〔1〕粘着剤層付位相差フィルム
図1は、本発明の好ましい一例の粘着剤層付位相差フィルム1を模式的に示す断面図である。本発明の粘着剤層付位相差フィルム1は、図1に示す例のように、位相差フィルム2と、プライマー層3と、粘着剤層4とがこの順に積層された構造を基本的に備える。以下、本発明の粘着剤層付位相差フィルム1の各構成について詳細に説明する。
〔1−1〕位相差フィルム
本発明の粘着剤層付位相差フィルム1における位相差フィルム2には、ポリプロピレン系樹脂からなる延伸フィルムが用いられる。ポリプロピレン系樹脂フィルムは結晶性であるため、位相差値の発現率が極めて高く、延伸によって簡単に大きな位相差値を得ることができるためである。ポリプロピレン系樹脂を用いることで、薄い膜厚で所望の位相差値を有する位相差フィルムを得ることができる。
また、ポリプロピレン系樹脂は、波長400nmにおける面内の最大屈折率と最小屈折率との差(複屈折)△n400と、波長500nmにおける面内の最大屈折率と最小屈折率との差(複屈折)△n500との比(△n400/△n500)が1.05未満であるため、それぞれポリプロピレン系樹脂で構成される1/2波長板と1/4波長板とを組み合わせた場合、優れた広帯域1/4波長板とすることができるという利点がある。本明細書では、上述した△n400/△n500の値をもって位相差の波長分散と定義する。これを単に、「波長分散」と呼ぶこともある。
さらにポリプロピレン系樹脂を用いることで、その光弾性係数が約2×10-13cm2/dyne前後と小さいため、1/2波長板と1/4波長板との貼合時、もしくは直線偏光板との貼合時に、貼りムラを抑制することができるという利点もある。また、ポリプロピレン系樹脂を用いることで、耐熱性試験時の白抜けをも抑制することができる。加えてポリプロピレン系樹脂は、高倍率で延伸できるため、横延伸で完全一軸性のフィルムを作製することが可能であり、薄膜化と幅広化を同時に達成でき、利用効率に優れる。
本発明に用いられる位相差フィルム2は、このようなポリプロピレン系樹脂から製膜される原反フィルムを延伸して、位相差を発現させる。この場合、位相差フィルム2の膜厚は、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。位相差フィルム2の膜厚が25μmを超える場合には、薄膜化のメリットが有効に発揮されにくくなる。また、その膜厚があまり小さいと、フィルムにシワなどが発生しやすく、巻き取りや貼合時のハンドリング性(取り扱い性)を悪化させる傾向にある。このため、位相差フィルム2の膜厚は5μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましい。
本発明に用いられる位相差フィルム2はまた、偏光板と組み合わせて楕円偏光板とする際の楕円率の観点から、面内の位相差値R0が70〜160nmの範囲内(より好適には80〜150nmの範囲内)であることが好ましく、また、Nz係数が0.9〜1.6の範囲内であることが好ましく、0.95〜1.05の範囲内であることがより好ましい。本発明に用いられる位相差フィルム2の面内の位相差値R0およびNz係数は、これらの範囲から、適用される液晶表示装置に要求される特性に合わせて、適宜選択される。
なお、位相差フィルム2の面内の位相差値R0、厚み方向の位相差値RthおよびNz係数は、当該位相差フィルム2の面内遅相軸方向の屈折率をnx、位相差フィルム2の面内進相軸方向(遅相軸と面内で直交する方向)の屈折率をny、位相差フィルム2の厚み方向の屈折率をnz、そして位相差フィルム2の厚みをdとしたときに、それぞれ下記式(1)〜(3)で定義される。
Ro =(nx−ny)×d (1)
Rth=〔(nx+ny)/2−nz〕×d (2)
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (3)
また、これらの式(1)〜(3)から、Nz係数と面内の位相差値Roおよび厚み方向の位相差値Rthとの関係は、次の式(4)で表すことができる。
Nz=Rth/Ro+0.5 (4)
ここで、Nz係数がほぼ1であれば、上記式(3)において、nyとnzがほぼ等しいことを意味し、そのような位相差フィルムは、ほぼ完全な一軸性のものとなる。
位相差フィルム2を構成するポリプロピレン系樹脂は、公知の重合用触媒を用いて、プロピレンを単独重合する方法や、プロピレンと他の共重合性コモノマーとを共重合する方法によって製造することができる。公知の重合用触媒としては、たとえば、(1)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分からなるTi−Mg系触媒、(2)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物などの第三成分とを組み合わせた触媒系、(3)メタロセン系触媒などを挙げることができる。
これら触媒系の中でも、本発明における位相差フィルム2に用いるポリプロピレン系樹脂の製造においては、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と電子供与性化合物とを組み合わせたものが、最も一般的に使用できる。より具体的には、有機アルミニウム化合物として好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物、テトラエチルジアルモキサンなどが挙げられ、電子供与性化合物として好ましくは、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチルプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランなどが挙げられる。
一方、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分としては、たとえば特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報などに記載の触媒系が挙げられ、またメタロセン系触媒としては、たとえば特許第2587251号、特許第2627669号、特許第2668732号などに記載の触媒系が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、たとえばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶液重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマーをそのまま重合させる気相重合法などによって、製造することができる。これらの方法による重合は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
ポリプロピレン系樹脂の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれであってもよい。本発明においては、耐熱性の点から、シンジオタクチックまたはアイソタクチックのポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。
本発明の位相差フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体で構成することができるほか、プロピレンを主体とし、それと共重合可能なコモノマーを少量、例えば20重量%以下、好ましくは10重量%以下の割合で共重合させたものであってもよい。共重合体とする場合、コモノマーの量は、好ましくは1重量%以上である。
