以下、実施の形態を示して本発明を詳しく説明する。図1は、本発明の粘着剤層付位相差フィルムの好ましい一例を示す断面模式図である。図1に示されるように、本発明の粘着剤層付位相差フィルム10は、ポリプロピレン系樹脂からなる位相差フィルム20と、位相差フィルム20の一方の面に積層されたプライマー層30と、プライマー層30上に積層された粘着剤層40とを備える。以下、各層について詳細に説明する。
<<粘着剤層付位相差フィルム>>
<位相差フィルム>
本発明においては、ポリプロピレン系樹脂を延伸して位相差フィルムとする。ポリプロピレン系樹脂フィルムは結晶性であるため、位相差値の発現率が極めて高く、延伸によって容易に大きな位相差値を得ることができる。したがって、ポリプロピレン系樹脂を用いることにより、薄い膜厚で所望の位相差値を有する位相差フィルムを得ることができる。
また、ポリプロピレン系樹脂は、波長400nmにおける面内の最大屈折率と最小屈折率との差(複屈折)Δn400と、波長500nmにおける面内の最大屈折率と最小屈折率との差(複屈折)Δn500との比(Δn400/Δn500)が1.05未満であるため、それぞれポリプロピレン系樹脂で構成される1/2波長板と1/4波長板とを組み合わせた場合、優れた広帯域1/4波長板とすることができる。本明細書では、上記したΔn400/Δn500の値をもって「位相差の波長分散」(本明細書中において、単に「波長分散」と呼ぶことがある。)と定義する。
さらに、ポリプロピレン系樹脂は、その光弾性係数が約2×10-13cm2/dyne前後と小さいため、位相差フィルムをポリプロピレン系樹脂から構成することにより、1/2波長板と1/4波長板との貼合時、もしくは直線偏光板との貼合時に、貼りムラを抑制することができる。また、耐熱性試験時での白抜けをも抑制することができる。加えて、ポリプロピレン系樹脂は、高倍率で延伸できるため、横延伸で完全一軸性のフィルムを作製することが可能であり、薄膜化と幅広化を同時に達成でき、利用効率に優れる。
本発明においては、上記ポリプロピレン系樹脂を製膜することにより原反フィルムを得た後、これを延伸して、位相差を発現させて位相差フィルムを得る。位相差フィルムの膜厚は、たとえば25μm以下程度とすることができ、好ましくは20μm以下である。膜厚が25μmを超えると、薄膜化のメリットが有効に発揮されにくくなる。また、その膜厚があまり小さいと、フィルムにシワなどが発生しやすく、巻き取りや貼合時のハンドリング性を悪化させる傾向にある。そこで、位相差フィルムの膜厚は5μm以上であることが好ましく、さらには8μm以上であることがより好ましい。
本発明に用いる位相差フィルムは、面内の位相差値R0が70〜160nmの範囲であることが好ましい。また、位相差フィルムのNz係数は、0.9〜1.6の範囲が好ましく、とりわけ0.95〜1.05の範囲にあることがより好ましい。位相差フィルムの面内の位相差値R0およびNz係数は、上記範囲から、適用される液晶表示装置に要求される特性に合わせて適宜選択され得る。ここで、位相差フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をnx、面内進相軸方向(遅相軸と面内で直交する方向)の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz、および位相差フィルムの厚みをdとしたときに、位相差フィルムの面内の位相差値R0、厚み方向の位相差値Rth、およびNz係数は、それぞれ下式(A)、(B)および(C)で定義される。
R0=(nx−ny)×d (A)
Rth=〔(nx+ny)/2−nz〕×d (B)
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (C)
また、上記式(A)、(B)および(C)から、Nz係数と面内の位相差値R0および厚み方向の位相差値Rthとの関係は、次の式(D)で表すことができる。
Nz=Rth/R0+0.5 (D)
なお、Nz係数がほぼ1である場合、上記式(C)より、nyとnzがほぼ等しいことを意味するから、そのような位相差フィルムは、ほぼ完全な一軸性である。
(ポリプロピレン系樹脂)
次に、本発明に用いられる位相差フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂についてさらに詳細に説明する。本発明に用いる位相差フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂は、重合用触媒を用いて、プロピレンを単独重合する方法や、プロピレンと他の共重合性コモノマーとを共重合する方法によって製造することができる。重合用触媒としては、従来公知の重合用触媒を用いることができ、たとえば、次のようなものを挙げることができる。
(1)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分からなるTi−Mg系触媒、
(2)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物等の第三成分とを組み合わせた触媒系、
(3)メタロセン系触媒など。
上記の触媒系の中でも、本発明の位相差フィルムに用いるポリプロピレン系樹脂の製造においては、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と電子供与性化合物とを組み合わせた触媒系が、最も一般的に使用できる。マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分としては、たとえば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報などに記載の触媒系が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物、テトラエチルジアルモキサンなどを好ましく用いることができる。また、電子供与性化合物としては、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチルプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランなどを好ましく用いることができる。
メタロセン系触媒としては、たとえば、特許第2587251号公報、特許第2627669号公報、特許第2668732号公報などに記載の触媒系が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、たとえば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンの如き炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶液重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマーをそのまま重合させる気相重合法などによって製造することができる。これらの方法による重合は、バッチ式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。
ポリプロピレン系樹脂の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれであってもよい。本発明においては、耐熱性の点から、シンジオタクチックあるいはアイソタクチックのポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。
