JP2013247187A - 絶縁層付き金属基板及びその製造方法。 - Google Patents

絶縁層付き金属基板及びその製造方法。 Download PDF

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Abstract

【課題】反りや欠陥の少ない陽極酸化皮膜付き金属基板を高効率に製造する。
【解決手段】両面に陽極酸化皮膜(31,32)を備えた絶縁層付き金属基板1aの製造方法において、被陽極酸化金属基板10aを製造する工程(A)と、該被陽極酸化金属基板10aの第1の面10rを陽極酸化して第1の陽極酸化皮膜31を形成する工程(B)と、第1の面10rの裏面である第2の面10sを、第1の面10rから給電することにより陽極酸化して第2の陽極酸化皮膜32を形成する工程(C)とを順次有し、工程(A)において、第1の面10r側に、工程(C)における陽極酸化時の基板に第1の面1rから通電可能な通電部20を一様に形成する。
【選択図】図1A

Description

本発明は、太陽電池、薄膜トランジスタ回路、ディスプレイ(画像表示装置)等の半導体装置の用途に有用な絶縁層付き基板として好適な陽極酸化皮膜付き金属基板及びその製造方法に関するものである。
金属製の基板を用いた薄膜太陽電池は、基板の軽量性および可撓性(フレキシビリティー)という観点から、ガラス基板を用いたものに比較して、広い用途への適用の可能性がある。さらに、金属製の基板は高温プロセスにも耐えうるという点で、光電変換特性が向上するため太陽電池の高効率化が期待できる。
太陽電池モジュ−ルは、同一基板上で太陽電池セルを直列接続し集積化することで、モジュール効率を向上させる。このとき、太陽電池モジュ−ルの金属基板には絶縁層を形成し、この上に光電変換を行う半導体回路層を設ける必要がある。
かかる絶縁層付き金属基板は、ステンレス等の鉄系素材を基板に用いる場合は、基板表面にCVD等の気相法やゾルゲル法等の液相法によりSiやアルミニウムの酸化物絶縁層を形成する。しかし、これらの手法は、製法的にピンホールやクラックを発生し易く、大面積の薄膜絶縁層を安定に作製する手法としては本質的な課題を抱えている(特許文献1)。
一方、アルミニウム基板の場合には、表面に陽極酸化皮膜(AAO)を形成することにより、ピンホールが無く密着性良好な絶縁層を得ることができる(特許文献2)。しかしながら、アルミニウム上のAAOは、120℃以上に加熱するとクラックが発生することが知られており(非特許文献1)、絶縁性の低下によりリーク電流が増大してしまう、特にという問題を抱えている。
また、アルミニウムは200℃程度で軟化するため、この温度以上を経たアルミニウムは極めて強度が小さく、クリープ変形や座屈変形といった永久変形(塑性変形)を生じ易く、これを用いる半導体装置の製造時にはハンドリングに厳しい制限が必要である。これは屋外用太陽電池などへの適用を困難なものにしている。
上記問題を解決するため、所謂アルミニウムクラッド材といわれる、表面にアルミニウムでクラッドされた複合金属基板表面に、絶縁層としてAAOを形成した絶縁層付き基板を、半導体装置の基板として用いることが提案されている。
かかる基板は、金属基板と化合物半導体層との線膨張係数の差を小さく設計することが可能であり、500℃以上の高温成膜となる化合物半導体層の形成工程においても、絶縁層のクラックや化合物半導体の剥離などの問題を生じない。またアルミニウム複合金属基材は、アルミニウムに比較して比強度や高温強度が大きいため、製造時のハンドリングも容易である。
絶縁層としてのAAOは、電池モジュールとした時の高い電圧で絶縁破壊しないだけでなく、電圧印加時のリーク電流も小さいこと、すなわち体積抵抗が高い必要がある。リーク電流が大きいと、発電した電流が個々の電池間で漏れ電流となり、モジュール発電効率が低下する。従って、AAOは前述の性能を担保するため、1μm以上、好ましくは5μm以上の厚さが必要となる。
帯状アルミニウムを連続的に陽極酸化するときの一般的な装置は、電解槽の前部に給電ロールまたは給電槽を置き、アルミニウムに電流を供給する構成であり、給電部分から電解槽にかけてのアルミニウムにも電流が流れる。
陽極酸化とは電解酸化(アルミニウムの場合は3電子反応)であり、AAOの厚さは流した電気量に比例する。従って、帯状アルミニウムを連続的に陽極酸化する装置の場合、ライン速度(帯状アルミニウムの走行速度)にも比例した電流を給電する必要がある。
このとき、給電部分から電解槽にかけてのアルミニウムにも同様に比例した電流が流れることになるので、AAO厚が厚いほど、またライン速度が大きくなるほど、電圧降下が大きくなって電力ロスが発生する。
さらに給電部分から電解槽にかけてのアルミニウムはIR発熱により溶断する可能性があり、生成するAAO厚とライン速度には上限が存在する。発熱と溶断限界電流は帯状アルミニウムの単位断面積あたりの抵抗によって決まるので、薄いアルミニウム箔ほど単位断面積あたりの抵抗が高く、生成可能なAAO厚とライン速度の上限は小さくなる。
上記絶縁層付き金属基板のように、帯状の薄いアルミニウム箔の片面にのみ厚いAAOを形成したいという要求がある。この場合、片面にマスキングフィルムを貼り、前述の装置で製造することは可能であるが、AAO厚とライン速度には上限が存在する。
また、メッキなどのadditive皮膜と異なり、AAOはsubtractive皮膜であり、マスキングフィルム端面からの電解液侵入が生じると、容易に皮膜形成する。従って高粘着力のマスキングフィルムを選定する必要がある。さらにクラッド材のような異種金属が接合された帯状金属箔の場合は、局部電池作用による副反応を防止するため、異種金属同士が露出した幅方向の側端面もマスキングフィルムを貼り、電気化学的に不活性にしておく必要がある。
帯状アルミニウムの片面にのみAAOを形成する装置は種々提案されている。代表例は、陽極酸化槽に断面円上の支持ドラムを置き、それにアルミニウム箔を密着させてアルミニウム箔の片面のみを陽極酸化させる手法である(特許文献3)。また、支持ドラムに導電性を持たせ、ドラムに給電する手法も提案されている(特許文献4,特許文献5,特許文献6)。ドラム給電方式では、アルミニウム箔の裏面から直接給電することになるので、前述の電圧降下や発熱を無視できるレベルにまで低下させることが可能である。
ドラム給電方式では、支持ドラムとアルミニウム箔の間に電解液が染込みやすく、それによって生じるロス電流により、ドラム密着面側の接触抵抗が高くなりやすく、スパーク等の局部不良を生じる等の問題がある。上記特許文献4〜6では、接触面への電解液の流入、及びそれに起因する密着面側の接触抵抗増加を抑制する構成が提案されているが、簡易な構成及び容易なプロセスにて良好にドラム密着面側の接触抵抗の増加を抑制することは難しい。
本発明者らは、ドラム給電方式において、簡易な構成及び容易なプロセスにて良好にドラム密着面側の接触抵抗の増加を抑制することが可能な陽極酸化装置及びそれを用いた陽極酸化方法を提案している(特許文献7)
特開2001−339081号公報 特開2000−49372号公報 特開平4−371892号公報 特開昭60−211093号公報 特開平6−108289号公報 特開昭46−39441号公報 特許4723041号公報
茅島,他,東京都立産業技術研究所研究報告3(2000)p21
しかしながら、薄いあるいは単位断面積あたりの抵抗の高い金属基板では、片面のみの陽極酸化皮膜が形成されている基板は、デバイス層成膜の加熱による熱応力、あるいは陽極酸化皮膜の内部応力変化等で反りが発生しやすく、ハンドリングが難しい。
また、封止構造、フレーム等を用いて反りを矯正して電子デバイスを作製することは可能だが、応力がかかるため、経時とともに歪みが発生する恐れがあり、また、封止構造の劣化や、極端な場合はデバイス自体の破壊につながりかねないという問題がある。