プロピレンに共重合されるコモノマーとしては、たとえばエチレン、炭素原子数4〜20(C4〜C20)のα−オレフィンが挙げられる。炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン(以上C4);1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン(以上C5);1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン(以上C6);1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン(以上C7);1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン(以上C8);1−ノネン(C9);1−デセン(C10);1−ウンデセン(C11);1−ドデセン(C12);1−トリデセン(C13);1−テトラデセン(C14);1−ペンタデセン(C15);1−ヘキサデセン(C16);1−ヘプタデセン(C17);1−オクタデセン(C18);1−ノナデセン(C19)などを挙げることができる。
上述したα−オレフィンの中でも、炭素原子数4〜12のα−オレフィンが好ましく、具体的には、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン;1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン;1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン;1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン;1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン;1−ノネン;1−デセン;1−ウンデセン;1−ドデセンなどを挙げることができる。共重合性の観点からは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンから選ばれる少なくともいずれかが好ましく、とりわけ1−ブテンおよび/または1−ヘキセンがより好ましい。
ポリプロピレン系樹脂として共重合体を用いる場合、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。好ましい共重合体として、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体を挙げることができる。プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体におけるエチレンユニットの含量、1−ブテンユニットの含量は、たとえば「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法により赤外線(IR)スペクトル測定を行い、求めることができる。
位相差フィルムとしての透明度や加工性を上げる観点からは、ポリプロピレン系樹脂として、プロピレンを主体とし、任意の不飽和炭化水素とのランダム共重合体を用いることが好ましい。この場合、プロピレン以外の不飽和炭化水素類は、その共重合割合を1〜10重量%程度にするのが有利であり、より好ましい共重合割合は3〜7重量%である。プロピレン以外の不飽和炭化水素類のユニットを1重量%以上とすることで、加工性や透明性を上げる効果が出てくる傾向にある。一方、その割合が10重量%を超えると、樹脂の融点が下がり、耐熱性が悪くなる傾向にあるので好ましくない。なお、2種類以上のコモノマーとポリプロピレンとの共重合体とする場合には、その共重合体に含まれる全てのコモノマーに由来するユニットの合計含量が、前記範囲であることが好ましい。本発明においては、透明性および加工性の観点から、位相差フィルム2を形成するポリプロピレン系樹脂が、10重量%以下のエチレンユニットを含有するプロピレンとエチレンとの共重合体であることが特に好ましい。
また、本発明における位相差フィルム2を構成するポリプロピレン系樹脂は、JIS K 7210の規定に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレート(MFR)が、0.1〜200g/10分の範囲内であることが好ましく、0.5〜50g/10分の範囲内にあることがより好ましい。MFRがこの範囲内にあるポリプロピレン系樹脂を用いることにより、押出機に大きな負荷をかけることなく均一なフィルム状物を得ることができる。
このポリプロピレン系樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の添加物が配合されていてもよい。添加物としては、たとえば酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤などを挙げることができる。酸化防止剤には、たとえばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられ、また、たとえばフェノール系の酸化防止機構とリン系の酸化防止機構とを1分子中に併せ持つユニットを有する複合型の酸化防止剤を用いることもできる。紫外線吸収剤としては、たとえば2−ヒドロキシベンゾフェノン系、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、ベンゾエート系の紫外線遮断剤などが挙げられる。帯電防止剤は、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型のいずれであってもよい。滑剤としては、エルカ酸アミドやオレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド、ステアリン酸などの高級脂肪酸およびその塩などが挙げられる。造核剤としては、たとえばソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤、ポリビニルシクロアルカンなどの高分子系造核剤などが挙げられる。アンチブロッキング剤としては、球状またはそれに近い形状の微粒子が、無機系、有機系を問わず使用できる。これらの添加物は、複数種が併用されてもよい。
上述したポリプロピレン系樹脂は、任意の方法で製膜して原反フィルムとすることができる。この原反フィルムは、透明で実質的に面内位相差のないものである。たとえば溶融樹脂からの押出成形法、有機溶剤に溶解させた樹脂を平板上に流延し、溶剤を除去して製膜する溶剤キャスト法などによって、面内位相差が実質的にないポリプロピレン系樹脂の原反フィルムを得ることができる。
原反フィルムを製造する方法の一例として、押出成型による製膜法について詳しく説明する。ポリプロピレン系樹脂は、押出機中でスクリューの回転によって溶融混練され、Tダイからシート状に押出される。押出される溶融状シートの温度は、180〜300℃程度である。このときの溶融状シートの温度が180℃を下回ると、延展性が十分でなく、得られるフィルムの厚みが不均一になり、位相差ムラのあるフィルムとなる可能性がある。また、その温度が300℃を超えると、樹脂の劣化や分解が起こりやすく、シート中に気泡が生じたり、炭化物が含まれたりすることがある。