本発明に用いる位相差フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体で構成することができるほか、プロピレンを主体とし、それと共重合可能なコモノマーを少量の割合で共重合させたものであってもよい。共重合体とすることにより、ポリプロピレン系樹脂の加工性や透明性を向上させることが可能である。共重合体とする場合、共重合体中のコモノマー由来の単量体単位の含有量は、たとえば20重量%以下であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。また、共重合体中のコモノマー由来の単量体単位の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上である。コモノマー由来の単量体単位の含有量が10重量%を超えると、樹脂の融点が下がり、耐熱性が悪くなる傾向にある。また、コモノマー由来の単量体単位の含有量が1重量%未満であると、共重合により得られ得る、たとえば加工性や透明性向上等の効果が認められない傾向にある。なお、2種類以上のコモノマーとポリプロピレンとの共重合体とする場合には、その共重合体に含まれる全てのコモノマーに由来する単量体単位の合計含有量が、前記範囲であることが好ましい。共重合体中のコモノマー由来の単量体単位の含有量は、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法に従い、赤外線(IR)スペクトル測定を行なうことにより求めることができる。
プロピレンと共重合可能なコモノマーとしては、たとえば、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンを挙げることができる。炭素原子数4〜20のα−オレフィンとして、具体的には、次のようなものを挙げることができる。
1−ブテン、2−メチル−1−プロペン(以上、炭素原子数4);1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン(以上、炭素原子数5);1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン(以上、炭素原子数6);1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン(以上、炭素原子数7);1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン(以上、炭素原子数8);1−ノネン(炭素原子数9);1−デセン(炭素原子数10);1−ウンデセン(炭素原子数11);1−ドデセン(炭素原子数12);1−トリデセン(炭素原子数13);1−テトラデセン(炭素原子数14);1−ペンタデセン(炭素原子数15);1−ヘキサデセン(炭素原子数16);1−ヘプタデセン(炭素原子数17);1−オクタデセン(炭素原子数18);1−ノナデセン(炭素原子数19)など。
上記共重合可能なコモノマーの中でも、加工性の観点から、エチレンおよび炭素原子数4〜12のα−オレフィンが好ましく用いられる。好ましく用いられる炭素原子数4〜12のα−オレフィンとしては、たとえば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン;1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン;1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン;1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン;1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン;1−ノネン;1−デセン;1−ウンデセン;1−ドデセンなどを挙げることができる。プロピレンとの共重合性の観点からは、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが好ましく、とりわけエチレン、1−ブテンおよび1−ヘキセンがより好ましい。したがって、好ましい共重合体としては、プロピレン/エチレン共重合体、プロピレン/1−ブテン共重合体およびプロピレン/1−ヘキセン共重合体などを挙げることができる。
プロピレンとこれと共重合可能なコモノマーとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいが、位相差フィルムとしての透明度や加工性を向上させるという観点からは、プロピレンを主体とするランダム共重合体であることが好ましい。なかでも、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体が好ましい。
本発明に用いる位相差フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂は、JIS K 7210に準拠した、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレイト(MFR)が、0.1〜200g/10分、特に0.5〜50g/10分の範囲にあることが好ましい。MFRがこの範囲にあるポリプロピレン系樹脂を用いることにより、押出機に大きな負荷をかけることなく均一なフィルム状物を得ることができる。
ポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の添加物が配合されていてもよい。添加物としては、たとえば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤などを挙げることができる。酸化防止剤としては、たとえば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられ、また、1分子中にたとえば、フェノール系の酸化防止機構とリン系の酸化防止機構とを併せ持つユニットを有する複合型の酸化防止剤も用いることができる。紫外線吸収剤としては、たとえば、2−ヒドロキシベンゾフェノン系やヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系の如き紫外線吸収剤、ベンゾエート系の紫外線遮断剤などが挙げられる。帯電防止剤は、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型のいずれであってもよい。滑剤としては、エルカ酸アミドやオレイン酸アミドの如き高級脂肪酸アミド、ステアリン酸の如き高級脂肪酸およびその塩などが挙げられる。造核剤としては、たとえば、ソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤、ポリビニルシクロアルカンの如き高分子系造核剤などが挙げられる。アンチブロッキング剤としては、球状あるいはそれに近い形状の微粒子が、無機系、有機系を問わず使用できる。これらの添加物は、複数種が併用されてもよい。
(ポリプロピレン系樹脂の原反フィルム)
本発明においては、ポリプロピレン系樹脂からなる位相差フィルムを作製するに際し、まず、上記ポリプロピレン系樹脂を製膜することにより原反フィルムを得る。当該原反フィルムは、透明で実質的に面内位相差のないものであることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂の原反フィルムを製造する方法としては、特に制限されず、たとえば、溶融樹脂からの押出成形法;有機溶剤に溶解させた樹脂を平板上に流延し、溶剤を除去して製膜する溶剤キャスト法などによって、面内位相差が実質的にないポリプロピレン系樹脂の原反フィルムを得ることができる。
原反フィルムを製造する方法の例として、押出成形による製膜法(押出成形法)について詳しく説明する。押出成形法においては、ポリプロピレン系樹脂は、押出機中でスクリューの回転によって溶融混練され、Tダイからシート状に押出される。押出される溶融状シートの温度は、180〜300℃程度である。このときの溶融状シートの温度が180℃を下回ると、延展性が十分でなく、得られるフィルムの厚みが不均一になり、位相差ムラのあるフィルムとなる可能性がある。また、その温度が300℃を超えると、樹脂の劣化や分解が起こりやすく、シート中に気泡が生じたり、炭化物が含まれたりすることがある。