基板の両面に陽極酸化皮膜を形成すれば、対称性が高まり、反りが緩和され、ハンドリングが容易になると考えられるが、特許文献7の陽極酸化装置では、まず、帯状アルミニウムの第1の面を陽極酸化し、引き続きその裏面を陽極酸化しようにも、給電面がすでに絶縁性の陽極酸化皮膜が形成された第1の面となることから、第2の面を陽極酸化することができない。給電ロールまたは給電槽を用いて陽極酸化を行えば、両面陽極酸化も可能となるが、既に述べたように、この方法ではライン速度の上限が低いという課題がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、薄いあるいは単位断面積あたりの抵抗の高い金属基板の両面に陽極酸化皮膜を高効率に形成することが可能な絶縁層付き金属基板の製造方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、絶縁性に優れ、基板の反りが少なくハンドリングの容易な陽極酸化皮膜絶縁層付き金属基板を提供することを目的とするものである。
本発明の絶縁層付き金属基板の製造方法は、両面に陽極酸化皮膜を備えた絶縁層付き金属基板の製造方法であって、被陽極酸化金属基板を製造する工程(A)と、
該被陽極酸化金属基板の第1の面を陽極酸化して第1の陽極酸化皮膜を形成する工程(B)と、
前記第1の面の裏面である第2の面を、前記第1の面から給電することにより陽極酸化して第2の陽極酸化皮膜を形成する工程(C)とを順次有し、
前記工程(A)において、前記第1の面側に、前記工程(C)における陽極酸化時の前記基板に前記第1の面から通電可能な通電部を一様に形成することを特徴とするものである。
本明細書において、通電部は、工程(C)における陽極酸化時の基板に第1の面から通電可能であればよいので、第1の面に露出していても露出していなくても構わないが、第1の面に、導電性無機物の領域を一様に露出されてなることが好ましい。
また、本発明の絶縁層付き金属基板は、両面に陽極酸化被膜が形成されてなる絶縁層付き金属基板であって、一方の面の前記陽極酸化皮膜に該面から一対の前記陽極酸化皮膜に挟持された金属部に通電可能な通電部が略一様に形成されてなることを特徴とするものである。
前記通電部の好ましい態様としては、前記面に一様に露出されてなる導電性無機物の領域である態様が挙げられ、その他の好ましい態様としては、前記通電部が前記面に一様に埋め込まれてなる複数の導電性無機微粒子である態様が挙げられる。
本明細書において、「一様」とは、少なくとも工程(C)において第2の陽極酸化皮膜を、第2の面の被陽極酸化領域において連続的に形成可能となる通電部の態様を意味する。例えば、第1の面に導電性無機物微粒子が分散して埋め込まれてなる態様、第1の面において略規則的に形成された導電性パターンの態様等が挙げられる。
第1の面に導電性無機物微粒子が分散して埋め込まれてなる態様においては、導電性無機物微粒子は通電部となり得る範囲で第1の面に露出しないものがあってもよい。また、導電性無機微粒子は、前記第1の面の上面視における前記導電性無機粒子の平均粒径が、前記第1の陽極酸化皮膜の平均膜厚以上であることが好ましい。
第1の面において略規則的に形成された導電性パターンの態様においては、そのパターンは第1の面に分散されてなるドット状パターン、金属細線が格子状にパターン形成されたメッシュ状パターン、ストライプ状パターン等が挙げられ、特に制限されない。この態様の好適な態様としては、前記工程(A)において、前記第1の面における前記通電部の形成領域に対応する位置に、前記工程(B)において陽極酸化されないようにマスクを配置し、該マスクを前記工程(B)終了後に除去し、前記マスク除去後に前記第1の面に露出した金属部を前記通電部として前記工程(C)を実施する態様が好ましい。
前記導電性無機微粒子は、Si粒子又はTi粒子であることが好ましい。
前記被陽極酸化金属基板は、Al基板であることが好ましい。また、前記被陽極酸化金属基板は、厚み方向に複数種の金属層が積層された複合金属基板であってもよく、この場合、前記第1の面及び第2の面がAl面であるクラッド材である態様が好ましい。
本発明の半導体素子は、上記本発明の絶縁層付き金属基板の前記通電部が形成されていない面上に、半導体層および該半導体層に電圧を印加する少なくとも一対の電極を備えてなることを特徴とするものである。
本発明の半導体素子は、前記半導体層が光吸収により電流を発生する光電変換機能を有する光電変換素子である態様が好ましく、前記半導体層の主成分が、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体である光電変換素子である態様がより好ましい。
本発明の絶縁層付き金属基板の製造方法は、被陽極酸化金属基板を製造する工程(A)と、該被陽極酸化金属基板の第1の面を陽極酸化して第1の陽極酸化皮膜を形成する工程(B)と、第1の面の裏面である第2の面を、第1の面から給電することにより陽極酸化して第2の陽極酸化皮膜を形成する工程(C)とを順次有し、工程(A)において、第1の面側に、工程(C)における陽極酸化時の基板に第1の面から通電可能な通電部を一様に形成する。かかる構成によれば、陽極酸化された第1の面から、第2の面の陽極酸化皮膜形成時に給電が可能であるため、薄いあるいは単位断面積あたりの抵抗の高い金属基板の両面に陽極酸化皮膜を高効率に形成することができる。また、本発明によれば、片面に絶縁性に優れる陽極酸化皮膜を備え、基板の反りが少なくハンドリングの容易な絶縁層付き金属基板を提供することができる。
本発明に係る第1実施形態の絶縁層付き基板の製造工程のフローを示す断面模式図(その1) 本発明に係る第1実施形態の絶縁層付き基板の製造工程のフローを示す断面模式図(その2) 本発明に係る第1実施形態の絶縁層付き基板の製造工程のフローを示す断面模式図(その3) 図1Aに示す絶縁層付き金属基板の製造工程の上面模式図 図1Bに示す絶縁層付き金属基板の製造工程の上面模式図 本発明に係る第2実施形態の絶縁層付き基板の製造工程のフローを示す断面模式図(その1) 本発明に係る第2実施形態の絶縁層付き基板の製造工程のフローを示す断面模式図(その2) 図3に示す絶縁層付き金属基板の製造工程の上面模式図 本発明に係る第3実施形態の絶縁層付き基板の製造工程のフローを示す断面模式図(その1) 本発明に係る第3実施形態の絶縁層付き基板の製造工程のフローを示す断面模式図(その2) 図5に示す絶縁層付き金属基板の製造工程の上面模式図 本発明の絶縁層付き基板を用いた半導体素子の概略構成図 I−III−VI化合物半導体の格子定数とバンドギャップとの関係を示す図 実施例1の絶縁層付き金属基板の第1の面側の陽極酸化皮膜の断面電子顕微鏡写真 図9Aの絶縁層付き金属基板の第1の面側表面電子顕微鏡写真
「絶縁層付け金属基板の第1製造方法」
図面を参照して、本発明に係る実施形態の絶縁層付き金属基板の第1製造方法について説明する。図1A〜図1Cは、第1製造方法の製造工程のフローを示す断面模式図である。図2A,図2Bは図1A,図1Bの上面図である。図1Cの上面図は図1Aの上面図と同様である。図1の各工程と図2の各工程は対応している。本明細書の図面では、視認しやすくするため、各部の縮小は適宜変更して示してある。
図1A〜Cおよび図2A,Bに示されるように、絶縁層付き金属基板1aの第1の製造方法は、両面に陽極酸化皮膜(31,32)を備えた絶縁層付き金属基板1aの製造方法であって、被陽極酸化金属基板10aを製造する工程(A)と、
該被陽極酸化金属基板10aの第1の面10rを陽極酸化して第1の陽極酸化皮膜31を形成する工程(B)と、
第1の面10rの裏面である第2の面10sを、第1の面1r(10r)から給電することにより陽極酸化して第2の陽極酸化皮膜32を形成する工程(C)とを順次有し、
工程(A)において、第1の面10r側に、工程(C)における陽極酸化時の基板10に第1の面1r(10r)から通電可能な通電部20を一様に形成することを特徴としている。なお、第1の面は、陽極酸化前の状態を10r、陽極酸化後の状態を1rとして説明する。また、第2の面についても同様で、陽極酸化前の状態を10s、陽極酸化後の状態を1sとして説明する。かかる表記は第1製造方法のみならず、本明細書を通して同様とする。以下に各工程について図1A及び図2Aを参照して説明する。
<工程A>
工程Aでは、工程(C)における陽極酸化時の基板10に第1の面1r(10r)から通電可能な通電部20が一様に形成された被陽極酸化金属基板10aを製造する。
まず、両面を陽極酸化可能な金属基板10を用意する。両面を陽極酸化可能の金属基板10としては特に制限されず、単体金属あるいは合金からなるものであってもよいし、厚み方向に複数種の金属層(101〜103)が積層された複合金属基板10であってもよい(図1A(A−1))。
