟化性を向上させる効果がある。さらに、固溶ScおよびL12構造を持つAl3Scが形成されることにより、これらが強化相となって高温領域における強度および耐軟化性を向上させる効果がある。Sc濃度は、0.05質量%未満では前記効果が乏しく、0.4質量%を超えると加工性が低下するおそれがあるため、0.05〜0.4質量%とする。特に好ましいSc濃度は0.07〜0.15質量%である。
Zrは、Al3ScのScと置換することができる元素であり、Al3ZrはAl3Scと同様に強化相となって高温領域における耐軟化性を向上させる効果がある。0.05質量%未満では前記効果に乏しく、0.2質量%を超えると粗大な晶出物の形成により強度向上効果が小さくなるため、0、05〜0.2質量%とする。特に好ましいZr濃度は0.07〜0.1質量%である。
Vは、再結晶温度を高め、ひいては高温領域における強度および耐軟化性の向上に寄与する元素であり、その濃度を0.05〜0.2質量%とする。0.05質量%未満では前記効果に乏しく、0.2質量%を超えると加工性に悪影響を及ぼす。特に好ましいV濃度は0.07〜0.1質量%である。」
また、特許文献2にはアルミニウム合金を用いた太陽電池用フレキシブル基板上に設けた陽極酸化皮膜層の機械的強度を上げる方法として、陽極酸化皮膜のマイクロポア形状を特定したものが提案されている。その内容はアルミニウム基材表面にポアを有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金製絶縁材料であって、上記陽極酸化皮膜の厚さが0.5μm以上であると共に、前記陽極酸化皮膜中に上記ポアの軸心と略直角方向に延設された複数の空孔を有するものである。
また特許文献2には、13段落に、以下のような記述がされている。
「基材合金は1000系,3000系,5000系,6000系等のAl合金が適用でき、陽極酸化処理浴としてはシュウ酸浴又は硫酸浴等が適用できるが、合金と処理条件によって陽極酸化皮膜の内部構造が異なり、その結果として、種々の耐電圧が得られる。例えば、耐電圧2kVが要求される太陽電池基板には、Mnを含有する3000系合金を用いるか、或いはMgおよびSiを含有する6000系合金等のAl合金を用いて、2〜4%のシュウ酸を含む処理液で30〜90Vの陽極酸化処理を行うことにより厚さ45〜70μmの絶縁層を形成したものを採用することが推奨される。尚、要求される耐電圧が1kV程度の場合には、同様の処理方法により絶縁層厚さを10〜30μmとしたものを用いてもよい。更に、3000系や6000系以外のAl合金やシュウ酸以外の処理液を用いても、交流重畳や電流反転等電解条件との組み合わせによっては図1のような内部構造を有する陽極酸化皮膜を得ることが可能である。」
即ち、種々のアルミが使用されると記載がなされている。
さらに陽極酸化処理後にポアおよび・または空孔にSi酸化物を充填した構造にすることによって、より高い耐電圧を実現可能であることが記載されている。
また、特許文献3にはフレキシブル太陽電池の製造に適した被膜付き金属材料に関し、また、金属酸化物被膜付き金属ストリップ(帯、strip)製品を多段ロールプロセス(roll-to-roll process)により製造する方法が記載されている。また、特許文献3は、下地となる金属ストリップについて重要な点の一つは、堆積した金属酸化物層の剥離や割れを防止するために、熱膨張係数(TEC)が低いことである。したがって、金属ストリップの熱膨張係数は温度範囲0〜600℃において12×10−6( /℃)未満であることが望ましいと開示している。また、これを満たす材料としては、フェライト・クロム鋼、チタン、数種類のニッケル合金などがあると開示している。
特開2008−81794号公報 特開2000−349320号公報 特表2007−502536号公報
薄膜系太陽電池において、光吸収層として化合物系薄膜を形成するには、基板上に化合物を配置し、化合物の種類に応じて350〜650℃で焼結する。例えば、連続生産においてCIGS層を形成するには、350〜600℃、1〜30m・分のライン速度で焼結することが好ましく、この温度に耐える基板材料が望ましい。
しかし、アルミニウム基板では高温強度が不足して形状保持が困難であるため、焼結温度を下げる必要がある。特許文献1は高温強度の高いアルミニウム合金で、薄膜用太陽電池基板用のアルミニウムとしてFeやMnを添加した合金を開示しているが、これらの元素は固溶しにくく、アルミニウムと金属間化合物を生成しやすい。その結果、例え、引用文献1に記載のアルミニウム合金を陽極酸化して絶縁層を形成することが想起できたとしても、これら金属間化合物が陽極酸化皮膜の欠陥となって耐絶縁性を低下させるという問題点が起こる。そのため、陽極酸化皮膜の厚さを厚くすることが考えられる。このような材料は耐熱性は良好だが、陽極酸化皮膜を設けた場合の絶縁性が非常に低い。その理由は特許文献1が必要と記載している元素の内、Mn,Fe,Si,Zr,Scは金属間化合物を作るため陽極酸化をおこなった際に皮膜の欠陥が非常に多く発生する為である。これは、特許文献1が陽極酸化皮膜を絶縁性皮膜として使用することを全く考慮していない為である。
また特許文献1はCuについて「固溶強化作用により高温領域における強度および耐軟化性の向上に寄与する元素であり、その濃度を0.3〜0.5質量%とする。0.3質量%未満では前記効果に乏しく、0.5質量%を超えると耐食性が低下するために好ましくない。特に好ましいCu濃度は0.4〜0.5質量%である。」と記述している。しかし、このCu量では、高温加熱の工程を経た場合の陽極酸化皮膜の割れ防止、CIGSを設けた場合の剥離防止の効果を全く示せなかった。
また、アルミニウム板の強度を上げる方法として、均熱処理および・または中間焼鈍処理を省略してアルミニウムの再結晶がおこなわれにくくし、更に、冷間圧延工程での圧下率を高くして、加工硬化によりアルミニウム板の強度を上げる方法も知られているが、所望の板厚にするまでの冷間圧延の回数を増やす必要があり、圧延途中でのキズの発生やゴミ付きなどの問題があり、好ましくなかった。
更に加えて、アルミニウム基板に陽極酸化皮膜をもうけた場合、アルミニウム、アルミ陽極酸化皮膜、CIGS層の熱膨張係数が異なるために、加熱工程を経た際に、層と層の間で熱膨張差に起因するクラックが発生しやすい問題があった。これはアルミニウムの熱膨張係数が一般に23×10−6から19×10−6( /℃)であるのに対し、陽極酸化皮膜や、CIGS層の熱膨張係数が小さい為である。そのためこの問題を解決する必要があった。
