以下に本発明の積層光学フィルムを図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明の積層光学フィルムは、三次元屈折率を制御した光学フィルム(1)と、光学的に正の一軸性を示す光学フィルム(2)とが、粘着剤層(A)を介して積層されている。
また前記積層光学フィルムには、粘着剤層(B)を介して偏光板(P)を積層して、楕円偏光板とすることができる。図2乃至図3は、図1に示す積層光学フィルムに、粘着剤層(B)を介して偏光板(P)を積層した楕円偏光板である。前記積層光学フィルムに対する偏光板(P)の積層位置は特に制限されないが、液晶表示装置に実装した時に、より視野角が広がる点から、図2のように光学フィルム(2)側に偏光板(P)を積層するのが好ましい。
また本発明の積層光学フィルムは、図4乃至図6に示すように、本発明の三次元屈折率を制御した光学フィルム(1)と、光学的に正の一軸性を示す光学フィルム(2)と、光学的に負の一軸性を示す材料を傾斜配向させてなる光学フィルム(3)の各フィルムが、粘着剤層(A)を介して積層されている。これら光学フィルムの積層順は特に制限されない。図4では光学フィルム(2)/光学フィルム(1)/光学フィルム(3)の順に、図5では光学フィルム(2)/光学フィルム(3)/光学フィルム(1)の順に、図6では光学フィルム(1)/光学フィルム(2)/光学フィルム(3)の順に、それぞれ積層されている。これらのなかでも、図4のような配置で積層するのが好ましい。
また前記積層光学フィルムには、粘着剤層(B)を介して偏光板(P)を積層して、楕円偏光板とすることができる。図7乃至図9は、図4乃至図6に示す積層光学フィルムに粘着剤層(B)を介して偏光板(P)を積層した楕円偏光板である。前記積層光学フィルムに対する偏光板(P)の積層位置は特に制限されないが、液晶表示装置に実装した時に、より視野角が広がる点から、図7乃至図8のように光学フィルム(2)側に偏光板(P)を積層するのが好ましい。特に図7の場合が好ましい。
なお、本発明の積層光学フィルムおよび楕円偏光板では、他の光学部材や液晶セル等に貼り合せるための粘着剤層(C)を設けることができる。図2乃至図3、図7乃至図9では、本発明の楕円偏光板において、積層光学フィルムに偏光板(P)を積層したのとは反対側に、粘着剤層(C)が積層されている。
前記光学フィルム(1)は、ポリカーボネート系樹脂およびスチレン系樹脂を含有する高分子フィルムを延伸して得られる。
ポリカーボネート系樹脂は、光学フィルムに用いられている各種のものを特に制限なく使用できる。ポリカーボネート系樹脂は、例えば、芳香族2価フェノール成分とカーボネート成分とからなる芳香族ポリカーボネートが好ましい。
芳香族2価フェノール化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンその他が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上のものを併用してもよい。なかでも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが好ましい。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの単位を含んでいるポリカーボネートは加工性に優れ、高い透明性を有する、複屈折の発現性が良く単独で用いられる。また、この2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの単位に加え、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの単位を併用することが好ましい。両者を併用する場合、その使用割合を変えることによって、たとえば、フィルムのガラス転移温度(以下、Tgという)や光弾性係数を調整することができる。すなわち、ポリカーボネート系樹脂中の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン由来成分の含有率を高くすれば、Tgを高くし、光弾性係数を低くすることができる。ただし、光学フィルムは高分子フィルムを延伸加工を施すため、Tgを適度に低く抑えておくことにより良好な加工性が得られる。そのため、ポリカーボネート系樹脂中の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン由来成分の含有率は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン由来成分に対してモル比で4倍以下とすることが好ましい。
なお、カーボネート成分としては、ホスゲン、前記2価フェノール類のビスクロロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。なかでもホスゲン、ジフェニルカーボネートが好ましい。
一方、スチレン系樹脂は、スチレン系モノマーを重合させることによって得られるものである。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても。通常、スチレンの単独重合物またはスチレンを主成分とし、スチレン系モノマーとを併用したものが用いられる。
上記積層光学フィルムにおいて、光学フィルム(1)の材料である、スチレン系樹脂の重量平均分子量が2万以下であることが好ましい。また光学フィルム(1)のガラス転移温度は110〜180℃の範囲であることが好ましい。
スチレン系樹脂は、GPC法で測定される重量平均分子量が2万以下であることが好ましい。重量平均分子量が2万を超える場合には、ポリカーボネート系樹脂との相溶性が悪くなってフィルムが濁るので、透明性が必要とされる光学用途に適さなくなるからである。かかる観点から重量平均分子量は1万以下であるのが好ましい。一方、重量平均分子量が低くなりすぎると、高温高湿環境下で低分子成分が溶出する点で好ましくないため、重量平均分子量は500以上、さらには1000以上であるのが好ましい。
前記ポリカーボネート系樹脂とスチレン系樹脂の比率は、高分子フィルム(光学フィルム)の透明性がよく、光弾性係数が前記範囲内になるように適宜に調整される。通常、ポリカーボネート系樹脂とスチレン系樹脂の合計を100重量%とした場合、スチレン系樹脂の含有量が2〜50重量%であることが好ましい。スチレン系樹脂の含有量が2重量%未満であると光弾性係数を十分に低い値に制御し難くなる。かかる観点から、スチレン系樹脂の含有量は5重量%以上、さらには10重量%以上であるのが好ましい。一方、50重量%を超えると高分子フィルムのTgが低くなり好ましくない。かかる観点から、スチレン系樹脂の含有量は40重量%以下、さらには30重量%以下であるのが好ましい。
また、高分子フィルム(光学フィルム)のTgは、フィルムの耐熱性に影響を与えるため、この点を考慮すればTgは高い方が好ましい。一方、光学フィルムは高分子フィルムを延伸加工して得られる。延伸は、基本的にTg付近の温度条件下で行なわれるため、良好な延伸加工性の点からは、Tgを適度に低く抑えるのが好ましい。かかる観点から、高分子フィルム(光学フィルム)のTgは110〜180℃であることが好ましい。さらには、120〜170℃、130〜160℃であるのが好ましい。
前記ポリカーボネート系樹脂およびスチレン系樹脂を含有する高分子フィルムには、延伸処理を施し、Nz係数が、Nz≦0.9、かつ、正面位相差(Re)が、Re≧80nmを満足するように三次元屈折率を制御した光学フィルム(1)を作製する。