押出機は、単軸押出機であっても二軸押出機であってもよい。たとえば単軸押出機の場合は、スクリューの長さLと直径Dの比であるL/Dが24〜36程度、樹脂供給部におけるねじ溝の空間容積と樹脂計量部におけるねじ溝の空間容積との比(前者/後者)である圧縮比が1.5〜4程度であって、フルフライトタイプ、バリアタイプ、さらにマドック型の混練部分を有するタイプなどのスクリューを用いることができる。ポリプロピレン系樹脂の劣化や分解を抑制し、均一に溶融混練するという観点からは、L/Dが28〜36で、圧縮比が2.5〜3.5であるバリアタイプのスクリューを用いることが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂の劣化や分解を可及的に抑制するため、押出機内は、窒素雰囲気または真空にすることが好ましい。さらに、ポリプロピレン系樹脂が劣化したり分解したりすることで生じる揮発ガスを取り除くため、押出機の先端に直径1〜5mmのオリフィスを設け、押出機先端部分の樹脂圧力を高めることも好ましい。オリフィスの押出機先端部分の樹脂圧力を高めるとは、先端での背圧を高めることを意味しており、これにより押出の安定性を向上させることができる。用いるオリフィスの直径は、より好ましくは2〜4mmである。
押出に使用されるTダイは、樹脂の流路表面に微小な段差や傷のないものが好ましく、また、そのリップ部分は、溶融したポリプロピレン系樹脂との摩擦係数の小さい材料でめっきまたはコーティングされ、さらにリップ先端が直径0.3mm以下に研磨されたシャープなエッジ形状のものが好ましい。摩擦係数の小さい材料としては、タングステンカーバイド系やフッ素系の特殊めっきなどが挙げられる。このようなTダイを用いることにより、目ヤニの発生を抑制でき、同時にダイラインを抑制できるので、外観の均一性に優れる樹脂フィルムが得られる。このTダイは、マニホールドがコートハンガー形状であって、かつ以下の条件(A)または(B)を満たすことが好ましく、さらには条件(C)または(D)を満たすことがより好ましい。
・条件(A)
Tダイのリップ幅が1500mm未満のとき:Tダイの厚み方向長さ>180mm
・条件(B)
Tダイのリップ幅が1500mm以上のとき:Tダイの厚み方向長さ>220mm
・条件(C)
Tダイのリップ幅が1500mm未満のとき:Tダイの高さ方向長さ>250mm
・条件(D)
Tダイのリップ幅が1500mm以上のとき:Tダイの高さ方向長さ>280mm
このような条件を満たすTダイを用いることにより、Tダイ内部での溶融状プロピレン系樹脂の流れを整えることができ、かつ、リップ部分でも厚みムラを抑えながら押出すことができるため、より厚み精度に優れ、位相差のより均一な保護フィルムを得ることができる。
ポリプロピレン系樹脂の押出変動を抑制する観点から、押出機とTダイとの間にアダプターを介してギアポンプを取り付けることが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂中にある異物を取り除くため、リーフディスクフィルターを取り付けることが好ましい。
Tダイから押出された溶融状シートは、金属製冷却ロール(チルロールまたはキャスティングロールともいう)と、その金属製冷却ロールの周方向に圧接して回転する弾性体を含むタッチロールとの間に、挟圧させて冷却固化することで、所望のフィルムを得ることができる。この際、タッチロールは、ゴムなどの弾性体がそのまま表面となっているものでもよいし、弾性体ロールの表面を金属スリーブからなる外筒で被覆したものでもよい。弾性体ロールの表面が金属スリーブからなる外筒で被覆されたタッチロールを用いる場合は通常、金属製冷却ロールとタッチロールの間に、ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートを直接挟んで冷却する。一方、表面が弾性体となっているタッチロールを用いる場合は、ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートとタッチロールの間に熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを介在させて挟圧することもできる。
ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートを、上述した冷却ロールとタッチロールとで挟んで冷却固化させるにあたり、冷却ロールとタッチロールは、いずれもその表面温度を低くしておき、溶融状シートを急冷させてやる必要がある。具体的には、両ロールの表面温度が0〜30℃の範囲に調整される。これらの表面温度が30℃を超えると、溶融状シートの冷却固化に時間がかかるため、ポリプロピレン系樹脂中の結晶成分が成長してしまい、得られるフィルムは透明性に劣るものとなる虞がある。ロールの表面温度は、25℃以下であることがより好ましい。一方、ロールの表面温度が0℃未満であると、金属製冷却ロールの表面が結露して水滴が付着し、フィルムの外観を悪化させる傾向が出てくる。
使用する金属製冷却ロールは、その表面状態がポリプロピレン系樹脂フィルム表面に転写されるため、その表面に凹凸がある場合には、得られるポリプロピレン系樹脂フィルムの厚み精度を低下させる可能性がある。そこで、金属製冷却ロールの表面は可能な限り鏡面状態であることが好ましい。具体的には、金属製冷却ロールの表面の粗度は、最大高さの標準数列で表して0.3S以下であることが好ましく、さらには0.1〜0.2Sであることがより好ましい。
金属製冷却ロールとニップ部分を形成するタッチロールは、その弾性体における表面硬度が、JIS K 6301に規定されるスプリング式硬さ試験(A形)で測定される値として65〜80であることが好ましく、さらには70〜80であることがより好ましい。このような表面硬度のゴムロールを用いることにより、溶融状シートにかかる線圧を均一に維持することが容易となり、かつ、金属製冷却ロールとタッチロールとの間に溶融状シートのバンク(樹脂溜り)を作ることなくフィルムに成形することが容易となる。
溶融状シートを挟圧するときの圧力(線圧)は、金属製冷却ロールに対してタッチロールを押し付ける圧力により決まる。線圧は、50〜300N/cmとするのが好ましく、さらには100〜250N/cmとするのがより好ましい。線圧を前記範囲とすることにより、バンクを形成することなく、一定の線圧を維持しながらプロピレン系樹脂フィルムを製造することが容易となる。
金属製冷却ロールとタッチロールの間で、ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートとともに熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを挟圧する場合、この二軸延伸フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂と強固に熱融着しない樹脂であればよく、具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。これらの中でも、湿度や熱などによる寸法変化の少ないポリエステルが最も好ましい。この場合の二軸延伸フィルムの厚さは、通常5〜50μm程度であり、好ましくは10〜30μmである。
この方法において、Tダイのリップから金属製冷却ロールとタッチロールとで挟圧されるまでの距離(エアギャップ)を200mm以下とすることが好ましく、さらには160mm以下とすることがより好ましい。Tダイから押出された溶融状シートは、リップからロールまでの間引き伸ばされて、配向が生じやすくなる。エアギャップを上記の如く短くすることで、配向のより小さいフィルムを得ることができる。エアギャップの下限値は、使用する金属製冷却ロールの径とタッチロールの径、および使用するリップの先端形状により決定され、通常50mm以上である。
この方法でプロピレン系樹脂フィルムを製造するときの加工速度は、溶融状シートを冷却固化するために必要な時間により決定される。使用する金属製冷却ロールの径が大きくなると、溶融状シートがその冷却ロールと接触している距離が長くなるため、より高速での製造が可能となる。具体的には、直径600mmの金属製冷却ロールを用いる場合、加工速度は、最大で5〜20m/分程度となる。
