JP5506227B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents

Description

本発明は、スクロール圧縮機の旋回スクロールを公転旋回駆動する駆動機構の改良に関するものである。

スクロール圧縮機において、固定スクロールと共に圧縮機構を構成している旋回スクロールは、一般に、軸端にクランクピンが設けられているクランク軸と、クランクピンに嵌合されているドライブブッシュと、該ドライブブッシュの外周に嵌合されているドライブ軸受とを備えた駆動機構を介して、ドライブ軸受の外周に嵌合されている旋回スクロールが固定スクロール周りに公転旋回駆動されるように構成されている。

このようなスクロール圧縮機では、運転中に旋回スクロールに負荷されるガス圧が常にドライブブッシュの一定位置にかかるため、ドライブブッシュの一箇所において集中的に表面疲労が発生し、ドライブブッシュが寿命低下するという問題があった。このドライブブッシュの表面で生じる集中的な表面疲労を回避し、ドライブブッシュの寿命延長を図るために、ドライブブッシュの外周に円筒環（フローティングブッシュ）を回転自在に嵌合したものが、特許文献１ないし３等に示されている。

上記の円筒環（フローティングブッシュ）は、一端側がドライブブッシュの段部に当接されて抜け止めされ、他端側（軸端側）がクランクピン先端にスナップリング等を介して固定されている抜け止め板、もしくはクランクピンの先端溝に一部が円筒環に係るように装着されている止め輪等によって軸方向への抜け止めがされている（上記特許文献１ないし３参照）。

特開平８−９３６６６号公報（図１参照） 特開平９−１０５３９０号公報（図１参照） 特開２００７−３３２９１９号公報（図１参照）

しかしながら、円筒環（フローティングブッシュ）の抜け止め構造として、クランクピンにスナップリングを介して固定された抜け止め板を設けたものでは、円筒環の軸方向への抜けを確実に防止できる反面、スナップリングの他に、専用の抜け止め板を設置する必要がある。このため、抜け止め専用の追加部品が必要となり、部品点数の増加、その製造および組み立て工数の増加、コストアップ等が避けられないという問題を有している。

また、クランクピンの先端に一部が円筒環に係るように止め輪を設けたものでは、止め輪が圧縮機の断続運転や連続運転による円筒環やドライブブッシュの回動、振動等に付随して回転され、止め輪に設けられている開口部が円筒環に係る位置に回転されると、止め輪の円筒環に対する係り代（面積）が減少することになる。これによって、止め輪の面圧が上昇し、異状摩耗の発生により機能低下する等の不適合が生じるという問題があった。

本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、円筒環に対する抜け止め用の止め輪の異状摩耗等による不適合を解消することができるスクロール圧縮機を提供することを目的とする。

上記課題を解決するために、本発明のスクロール圧縮機は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるスクロール圧縮機は、軸端にクランクピンが設けられているクランク軸と、前記クランクピンに嵌合されているドライブブッシュと、該ドライブブッシュの外周に回動自在に嵌合されるとともに、前記クランクピンの先端に装着されている止め輪により軸方向移動が規制されている円筒環と、該円筒環の外周に嵌合されているドライブ軸受とを備え、前記クランク軸の回転により前記ドライブ軸受の外周に嵌合されている旋回スクロールが旋回駆動されるスクロール圧縮機において、前記ドライブブッシュの端面に、前記止め輪と干渉して該止め輪の回転を規制する周り止めが設けられ、該周り止めは、前記ドライブブッシュと一体にその端面から軸方向外方に突出された突起により構成されていることを特徴とする。

本発明によれば、ドライブブッシュの端面に、止め輪と干渉して該止め輪の回転を規制する周り止めが設けられ、該周り止めが、ドライブブッシュと一体にその端面から軸方向外方に突出された突起により構成されているため、ドライブブッシュの外周に嵌合されている円筒環の軸方向への移動を規制する止め輪のクランクピン周りでの回転を、ドライブブッシュの端面にその端面から軸方向外方に突出するように一体に設けられた突起によって構成される周り止めにより阻止し、止め輪を適正位置に保持してその開口部等が円筒環に係る位置に回転することによる止め輪の円筒環に対する係り代（面積）の減少を防ぐことができる。従って、円筒環に対する係り代の減少に伴う止め輪の面圧上昇に起因する異状摩耗等を防止し、その機能低下による不適合を解消することができる。