延伸方法は特に制限されないが、たとえば、高分子フィルムを面方向に二軸に延伸する方法、面方向に一軸または二軸に延伸し、厚さ方向にも延伸する方法等があげられる。また、高分子フィルムに、熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理する方法などがあげられる。これら方法により、厚さ方向の屈折率を制御して延伸フィルムの三次元屈折率が、Nz≦0.9、Re≧80nmとなるように、配向状態を制御することができる。なお、延伸倍率は、適宜に制御される。熱収縮フィルムを用いて一軸延伸する場合、その延伸倍率は1.0〜3.0倍、さらには1.0〜2.0倍である。延伸により得られる光学フィルムの厚さ(d1)は特に制限されないが、1〜150μmが好ましく、さらに好ましくは5〜50μmである。
上記光学フィルム(1)は、上記で定義されるNz係数が、Nz≦0.9であり広視野角特性を有する。Nz係数が、Nz>0.9の場合には、広視野角を実現し難い。Nz係数は、小さいほど好ましく、Nz≦0.7、を満足することが好ましい。さらには、Nz≦0.5、を満足することが好ましい。なお、光学フィルムは、(nx1−nz1)<0の場合を含み、Nz係数はマイナスになってもよい。ただし、上下左右方向の視野角拡大の点から、Nz係数は−1以上、さらには−0.5以上になるように制御するのが好ましい。
また、上記光学フィルム(1)の正面位相差(Re)は、正面位相差のばらつきが小さい点から、Re≧80nmを満足している。Re<80nmでは、正面位相差のばらつきが大きくなる。Reは、Re≧90nm、さらにはRe≧100nmであることが好ましい。ただし、厚み方向位相差のばらつきを小さくする点からは、Re≦300nmであることが好ましい。また、厚み方向の位相差:(nx−nz)×dは、−300〜300nm、さらには0〜270nmであることが好ましい。
上記の光学フィルム(1)は、ポリカーボネート系樹脂に加えてスチレン系樹脂を含有する高分子フィルムを用いている。かかるスチレン系樹脂の配合により、光学フィルムの光弾性係数を2.0×10-11〜6.0×10-11m2/Nの範囲に制御することができ耐久性に優れる。そのため、大型パネルに適用した場合にも、応力下においても位相差値の変化が少なく、たとえば高耐熱、高温高耐湿性が求められる用途においても好適に使用できる。光弾性係数は3.0×10-11〜5.0×10-11m2/Nであるのが好ましい。光弾性係数が6.0×10-11m2/Nを超える場合には耐久性が十分でなく、応力下での位相差変化が大きい。一方、光弾性係数が2.0×10-11m2/N未満では、延伸加工性に劣り、Nz係数の制御が困難なため好ましくない。また、上記光学フィルムは、ポリカーボネート系樹脂を主成分としているため、ポリカーボネート系樹脂が有する複屈折の発現性、制御性も良好である。また、ポリカーボネート系樹脂とスチレン系樹脂とは相溶性も良好であり、光学フィルムが高い透明性を有する。
光学的に正の一軸性を示す光学フィルム(2)は、フィルム面内の屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx2、ny2、nz2とした場合に、nx2 >ny2≒nz2、を満足するものを特に制限なく使用することができる。すなわち、光学的に正の一軸性を示す材料とは、三次元屈折率楕円体において一方向の主軸の屈折率が他の2方向の屈折率よりも大きい材料を示す。
光学的に正の一軸性を示す光学フィルム(2)は、たとえば、高分子ポリマーフィルムを、面方向に一軸延伸処理することにより得られる。光学フィルム(2)を形成する高分子ポリマーとしては、たとえば、ポリカーボネート、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ノルボルネン系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーまたはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらのなかでも、ノルボルネン系ポリマーが好ましい。また、光学フィルム(1)と同様の材料である、ポリカーボネート系樹脂およびスチレン系樹脂を含有する高分子フィルムを延伸して、光弾性係数が0.5×10-11〜6.0×10-11m2/Nの光学フィルムとしたものが好ましい。
また上記積層光学フィルムにおいて、光学フィルム(2)としては、ノルボルネン系ポリマーを含有する高分子フィルムを延伸して得られるものを用いることができる。また光学フィルム(2)としては、光学フィルム(1)と同様の材料、すなわち、ポリカーボネート系樹脂およびスチレン系樹脂を含有する高分子フィルムを延伸して得られる光学フィルムであって、光弾性係数が0.5×10-11〜6.0×10-11m2/N、好ましくは1.0×10-11〜6.0×10-11m2/Nであるものを用いることができる。これら材料を用いた光学フィルム(2)は耐久性が良好である。
光学フィルム(2)を形成する材料としては、液晶材料を用いることができる。液晶材料としては、ネマチック液晶性化合物好ましい。ネマチック液晶性化合物は傾斜配向させることができ、その傾斜配向状態は、その分子構造、配向膜の種類および光学異方性層内に適宜に加えられる添加剤(たとえば、可塑剤、バインダー、界面活性剤)の使用によって制御できる。
液晶材料は、液晶モノマーもしくは液晶ポリマー、またはこれらの混合物のいずれでもよい。また液晶材料は、サーモトロピック、リオトロピックのいずれのでもよい。
液晶モノマーは、ネマチック性の液晶配向を示す各種骨格を有し、かつ末端に、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合やエポキシ基等の重合性官能基を少なくとも1つ有する液晶性化合物である。これら液晶モノマーのなかでも、アクリロイル基またはメタアクリロイル基等の不飽和二重結合を少なくとも1つ有する液晶性化合物であり、ネマチック液晶性のものが賞用される。液晶モノマーとして、耐久性を向上させるには、光重合性官能基を2つ以上有するものが好ましい。
液晶モノマーとしては、例えば、特表2002‐533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等があげられる。重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社製の商品名LC242、Merck社製の商品名E7、Wacker‐Chem社製の商品名LC‐Sillicon‐CC3767等があげられる。
また上記液晶モノマーとしては、具体的には、下記式(1)で表されるモノマーがあげられる。これらの液晶モノマーは、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
前記式(1)において、A1およびA2は、それぞれ重合性基を表し、同一でも異なっていてもよい。また、A1およびA2はいずれか一方が水素であってもよい。Xは、それぞれ単結合、−O−、−S−、−C=N−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−、−O−CO−NR−、−NR−CO−O−、−CH2−O−または−NR−CO−NRを表し、前記XにおいてRは、HまたはC1〜C4アルキルを表し、Mはメソゲン基を表す。
前記式(1)において、Xは同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。前記式(1)のモノマーの中でも、A2は、それぞれA1に対してオルト位に配置されていることが好ましい。
また、前記A1およびA2は、それぞれ独立して下記式Z−X−(Sp)n・・・(2)
で表されることが好ましく、A1およびA2は同じ基であることが好ましい。