陽極酸化可能な金属としては、アルミニウム、Nb、Ta、Ti等、及びこれらの合が挙げられる。例えば、アルミニウムの場合、アルミニウム合金は一般に90%以上の純度を有するものが好ましく用いられ、陽極酸化皮膜を絶縁膜として利用する場合は、金属Si粒子を析出物として含まない方が好ましい。
複合金属基板として陽極酸化可能な金属に複合させる金属は、鉄、炭素鋼、ステンレス鋼、Ti等を好ましく挙げることができる。光デバイスの絶縁層付き基板材料としては、陽極酸化の形成が簡易であること、耐久性が高いという観点から、鉄、炭素鋼、ステンレス鋼、Ti等の金属板100の両面にAl(101,102)が金属学的に接合されて張り合わされたクラッド材10が好ましい(図1A(A−1))(以下、Alクラッド材とする)。図1Aでは、両面を陽極酸化可能な金属基板10が、ステンレス鋼材100の両面にAl材が接合されて張り合わされたAlクラッド材10(第1の面側のAl材101,第2の面側のAl材102)を用いて被陽極酸化金属基板10aを製造する場合を例に説明する。
背景技術の項において述べたように、薄いあるいは単位断面積あたりの抵抗の高い金属基板では、片面のみの陽極酸化皮膜が形成されている基板は、デバイス層成膜の加熱による熱応力、あるいは陽極酸化皮膜の内部応力変化等で反りが発生しやすく、ハンドリングが難しい。従って、本発明は、薄い(厚み0.02〜0.5mmの範囲にある帯状物)あるいは単位断面積あたりの抵抗の高い金属帯状物に陽極酸化皮膜を形成した絶縁層付き基板の製造において特に効果的である。
工程(A)では、このAlクラッド材10の第1の面10r側に、工程(C)における陽極酸化時の基板に第1の面1rから通電可能な通電部20を一様に形成して被陽極酸化金属基板10aを製造する。
第1の面1rの陽極酸化皮膜31は、絶縁層付き基板の反りを低減させて機械物性・熱物性を調整するために形成される陽極酸化皮膜であり、且つ、上記通電部20を備えたものである。
第1製造方法では、通電部20として、第1の面1r(10r)に一様に分散して埋め込まれてなる導電性無機物微粒子20を形成する。
導電性無機物微粒子20は通電部となり得る範囲で第1の面1r(10r)に露出しないものがあってもよいが、導電性無機物の領域を一様に露出されてなることが好ましい。
より高い導電性が得られることから、導電性無機微粒子20と非陽極酸化部分との間(図示深さ方向の間)には、陽極酸化皮膜が形成されている領域がないことが好ましい。すなわち、導電性無機微粒子20は、厚み方向の粒子径ができるだけ陽極酸化皮膜32の膜厚に近い値であることが好ましく、陽極酸化皮膜32を貫通して埋め込まれてなる態様であることがより好ましい。
導電性無機微粒子20と非陽極酸化部分との間には、陽極酸化皮膜が形成されている領域がある場合であっても、工程(C)における給電時に、電圧を印加することによって局所的な絶縁破壊を引き起こし、導通させることができれば通電部として機能することができる。
また、導電性無機微粒子20が表面にのみ形成されているような厚みのない場合は、第1の面1r(10r)に垂直な方向(膜厚方向)に対する無機微粒子20の投影面積の円相当径平均値R(平均粒径R)が、第1の陽極酸化皮膜31の平均膜厚Pの半分以上とすることにより、工程(C)における良好な給電を実現することができる(図2A(A−2),図1A(B)を参照)。
後記するように、陽極酸化皮膜32膜厚は、1〜50μmであることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上20μm以下であることが特に好ましいlことから、無機微粒子20の平均粒径Rは、陽極酸化皮膜32の膜厚に応じてその半分以上となるものとすることが好ましい。
第1の面10r(1r)における導電性無機微粒子20の占有面積は、第1の面内において0.05%以上10%以下であることが好ましく、0.2%以上5%以下であることがより好ましい。
導電性無機微粒子20としては、良好な導電性を有し、陽極酸化されず、且つ、陽極酸化液に対して溶解しにくいものであれば特に制限されないが、金属微粒子、黒鉛微粒子等を好ましく用いることができる。金属微粒子としては、金属Si、Pb、TiAl,FeAl、MnAl、MgSi等の金属間化合物及びこれらの合金の微粒子が挙げられる。陽極酸化されない金属及び金属間化合物については、“「アルミニウム合金の表面処理性に及ぼす金属間化合物の影響(その1)調査報告」1990.7 軽金属学会、研究委員会”等に記載されている。
また、Tiなどの陽極酸化される金属であっても陽極酸化の進行度が非常に遅く、陽極酸化皮膜31の形成後に、後工程(C)の陽極酸化時の電圧印加により絶縁破壊を生じる程度の陽極酸化皮膜しかできないような金属であれば、導電性無機微粒子20として適用することができる。
第2の面10s(1s)は、デバイス機能層を形成する面であり、陽極酸化皮膜31は、大面積にわたって高い絶縁性を有する必要がある。従って、一般的には、Al材102としては、不純物の少ない高純度アルミニウム材を用いることが好ましい。
上記第1の面10rを有するAl材101と上記第2の面10sを有するAl材102とを備えていれば、被陽極酸化基板10aの製造方法は、特に制限されない。
Alクラッド基板は通常、Al基板と異種基板を張り合わせにより製造する。従って、被陽極酸化基板10aは、図1A及び図2Aに示されるように、まず、表面に通電部20が一様に形成されたAl基材101を製造してから、ステンレス鋼材100の両面に、高純度Al材102と共に張り合わせて製造することができる。
表面に通電部20が一様に形成されたAl基材101の製造は、粒子状又はロッド状の導電性無機微粒子20が分散されたアルミニウム融液を調製し、常法にてアルミ板化することにより製造する方法や、Al板の一表面に、粒子状又はロッド状の導電性無機微粒子20を散布させた後、圧延ロールにより圧延させて表面に導電性無機微粒子20を埋入あるいは固着もしくは固定させて製造する方法により実施できる(図1A(A−1))。
また、高純度Al基材102としては、市販の高純度Al基材を用いてもよいが、金属Si等の陽極酸化されずに残る不純物が混入していないものであることが好ましい。金属Siを良好に取り除く方法としては、Al圧延後の熱処理をSi−Alの共晶温度である577℃以下の温度で行う手法が挙げられる。具体的には、例えば、アルミニウムの溶湯処理及びろ過を行って鋳塊を作成し、約550℃で均熱加熱を行い、温度が400℃位に下がったところで圧延し、熱処理を行った後、冷間圧延を行うといった手法が挙げられる。ここで熱処理の温度が低いとα-AlFeSiの形成がうまく行われず、577℃以上では分解して金属Siになってしまうので、熱処理の温度は500〜570℃である事が好ましく、さらには520〜560℃である事がより好ましい。
例えば、JIS1N99材に用いられるような純度99.99%以上のアルミニウムを用いて溶湯を調製し、溶湯処理及びろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作製する。次いで、表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とし、焼鈍機を用いて熱処理を500℃、1時間行った後、鏡面処理した圧延ロールを用いた冷間圧延で、厚さ0.24mmとすることにより高純度Al基材を得ることができる。
表面に通電部20が一様に形成されたAl基材101と高純度Al材102のステンレス鋼材100への張り合わせは、表面清浄化後にロール圧延等の加圧接合により接合して実施することができる(図1A(A−2))。
また、図1Bに示されるように、ステンレス鋼材100に高純度Al材102と、Al材101(純度は限定されない)を張り合わせてAlクラッド材10を形成した後に((A−1)’)、Al材101側の第1の表面10rに導電無機微粒子20を埋入させる、あるいは表面に分散固着させることにより製造してもよい((A−2)’)。
この場合、Alクラッド材10の形成方法は、ステンレス鋼材100とAl材101,102との密着性が確保できる一体化結合ができていれば手法は任意である。例えば、ステンレス鋼材100へのAlの蒸着、スパッタ等の気相法、Al融液へ浸漬する溶融メッキ、非水電解液を使用した電気アルミメッキ、表面清浄化後の加圧接合等で接合することができる。但し、溶融メッキの場合は、ステンレス鋼材100とAl材101,102との界面に脆弱な金属間化合物ができない工夫が必要である。コストと量産性の観点からステンレス鋼材100とAl材101,102との接合は、ロール圧延等による加圧接合が好ましい。
