JP5519972B2 - 水硬性材料用収縮低減剤 - Google Patents

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Description

本発明は、水硬性材料用収縮低減剤に関する。より詳細には、優れた収縮低減機能を有する水硬性材料用収縮低減剤に関する。
水硬性材料は、強度や耐久性等に優れた硬化物を与える。このことから、水硬性材料は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物として広く用いられている。水硬性材料は、土木・建築構造物を構築するために欠かすことができない。
水硬性材料は、硬化した後に、外気温や湿度条件等により、内部に残った未反応水分の散逸を起こす。このため、乾燥収縮が進行し、硬化物中にひび割れが生じ、強度や耐久性が低下するという問題がある。土木・建築構造物の強度や耐久性等が低下すると、安全性の低下や修復コストの増大など、重大な問題が生じる。
このような問題に対し、法規制が強化されてきている。1999年6月に成立した住宅の品質確保の促進に関する法律では、コンクリートのひび割れも瑕疵保証の対象となっている。2009年2月に改訂された、鉄筋コンクリート造に関する建築工事標準仕様書(JASS 5(日本建築学会))では、耐用年数が長期(100年以上)にわたるコンクリートにおける26週での収縮ひずみが800×10−6以下に規制されることとなった。
最近、コンクリート硬化物の乾燥収縮を低減させる方法として、水硬性材料用収縮低減剤が重要視されている。上記JASS 5の改訂と同時に、水硬性材料用収縮低減剤に関する建築学会基準の制定が予定されている。
水硬性材料用収縮低減剤として、炭素原子数1〜4のアルコールのアルキレンオキシド付加物(特許文献1参照)、2〜8価の多価アルコールのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共付加物(特許文献2参照)、低級アルキルアミンのアルキレンオキシド付加物(特許文献3参照)、オリゴマー領域のポリプロピレングリコール(特許文献4参照)、低分子アルコール類(特許文献5参照)、2−エチルヘキサノールのアルキレンオキシド付加物(特許文献6参照)が報告されている。しかしながら、これらの水硬性材料用収縮低減剤は、コンクリートに使用した場合に強度が低下するという問題がある。このため、強度を保つためにセメントペースト分の割合を高くする必要があり、コンクリートコストが高くなるという問題が生じる。
コンクリートに使用した場合の強度低下を抑制し得る水硬性材料用収縮低減剤として、2〜8価の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物が報告されている(特許文献7、8参照)。しかしながら、これらの水硬性材料用収縮低減剤は、いずれも、粉末樹脂、膨張材などの他の混和材料との組み合わせが必要となっており、コンクリートコストが高くなるという問題は解決できていない。
特公昭56−51148号公報 特公平1−53214号公報 特公平1−53215号公報 特開昭59−152253号公報 特公平6−6500号公報 特許第2825855号公報 特開平9−301758号公報 特開2002−68813号公報
本発明の目的は、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能によりコンクリート硬化体のひび割れ発生を抑制し、減水剤との相溶性が良好であることから優れた減水機能を付与し、さらに、消泡剤およびAE剤により連行空気の質を容易に改良できることから優れた耐凍結融解性を付与し、コンクリート硬化体の耐久性を向上させることができる、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤を提供することにある。
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、一般式(1)で表される化合物である。
−[O−(AO)−R (1)
(一般式(1)中、RはR−[OH]で表される多価アルコール由来のRを表し、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、Rは水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、mはオキシアルキレン基AOの平均付加モル数を表し、nは3または4であり、n=3のときmは30〜150であり、n=4のときmは5〜150である。)
好ましい実施形態においては、上記AOが炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。
好ましい実施形態においては、上記AOの50モル%以上がオキシエチレン基である。
好ましい実施形態においては、上記R−[OH]で表される多価アルコールがトリメチロールアルカンである。
好ましい実施形態においては、上記R−[OH]で表される多価アルコールがペンタエリスリトールである。
本発明によれば、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能によりコンクリート硬化体のひび割れ発生を抑制し、減水剤との相溶性が良好であることから優れた減水機能を付与し、さらに、消泡剤およびAE剤により連行空気の質を容易に改良できることから優れた耐凍結融解性を付与し、コンクリート硬化体の耐久性を向上させることができる、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤を提供することができる。