さらに、本発明のスクロール圧縮機は、上記のスクロール圧縮機において、前記周り止めは、前記止め輪が前記円筒環に対して所定の係り代を有するように設定された初期装着状態において、該止め輪に設けられている開口部と干渉する位置に設けられていることを特徴とする。

本発明によれば、周り止めが、止め輪が円筒環に対して所定の係り代を有するように設定された初期装着状態において、該止め輪に設けられている開口部と干渉する位置に設けられているため、止め輪が円筒環やドライブブッシュの回動、振動等に付随して初期装着位置から左右いずれかの方向に回転しようとしても、開口部と干渉する位置に設けられている周り止めに干渉して回転が阻止される。従って、止め輪の円筒環に対する所定の係り代（面積）を維持することができ、係り代の減少による異状摩耗を防止してその機能低下による不適合を解消することができる。

さらに、本発明のスクロール圧縮機は、上記のスクロール圧縮機において、前記周り止めは、前記止め輪が前記円筒環に対して所定の係り代を有するように設定された初期装着状態において、該止め輪に設けられている一対の係合部の外周と干渉する位置に一対設けられていることを特徴とする。

本発明によれば、周り止めが、止め輪が円筒環に対して所定の係り代を有するように設定された初期装着状態において、該止め輪に設けられている一対の係合部の外周と干渉する位置に一対設けられているため、止め輪が円筒環やドライブブッシュの回動、振動等に付随して初期装着位置から左右いずれかの方向に回転しようとしても、係合部の外周と干渉する位置に設けられている一対の周り止めに干渉して回転が阻止される。従って、止め輪の円筒環に対する所定の係り代（面積）を維持することができ、係り代の減少による異状摩耗を防止してその機能低下による不適合を解消することができる。

さらに、本発明のスクロール圧縮機は、上述のいずれかのスクロール圧縮機において、前記周り止めは、前記ドライブブッシュ端面の中心部に、該端面の切削加工時の加工残しにより設けられた外方への突起によって構成されていることを特徴とする。

本発明によれば、周り止めが、ドライブブッシュ端面の中心部に、該端面の切削加工時の加工残しにより設けられた外方への突起によって構成されているため、周り止めを構成する突起をドライブブッシュの端面の切削加工時、その中心部に加工残しを設けることにより、ドライブブッシュの端面の切削加工と同時に形成することができる。従って、加工工数の増加や追加部品を用いることなく、周り止めを設けることができ、余計なコストや工数をかけずに止め輪の異状摩耗を防止し、その機能低下による不適合を解消することができる。

本発明によると、ドライブブッシュの外周に嵌合されている円筒環の軸方向への移動を規制する止め輪のクランクピン周りでの回転を、ドライブブッシュの端面にその端面から軸方向外方に突出するように一体に設けられた突起によって構成される周り止めにより阻止し、止め輪を適正位置に保持してその開口部等が円筒環に係る位置に回転することによる止め輪の円筒環に対する係り代（面積）の減少を防ぐことができるため、円筒環に対する係り代の減少に伴う止め輪の面圧上昇に起因する異状摩耗等を防止し、その機能低下による不適合を解消することができる。

本発明の第１実施形態に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。 図１に示すスクロール圧縮機の旋回スクロールの駆動部をクランクピン側から見た側面図である。 本発明の第２実施形態に係るスクロール圧縮機の円筒環の移動を止める止め輪とその周り止めの変形形態（Ａ），（Ｂ），（Ｃ）の側面図である。 本発明の第３実施形態に係るスクロール圧縮機の止め輪の回転を規制する周り止めの加工状態図である。

以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
［第１実施形態］
以下、本発明の第１実施形態について、図１および図２を用いて説明する。
図１には、本発明の第１実施形態に係るスクロール圧縮機の縦断面図が示されている。スクロール圧縮機１は、外殻を構成するハウジング２を有している。ハウジング２は、フロントハウジング３とリアハウジング４とをボルト５で一体的に締め付け固定することにより構成されている。フロントハウジング３およびリアハウジング４には、円周上の複数箇所、例えば４箇所（図２参照）に等間隔で締め付け用のフランジ３Ａ，４Ａが一体に形成され、このフランジ３Ａ，４Ａ同士をボルト５で締め付けることによって、フロントハウジング３とリアハウジング４とが一体に結合されている。