金属製冷却ロールとタッチロールとの間で挟圧された溶融状シートは、ロールとの接触により冷却固化する。そして、必要に応じて端部をスリットした後、巻取り機に巻き取られてフィルムとなる。この際、フィルムを使用するまでの間その表面を保護するために、その片面または両面に別の熱可塑性樹脂からなる表面保護フィルムを貼り合わせた状態で巻き取ってもよい。プロピレン系樹脂の溶融状シートを熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムとともに金属製冷却ロールとタッチロールとの間で挟圧した場合には、その二軸延伸フィルムを一方の表面保護フィルムとすることもできる。
本発明に用いる位相差フィルム2は、上述したポリプロピレン系樹脂からなる原反フィルムを横延伸することにより製造できる。ここで横延伸とは、ロールから巻き出される長尺のフィルムを幅方向(横方向)に延伸することをいう。横延伸は、通常、(a)原反フィルムを、ポリプロピレン系樹脂の融点付近の予熱温度で予熱する予熱工程、(b)予熱されたフィルムを、予熱温度よりも低い延伸温度で横方向に延伸する延伸工程、ならびに、(c)横方向に延伸されたフィルムを熱固定する熱固定工程を含む。
代表的な横延伸の方法としては、テンター法が挙げられる。テンター法は、チャックでフィルム幅方向の両端を固定した原反フィルムを、オーブン中でチャック間隔を広げて延伸する方法である。テンター法に用いる延伸機(テンター延伸機)は通常、予熱工程を行うゾーン、延伸工程を行うゾーン、および熱固定工程を行うゾーンにおいて、それぞれの温度を独立に調節できる機構を備えている。このようなテンター延伸機を用いて横延伸を行うことにより、軸精度に優れ、かつ均一な位相差を有する位相差フィルムを得ることができる。
横延伸の予熱工程は、フィルムを幅方向に延伸する工程の前に設置される工程であり、フィルムを延伸するのに十分な温度までフィルムを加熱する工程である。予熱工程での予熱温度は、オーブンの予熱工程を行うゾーンにおける雰囲気温度を意味し、延伸されるポリプロピレン系樹脂フィルムの融点付近の温度が採用される。延伸されるフィルムの予熱工程における滞留時間は、30〜120秒であることが好ましい。この予熱工程での滞留時間が30秒に満たないときは、延伸工程でフィルムが延伸されるときに応力が分散し、位相差フィルムとしての軸精度や位相差の均一性に不利な影響を及ぼす可能性があり、また、その滞留時間が120秒を超えるときは、必要以上に熱を受け、フィルムが部分的に融解し、ドローダウンする(下に垂れる)可能性がある。予熱工程での滞留時間は、30〜60秒であることがより好ましい。
横延伸の延伸工程は、フィルムを幅方向に延伸する工程である。この延伸工程での延伸温度は通常、予熱温度より低い温度とされる。延伸工程での延伸温度は、オーブンの延伸工程を行うゾーンにおける雰囲気温度を意味する。予熱されたフィルムを予熱工程よりも低い温度で延伸することにより、フィルムを均一に延伸できるようになり、その結果、光軸および位相差の均一性に優れた位相差フィルムを得ることができる。延伸温度は、予熱工程における予熱温度より5〜20℃低いことが好ましく、7〜15℃低いことがより好ましい。このときの延伸倍率は、光軸を発現させる方向(遅相軸となる方向)で3〜10倍程度の範囲から、必要とする位相差値に合わせて、適宜選択すればよく、好ましくは3〜6倍の範囲である。このときの延伸倍率を3倍以上とすることにより、前記のNz係数を0.9〜1.1の範囲とすることができる。一方、延伸倍率があまり大きくなると、位相差値の均一性が損なわれる可能性があるため、延伸倍率は10倍程度までにとどめるのが好ましい。
横延伸の熱固定工程は、延伸工程終了時におけるフィルム幅を保った状態で、そのフィルムをオーブン内の所定温度のゾーンに通過させる工程である。フィルムの位相差や光軸など光学的特性の安定性を効果的に向上させるために、熱固定温度は、延伸工程における延伸温度よりも5℃低い温度から延伸温度よりも30℃高い温度までの範囲内であることが好ましい。
横延伸の工程は、さらに熱緩和工程を有してもよい。この熱緩和工程は、テンター法においては通常、延伸工程と熱固定工程との間で行われ、熱緩和のゾーンは、他のゾーンから独立して温度設定が可能なように設けられるのが通例である。具体的には、熱緩和工程は、延伸工程においてフィルムを所定の幅に延伸した後、無駄な歪を取り除くために、チャックの間隔を数%だけ狭くして、通常は延伸終了時の間隔より0.5〜7%程度狭くして行われる。
本発明における位相差フィルム2は1/4波長板であることが好ましい。1/4波長板は、直線偏光で入射する光を、円偏光をはじめとする楕円偏光に、また円偏光をはじめとする楕円偏光で入射する光を直線偏光に、それぞれ変換して出射する機能を有する。本発明における位相差フィルム2が1/4波長板である場合、その面内位相差値R0は、70〜160nmの範囲内であることが好ましく、さらには80〜150nmの範囲内であることがより好ましい。
また本発明における位相差フィルム2を1/2波長板として用いてもよい。1/2波長板は、直線偏光の向きを回転させる機能を有する。本発明における位相差フィルム2を1/2波長板として用いる場合、その面内位相差値R0は240〜400nmの範囲内であることが好ましく、さらには260〜330nmの範囲内であることがより好ましい。
〔1−2〕プライマー層
本発明の粘着剤層付位相差フィルム1におけるプライマー層3は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる硬化物である。このプライマー層3を形成する樹脂組成物は、活性エネルギー線で硬化するものであれば特に限定されず、たとえば耐候性や屈折率、カチオン重合性の観点から、分子内に芳香環を含まないエポキシ樹脂を主成分に用いることが特に好ましい。
上述したエポキシ基を有するカチオン重合性の化合物をプライマー層の形成に用いる場合、ポリプロピレン系樹脂からなる位相差フィルム2との密着性の観点から、分子内に芳香環を含まないエポキシ樹脂を主成分として用いることが好ましい。このような分子内に芳香環を含まないエポキシ樹脂として、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。
ここで、脂環式エポキシ化合物は、下記式に示すような脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する化合物を指す(式中、mは2〜5の整数を表す。)。
上記式における(CH2)m中の水素原子を1個または複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合した化合物が、脂環式エポキシ化合物となりうる。また、脂環式環を形成する水素がメチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。中でも、エポキシシクロペンタン環(上式においてm=3のもの)や、エポキシシクロヘキサン環(上式においてm=4のもの)を有する化合物を用いることが好ましい。以下に、脂環式エポキシ樹脂の構造を具体的に例示するが、これらの化合物に限定されるものではない。
・下記式(I)に相当するエポキシシクロヘキシルメチル エポキシシクロヘキサンカルボキシレート類:
(上記式(I)中、R1およびR2は互いに独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)
・下記(II)に相当するアルカンジオールのエポキシシクロヘキサンカルボキシレート類:
(上記式(II)中、R3およびR4は互いに独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、nは2〜20の整数を表す。)