本発明の水硬性材料用収縮低減剤(本明細書中においてA成分と称することがある)は、一般式(1)で表される化合物である。
−[O−(AO)−R (1)
一般式(1)中、RはR−[OH]で表される多価アルコール由来のRを表す。
一般式(1)中、nは3または4である。すなわち、n=3のとき、R−[OH]で表される多価アルコールは3価の多価アルコール(3価アルコール:R−[OH])であり、n=4のとき、R−[OH]で表される多価アルコールは4価の多価アルコール(4価アルコール:R−[OH])である。
上記3価アルコールとしては、具体的には、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等のトリメチロールアルカン、1,3,5−ペンタトリオールが挙げられる。好ましくはトリメチロールアルカン、より好ましくはトリメチロールプロパンである。
上記4価アルコールとしては、具体的には、例えば、ペンタエリスリトールが挙げられる。
一般式(1)中、Rは、n=3のとき、好ましくは炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1〜15の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、特に好ましくは炭素原子数1〜6の炭化水素基である。
一般式(1)中、Rは、n=4のとき、好ましくは炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1〜15の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、特に好ましくは炭素原子数1〜6の炭化水素基である。
一般式(1)中、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。AOは、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基が好ましい。具体的には、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。AOの炭素原子数が大きすぎると、本発明の水硬性材料用収縮低減剤の水への溶解性が低下するおそれがある。
一般式(1)中、AOは1種のみのオキシアルキレン基からなっていても良いし、2種以上のオキシアルキレン基からなっていても良い。AOが2種以上のオキシアルキレン基からなっている場合には、それらはランダム付加体となっていても良いし、ブロック付加体となっていても良いし、交互付加体となっていても良い。
一般式(1)中、AOの50モル%以上がオキシエチレン基であることが好ましく、AOの60〜100モル%がオキシエチレン基であることがより好ましく、AOの80〜100モル%がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、AOの90〜100モル%がオキシエチレン基であることが特に好ましい。
一般式(1)中、mはオキシアルキレン基AOの平均付加モル数を表す。n=3のとき、mは30〜150であり、n=4のとき、mは5〜150である。mを上記範囲内に制御することにより、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、硬化物の強度低下を抑制し得るとともに、優れた収縮低減機能を発現し得る。
一般式(1)中、Rは水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。Rは、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜15の炭化水素基であり、さらに好ましくは水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、特に好ましくは水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基である。
本発明の水硬性材料用収縮低減剤の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)によるポリエチレングリコール換算での重量平均分子量(Mw)が、好ましくは500〜500000、より好ましくは1000〜300000、さらに好ましくは5000〜200000、特に好ましくは8000〜100000である。重量平均分子量(Mw)が500未満であると、本発明の水硬性材料用添加剤の減水性能が低下するおそれがある。重量平均分子量(Mw)が500000を超えると、本発明の水硬性材料用添加剤の減水性能、スランプロス防止能が低下するおそれがある。なお、本明細書中、重量平均分子量は、下記GPC測定条件により測定される値である。
〔GPC分子量測定条件〕
使用カラム:東ソー社製TSKguardcolumn SWXL+TSKge1 G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調整した溶離液溶液を用いる。
打込み量:0.5%溶離液溶液100μL
溶離液流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470。
検量線次数:三次式
検出器:日本Waters社製 410 示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 MILLENNIUM Ver.3.21