フロントハウジング３の内部には、クランク軸（駆動軸）６がメイン軸受７およびサブ軸受８を介してその軸線Ｌ回りに回転自在に支持されている。クランク軸６の一端側（図１において左側）は小径軸部６Ａとされ、該小径軸部６Ａはフロントハウジング３を貫通して図１の左側に突出されている。小径軸部６Ａの突出部には、公知の如く動力を受ける図示省略の電磁クラッチ、プーリー等が設けられ、エンジン等の駆動源からＶベルト等を介して動力が伝達されるようになっている。メイン軸受７とサブ軸受８との間には、メカニカルシール（リップシール）９が設置されており、ハウジング２内と大気との間を気密にシールしている。

クランク軸６の他端側（図１において右側）には、大径軸部６Ｂが設けられ、この大径軸部６Ｂには、クランク軸６の軸線Ｌより所定寸法だけ偏心した状態でクランクピン６Ｃが一体に設けられている。クランク軸６は、大径軸部６Ｂおよび小径軸部６Ａがメイン軸受７およびサブ軸受８で支持されることにより、フロントハウジング３に回転自在に支持されている。クランクピン６Ｃには、ドライブブッシュ１０、円筒環（フローティングブッシュ）１１およびドライブ軸受１２を介して後述の旋回スクロール１５が連結され、クランク軸６が回転されることによって、旋回スクロール１５が旋回駆動されるようになっている。

ドライブブッシュ１０には、旋回スクロール１５が旋回駆動されることにより発生するアンバランス荷重を除去するためのバランスウェイト１０Ａが一体に形成され、旋回スクロール１５の旋回駆動と共に旋回されるようになっている。また、ドライブブッシュ１０には、その中心に対して偏心した位置にクランクピン６Ｃが嵌合されるクランクピン穴１０Ｂが設けられている。これによって、クランクピン６Ｃに嵌合されたドライブブッシュ１０および旋回スクロール１５がガス圧を受けてクランクピン６Ｃ周りに回動され、旋回スクロール１５の旋回半径を可変とする公知の従動クランク機構が構成されている。

また、ハウジング２内には、一対の固定スクロール１４および旋回スクロール１５により構成されるスクロール圧縮機構（圧縮機構）１３が組み込まれている。固定スクロール１４は、端板１４Ａと該端板１４Ａから立設されている渦巻き状ラップ１４Ｂとから構成され、旋回スクロール１５は、端板１５Ａと該端板１５Ａから立設されている渦巻き状ラップ１５Ｂとから構成されている。

本実施形態の固定スクロール１４および旋回スクロール１５は、それぞれ渦巻き状ラップ１４Ｂ，１５Ｂの先端面とボトム面の渦巻き方向に沿う所定位置に、それぞれ段部を備えている。この段部を境に、ラップ先端面においては、旋回軸線方向に外周側の先端面が高く、内周側の先端面が低くされている。また、ボトム面においては、旋回軸線方向に外周側のボトム面が低く、内周側のボトム面が高くされている。これによって、渦巻き状ラップ１４Ｂ，１５Ｂは、その外周側におけるラップ高さが内周側のラップ高さよりも高くされている。

固定スクロール１４と旋回スクロール１５とは、その中心を旋回半径分だけ離すとともに、渦巻き状ラップ１４Ｂ，１５Ｂの位相を１８０度ずらして噛合され、該渦巻き状ラップ１４Ｂ，１５Ｂの先端面とボトム面との間に常温で僅かなラップ高さ方向のクリアランス（数十〜数百ミクロン）を有するように組み付けられている。これによって、図１に示されるように、両スクロール１４，１５間には、端板１４Ａ，１５Ａと渦巻き状ラップ１４Ｂ，１５Ｂとにより限界される一対の圧縮室１６がスクロール中心に対して対称に形成されるとともに、旋回スクロール１５が固定スクロール１４の周りをスムーズに旋回できるように構成されている。

圧縮室１６は、旋回軸線方向の高さが渦巻き状ラップ１４Ｂ，１５Ｂの外周側において内周側の高さよりも高くされることによって、渦巻き状ラップ１４Ｂ，１５Ｂの周方向およびラップ高さ方向にガスを圧縮できる三次元圧縮が可能なスクロール圧縮機構１３を構成している。固定スクロール１４および旋回スクロール１５の渦巻き状ラップ１４Ｂ，１１５Ｂの先端面には、相手方スクロールのボトム面との間に形成されるチップシール面をシールするためのチップシール１７が、それぞれ先端面に設けられた溝に嵌合されて設けられている。

