まず、本実施の形態で用いる泡状の定着液について説明する。
図1に示すように、後述する泡状定着液生成手段30(図3参照)によって定着液を泡で構成された泡状の定着液14とすることで、定着液14のカサ密度を低くできるとともに、塗布ローラ41上の泡状の定着液14の層を厚くすることができ、更には定着液14の表面張力による影響が抑えられるため、塗布ローラ41への記録媒体12からの樹脂含有微粒子13のオフセットを防止できる。樹脂含有微粒子13の大きさが5μm〜10μm程度の場合、記録媒体12上の樹脂含有微粒子13の層を乱すことなく泡状の定着液14を樹脂含有微粒子13の層に付与するには、泡状の定着液14の泡径範囲が、5μm〜50μm程度である。なお、図2に示すように、気泡22が分散された泡状の定着液14は、気泡22のそれぞれを区切る液膜境界(以下、プラトー境界と称す)21を有している。
ところで、泡状の定着液14の起泡剤としては、界面活性剤の中でもアニオン系界面活性剤が、優れた起泡性と泡沫安定性を実現することができる。特にアニオン系界面活性剤の中でも、脂肪酸塩は、最も泡沫安定性に優れ、定着液14の起泡剤として最も適する。一方、軟化剤は、消泡作用が強く、定着液14中で軟化剤の濃度上昇と共に、定着液14の起泡性及び泡沫安定性が悪くなり、なかなか起泡しなくなり、泡が直ぐに破泡するため泡密度の低い泡状の定着液14を得ることができなくなる。
そこで、この定着液14中の軟化剤濃度を高めたときの起泡性劣化問題を解決するため、アニオン系界面活性剤の種類や濃度を因子として多種の試作を行った。また、石井淑夫著、「泡のエンジニアリング」初版、株式会社テクノシステム、2005年3月25日発行、P.489にも記載されている「スーパーファット」と称される技術、つまり固形洗浄剤(石鹸)に含有されている遊離脂肪酸に着目して試作を行った。ここで、スーパーファットと呼称される技術について概説すると、酸化されにくい遊離脂肪酸を少量加え、過剰油脂分を増やす方法であり、ケン化されない油脂を少量分残すことによって、例えば保湿作用を高めるなどの効果があるとされている。上記の文献には、石鹸水溶系に極少量の脂肪酸を添加すると、起泡性能が向上する上、泡質が一層クリーミィに、即ちきめ細かくなることが知られており、スーパーファットソープと呼ばれていると記載されている。このスーパーファットと同様に軟化剤を有する定着液14に極少量の脂肪酸を添加して泡化を試みたが、起泡性及び泡沫安定性の何れも好ましいものではなかった。
ところが、後述するように、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤は、水と反応して加水分解してしまう傾向を持つため、水を含む起泡剤と別々に保管し、使用時に混合して使用することが望ましい。ここで、本実施の形態の泡状の定着液14を詳細に説明すると、軟化剤を含有した定着液14において、単に水を起泡する場合に比較してアニオン系界面活性剤、脂肪酸塩の炭素数としては、12から18が起泡性に優れている。具体的には、ラウリン酸塩(炭素数12)、ミリスチン酸塩(炭素数14)、パルミチン酸塩(炭素数16)、ステアリン酸塩(炭素数18)が適する。また、ペンタデシル酸(炭素数15)、マルガリン酸(炭素数17)なども適する。一方、脂肪酸と軟化剤との作用について説明すると、軟化剤はエステル基を化学構造中に有しており、脂肪酸はカルボニル基を化学構造中に有している。この点から、軟化剤のエステル基と脂肪酸のカルボニル基が定着液14の系内で、電気的な作用を示し、またそれが分子間の結合作用を生じさせ、定着液14の特性として起泡性及び泡沫安定性を向上させている。
また、炭素数12から18の範囲においても、炭素数が少ないほうが起泡性に優れているが泡沫安定性が悪く、炭素数が多いほうが起泡性にあまりよくないが泡沫安定性に極めて優れている。そこで、定着液14中で、単独の脂肪酸塩でも良いが、炭素数12から18の脂肪酸塩を混合する方が更に優れている。混合比率としては、ミリスチン酸塩(炭素数14)を最も多く含み、ラウリン酸塩(炭素数12)、ステアリン酸塩の割合を低くすることが望ましい。より具体的な脂肪酸塩の比率としては、ラウリン酸塩:ミリスチン酸塩:パルミチン酸塩:ステアリン酸塩の重量比で、0:6:3:1、1:5:3:1、1:4:4:1などが適する。
ところで、定着液14中に起泡剤である脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有することで軟化剤の濃度が高くなっても起泡性及び泡沫安定性を維持することができる。軟化剤の濃度として、10wt%未満では、脂肪酸を含有しなくても起泡性は問題ない。しかし、軟化剤の濃度が10wt%以上、特に軟化剤の濃度が30wt%以上になると、脂肪酸塩だけでは、ほとんど起泡しなくなり起泡性が悪くなる。このような軟化剤濃度30wt%において、脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有させると、起泡性を維持できる。
ただし、脂肪酸の含有量が多くなりすぎると、起泡剤である脂肪酸塩の比率が下がり、起泡性が再び悪くなる。そこで、脂肪酸塩のモル数を、脂肪酸のモル数と同じに、又は大きくするほうがよい。あるいは、脂肪酸と脂肪酸塩の比率を、5:5から1:9の範囲とした場合に起泡性が優れている。
なお、同じ炭素数の脂肪酸と脂肪酸塩の組合せだけでなく、例えば、脂肪酸塩がミリスチン酸アミンで、脂肪酸がステアリン酸の組合せや脂肪酸塩がパルミチン酸カリウムで脂肪酸がステアリン酸のような炭素数が12から18の範囲で異なる組合せであってもよい。即ち、炭素数12から18の範囲の脂肪酸を定着液14に含有することで、高濃度の軟化剤を含有しても、起泡性が悪くならず、泡沫安定性に優れ、密度の極めて低い泡化が可能となる。
また、他のアニオン系界面活性剤、例えばアルキルエーテル硫酸塩(AES)を起泡剤として、炭素数12から18の脂肪酸を含有した定着液14であっても、軟化剤濃度増加による起泡性の悪化を防止する効果があることがわかった。ただし、組合せとして最も優れているのは脂肪酸塩との組合せである。
更に、脂肪酸塩としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸アミンが適している。更に、最も適している脂肪酸アミンは、具体的には、水を加熱し、脂肪酸を添加し、その後トリエタノールアミンを添加して、一定時間撹拌しながら加熱してケン化反応させることで作製することができる。このとき、脂肪酸とトリエタノールアミンとのモル比を、1:0.5から1:0.9の範囲と脂肪酸比率を高くすることで、ケン化後、未反応の脂肪酸が残留し、定着液14中に脂肪酸と脂肪酸アミンを混合させることができる。同様のことは、ナトリウム塩やカリウム塩でも可能である。
一般的に0.5mm〜1mm程度の大きな泡の場合、単なる撹拌等により比較的容易に泡を生成可能であり、大きな泡の生成には数秒以下の時間(0.1秒もかからない)で生成することができる。そこで、この所望の泡径よりも大きな泡であって、目視で観察できる程度の大きさの泡の生成が容易で、かつすばやく得ることができる点に着目し、大きな泡から素早く5μm〜50μm程度の微小な泡を生成する方法を鋭意検討した結果、大きな泡にせん断力を加えることで大きな泡を分泡すると、上記のような液状態から微小な泡を起泡させる方法に比べ、極めて素早く所望の大きさの微小な泡が生成できる。
「樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤」と「起泡剤」を混合する混合手段32と、大きな泡を生成した後大きな泡を分泡し微小な処方の泡を生成する泡状定着液生成手段30とを図3に示す。混合手段32は、例えば、それぞれ「軟化剤液」、「起泡剤液」を保持させ、定着液ボトル31から搬送ポンプ33及び液搬送パイプ34等の液輸送手段を用いて大きな泡生成部35へ供給するように構成されている。大きな泡生成部35には、空気口36が設けられ、液の流れとともに、空気口36に負圧が発生し、空気口36から気体が大きな泡生成部35に導入され、液体と気体が混合し、更に微小孔シート37を通過することで、泡径の揃った大きな泡を生成させることができる。微小孔シート37の孔径は、30μm〜100μm程度が望ましい。図3の微小孔シート37に限らず、連泡構造の多孔質部材であればよく、孔径30μm〜100μm程度を有する焼結セラミックス板や不織布や発泡樹脂シートであってもよい。また、別の大きな泡の生成方法としては、上記の搬送ポンプ33より供給された液状の定着液14と空気口36からの空気を羽根状攪拌子で攪拌しながら、定着液14に気泡を巻き込みながら大きな泡を生成させる構成や、上記の搬送ポンプより供給された液状の定着液14に空気供給ポンプ等でバブリングを行い大きな泡を生成する構成も望ましい。
次に、大きな泡を分割して2つ以上に分泡化するために、大きな泡にせん断力を加えるための、図3に示すような泡状定着液生成手段30における微小な泡生成部38として、閉じた二重円筒で、内側円筒が回転可能な構成とし、外部円筒の一部より、大きな泡状の定着液14を供給し、内部の回転する円筒と外部円筒の隙間(ここが流路となる)を通過しながら、回転円筒によりせん断力を受ける。このせん断力により、大きな泡は微小な泡へと変化し、外側円筒に設けられた泡の出口より、所望の微小な泡径を有する泡状の定着液14を得ることができる。また、内側円筒にらせん状の溝を設けて、円筒内での液搬送能力を高くしてもよい。
このように、液状の定着液14を大きな泡径を有する液へと変化させる大きな泡生成部35と、大きな泡にせん断力を加えて微小な泡を生成する微小な泡生成部38を組合せることで、液状の定着液14から、極めて短時間に5μm〜50μm程度の微小な泡径を有する泡状の定着液14を生成させることができる。
次に、定着装置における定着液付与手段について説明する。
図4は、本実施の形態の定着装置における定着液付与手段の一例を示す概略構成図である。ここで、樹脂含有微粒子はトナー粒子である。図4(a)に示す本実施の形態の定着装置40は、上述した泡状定着液生成手段30によって生成された所望の微小な泡状の定着液14を樹脂含有微粒子13の層(トナー粒子層)へ付与するための塗布ローラ41と、塗布ローラ41の表面に所望の微小な泡の定着液14の膜厚を、記録媒体12上の未定着のトナー層の厚さに応じて制御し、泡状の定着液14の最適な膜厚の制御を行う泡状定着液膜厚制御手段の膜厚制御用ブレード42と、塗布ローラ41と対峙する位置に加圧ローラ43とを具備している。図4(b)に示すように、塗布ローラ41上には、泡状の定着液14の層が記録媒体12上の未定着トナー層の厚さに応じて泡状定着液膜厚制御手段の膜厚制御用ブレード42を通して形成されており、この泡状定着液膜厚制御手段の膜厚制御用ブレード42によって泡状の定着液14の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状の定着液14の未定着トナー層での浸透時間に対して最適化した定着液層の膜厚となる。所望の微小な泡状の定着液14は、上記のように、大きな泡を生成する大きな泡生成部35と、大きな泡をせん断力で分泡して微小な泡を生成する微小な泡生成部38と、を含んで構成されている泡状定着液生成手段30で生成され、液供給口38aより塗布ローラ41と泡状定着液膜厚制御手段の膜厚制御用ブレード42との間に滴下される。
加圧ローラ43は、塗布ローラ41の押圧により撓む(塗布ローラ41に沿って変形する)材質であればよく、例えば、ゴム、合成樹脂等、特に限定されない。しかし、定着液14中には樹脂軟化または膨潤剤が含有されており、加圧ローラ43に定着液14が万が一付着した場合、その素材に軟化等の不具合が発生する恐れがあるため、加圧ローラ43の樹脂材は、軟化または膨潤剤に対し軟化や膨潤を示さない素材が望ましい。また、上記の形態に限らず、加圧ローラ43上に泡状の定着液14を保持するスペースを持ったフィルムを被せる構成としてもよい。加圧ローラ43が軟化または膨潤剤で劣化する素材であっても、軟化または膨潤剤により軟化や膨潤を示さないフィルムで覆うことで加圧ローラ43の劣化を防止することができる。加圧ローラ43としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどの樹脂の多孔質体などが適する。また、加圧ローラ43を覆うフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、四フッ化エチレン・バーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、金属材料などが適する。
なお、泡状の定着液14のかさ密度としては、0.01g/cm3〜0.1g/cm3程度の範囲が望ましい。更に、定着液14を付与する時に記録媒体12の表面に残液感を生じないようにするためには、泡の密度として、0.01g/cm3〜0.02g/cm3程度の範囲、特に0.02g/cm3以下が望ましい。なぜならば、図4に示すように、塗布ローラ41から記録媒体12に付与された定着液14の泡膜は、記録媒体12上の微粒子層の厚み以上であることが必須条件で(微粒子層の隙間を泡状の定着液14で埋めるため)、おおよそ、泡膜厚みは、50μmから80μmが望まれる。一方、記録媒体12面への定着液14の付着による残液感(濡れたような感触)が無いためには、定着液14の付着量として、0.1mg/cm2以下が望まれる。このことから、泡の密度としては、0.0125g/cm3から0.02g/cm3の範囲が必要であり、少なくとも0.02g/cm3以下の泡の密度が望まれる。
更に、定着液14は、紙等、記録媒体12上のトナー等の樹脂含有微粒子13の層への塗布時に泡状となっていればよく、定着液ボトル31等の保存容器内で泡状である必要はない。保存容器中では気泡を含有しない液体で、保存容器から液を供給する時点や、樹脂含有微粒子13の層へ付与するまでの液搬送経路で泡状にする手段を設ける構成が望ましい。これは、保存容器では液体で、容器から液を取り出した後に泡状とする構成のほうが、保存容器の小型化ができるという大きな利点を有するためである。
また、泡状の定着液14の塗布ローラ41上での膜厚制御は、図5に示すように、塗布ローラ41とギャップを設けた膜厚制御用ブレード42を用い、図5(a)に示すように膜厚を薄くするときはギャップを狭くし、図5(b)に示すように膜厚を厚くするときはギャップを広くする。ギャップの制御は膜厚制御用ブレード42の端部に駆動を有する回転軸を用い、トナー層の厚さや環境温度等、更には泡状の定着液14の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状の定着液14の未定着トナー層での浸透時間を調整するための最適な膜厚を制御する。
次に、定着液容器から液状定着液を泡化する機構に搬送する手段としては、図3では搬送ポンプ33を用いている。搬送ポンプ33としては、ギヤポンプ、ベローズポンプ等があるが、チューブポンプが望ましい。ギヤポンプ等のように定着液14中で振動機構や回転機構があると、ポンプ内で液が起泡し、液に圧縮性が出て、搬送能力が低下する恐れがある。また、上記の機構部品等が定着液14を汚染したり、逆に機構部品を劣化させる恐れがある。一方、チューブポンプは、チューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であるため、定着液と接する部材はチューブだけであり、定着液14に対し耐液性を有する部材を用いることで、液の汚染やポンプ系部品の劣化がない。また、チューブを変形させるだけなので、液が起泡せず、搬送能力の低下を防止できる。