図1A及び図1Bでは、両面を陽極酸化可能な金属基板10が複合金属基板である場合について説明したが、両面を陽極酸化可能な金属基板10として、単体金属あるいは合金からなる単材10を用いてもよい(図1C)。
なお、図1Bにおける(A−1)’,(A−2)’以外の工程について、また、図1Cにおいて、複合金属基板10の代わりにAl単材10を用いた以外は図1Aと同様である。従って、以下の工程の説明においては、基本的に図1Aを用いた説明のみとする。
<工程B>
工程Bでは、第1の面10rを陽極酸化して第1の陽極酸化皮膜31を形成する。本実施形態では被陽極酸化面の裏面側から給電して陽極酸化を実施する。かかる態様は単位幅における長さあたりの抵抗が高い帯状物であっても、帯状物を給電ドラムに密着支持して、帯状物の裏面から直接給電することができるので、より高速で陽極酸化皮膜を形成することができる。
裏面給電により高速で良質な陽極酸化を行うことが可能な陽極酸化装置を、本出願人は出願している(特許4723041号)。特許4723041号に記載の陽極酸化装置は、本工程(B)及び工程(C)における陽極酸化に好適に使用することができる。
被陽極酸化基板10aの第1の面10rは、必要に応じて洗浄処理・研磨平滑化処理等、例えば付着している圧延油を除く脱脂工程、アルミニウム板の表面のスマットを溶解するデスマット処理工程、アルミニウム板の表面を粗面化する粗面化処理工程が施されたものを用いることが好ましい。
陽極酸化により形成される多孔質酸化アルミニウム皮膜は、陽極酸化により複数の細孔を有する絶縁性酸化膜が形成されたものであり、これによって高い絶縁性が確保される。陽極酸化は基板を陽極とし陰極と共に電解質に浸漬させ、陽極陰極間に電圧を印加することで実施することができる。陰極としてはカーボンやアルミニウム等が使用される。
陽極酸化条件は使用する電解質の種類にもよるが、例えば、電解質濃度0.1〜2mol/L、液温5〜80℃、電流密度5mA/cm以上500mA/cm以下、電圧1〜200V、電解時間3〜500分の範囲にあれば適当である。電解質としては特に制限されず、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、マロン酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、およびアミドスルホン酸等の酸を、1種又は2種以上含む酸性電解液が好ましく用いられる。
工程(C)において形成する陽極酸化皮膜32は、デバイス形成側の絶縁層であることから、その絶縁性、それを左右するクラックの有無やリークパスとなりうる導電性物質の混入等が大きな問題となる(詳細については後記する。)。しかしながら、工程(B)において形成する陽極酸化皮膜31は、工程(C)において良質な陽極酸化皮膜32を形成可能とする、通電部20の通電性が確保されており、陽極酸化皮膜32の形成後に基板の反りが、デバイスの素子性能に影響を与えない陽極酸化皮膜になっていればよい。
工程(B)では、図1(B)に示されるように、被陽極酸化基板10aの第2の面10sに給電電極200を接触させて、第2の面10sから給電して第1の面10rを陽極酸化する。給電電極200は、特許4723041号の陽極酸化装置においては給電ドラムに該当する。
工程(B)において、第1の面10rを陽極酸化すると、図2(A−2)に示される上面視において、導電性無機微粒子20の形成されていない第1の面10rから陽極酸化が進行し、陽極酸化皮膜31が形成される。このとき、第1の面10rに導電性無機粒子20が露出していない部分のAl材においては陽極酸化皮膜が形成されるが、工程(C)において電圧を印加することにより、その陽極酸化皮膜は少なくとも一部が絶縁破壊して導電性を有するものとなり、導電性無機微粒子20は工程(C)において通電部となる。
陽極酸化は面電流密度が一般に5mA/cm以上500mA/cm以下であるため、工程(C)において、通電部は、Al基材102のステンレス鋼材100との接触面内において略均一に上記範囲の面電流密度にて通電されれば良好な陽極酸化皮膜32を形成することができる。
陽極酸化皮膜31の好ましい膜厚Pは、第2の面に形成される陽極酸化皮膜とあまり膜厚に差がなく、比較的対称性が良好である方が、基板の反りを解消するためには好適である。デバイスを形成する側である第2の面に形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、詳細については後記するが、電気絶縁性の観点からは、陽極酸化皮膜32は厚さが1〜50μmであることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上20μm以下であることが特に好ましい。従って、陽極酸化皮膜31の膜厚Pの好ましい範囲も上記陽極酸化皮膜32と同様である。
<工程(C)>
工程(C)では、工程(B)において陽極酸化皮膜31を形成した第1の面1rに給電電極200を接触させて、第1の面1rから給電して第2の面10sを陽極酸化し(図1A(C)、図2A(C))、給電電極200から剥離することにより絶縁層付き金属基板1aを得る(図1A(D)、図2A(D))。本工程においても給電電極200は、特許4723041号の陽極酸化装置においては給電ドラムに該当する。
工程(C)において、図1A(B)の通電部20より給電されて第2の面10sの陽極酸化が進行する。通電部20から給電された電気は、Al基材101の非陽極酸化部分及びステンレス鋼基材100を介してAl基材102のステンレス鋼基材100との接触面において略均一に給電され、Al基材102を陽極として陽極酸化が進行する。
Al基材102として純度の高いAl基材を用いる事により、工程(C)により、第2の面1s(10s)には、欠陥のほとんどない絶縁性の良好な陽極酸化皮膜32が形成される(図1A(C)、図2A(C))。
工程(C)において、陽極酸化の条件等については工程(B)と同様のものが適用可能であるが、通電部20の通電性が低い場合等は、陽極酸化条件を強くして実施してもよい。
上記工程(B)において述べたように、工程(C)において、通電部は、Al基材102のステンレス鋼材100との接触面内において略均一に平均5mA/cm以上500mA/cm以下の電流が通電されれば良好な陽極酸化皮膜32を形成することができる。
また、工程(C)では、陽極酸化後に、加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理を実施することによって、陽極酸化膜に圧縮応力が付与され、耐クラック性が高まる。よって、耐熱性、絶縁信頼性が向上し、絶縁層つき金属基板としてさらに好適に用いることができるようになる。加熱処理温度は、150℃以上が好ましい。Alクラッド材を用いた場合、300℃以上での熱処理が好ましい。あらかじめ熱処理を実施しておくことにより、多孔質陽極酸化膜に含まれる水分量を減少させることができ、絶縁性を向上させることができる。
陽極酸化アルミニウム被膜はバリア層部分とポーラス層部分からなり、ポーラス層部分が室温で圧縮歪みを有するものであることが好ましい。一般にはバリア層は圧縮応力、ポーラス層は引張応力を有しているため、数μm以上の厚膜においては、陽極酸化膜全体が引張応力になることが知られている。
Alクラッド材10aを用い、陽極酸化後に上記加熱処理を実施した場合、圧縮応力を有するポーラス層を作製することができる。そのため、数μm以上の厚膜にしても、陽極酸化膜全体を圧縮応力とすることができ、成膜時の熱膨張差によるクラックの発生がなく、また、室温付近での長期信頼性に優れた絶縁性膜とすることができる。
この場合、上記圧縮歪みの大きさは、0.01%以上であることが好ましく、0.05%以上であることがさらに好ましく、0.10%以上であることが特に好ましい。また、0.25%以下であることが好ましい。
圧縮歪みが0.01%未満では、圧縮歪みではあるものの、不充分であり、耐クラック性の効果が得られない。そのため、最終製品形態において曲げ歪みを受けたり、長期にわたって温度サイクルを経たり、外部から衝撃、または応力を受けたりした場合に、絶縁層として形成された陽極酸化膜にクラックが生じて、絶縁性の低下にいたる。