固定スクロール１４は、リアハウジング４の内面にボルト１８を介して固定設置されている。また、旋回スクロール１５は、端板１５Ａの背面に設けられているボス部１５Ｃに対して、上述のとおり、クランク軸６の一端側に設けられているクランクピン６Ｃがドライブブッシュ１０、円筒環（フローティングブッシュ）１１およびドライブ軸受１２を介して連結され、旋回駆動されるように構成されている。

さらに、旋回スクロール１５は、フロントハウジング３のスラスト受け面３Ｂに端板１５Ａの背面が支持され、該スラスト受け面３Ｂと端板１５Ａの背面との間に設けられている自転阻止機構１９を介して、自転が阻止されながら固定スクロール１４の周りに公転旋回駆動されるように構成されている。本実施形態の自転阻止機構１９は、旋回スクロール１５の端板１５Ａに設けられているリング穴に組み込まれた自転防止リング１９Ａの内周面に対して、フロントハウジング３に設けられているピン穴に組み込まれた自転防止ピン１９Ｂが摺動自在に嵌合されているピンリング式の自転阻止機構１９とされている。

固定スクロール１４には、端板１４Ａの中央部位に圧縮された冷媒ガスを吐出する吐出ポート１４Ｃが開口されており、吐出ポート１４Ｃには、端板１４Ａにリテーナ２０を介して取り付けられている吐出リード弁２１が設置されている。また、端板１４Ａの背面側には、リアハウジング４の内面と密接されるようにＯリング等のシール材２２が介装されており、リアハウジング４の内面との間にハウジング２の内部空間から区画された吐出チャンバー２３を形成している。これによって、吐出チャンバー２３を除くハウジング２の内部空間が、吸入チャンバー２４として機能するように構成されている。

吸入チャンバー２４には、フロントハウジング３に設けられている吸入口２５を介して冷凍サイクルから戻ってくる冷媒ガスが吸入され、この吸入チャンバー２４を経て圧縮室１６に冷媒ガスが吸い込まれるようになっている。フロントハウジング３とリアハウジング４との間の接合面には、Ｏリング等のシール材２６が介装され、ハウジング２内に形成される吸入チャンバー２４を大気に対して気密にシールしている。

上記のスクロール型圧縮機１において、旋回スクロール１５を旋回駆動するドライブブッシュ１０の外周には、円筒環（フローティングブッシュ）１１が回転自在に嵌合されており、ドライブブッシュ１０の表面で生じる集中的な表面疲労を回避し、フレーキングの発生を防止している。該円筒環１１は、一端側がドライブブッシュ１０に設けられている段部に当接され、クランクピン６Ｃの基端方向への抜け止めがなされている。一方、クランクピン６Ｃの先端方向への抜け止めは、クランクピン６Ｃの先端に設けられた溝に嵌め込まれているＥ型止め輪２７によってなされている。

Ｅ型止め輪２７は、図２に示されるように、リング部２７Ａの一部に軸部に対して嵌め込むための開口部２７Ｂが設けられた汎用的なものであり、内径に対応して外形形状も略制約されたものである。このＥ型止め輪２７は、ドライブブッシュ１０の中心から偏心した位置に設けられているクランクピン穴１０Ｂに嵌合されているクランクピン６Ｃの先端に装着されており、そのリング部２７Ａの一部が直接円筒環１１に係るように設置されている。一方、円筒環１１は、ドライブブッシュ１０の外周に同心状に嵌合されている。

このため、Ｅ型止め輪２７が初期装着状態において、リング部２７Ａの一部が円筒環１１に係るように設置されていたとしても、Ｅ型止め輪２７が回転し、その開口部２７Ｂが円筒環１１に係る位置に回転されると、Ｅ型止め輪２７の円筒環１１に対する係り代（面積）が減少されることになる。そこで、本実施形態では、ドライブブッシュ１０の軸端側の端面に、Ｅ型止め輪２７が円筒環１１に対して所定の係り代を有するように設定された初期装着状態において、Ｅ型止め輪２７に設けられている開口部２７Ｂと対応する位置に該開口部２７Ｂと干渉してＥ型止め輪２７の回転を規制する周り止め用の突起２８を設けた構成としている。

以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
外部駆動源から図示省略のプーリーおよび電磁クラッチを介して回転駆動力をクランク軸６に伝達し、クランク軸６を回転すると、そのクランクピン６Ｃにドライブブッシュ１０、円筒環（フローティングブッシュ）１１およびドライブ軸受１２を介して旋回半径が可変に連結されている旋回スクロール１４が、ピンリング式自転阻止機構１９により自転を阻止されながら、固定スクロール１５の周りに所定の旋回半径で公転旋回駆動される。