・下記式(III)に相当するジカルボン酸のエポキシシクロヘキシルメチルエステル類:
(上記式(III)中、R5およびR6は互いに独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、pは2〜20の整数を表す。)
・下記式(IV)に相当するポリエチレングリコールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル類:
(上記式(IV)中、R7およびR8は互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、qは2〜10の整数を表す。)
・下記式(V)に相当するアルカンジオールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル類:
(上記式(V)中、R9およびR10は互いに独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、rは2〜20の整数を表す。)
また、脂肪族エポキシ樹脂について説明すると、脂肪族エポキシ樹脂には、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルがある。これらの例としては、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコールやプロピレングリコール、グリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
プライマー層3の形成に用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、重合速度の制御の観点から、オキセタン基を分子内に有する化合物(以下、「オキセタン化合物」と呼称する。)が適宜配合されていてもよい。オキセタン化合物は、分子内に4員環エーテルを有する化合物であり、たとえば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。これらのオキセタン化合物は市販品を容易に入手することが可能であり、具体的には、アロンオキセタンOXT−101(東亞合成(株)製)、アロンオキセタンOXT−121(東亞合成(株)製)、アロンオキセタンOXT−211(東亞合成(株)製)、アロンオキセタンOXT−221(東亞合成(株)製)、アロンオキセタンOXT−212(東亞合成(株)製)などが挙げられる。
オキセタン系化合物の配合量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物100重量部中10〜60重量部の範囲内であることが好ましく、15〜50重量部の範囲内であることがより好ましく、20〜40重量部であることが特に好ましい。オキセタン系化合物の配合量が活性エネルギー線硬化性樹脂組成物100重量部中10重量部未満である場合には、所定時間内に重合反応が完結しないため重合度が上昇せず、靭性など機械強度が低下する可能性があるためであり、また、オキセタン系化合物の配合量が活性エネルギー線硬化性樹脂組成物100重量部中60重量部を超える場合には、コスト的に好ましくない。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物がカチオン重合性の化合物を含む場合、当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、通常、可視光線、紫外線、X線、電子線などの活性エネルギー線の照射若しくは加熱によって、カチオン種またはルイス酸を発生し、重合反応を開始する、カチオン重合開始剤を含む。いずれのタイプのカチオン重合開始剤であっても、潜在性が付与されていることが、作業性の観点から好ましい。
また光カチオン重合開始剤を用いる場合には、常温での硬化が可能となり、偏光フィルムの耐熱性あるいは膨張による歪を考慮する必要が減少し、保護フィルムを良好に接着することができるという利点がある。また、光カチオン重合開始剤は光で触媒的に作用するため、エポキシ化合物に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物として、たとえば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩などを挙げることができる。芳香族スルホニウム塩としては、たとえば、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
これらの光カチオン重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。これらのなかでも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
これらの光カチオン重合開始剤は市販品として容易に入手でき、具体的には、カヤラッドPCI−220(日本化薬(株)製)、カヤラッドPCI−620(日本化薬(株)製)、UVI−6990(ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマーSP−50((株)ADEKA製)、アデカオプトマーSP−150((株)ADEKA製)、アデカオプトマーSP−170((株)ADEKA製)、CI−5102(日本曹達(株)製)、CIT−1370(日本曹達(株)製)、CIT−1682(日本曹達(株)製)、CIP−1866S(日本曹達(株)製)、CIP−2048S(日本曹達(株)製)、CIP−2064S(日本曹達(株)製)、DPI−101(みどり化学(株)製)、DPI−102(みどり化学(株)製)、DPI−103(みどり化学(株)製)、DPI−105(みどり化学(株)製)、MPI−103(みどり化学(株)製)、MPI−105(みどり化学(株)製)、BBI−101(みどり化学(株)製)、BBI−102(みどり化学(株)製)、BBI−103(みどり化学(株)製)、BBI−105(みどり化学(株)製)、TPS−101(みどり化学(株)製)、TPS−102(みどり化学(株)製)、TPS−103(みどり化学(株)製)、TPS−105(みどり化学(株)製)、MDS−103(みどり化学(株)製)、MDS−105(みどり化学(株)製)、DTS−102(みどり化学(株)製)、DTS−103(みどり化学(株)製)、PI−2074(ローディア社製)などが挙げられる。中でも特に、アデカオプトマーSP−150((株)ADEKA製)は好ましい光カチオン重合開始剤の1つである。
光カチオン重合開始剤の配合量は、カチオン重合性の化合物100重量部に対して、通常0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜15重量部である。光カチオン重合開始剤の配合量がカチオン重合性の化合物100重量部に対し0.5重量部未満である場合には、硬化が不十分になり、機械強度や接着強度が低下する虞があるためであり、また、光カチオン重合開始剤の配合量がカチオン重合性の化合物100重量部に対し20重量部を超える場合には、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、耐久性能が低下する可能性があるためである。
さらに、各種物性を効果的に発現させるため、上述したカチオン重合性の化合物にラジカル重合性の化合物を併用することも有用な技術である。このような併用系(以下、「ハイブリッド系硬化性樹脂」と呼称する。)とすることで、液粘度、硬化速度、表面硬化性硬化物の物性などを調整することが容易になる。