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、減水剤(本明細書中においてB成分と称することがある)を併用しても良い。減水剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明の水硬性材料用収縮低減剤と併用し得る減水剤としては、任意の適切な減水剤を採用し得る。例えば、リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系(特開平1−113419号公報参照)等のスルホン酸塩、およびポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体、例えば、3−メチル3−ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、これらの単量体と共重合可能な単量体から得られる共重合体またはその塩(特開昭62−68808公報、特開平10−236858号公報、特開2001−220417号公報参照);(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステルあるいはポリエチレン(プロピレン)グリコールモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、からなる共重合体(特開昭62−216950号公報参照);(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、からなる共重合体(特開平1−226757号公報参照);ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体(特開平4−149056号公報参照);ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アリルスルホン酸(塩)あるいはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、からなる共重合体(特開平6−191918号公報参照);アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体あるいはその加水分解物またはその塩(特開平5−43288号公報参照);ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、これらの単量体と共重合可能な単量体、からなる共重合体(特公昭59−18338号公報参照);スルホン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび必要に応じてこれと共重合可能な単量体からなる共重合体またはその塩(特公昭62−119147号公報参照);アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物(特開平6−298555号公報参照);ポリアルキレングリコールモノエステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体および(メタ)アリルスルホン酸系単量体の中から選ばれる1種以上の単量体との、共重合体(特開平7−223852号公報参照);スチレンスルホン酸、スルホアルキル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノリン酸エステルから選ばれる1種以上の単量体、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、および不飽和カルボン酸系単量体からなる共重合体またはその塩(特開平11−79811号公報参照);(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、および(ヒドロキシ)アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(特開2004−307590号公報参照);(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、リン酸モノエステル系単量体、およびリン酸ジエステル系単量体からなる共重合体またはその塩(特開2006−52381号公報参照);不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体と不飽和モノカルボン酸系単量体との共重合体(特開2002−121055号公報、特開2002−121056号公報参照);などが挙げられる。これらの中でも、リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;3−メチル3−ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、これらの単量体と共重合可能な単量体から得られる共重合体またはその塩(特開昭62−68808公報、特開平10−236858号公報、特開2001−220417号公報参照);ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体(特開平4−149056号公報参照);アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体あるいはその加水分解物またはその塩(特開平5−43288号公報参照);ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、これらの単量体と共重合可能な単量体、からなる共重合