この旋回スクロール１５の公転旋回駆動によって、半径方向最外方に形成される圧縮室１６内に、吸入チャンバー２４内の冷媒ガスが吸い込まれる。圧縮室１６は、所定の旋回角位置で吸入締め切りされた後、その容積が周方向およびラップ高さ方向に減少されながら中心側へと移動される。この間に冷媒ガスは圧縮され、当該圧縮室１６が吐出ポート１４Ｃに連通する位置に達すると、吐出リード弁２１を押し開く。その結果、圧縮された高温高圧のガスは、吐出チャンバー２３内に吐き出され、該吐出チャンバー２３を経て圧縮機１の外部へと送出される。

上記した圧縮運転の間、円筒環（フローティングブッシュ）１１は、ドライブブッシュ１０の外周上において回転される。このため、旋回スクロール１５からドライブ軸受１２を経てドライブブッシュ１０に負荷される荷重が、常に同一箇所に集中していても、ドライブブッシュ１０表面が移動しているのと同等の効果が得られる。従って、ドライブブッシュ１０の表面で生じる集中的な表面疲労を回避し、フレーキングの発生を防止してドライブブッシュ１０の寿命を延長することができる。

また、円筒環（フローティングブッシュ）１１は、クランクピン６Ｃの先端に装着されているＥ型止め輪２７によりクランクピン６Ｃの先端側への抜け止めがされている。しかも、ドライブブッシュ１０の端面にＥ型止め輪２７と干渉して該Ｅ型止め輪２７の回転を規制する周り止め用の突起２８が設けられているため、円筒環１１の軸方向への移動を規制するＥ型止め輪２７のクランクピン６Ｃ周りでの回転を、該周り止め用突起２８により確実に阻止することができる。

これによって、Ｅ型止め輪２７を円筒環１１に対してリング部２７Ａが所定の係り代を有するように設置された初期装着位置に保持することができ、円筒環１１およびドライブブッシュ１０の回動、振動等により開口部２７Ｂが円筒環１１に係る位置に回転してＥ型止め輪２７の円筒環１１に対する係り代（面積）が減少するのを防ぐことができる。その結果、円筒環１１への係り代の減少に伴うＥ型止め輪２７の面圧上昇に起因する異状摩耗を防止し、その機能低下による不適合を解消することができる。

さらに、本実施形態では、上記の周り止め用突起２８を、Ｅ型止め輪２７が円筒環１１に対して所定の係り代（面積）を有するように設定された初期装着状態において、Ｅ型止め輪２７の開口部２７Ｂと干渉する位置に設けているため、Ｅ型止め輪２７が円筒環１１やドライブブッシュ１０の回動、振動に付随して初期装着位置から左右いずれかの方向に回転しようとしても、開口部２７Ｂと干渉する位置に設けられている周り止め用突起２８により回転が阻止される。従って、Ｅ型止め輪２７の円筒環１１に対する所定の係り代を維持することができ、係り代の減少によるＥ型止め輪２７の異状摩耗等の不適合を確実に解消することができる。

［第２実施形態］
次に、本発明の第２実施形態について、図３を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第１実施形態に対して、止め輪および周り止め用突起の構成が異なっている。その他の点については、第１実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態では、円筒環（フローティングブッシュ）１１の軸端方向への抜け止め用止め輪に、上記Ｅ型止め輪２７に代えて、図３（Ａ）ないし（Ｃ）に示されるように、Ｃ型止め輪３７、Ｒ型止め輪４７およびＳ型止め輪５７を用いている。

また、これら止め輪３７，４７，５７のクランクピン６Ｃ周りに対する周り止め用と突起として、ドライブブッシュ１０の端面に、図３（Ａ），（Ｂ）に示されるように、止め輪３７，４７が円筒環１１に対して所定の係り代を有するように設定された初期装着状態において、止め輪３７，４７に設けられている一対の係合部３７Ａ，４７Ａの外周と干渉する位置に一対の円形状の突起３８，４８を設けた構成、もしくは図３（Ｃ）に示されるように、止め輪５７に設けられている一対の係合部５７Ａの間に該係合部５７Ａと干渉する円形状の突起５８を設けた構成としている。