押出機は、単軸押出機であっても2軸押出機であってもよい。たとえば、単軸押出機を用いる場合は、スクリューの長さLと直径Dの比であるL/Dが24〜36程度、樹脂供給部におけるねじ溝の空間容積V1と樹脂計量部におけるねじ溝の空間容積V2との比(V1/V2)である圧縮比が1.5〜4程度であって、フルフライトタイプ、バリアタイプ、さらにマドック型の混練部分を有するタイプなどのスクリューを用いることができる。ポリプロピレン系樹脂の劣化や分解を抑制し、均一に溶融混練するという観点からは、L/Dが28〜36で、圧縮比V1/V2が2.5〜3.5であるバリアタイプのスクリューを用いることが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂の劣化や分解を可及的に抑制するため、押出機内は、窒素雰囲気または真空にすることが好ましい。さらに、ポリプロピレン系樹脂が劣化したり分解したりすることで生じる揮発ガスを取り除くため、押出機の先端に1mmφ以上5mmφ以下程度のオリフィスを設け、押出機先端部分の樹脂圧力を高めることも好ましい。オリフィスの設置により押出機先端部分の樹脂圧力を高めることは、当該先端部分での背圧を高めることを意味しており、これにより押出の安定性を向上させることができる。用いるオリフィスの直径は、より好ましくは2mmφ以上4mmφ以下である。
押出に使用されるTダイは、樹脂の流路表面に微小な段差や傷のないものが好ましく、また、そのリップ部分は、溶融したポリプロピレン系樹脂との摩擦係数の小さい材料でめっきまたはコーティングされ、さらにリップ先端が0.3mmφ以下に研磨されたシャープなエッジ形状のものが好ましい。摩擦係数の小さい材料としては、タングステンカーバイド系やフッ素系の特殊めっきなどが挙げられる。このようなTダイを用いることにより、目ヤニの発生を抑制でき、同時にダイラインを抑制できるので、外観の均一性に優れる原反フィルムが得られる。このTダイは、マニホールドがコートハンガー形状であって、かつ以下の条件(1)または(2)を満たすことが好ましく、さらには条件(3)または(4)を満たすことがより好ましい。
(1)Tダイのリップ幅が1500mm未満のとき:Tダイの厚み方向長さ>180mm、
(2)Tダイのリップ幅が1500mm以上のとき:Tダイの厚み方向長さ>220mm、
(3)Tダイのリップ幅が1500mm未満のとき:Tダイの高さ方向長さ>250mm、
(4)Tダイのリップ幅が1500mm以上のとき:Tダイの高さ方向長さ>280mm。
このような条件を満たすTダイを用いることにより、Tダイ内部での溶融状ポリプロピレン系樹脂の流れを整えることができ、かつ、リップ部分でも厚みムラを抑えながら押出すことができるため、より厚み精度に優れ、位相差のより均一な原反フィルムを得ることができる。
ポリプロピレン系樹脂の押出変動を抑制する観点から、押出機とTダイとの間にアダプターを介してギアポンプを取り付けることが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂中にある異物を取り除くため、リーフディスクフィルターを取り付けることが好ましい。
Tダイから押出された溶融状シートは、金属製冷却ロール(チルロールまたはキャスティングロールともいう)と、その金属製冷却ロールの周方向に圧接して回転する弾性体を含むタッチロールとの間に、挟圧させて冷却固化することで、所望の原反フィルムを得ることができる。この際、タッチロールは、ゴムなどの弾性体がそのまま表面となっているものでもよいし、弾性体ロールの表面を金属スリーブからなる外筒で被覆したものでもよい。弾性体ロールの表面が金属スリーブからなる外筒で被覆されたタッチロールを用いる場合は、通常、金属製冷却ロールとタッチロールとの間に、ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートを直接挟んで冷却する。一方、表面が弾性体となっているタッチロールを用いる場合は、ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートとタッチロールとの間に熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを介在させて挟圧することもできる。
ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートを、上記のような冷却ロールとタッチロールとで挟んで冷却固化させるに際しては、冷却ロールおよびタッチロールの表面温度を低くしておき、溶融状シートを急冷させることが好ましい。たとえば、両ロールの表面温度は0℃以上30℃以下の範囲に調整されることが好ましい。これらの表面温度が30℃を超えると、溶融状シートの冷却固化に時間がかかるため、ポリプロピレン系樹脂中の結晶成分が成長してしまい、得られるフィルムは透明性に劣るものとなることがある。ロールの表面温度は、好ましくは30℃未満、さらに好ましくは25℃未満である。一方、ロールの表面温度が0℃を下回ると、金属製冷却ロールの表面が結露して水滴が付着し、原反フィルムの外観を悪化させる傾向がある。
使用する金属製冷却ロールは、その表面状態がポリプロピレン系樹脂フィルムの表面に転写されるため、その表面に凹凸がある場合には、得られるポリプロピレン系樹脂フィルムの厚み精度を低下させる可能性がある。そこで、金属製冷却ロールの表面は可能な限り鏡面状態であることが好ましい。具体的には、金属製冷却ロールの表面の粗度は、最大高さの標準数列で表して0.3S以下であることが好ましく、さらには0.1S〜0.2Sであることがより好ましい。
金属製冷却ロールとニップ部分を形成するタッチロールとは、その弾性体における表面硬度が、JIS K 6301に規定されるスプリング式硬さ試験(A形)で測定される値として、65〜80であることが好ましく、さらには70〜80であることがより好ましい。このような表面硬度のゴムロールを用いることにより、溶融状シートにかかる線圧を均一に維持することが容易となり、かつ、金属製冷却ロールとタッチロールとの間に溶融状シートのバンク(樹脂溜り)を作ることなくフィルムに成形することが容易となる。
溶融状シートを挟圧するときの圧力(線圧)は、金属製冷却ロールに対してタッチロールを押し付ける圧力により決まる。線圧は、50N/cm以上300N/cm以下とするのが好ましく、さらには100N/cm以上250N/cm以下とするのがより好ましい。線圧を前記範囲とすることにより、バンクを形成することなく、一定の線圧を維持しながらポリプロピレン系樹脂の原反フィルムを製造することが容易となる。
金属製冷却ロールとタッチロールとの間で、ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートとともに熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを挟圧する場合、この二軸延伸フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂と強固に熱融着しない樹脂であればよく、具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。これらの中でも、湿度や熱などによる寸法変化の少ないポリエステルが最も好ましい。この場合の二軸延伸フィルムの厚さは、通常5〜50μm程度であり、好ましくは10〜30μmである。
この方法においては、Tダイのリップから金属製冷却ロールとタッチロールとで挟圧されるまでの距離(エアギャップ)を200mm以下とすることが好ましく、さらには160mm以下とすることがより好ましい。Tダイから押出された溶融状シートは、リップからロールまでの間引き伸ばされて、配向が生じやすくなる。エアギャップを上記の如く短くすることで、配向のより小さいフィルムを得ることができる。エアギャップの下限値は、使用する金属製冷却ロールの径とタッチロールの径、および使用するリップの先端形状により決定され、通常50mm以上である。
この方法でポリプロピレン系樹脂の原反フィルムを製造するときの加工速度は、溶融状シートを冷却固化するために必要な時間により決定される。使用する金属製冷却ロールの径が大きくなると、溶融状シートがその冷却ロールと接触している距離が長くなるため、より高速での製造が可能となる。具体的には、600mmφの金属製冷却ロールを用いる場合、加工速度は、最大で5〜20m/分程度となる。