体(特公昭59−18338号公報参照);ポリアルキレングリコールモノエステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体および(メタ)アリルスルホン酸系単量体の中から選ばれる1種以上の単量体との、共重合体(特開平7−223852号公報参照);(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、および(ヒドロキシ)アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(特開2004−307590号公報参照);(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、リン酸モノエステル系単量体、およびリン酸ジエステル系単量体からなる共重合体またはその塩(特開2006−52381号公報参照);不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体と不飽和モノカルボン酸系単量体との共重合体(特開2002−121055号公報、特開2002−121056号公報参照);が好ましい。
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、AE剤(本明細書中においてC成分と称することがある)や消泡剤(本明細書中においてD成分と称することがある)を併用しても良い。AE剤や消泡剤は、それぞれ、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明の水硬性材料用収縮低減剤と併用し得るAE剤としては、任意の適切なAE剤を採用し得る。例えば、樹脂石鹸、飽和または不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステルまたはその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネートが挙げられる。
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物と併用し得る消泡剤としては、任意の適切な消泡剤を採用し得る。例えば、
(1)燈油、流動パラフィン等の鉱油系消泡剤:
(2)動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等の油脂系消泡剤:
(3)オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等の脂肪酸系消泡剤:
(4)グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等の脂肪酸エステル系消泡剤:
(5)(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド;等のオキシアルキレン系消泡剤:
(6)オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等のアルコール系消泡剤:
(7)アクリレートポリアミン等のアミド系消泡剤:
(8)リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等のリン酸エステル系消泡剤:
(9)アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等の金属石鹸系消泡剤:
(10)ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等のシリコーン系消泡剤:
が挙げられる。
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、本発明の作用効果を奏する限り、必要に応じて、その他の成分を併用しても良い。その他の成分としては、例えば、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、他の乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏が挙げられる。これらは1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。しかしながら、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能を有するという効果を発現できるので、上記に挙げたような他の混和材料は、必要でなければ、特に用いなくても良い。
本発明の水硬性材料用収縮低減剤の製造方法については、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、上述したR−[OH]で表される多価アルコールに、アルカリ成分(例えば、水酸化ナトリウム)の存在下で、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを付加反応させる方法が挙げられる。
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、優れた収縮低減機能とともに優れた水溶性および減水剤との相溶性を有する。本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、水、減水剤と任意の割合で溶解させることが可能であることから、水/セメント比の適用範囲が広く、水/セメント比(重量比)で、好ましくは60%〜15%のコンクリートまで製造が可能である。従って、汎用性が高く、種々の用途のセメント組成物に添加して用いることが可能である。