また、図5の膜厚制御用ブレード42のほかに、図示しないワイヤーバーによって塗布ローラ41上の泡状の定着液14の厚みを制御し、泡状の定着液14は、上記のように、大きな泡を生成する大きな泡生成部35と、その大きな泡をせん断力で分泡する微小な泡生成部38と、を有する泡状定着液生成手段30によって生成され、液供給口38aより、ワイヤーバーと塗布ローラ41の間に滴下するように構成してもよい。ワイヤーバーを膜制御手段として用いることで、膜厚制御用ブレード42を用いる場合と比べ、塗布ローラ41面の軸方向の泡状定着液膜均一性が向上する。
図6は、本実施の形態に係る定着装置の構成を示す概略構成図である。同図に示す本実施の形態の定着装置40によれば、加圧ローラ43は弾性層としてスポンジ素材を用いて構成した。ここで、泡状の定着液14がトナー等の樹脂含有微粒子13の層を浸透して記録媒体12まで到達した後に塗布ローラ41と樹脂含有微粒子13の層が剥離するようにニップ時間のタイミングを取る必要がある。このため、ニップ時間として50mmsecから300mmsecの範囲を確保するため、弱い加圧力で大きく変形可能なスポンジ部材を用いた。
なお、ニップ時間は、ニップ時間=ニップ幅/記録媒体12の搬送速度により算出される。記録媒体12の搬送速度は、記録媒体搬送駆動機構の設計データにより求めることができる。ニップ幅は、塗布ローラ41の全面に乾燥しない着色塗料を薄くつけて、記録媒体12を塗布ローラ41及び対峙する加圧ローラ43に挟んで加圧(ローラは回転させない状態で)し、記録媒体12に着色塗料を付着させ、着色部(通常長方形の形に着色)における記録媒体搬送方向の長さをニップ幅として測定することで求めることができる。記録媒体12の搬送速度に応じて、ニップ幅を調整することでニップ時間を泡状の定着液14のトナー層浸透時間と同じかそれ以上にする必要がある。図6に示すように、記録媒体12の搬送速度に応じて、塗布ローラ41と加圧ローラ43の軸間距離を変更しニップ幅を変えることが容易となる。
また、図6において、待機時は塗布ローラ41と加圧ローラ43はそれぞれ離れており、図示しない駆動機構により、塗布時のみ、記録媒体12の先端検知手段に応じて塗布ローラ41と加圧ローラ43を接触させる構成も望ましい。
図7は本実施の形態に係る定着装置の他の構成を示す概略構成図である。同図に示す本実施の形態の定着装置40は、図6の加圧ローラ43の代わりに加圧ベルト44を用いたものである。大きな泡を生成する大きな泡生成部35と、大きな泡をせん断力で分泡して微小な泡を生成する微小な泡生成部38と、を含んで構成されている泡状定着液生成手段30で生成し、液供給口38aより所望の泡径を有する泡状の定着液14を泡状定着液膜厚制御手段の膜厚制御用ブレード42の供給口へチューブ等を用いて供給する。そして、泡状定着液膜厚制御手段の膜厚制御用ブレード42と塗布ローラ41のギャップを調整して塗布ローラ41上の泡状の定着液14の層膜厚を制御し、泡状の定着液14の最適膜厚の制御を行っている。
このように、加圧ベルト44を用いる構成では、ニップ幅を容易に広くすることが可能となる。なお、加圧ベルト44を用いる構成は図7に限らず、塗布ローラ41に相当する部材をベルトから構成するとともに、加圧ベルト44に相当する部材をローラから構成するようにしてもよい。塗布側又は加圧側の少なくとも一方をベルトとする構成とすることで容易にニップ幅を広くすることが可能となり、記録媒体12にしわが発生するような無理な力をかけることもなく、同等のニップ時間のまま記録媒体12の搬送速度を速くすることが可能となり、高速定着が可能となる。
なお、定着液14中で、不飽和脂肪酸塩を用いてもよく、炭素数18で2重結合数が1から3の不飽和脂肪酸が望ましい。具体的には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が適する。2重結合が4以上では反応性が強いため、定着液14の放置安定性が劣ってしまう。これらの不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。また、上記飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩を混合して起泡剤として用いても構わない。
また、樹脂を溶解又は膨潤することで軟化させる軟化剤は、脂肪族エステルを含む。この脂肪族エステルは、トナー等に含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる溶解性又は膨潤性に優れている。
更に、軟化剤については、人体に対する安全性の観点から、その急性経口毒性LD50が3g/kgよりも大きい、更に好ましくは5g/kgであることが好ましい。脂肪族エステルは、化粧品原料として多用されているように、人体に対する安全性が高い。
また、記録媒体12に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、軟化剤はトナーの記録媒体12への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体12に対するトナーの定着は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。即ち、軟化剤は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し、刺激臭を持たない。
なお、オフィス環境等における臭気を高い精度で測定することができる実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数(10×log(物質の臭気が感じられなくなるまでの物質の希釈倍率))を臭気の指標とすることができる。また、軟化剤に含まれる脂肪族エステルの臭気指数は、10以下であることが好ましい。この場合には、通常のオフィス環境では、不快臭を感じなくなる。更に、軟化剤のみならず、定着液14に含まれる他の液剤も同様に、不快臭及び刺激臭を有さないことが好ましい。
本実施の形態の定着液14において、好ましくは、上記の脂肪族エステルは、飽和脂肪族エステルを含む。また、飽和脂肪族エステルは、人体に対する安全性が高く、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内で溶解又は膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体12に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解又は膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
よって、本実施の形態の定着液14において、好ましくは、上記の飽和脂肪族エステルの一般式は、R1COOR2で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型アルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の飽和脂肪族エステルが、一般式R1COOR2で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、上記の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルの多くについて、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液14に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