前記式(2)において、Zは架橋性基を表し、Xは前記式(1)と同様であり、Spは、1〜30個のC原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基からなるスペーサーを表し、nは、0または1を表す。前記Spにおける炭素鎖は、例えば、エーテル官能基中の酸素、チオエーテル官能基中の硫黄、非隣接イミノ基またはC1〜C4のアルキルイミノ基等により割り込まれてもよい。
前記式(2)において、Zは、下記式で表される原子団のいずれかであることが好ましい。下記式において、Rとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル等の基があげられる。
また、前記式(2)において、Spは、下記式で表される原子団のいずれかであることが好ましく、下記式において、mは1〜3、pは1〜12であることが好ましい。
前記式(1)において、Mは、下記式(3)で表されることが好ましく、下記(3)において、Xは、前記式(1)におけるXと同様である。Qは、例えば、置換または未置換のアルキレンもしくは芳香族炭化水素原子団を表し、また、例えば、置換または未置換の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C12アルキレン等であってもよい。
前記Qが、前記芳香族炭化水素原子団の場合、例えば、下記式に表されるような原子団や、それらの置換類似体が好ましい。
前記式に表される芳香族炭化水素原子団の置換類似体としては、例えば、芳香族環1個につき1〜4個の置換基を有してもよく、また、芳香族環または基1個につき、1または2個の置換基を有してもよい。前記置換基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。前記置換基としては、例えば、C1〜C4アルキル、ニトロ、F、Cl、Br、I等のハロゲン、フェニル、C1〜C4アルコキシ等があげられる。
前記液晶モノマーの具体例としては、例えば、下記式(4)〜(19)で表されるモノマーがあげられる。
前記液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なるが、例えば、40〜120℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜100℃の範囲であり、特に好ましくは60〜90℃の範囲である。
液晶モノマーを含有する液晶材料中には、通常、重合開始剤を含有する。液晶モノマーの重合方法に応じたものが適宜に選択される。重合性液晶モノマーの重合方法としては、たとえば、紫外線重合があげられ、この場合には光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤は各種のものを特に限定することなく使用できる。光重合開始剤としては、例えば、チノミスベシャリティケミカルズ社製のイルガキュア(Irgacure)907、同184、同651、同369などを例示できる。光重合開始剤の添加量は、液晶モノマーの種類を考慮して、配向性を乱さない程度に加えられる。通常、液晶モノマー100重量部に対して、0.5〜30重量部程度が好ましい。より好ましくは2〜7重量部、更に好ましくは3〜6重量部である。
液晶ポリマーは、ネマチック性の液晶配向を示す主鎖型、側鎖型またはこれらの複合型の各種骨格のポリマーを特に制限なく使用できる。
主鎖型の液晶ポリマーとしては、芳香族単位等からなるメソゲン基を結合した構造を有する縮合系のポリマー、たとえば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリエステルイミド系などのポリマーがあげられる。メソゲン基となる前記芳香族単位としては、フェニル系、ビフェニル系、ナフタレン系のものがあげられ、これら芳香族単位は、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
側鎖型の液晶ポリマーとしては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリシロキサン系、ポリマロネート系の主鎖を骨格とし、側鎖に環状単位等からなるメソゲン基を有するものがあげられる。メソゲン基となる前記環状単位としては、たとえば、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系、フェニルシクロヘキサン系、アゾキシベンゼン系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、フェニルピリミジン系、ジフェニルアセチレン系、ジフェニルベンゾエート系、ビシクロへキサン系、シクロヘキシルベンゼン系、ターフェニル系等があげられる。なお、これら環状単位の末端は、たとえば、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
また、いずれの液晶ポリマーのメソゲン基も屈曲性を付与するスペーサー部を介して結合していてもよい。スペーサー部としては、ポリメチレン鎖、ポリオキシメチレン鎖等があげられる。スペーサー部を形成する構造単位の繰り返し数は、メソゲン部の化学構造により適宜に決定されるがポリメチレン鎖の繰り返し単位は0〜20、好ましくは2〜12、ポリオキシメチレン鎖の繰り返し単位は0〜10、好ましくは1〜3である。
液晶ポリマーの分子量は特に制限されないが重量平均分子量が2千〜10万程度のものが好ましい。液晶ポリマーの重量平均分子量が大きくなると、液晶としての配向性から、液晶ポリマーの重量平均分子量は、5万以下とするのがより好ましい。また、液晶ポリマーの重量平均分子量が小さくなると非流動層としての成膜性に乏しくなる傾向があることから、液晶ポリマーの重量平均分子量は、2.5千以上とするのがより好ましい。
液晶材料は、液晶モノマーもしくは液晶ポリマー、またはこれらの混合物を含有する。前記液晶材料は、前記配向処理面に塗工する方法は、液晶材料を溶媒に溶解した溶液を用いる溶液塗工方法または溶融して溶融塗工する方法が挙げられるが、この中でも溶液塗工方法が好ましい。
光学フィルム(2)の正面位相差((nx2−ny2)×d2(厚さ:nm))は、0〜500nmであることが好ましく、1〜350nmであることがさらに好ましい。厚み方向の位相差((nx2−nz2)×d2)は、0〜500nmであることが好ましく、1〜350nmであることがさらに好ましい。
光学フィルム(2)の厚さ(d2)は特に制限されないが、1〜200μmが好ましく、さらに好ましくは2〜80μmである。
光学フィルム(3)を形成する、光学的に負の一軸性を示す材料とは、三次元屈折率楕円体において、一方向の主軸の屈折率が他の2方向の屈折率よりも小さい材料を示す。
光学的に負の一軸性を示す材料としては、たとえば、ポリイミド系材料や、ディスコティック液晶化合物などの液晶系材料があげられる。また、これらの材料を主成分とし、その他のオリゴマーやポリマーと混合、反応させて、負の一軸性を示す材料が傾斜配向した状態を固定化してフィルム状にしたものがあげられる。ディスコティック液晶化合物を用いる場合、液晶性分子の傾斜配向状態は、その分子構造、配向膜の種類および光学異方性層内に適宜に加えられる添加剤(たとえば、可塑剤、バインダー、界面活性剤)の使用によって制御できる。
光学フィルム(3)のフィルム面内の屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx3、ny3、nz3とした場合に、光学フィルム(3)の正面位相差((nx3−ny3)×d3(厚さ:nm))は、0〜200nmであることが好ましく、1〜150nmであることがさらに好ましい。厚み方向の位相差((nx3−nz3)×d3)は、10〜400nmであることが好ましく、50〜300nmであることがさらに好ましい。