また、前記特許文献2が示すアルミ材は陽極酸化皮膜を設けて絶縁性を評価すると、絶縁性が非常に劣る不具合があった。特に、CIGSを付与するための高温の処理を経ることで、陽極酸化皮膜にクラックが生じる、有害な不純物元素が拡散する等が起こるため、加熱後は絶縁性能が大きく低下する不具合があった。更にCIGSとの熱膨張係数の差が大きいため、CIGS層が剥離するような問題も発生した。特に3004材や6061材等は不純物元素が多い材料であるため、陽極酸化皮膜中に金属間化合物が多く含まれ、陽極酸化皮膜中の欠陥になりやすく、高温加熱の工程に耐えない結果であった。1050材は比較的Al純度が高い材料であるが、Fe、Si等の金属間化合物を含むため、絶縁性が劣る結果であった。なお、特許文献2の表1をみても、比較的純度の高い1050材が優れていることを示唆するデータは全く無い。
特許文献3は、CIGS層の熱膨張係数と近づけるため、金属ストリップの熱膨張係数は温度範囲0〜600℃において12×10−6( /℃)未満であることが望ましいと開示している。また、これを満たす材料としては、フェライト・クロム鋼、チタン、数種類のニッケル合金などがあると開示している。
また、絶縁層を設ける方法については、金属ストリップを、EB蒸着チャンバを通すことで単層、あるいは多層の絶縁性酸化層を設けることを開示している。
しかし、この方法は、絶縁膜を形成するために、高速生産性がない方法であり、製造効率が非常に低い方法であった。これは特許文献3がフェライト・クロム鋼、チタン、数種類のニッケル合金といった導電性を持つ金属板に、別種の絶縁層を設ける必要があるためである。
本発明者らは、薄膜系太陽電池基板やプリント配線基板として好適な高温強度に優れ、金属間化合物が陽極酸化皮膜の欠陥とならないアルミニウム合金成分を見出した。このアルミニウム合金板の表面に絶縁性を有するアルミニウム酸化膜を設ければ、優れた絶縁性能と耐電圧性を有し、耐高温強度に優れるとともに、陽極酸化皮膜を設け、その後加熱を伴う工程を経ても、クラック発生を起こさないようなアルミニウム合金基板が得られることを知見し本発明を完成した。
本発明は、高温強度および耐電圧特性に優れた陽極酸化皮膜を設けることができるアルミニウム合金板、およびその製造方法の提供を目的とする。
本発明のアルミニウム合金板およびその製造方法は、以下の構成を有する。
(1)銅を0.6〜3.0質量%含有し、残部がアルミニウムおよびその他元素よりなり、アルミニウムと銅以外の不可避不純物を含むその他元素が0.1質量%以下である絶縁性基板用アルミニウム合金板。
(2)銅を0.6〜3.0質量%含有し、残部がアルミニウムおよびその他元素よりなり、アルミニウムと銅以外の不可避不純物を含むその他元素が0.1質量%以下である太陽電池用絶縁基板用アルミニウム合金板。
(3)前記アルミニウム合金板が、ストリップであり、連続してコイル状に巻くことができる上記(1)または(2)に記載のアルミニウム合金板。
(4)銅を0.6〜3.0質量%含有し、残部がアルミニウムおよびその他元素よりなり、アルミニウムと銅以外の不可避不純物を含むその他元素が0.1質量%以下である組成を有するアルミニウム合金を溶製し、鋳造、熱間圧延、冷間圧延を行う上記(1)〜(3)のいずれかに記載のアルミニウム合金板の製造方法。
(5)前記冷間圧延の途中または冷間圧延後に熱処理を行う上記(4)に記載のアルミニウム合金板の製造方法。
(6)前記冷間圧延終了後に、前記熱処理を行う上記(5)に記載のアルミニウム合金板の製造方法。
(7)銅を0.6〜3.0質量%含有し、残部がアルミニウムおよびその他元素よりなり、アルミニウムと銅以外の不可避不純物を含むその他元素が0.1質量%以下であるアルミニウム合金板の少なくとも一つの表面を陽極酸化処理して得られる絶縁被膜付アルミニウム合金板。
(8)上記(7)の絶縁被膜付アルミニウム合金板よりなる絶縁基板または太陽電池用絶縁基板。
本発明のアルミニウム合金板は絶縁性能と耐電圧性を有し、耐高温強度に優れる。本発明のアルミニウム合金板はフレキシブルな薄膜系太陽電池をロール・ツー・ロール方式で効率良く生産することができる。
例えば特許文献1で開示しているアルミニウム基板に、例え、陽極酸化皮膜を絶縁層として設けたと仮定しても、陽極酸化皮膜の欠陥が多く、絶縁性が非常に劣る欠点、特に陽極酸化皮膜形成後加熱を行う際に陽極酸化皮膜に欠陥が生じやすい欠点、CIGSなどの光吸収層を設ける際に、光吸収層の剥離が起こりやすい欠点を本発明は解消することができる。特許文献2では陽極酸化皮膜を設けることが記載されているが、特許文献2に記載の通常汎用されるアルミニウム材料を用いれば、特許文献1と同様の問題が起こる欠点を本発明は解消できる。
また、特許文献3が持つ、製造効率の悪さ、及び絶縁層と金属板が全く異なる異種材料であることに起因する、絶縁層の剥離が起こりやすい欠点を本発明は解消し、高い連続生産性を実現することができる。
図1は本発明の陽極酸化処理および電気化学的な封孔処理に用いることができる装置の一例を示す模式図である。 本発明の基板を用いることが可能な薄膜系太陽電池の一般的な構成の一例を示す断面図である。
[1.アルミニウム合金板]
本発明のアルミニウム合金板は、銅を0.6〜3.0質量%含有し、残部がアルミニウムおよびその他元素よりなり、アルミニウムと銅以外の不可避不純物を含むその他元素が0.1%以下である絶縁性基板用アルミニウム合金板である。
ここで、絶縁性基板用アルミニウム合金板とは、アルミニウム合金板に絶縁層を設けてプリント配線等の基板に用いる用途に特に適しているアルミニウム合金板をいう。同様に太陽電池用絶縁基板用アルミニウム合金板とは、アルミニウム合金板に絶縁層を設けて太陽電池の基板に用いる用途に特に適しているアルミニウム合金板をいう。
以下の説明では、アルミニウム合金板を合金板またはアルミニウム板ということがある。また、%は特に断らない限り質量%である。
<アルミニウム>
本発明のアルミニウム合金板の材料であるアルミニウム合金材は、銅を0.6〜3.0質量%含有し、残部がアルミニウムおよびその他元素よりなり、アルミニウムと銅以外の不純物を含むその他元素が0.1質量%以下である。アルミニウム合金板の形状は特に限定されないが、素子を載置する窪みや凸部を持つ形状であってもよい。太陽電池の基板に用いる場合は主として板材であり、以下の説明では、アルミニウム合金板で説明し、アルミニウム板ということがある。