一方、圧縮歪みが大きすぎると、陽極酸化膜が剥離したり、陽極酸化膜に強い圧縮歪みが加わることにより、クラックが発生したり、陽極酸化膜が盛り上がって平坦性が低下したり、剥離したりするため、絶縁性が決定的に低下する。そのため、圧縮歪みは0.25%以下であることが好ましい。
なお、陽極酸化膜のヤング率は、50〜150GPa程度であることが知られており、したがって、上記圧縮歪みを得るためには、5〜300MPa程度の圧縮応力を有するポーラス層が形成されるように陽極酸化条件を決定することが好ましい。
陽極酸化膜は水溶液中で形成される酸化被膜であり、固体内部に水分を保持していることが、例えば、「Chemistry Letters Vol.34,No.9,(2005)p1286」に記載されているように知られている。この文献と同様の陽極酸化膜の固体NMR測定から、100℃以上で熱処理した場合、陽極酸化膜の固体内部の水分量(OH基)が減少することが認められ、特に200℃以上で顕著である。従って、加熱によりAl−OとAl−OHの結合状態が変化し、応力緩和(アニール効果)が生じているものと推定される。
また、発明者らによる陽極酸化膜の脱水量測定から、大部分の脱水は、室温〜300℃程度までで起こることが明らかになっている。陽極酸化膜を絶縁膜として用いようとする場合、含まれる水分量が多いほど、絶縁性が低下するため、300℃以上で熱処理を行うことは、絶縁性を向上させる観点でも極めて有効である。アルミニウムと異種金属のクラッド材を基材として用い、300℃以上の熱処理と組み合わせることによって、アニール効果を効果的に発現させ、従来技術ではなしえない高い圧縮歪みと、少ない含水量を実現できる。これによって、さらに絶縁信頼性の高い絶縁層付金属基板を提供することが可能となる。
陽極酸化皮膜32の好ましい膜厚は、電気絶縁性の観点からは、陽極酸化皮膜32は厚さが1〜50μmであることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上20μm以下であることが特に好ましい。
膜厚が極端に薄い場合、電気絶縁性とハンドリング時の機械衝撃による損傷を防止することができない虞がある。また、絶縁性、耐熱性が急激に低下するとともに、経時劣化も大きくなる。これは、膜厚が薄いことにより、陽極酸化膜表面の凹凸の影響が相対的に大きくなり、クラックの起点となってクラックが入りやすくなったり、アルミニウム中に含まれる金属不純物に由来する陽極酸化膜中の金属析出物、金属間化合物、金属酸化物、空隙の影響が相対的に大きくなって絶縁性が低下したり、陽極酸化膜が外部から衝撃、または応力を受けたときに破断してクラックが入りやすくなったりするためである。結果として、陽極酸化膜が3μmを下回ると、絶縁性が低下するため、可撓性耐熱基板としての用途、またはロールトゥロールでの製造には向かなくなる。
また、膜厚が過度に厚い場合には、可撓性が低下する上、陽極酸化に要するコストおよび時間がかかるため好ましくない。また、曲げ耐性や熱歪み耐性が低下する。曲げ耐性が低下する原因は、陽極酸化膜が曲げられた際に、表面とアルミニウム界面での引張応力の大きさが異なるため、断面方向での応力分布が大きくなり、局所的な応力集中が起こりやすくなるためであると推定される。熱歪み耐性が低下する原因は、基材の熱膨張により陽極酸化膜に引張応力がかかった際に、アルミニウムとの界面ほど大きな応力がかかり、断面方向での応力分布が大きくなり、局所的な応力集中が起こりやすくなるためであると推定される。結果として、陽極酸化膜が50μmを超えると、曲げ耐性や熱歪み耐性が低下するため、可撓性耐熱基板としての用途、またはロールトゥロールでの製造には向かなくなる。また、絶縁信頼性も低下する。
以上のようにして両面(1r,1s)に陽極酸化被膜(31,32)が形成されてなり、陽極酸化皮膜31と陽極酸化皮膜32とに挟持された金属部(100,101,102)に、通電可能な通電部20が一様に形成されてなる第1の面1rを備えた絶縁層付き金属基板1aは製造される(図1A(D),図2A(D))。
図1Cに示されるような、Al単材基板を用いる場合は、300℃以上での加熱処理を実施すると、アルミニウムが軟化して基板としての機能を喪失したり、アルミニウムと陽極酸化膜の熱膨張率の差によって、陽極酸化膜にクラックが発生して絶縁性を喪失したりすることがあるため、150℃程度の温度での加熱処理を、充分なアニール効果が得られるまで実施することが好ましい。
このような単材基板を用いる場合は、通電部20から給電された電気は、Al基材10の非陽極酸化部分から給電され、陽極酸化が進行する。この場合、良好な陽極酸化皮膜32を形成可能な面電流密度は、陽極酸化皮膜の成膜面において、平均5mA/cm以上500mA/cm以下である。
絶縁層付き金属基板1aの製造方法は、被陽極酸化金属基板10aを製造する工程(A)と、該被陽極酸化金属基板10aの第1の面10rを陽極酸化して第1の陽極酸化皮膜31を形成する工程(B)と、第1の面10rの裏面である第2の面10sを、第1の面1r(10r)から給電することにより陽極酸化して第2の陽極酸化皮膜32を形成する工程(C)とを順次有し、工程(A)において、第1の面10r側に、工程(C)における陽極酸化時の基板10aに第1の面1rから通電可能な通電部20を一様に形成する。かかる構成によれば、陽極酸化された第1の面1rから、第2の面10sの陽極酸化皮膜形成時に給電が可能であるため、薄いあるいは単位断面積あたりの抵抗の高い金属基板10の両面(10r、10s)に陽極酸化皮膜(31,32)を高効率に形成することができる。また、本発明によれば、片面に絶縁性に優れる陽極酸化皮膜32を備え、基板の反りが少なくハンドリングの容易な絶縁層付き金属基板1(1a,1b,1c)を提供することができる。
「絶縁層付き金属基板の第2製造方法及び第3製造方法」
図3A〜図6を参照して、本発明に係る実施形態の絶縁層付き金属基板の第2製造方法及び第3の製造方法について説明する。図3A,B、図5A,Bは、それぞれ第2製造方法,第3製造方法の製造工程のフローを示す断面模式図である。図4,図6は図3A(図3BはAと同様), 図5A(図5BはAと同様)の上面図である。以下に各工程について、図3A及び図5Aを参照して、第1製造方法と同様、両面を陽極酸化可能な金属基板10が、ステンレス鋼材100の両面にAl材が接合されて張り合わされたAlクラッド材10(第1の面側のAl材101,第2の面側のAl材102)を用いて被陽極酸化金属基板10aを製造する場合を例に説明する。
第2製造方法及び第3の製造方法では、第1の面10rに形成される通電部が、第1の面10rにおいて略規則的に形成された導電性パターンの態様である。
<工程(A)>
図3A(A−2),及び図4(A−2)に示されるように、第2製造方法は、工程(A)において、第1の面10rにおける通電部20の形成領域に対応する位置にマスクパターン41を配置し、マスクパターン41を工程(B)終了後に除去し、マスクパターン除去後に第1の面1r(10r)に露出したAl基材面(金属部)10rで形成された導電性パターンを通電部として工程(C)を実施する態様である。工程(A)においては、マスクパターン41を第1の面10rに配置することにより、マスクパターン41により保護された第1の面10rを含む通電部を形成する。
また、図5A(A−2),及び図6(A−2)に示されるように、第3製造方法は、工程(A)において、第1の面10rにおける通電部20の形成領域に対応する位置に導電性パターン42からなる通電部を形成し、工程(B)終了後に該導電性パターン42を通電部として工程(C)を実施する態様である。
マスクパターン41及び導電性パターン42のパターン形状は特に限定されないが、第1の面10rに分散されてなるドット状パターン、金属細線が格子状にパターン形成されたメッシュ状パターン、ストライプ状パターン等特に制限されないが、できるだけ第1の面10rの面内に均一性良く形成されたパターンであることが好ましい。
第2製造方法及び第3製造方法いずれも、まず、ステンレス鋼材100の両面にAl基材が張り合わされたAlクラッド材10を用意し(図3A(A−1)、図5A(A−1))、第2製造方法ではAl基材101の第1の面10rに、工程(C)における導電性パターンをマスクするマスクパターン41を、第3製造方法ではAl基材101の第1の面10rに、導電性パターン42を形成する(図3A(A−2)及び図5A(A−2))。