上記積層光学フィルムにおいて、前記光学フィルム(3)を形成する、光学的に負の一軸性を示す材料は、ディスコティック液晶化合物であることが好ましい。光学的に負の一軸性を示す材料は特に制限されないが、傾斜配向の制御がよく、また一般的な材料でコストが比較的安価である点から、ディスコティック液晶化合物が好適である。
また上記積層光学フィルムにおいて、光学フィルム(3)を形成する、光学的に負の一軸性を示す材料は、その平均光軸と光学フィルム(3)の法線方向からなす傾斜角度が、5°〜50°の範囲で傾斜配向していることが好ましい。
上記の通り、光学フィルム(3)は、三次元屈折率を制御した光学フィルム(1)と組み合わせた積層光学フィルムとして用いられるが、光学フィルム(3)の上記傾斜角度を5°以上に制御することにより、液晶表示装置等に実装した場合の視野角拡大効果が大きい。一方、上記傾斜角度を50°以下に制御することにより、視野角を上下左右のいずれの方向(4方向)においても視野角が良好となり、方向によって、視野角が良くなったり悪くなったりすることを抑えることができる。かかる観点から、前記傾斜角度は10°〜30°が好ましい。
なお、光学的に負の一軸性を示す光学材料(たとえば、ディスコティック液晶性分子)の傾斜配向状態はフィルム面内との距離に伴って変化しない均一な傾斜(チルト)配向でもよく、前記光学材料とフィルム面内との距離に伴って変化していてもよい。
光学フィルム(3)の厚さ(d3)は特に制限されないが、1〜200μmが好ましく、さらに好ましくは、2〜150μmである。
前記光学フィルム(1)と光学フィルム(3)の積層は、それぞれの遅相軸の成す、小さい方の角度が、70°〜90°になるように行なうのが好ましい。より好ましくは80°〜90°である。
前記積層光学フィルムにおいて、光学フィルム(1)および光学フィルム(2)の積層、または光学フィルム(1)、光学フィルム(2)および光学フィルム(3)の各積層には、粘着剤層(A)が用いられる。
粘着剤層(A)の形成に用いられる粘着剤は、モノマー成分として、複素環含有アクリルモノマー3〜10重量%、カルボキシル基含有モノマー0.5〜5重量%、およびヒドロキシル基含有モノマー0.05〜2重量%、および、アルキル(メタ)アクリレート83〜96.45重量%を含有してなる(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして用いる。
複素環含有アクリルモノマーとしては、重合性の官能基を有し、かつ複素環を有するものを特に制限なく用いることができる。重合性官能基は、(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基等があげられる。これらのなかもで、(メタ)アクリロイル基が好適である。複素環としては、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ピペラジン環等があげられる。複素環含有アクリルモノマーとしては、例えば、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等があげられる。これらのなかでも、N−アクリロイルモルホリンが好適である。なお、複素環含有アクリルモノマーは、粘着剤層(A)を薄型化した場合の耐熱性、耐湿性のいずれの耐久性を向上させることができる。複素環含有アクリルモノマーの代わりに、アミノ基、脂環基等を有するモノマーを用いたとしても、耐熱性、耐湿性のいずれの耐久性も満足できない。
また、複素環含有アクリルモノマーは、粘着剤層(A)の光学フィルムへの粘着力を向上できる点で好ましい。特に、ノルボルネン系樹脂等の環状ポリオレフィンに対する粘着力を向上させる点で好ましく、光学フィルムとして、環状ポリオレフィンを用いている場合に、好適である。
複素環含有アクリルモノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の全量に対して3〜10重量%の割合で用いられる。複素環含有アクリルモノマーの割合は、4〜9.5重量%であるのが好ましく、6〜9重量%であるのがより好ましい。複素環含有アクリルモノマーの割合が前記範囲よりも少ないと、粘着剤層(A)を薄型化した場合の耐熱性、耐湿性のいずれの耐久性も満足できない。また、複素環含有アクリルモノマーの割合が前記範囲よりも多くなると薄型化した場合の耐湿性を満足できなくなる。また、複素環含有アクリルモノマーは、粘着剤層(A)の貼り合せ性を向上させることができるが、複素環含有アクリルモノマーの割合が前記範囲よりも多くなる、貼り合せ性の点の向上効果が小さくなる。また、複素環含有アクリルモノマーの割合が前記範囲よりも多くなると粘着力が低下する点でも好ましくない。
カルボキシル基含有モノマーとしては、重合性の官能基を有し、かつカルボキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等があげられる。これらなかで、(メタ)アクリル酸、特にアクリル酸が好ましい。
カルボキシル基含有モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の全量に対して、0.5〜5重量%の割合で用いられる。カルボキシル基含有モノマーの割合は、1〜4.5重量%であるのが好ましく、1.5〜4重量%であるのがより好ましい。カルボキシル基含有モノマーの割合が前記範囲よりも少ないと、粘着剤層(A)を薄型化した場合の耐熱性を満足できない。また、カルボキシル基含有モノマーの割合が前記範囲よりも多くなると薄型化した場合の耐熱性、耐湿性のいずれの耐久性も満足できなくなる。また、カルボキシル基含有モノマーの割合が前記範囲よりも多くなると粘着力が低下する点でも好ましくない。
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、重合性の官能基を有し、かつヒドロキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;その他、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどがあげられる。これらのなかでもヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好適である。
ヒドロキシル基含有モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の全量に対して、0.05〜2重量%の割合で用いられる。ヒドロキシル基含有モノマーの割合は、0.075〜1.5重量%であるのが好ましく、0.1〜1重量%であるのがより好ましい。ヒドロキシル基含有モノマーの割合が前記範囲よりも少ないと、粘着剤層(A)を薄型化した場合の耐熱性を満足できない。また、ヒドロキシル基含有モノマーの割合が前記範囲よりも多くなると薄型化した場合の耐熱性、耐湿性のいずれの耐久性も満足できなくなる。また、ヒドロキシル基含有モノマーの割合が前記範囲よりも多くなると、貼り合せ性、粘着力が低下する点でも好ましくない。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の平均炭素数は1〜12程度のものである。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等を例示でき、これらは単独または組み合わせて使用できる。これらの中でもアルキル基の炭素数1〜9のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の全量に対して、83〜96.45重量%の割合で用いられる。アルキル(メタ)アクリレートは、通常、前記複素環含有アクリルモノマー、カルボキシル基含有モノマーおよびヒドロキシル基含有モノマーの以外の残部である。