金属製冷却ロールとタッチロールとの間で挟圧された溶融状シートは、ロールとの接触により冷却固化する。そして、必要に応じて端部をスリットした後、巻き取り機に巻き取られて原反フィルムとなる。この際、原反フィルムを使用するまでの間、その表面を保護するために、その片面または両面に別の熱可塑性樹脂からなる表面保護フィルムを貼り合わせた状態で巻き取ってもよい。ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートを熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムとともに金属製冷却ロールとタッチロールとの間で挟圧した場合には、その二軸延伸フィルムを一方の表面保護フィルムとすることもできる。
(位相差フィルムの製造方法)
本発明に用いる位相差フィルムは、上記したようなポリプロピレン系樹脂からなる原反フィルムを横延伸することにより製造できる。ここで、横延伸とは、ロールから巻き出される長尺のフィルムを幅方向(横方向)に延伸することをいう。
横延伸は通常、以下の工程を有する。
(A)原反フィルムを、ポリプロピレン系樹脂の融点付近の温度で予熱する予熱工程;
(B)予熱されたフィルムを、当該予熱温度よりも低い温度で横方向に延伸する延伸工程;および、
(C)横方向に延伸されたフィルムを熱固定する熱固定工程。
代表的な横延伸の方法としては、テンター法が挙げられる。テンター法は、チャックでフィルム幅方向の両端を固定した原反フィルムを、オーブン中でチャック間隔を広げて延伸する方法である。テンター法に用いる延伸機(テンター延伸機)は通常、予熱工程を行なうゾーン、延伸工程を行なうゾーン、および熱固定工程を行なうゾーンにおいて、それぞれの温度を独立に調節できる機構を備えている。このようなテンター延伸機を用いて横延伸を行なうことにより、軸精度に優れ、かつ均一な位相差を有する位相差フィルムを得ることができる。
横延伸の予熱工程(A)は、フィルムを幅方向に延伸する工程の前に設置される工程であり、フィルムを延伸するのに十分な温度までフィルムを加熱する工程である。予熱工程での予熱温度は、オーブンの予熱工程を行なうゾーンにおける雰囲気温度を意味し、延伸されるポリプロピレン系樹脂フィルムの融点付近の温度が採用される。延伸されるフィルムの予熱工程における滞留時間は、30〜120秒であることが好ましい。この予熱工程での滞留時間が30秒に満たないときは、延伸工程でフィルムが延伸されるときに応力が分散し、位相差フィルムとしての軸精度や位相差の均一性に不利な影響を及ぼす可能性があり、また、その滞留時間が120秒を超えるときは、必要以上に熱を受け、フィルムが部分的に融解し、ドローダウンする(下に垂れる)可能性がある。予熱工程での滞留時間は、30〜60秒であることがより好ましい。
横延伸の延伸工程(B)は、フィルムを幅方向に延伸する工程である。この延伸工程での延伸温度は通常、予熱温度より低い温度とされる。延伸工程での延伸温度は、オーブンの延伸工程を行なうゾーンにおける雰囲気温度を意味する。予熱されたフィルムを予熱工程よりも低い温度で延伸することにより、フィルムを均一に延伸できるようになり、その結果、光軸および位相差の均一性に優れた位相差フィルムを得ることができる。延伸温度は、予熱工程における予熱温度より5〜20℃低いことが好ましく、7〜15℃低いことがより好ましい。このときの延伸倍率は、光軸を発現させる方向(遅相軸となる方向)で3〜10倍程度の範囲から、必要とする位相差値に合わせて、適宜選択すればよく、好ましくは3〜6倍の範囲である。このときの延伸倍率を3倍以上とすることにより、前記のNz係数を0.9〜1.1の範囲とすることができる。一方、延伸倍率があまり大きくなると、位相差値の均一性が損なわれる可能性があるので、10倍程度までにとどめるのが好ましい。
横延伸の熱固定工程(C)は、延伸工程終了時におけるフィルム幅を保った状態で、そのフィルムをオーブン内の所定温度のゾーンに通過させる工程である。フィルムの位相差や光軸など光学的特性の安定性を効果的に向上させるために、熱固定温度は、延伸工程における延伸温度よりも5℃低い温度から延伸温度よりも30℃高い温度までの範囲内であることが好ましい。
横延伸の工程は、さらに熱緩和工程を有してもよい。この熱緩和工程は、テンター法においては通常、延伸工程と熱固定工程との間で行なわれ、熱緩和のゾーンは、他のゾーンから独立して温度設定が可能なように設けられるのが通例である。具体的には、熱緩和工程は、延伸工程においてフィルムを所定の幅に延伸した後、無駄な歪を取り除くために、チャックの間隔を数%だけ狭くして、通常は延伸終了時の間隔より0.5〜7%程度狭くして行なわれる。
<プライマー層>
本発明の粘着剤層付位相差フィルムを構成するプライマー層(図1におけるプライマー層30)は、下記単量体単位(a)、(b)および(c)を含む共重合体からなる。かかるプライマー層を介在させることにより、位相差フィルムと粘着剤層との密着性を向上させることができる。
(a)下記一般式(I):
CH2=CH−R (I)
で示されるビニル化合物から誘導される単量体単位。
(b)不飽和カルボン酸類から誘導される単量体単位。
(c)1,2−位に二重結合を有する直鎖状エチレン列炭化水素から誘導される単量体単位。
単量体単位(a)を構成する上記一般式(I)で示されるビニル化合物における置換基Rは、シクロアルキル基、第2級アルキル基または第3級アルキル基である。シクロアルキル基としては、3〜16員環を有するシクロアルキル基が好ましく、3〜10員環を有する炭素原子数3〜20のシクロアルキル基がより好ましい。また、第2級アルキル基としては、炭素原子数3〜20の第2級アルキル基が好ましく、第3級アルキル基としては、炭素原子数4〜20の第3級アルキル基が好ましい。なかでも、置換基Rは、3〜10員環を有する炭素原子数3〜20のシクロアルキル基または炭素原子数4〜20の第3級アルキル基であることが特に好ましい。
上記一般式(I)で示されるビニル化合物の具体例としては、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロブタン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、3−メチル−1−ヘプテン、3−メチル−1−オクテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘプテン、3,3−ジメチル−1−オクテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ヘプテン、3,4−ジメチル−1−オクテン、3,5−ジメチル−1−ヘキセン、3,5−ジメチル−1−ヘプテン、3,5−ジメチル−1−オクテン、3,6−ジメチル−1−ヘプテン、3,6−ジメチル−1−オクテン、3,7−ジメチル−1−オクテン、3,3,4−トリメチル−1−ペンテン、3,3,4−トリメチル−1−ヘキセン、3,3,4−トリメチル−1−ヘプテン、3,3,4−トリメチル−1−オクテン、3,4,4−トリメチル−1−ペンテン、3,4,4−トリメチル−1−ヘキセン、3,4,4−トリメチル−1−ヘプテン、3,4,4−トリメチル−1−オクテン、5−ビニル−2−ノルボルネン、1−ビニルアダマンタン、4−ビニル−1−シクロヘキセンなどが挙げられる。
上記のなかでも、位相差フィルムと粘着剤層との密着性向上の観点から、上記一般式(I)で示されるビニル化合物は、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、5−ビニル−2−ノルボルネン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、3,5−ジメチル−1−ヘキセン、3,3,4−トリメチル−1−ペンテン、3,4,4−トリメチル−1−ペンテンであることが好ましく、より好ましくは、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、3,3,4−トリメチル−1−ペンテンであり、さらに好ましくは、ビニルシクロヘキサン、3,3−ジメチル−1−ブテンである。最も好ましいビニル化合物は、ビニルシクロヘキサンである。