上記構成とすることによっても、止め輪３７，４７，５７が円筒環１１やドライブブッシュ１０の回動、振動等に付随して初期装着位置から左右いずれかの方向に回転しようとしたとき、一対の係合部３７Ａ，４７Ａの外周と干渉する位置に設けられている一対の周り止め用突起３８，４８、もしくは一対の係合部５７Ａの間に設けられている周り止め用突起５８に干渉し、その回転を阻止することができる。このため、上記した第１実施形態と同様、止め輪３７，４７，５７の円筒環１１に対する所定の係り代（面積）を維持することができ、係り代の減少による異状摩耗を防止してその機能低下による不適合を解消することができる。

［第３実施形態］
次に、本発明の第３実施形態について、図４を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第１実施形態に対して、周り止め用突起６８の形成方法に特徴がある。その他の点については、第１実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態では、ドライブブッシュ１０の端面に設けられる止め輪（Ｅ型止め輪２７）の周り止め用突起６８を、図４に示されるように、ドライブブッシュ１０の端面を切削工具６９によって切削加工するとき、ドライブブッシュ１０の中心を外して切削工具６９を前進させ、ドライブブッシュ１０の中心部に加工残しにより外方への突起を設けることによって形成している。なお、この突起６８は、クランクピン穴１０Ｂの加工時、クランクピン穴１０Ｂにかかっている部分が削られるようになっている。

上記のように、Ｅ型止め輪２７の周り止め用突起６８を、ドライブブッシュ１０の端面の中心部に、該端面の切削加工時の加工残しにより設けられた外方への突起によって形成しているため、Ｅ型止め輪２７の周り止めを構成する突起６８をドライブブッシュ１０の端面の切削加工によって同時に形成することができる。従って、加工工数の増加や追加部品を用いることなく、周り止め用の突起６８を設けることができ、余計なコストや工数をかけずにＥ型止め輪２７の異状摩耗を防止し、その機能低下による不適合を解消することができる。

なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、周り止め用突起２８，３８，４８，５８は、三日月形状、円形状とされているが、これらの形状に限定されるものではなく、角形状等、他の形状としてもよく、また、これらの突起は、ドライブブッシュ１０の端面に、ピン等を埋め込んで設けてもよい。
さらに、止め輪２７，３７，４７，５７についても、上記したＥ型、Ｃ型、Ｒ型、Ｓ型に限らず、他の同等の止め輪を用いてもよいことは云うまでもない。

１ スクロール圧縮機
６ クランク軸
６Ｃ クランクピン
１０ ドライブブッシュ
１１ 円筒環（フローティングブッシュ）
１２ ドライブ軸受
１５ 旋回スクロール
２７ Ｅ型止め輪
２７Ｂ 開口部
２８，３８，４８，５８，６８ 周り止め用突起
３７ Ｃ型止め輪
３７Ａ，４７Ａ，５７Ａ 係合部
４７ Ｒ型止め輪
５７ Ｓ型止め輪
６９ 切削工具

Claims (4)

1. 軸端にクランクピンが設けられているクランク軸と、前記クランクピンに嵌合されているドライブブッシュと、該ドライブブッシュの外周に回動自在に嵌合されるとともに、前記クランクピンの先端に装着されている止め輪により軸方向移動が規制されている円筒環と、該円筒環の外周に嵌合されているドライブ軸受とを備え、前記クランク軸の回転により前記ドライブ軸受の外周に嵌合されている旋回スクロールが旋回駆動されるスクロール圧縮機において、
   前記ドライブブッシュの端面に、前記止め輪と干渉して該止め輪の回転を規制する周り止めが設けられ、
   該周り止めは、前記ドライブブッシュと一体にその端面から軸方向外方に突出された突起により構成されていることを特徴とするスクロール圧縮機。
2. 前記周り止めは、前記止め輪が前記円筒環に対して所定の係り代を有するように設定された初期装着状態において、該止め輪に設けられている開口部と干渉する位置に設けられていることを特徴とする請求項１に記載のスクロール圧縮機。
3. 前記周り止めは、前記止め輪が前記円筒環に対して所定の係り代を有するように設定された初期装着状態において、該止め輪に設けられている一対の係合部の外周と干渉する位置に一対設けられていることを特徴とする請求項１に記載のスクロール圧縮機。
4. 前記周り止めは、前記ドライブブッシュ端面の中心部に、該端面の切削加工時の加工残しにより設けられた外方への突起によって構成されていることを特徴とする請求項１または２に記載のスクロール圧縮機。

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