前記(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分としては、前記モノマーの他に、本発明の目的と損なわない範囲で、前記以外のモノマーを、モノマー全量の10%以下の範囲で用いることができる。
かかる任意モノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどがあげられる。窒素含有ビニルモノマーがあげられる。例えば、マレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、3−(3−ピリニジル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマーなどあげられる。
さらに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。
さらに、上記以外の共重合可能なモノマーとして、ケイ素原子を含有するシラン系モノマーなどがあげられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシランなどがあげられる。
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が150万〜280万である。さらに、170万〜270万であることがより好ましく、200万〜250万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が前記範囲よりも小さいと、粘着剤層(A)を薄型化した場合の耐熱性、耐湿性のいずれの耐久性も満足できない。また、重量平均分子量が前記範囲よりも大きくなると薄型化した場合の前記耐久性が満足できなくなり、さらに貼り合せ性、粘着力が低下する点でも好ましくない。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50〜70℃程度で、5〜30時間程度の反応条件で行われる。
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
なお、重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを用いて、前記重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマーを製造するには、重合開始剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.06〜0.2重量部程度とするのが好ましく、さらには0.08〜0.175重量部程度とするのが好ましい。
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどがあげられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、具体的には、例えば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(旭電化工社製)などがある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.3〜5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
また前記粘着剤は、架橋剤を含有する粘着剤組成物とするのが好ましい。粘着剤に配合できる多官能化合物としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートがあげられる。有機系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、イミン系架橋剤などがあげられる。有機系架橋剤としてはイソシアネート系架橋剤が好ましい。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどがあげられる。
より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどをあげることができる。
上記イソシアネート系架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記イソシアネート系架橋剤0.02〜2重量部含有してなることが好ましく、0.04〜1.5重量部含有してなることがより好ましく、0.05〜1重量部含有してなることがさらに好ましい。0.02重量部未満では、凝集力が不足する場合があり、一方、2重量部を超えると、架橋形成が過多となり、接着性に劣る場合がある。
さらには、前記粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層(A)などとしても良い。
粘着剤層(A)を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレータなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層(A)を形成した後に光学フィルムに転写する方法、または光学フィルムに前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層(A)を光学フィルムに形成する方法などにより作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
また、光学フィルムの表面に、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層(A)を形成することができる。また、粘着剤層(A)の表面には易着処理をおこなってもよい。
粘着剤層(A)の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
粘着剤層(A)の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。特に、薄型化した粘着剤層(A)への適用が好適であり、上記粘着剤層(A)の厚みが1〜15μmの場合においても好適である。さらには粘着剤層(A)の厚みは1〜12μm、さらには1〜10μm、さらには、1〜8μmに薄型化して用いることができる。
なお光学フィルム(1)、光学フィルム(2)および光学フィルム(3)により積層光学フィルムを形成する場合には、2つの粘着剤層(A)が用いられるが、2つの粘着剤層(A)を形成する粘着剤の構成、厚みは同じでもよく、また異なっていてもよい。
前記粘着剤層(A)が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層(A)を保護してもよい。
セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層(A)を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
前記セパレータの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層(A)からの剥離性をより高めることができる。