また、単量体単位(b)を構成する上記不飽和カルボン酸類としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸、メチルナジック酸、ハイミック酸、アンゲリカ酸、テトラヒドロフタル酸、ソルビン酸、メサコン酸などの不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水ハイミック酸などの不飽和カルボン酸無水物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−i−プロピル、メタクリル酸−i−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−i−ブチル、メタクリル酸−i−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−t−ブチル、アクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸アクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−t−ブチル、アクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジメチルエステルなどの不飽和カルボン酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸−N−モノエチルアミド、マレイン酸−N,N−ジエチルアミド、マレイン酸−N−モノブチルアミド、マレイン酸−N,N−ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸−N−モノエチルアミド、フマル酸−N,N−ジエチルアミド、フマル酸−N−モノブチルアミド、フマル酸−N,N−ジブチルアミドなどの不飽和カルボン酸アミド;マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどの不飽和カルボン酸イミド;塩化マレオイルなどの不飽和カルボン酸ハライド;アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウムなどの不飽和カルボン酸金属塩などが挙げられる。また、上記の不飽和カルボン酸類を組み合わせて使用してもよい。
不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが好ましく、とりわけ、無水マレイン酸、メタクリル酸ヒドロキシエチルが好ましい。
また、プライマー層を形成する共重合体は、上記単量体単位(a)および(b)に加えて、1,2−位に二重結合を有する直鎖状エチレン列炭化水素から誘導される単量体単位(c)を含有する。ここで、「1,2−位に二重結合を有する直鎖状エチレン列炭化水素」とは、1,2−位に炭素炭素二重結合を有する、一般式CnH2n(nは2以上の整数)で表される直鎖状の脂肪族不飽和炭化水素を意味する。
上記1,2−位に二重結合を有する直鎖状エチレン列炭化水素としては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセン等が挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜20の直鎖状エチレン列炭化水素であり、より好ましくはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、さらに好ましくはプロピレンである。
プライマー層を構成する共重合体において、単量体単位(b)の含有量は、位相差フィルムと粘着剤層との密着性、耐ガスホール性を高める観点から、好ましくは0.01〜30モル%であり、より好ましくは0.05〜15モル%であり、さらに好ましくは0.1〜10モル%である。ただし、共重合体中の全単量体単位を100モル%とする。
上記共重合体において、単量体単位(c)の含有量は、共重合体中の単量体単位(a)と単量体単位(c)との合計の含有量を100モル%として、通常99モル%以下であり、位相差フィルムと粘着剤層との密着性、耐ガスホール性を高める観点から、好ましくは1〜99モル%(単量体単位(a)の含有量は99〜1モル%)であり、より好ましくは20〜97モル%(単量体単位(a)の含有量は80〜3モル%)であり、更に好ましくは40〜95モル%(単量体単位(a)の含有量は60〜5モル%)であり、特に好ましくは60〜92モル%(単量体単位(a)の含有量は40〜8モル%)であり、最も好ましくは80〜90モル%(単量体単位(a)の含有量は20〜10モル%)である。
上記単量体単位(a)〜(c)の含有量は、1H−NMRスペクトルや13C−NMRスペクトルを用いて求めることができる。
上記共重合体は、単量体単位(a)〜(c)以外の単量体単位を含有していてもよい。該単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、環状オレフィン、下記一般式(II)で表されるビニリデン化合物、ジエン化合物、ハロゲン化ビニル、アルカン酸ビニル、ビニルエーテル類、アクリロニトリル類などが挙げられる。
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、直鎖状、分枝状あるいは環状の炭素原子数1〜18の炭化水素基等を表す。)
上記環状オレフィンとしては、たとえば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−ベンジル−2−ノルボルネン、2−テトラシクロドデセン、2−トリシクロデセン、2−トリシクロウンデセン、2−ペンタシクロペンタデセン、2−ペンタシクロヘキサデセン、8−メチル−2−テトラシクロドデセン、8−エチル−2−テトラシクロドデセン、5−アセチル−2−ノルボルネン、5−アセチルオキシ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−エトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、8−メトキシカルボニル−2−テトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−2−テトラシクロドデセン、8−シアノ−2−テトラシクロドデセン等が挙げられる。より好ましい環状オレフィンは、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、2−テトラシクロドデセン、2−トリシクロデセン、2−トリシクロウンデセン、2−ペンタシクロペンタデセン、2−ペンタシクロヘキサデセン、5−アセチル−2−ノルボルネン、5−アセチルオキシ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネンであり、特に好ましくは2−ノルボルネン、2−テトラシクロドデセンである。
上記一般式(II)で表されるビニリデン化合物としては、たとえば、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、2−メチル−1−オクテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2,3−ジメチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ヘプテン、2,3−ジメチ−1−オクテン、2,4−ジメチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン等が挙げられる。特に好ましいビニリデン化合物は、イソブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテンである。