本発明に用いるアルミニウム合金材は、アルミと銅以外の元素を極力少なくすることが必要である。従ってアルミニウムは原材料として、99.9%以上の原料を使用することが必要である。好ましくは99.93%以上、更に好ましくは99.96%以上。それ以上の高純度アルミとして99.99%、99.999%等があるが、原材料価格が急激に上がるためコストの面から好ましくない。
<銅>
合金成分としての銅は、アルミニウム中に固溶し易く、金属間化合物を生成しにくいため、陽極酸化皮膜の欠陥となって絶縁性を低下させるという問題が起きにくい。
銅は耐熱強度を増す効果があると共に、本願ではアルミの熱膨張係数の最適化にも有効な元素である。銅は固容量が高く、金属間化合物を形成しにくいので、陽極酸化皮膜中に欠陥を作りにくい。加えて、特に陽極酸化皮膜を設けた場合の熱膨張係数が、加熱時に陽極酸化皮膜に過度の負荷をかけないため、加熱に伴う陽極酸化皮膜の割れ、クラック発生を防止することが出来る。また、陽極酸化皮膜を形成させた基板としても、CIGS等の光吸収層との熱膨張係数の差を小さくでき、その結果、CIGS製膜時に膜の剥離、クラック発生を抑制することが可能である。
本発明のアルミニウム合金板の材料であるアルミニウム合金材は、銅を0.6〜3.0質量%含有することが必要である。望ましくは0.7〜2.0質量%、更に望ましくは0.7〜1.5質量%が良い。
例えばアルミニウム99.9質量%の原材料に銅0.8質量%を添加することで、アルミニウム99.1質量%以上、銅0.8質量%、その他不純物元素0.1質量%未満の組成のアルミニウムが得られる。
この合金材はアルミニウムと銅以外の不純物が少ないため、陽極酸化皮膜を設けた場合の絶縁性能が優れ、また、前述した理由で、高温加熱時の陽極酸化皮膜欠陥が起こりにくく、また光吸収層との熱膨張係数の差を小さくできるので、優れた太陽電池用基板の原材料にすることが出来る。
<チタン>
本発明においては、鋳塊組織を微細にし、鋳造時の鋳塊割れを防止する目的でチタンを添加することができる。チタンの好ましい含有量は0.05質量%以下であり、より好ましくは0.02質量%以下である。チタンの含有量が0.05質量%を超えるとAl−Ti系の粗大な化合物が生成し陽極酸化皮膜における欠陥が生じやすいため不適である。同様の目的でチタンとともにボロンを添加してもよく、この場合にはボロンは0.01質量%以下の範囲で含有させるのが好ましい。
<不純物>
合金成分に含まれる不純物として、本発明では、アルミニウムと銅以外の不純物合計を0.1質量%以下とする。Al地金中に含有される不可避不純物としては、例えば、L.F.Mondolfo著「Aluminum Alloys:Structure and properties」(1976年)等に記載されている量の不純物が考えられる。
何れの場合も、アルミ中で金属間化合物を形成する元素は避けるべきである。特に、特許文献1が示すようなFe,Mn、Si、Zr等は避けるべきである。
本発明のアルミニウム合金は高温強度に優れたものであるから、高温領域において高い強度が要求される種々の部材の材料として用いることができ、特に薄膜系太陽電池基板の材料として好ましい。
本発明のアルミニウム合金板は、矩形の板であってもよいしストリップとして連続して、コイル状に巻かれる板であってもよい。例えば、厚さは20〜5000μmが好ましく、板幅は100〜2000mmが好ましい。
アルミニウム板の表面は鏡面仕上げされていることが好ましく、その表面粗さがRaが0.1nm〜2μmであることが好ましく、1nm〜0.3μmであることがより好ましい。
アルミニウム合金板の鏡面仕上げ方法の一例としては、特許第4212641号公報、特開2003−341696号公報、特開平7−331379号公報、特開2007−196250号公報、特開2000−223205号公報に記載がある。
本発明のアルミニウム合金板は、好ましくは、常温における引っ張り強度が100〜600MPaであり、550℃で10分間加熱処理した後の引っ張り強度が50〜300MPaである。
また、好ましくは常温における0.2%耐力が80〜300MPaであり、550℃で10分間加熱処理した後の0.2%耐力が40〜250MPaである。
さらに、好ましくは常温における破断伸びが1〜10%であり、550℃で1時間加熱処理した後の破断時伸びが20〜50%である。
また、高温クリープ試験において、0.4MPa以上の荷重を与えて、500℃、10分間保持時の歪みが0.1%以下であることが好ましい。
[2.アルミニウム合金板の製造方法]
本発明に用いるアルミニウム合金は、常法により、材料の溶解、溶湯処理、DC鋳造法によるスラブやビレットの鋳塊鋳造、面削、均熱、熱間圧延、焼鈍処理、冷間圧延、矯正処理が施され、所望の厚さの薄膜系太陽電池基板に用いる板材に成形される。
あるいは、本発明に用いるアルミニウム合金は、常法により、材料の溶解、溶湯処理、連続鋳造、冷間圧延、焼鈍処理、矯正処理が施され、所望の厚さの薄膜系太陽電池基板に用いる板材に成形することも出来る。連続鋳造法としては、ハンター法等の双ロール式連続鋳造や、ハズレー法等の双ベルト連続鋳造を使用することが出来る。
本発明のアルミニウム合金の、好ましい製造方法は、純度99.9質量%以上のアルミニウム原材料に、銅を0.6〜3.0質量%含むように溶製(溶解製造)し、鋳造、熱間圧延、冷間圧延を行う製造方法である。
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ(ceramic tube filter)、セラミックフォームフィルタ(ceramic foam filter)等のいわゆるリジッドメディアフィルタ(rigid media filter)や、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリング、脱ガス処理をさらに行ってもよい。
ついで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固定鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。0.5℃/秒未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。なお、均熱化処理を行わない場合には、コストを低減させることができるという利点がある。
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