上記の飽和脂肪族エステルを使用する際、その加水分解を抑制するには、R1COOR2の加水分解物であるR1COOHとR2OHの少なくとも1種類を定着液14に含有させることで、軟化剤の分解を抑制できる。上記の加水分解物としては、例えば、ラウリン酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、ミリスチン酸、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。含有量については、特に限定しないが、カルボン酸化合物については、定着液のpHが7以下にならないような含有量、アルコール化合物については1wt%から30wt%の含有量の範囲が適当である。これらの含有量を超える場合は、定着液14の起泡性が劣化するため適さない。
また、本実施の形態の定着液14において、好ましくは、上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸エステルも含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができる。例えば、60ppm(毎分60枚)程度の高速印字では、記録媒体12における未定着のトナーに定着液14を付与し、トナーが記録媒体12に定着するまでの時間は、1秒以内であることが望ましい。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、記録媒体12における未定着のトナー等に定着液14を付与し、トナーが記録媒体12に定着するのに要する時間を、0.1秒以内にすることが可能となる。更に、より少量の軟化剤を添加することによって、トナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができるため、定着液14に含まれる軟化剤の含有量を低減することができる。
よって、本実施の形態の定着液14において、好ましくは、上記の脂肪族ジカルボン酸エステルの一般式は、R3(COOR4)2で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の脂肪族ジカルボン酸エステルが、一般式R3(COOR4)2で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記の化合物である脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、コハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液14に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
更に、本実施の形態における定着液14において、好ましくは上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
本実施の形態における定着液14において、好ましくは、上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの一般式は、R5(COOR6−O−R7)2で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式R5(COOR6−O−R7)2で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記の化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液14に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
また、脂肪酸エステルではないが、炭酸エステルである炭酸エチレンや炭酸プロピレンや炭酸ブチレンも軟化もしくは膨潤剤として適する。
ところで、泡状の定着液14において、塗布接触ニップ部にてトナー等の微粒子層に泡状の定着液14を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。そこで泡沫安定性に優れる泡が求められる。このため、定着液14中に脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有することが望ましい。脂肪酸アルカノールアミドには(1:1)型と(1:2)型があるが、本発明における泡沫安定性には(1:1)型が適することがわかった。
なお、定着の対象となる樹脂を含有する微粒子は、トナーに限定されず、樹脂を含有する微粒子であれば何れでもよい。例えば、導電性部材を含有した樹脂含有微粒子13でもよい。また、記録媒体12は、記録紙に限定されず、金属、樹脂、セラミックス等何れでもよい。媒体は定着液14に対し浸透性を有することが望ましく、記録媒体12の基板が液浸透性を持たない場合は、基板上に液浸透層を有する媒体が望ましい。記録媒体12の形態もシート状に限定されず、平面及び曲面を有する立体物でもよい。例えば、紙のごとき媒体に透明樹脂微粒子を均一に定着させ紙面を保護する(所謂、ニスコート)用途においても、本発明は適用できる。
上記の樹脂を含有する微粒子のうち、電子写真プロセスで用いるトナーは、本実施の形態の定着液14との組合せにおいて最も定着への効果が高い。トナーは、色剤と帯電制御剤と結着樹脂や離型剤などのような樹脂を含む。トナーに含まれる樹脂は、特に限定されないが、好適な結着樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、離型剤としては、例えばカルバナウワックスやポリエチレンなどのワックス成分などが挙げられる。トナーは、結着樹脂の他に、公知の着色剤、電荷制御剤、流動性付与剤、外添剤などを含んでもよい。また、トナーは、メチル基を有する疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子をトナーの粒子の表面に固着させることによって、撥水性処理されていることが好ましい。記録媒体12は、特に限定されず、例えば、紙、布、及び液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。本実施の形態における油性とは、室温(20℃)における水に対する溶解度が、0.1重量%以下である性質を意味する。
また、泡状となった定着液14は、好ましくは、撥水性処理されたトナーの粒子に対して、十分な親和性を有することが望ましい。ここで、親和性とは、液体が固体に接触したときに、固体の表面に対する液体の拡張濡れの程度を意味する。即ち、泡状となった定着液14は、撥水性処理されたトナーに対して十分な濡れ性を示すことが好ましい。疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子で撥水性処理されたトナーの表面は、疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンの表面に存在するメチル基によって覆われており、おおよそ20mN/m程度の表面エネルギーを有する。現実には、撥水性処理されたトナーの表面の全面が疎水性微粒子によって完全に覆われてはいないため、撥水性処理されたトナーの表面エネルギーは、おおよそ、20〜30mN/mであると推測される。よって、撥水性トナーに対して親和性を有する(十分な濡れ性を有する)ためには、泡状となった定着液14の表面張力は、20〜30mN/mであることが好ましい。