なお、上記の粘着剤層(A)を用いて本発明の積層光学フィルムを作製するにあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま粘着型光学フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
前記積層光学フィルムには、粘着剤層(B)を介して、偏光板(P)を積層する。粘着剤層(B)を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
粘着剤層(B)としては、アクリル系粘着剤のなかでも、粘着剤層(A)を用いるのと同様の観点から、モノマー成分として、複素環含有アクリルモノマー3〜10重量%、カルボキシル基含有モノマー0.5〜5重量%、ヒドロキシル基含有モノマー0.05〜2重量%、およびアルキル(メタ)アクリレート83〜96.45重量%、を含有してなり、かつ重量平均分子量が150万〜280万の(メタ)アクリル系ポリマー、ならびに架橋剤を含有してなる粘着剤により形成されたものを用いるのが好ましい。粘着剤層(B)の各成分、粘着剤層(B)の形成方法は、粘着剤層(A)と同様である。
また粘着剤層(B)の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。特に、薄型化した粘着剤層(B)への適用が好適であり、上記粘着剤層(B)の厚みが1〜15μmの場合においても好適である。さらには粘着剤層(B)の厚みは1〜12μm、さらには1〜10μm、さらいは、1〜8μmに薄型化して用いることができる。
なお、粘着剤層(B)を形成する粘着剤の構成、厚みは粘着剤層(A)を形成する粘着剤の構成、厚みは同じでもよく、また異なっていてもよい。
偏光板(P)は、通常、偏光子の片側または両側に保護フィルムを有するものである。偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムを延伸して二色性材料(沃素、染料)を吸着・配向したものが好適に用いられる。偏光子の厚さも特に制限されないが、5〜80μm程度が一般的である。
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
前記偏光子の片側または両側に設けられている保護フィルムには、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。前記保護フィルムの材料としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、あるいは前記ポリマーのブレンド物などが保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。その他、アクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型ないし紫外線硬化型樹脂などをフィルム化したものなどがあげられる。
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
また、保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。したがって、Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d(ただし、nx1、ny1はフィルム平面内の主屈折率、nz1はフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、表面をアルカリなどでケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが好適である。なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。前記偏光子と保護フィルムとは通常、水系粘着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。
前記保護フィルムとしては、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものを用いることができる。
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護層とは別体のものとして設けることもできる。
本発明の積層光学フィルム、楕円偏光板には、前述の通り、粘着剤層(C)を形成することができる。粘着剤層(C)を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
粘着剤層(C)の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
粘着剤層(C)の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、粘着剤層(A)、(B)と同様のものを例示できる。
本発明の積層光学フィルム、楕円偏光板は、画像表示装置において好適に用いられる。特にTNモード、OCB、ホモジーニアスモードの液晶表示装置に好適である。たとえば、反射半透過型の液晶表示装置などの各種装置の形成に好ましく用いうる。反射半透過型液晶表示装置等は携帯型情報通信機器、パーソナルコンピュータとして好適に利用される。反射型半透過型液晶表示装置を形成する場合、本発明による楕円偏光板は、液晶セルのバックライト側に配置される。
例えば、本発明の楕円偏光板は、反射半透過型液晶表示装置において、液晶セルのバックライト側に粘着剤層(C)を介して配置される。下側(バックライト側)の液晶セル(L)に積層する楕円偏光板の側は特に制限されないが、楕円偏光板の偏光板(P)が液晶セル側から最も離れるようにするのが好ましい。液晶セルには、液晶が封入されている。上側の液晶セル基板には透明電極が設けられており、下側の液晶セル基板には電極を兼ねる反射層が設けられている。上側の液晶セル基板の上部には、反射半透過型液晶表示装置に用いられる、楕円偏光板、各種光学フィルムを有する。上側の楕円偏光板も、偏光板(P)が液晶セル側から最も離れるようにするのが好ましい。
なお、本発明の積層光学フィルムや楕円偏光板を、液晶表示装置等に実装する際には、光学フィルム(3)において、光学的に負の一軸性を示す材料の平均光軸(傾斜配向している平均角度)が、上下に電圧をかけて配向させる液晶セルの厚み方向の中心(ミッドプレーン)における液晶分子の配向方向とほぼ同じ方向を向くように配置するのが好ましい。この場合、液晶セルの配向はねじれ型であっても非ねじれ型であってもよい。
上記反射半透過型液晶表示装置は、液晶セルの一例を示したものであり、本発明の積層光学フィルム、楕円偏光板はその他各種の液晶表示装置に適用できる。
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
また本発明の積層光学フィルム、楕円偏光板は、その他各種の液晶表示装置に適用できる。前記積層光学フィルム、楕円偏光板は、実用に際して他の光学層を積層して用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)などの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。たとえば、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板があげられる。
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
また、偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を投下するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
また偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学素子、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成される。本発明の楕円偏光板を用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
液晶セルの裏側には、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明の楕円偏光板は液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学素子を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
以下に本発明を実施例および比較例をあげて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。
各例の光学フィルム(延伸後)等の特性は下記方法により測定した。
<光弾性係数>
日本分光社製のエリプソメーター(M220)を用いて、室温(23℃)にて、幅2cmの光学フィルムに1×10-6〜30×10-6の応力を付加したときの応力屈折率を測定し、これらをプロットし、応力複屈折Δn=cδ、からc:光弾性係数(m2/N)を算出した。ただし、δ:応力(N/m2)である。
<屈折率の測定:Nz係数,位相差>
光学フィルムの屈折率の測定は、フィルム面内と厚さ方向の主屈折率nx、ny、nzを自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計)により、λ=590nmにおける特性を測定した。得られた屈折率値から、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)を求めた。また屈折率値と光学フィルム厚み(d:nm)から、正面位相差(Re)=(nx−ny)×d、厚み方向の位相差=(nx−nz)×d、を求めた。
<ガラス転移温度:Tg>
セイコー電子製のDSC5500を用いて20ml/分の窒素気流下、10℃/分の昇温速度で測定した。
<重量平均分子量>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンスタンダード)により、TOSOH社製のHLC−8120GPCシステムを用いて、テトロヒドロフラン可溶分の重量平均分子量を算出した。
<傾斜角度>
光学フィルム(3)において、傾斜配向している光学材料の平均光軸と光学フィルム(3)の法線方向からなす傾斜角度は、光学フィルム(3)を遅相軸を軸として、左右に−50°〜50°傾け、前記測定装置で位相差を測定し、最小の位相差を示す角度の絶対値とした。また前記測定においては、測定器の光源からの光の入射方向とフィルム面内に対する法線が一致した時の測定角を0°とした。
各光学フィルムの下記方法により作製した。
(三次元屈折率が制御された光学フィルム(1))
ポリカーボネート系樹脂とスチレン系樹脂を含有する高分子フィルムとして、鐘淵化学工業(株)製の製品名:PFフィルム(厚み55μm)を用いた。ポリカーボネート系樹脂は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン由来と1, 1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン由来のものが含まれており、その配合割合は重量比で40:60であった。また高分子フィルム中の、スチレン系樹脂(重量平均分子量10000)の含有割合は20重量%であった。
上記高分子フィルム(PFフィルム)の両面に、二軸延伸ポリエステルフィルムからなる熱収縮性フィルムを粘着剤層を介して貼り付けた。その後、同時二軸延伸機で保持して145℃で1.3倍に延伸した。得られた延伸フィルムは透明であり、厚さ60μm、正面位相差140nm、厚み方向の位相差70nmであり、Nz係数0.5であった。また、光弾性係数:5.0×10-11、Tg:140℃であった。
(光学的に正の一軸性を示す光学フィルム(2))
厚さ100μmのノルボルネン系フィルム(JSR株式会社製,製品名アートン)を、170℃で1.5倍に一軸延伸した。得られた延伸フィルムは、厚さ:75μm、正面位相差:270nm、厚み方向の位相差:270nm、Nz係数1.0であった。なお、光弾性係数:1.0×10-11、Tg:170℃であった。
(光学的に負の一軸性を示す材料を傾斜配向させてなる光学フィルム(3))
富士写真フィルム株式会社製のWVSA12B(厚さ:110μm)を用いた。当該フィルムは、ディスコティック液晶を支持体に塗布することにより作製されたものであり、正面位相差:30nm、厚み方向の位相差:160nmであり、傾斜配向している平均光軸の傾斜角度:20°、であった。
各粘着剤層は、下記方法により作製した。
<重量平均分子量の測定>
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエー
ション・クロマトグラフィー)により測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・データ処理装置:東ソー社製、GPC−8020
・カラム:東ソー社製、G7000HXL−H+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ;各7.8mmφ×30cm(計90cm)
・流量:0.8ml/min
・注入試料濃度:約0.1重量%
・注入量:100μl
・カラム温度:40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
なお、分子量はポリスチレン換算により算出した。また、分子量10万以下の重量分率(Area%)は、GPC測定結果から上記データ処理装置で算出した。このときモノマー成分は含めなかった。
製造例1
<(メタ)アクリル系ポリマーの調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート91部、N−アクリロイルモルホリン6部、アクリル酸2.7部、2−ヒドロキシブチルアクリレート0.3部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、酢酸エチル200重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー溶液を調製した。上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は220万であった。
<粘着剤層の形成>
製造例1で得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、架橋剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)0.5部を配合したアクリル系粘着剤溶液を調製した。
製造例2〜9
製造例1において、モノマー成分の種類および使用量、ならびに重合開始剤の使用量のいずれか少なくも一つを、表1に示すように変えたこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系ポリマー溶液を調製し、製造例1と同様にして、アクリル系粘着剤溶液を調製した。各例で得られたアクリル系ポリマーの重量平均分子量を表1に示す。
表1中、BA:ブチルアクリレート、ACMO:N−アクリロイルモルホリン、ACPIP:N−アクリロイルピペリジン、AA:アクリル酸、HBA:2‐ヒドロキシブチルアクリレート、DMAA:ジメチルアクリルアミド、を示す。