マスクパターン41は、該マスクパターンにより保護されている面には工程(B)において陽極酸化皮膜31が形成されないように形成されてなり、絶縁性の樹脂、有機物等、あるいは絶縁性フィルム、テープにより形成することができる。
マスクパターン41の形成方法としては、塗布、印刷等の液相法や、蒸着等の気相法、ベタ成膜後、フォトマスクを用いた光照射等によってパターンを形成する方法、貼付等の方法を適宜使用することができる。
また、導電性パターン42は、該マスクパターンにより保護されている面には工程(B)において陽極酸化皮膜31が形成されないように形成されてなり、陽極酸化されず、且つ、陽極酸化液に対して溶解しにくい導電性無機物により構成されてなる。陽極酸化されない導電性無機物については第1製造方法の導電性無機微粒子の材料として例示した材料を好ましく使用することができる。
導電性パターン42の形成方法としては、微粒子塗布、印刷、めっき等の液相法や、蒸着、スパッタ等の気相法等が挙げられる。
工程(B)において陽極酸化されずに、工程(C)において良好な通電部として機能すれば、マスクパターン41及び導電性パターン42の大きさは特に制限されない。例えば、マスクパターン41及び導電性パターン42が、図示されるようにドット状パターンの場合は、直径が陽極酸化皮膜31の膜厚以上であることが好ましく、1μm以上であることが更に好ましい。また、1つ1つのドットが大きすぎてもよくないことから、ドット状パターンの径は10mm以下であることが好ましい。
図3A及び図5Aでは、両面を陽極酸化可能な金属基板10が複合金属基板である場合について説明したが、両面を陽極酸化可能な金属基板10として、単体金属あるいは合金からなる単材10を用いてもよい(図3B及び図5B)。
なお、図3B及び図5Bにおいて、複合金属基板10の代わりにAl単材10を用いた以外は図3A及び図5Aと同様である。従って、以下の工程の説明においては、基本的に図3A及び図5Aを用いた説明のみとする。
<工程(B)>
第2製造方法、第3製造方法において、工程(B)の陽極酸化については第1製造方法と同様である。
第2製造方法においては、陽極酸化皮膜31の形成後、マスクパターン41を除去して、マスク-パターンにより保護されて陽極酸化されずに残ったAl面(第1の面10r)を露出させた後に次工程(C)を実施する。マスクパターンの除去は、マスクの材質等に応じて好適な除去方法と採用することが好ましい。例えば、液相法や気相法で形成された樹脂や有機物等のマスクパターン41は、溶剤を用いた洗浄や、熱分解、光分解等を好ましく用いることができるし、フィルム、テープ等が貼付されていた場合は剥離することにより容易に除去できる。
<工程(C)>
第2製造方法及び第3製造方法において、工程(C)も第1製造方法と同様である。工程(C)では、工程(B)において陽極酸化皮膜31を形成した第1の面1rに給電電極200を接触させて、第1の面1rから給電して第2の面10sを陽極酸化し(図3A(C)、図4(C)、図5A(C)、図6(C))、給電電極200から剥離することにより絶縁層付き金属基板1aを得る(図3A(D)、図4(D)、図5A(D)、図6(D))。本工程においても給電電極200は、特許4723041号の陽極酸化装置においては給電ドラムに該当する。
工程(C)において、第2製造方法においては、工程(B)終了後に露出したAl面10rから、第3製造方法においては、導電性パターン42から給電されて第2の面10sの陽極酸化が進行する以外は第1製造方法と同様である。
工程(C)により、第2の面1s(10s)には、欠陥のほとんどない絶縁性の良好な陽極酸化皮膜32が形成される(図3A(C)、図4(C)、図5A(C)、図6(C))。
第2製造方法及び第3製造方法いずれも、通電部の形成方法及び態様が異なる以外は第1製造方法と同様であるので、第2製造方法及び第3製造方法は、第1製造方法と同様の効果を奏する。
「半導体素子」
図面を参照して、本発明に係る実施形態の半導体素子の構造について説明する。ここで、本実施形態の半導体素子は、半導体が光電変換半導体である光電変換素子である。図7は光電変換素子2の模式断面図である。
光電変換素子2は、上記本発明の絶縁層付金属基板11(1a,1b,1c)上に、下部電極(裏面電極)12と光電変換半導体13とバッファ層14と上部電極(透明電極)15とが順次積層された素子である。光電変換素子Cの下部電極、光電変換層および上部電極は、絶縁層としての陽極酸化皮膜上に形成される。以降、光電変換半導体は「光電変換層」と略記する。
光電変換素子2には、第1の開溝部16、光電変換層13とバッファ層14とを貫通する第2の開溝部17、及び光電変換層13とバッファ層14と上部電極15とを貫通する第3の開溝部18が形成されている。
上記構成では、第1〜第3の開溝部16〜18によって素子が多数の素子Cに分離された構造が得られる。また、第2の開溝部17内に上部電極15が充填されることで、ある素子Cの上部電極15が隣接する素子Cの下部電極12に直列接続した構造が得られる。
(光電変換層)
光電変換層13は光吸収により電流を発生する層である。その主成分は特に制限されず、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体であることが好ましい。また、光電変換層13の主成分は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。
さらに光吸収率が高く、高い光電変換効率が得られることから、光電変換層13の主成分は、Cu及びAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。
上記化合物半導体としては、
CuAlS,CuGaS,CuInS
CuAlSe,CuGaSe,CuInSe(CIS),
AgAlS,AgGaS,AgInS
AgAlSe,AgGaSe,AgInSe
AgAlTe,AgGaTe,AgInTe
Cu(In1−xGa)Se(CIGS),Cu(In1−xAl)Se,Cu(In1−xGa)(S,Se)
Ag(In1−xGa)Se,及びAg(In1−xGa)(S,Se)等が挙げられる。
光電変換層13は、CuInSe(CIS)、及び/又はこれにGaを固溶したCu(In,Ga)Se(CIGS)を含むことが特に好ましい。CIS及びCIGSはカルコパイライト結晶構造を有する半導体であり、光吸収率が高く、高い光電変換効率が報告されている。また、光照射等による効率の劣化が少なく、耐久性に優れている。
光電変換層13には、所望の半導体導電型を得るための不純物が含まれる。不純物は隣接する層からの拡散、及び/又は積極的なドープによって、光電変換層13中に含有させることができる。光電変換層13中において、I−III−VI族半導体の構成元素及び/又は不純物には濃度分布があってもよく、n型,p型,及びi型等の半導体性の異なる複数の層領域が含まれていても構わない。例えば、CIGS系においては、光電変換層13中のGa量に厚み方向の分布を持たせると、バンドギャップの幅/キャリアの移動度等を制御でき、光電変換効率を高く設計することができる。光電変換層13は、I−III−VI族半導体以外の1種又は2種以上の半導体を含んでいてもよい。I−III−VI族半導体以外の半導体としては、Si等のIVb族元素からなる半導体(IV族半導体)、GaAs等のIIIb族元素及びVb族元素からなる半導体(III−V族半導体)、及びCdTe等のIIb族元素及びVIb族元素からなる半導体(II−VI族半導体)等が挙げられる。光電変換層13には、特性に支障のない限りにおいて、半導体、所望の導電型とするための不純物以外の任意成分が含まれていても構わない。光電変換層13中のI−III−VI族半導体の含有量は特に制限されず、75重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、99重量%以上が特に好ましい。