ラジカル重合性の化合物としては、たとえば、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体を含有し、重合開始剤の存在下において活性エネルギー線(たとえば、紫外線、可視光、電子線、X線など)の照射により重合可能な化合物を挙げることができる。ここで、本明細書においては、アクリロイル基またはメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基、アクリレート基またはメタクリレート基を(メタ)アクリレート基と、アクリル酸またはメタクリル酸を(メタ)アクリル酸とそれぞれ略記することがある。
分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体とは、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー(以下、「(メタ)アクリレートモノマー」と呼称する。)、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、「(メタ)アクリレートオリゴマー」と呼称する。)などの(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物の少なくとも1種である。なお、(メタ)アクリロイルオキシ基とはアクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基を、(メタ)アクリル酸エステル誘導体とはアクリル酸エステル誘導体およびメタクリル酸エステル誘導体をそれぞれ意味し、(メタ)アクリレートモノマーとはアクリレートモノマーおよびメタアクリレートモノマーを、(メタ)アクリレートオリゴマーとはアクリレートオリゴマーまたはメタアクリレートオリゴマーをそれぞれ意味する。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー(以下、「単官能(メタ)アクリレートモノマー」と呼称する。)、分子中に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリレートモノマー(以下、「2官能(メタ)アクリレートモノマー」と呼称する。)および分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマー(以下、「多官能(メタ)アクリレートモノマー」と呼称する。)が挙げられる。(メタ)アクリレートモノマーは1種または2種以上使用できる。
単官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの他、カルボキシル基含有の(メタ)アクリレートモノマーとして、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、N−(メタ)アクリロイルオキシ−N’,N’−ジカルボキシ−p−フェニレンジアミン、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸などが挙げられる。また、単官能(メタ)アクリレートモノマーには、N−ビニルピロリドンのようなビニル基含有モノマーおよび4−(メタ)アクリロイルアミノ−1−カルボキシメチルピペリジンのような(メタ)アクリロイルアミノ基含有モノマーが包含される。
二官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ハロゲン置換アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノールAまたはビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート類などが代表的なものであるが、これらに限定されるものではなく種々のものが使用できる。2官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートの他、シリコンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]メタン、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの3価以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレートが代表的なものであり、その他に、3価以上のハロゲン置換ポリオールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス[(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ]プロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート類、シリコンヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、2官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、「多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」と呼称する。)、2官能以上の多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、「多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー」と呼称する。)、2官能以上の多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、「多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー」と呼称する。)などが挙げられる。(メタ)アクリレートオリゴマーは1種または2種以上使用できる。
また、多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる。ポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
ハイブリッド系硬化性樹脂におけるラジカル系硬化性樹脂の配合量は、ハイブリッド系硬化性樹脂100重量部中10〜90重量部、好ましくは20〜80重量部、より好ましくは30〜60重量部である。
光ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線の照射による艶消し被覆用光硬化性組成物の硬化を開始するものであり、一般に知られる光重合開始剤を使用することができる。具体的には、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントフルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−オキサントン、カンファーキノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどが挙げられるがこの限りではない。
光ラジカル重合開始剤の配合量は、ラジカル系硬化性樹脂100重量部に対して、通常0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜6重量部である。その量がラジカル系硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部を下回ると硬化が不十分になり、機械強度や接着強度が低下する。また、その量が20重量部を超えると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、耐久性能が低下する可能性があるので、好ましくない。