本発明の水硬性材料用収縮低減剤を用いたセメント組成物とは、好ましくは、セメント、細骨材、および水から成るモルタル、さらに粗骨材から成るコンクリート等のセメント組成物に、本発明の水硬性材料用収縮低減剤を所定の割合で添加したものである。
セメント組成物の製造に用いるセメントとしては、例えば、普通、低熱、中庸熱、早強、超早強、耐硫酸塩等のポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、シリカヒュームセメントが挙げられる。また、セメント組成物中の粉体として、例えば、シリカヒューム、フライアッシュ、石灰石微粉末、高炉スラグ微粉末、膨張材、その他の鉱物質微粉末等が挙げられる。細骨材としては、例えば、川砂、山砂、海砂、砕砂、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。粗骨材としては、例えば、川砂利、砕石、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。水としては、例えば、JIS A 5308付属書9に示される上水道水、上水道水以外の水(河川水、湖沼水、井戸水など)、回収水が挙げられる。
コンクリート組成物中には、任意の適切な添加剤を加えても良い。例えば、硬化促進剤、凝結遅延剤、防錆剤、防水剤、防腐剤が挙げられる。
コンクリート組成物の製造方法、運搬方法、打設方法、養生方法、管理方法などについては、任意の適切な方法を採用し得る。
セメント組成物における、本発明の水硬性材料用収縮低減剤の添加量は、目的に応じて任意の適切な量を採用し得る。例えば、セメント100重量部に対し、0.5〜10.0重量%とすることが好ましい。
また、セメント組成物100容量部当たりのセメント容量が14容量%を超える場合は、好ましくはセメント100重量部に対して0.5〜10.0重量%、より好ましくは0.5〜6.0重量%とすることが好ましい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
〔コンクリート配合に用いる各成分の固形分測定〕
コンクリート物性評価に用いる各成分の固形分測定は下記のように行った。
1.アルミ皿を精秤した。
2.精秤したアルミ皿上に固形分を測定する成分を載せて精秤した。
3.窒素雰囲気下、130℃に調温した乾燥機内に、上記2で精秤した成分を1時間入れた。
4.1時間後、上記成分を乾燥機から取り出し、デシケーター内で15分間放冷した。
5.15分後、乾燥後の上記成分をデシケーターから取り出し、アルミ皿と乾燥後の上記成分を精秤した。
6.下記式により、固形分を算出した。
固形分(%)={〔(上記5の精秤で得られた重量)−(上記1の精秤で得られた重量)〕/〔(上記2の精秤で得られた重量)−(上記1の精秤で得られた重量)〕}×100
〔モルタル物性評価〕
≪モルタルの混練≫
所定量の収縮低減剤(A成分)を秤量して水で希釈したもの225g、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)450g、セメント強さ試験用標準砂(JIS R5201−1997附属書2の5.1.3に規定:セメント協会)1350gを、ホバート型モルタルミキサー(ホバート社製、型番:N−50)を用い、JIS R5201−1997の方法に従い、モルタルの混練を行った。
また、モルタル空気量がA成分を添加しないモルタル(基準モルタル)の空気量に対して±3vol%以内となるように、必要に応じて消泡剤(ポリアルキレングリコール誘導体)を使用して調整した。
≪モルタル空気量の測定≫
モルタル空気量の測定は、500mlメスシリンダーを用い、JIS A1174(まだ固まらないポリマーセメントモルタルの単位容積重量試験方法及び空気量の重量による試験方法(重量方法))に準拠して実施した。
≪乾燥収縮低減性の評価≫
モルタルの混練を上記1と同様に実施した。次に、乾燥収縮低減性評価用のモルタル供試体(4×4×16cm)の作成を、JIS A1129に従って実施した。型枠には予めシリコングリースを塗布して止水すると共に容易に脱型できるようにした。また、供試体の両端にはゲージプラグを装着した。混練して得られたモルタルを流し込んだ型枠を容器に入れ、密閉し、20℃で保管し、初期養生を行った。1日後に脱型し、供試体に付着したシリコングリースを、たわしを用いて水で洗浄し、続いて、20℃の静水中で6日間養生(水中養生)した。JIS A1129に従い、ダイヤルゲージ((株)西日本試験機製)を使用し、静水中で6日間養生した供試体の表面の水を紙タオルで拭き取った後、直ちに測長し、この時点の長さを基準とした。その後、温度20℃、湿度60%に設定した恒温恒湿室内に保存し、適時測長した。この際、長さ変化比は、下記式で示されるように、基準モルタルの収縮量に対する、A成分添加モルタルの収縮量の比とし、値が小さいほど、収縮を低減できることを示す。
長さ変化比
={(A成分添加モルタルの収縮量)/(基準モルタルの収縮量)}×100
〔コンクリート物性評価〕
≪フレッシュコンクリートのスランプ値、空気量の評価≫
得られたフレッシュコンクリートについて、スランプ値、空気量を以下の方法により評価した。
スランプ値:JIS A 1101−1998
空気量 :JIS A 1128−1998
≪コンクリート圧縮強度の評価≫