これらの工程における焼鈍処理は、冷間圧延の途中や冷間圧延終了後に行うことが出来る。冷間圧延終了後に焼鈍を行う場合は、温度条件、保持条件を選ぶことによって、結晶組織を完全に再結晶させる処理や、部分的な再結晶あるいは回復をおこさせる程度の熱処理を行うことが出来る。好ましくは、冷間圧延終了後に、部分的な再結晶あるいは回復をおこさせる程度の熱処理を行うことが望ましい。更に望ましくは、H2n調質となるような最終焼鈍を行うことが望ましく、更に望ましくはH24調質となるような最終焼鈍を行うことが好ましい。
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ(roller leveler)、テンションレベラ(tension leveler)等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタライン(slitter line)を通してもよい。また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
[3.絶縁性基板]
本発明のアルミニウム合金板は、その表面に絶縁層を備えることでプリント配線用の各種基板として有用である。絶縁層は、特に限定されない。本発明の基板は太陽電池用基板に好適である。
1) 本発明の第一態様のアルミニウム合金板は、各種の絶縁層をその表面に備えることができ絶縁層は、特に限定されない。また、本発明は、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜を絶縁層として設けた上に、更に別の絶縁層を加えても良い。追加で設ける絶縁層も限定がなく、以下に絶縁層として例示するものが含まれる。絶縁層は、例えば少なくとも1種の酸化物層を含み、この酸化物層はAl23、TiO2、HfO2、Ta25、およびNb25からなる群から選択される少なくとも1つの誘電性酸化物からなる絶縁層であってもよいし、従来公知の樹脂層、ガラス層であってもよい。
絶縁層の他の例としては、樹脂系絶縁皮膜、無機系絶縁皮膜、金属酸化物皮膜、陽極酸化皮膜等が提案されている。たとえば、特開昭59-47776号公報では、液状樹脂をステンレス鋼基板の表面に塗布し、高温焼成することにより厚み2μm程度の高分子樹脂皮膜を形成している。また、特開昭59-4775号公報では、スパッタリング、蒸着、イオンプレーティング、フラズマCVD、熱分解CVD等でSiO2、Al23、SiNx等の絶縁皮膜を形成している。さらに、特開平2−180081号では、絶縁性微粒子を含む有機シリケートを主成分とするコーティング材を用いて、絶縁皮膜を形成している。
2) 本発明の第二態様のアルミニウム合金板は、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜を絶縁層として設けることができる。以下に、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜を絶縁層として設ける場合を説明する。
[4.陽極酸化]
本発明の第二態様のアルミニウム合金板は、上記のアルミニウム合金板の表面に陽極酸化皮膜を設けてアルミニウム合金基板とすることができる。
陽極酸化皮膜は、酸性電解液中で電気化学的に形成される。その構造は、電解液の液種によって制御が可能で、通常はバリア皮膜層と、その上に形成されるマイクロポア層の構造にすることができる。これにより、Al23を主成分に構成される陽極酸化皮膜と空気層を有するマイクロポア層、及びAl23を主成分に構成されるバリア層それぞれが絶縁性を有するために、絶縁性を持たせることができる。
電解液種を選べば、バリア層のみの皮膜を形成することも可能である。
マイクロポアの径は10〜600nmが好ましい。マイクロポアの深さは陽極酸化皮膜の厚みに応じて可変である。マイクロポアの密度は100〜10000個/μmであることが好ましい。
陽極酸化皮膜の厚さは1〜30μmであるのが好ましく、更に3〜28μmが好ましく、5〜25μmが特に好ましい。
陽極酸化皮膜のバリアー層の厚さは1nm〜1000nmが好ましい。
陽極酸化皮膜の表面粗さRaが0.1nm〜2μmであることが好ましく、1nm〜0.3μmであることが特に好ましい。
好ましい陽極酸化処理条件を以下に示す。
陽極酸化処理に用いる電流は、交流、直流、交直重畳電流を用いることが可能であり、電流の与え方は、電解初期から一定でも漸増法を用いてもよいが、直流を用いる方法が特に好ましい。陽極酸化皮膜の厚さは陽極酸化処理時間で調整することができる。
陽極酸化処理は、アルミニウム板の表裏同時におこなってもよいし、片面ずつ逐次おこなってもよい。
アルミニウム表面の電解液流速並びに流速の与え方、電解槽、電極、電解液の濃度制御方法は、公知の陽極酸化処理方法を用いることが可能である。
たとえば、特開2002-362055号公報、特開2003-001960号公報、特開平6−207299号公報、特開平6−235089号公報、特開平6−280091号公報、特開平7−278888号公報、特開平10−109480号公報、特開平11−106998号公報、特開2000−17499号公報、特開2001−11698号公報、特開2005−60781号公報、の記載が一例である。アルミニウム板の対極としては、アルミニウム板を陽極としたときの対極(陰極)としてアルミニウム、カーボン、チタン、ニオブ、ジルコニウム、ステンレスなどを用いることが可能である。アルミニウム板を陰極としたときの対極(陽極)として、鉛、白金、酸化イリジウムなどを用いることが可能である。
アルミを搬送し、所定の電解液にて直流電流を電源26から通電することで、その表面に陽極酸化皮膜を設ける。図1に、本発明の陽極酸化処理および電気化学的な封孔処理に用いることができる装置の一例を示す。図中左から搬送されたアルミニウム合金板2はパスロール20に転接して給電槽24に入り、そこで電解液22を介して陽極28から通電される。アルミニウム合金板2は酸化槽25にてアルミニウム合金板自身が陰極30に対してプラス(アノード)になり、陽極酸化が行われる。陽極酸化皮膜を厚く設けるためには、給電槽24に比べて酸化槽25の処理長を長くすることで対応が出来る。
電解液の一例として硫酸を使用する場合、シュウ酸を使用する場合の2例について以下に説明する。
(a)硫酸水溶液中での陽極酸化処理
硫酸100〜300g/L、更に好ましくは120〜200g/L(アルミニウムイオンを0〜10g/L含む)、液温10〜55℃(特に好ましくは20〜50℃)、電流密度10〜100A/dm(特に好ましくは20〜80A/dm)、電解処理時間10〜300秒(特に好ましくは30〜120秒)で、アルミニウム合金板を陽極として陽極酸化処理する。このときのアルミニウム板と対極間の電圧は、10〜150Vであることが好ましく、電圧は電解浴組成、液温、アルミニウム界面の流速、電源波形、アルミニウム板と対極との間の距離、電解時間などによって変化する。