CIGS層の成膜方法としては、1)多源同時蒸着法(J.R.Tuttle et.al ,Mat.Res.Soc.Symp.Proc., Vol.426 (1996)p.143.およびH.Miyazaki, et.al, phys.stat.sol.(a),Vol.203(2006)p.2603.等)、2)セレン化法(T.Nakada et.al,, Solar Energy Materials and Solar Cells 35(1994)204-214.およびT.Nakada et.al,, Proc. of 10th European Photovoltaic Solar Energy Conference(1991)887-890.等)、3)スパッタ法(J.H.Ermer,et.al, Proc.18th IEEE Photovoltaic Specialists Conf.(1985)1655-1658.およびT.Nakada,et.al, Jpn.J.Appl.Phys.32(1993)L1169-L1172.等)、4)ハイブリッドスパッタ法(T.Nakada,et.al., Jpn.Appl.Phys.34(1995)4715-4721.等)、及び5)メカノケミカルプロセス法(T.Wada et.al, Phys.stat.sol.(a), Vol.203(2006)p2593等)等が知られている。また、その他のCIGS成膜法としては、スクリーン印刷法、近接昇華法、MOCVD法、及びスプレー法などが挙げられる。例えば、スクリーン印刷法あるいはスプレー法等で、Ib族元素、IIIb族元素、及びVIb族元素を含む微粒子膜を基板上に形成し、熱分解処理(この際、VIb族元素雰囲気での熱分解処理でもよい)を実施するなどにより、所望の組成の結晶を得ることができる(特開平9−74065号公報、特開平9−74213号公報等)。
図8は、主なI−III−VI化合物半導体における格子定数とバンドギャップとの関係を示す図である。組成比を変えることにより様々な禁制帯幅(バンドギャップ)を得ることができる。バンドギャップよりエネルギーの大きな光子が半導体に入射した場合、バンドギャップを超える分のエネルギーは熱損失となる。太陽光のスペクトルとバンドギャップの組合せで変換効率が最大になるのがおよそ1.4〜1.5eVであることが理論計算で分かっている。光電変換効率を上げるために、例えばCu(In,Ga)Se(CIGS)のGa濃度を上げたり、Cu(In,Al)SeのAl濃度を上げたり、Cu(In,Ga)(S,Se)のS濃度を上げたりしてバンドギャップを大きくすることで、変換効率の高いバンドギャップを得ることができる。CIGSの場合、1.04〜1.68eVの範囲で調整できる。
(電極およびバッファ層)
下部電極(裏面電極)12及び上部電極(透明電極)15はいずれも導電性材料からなる。光入射側の上部電極15は透光性を有する必要がある。
例えば、下部電極12の材料としてMoを用いることができる。下部電極12の厚みは100nm以上であることが好ましく、0.45〜1.0μmであることがより好ましい。下部電極20の成膜方法は特に制限されず、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法等の気相成膜法が挙げられる。上部電極15の主成分としては、ZnO,ITO(インジウム錫酸化物),SnO,及びこれらの組合わせが好ましい。上部電極15は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造もよい。上部電極15の厚みは特に制限されず、0.3〜1μmが好ましい。バッファ層14としては、CdS,ZnS,ZnO,ZnMgO,ZnS(O,OH) ,及びこれらの組合わせが好ましい。
好ましい組成の組合わせとしては例えば、Mo下部電極/CIGS光電変換層/CdSバッファ層/ZnO上部電極が挙げられる。
ソーダライムガラス基板を用いた光電変換素子においては、基板中のアルカリ金属元素(Na元素)がCIGS膜に拡散し、光電変換効率が高くなることが報告されている。本実施形態においても、アルカリ金属をCIGS膜に拡散させることは好ましい。アルカリ金属元素の拡散方法としては、Mo下部電極上に蒸着法またはスパッタリング法によってアルカリ金属元素を含有する層を形成する方法(特開平8−222750号公報等)、Mo下部電極上に浸漬法によりNaS等からなるアルカリ層を形成する方法(WO03/069684号パンフレット等)、Mo下部電極上に、In、Cu及びGa金属元素を含有成分としたプリカーサを形成した後このプリカーサに対して例えばモリブデン酸ナトリウムを含有した水溶液を付着させる方法等が挙げられる。
また、下部電極12の内部に、NaS,NaSe,NaCl,NaF,及びモリブデン酸ナトリウム塩等の1種又は2種以上のアルカリ金属化合物を含む層を設ける構成も好ましい。
光電変換層13〜上部電極15の導電型は特に制限されない。通常、光電変換層13はp層、バッファ層14はn層(n−CdS等)、上部電極15はn層(n−ZnO層等 )あるいはi層とn層との積層構造(i−ZnO層とn−ZnO層との積層等)とされる。かかる導電型では、光電変換層13と上部電極15との間に、pn接合、あるいはpin接合が形成されると考えられる。また、光電変換層13の上にCdSからなるバッファ層14を設けると、Cdが拡散して、光電変換層13の表層にn層が形成され、光電変換層13内にpn接合が形成されると考えられる。光電変換層13内のn層の下層にi層を設けて光電変換層13内にpin接合を形成してもよいと考えられる。
(その他の層)
光電変換素子2は必要に応じて、上記で説明した以外の任意の層を備えることができる。例えば、絶縁層付金属基板11(1a,1b,1c)と下部電極12との間、及び/又は下部電極12と光電変換層13との間に、必要に応じて、層同士の密着性を高めるための密着層(緩衝層)を設けることができる。また、必要に応じて、絶縁層付金属基板11と下部電極12との間に、アルカリイオンの拡散を抑制するアルカリバリア層を設けることができる。アルカリバリア層については、特開平8−222750号公報を参照されたい。
また光電変換素子2は、太陽電池等に好ましく使用することができる。光電変換素子2に対して必要に応じて、カバーガラス、保護フィルム等を取り付けて、太陽電池とすることができる。しかし、本発明に係る半導体素子は光電変換素子に限られるものではなく、本実施形態で説明したプレーナ型半導体素子のみならず、メサ型半導体素子にも適用可能である。また、縦型半導体素子や横型半導体素子にも適用可能である。具体的には、例えば可撓性トランジスタ等にも適用可能である。
以下に本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
第二の面側から、純度4Nアルミニウム基板(以後、4NAl基板とする)(厚さ20μm)/SUS430(厚さ50μm)/4NAl基板(厚さ20μm)のAlクラッド材を用意し、第一の面に、絶縁性テープ(幅1mm)を用いて間隔50mmにて配されたストライプ状のマスクをし、硫酸水溶液中、10Vの電圧で10μmの厚さに陽極酸化皮膜を形成した。マスクを除去し、この部分が直径となるようにφ5mmの金属板を押し当て、第二の面(Al面)との抵抗を測定した結果、1Ω以下であった。
次に、第一の面を介した裏面給電方式で、第二の面に、第一の面と同様の条件で10μmの厚さの陽極酸化皮膜を形成して本発明の絶縁層付き金属基板を得た。
この基板を30mm角にカットし、450℃で熱処理し、基板の反りを評価した。評価は、光学式非接触3次元表面形状測定装置(Veeco製Wyko NT1100)を用いた。その結果、曲率半径10m以上であることが確認された。
更に、熱処理後の基板上に直径が3.6mmの上部金電極を形成し、湿度50%の大気中で、基板を正極性として、1Vずつ印加電圧を増加させてリーク電流を測定した。その結果、200Vにおいて1×10-6A/cm2以下のリーク電流であった。
(実施例2)
平均粒径が1μmのSi粒子を1%表面に埋入させたAl材を用意した。
このAl材を第1の面側のAl基材とした以外は、実施例1と同様の構成としてAlクラッド材を形成した。このAlクラッド材の第1の面に、実施例1と同様の陽極酸化条件にて膜厚2μmの陽極酸化皮膜を形成した。得られた陽極酸化皮膜の断面の電子顕微鏡写真を図9Aに、表面の電子顕微鏡写真を図9Bに示す。
図9Aにおいて、Si粒子には符号20を、陽極酸化皮膜には符号31を、SUSには符号100を付してある。符号20pもSi粒子であるが、粒径が小さく、Al基材中に埋入していることから導電部として機能しなかったものである。