水性溶媒を用いる場合、界面活性剤を添加することで、表面張力を20〜30mN/mとすることが好ましい。また、水性溶媒の場合、多価アルコールを含有していることが望ましい。これらの材料は、泡状の定着液14における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする利点を有する。例えばセタノールなどの単価アルコールや、グリセンリン、プロピレングリコール、1、3ブチレングリコールなどの多価アルコールが望ましい。また、これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
また、定着液14中に浸透性改善や紙等媒体のカール防止のために油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成も望ましく、その場合、具体的な分散剤としては、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステルなどが望ましい。
なお、定着液14中での軟化剤を溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させるため方法としては、例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、及び超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段が挙げられる。いずれにしても、強いせん断応力を定着液14中の軟化剤に加えることで溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させる。
また、トナーの定着装置は、本実施の形態における定着液14をトナーに供給した後、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)によって溶解又は膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を有してもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、溶解又は膨潤したトナーを加圧することによって、溶解又は膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、記録媒体12内へ溶解又は膨潤したトナーを押し込むことによって、記録媒体12に対するトナーの定着性を向上させることができる。
上述した画像形成方法を用いて、樹脂を含むトナーの画像を記録媒体12に形成する。よって、このような画像形成装置によれば、それぞれ、上述したように、より効率的にトナーを記録媒体12に定着させることが可能となる。
図8は、複写機又はプリンタとして構成された画像形成装置の断面図である。図8(a)はカラー電子写真のタンデム方式の画像形成装置全体の概略図であり、図8(b)は図8(a)の画像形成装置の1つの画像形成ユニットの構成を示す図である。
図8(a)、図8(b)に示す画像形成装置50はトナー像担持体として中間転写ベルト51を有する。この中間転写ベルト51は、3つの支持ローラ52〜54に張架されており、図中の矢印Aの方向に回転する。この中間転写ベルト51に対しては、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成ユニット55〜58が配列されている。これら画像形成ユニット55〜58の上方には、図示していない露光装置が配置されている。例えば、画像形成装置50が複写機である場合には、スキャナで原稿の画像情報を読み込み、この画像情報に応じて、各感光体ドラム66上に静電潜像を書き込むための各露光L1〜L4が図示しない露光装置により照射される。中間転写ベルト51を挟んで中間転写ベルト51の支持ローラ54に対向する位置には、二次転写装置59が設けられている。二次転写装置59は、2つの支持ローラ60、61の間に張架された二次転写ベルト62を備えている。なお、二次転写装置59としては、二次転写ベルト62以外に図示しない転写ローラを用いてもよい。また、中間転写ベルト51を挟んで中間転写ベルト51の支持ローラ52に対向する位置には、ベルトクリーニング装置63が配置されている。ベルトクリーニング装置63は、中間転写ベルト51上に残留するトナーを除去するために配置されている。記録媒体12は、一対の給紙ローラ65で二次転写部へ導かれ、トナー像を記録媒体12に転写する際に、二次転写ベルト62を中間転写ベルト51に押し当てることによって、トナー像の転写を行う。トナー像が転写された記録媒体12は、二次転写ベルト62によって搬送され、記録媒体12に転写された未定着のトナー像は、図示しない露光装置からの画像情報に基づいて泡状の定着液14の膜厚を制御する本実施の形態の定着装置40によって定着される。即ち、記録媒体12に転写された未定着のトナー像には、図示しない露光装置からの画像情報、例えばカラー画像又は黒ベタ画像に基づいて泡状の定着液14層の膜厚が制御されたトナーの定着装置40から供給される泡状の定着液14が付与され、泡状の定着液14に含まれる、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)によって、未定着のトナー像を、記録媒体12に定着させる。
次に、画像形成ユニットについて説明する。図8(b)に示すように、画像形成ユニット55〜58には、感光体ドラム66の周辺に、帯電装置67、現像装置68、クリーニング装置69及び除電装置70が配置されている。また、中間転写ベルト51を介して、感光体ドラム66に対向する位置に、一次転写装置71が設けられている。また、帯電装置67は、帯電ローラを採用した接触帯電方式の帯電装置である。帯電装置67は、帯電ローラを感光体ドラム66に接触させて、感光体ドラム66に電圧を印加することにより、感光体ドラム66の表面を一様に帯電する。この帯電装置67としては、非接触のスコロトロン等を採用した非接触帯電方式の構成を採用することもできる。また、現像装置68は、現像剤中のトナーを感光体ドラム66上の静電潜像に付着させ、静電潜像を可視化させる。ここで、各色に対応するトナーは、それぞれの色に着色された樹脂材料からなり、これらの樹脂材料は、本実施の形態の定着液14により溶解又は膨潤する。なお、現像装置68は、図示しない攪拌部及び現像部を有し、現像に使用されなかった現像剤は、攪拌部に戻され、再利用される。攪拌部におけるトナーの濃度は、トナー濃度センサによって検出され、トナーの濃度が、一定になるように制御されている。更に、一次転写装置71は、感光体ドラム66上で可視化されたトナーを中間転写ベルト51に転写する。ここでは、一次転写装置71としては、転写ローラを採用しており、転写ローラを、中間転写ベルト51を挟んで感光体ドラム66に押し当てている。一次転写装置71としては、導電性ブラシ、非接触のコロナチャージャー等を採用することもできる。また、クリーニング装置69は、感光体ドラム66上の不要なトナーを除去する。クリーニング装置69としては、感光体ドラム66に押し当てられる先端を備えたブレードを用いることができる。ここで、クリーニング装置69によって回収されたトナーは、図示しない回収スクリュー及びトナーリサイクル装置によって、現像装置68に回収され、再利用される。更に、除電装置70は、ランプで構成されており、光を照射して感光体ドラム66の表面電位を初期化する。