アルミニウムイオンは電解液中に、電気化学的または化学的に溶解するが、予め硫酸アルミニウムを添加しておくことが特に好ましい。
また、銅イオンは電解液中に、電気化学的または化学的に溶解するが、硫酸銅を添加して、予め銅イオンを0〜10g/Lに調整しておくことが特に好ましい。また、アルミニウム合金中に含まれる微量元素が溶解していても良い。
(b)シュウ酸水溶液中での陽極酸化処理
シュウ酸10〜150g/L(特に好ましくは30〜100g/L)、アルミニウムイオンを0〜10g/Lを含むことが好ましい。液温10〜55℃(特に好ましくは10〜30℃)、電流密度0.1〜50A/dm(特に好ましくは0.5〜10A/dm)、電解処理時間1〜100分(特に好ましくは30〜80分)で、アルミニウム合金板を陽極として陽極酸化処理する。このときのアルミニウム板と対極間の電圧は、10〜150Vであることが好ましく、電圧は電解浴組成、液温、アルミニウム界面の流速、電源波形、アルミニウム板と対極との間の距離、電解時間などによって変化する。
アルミニウムイオンは電解液中に、電気化学的または化学的に溶解するが、シュウ酸銅を添加して、予め銅イオンを0〜10g/Lに調整しておいても良い。
また、アルミニウム合金中に含まれる微量元素が溶解していても良い。
陽極酸化処理前の脱脂洗浄は、おこなってもおこなわなくてもよいが、おこなう場合は酸またはアルカリ水溶液中への浸せき処理、スプレー処理をおこなうことが好ましく、酸性水溶液中への浸せきが特に好ましい。その後、水洗処理をおこなってもよい。水溶液の温度は10〜70℃が好ましく、脱脂時間は1〜60秒が好ましい。酸性水溶液の種類としては、陽極酸化処理と同じ種類のものが特に好ましい。
[5.封孔処理]
陽極酸化処理したアルミニウム合金板は、好ましくは次に封孔処理する。
封孔処理は、電気化学的な方法、化学的な方法が知られているが、アルミニウム板を陽極にした電気化学的な方法(陽極処理)が特に好ましい。
電気化学的な方法は、アルミニウム合金を陽極にして直流電流を加え、封孔処理する方法が好ましい。電解液は硼酸溶液が好ましく、硼酸水溶液にナトリウムを含む硼酸塩を添加した水溶液が好ましい。硼酸塩としては、八硼酸二ナトリウム、テトラフェニル硼酸ナトリウム、テトラフルオロ硼酸ナトリウム、ペルオキソ硼酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、メタ硼酸ナトリウムなどがある。これらの硼酸塩は、無水または水和物として入手することができる。
封孔処理に用いる電解液として、特には、0.1〜2mol/Lの硼酸水溶液に、0.01〜0.5mol/Lの四硼酸ナトリウムを添加した水溶液を用いることが特に好ましい。
アルミニウムイオンは0〜0.1mol/L溶解していることが好ましい。
アルミニウムイオンは、電解液中へ封孔処理により化学的または電気化学的に溶解するが、予め硼酸アルミニウムを添加して電解する方法が特に好ましい。
また、マグネシウムイオンが0〜0.1mol/L溶解していても良い。また、アルミニウム合金中に含まれる微量元素が溶解していても良い。
硼酸ナトリウムの添加により絶縁膜内部もしくは表面にナトリウムが存在することで、太陽電池用基板としたときに特に優れた特性を発揮することができる。
好ましい封孔処理条件は、液温10〜55℃(特に好ましくは10〜30℃)、電流密度0.01〜5A/dm(特に好ましくは0.1〜3A/dm)、電解処理時間0.1〜10分(特に好ましくは1〜5分)である。
電流は、交流、直流、交直重畳電流を用いることが可能であり、電流の与え方は、電解初期から一定でも漸増法を用いてもよいが、直流を用いる方法が特に好ましい。
電流の与え方は、定電圧法、定電流法どちらを用いても良い。
このときのアルミニウム板と対極間の電圧は、100〜1000Vであることが好ましく、電圧は電解浴組成、液温、アルミニウム界面の流速、電源波形、アルミニウム板と対極との間の距離、電解時間などによって変化する。
封孔処理は、アルミニウム板の表裏同時におこなってもよいし、片面ずつ逐次おこなってもよい。
アルミニウム表面の電解液流速並びに流速の与え方、電解槽、電極、電解液の濃度制御方法は、前記陽極酸化処理に記載の公知の陽極酸化処理方法、並びに封孔処理の方法を用いることが可能である。
また、化学的な好ましい方法は、陽極酸化処理後にポアおよび・または空孔にSi酸化物を充填した構造にすることによって、より高い耐電圧を実現可能である。Si酸化物による充填はSi−O結合を有する化合物を含む溶液を塗布、または、珪酸ソーダ水溶液(1号珪酸ソーダまたは3号珪酸ソーダ、1〜5質量%水溶液、20〜70℃)に、1〜30秒間浸せき後に水洗・乾燥し、更に200〜600℃で1〜60分間焼成する方法で更に高い耐電圧を得ることも可能である。珪酸ソーダ水溶液に浸せきすることで、Na成分がCIGS膜中に拡散し、更に発電効率を上げることが可能となる。
化学的な好ましい方法として、前記珪酸ソーダ水溶液のほかに、フッ化ジルコン酸ソーダおよび・またはリン酸二水素ナトリウムの単体または混合比率が重量比で5:1〜1:5の混合水溶液の、濃度1〜5質量%の液に、20〜70℃で1〜60秒浸せきすることで封孔処理をおこなう方法を用いることも可能である。
[6.太陽電池の製造方法]
薄膜系太陽電池の製作はロール・ツー・ロール方式で行うことができる。即ち、所定厚さに成形されてロールに巻かれたアルミニウム合金板は、巻き出しロールから巻き取りロールに巻き取られる間に後述する各層の形成が順次行われ、あるいは巻き取り毎に各層の形成が行われる。
本発明のアルミニウム合金板は、ロールツーロールプロセスにより、陽極酸化処理、封孔処理までおこなわれることが特に好ましい。
その後、前記処理をおこなって一旦巻き取られたアルミニウム合金板を再送り出しして後述する各層の形成が順次行われ、太陽電池を形成し、その後裁断処理して太陽電池とする方法が好ましい。また、陽極酸化処理、封孔処理をおこなった後に裁断し、その後太陽電池を形成する方法も好ましい。
<薄膜系太陽電池>
図2は本発明の合金板を用いた基板を用いることが可能な薄膜系太陽電池11の一般的な構成の一例を示す断面図である。