さらに、必要に応じて光増感剤を併用することができる。光増感剤を使用することで、反応性が向上し、硬化物の機械強度や接着強度を向上させることができる。光増感剤としては、たとえばカルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。具体的な光増感剤としては、たとえば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体;その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物、ハロゲン化合物などが挙げられが、これらに限定されるものではない。また、これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。光増感剤は、光硬化性樹脂組成物を100重量部とした場合に、0.1〜20重量部の範囲で含有するのが好ましい。
さらに、必要に応じて、光硬化性樹脂を溶剤で希釈して使用してもよい。溶剤は、光硬化性樹脂を構成する組成物の溶解性により、適宜選択される。一般に用いられる溶剤としては、n−ヘキサンやシクロヘキサンのような脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールのようなアルコール類、アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブのようなセロソルブ類、塩化メチレンやクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。溶剤の配合割合は、成膜性などの加工上の目的による粘度調整などの観点から、適宜決定される。
プライマー層3の形成にあたり、使用する塗工方式は特に制限されるものでなく、ダイレクト・グラビア法、リバース・グラビア法、ダイコート法、カンマコート法、バーコート法など、公知の各種コーティング法を用いることができる。
さらに、プライマー層3をポリプロピレン系樹脂からなる位相差フィルム2に塗工する際には、位相差フィルム2の塗工面にコロナ処理を施しておくことが好ましい。これにより、プライマー層3と位相差フィルム2との間の密着性を向上することができる。また、プライマー層3上にコロナ処理を施して、粘着剤との密着力を向上させるようにしてもよい。
〔1−3〕粘着剤層
粘着剤層4の形成に用いる粘着剤(感圧接着剤)としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとするもので構成することができる。なかでも、アクリル系粘着剤のように、光学的な透明性に優れ、適度の濡れ性や凝集力を保持し、基材との接着性にも優れ、さらには耐候性や耐熱性などを有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれなどの剥離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。アクリル系粘着剤としては、メチル基、エチル基、ブチル基などの炭素数が20以下のアルキル基を有するアクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が10万以上のアクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。
粘着剤層4は、上述したようなベースポリマーを主体とする粘着剤の溶液を塗布し、乾燥する方法によって形成できる他、離型処理が施されたフィルムの離型処理面に粘着剤層が形成されたもの(粘着剤層付フィルム)を用意し、それを粘着剤層側でプライマー層3に貼り合わせる方法によっても形成できる。
また本発明では、粘着剤層4を形成する粘着剤に光拡散剤を配合するようにしてもよい。ここで用いる光拡散剤は、粘着剤層4を構成するベースポリマーとは屈折率が異なる微粒子であればよく、無機化合物からなる微粒子や有機化合物(ポリマー)からなる微粒子を用いることができる。上述したようなアクリル系ベースポリマーを含めて、粘着剤を構成するベースポリマーは、1.4前後の屈折率を示すことが多いので、そこに配合する光拡散剤は、その屈折率が1〜2程度のものから適宜選択すればよい。粘着剤層を構成するベースポリマーと光拡散剤との屈折率差は、通常0.01以上であり、また画像表示装置の明るさと視認性の観点から、0.01〜0.5とするのが好適である。光拡散剤として用いる微粒子は、球形のもの、それも単分散に近いものが好ましく、たとえば、平均粒径が2〜6μm程度の範囲にある微粒子が好適に用いられる。
無機化合物からなる微粒子としては、たとえば、酸化アルミニウム(屈折率:1.76)、酸化ケイ素(屈折率:1.45)などを挙げることができる。また、有機化合物(ポリマー)からなる微粒子としては、たとえば、メラミンビーズ(屈折率:1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率:1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率:1.50〜1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率:1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率:1.53)、ポリスチレンビーズ(屈折率:1.6)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率:1.46)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率:1.46)などを挙げることができる。
光拡散剤の配合量は、それが配合された粘着剤層に必要とされるヘイズ値や、それが適用される画像表示装置の明るさなどを考慮して、適宜決められるが、一般には、粘着剤層4を構成するベースポリマー100重量部に対して3〜30重量部程度である。
また、光拡散剤が配合された粘着剤層は、その複合偏光板が適用された画像表示装置の明るさを確保するとともに、表示像のにじみやボケを生じにくくする観点から、JIS K 7105に規定され、(拡散透過率/全光線透過率)×100(%)で表されるヘイズが20〜80%の範囲となるようにするのが好ましい。
本発明の粘着剤層付位相差フィルム1における粘着剤層4の厚みは、その接着力などに応じて決定されるが、通常は1〜40μmの範囲である。本発明の目的である薄型複合偏光板とするためには、加工性や耐久性などの特性を損なわない範囲で薄く塗るのが望ましい。良好な加工性を保ち、高い耐久性を示し、また画像表示装置を正面から見た場合や斜めから見た場合の明るさを保ち、表示像のにじみやボケが生じにくくする観点からは、粘着剤層4の厚みは3〜25μmとするのが好ましい。
〔2〕楕円偏光板
上述した本発明の粘着剤層付位相差フィルムは、1/4波長板として所定の軸角度で偏光板と積層することにより、または、1/2波長板とともに所定の軸角度で偏光板と積層することにより、楕円偏光板を実現することができる。本発明は、このように上述した本発明の粘着剤層付位相差フィルムを偏光板に積層してなる楕円偏光板についても提供するものである。
図2は、本発明の好ましい一例の楕円偏光板11を模式的に示す図であり、図2(a)は断面図、図2(b)は上面図である。なお、図2(a)は、図2(b)に示す切断面線IIA−IIAからみた断面図である。図2には、上述した本発明の粘着剤層付位相差フィルムである1/4波長板12を直線偏光板13に積層して楕円偏光板11を実現した例が示されている。この場合、図2(b)に示すように、直線偏光板13の吸収軸13aを基準に、反時計回り方向を正として、1/4波長板12の面内遅相軸12aに至る角度θが40〜50°(好ましくはほぼ45°)となるように配置することで、ほぼ円偏光板として機能するようになる。あるいは、直線偏光板13の吸収軸13aを基準に、反時計回り方向を正として、1/4波長板12の面内遅相軸12aに至る角度θが、130〜140°(好ましくはほぼ135°)となるように配置することでも、やはりほぼ円偏光板として機能するようになる。以下、角度を表すときは、ここでの説明と同様、基準軸に対して反時計回りを正とする。