泡状の定着液14を回収する構成について説明する。
図9(a)に示すように、泡状の定着液14は、前述の泡状定着液生成手段30や膜厚制御用ブレード42を備える供給ユニット72によって、塗布ローラ41に均一に供給され、記録媒体12の上のトナー像に付着し、加圧ローラ43にて加圧され排紙される。その際、塗布ローラ41上には記録媒体12に供給されなかった泡状の定着液14が残留し、残留した泡状の定着液14には、記録媒体12からオフセットしたトナーが僅かではあるが含まれている。
残留した泡状の定着液14は、塗布ローラ41に付設されたクリーニング用の塗布ローラクリーニングブレード81にて掻き取られて泡搬送ベルト82上に落下する。落下した泡状の定着液14は泡搬送ベルト82により搬送され、ベルトクリーニングブレード83により泡搬送ベルト82から除去され、ベルトクリーニングブレード83の下方に配置された回収ユニット84に落下して収容される。回収ユニット84内には、水に対して凝集剤を0.3〜1%以内に調整された液が入れられており、泡状の定着液14は、回収ユニット84内の攪拌子85により攪拌され直ちに消泡及び凝集される。回収ユニット84内で泡状の定着液14に作用する凝集剤は、消泡効果と凝集効果を併せ持つものであり、凝集剤により、定着液14の泡が短時間に消去され、且つ、固形分と水分とに分離される。
図9(b)に上面図を示すように、泡搬送ベルト82の上面には、塗布ローラ41から掻き取られた泡状の定着液14を回収ユニット84に案内する案内ブレード86、87が設けられている。泡状の定着液14は、案内ブレード86、87に挟まれた空間において泡搬送ベルト82上を搬送されて、泡搬送ベルト82の搬送方向下流側端部から回収ユニット84内に落下する。このことにより回収ユニット84は記録媒体12の搬送に問題無い位置で定着液14の泡を処理することが可能になる。凝集剤供給部88は、定期的に、例えば消泡分離動作の1単位ごとに、凝集剤を回収ユニット84に供給するようになっている。凝集剤供給部88、回収ユニット84、攪拌子85は、消泡分離部80を構成している。
このように、回収ユニット84内で泡状の定着液14に混合される凝集剤は、消泡効果と凝集効果を併せ持つものであり、凝集剤により、定着液14の泡を短時間に消去し、且つ、固形分と水分とに分離することができる。なお、上記の消泡分離動作の後の回収ユニット84内の液体は、比重差により、透明な水分とその水分の上に浮遊するスラッジ状の固形分とに分離されたが、回収ユニット84にフィルター等のろ過手段を備えるように構成して、分離により得た固形分をろ過により取り出すようにしてもよい。
本実施の形態で使用する定着液14の調整方法の説明
<脂肪酸トリエタノールアミン塩系定着液の調整>
次に、本実施の形態の定着液14の調整方法について説明する。脂肪酸であるミリスチン酸(関東化学試薬)を4.00wt%、パルミチン酸(関東化学試薬)を3.00wt%、ステアリン酸を1.00wt%(関東化学試薬)とし、中和剤であるトリエタノールアミンを3.41wt%になるようにそれぞれ計量し、それらを液温80℃のイオン交換水中で、30分間スターラー(100rpm)で撹拌したら、室温になるまで自然冷却する。それに、軟化剤や増泡剤などの残りの材料を添加して超音波ホモジナイザーにて10分間撹拌し、それを定着液(泡化する前の原液)とした。詳細な成分量については後述する。
<起泡剤液と軟化剤液の調整(1)>
起泡剤を含有する液(起泡剤液)は「脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を6.7wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.8wt%、イオン交換水92.5wt%をあらかじめ混合した液60.0wt%」、軟化剤を含有する液(軟化剤液)は「プロピレンカーボネート(関東化学試薬、PC)40.0wt%」とし、それぞれ、PET樹脂からなるボトル容器に入れた。
<起泡剤液と軟化剤液の調整(2)>
起泡剤を含有する液(起泡剤液)は、「脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を4.5wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.6wt%、イオン交換水を94.9wt%をあらかじめ混合した希釈剤90.0wt%」、軟化剤を含有する液(軟化剤液)は「コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社、クローダDES)10wt%」とし、それぞれ、PET樹脂からなるボトル容器に入れた。
◇大きな泡生成部35
図3と同様に作製した。液状の定着液14を保存する2つの定着液ボトル31をPET樹脂から構成し、搬送ポンプ33を内径2mmで材質がシリコーンゴムのチューブポンプから構成し、搬送流路を内径2mmのシリコーンゴムチューブから構成し、大きな泡を作るための微細孔シートとして、ステンレス製メッシュシート(開口部約40μm)を用いた。
◇微小な泡生成部38
図3と同様に作製した。2重円筒の内側円筒は、回転軸に固定され、図示していない回転駆動モータにより回転する。2重円筒の材質は、PET樹脂とした。外側円筒の内径を10mm、長さ120mmとし、内側円筒の外形を8mm、長さ100mmとした。回転数は、300rpmとした。回転時間は10秒間とした。
◇定着液付与手段
図4と同様に作製した。泡状の定着液14を膜厚制御用ブレード42に供給する構成とした。膜厚制御用ブレード42と塗布ローラ41とのギャップは40μmとした。加圧ローラ43は、アルミ合金製ローラ(φ10mm)を芯金とし、この芯金に外径Φ50mmのポリウレタン泡材(イノアック社商品名「カラー泡EMO」)を形成したスポンジローラーを設けた。塗布ローラは、PFA樹脂を焼付け塗装したSUS製ローラ(φ30mm)を用いた。膜厚制御用ブレード42は、アルミ合金製支持板に厚み1mmの並板ガラスを接着したものを用い、ガラス面を塗布ローラ41側に向け、10μmから100μmの範囲で塗布ローラ41とガラス面の隙間を制御できるようにした。記録媒体12の搬送速度は、150mm/sとした。
[実施例1]
電子写真方式のプリンタ(リコー社製、IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を記録媒体12としてのPPC用紙(リコーT−6200、A4紙)に形成させた。トナー層の厚みは20〜30μmであった。また、上記の起泡剤と軟化剤液の調整(1)から、PC系の定着液14を作製した後、微小な泡生成部38で微小な泡を作製し、未定着トナーが形成された記録媒体12の上に付与した。未定着トナーが形成された記録媒体12に塗布ローラ41上の泡状の定着液14の厚み約100μmを塗布した。なお、記録媒体12は塗布ローラ41と加圧ローラ43にて送られる。その際、塗布ローラ41上には未転写の泡状の定着液14が残留し、かつ、僅かではあるが記録媒体12からオフセットしたトナーが混ざっている。塗布ローラクリーニングブレード81にて掻きとられた泡状の定着液14は、泡搬送ベルト82により搬送されてベルトクリーニングブレード83により泡搬送ベルト82から剥離されて回収ユニット84へと落下する。ところで、ベルトクリーニングブレード83は、単に泡搬送ベルト82から泡状の定着液14を剥離すれば良いだけなので、ベルトクリーニングブレード83と泡搬送ベルト82との間の摩擦抵抗負荷の低減のため、ベルトクリーニングブレード83をトレーリングに当接する配置とした。すなわち、ベルトクリーニングブレード83のトレーリングエッジ(後縁部)が泡搬送ベルト82に当接する構成とした。回収ユニット84に回収された泡状の定着液14は、回収ユニット84内に予め入れられた凝集剤、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)0.3%水溶液中に落下して攪拌子85で攪拌された。すると、定着液14の泡はほぼ、瞬間的に破泡した。そして機械が停止すると、泡搬送ベルト82は、定着液14の泡が消去するまで駆動を続けてから停止する。この動作により、回収ユニット84内は、透明な水分とその水分の上に浮遊するスラッジ状の固形分とに分離された。水分とスラッジ状の固形分に分離した後に残った水分中に、約0.3%になるように凝集剤供給部88により凝集剤を添加し、次の消泡・凝集のため待機する。これらの動作を繰り返すことで、未処理で廃棄した場合に環境負荷が予想されるトナーが混ざった泡状の定着液14を、消泡するとともに固形分と水分に分離することが可能となる。