本発明のアルミニウム合金板1上に絶縁層3として陽極酸化皮膜層を設けたアルミニウム合金基板2を用いる。陽極酸化皮膜層の上に追加絶縁層を設けてもよい。さらにその上に裏面電極層14が積層され、さらに光吸収層15、バッファー層16、透明電極層17が順次積層され、透明電極層17および裏面電極層14に取り出し電極18、19が積層されている。さらに、透明電極層の露出部分は保護膜21で被覆されている。
また、図2に例示した薄膜系太陽電池において、追加絶縁層、裏面電極層14、光吸収層15、バッファー層16、透明電極層17、取り出し電極の材料や厚さは何ら限定されない。例えば、CISまたはCIGSを用いた薄膜系太陽電池において、各層は以下の材料と厚さを例示できる。本発明で言う、多孔質陽極酸化皮膜を主体とする絶縁層3の厚さは1〜30μm、更に3〜28μmが好ましく、5〜25μmがとくに好ましい。
太陽電池の詳細な構成については、例えば、特開2000-332273号公報に記載されている。例えば、CISまたはCIGSを用いた薄膜系太陽電池において、各層は以下の材料と厚さを例示できる。
裏面電極層14の材料は導電性を有する材料で厚さは0.1〜1μmである。積層には、太陽電池の製造に一般的に使用される手法を用いればよく、例えば、スパッタリング法や蒸着法などを用いればよい。材料は、導電性を有する限り特に限定されず、例えば、体積抵抗率が6×106 Ω・cm以下の金属、半導体などを用いればよい。具体的には、例えば、Mo(モリブデン)を積層すればよい。形状は特に限定されず、太陽電池として必要な形状に応じて任意の形状に積層すればよい。
前記光吸収層15は、発電効率を高めるために、効率良く光を吸収し、そこで励起されたエレクトロン・ホールペアを再結合させずにどれだけ外部に取出せるかが要求される機能であり、光吸収係数が大きいものを用いることが高い発電効率を得るうえで重要である。かかる光吸収層15として 、アモルファスSiやナノ結晶SiのSi系薄膜、または各種化合物からなる薄膜が用いられる。化合物の種類は限定されず、CdS/CdTe、CIS(Cu−In−Se)、CIGS(Cu−In−Ga−Se)、SiGe、CdSe、GaAs、GaN、InP等を使用できる。これらの化合物からなる薄膜は、焼結、化学析出、スパッタ、近接昇華法、多元蒸着法、セレン化法等によって形成することが可能である。
CdS/CdTeからなる薄膜は、基板(絶縁層を有するアルミニウム基板)上にCdS膜、CdTe膜を順次形成した積層薄膜であるが、CdS膜の厚さにより2種類に分けられ、(a)20μm程度のもの、(b)0.1μm以下で基板との間に透明導電膜が形成されているものがある。(a)の構造では、基板上にCdSペースト、CdTeペーストを順次塗布して600℃以下で焼結する。(b)の構造では、化学析出またはスパッタ等によりCdS膜を形成し、近接昇華法によりCdTe膜を形成する。
また、CISまたはCIGS薄膜は化合物半導体を用いるものであり、長期間の使用に対して安定性が高いという特徴がある。これらの化合物薄膜の膜厚は例えば0.1〜4μmであり、化合物ペーストを塗布して350〜550℃で焼結することにより形成される。
積層には、太陽電池の製造に一般的に使用される手法を用いればよく、例えば、蒸着法やセレン化法などを用いればよい。材料は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを主要な構成元素とし、カルコパイライト構造を有する化合物半導体材料などが挙げられる。例えば、Cu(銅)と、InおよびGaから選ばれる少なくとも1つの元素と、Se(セレン)およびS(硫黄)から選ばれる少なくとも1つの元素とを含むp型半導体層を光吸収層として積層すればよい。より具体的には、例えば、CuInSe2やCu(In,Ga)Se2、あるいは、Seの一部をSで置換した化合物半導体を積層すればよい。このような製造方法ではCISあるいはCIGSの太陽電池が得られるため、より変換効率に優れる太陽電池を製造することができる。
この工程においてZnをドープすることもおこなわれるが、この場合層の一部の領域にZnをドープすればよい。例えば、含まれるZnの濃度が層の膜厚方向に、裏面電極層14側から高濃度になるように(濃度勾配を有するように)Znをドープすることができる。なかでも、裏面電極層14と反対側の近傍に、Znをドープすることが好ましい。このような製造方法によって、変換効率などの特性により優れる太陽電池を製造することができる。なお、裏面電極層14と反対側の近傍とは、反対側の面から、例えば、3nm〜30nm程度の範囲をいう。ドープ距離は、全域において一定である必要はなく、部分的にばらつきがあってもよい。ドープするZnの量は特に限定されないが、例えばZnのドープ量が、1(at%)〜15(at%)程度の範囲であればよい。Znをドープする方法は特に限定されない。例えば、Znをイオン照射すればよい。このとき、照射するZnイオンのエネルギーなどを制御することによって、ドープ距離やドープ量を制御することができる。このほかに、Znを含む溶液と接触させることによって、Znをドープしてもよい。このとき、Znを含む溶液の濃度や、上記溶液と接触させる時間などを制御することによって、Znのドープ距離やドープ量を制御することができる。また、このような製造方法では、Znをより均一にドープすることができる。また、ドープ距離をより小さくすることができる。浸せきする方法により簡便にZnをドープすることができるため、製造コストに優れる製造方法とすることができる。Znを含む溶液は特に限定されず、例えば、Znイオンを含む溶液であればよい。具体的には、例えば、Znの硫酸化物(硫酸亜鉛)、塩化物(塩化亜鉛)、ヨウ化物(ヨウ化亜鉛)、臭化物(臭化亜鉛)、硝酸化物(硝酸亜鉛)および酢酸化物(酢酸亜鉛)から選ばれる少なくとも1つの化合物の水溶液であればよい。上記水溶液の濃度は特に限定されない。例えば、上記水溶液におけるZnイオンの濃度が0.01mol/L〜0.03mol/Lの範囲であればよい。上記濃度範囲において、より良好なZnドープ層を形成することができる。なお、Znを含む溶液に浸せきする時間は特に限定されず、必要なドープ距離(あるいは、必要なZnドープ層の厚さ)に応じて任意に設定すればよい。
更に、前記層の上に、ZnMgO膜をスパッタリングによって0.05〜4μmの厚さで生成することが好ましい。
バッファー層16の材料はZnO/CdSの積層であり、合計厚さは0.05〜4μmである。
積層には、太陽電池の製造に一般的に使用される手法、例えば、蒸着法やスパッタリング法を用いればよい。