図9Aに示されるように、Si粒子20が埋入している箇所には膜厚方向に陽極酸化皮膜31が形成されておらず、Si粒子は、表面側では露出し、SUSへの導電部となっている。図9Bの表面像では、このような箇所が面内に分散して形成されていることが確認される。
実施例1と同様にして、この表面(第一の面)にφ5mmの金属板を押し当て、第二の面(Al面)との抵抗を測定した結果、1Ω以下であった。
次に、実施例1と同様にして、第二の面に、第一の面と同様の条件で2μmの厚さの陽極酸化皮膜を形成し、基板の反り及びリーク電流の測定を行った。その結果、基板の反りは曲率半径10m以上であり、リーク電流は、200Vにおいて1×10-6A/cm2以下であった。
(実施例3)
4NAl基材(厚さ300um)を用意し、第一の面に、実施例1と同様にして絶縁性テープ(幅1mm)を用いて被覆を施し、シュウ酸水溶液中、40Vの電圧で10μmの厚さに陽極酸化皮膜を形成した後、テープを除去した。テープ除去部分には陽極酸化皮膜が形成されておらず、Alが表面に露出していることが確認された。
Al露出部分が直径となるようにφ5mmの金属板を押し当て、実施例1と同様にして第一面との抵抗を測定したところ、1Ω以下であった。
第一の面を介した裏面給電方式で、第二の面に、第一面と同様の条件で10μmの厚さに陽極酸化皮膜を形成し、実施例1と同様にして、基板の反り及びリーク電流の測定を行った。その結果、基板の反りは曲率半径10m以上であり、リーク電流は、200Vにおいて1×10-6A/cm2以下であった。
(実施例4)
実施例1と同様のSi粒子埋入Al基材を用意し、4NAl基材とを重ねて圧延して被陽極酸化基板を得た。圧延後のそれぞれのアルミ材の厚さは150μmであり、全体の厚さは300μmであった。
この被陽極酸化基板をの第一の面に、実施例2と同様の条件で厚さ2μmの陽極酸化皮膜を形成した。第1の面において、Si粒子20が埋入し、膜厚方向に陽極酸化皮膜31が形成されていない導電部が面内に分散して形成されていることが確認された。
実施例1と同様にして、この表面(第一の面)にφ5mmの金属板を押し当て、第二の面(Al面)との抵抗を測定した結果、1Ω以下であった。
次に、実施例1と同様にして、第二の面に、第一の面と同様の条件で2μmの厚さの陽極酸化皮膜を形成し、基板の反り及びリーク電流の測定を行った。その結果、基板の反りは曲率半径10m以上であり、リーク電流は、200Vにおいて1×10-6A/cm2以下であった。
(比較例1)
実施例1と同様のSUS基材の片面のみの4NAl基材が形成された合板基板を用い、Al面に、裏面給電方式で、実施例1と同様の条件で厚さ2μmの陽極酸化皮膜を形成した。
この基板について、実施例1と同様にして基板の反り及びリーク電流の測定を行った。その結果、基板の反りは曲率半径20cmであり、リーク電流は、200Vにおいて1×10-6A/cm2以下であった。
(比較例2)
4NAl基材が両面に形成された基板を用い、第一の面に実施例1と同様にして2μm厚の陽極酸化皮膜を形成した。陽極酸化皮膜にφ5mmの金属板を押し当て、第二の面との抵抗を測定した結果、1kΩ以上であった。
実施例1と同様にして、第一の面を介した裏面給電方式にて第二の面の陽極酸化を実施したところ、給電ができず、第二の面に陽極酸化皮膜を形成することができなかった。
表1に、上記実施例及び比較例の結果を纏めて示す。実施例及び比較例より、本発明の有効性が示された。
1a,1b,1c,11 絶縁層付き金属基板
2 半導体素子(光電変換素子)
10a 被陽極酸化金属基板
12,14 電極
13 半導体層(光電変換層)
1r、10r 第一の面
1s,10s 第二の面
10 Alクラッド材
20 導電性無機粒子,通電部
41 マスク
42 導電領域,通電部
31 第1の陽極酸化皮膜
32 第2の陽極酸化皮膜

Claims (20)

  1. 両面に陽極酸化皮膜を備えた絶縁層付き金属基板の製造方法において、
    被陽極酸化金属基板を製造する工程(A)と、
    該被陽極酸化金属基板の第1の面を陽極酸化して第1の陽極酸化皮膜を形成する工程(B)と、
    前記第1の面の裏面である第2の面を、前記第1の面から給電することにより陽極酸化して第2の陽極酸化皮膜を形成する工程(C)とを順次有し、
    前記工程(A)において、前記第1の面側に、前記工程(C)における陽極酸化時の前記基板に前記第1の面から通電可能な通電部を一様に形成することを特徴とする絶縁層付き金属基板の製造方法。
  2. 前記工程(A)において、前記第1の面に導電性無機物の領域を一様に露出させて前記の通電部を形成することを特徴とする請求項1に記載の絶縁層付き金属基板の製造方法。
  3. 前記工程(A)において、複数の導電性無機微粒子が前記第1の面に一様に埋め込まれてなる前記複数の通電部を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁層付き金属基板の製造方法。
  4. 前記導電性無機微粒子がSi粒子であることを特徴とする請求項3に記載の絶縁層付き金属基板の製造方法。
  5. 前記導電性無機微粒子がTi粒子であることを特徴とする請求項3に記載の絶縁層付き金属基板の製造方法。
  6. 前記第1の面の上面視における前記導電性無機粒子の平均粒径が、前記第1の陽極酸化皮膜の平均膜厚以上であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の絶縁層付き金属基板の製造方法。
  7. 前記工程(A)において、前記第1の面における前記通電部の形成領域に対応する位置に、前記工程(B)において陽極酸化されないようにマスクを配置し、
    該マスクを前記工程(B)終了後に除去し、
    前記マスク除去後に前記第1の面に露出した金属部を前記通電部として前記工程(C)を実施することを特徴とする請求項1に記載の絶縁層付き金属基板の製造方法。
  8. 前記被陽極酸化金属基板がAl基板であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の絶縁層付き金属基板の製造方法。
  9. 前記被陽極酸化金属基板が、厚み方向に複数種の金属層が積層された複合金属基板であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の絶縁層付き金属基板の製造方法。
  10. 両面に陽極酸化被膜が形成されてなる絶縁層付き金属基板であって、
    一方の面の前記陽極酸化皮膜に該面から一対の前記陽極酸化皮膜に挟持された金属部に通電可能な通電部が一様に形成されてなることを特徴とする絶縁層付き金属基板。
  11. 前記通電部が前記面に一様に露出されてなる導電性無機物の領域であることを特徴とする請求項10に記載の絶縁層付き金属基板。
  12. 前記通電部が前記面に一様に埋め込まれてなる複数の導電性無機微粒子であることを特徴とする請求項11に記載の絶縁層付き金属基板。
  13. 前記導電性無機微粒子がSi粒子であることを特徴とする請求項12に記載の絶縁層付き金属基板。
  14. 前記導電性無機微粒子がTi粒子であることを特徴とする請求項12に記載の絶縁層付き金属基板。
  15. 前記導電性無機物がAlであることを特徴とする請求項11に記載の絶縁層付き金属基板。
  16. 前記被陽極酸化金属基板がAl基板であることを特徴とする請求項10〜15のいずれかに記載の絶縁層付き金属基板。
  17. 前記被陽極酸化金属基板が、前記第1の面及び第2の面がAl面であるクラッド材であることを特徴とする請求項10〜15のいずれかに記載の絶縁層付き金属基板。
  18. 請求項10〜請求項17のいずれかに記載の絶縁層付き金属基板の前記通電部が形成されていない面上に、半導体層および該半導体層に電圧を印加する少なくとも一対の電極を備えてなることを特徴とする半導体素子。
  19. 前記半導体層が光吸収により電流を発生する光電変換機能を有する光電変換素子であることを特徴とする請求項18記載の半導体素子。
  20. 前記半導体層の主成分が、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体であることを特徴とする請求項19に記載の半導体素子。
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