[実施例2]
電子写真方式のプリンタ(リコー社製、IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を記録媒体12としてのPPC用紙(リコーT−6200、A4紙)に形成させた。トナー層の厚みは20〜30μmであった。また、上記の起泡剤と軟化剤液の調整(2)から、DCS系の定着液14を作製した後、微小な泡生成部38で泡を作製し、未定着トナーが形成された記録媒体12の上に付与した。未定着トナーが形成された記録媒体12に塗布ローラ41上の泡状の定着液14の厚み約75μmを塗布した。後は実施例1と同様に凝集剤を硫酸第二鉄1%水溶液として回収ユニット84に搬送された泡状の定着液14を攪拌し、消泡と凝集性能を確認した。
[実施例3]
電子写真方式のプリンタ(リコー社製、IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を記録媒体12としてのPPC用紙(リコーT−6200、A4紙)に形成させた。トナー層の厚みは20〜30μmであった。また、上記の起泡剤と軟化剤液の調整(1)から、PC系の定着液14を作製した後、微小な泡生成部38で泡を作製し、未定着トナーが形成された記録媒体12の上に付与した。未定着トナーが形成された記録媒体12に塗布ローラ41上の泡状の定着液14の厚み約75μmを塗布した。後は実施例1と同様に凝集剤をアルギン酸ソーダ1%水溶液とし回収ユニット84に搬送された泡状の定着液14を攪拌し、消泡と凝集性能を確認した。
[実施例4]
電子写真方式のプリンタ(リコー社製、IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を記録媒体12としてのPPC用紙(リコーT−6200、A4紙)に形成させた。トナー層の厚みは20〜30μmであった。また、起泡剤と軟化剤液の調整(2)から、DCS系の定着液14を作製した後、微小な泡生成部38で泡を作製し、未定着トナーが形成された記録媒体12の上に付与した。未定着トナーが形成された記録媒体12に塗布ローラ41上の泡状の定着液14の厚み約100μmを塗布した。後は実施例1と同様に凝集剤をポリアクリル酸アミド(アニオン系)1%水溶液とし回収ユニット84に搬送された泡状の定着液14を攪拌し、消泡と凝集性能を確認した。
[実施例5]
電子写真方式のプリンタ(リコー社製、IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を記録媒体12としてのPPC用紙(リコーT−6200、A4紙)に形成させた。トナー層の厚みは20〜30μmであった。また、起泡剤と軟化剤液の調整(2)から、DCS系の定着液14を作製した後、微小な泡生成部38で泡を作製し、未定着トナーが形成された記録媒体12の上に付与した。未定着トナーが形成された記録媒体12に塗布ローラ41上の泡状の定着液14の厚み約75μmを塗布した。後は実施例1と同様に凝集剤をポリアクリル酸ジメチルアミノエチル1%水溶液とし回収ユニット84に搬送された泡状の定着液14を攪拌し、消泡と凝集性能を確認した。
[実施例6]
電子写真方式のプリンタ(リコー社製、IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を記録媒体12としてのPPC用紙(リコーT−6200、A4紙)に形成させた。トナー層の厚みは20〜30μmであった。また、起泡剤と軟化剤液の調整(2)から、DCS系の定着液14を作製した後、微小な泡生成部38で泡を作製し、未定着トナーが形成された記録媒体12の上に付与した。未定着トナーが形成された記録媒体12に塗布ローラ41上の泡状の定着液14の厚み約75μmを塗布した。後は実施例1と同様に凝集剤をキチン・キトサン1%水溶液とし回収ユニット84に搬送された泡を攪拌し、消泡と凝集性能を確認した。
[比較例1]
電子写真方式のプリンタ(リコー社製、IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を記録媒体12としてのPPC用紙(リコーT−6200、A4紙)に形成させた。トナー層の厚みは20〜30μmであった。また、起泡剤と軟化剤液の調整(2)から、DCS系の定着液を作製した後、微小な泡生成部38で泡を作製し、未定着トナーが形成された記録媒体12の上に付与した。未定着トナーが形成された記録媒体12に塗布ローラ41上の泡状の定着液14の厚み約100μmを塗布した。後は実施例1での凝集剤に代わって消泡剤として、シリコーン系消泡剤KS−540(信越化学工業製)0.5%液に変えて消泡と凝集性能を確認した。
[比較例2]
電子写真方式のプリンタ(リコー社製、IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を記録媒体12としてのPPC用紙(リコーT−6200、A4紙)に形成させた。トナー層の厚みは20〜30μmであった。また、上記の起泡剤と軟化剤液の調整(1)から、PC系の定着液14を作製した後、微小な泡生成部38で泡を作製し、未定着トナーが形成された記録媒体12の上に付与した。未定着トナーが形成された記録媒体12に塗布ローラ41上の泡状の定着液14の厚み約75μmを塗布した。後は比較例1と同様に消泡剤としてシリコーン系消泡剤KS−604(信越化学工業製)0.5%水溶液とし回収ユニット84に搬送された泡を攪拌し、消泡と凝集性能を確認した。
[比較例3]
電子写真方式のプリンタ(リコー社製、IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を記録媒体12としてのPPC用紙(リコーT−6200、A4紙)に形成させた。トナー層の厚みは20〜30μmであった。また、起泡剤と軟化剤液の調整(2)から、DCS系の定着液14を作製した後、微小な泡生成部38で泡を作製し、未定着トナーが形成された記録媒体12の上に付与した。未定着トナーが形成された記録媒体12に塗布ローラ41上の泡状の定着液14の厚み約100μmを塗布した。後は比較例1と同様に消泡剤としてシリコーン系消泡剤KS−66(信越化学工業製)0.5%水溶液とし回収ユニット84に搬送された泡を攪拌し、消泡と凝集性能を確認した。
[比較例4]
電子写真方式のプリンタ(リコー社製、IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を記録媒体12としてのPPC用紙(リコーT−6200、A4紙)に形成させた。トナー層の厚みは20〜30μmであった。また、上記の起泡剤と軟化剤液の調整(1)から、PC系の定着液14を作製した後、微小な泡生成部38で泡を作製し、未定着トナーが形成された記録媒体12の上に付与した。未定着トナーが形成された記録媒体12に塗布ローラ41上の泡状の定着液14の厚み約75μmを塗布した。後は比較例1と同様に消泡剤としてシリコーン系消泡剤KS−88P(信越化学工業製)0.5%水溶液とし回収ユニット84に搬送された泡を攪拌し、消泡と凝集性能を確認した。