得られたフレッシュコンクリートを圧縮強度評価用の供試体型枠(直径10cm、高さ20cm)に入れ、密閉して20℃で保管し、初期養生を行った。1日後に脱型し、20℃で水中養生を行い、材齢7日時点で圧縮強度の測定をJIS A 1108に準拠して実施した。この際、圧縮強度比は、下記式で示されるように、収縮低減剤を使用しないコンクリート(基準コンクリート)の圧縮強度に対する、収縮低減剤添加コンクリートの圧縮強度の比とし、値が大きいほど、圧縮強度の低下が抑制されることを示す。
圧縮強度比
={(収縮低減剤添加コンクリートの圧縮強度)/(基準コンクリートの圧縮強度)}×100
≪気泡間隔係数の測定≫
AE剤および消泡剤を用いて所定の空気量(5.0±0.5%)のコンクリートを混練した後、6mm以上の骨材を取り除いたモルタルについてエアボイドアナライザー(AVA;商品名、ジャーマンインストゥルメンツ社製)にて耐凍結融解性の指標となる気泡間隔係数の測定を行った。
まず、20℃に調温したAVA測定用溶液250mlと水約2000mlを測定した。次に、カラムに充填した後、モルタル20mlを採取し、カラムの底部に注入した。注入後、モルタルを30秒間攪拌し液中にモルタルの連行空気を十分に液中に放出させた。放出された気泡を経時測定することにより、気泡間隔係数の計算を行った。気泡間隔係数の計算に際して、コンクリート全体積より6mm以上の骨材の占める体積を除いた値(モルタル容積率)を64.3%とした。この値が小さいほど、コンクリート中に連行された気泡が密に分散している(良質の気泡をコンクリート中に連行している)ことを示し、耐凍結融解性に優れていると考えられる。
≪耐凍結融解性の評価≫
得られたフレッシュコンクリートを10×10×40cmの供試体型枠に入れ、2日間20℃にて封緘養生後脱型し、さらに28日間20℃の静水中で水中養生した後、耐凍結融解性の評価を実施した。
耐凍結融解性の評価は、JIS A 1148−2001中のA法に従い、30サイクルごとにJIS A 1127−2001に従い一次共鳴振動数および供試体重量を測定することにより実施した。
この際、30サイクルごとの耐凍結融解性は、下記式(1)で示されるように、凍結融解サイクル開始前(0サイクル)の一次共鳴振動数に対する、各サイクル終了時点の一次共鳴振動数から相対動弾性係数を算出して評価を実施した。凍結融解サイクルは最大300サイクルとし、300サイクル以前に相対動弾性係数が60%以下となった時点で評価を終了した。また、最終的な耐凍結融解性については、下記式(2)で示す耐久性指数を算出することにより評価を実施した。これらの値はいずれも100に近いほど良好な耐凍結融解性を有することを示す。
相対動弾性係数(%)=(f /f )×100 ・・・(1)
:凍結融解nサイクル後の一次共鳴振動(Hz)
:凍結融解0サイクル後の一次共鳴振動(Hz)
耐久性指数=(P×N)/300 ・・・(2)
P:凍結融解Nサイクル時の相対動弾性係数(%)
N:相対動弾性係数が60%以下となった凍結融解サイクル数、または300サイクルのいずれか小さいほう
〔製造例1〕
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管および還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に水200.2gを仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数25)225.2g、メタクリル酸44.8g、水450gおよび連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸2.2gを混合したモノマー水溶液を4時間、並びに5.2%過硫酸アンモニウム水溶液60gを5時間かけて反応容器に滴下し、5.2%過硫酸アンモニウム水溶液滴下終了後、さらに1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0まで中和して重量平均分子量22600の共重合体水溶液(共重合体(1))を得た。
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管および還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に水200.2gを仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数25)239.9g、メタクリル酸20.1g、水450gおよび連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸2.2gを混合したモノマー水溶液を4時間、並びに5.2%過硫酸アンモニウム水溶液60gを5時間かけて反応容器に滴下し、5.2%過硫酸アンモニウム水溶液滴下終了後、さらに1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0まで中和して重量平均分子量35600の共重合体水溶液(共重合体(2))を得た。
〔製造例2〕:ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体PC−1の合成
製造例1で得られた共重合体(1)および共重合体(2)を、固形分換算の重量比で、共重合体(1)/共重合体(2)=30/70の割合で混合し、ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体(B)に相当する共重合体水溶液PC−1を得た。
〔実施例1〕