上記ジエン化合物としては、たとえば、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,5−シクロオクタジエン、2,5−ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−アリル−2−ノルボルネン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等が挙げられる。特に好ましいジエン化合物は、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
上記アルカン酸ビニルとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどが挙げられ、ビニルエーテル類としては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。アクリロニトリル類としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
プライマー層を構成する共重合体中において、単量体単位(a)〜(c)以外の単量体単位の含有量は、共重合体中の全単量体単位の含有量を100モル%として、好ましくは30モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下であり、さらに好ましくは5モル%以下であり、特に好ましくは1モル%以下である。
上記共重合体の製造方法としては公知の方法が用いられ、たとえば、イソプロピリデンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドおよびメチルアルモキサンを接触させて得られる触媒の存在下、上記一般式(I)で示されるビニル化合物と、上記不飽和カルボン酸類と、上記1,2−位に二重結合を有する直鎖状エチレン列炭化水素とを共重合する方法などが挙げられ、具体的には欧州特許出願公開第1219648号明細書に記載の方法などを用いることができる。
上記共重合体の製造方法としては、多段重合法を用いてもよく、たとえば、上記一般式(I)で示されるビニル化合物と、上記1,2−位に二重結合を有する直鎖状エチレン列炭化水素とを共重合した後、該共重合により得られた重合体と上記不飽和カルボン酸類とをグラフト重合する方法;上記不飽和カルボン酸類と、上記1,2−位に二重結合を有する直鎖状エチレン列炭化水素とを共重合した後、該共重合により得られた重合体と上記一般式(I)で示されるビニル化合物とをグラフト重合する方法などを挙げることができる。
上記のグラフト重合方法としては、たとえば、前駆体(1段目の共重合により得られた重合体)を溶融させた後、単量体(一般式(I)で示されるビニル化合物、不飽和カルボン酸類など)を添加してグラフト重合せしめる方法;前駆体をトルエン、キシレンなどの溶媒に溶解した後、単量体(一般式(I)で示されるビニル化合物、不飽和カルボン酸類など)を添加してグラフト重合せしめる方法などを用いることができる。グラフト重合の温度は、通常、40〜350℃程度である。また、グラフト重合には、通常、ラジカル開始剤が用いられ、ラジカル開始剤の使用量は、前駆体1kgに対して、通常0.001〜0.5モルであり、好ましくは0.005〜0.1モルである。
ラジカル開始剤としては、たとえば、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、メチルアセトアセテートペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレイト、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、ジイソプロピベンゼンハイドロペルオキシド、パラメンタンハイドロペルオキシド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジハイドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、α,α’−ビス(tert−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、m−トルノイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネイト、ジ−2−エチルへキシルペルオキシジカーボネイト、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネイト、ビス(4−tert−ブチルシクロへキシル)ペルオキシジカーボネイト、ジミリスチルペルオキシジカーボネイト、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネイト、ジメトキシイソプロピルペルオキシカーボネイト、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペルオキシジカーボネイト、ジアリルペルオキシジカーボネイト、tert−ブチルペルオキシアセテイト、tert−ブチルペルオキシイソブチレイト、tert−ブチルペルオキシピバレイト、tert−ブチルペルオキシネオデカノエイト、クミルペルオキシネオデカノエイト、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエイト、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエイト、tert−ブチルペルオキシラウレイト、tert−ブチルペルオキシベンゾエイト、ジ−tert−ブチルペルオキシイソフタレイト、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)−3−ヘキシン、tert−ブチルペルオキシマレイン酸、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネイト、クミルペルオキシオクトエイト、tert−へキシルペルオキシネオデカネイト、tert−へキシルペルオキシピバレイト、tert−ブチルペルオキシネオヘキサノエイト、tert−へキシルペルオキシネオヘキサノエイト、クミルペルオキシネオヘキサノエイト、アセチルシクロへキシルスルフォニルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシアリルカーボネイトなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどのアゾ化合物などが挙げられる。
プライマー層を構成する上記共重合体の極限粘度[η]の値は、位相差フィルムと粘着剤層との密着性を高める観点から、好ましくは0.08dl/g以上であり、より好ましくは0.10dl/g以上であり、さらに好ましくは0.15dl/g以上であり、プライマーの塗布性(塗布しやすさ)を高める観点から、好ましくは10.0dl/g以下であり、より好ましくは3.0dl/g以下であり、さらに好ましくは2.0dl/g以下である。
プライマー層は、上記共重合体を含有する塗工用組成物(プライマー)を調製し、これを位相差フィルム上に塗工することにより形成することができる。
本発明において用いられるプライマーは、水を含有していてもよく、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;メタノ−ル、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類等の有機溶剤等を含有してもよい。これら溶剤の含有量は、プライマーに含有される共重合体の極限粘度[η]により、適宜選択されるが、通常、共重合体100重量部に対して、通常、150〜3000重量部程度、好ましくは200〜2000重量部である。