透明電極層17の材料はAlをドープしたZnOやITO(インジウム・スズ酸化物)で厚さが0.1〜0.3μmである。積層には、太陽電池の製造に一般的に使用される手法、例えば、スパッタリング法を用いればよい。例えば、透光性を有する導電材料を積層すればよい。具体的には、例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)やZnO、あるいは、これらの材料の積層膜を積層すればよい。
取り出し電極18、19の材料はAl/Ni等である。取り出し電極を形成する場合、取り出し電極の材料は特に限定されず、太陽電池に一般的に用いる材料であればよい。例えば、NiCr、Ag、Au、Alなどを配置して取り出し電極を形成すればよい。形成には、一般的に用いられる方法を用いればよい。
なお、本発明のアルミニウム合金板は、CIGSまたはCIS系の太陽電池のみならず、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、HIT太陽電池、CdTe太陽電池、多接合太陽電池、宇宙用太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、半導体の量子ドットを利用した太陽電池、などの基板に用いても、本発明の目的と同じ効果を発揮する。
以下に実施例、比較例により、本発明を説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されない。
(アルミニウム合金板の製造例)
アルミニウム純度99.9、99.96、99.93質量%のアルミニウムインゴットを準備し、それにCuを添加して銅濃度を調整した表1に示すアルミニウム合金成分からなるアルミニウム圧延板を用いて、以下の処理を順におこなった。Al−3はアルミニウム純度99.93%のインゴットを、Al−4はアルミニウム純度99.96%のインゴットを使用した。Al−1,2,5,6,7,8はアルミニウム純度99.9%のアルミニウムインゴットを使用した。Al―9,10は特許文献1に記載の組成を再現させた。Al―11,12,13はそれぞれ、JIS3004材、6015材、1050材組成を再現させた。Al−1〜7が本発明の実施例、Al−8〜13が比較例に用いた。
アルミニウムは各組成に調合され、脱ガス処理、フィルタリングの溶湯処理を行い、DC鋳造法でスラブを作成した。両面に面削各10mmを行い、均熱処理 450℃ 10時間処理を施し、その後熱間圧延、冷間圧延を行い、厚さ0.3mmに仕上げ、280℃ 5時間の最終焼鈍を行った。
アルミニウム合金板の表面は、冷間圧延ロールの粗度をRa=0.07μm以下にすることでRa=0.05μm未満の粗さに仕上げた。
表1に実施例、比較例に使用したアルミの組成を示す。
別に、表1のAl−4の組成のアルミニウムインゴットを冷間圧延後、表4と表5に示す条件をそれぞれ表6の組合せで、均熱処理および焼鈍処理をし、アルミニウム合金板実施例1−8〜1−12を製造した。ただし実施例1−12は、表5に示すように最終板厚を1.5mmとした。
(アルミニウム合金基板の製造例)
上記のアルミニウム合金板(実施例1−1〜実施例1−12、比較例1−1〜1−6に、以下の処理を行ってその表面に絶縁層を形成し、アルミニウム合金基板(実施例2−1〜実施例2−12、比較例2−1〜2−6)とした。
(1)脱脂処理
硫酸170g/Lを含む酸性電解液60℃に30秒間浸せきして脱脂処理をおこない、その後水洗処理し、更にニップロールで液切りした。
(2)陽極酸化処理(多孔質絶縁層の形成)
表1に併記する種々の電解浴で陽極酸化皮膜(絶縁層)を形成した。陽極酸化皮膜の厚さは電解処理時間で調整し15μmとした。その後水洗処理し、更にニップロールで液切りした。
1)酸水溶液中での陽極酸化処理:
硫酸170g/L水溶液(硫酸アルミニウムを添加して調整したアルミニウムイオン5g/L含む)、電流密度25A/dm2、液温40℃でおこなった。電流は直流を用い、アルミニウム板を陽極とした。
2)シュウ酸水溶液中での陽極酸化処理:
シュウ酸63g/L水溶液、電流密度1A/dm2、液温15℃でおこなった。電流は直流を用い、アルミニウム板を陽極とした。
(3)封孔処理
0.5mol/Lのホウ酸水溶液に、0.05mol/Lの四硼酸ナトリウムを添加した水溶液を用いた。液温20℃でおこなった。電流は直流を用い、本発明のアルミニウム板を陽極とし、カーボンを対極とし、アルミニウム板と対極間の距離は2cmであった。電源は、定電圧の直流電源を用いて、アルミニウムとその対極間の電圧を400Vとした。電流は、最初の1分間は電流密度0.5A/dm2で流れ、その後漸減して5分後には0A/dm2に近づいた。トータルの電解時間は5分間であった。その後水洗処理し、更にニップロールで液切りし、乾燥した。
得られたアルミニウム合金基板を評価した。結果を表2および表6に示す。
(4)耐電圧評価
得られた基板上に5cm×4cmのアルミニウム電極を形成し、電圧を0〜3kVまで上昇させて漏れ電流が10〜6A/mm2 を超えた電圧によって耐電圧を評価し、700V以上をA、500V以上〜700V未満をB、400V以上〜500V未満をC、400V未満をDとした。B以上が合格である。
(5)耐高温強度評価
550℃で10分間加熱した後のアルミニウム合金板(絶縁層を有さない)の引っ張り強度を測定し、60MPa以上をA、50MPa以上〜60MPa未満をB、50MPa未満をCとした。B以上が合格である。アルミニウム板の引っ張り強度は、JIS Z 2241(金属材料引張試験方法)に基づき、島津製作所製オートグラフ(AGS−5KNH)を用いて、引張速度:2mm/分の条件で測定した。
(6)高温クリープ試験
熱機械分析装置TMA−50(島津製作所製)を用いて、荷重0.4MPaの負荷を与え、500℃で10分間保持中の伸びを測定した。伸び0.1%未満の場合をOK、伸び0.1%以上の場合をNGとした。
(7)耐クラック試験
陽極酸化皮膜を設けた基板から、10mm×20mmサイズにダイシング加工で切り出したサンプルに、500℃×10分間の熱処理を行い、皮膜の観察を行った。皮膜の一部にクラックが発生した場合をNG、発生しない場合をOKとした。
耐電圧試験に関しては、実施例はすべて問題ない結果で、特にAlと銅以外の不純物が少ない実施例2−3,2−4は耐電圧試験の結果が優れたものであった。高温強度、高温クリープ、陽極酸化皮膜のクラックについては、本発明の実施例はいずれも問題ない結果であった。