実施例1
(粘着剤層の形成)
製造例1で得られたアクリル系粘着剤溶液を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが5μmになるように塗布し、150℃で3分間乾燥をおこない、粘着剤層を形成した。
前記粘着剤層を用いて、図2と同様の構成の楕円偏光板を作成した。当該粘着剤層は、光学フィルム(2)に転写して粘着型光学フィルム(2)とした。この転写した粘着剤層は、図2の粘着剤層(A)に相当する。また前記粘着剤層を偏光板(P:日東電工(株)製,TEG1465DU)に転写して粘着型偏光板とした。この転写した粘着剤層は、図2の粘着剤層(B)に相当する。
(ガラスと貼り合せるための粘着剤層の形成)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート100部、アクリル酸5部、2−ヒドロキシブチルアクリレート0.1部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、酢酸エチル200重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー溶液を調製した。上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は192万であった。得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、架橋剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)0.6重量部を配合したアクリル系粘着剤溶液を調製した。
次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmになるように塗布し、130℃で3分間乾燥をおこない、粘着剤層を形成した。当該粘着剤層を、光学フィルム(1)に転写して、粘着剤型光学フィルム(1)とした。当該粘着剤層は図2の粘着剤層(C)に相当する。
(楕円偏光板の作成)
上記粘着型偏光板、粘着型光学フィルム(2)、および粘着型光学フィルム(1)を、図2に示すように積層して、粘着剤層付の楕円偏光板を得た。
実施例2〜4、比較例1〜7
実施例1において、楕円偏光板の構成(図参照)、粘着剤層(A)、(B)を形成するアクリル系粘着剤溶液(アクリル系ポリマー)の種類、粘着剤層(A)、(B)の厚さを表2に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤層付の楕円偏光板を得た。なお、各粘着剤層は、各楕円偏光板の構成図において、上側に位置する各光学フィルムおよび偏光板に積層した。
上記実施例1〜4および比較例1〜7で得られた、粘着剤層付き楕円偏光板(サンプル)について下記評価を行った。結果を表2に示す。
(耐熱試験)
上記サンプルを5インチサイズ(75mm×100mm)に裁断し、0.5mmの無アクリルガラス(コーニング社製、1737)に貼り付けた後、50℃、0.5Mpaのオートクレーブにて15分間処理した後、次いで90℃の雰囲気下で500時間保存してから、室温(約25℃)に戻した。
(耐湿試験)
上記サンプルを5インチサイズ(75mm×100mm)に裁断し、0.5mmの無アクリルガラス(コーニング社製、1737)に貼り付けた後、50℃、0.5Mpaのオートクレーブにて15分間処理した後、次いで60℃、95%RHの雰囲気下で500時間保存してから、室温(約25℃)に戻した。
上記耐久性(耐熱試験および耐湿試験)の評価は目視により、下記基準で行った。
○:剥がれや浮き、発泡なし。
×:剥がれや浮き、発泡あり。
(位相差変化)
上記サンプルを40mm×30mmに裁断し、0.5mmの無アクリルガラス(コーニング社製、1737)に貼り付けた後、サンプル中央部の位相差(測定波長550nm)を測定した。位相差の測定は、大塚電子社製のRETS‐1200VAにて測定した。前記ガラスに貼り合わせたサンプルを90℃で500時間保存してから、室温(約25℃)に戻した後、再度位相差を測定した。位相差変化が、初期値と比べて、5nm以下であれば「○」、5nmを超えれば「×」とした。
実施例1〜4では、粘着剤層として、本発明の特定組成の(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして用いており、耐久性が良好である。かかる本発明の粘着剤層は、薄くても、耐久性を満足でき、実施例1〜3では、粘着剤層の薄型化によって、位相差変化を小さく制御できることが分かる。
実施例5
(粘着剤層の形成)
製造例1で得られたアクリル系粘着剤溶液を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが5μmになるように塗布し、150℃で3分間乾燥をおこない、粘着剤層を形成した。
前記粘着剤層を用いて、図7と同様の構成の楕円偏光板を作成した。当該粘着剤層は、光学フィルム(1)および(2)にそれぞれ転写して粘着型光学フィルム(1)および(2)とした。この転写した粘着剤層は、いずれも、図7の粘着剤層(A)に相当する。また前記粘着剤層を偏光板(P:日東電工(株)製,TEG1465DU)に転写して粘着型偏光板とした。この転写した粘着剤層は、図7の粘着剤層(B)に相当する。
次いで、実施例1で調製した、ガラスと貼り合せるための粘着剤層を、光学フィルム(3)に転写して、粘着剤型光学フィルム(3)とした。当該粘着剤層は図7の粘着剤層(C)に相当する。
(楕円偏光板の作成)
上記粘着型偏光板、粘着型光学フィルム(2)、粘着型光学フィルム(1)および粘着型光学フィルム(3)を、図7に示すように積層して、粘着剤層付の楕円偏光板を得た。
実施例6〜8、比較例8〜14
実施例5において、楕円偏光板の構成(図参照)、粘着剤層(A)、(B)を形成するアクリル系粘着剤溶液(アクリル系ポリマー)の種類、粘着剤層(A)、(B)の厚さを表3に示すように変えたこと以外は実施例5と同様にして、粘着剤層付の楕円偏光板を得た。なお、各粘着剤層は、各楕円偏光板の構成図において、上側に位置する各光学フィルムおよび偏光板に積層した。楕円偏光板の構成図において、粘着剤層(A)は、2層あるが、いずれも、同じ種類でかつ同じ厚さである。
上記実施例5〜8および比較例8〜14で得られた、粘着剤層付き楕円偏光板(サンプル)について上記耐久性(耐熱試験および耐湿試験)および下記評価を行った。結果を表3に示す。
(輝度変化)
実施例および比較例で作製したサンプルを2.2インチに裁断し、反射半透過型TFT−TN型液晶表示装置のバックライト側および視認側の楕円偏光板として実装した。両側の楕円偏光板はいずれも、偏光板側が液晶セル側から最も離れた積層位置となるように実装した。上記液晶表示装置について下記評価を行なった。
上記液晶表示装置に、黒画像を表示させて、ELDIM社製のEZcontrast160Dにて、サンプル中央部の正面のY値を測定した。一方、上記液晶表示装置を、80℃で150時間保存してから、室温(約25℃)に戻した後、再度Y値を測定した。Y値の変化が、初期値と比べて、4以下であれば「○」、4を超えれば「×」とした。
実施例5〜8では、粘着剤層として、本発明の特定組成の(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして用いており、耐久性が良好である。かかる本発明の粘着剤層は、薄くても、耐久性を満足でき、実施例5〜7では、粘着剤層の薄型化によって、輝度変化を小さく制御することができることが分かる。