また、図3は、本発明の好ましい他の例の楕円偏光板21を模式的に示す図であり、図3(a)は断面図、図3(b)は上面図である。なお、図3(a)は、図3(b)に示す切断面線IIIA−IIIAからみた断面図である。図3には、上述した本発明の粘着剤層付位相差フィルムである1/4波長板12および1/2波長板22を積層し、さらに1/2波長板22側に直線偏光板13を積層して、楕円偏光板21を実現した例が示されている。この場合、図3(b)に示すように、直線偏光板13の吸収軸13aを基準に、1/2波長板22の面内遅相軸22aに至る角度φが10〜20°(好ましくはほぼ15°)となり、1/2波長板22の面内遅相軸22aから1/4波長板12の面内遅相軸12aに至る角度ψが55〜65°(好ましくはほぼ60°)となるように配置することで、ほぼ円偏光板として機能するようになる。あるいは、直線偏光板13の吸収軸13aを基準に、1/2波長板22の面内遅相軸22aに至る角度φが100〜110°(好ましくはほぼ105°)となり、1/2波長板22の面内遅相軸22aから1/4波長板12の面内遅相軸12aに至る角度ψが55〜65°(好ましくはほぼ60°)となるように配置することでも、やはりほぼ円偏光板として機能するようになる。後者の関係(直線偏光板13の吸収軸13aから1/2波長板22の面内遅相軸22aに至る角度が100〜110°)は、図3(b)に示す参照符号(上述した説明では直線偏光板13の吸収軸を指す)が、当該吸収軸に面内で直交する関係にある直線偏光板の透過軸である場合に相当する。
本発明の楕円偏光板は、特に図3に示した例のように、1/4波長板12と1/2波長板22とを積層した構造にて実現されることで、1/4波長板12として適用された本発明の粘着剤層付位相差フィルムは、可視光領域の広い波長範囲(すなわち、広帯域)で1/4波長板として機能するようになり、広帯域で、直線偏光を円偏光に、また円偏光を直線偏光に変換できるようになる。さらにこのように構成することで、反射防止効果の角度依存性をも低減できるようになる。
直線偏光板13は、ある方向の振動面を有する直線偏光を吸収し、それと直交する方向の振動面を有する直線偏光を透過する機能が付与された光学素子であって、この分野で一般に用いられているものであることができる。具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムの少なくとも一方側に、透明保護層を形成したポリビニルアルコール系の直線偏光板が一般的である。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させることにより、上述したような、ある方向の振動面を有する直線偏光を吸収し、それと直交する方向の振動面を有する直線偏光を透過する機能を付与することができる。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、および染色後のホウ酸処理を施すことにより、この偏光フィルムを得ることができる。
直線偏光板13に用いられる透明保護層は、たとえば、従来から偏光フィルムの保護層として一般的に用いられているトリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロースに代表されるアセチルセルロース系樹脂のフィルムで構成することができるが、その他、ノルボルネン系樹脂に代表される環状ポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリプロピレン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂のフィルム、ポリ(メタ)アクリル酸メチルのフィルムなどで構成してもよい。
また、上記で用いられる1/2波長板としては、上記ポリプロピレン系樹脂からなる位相差フィルムを用いてもよいし、他の従来公知の1/2波長板を用いてもよく、特に限定されるものではない。他の従来公知の1/2波長板としては、たとえば環状ポリオレフィン系樹脂よりなる位相差フィルム、ポリカーボネート系樹脂よりなる位相差フィルムなどを挙げることができる。
楕円偏光板の作製にあたり、波長板と偏光板の貼合、また波長板同士(1/4波長板と1/2波長板)の貼合には、粘着剤を用いることができる。ここで、1/4波長板については、本発明の粘着剤層付位相差フィルムの粘着剤層は、後述するように液晶セルとの接着に用いるものであるため、図3に示した例のように直線偏光板と直接積層させる場合には、直線偏光板および/または1/4波長板の粘着剤層を有する側とは反対側に、また、図4に示した例のように1/2波長板を解して直線偏光板と積層させる場合には、直線偏光板および/または1/2波長板に、別途、粘着剤層を形成し、このように別途形成した粘着剤層を介して貼合させる。この別途形成する粘着剤層に用いられる粘着剤としては、透明性および耐久性に優れたアクリル系ポリマーを主体とする粘着剤が、特に好ましく用いられる。なお、この別途形成する粘着剤層の厚みは特に制限されないが、通常、5〜50μmの範囲内である。
〔3〕液晶表示装置
本発明はさらに、上述した本発明の楕円偏光板を、液晶セルの少なくとも一方側に、粘着剤層付位相差フィルムの粘着剤層側が隣接するように積層してなる液晶表示装置についても提供する。図2および図3に示した本発明の楕円偏光板11,21は、1/4波長板12として用いられた本発明の粘着剤層付位相差フィルムの粘着剤層4側が液晶セルに隣接するように配置され、当該粘着剤層4を介して液晶セルに貼合される。本発明の液晶表示装置において、本発明の楕円偏光板は液晶セルの一方側のみに積層されていてもよいし、液晶セルの両面に積層されていてもよい。
ここで、図4は、本発明の好ましい一例の液晶表示装置31を模式的に示す断面図である。図4には、図2に示した例の楕円偏光板11を液晶セル32の両面に積層させた場合の液晶表示装置31が示されている。すなわち、図4には、図2に示した1/4波長板12と直線偏光板13との積層物である楕円偏光板11を、液晶セル32の両面に、それぞれ1/4波長板12の粘着剤層4側が液晶セル32と向かい合うように配置して積層させた例が示されている。
また図5は、本発明の好ましい他の例の液晶表示装置41を模式的に示す断面図である。図5には、図3に示した例の楕円偏光板21を液晶セル32の両面に積層させた場合の液晶表示装置41が示されている。すなわち、図5には、図3に示した1/4波長板12と1/2波長板22と直線偏光板13との積層物である楕円偏光板21を、液晶セル32の両面に、それぞれ1/4波長板12の粘着剤層4側が液晶セル32と向かい合うように配置して積層させた例が示されている。
図4および図5に示した液晶表示装置31,41において、楕円偏光板11,21は、それぞれ、液晶セルの一方側に配置された楕円偏光板の直線偏光板の吸収軸と、液晶セルの他方側に配置された楕円偏光板の直線偏光板の吸収軸とが互いに直交するように配置される。なお、本発明の液晶表示装置を透過型または半透過反射型として用いる場合には、一方の楕円偏光板(図4、図5に示す例では紙面に関して下側)に、バックライト33が配置される。
1 粘着剤層付位相差フィルム、2 位相差フィルム、3 プライマー層、4 粘着剤層、11,21 楕円偏光板、12 1/4波長板、13 直線偏光板、22 1/2波長板、31,41 液晶表示装置、32 液晶セル、33 バックライト。