一方比較例は、いずれも耐電圧性が悪い結果であった。比較例2−1は、Cu量が多すぎたため、析出Cuが増え、絶縁性が低下したためと思われる。他の比較例は、比較例2―6が悪い中でもややましなものの、他は絶縁性が非常に悪い。これは、金属間化合物が多いため、陽極酸化皮膜欠陥が多く発生したためと考えられる。
高温強度、高温クリープに関しては、Cu、Mnが少ない比較例2―6が劣る結果であった。
一方、陽極酸化皮膜のクラックについてはどの比較例も悪い結果であった。これは、熱膨張係数の制御がうまくできず、高温加熱時に、アルミ自体の熱膨張と、陽極酸化皮膜の熱膨張の差が大きく、陽極酸化皮膜に過度の負荷がかかり、クラックが発生したためと考えられる。
(薄膜系太陽電池の製造例)
実施例、比較例のアルミニウム合金板から得られたアルミニウム合金基板上に、以下の方法で薄膜層を形成し、薄膜系太陽電池を製造した。
1)最初に、アルミニウム基板上に、第1の電極層としてMo膜(厚さ1μm)を配置した。Mo膜の配置には蒸着法を用いた。次に、蒸着法を用い、Mo膜上にp型半導体層としてCu(In,Ga)Se2膜(厚さ2μm)を配置して、基板と第1の電極層(裏面電極層)とp型半導体層とを含む積層体を形成した。この際、530℃にて10分間の加熱が行われる。
次に、Znを含む化合物(塩)である硫酸亜鉛(ZnSO4 )を含有する水溶液を準備し(溶液中のZnイオンの濃度は0.025mol/Lとした)、準備した水溶液を恒温槽中において85℃に保持し、上記積層体を約3分間浸漬させた。
2)次に、純水で洗浄し、さらに、窒素雰囲気中において400℃で10分間熱処理した。次に、ZnOターゲットおよびMgOターゲットを用いた二元スパッタリングによって、上記積層体におけるp型半導体層上に、n型半導体層としてZn0.9・Mg0.1O膜(厚さ100nm)を形成した。このとき、アルゴンガス雰囲気中(ガス圧2.66Pa(2×10-2 Torr))において、ZnOターゲットにはパワー200Wの高周波を印加して、MgOターゲットにはパワー120Wの高周波を印加してスパッタリングを行った。
3)次に、スパッタリング法を用い、n型半導体層上に第2の電極層(透明電極層)として透光性を有する導電膜であるITO膜(厚さ100nm)を形成した。ITO膜は、アルゴンガス雰囲気中(ガス圧1.07Pa(8×10-3Torr))において、パワー400Wの高周波をターゲットに印加することによって形成した。最後に、NiCr膜とAg膜とを電子ビーム蒸着法を用いてMo膜およびITO膜上に積層することによって、取り出し電極を形成し、太陽電池を作製した。
(発電試験)
得られた太陽電池実施例3−1〜3−7、比較例3−1〜3−6の発電試験を行い結果を表3に示した。発電可能な場合を○、電圧が低いあるいは不安定な場合を△、発電不可の場合を×と表記した。○が合格である。
(8)発電試験1
得られた太陽電池実施例3−1〜3−7、比較例3−1〜3−6の発電試験を行い結果を表3に示した。
(9)発電試験2
次に図2が示す構造を、同一の陽極酸化皮膜をもつ基板上に10個独立して設け、隣り合うもの同士の、裏面電極と透明電極をリード線接続することで、10個の直列太陽電池を作成した。これを用いて同様に発電試験を行った。
本発明の実施例はいずれも発電試験1,発電試験2で発電が可能であった。それに対し比較例は、発電試験1にて、比較例3−1が発電可能、比較例3−2〜比較例3−5は発電可能だが電圧が安定せず、比較例3−6は発電不可の結果であった。また、発電試験2についてはいずれの比較例も発電不可の結果であった。
発電試験後の各試料について断面の観察を行った結果、比較例3−2〜比較例3−5は、光吸収層と陽極酸化皮膜の間に剥離が発生していることが分かった。これが、電圧低下、電圧不安定になった原因と思われる。
比較例3−1には光吸収層と陽極酸化皮膜間の剥離はなかったが、陽極酸化皮膜にクラックの発生が見られた。このため、発電試験1では発電できたが、陽極酸化皮膜の絶縁性が無くなり、発電試験2の直列接合を行った発電試験では発電ができなかったと考えられる。
比較例3―6は、比較例3−2〜比較例3−5以上に光吸収層の剥離が進んでおり、発電が全くできなかったのはこのためと推定される。これは、高温強度、高温クリープ適性が低いため、CIGS製膜工程で剥離が進んだためと思われる。
(均熱処理条件、焼鈍処理条件に関する実施例の評価)
表1記載のAl−4の組成を使用し、Alの製造条件のうち、均熱処理条件、焼鈍処理条件を変えた実験を行った。表4、5は均熱処理条件、焼鈍処理条件の内訳を示す。
均熱処理条件、焼鈍処理条件を組み合わせた実施例1−8〜実施例1―12のアルミニウム合金板を作成し、上記と同様の処理を行って陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板の実施例2−8〜2−12を製造した。それぞれについて表2と同じ評価を行った結果を表6に示す。
1 アルミニウム合金板
2 アルミニウム合金基板
3 絶縁層
11 薄膜系太陽電池
14 裏面電極層
15 光吸収層
16 バッファー層
17 透明電極層
18、19 取り出し電極
20 パスロール
21 保護膜
22 電解液
24 給電槽
25 酸化槽
26 電源
28 陽極
30 陰極

Claims (6)

  1. 銅を0.6〜3.0質量%含有し、残部がアルミニウムおよびその他元素よりなり、アルミニウムと銅以外の不可避不純物を含むその他元素が0.1質量%以下である絶縁性基板用アルミニウム合金板。
  2. 銅を0.6〜3.0質量%含有し、残部がアルミニウムおよびその他元素よりなり、アルミニウムと銅以外の不可避不純物を含むその他元素が0.1質量%以下である太陽電池用絶縁基板用アルミニウム合金板。
  3. 前記アルミニウム合金板が、ストリップであり、連続してコイル状に巻くことができる請求項1または2に記載のアルミニウム合金板。
  4. 銅を0.6〜3.0質量%含有し、残部がアルミニウムおよびその他元素よりなり、アルミニウムと銅以外の不可避不純物を含むその他元素が0.1質量%以下である組成を有するアルミニウム合金を溶製し、鋳造、熱間圧延、冷間圧延を行う請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム合金板の製造方法。
  5. 前記冷間圧延の途中または冷間圧延後に熱処理を行う請求項4に記載のアルミニウム合金板の製造方法。
  6. 前記冷間圧延終了後に、前記熱処理を行う請求項5に記載のアルミニウム合金板の製造方法。
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