プライマーは、フェノール系安定剤、フォスファイト系安定剤、アミン系安定剤、アミド系安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、沈降防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤などの安定剤;揺変剤、増粘剤、消泡剤、表面調整剤、耐候剤、顔料分散剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、油剤、染料などの添加剤;酸化チタン(ルチル型)、酸化亜鉛などの遷移金属化合物、カーボンブラック等の顔料;ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ウオラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、ガラスフレーク、硫酸バリウム、クレー、カオリン、微粉末シリカ、マイカ、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、セライトなどの無機、有機の充填剤等を含有していてもよい。また、プライマーは、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂を含有していてもよい。
また、本発明において用いられるプライマーは、共重合体、安定剤、添加剤、顔料、充填剤等が溶媒に溶解している形態のものであってもよく、これらのすべてまたはいずれかが分散した形態のものであってもよい。
プライマーを位相差フィルムへ塗工する方法としては、特に限定されず、たとえば、スピンコート法、バーコート法、ロールコート法、カーテンコート法、およびスロットコートやエクストルージョンコートなどのダイコート法等を採用することができる。プライマーを塗布した後、ヒーター加熱や温風吹きつけなどの方法による溶剤除去(乾燥)工程を組み込み、溶剤を適宜に乾燥して除去することが好ましい。
プライマーをポリプロピレン系樹脂からなる位相差フィルムに塗工する際、位相差フィルムの表面にコロナ処理を施すことが好ましい。これにより、得られるプライマー層とポリプロピレン系樹脂からなる位相差フィルムとの密着性をさらに向上させることができる。
プライマー層の厚みは、特に制限されないが、0.1〜10μm程度の範囲とするのが好ましく、とりわけ0.5〜10μm程度とするのがより好ましい。
<粘着剤層>
粘着剤層(図1における粘着剤層40)を形成する粘着剤としては、たとえば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとする粘着剤を挙げることができる。なかでも、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤のように、光学的な透明性に優れ、適度の濡れ性や凝集力を保持し、基材との接着性にも優れ、さらには耐候性や耐熱性などを有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等の剥離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。
アクリル系粘着剤に含有されるアクリル系ベースポリマーとしては、メチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有するアクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの官能基含有アクリル系モノマーとのアクリル系共重合体を挙げることができる。該アクリル系共重合体のガラス転移温度は、好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下である。また、該アクリル系共重合体の重量平均分子量は、10万以上であることが好ましい。
また、粘着剤層を形成する粘着剤として、光拡散剤が分散された拡散粘着剤を用いることもできる。光拡散剤は、粘着剤層に光拡散性を付与するためのものであり、粘着剤層を構成するベースポリマーと異なる屈折率を有する微粒子であればよく、無機化合物からなる微粒子や有機化合物(ポリマー)からなる微粒子を用いることができる。上記したようなアクリル系ベースポリマーを含めて、粘着剤層を構成するベースポリマーは、1.4前後の屈折率を示すことが多いので、光拡散剤としては、その屈折率が1〜2程度のものから適宜選択すればよい。粘着剤層を構成するベースポリマーと光拡散剤との屈折率差は、通常0.01以上であり、また画像表示装置の明るさと視認性の観点からは、0.01以上0.5以下とするのが好適である。光拡散剤として用いる微粒子は、球形のもの、それも単分散に近いものが好ましく、たとえば、平均粒径が2〜6μm程度の範囲にある微粒子が好適に用いられる。
無機化合物からなる微粒子としては、たとえば、酸化アルミニウム(屈折率1.76)、酸化ケイ素(屈折率1.45)などを挙げることができる。
また、有機化合物(ポリマー)からなる微粒子としては、たとえば、メラミンビーズ(屈折率1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50〜1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、ポリスチレンビーズ(屈折率1.6)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46)などを挙げることができる。
光拡散剤の配合量は、それが分散された粘着剤層に必要とされるヘイズ値や、それが適用される画像表示装置の明るさなどを考慮して、適宜決められるが、一般には、粘着剤層を構成するベースポリマー100重量部に対して、3〜30重量部程度である。
光拡散剤が分散された粘着剤層のヘイズ値は、粘着剤層付位相差フィルムまたはこれを用いた偏光板が適用された画像表示装置の明るさを確保するとともに、表示像のにじみやボケを生じにくくする観点から、20〜80%の範囲となるようにするのが好ましい。ヘイズ値は、(拡散透過率/全光線透過率)×100(%)で表される値であり、JIS K 7105に準じて測定される。
粘着剤層は、上記したようなベースポリマーを主体とする粘着剤溶液をプライマー層上に塗布し、乾燥させる方法によって形成できるほか、離型処理が施されたフィルムの離型処理面に、粘着剤溶液を塗布し、乾燥させることにより粘着剤層を形成した後、この粘着剤層付フィルムを、粘着剤層側が貼合面となるように、プライマー層表面に貼り合わせる方法によっても形成することができる。粘着剤層が形成されるプライマー層表面には、あらかじめコロナ放電処理を施しておくことが好ましい。これにより、プライマー層と粘着剤層との密着性を向上させることができる。なお、位相差フィルムのプライマー層側とは反対側に直線偏光板を積層して楕円偏光板を作製する場合においては(楕円偏光板については後述する。)、粘着剤層の形成は、位相差フィルムに直線偏光板を積層させた後に行なってもよい。
粘着剤層の厚みは、その接着力などに応じて決定されるが、通常は1〜40μm程度である。加工性や耐久性などの特性を損なうことなく、薄型の粘着剤層付位相差フィルムおよびこれを用いた楕円偏光板を得るためには、粘着剤層の厚みは3〜25μm程度とすることが好ましい。また、粘着剤層の厚みを3〜25μm程度とすることにより、画像表示装置を正面から見た場合や斜めから見た場合の明るさを保ち、表示像のにじみやボケが生じにくくすることができる。
<<楕円偏光板>>
上記本発明の粘着剤層付位相差フィルムは、楕円偏光板に好適に適用することができる。本発明の楕円偏光板において、粘着剤層付位相差フィルムは、1/4波長板として機能してもよいし、1/2波長板として機能してもよい。図2は、本発明の楕円偏光板の好ましい一例を示す断面模式図(図2(A))およびその軸角度の関係を説明するための概略図(図2(B))である。
図2に示される楕円偏光板52は、粘着剤層付位相差フィルム10の粘着剤層とは反対側の表面上(すなわち、ポリプロピレン系樹脂からなる位相差フィルム上)に直線偏光板50を積層してなる。この例において、粘着剤層付位相差フィルム10は、1/4波長板として機能する。1/4波長板は、直線偏光で入射する光を、円偏光をはじめとする楕円偏光に、また円偏光をはじめとする楕円偏光で入射する光を直線偏光に、それぞれ変換して出射する機能を有する。