攪拌機、圧力計、および温度計を備えた圧力容器中に、市販のトリメチロールプロパン50gおよび水酸化ナトリウム1.25gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃以上まで昇温させた後、150±5℃に維持しながらエチレンオキシド2562.4gを添加し、トリメチロールプロパンの活性水素にエチレンオキシドがそれぞれ50モルずつ付加された化合物(以下、TMP150と称する)を得た。
攪拌機、圧力計、および温度計を備えた圧力容器中に、TMP150を1000gおよび水酸化ナトリウムを0.25g仕込んだ。次いで、反応系を120℃以上まで昇温させた後、150±5℃に維持しながらエチレンオキシド490gを添加し、トリメチロールプロパンの活性水素にエチレンオキシドがそれぞれ75モルずつ付加された化合物(以下、TMP225と称する)を得た。
得られたTMP225について、その配合量をセメント100重量部に対して1重量部とし、空気量、乾燥収縮低減性の評価を行った。使用した配合物を表1に示し、評価結果を表2に示した。
〔比較例1〕
攪拌機、圧力計、および温度計を備えた圧力容器中に、TMP225を500gおよび水酸化ナトリウムを0.3g仕込んだ。次いで、反応系を120℃以上まで昇温させた後、150±5℃に維持しながらエチレンオキシド526.2gを添加し、トリメチリロールプロパンの活性水素にエチレンオキシドがそれぞれ155モルずつ付加された化合物(以下、TMP465と称する)を得た。
得られたTMP465について、その配合量をセメント100重量部に対して1重量部とし、空気量、乾燥収縮低減性の評価を行った。使用した配合物を表1に示し、評価結果を表2に示した。
Figure 0005519972
Figure 0005519972
表2に示すように、活性水素1モルあたりのエチレンオキシド付加モル数が75モルのTMP225は、活性水素1モルあたりのエチレンオキシド付加モル数が155モルのTMP465に比べて長さ変化比が小さく、TMP225がTMP465に比べて良好な収縮低減性能を示していることがわかる。
〔実施例2〕
実施例1で得られたTMP225について、その配合量をセメント100重量部に対して2重量部とし、空気量、乾燥収縮低減性の評価を行った。使用した配合物を表1に示し、評価結果を表3に示した。
〔実施例3〕
実施例1で得られたTMP150について、その配合量をセメント100重量部に対して2重量部とし、空気量、乾燥収縮低減性の評価を行った。使用した配合物を表1に示し、評価結果を表3に示した。
〔実施例4〕
攪拌機、圧力計、および温度計を備えた圧力容器中に、PNT4(ペンタエリスリトールのエチレンオキシド4モル付加品:市販品)を140gおよび水酸化ナトリウムを0.7g仕込んだ。次いで、反応系を150℃以上まで昇温させた後、150±5℃に維持しながらエチレンオキシド697.3gを添加し、ペンタエリスリトールの活性水素にエチレンオキシドがそれぞれ10モルずつ付加された化合物(以下、PNT40と称する)を得た。
得られたPNT40について、その配合量をセメント100重量部に対して2重量部とし、空気量、乾燥収縮低減性の評価を行った。使用した配合物を表1に示し、評価結果を表3に示した。
〔実施例5〕
攪拌機、圧力計、および温度計を備えた圧力容器中に、PNT40を700gおよび水酸化ナトリウムを0.5g仕込んだ。次いで、反応系を150℃以上まで昇温させた後、150±5℃に維持しながらエチレンオキシド649.8gを添加し、ペンタエリスリトールの活性水素にエチレンオキシドがそれぞれ20モルずつ付加された化合物(以下、PNT80と称する)を得た。
得られたPNT80について、その配合量をセメント100重量部に対して2重量部とし、空気量、乾燥収縮低減性の評価を行った。使用した配合物を表1に示し、評価結果を表3に示した。
〔比較例2〕
攪拌機、圧力計、および温度計を備えた圧力容器中に、市販のトリメチロールプロパン450gおよび水酸化ナトリウム0.67gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃以上まで昇温させた後、150±5℃に維持しながらエチレンオキシド886.5gを添加し、トリメチロールプロパンの活性水素にエチレンオキシドがそれぞれ2モルずつ付加された化合物(以下、TMP6と称する)を得た。
得られたTMP6について、その配合量をセメント100重量部に対して2重量部とし、空気量、乾燥収縮低減性の評価を行った。使用した配合物を表1に示し、評価結果を表3に示した。
〔比較例3〕
PNT6(ペンタエリスリトールのエチレンオキシド6モル付加品:市販品)について、その配合量をセメント100重量部に対して2重量部とし、空気量、乾燥収縮低減性の評価を行った。使用した配合物を表1に示し、評価結果を表3に示した。
Figure 0005519972
表3に示すように、活性水素1モルあたりのエチレンオキシド付加モル数が75モル、50モル、20モル、および10モルのTMP225、TMP150、PNT80、およびPNT40は、活性水素1モルあたりのエチレンオキシド付加モル数が1.5モルおよび2モルのPNT6、TMP6に比べて長さ変化比が小さく、TMP225、TMP150、およびPNT40がPNT6、TMP6に比べて良好な収縮低減性能を示していることがわかる。
〔実施例6〜8、比較例4〕
≪コンクリート配合≫
以下に示すコンクリート配合割合により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、パン型強制練りミキサーを使用して材料の混錬を実施した。なお、セメントは太平洋セメント社、住友大阪セメント社、および宇部三菱セメント社製普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合して使用した。この際、細骨材には掛川産陸砂および君津産陸砂、粗骨材には青梅硬質砂岩をそれぞれ使用した。また、減水剤(B)、空気量調整剤(AE剤(C)および消泡剤(D))を使用してコンクリートのスランプ値=18±2cm、空気量=4.5±1.5%となるように調整した。