ここで、本発明の粘着剤層付位相差フィルムを1/4波長板として用いる場合、その面内位相差値R0は、70〜160nmの範囲にあることが好ましく、さらには80〜150nmの範囲にあることがより好ましい。
直線偏光板としては、ある方向の振動面を有する直線偏光を吸収し、それと直交する方向の振動面を有する直線偏光を透過する機能が付与された光学部材であって、この分野で一般に用いられているもの使用することができる。具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムの少なくとも一方の面に、透明保護層を形成したポリビニルアルコール系の直線偏光板が一般的である。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させることにより、上記したような、ある方向の振動面を有する直線偏光を吸収し、それと直交する方向の振動面を有する直線偏光を透過する機能を付与することができる。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、および染色後のホウ酸処理を施すことにより得ることができる。
直線偏光板に用いられる透明保護層としては、たとえば、従来から偏光フィルムの保護層として一般的に用いられているトリアセチルセルロース(TAC)やジアセチルセルロースに代表されるアセチルセルロース系樹脂のフィルムを挙げることができるが、その他、ノルボルネン系樹脂に代表される環状ポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリプロピレン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂のフィルム、ポリ(メタ)アクリル酸メチルのフィルムなどを用いてもよい。
図2(A)に示される楕円偏光板においては、図2(B)を参照して、直線偏光板50の吸収軸22を基準に、反時計回り方向を正として、1/4波長板である粘着剤層付位相差フィルム10の面内遅相軸12に至る角度θが、40〜50度、好ましくはほぼ45度となるように配置することで、ほぼ円偏光板として機能するようになる。あるいは、直線偏光板50の吸収軸22を基準に、反時計回り方向を正として、1/4波長板である粘着剤層付位相差フィルム10の面内遅相軸12に至る角度θが、130〜140度、好ましくはほぼ135度となるように配置することでも、やはりほぼ円偏光板として機能するようになる。以下、角度を表すときは、ここでの説明と同様、吸収軸に対して反時計回りを正とする。
図3は、本発明の楕円偏光板の別の好ましい一例を示す断面模式図(図3(A))およびその軸角度の関係を説明するための概略図(図3(B))である。図3に示される楕円偏光板55は、1/4波長板である粘着剤層付位相差フィルム10の粘着剤層とは反対側の表面上(すなわち、ポリプロピレン系樹脂からなる位相差フィルム上)に、1/2波長板25を積層し、さらにこの1/2波長板25上に直線偏光板50を積層してなる。1/2波長板25は、直線偏光の向きを回転させる機能を有する。
図3に示される楕円偏光板において、直線偏光板および直線偏光板に用いられる透明保護層としては、上記したものを用いることができる。また、1/2波長板としては、従来公知のものを使用することができるほか、本発明の粘着剤層付位相差フィルムが用いられてもよい。従来公知の1/2波長板としては、たとえば環状ポリオレフィン系樹脂よりなる位相差フィルム、ポリカーボネート系樹脂よりなる位相差フィルムなどを挙げることができる。本発明の粘着剤層付位相差フィルムを1/2波長板として用いる場合、その面内位相差値R0は、240〜400nmの範囲にあることが好ましく、さらには260〜330nmの範囲にあることがより好ましい。
図3(A)に示されるように、1/4波長板と1/2波長板とを組み合わせて用いることにより、これら波長板の積層体は、可視光領域の広い波長範囲、すなわち広帯域で1/4波長板として機能するようになり、その1/2波長板側に直線偏光板を積層した楕円偏光板は、広帯域で、直線偏光を円偏光に、また円偏光を直線偏光に変換できるようになる。さらにこのように構成することで、反射防止効果の角度依存性をも低減できるようになる。
図3(A)に示される楕円偏光板においては、図3(B)を参照して、直線偏光板50の吸収軸22を基準に、1/2波長板25の面内遅相軸17に至る角度φが10〜20度、好ましくはほぼ15度となり、1/2波長板25の面内遅相軸17から1/4波長板である粘着剤層付位相差フィルム10の面内遅相軸12に至る角度Ψが55〜65度、好ましくはほぼ60度となるように配置することで、ほぼ円偏光板として機能するようになる。あるいは、直線偏光板50の吸収軸22を基準に、1/2波長板25の面内遅相軸17に至る角度φが100〜110度、好ましくはほぼ105度となり、1/2波長板25の面内遅相軸17から1/4波長板である粘着剤層付位相差フィルム10の面内遅相軸12に至る角度Ψが55〜65度、好ましくはほぼ60度となるように配置することでも、やはりほぼ円偏光板として機能するようになる。後者の関係(直線偏光板50の吸収軸22から1/2波長板25の面内遅相軸17に至る角度φが100〜110度)は、図3(B)において「直線偏光板の吸収軸22」を「直線偏光板の透過軸」と読み替えた状態に相当する。直線偏光板において、吸収軸と透過軸とは面内で直交する関係にある。
楕円偏光板の作製にあたり、波長板と直線偏光板との貼合および波長板同士(1/4波長板と1/2波長板)の貼合には、たとえば、粘着剤層を用いることができる。粘着剤層を形成する粘着剤としては、上記したものを用いることができ、なかでも、透明性および耐久性に優れたアクリル系ポリマーを主体とする粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤層の厚みは、通常5〜50μmの範囲である。
本発明の楕円偏光板は、直線偏光板とは反対側(1/4波長板側)の表面に、粘着剤付位相差フィルムに由来する粘着剤層を備える構成とすることができる。当該粘着剤層は、液晶セルとの貼合に好適に用いることができる。
<<液晶表示装置>>
図4は、本発明の液晶表示装置の一例の構成を示す断面模式図である。図4に示される液晶表示装置は、図2に示される楕円偏光板52を液晶セル60の両側に配置した例であり、具体的には、バックライト側から、バックライト70、楕円偏光板52、液晶セル60および楕円偏光板52の順に配置されている。2つの楕円偏光板52はそれぞれ、1/4波長板である粘着剤層付位相差フィルム10側が液晶セル60に対向するように、その粘着剤層を用いて貼合されている。2つの楕円偏光板52は、それらの直線偏光板50の吸収軸が互いに直交するように配置される。
図5は、本発明の液晶表示装置の別の一例の構成を示す断面模式図である。図5に示される液晶表示装置は、図3に示される楕円偏光板55を液晶セル60の両側に配置した例であり、具体的には、バックライト側から、バックライト70、楕円偏光板55、液晶セル60および楕円偏光板55の順に配置されている。2つの楕円偏光板55はそれぞれ、1/4波長板である粘着剤層付位相差フィルム10側が液晶セル60に対向するように、その粘着剤層を用いて貼合されている。2つの楕円偏光板55は、それらの直線偏光板50の吸収軸が互いに直交するように配置される。
なお、バックライト70は、液晶表示装置が透過型または半透過反射型である場合に設けられるものであり、反射型の液晶表示装置の場合には、省略されてもよい。また、図4および5においては、液晶セルの両面に本発明の楕円偏光板を用いているが、これに限定されるものではなく、液晶セルの片面に本発明の楕円偏光板を用い、もう一方の面に他の偏光板を貼合してもよい。
10 粘着剤層付位相差フィルム、12 1/4波長板の面内遅相軸、17 1/2波長板の面内遅相軸、20 位相差フィルム、22 吸収軸、25 1/2波長板、30 プライマー層、40 粘着剤層、50 直線偏光板、52,55 楕円偏光板、60 液晶セル、70 バックライト。