<コンクリート配合割合>
単位セメント量:350kg/m
単位水量 :175kg/m
単位細骨材量 :841kg/m
単位粗骨材量 :905kg/m
(水セメント比(W/C):50.0%、細骨材率(s/a):49.0%)
≪材料の練り混ぜ≫
粗骨材および使用する半量の細骨材をミキサーに投入し5秒間空練り後、回転を止めセメントおよび残りの細骨材を投入し、さらに5秒間空練りを行った後再び回転を止めて、収縮低減剤、空気量調整剤(AE剤(C)および消泡剤(D))および減水剤(B)を含む水を加え、90秒間混錬した後、ミキサーからコンクリートを取り出した。
≪評価≫
取り出したコンクリート(フレッシュコンクリート)について、スランプ値、空気量、圧縮強度(材齢7日)の評価を行った。使用した配合物を表1に示し、評価結果を表4に示した。
Figure 0005519972
表4に示すように、TMP225、TMP150、PNT40においては、100以上の圧縮強度比を示していることから、収縮低減剤の使用による圧縮強度への影響がないことがわかる。一方、分子内に1本のポリオキシアルキレン鎖しか持たないSRA−1においては、圧縮強度比が90となっていることから、収縮低減剤の使用により圧縮強度が大きく低下していることが判る。従って、本発明の水硬性材料用収縮低減剤を用いることにより、良好な収縮低減性能を発現することで、ひび割れ発生を抑制し、圧縮強度低下を抑制できることから、コンクリート硬化体の耐久性向上に効果があるといえる。
〔実施例9〜11、比較例5〕
表5に示した配合で、実施例6〜8および比較例4で行ったのと同様の方法で、フレッシュコンクリート(空気量=5.0±0.5%)を調製し、気泡間隔係数、耐久性指数を測定した。結果を表5に示した。
Figure 0005519972
表5に示すように、TMP150、TMP225を使用したコンクリートにおいては、280〜290μmの気泡間隔係数を示していることから、コンクリート中に良質の気泡を連行していることがわかる。また、耐久性指数も85〜90の値を示しており、耐凍結融解性にも優れていることがわかる。一方、分子内に一本のオキシアルキレン鎖しか持たないSRA−1は、気泡間隔係数が503μmを示しており、コンクリート中に連行された気泡の質が低下し、さらに耐久性指数も5.0であることから、耐凍結融解性にも劣っていることがわかる。
〔実施例12〜14、比較例6〜7〕
表6に示した配合で、実施例6〜8および比較例4で行ったのと同様の方法で、フレッシュコンクリート(空気量=5.0±0.5%)を調製し、収縮低減性能(長さ変化比)を測定した。結果を表6に示した。
Figure 0005519972
表6に示すように、3価アルコールであるトリメチロールプロパンにエチレンオキシドを付加したTMP150およびTMP225を、セメントに対して固形分換算で1および2重量%添加することにより、材齢8週での長さ変化比は75〜90であり、良好な収縮低減性能を示している。一方、6価アルコールであるソルビトールにエチレンオキシドを付加したSB600では、セメントに対して固形分換算で2重量%添加したときの材齢8週での長さ変化比は87であり、TMP225を1重量%添加したときと同等の収縮低減性能しか示さなかった。
本発明によれば、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能によりコンクリート硬化体のひび割れ発生を抑制し、減水剤との相溶性が良好であることから優れた減水機能を付与し、さらに、消泡剤およびAE剤により連行空気の質を容易に改良できることから優れた耐凍結融解性を付与し、コンクリート硬化体の耐久性を向上させることができる、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤を提供することができるので、これらはセメント用の添加剤として有用である。

Claims (4)

  1. 一般式(1)で表される化合物である、水硬性材料用収縮低減剤。
    −[O−(AO)−R (1)
    (一般式(1)中、RはR−[OH]で表される多価アルコール由来のRを表し、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、Rは水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、mはオキシアルキレン基AOの平均付加モル数を表し、nはであり、n=3のときmは30〜150である。)
  2. 前記AOが炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である、請求項1に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
  3. 前記AOの50モル%以上がオキシエチレン基である、請求項1または2に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
  4. 前記R−[OH]で表される多価アルコールがトリメチロールアルカンである、請求項1から3までのいずれかに記載の水硬性材料用収縮低減剤。

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