[比較例5]
電子写真方式のプリンタ(リコー社製、IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を記録媒体12としてのPPC用紙(リコーT−6200、A4紙)に形成させた。トナー層の厚みは20〜30μmであった。また、起泡剤と軟化剤液の調整(2)から、DCS系の定着液14を作製した後、微小な泡生成部38で泡を作製し、未定着トナーが形成された記録媒体12の上に付与した。未定着トナーが形成された記録媒体12に塗布ローラ41上の泡状の定着液14の厚み約75μmを塗布した。後は比較例1と同様に消泡剤としてシリコーン系消泡剤SH5500(東レ製)0.5%水溶液とし回収ユニット84に搬送された泡を攪拌し、消泡と凝集性能を確認した。
[比較例6]
電子写真方式のプリンタ(リコー社製、IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を記録媒体12としてのPPC用紙(リコーT−6200、A4紙)に形成させた。トナー層の厚みは20〜30μmであった。また、起泡剤と軟化剤液の調整(2)から、DCS系の定着液14を作製した後、微小な泡生成部38で泡を作製し、未定着トナーが形成された記録媒体12の上に付与した。未定着トナーが形成された記録媒体12に塗布ローラ41上の泡状の定着液14の厚み約75μmを塗布した。なお、比較例6は消泡剤を使用せず水のみとして回収ユニット84に搬送された泡を攪拌し、消泡と凝集性能を確認した。
以下、上記の各実施例及び各比較例による試験結果を示す。ここで、消泡性の判定における○は、200mlの凝集剤添加溶液が入れられた回収ユニット84に、100mlの泡状の定着液14を滴下して、10秒後に液面が確認できた状態を意味し、×は、10秒後に液面が泡で覆われて見えない状態を意味する。また、凝集性・水分離の判定における○は、消泡性の判定と同じ状態で30秒後に液面に凝集物(スラッジ状)が浮上して下部に透明な水分に分離した状態を意味し、×は、凝集物が浮上せず、液が白濁していた状態を意味する。
以上の結果から、各比較例のシリコーン系消泡剤は、消泡効果は優れているが凝集効果は無く、液は白濁している。一方、凝集剤を用いた各実施例はほとんどが消泡作用と凝集作用において高い効果が得られた。即ち、泡状の定着液14に凝集剤を添加することにより、泡状の定着液14が凝集物と水分に容易に分離するので、その後、環境負荷を与えることなく処理が可能となる。凝集剤としては、アルミニウム塩系、鉄塩系、ポリシリカ鉄塩系、アルギン酸塩系、キチン・キトサン系、カチオン系合成高分子、アニオン系合成高分子、ノニオン系合成高分子が好適である。なお、回収ユニット84は、金属、PET樹脂、ナイロン樹脂等の材料から構成することにより、定着液を構成している軟化剤により膨潤・溶解してしまうことを防止することができる。
以上のように、本実施の形態に係る定着装置40は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂を含有する樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有した定着液に気泡を分散させて泡状の定着液14を生成する供給ユニット72と、樹脂微粒子からなる樹脂微粒子層が表面に形成された記録媒体12に泡状の定着液14を付与する塗布ローラ41と、を有し、塗布ローラ41により泡状の定着液14を記録媒体12に付与することで樹脂微粒子を軟化して記録媒体12に定着する定着装置40において、記録媒体12に付与されずに塗布ローラ41に残留した泡状の定着液14を塗布ローラ41から除去する塗布ローラクリーニングブレード81と、塗布ローラクリーニングブレード81が除去した泡状の定着液14を消泡及び固形分と水分とに分離する消泡分離部80と、を備えたことを特徴とする。
この構成により、消泡分離部80により、泡状の定着液14を消泡及び固形分と水分とに分離するので、固形分と水分とをそれぞれに適した方法で独立して処理することができる。
したがって、泡状の定着液14を用いて樹脂微粒子を軟化させて記録媒体12に定着させる構成において、定着に寄与せずに残留した泡状の定着液14を環境負荷を与えないように処理することができる。
また、本実施の形態に係る定着装置40は、消泡分離部80が、塗布ローラクリーニングブレード81により除去された泡状の定着液14を収容し、この泡状の定着液14を消泡及び固形分と水分とに分離する凝集剤を添加する回収ユニット84を有することを特徴とする。
この構成により、回収ユニット84内において、泡状の定着液14に凝集剤を添加することで、泡状の定着液14の消泡と、固形分と水分との分離の両方を行うことができるので、消泡のための装置と分離のための装置を個別に備える必要が無い。
また、本実施の形態に係る定着装置40は、消泡分離部80が、回収ユニット84内で泡状の定着液14と凝集剤とを攪拌する攪拌子85を有することを特徴とする。
この構成により、攪拌子85により泡状の定着液14と凝集剤とを攪拌することで、速やかに泡状の定着液14の消泡と、固形分と水分との分離を行うことができる。
また、本実施の形態に係る定着装置40は、消泡分離部80が、比重差とろ過分離により、泡状の定着液14を固形分と水分とに分離することを特徴とする。
この構成により、比重差とろ過分離により、高い分離度で、泡状の定着液14を固形分と水分とに分離することができる。
また、本実施の形態に係る定着装置40は、凝集剤が、アルミニウム塩系、鉄塩系、ポリシリカ鉄塩系、アルギン酸塩系、キチン・キトサン系、カチオン系合成高分子、アニオン系合成高分子及びノニオン系合成高分子からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする。
この構成により、高い消泡作用と凝集作用を得ることができる。
また、本実施の形態に係る定着装置40は、消泡分離部80が、回収ユニット84に定期的に凝集剤を供給する凝集剤供給部88を備えたことを特徴とする。
この構成により、凝集剤供給部88により回収ユニット84に凝集剤を供給することで、継続的に泡状の定着液14を消泡及び固形分と水分とに分離することができる。
また、本実施の形態に係る定着装置40は、回収ユニット84が、軟化剤に溶解しない材料から構成されることを特徴とする。
この構成により、定着液14が含有する軟化剤により回収ユニット84が溶解することを防止することができる。
また、本実施の形態に係る定着方法は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂を含有する樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有した定着液14に気泡を分散させて泡状の定着液14を生成する定着液泡状化工程と、樹脂微粒子からなる樹脂微粒子層が表面に形成された記録媒体12に塗布ローラ41により泡状の定着液14を付与する泡状定着液付与工程と、を有し、塗布ローラ41により泡状の定着液14を記録媒体12に付与することで樹脂微粒子を軟化して記録媒体12に定着する定着方法において、記録媒体12に付与されずに塗布ローラ41に残留した泡状の定着液14を塗布ローラ41から除去する除去工程と、除去工程で除去した泡状の定着液14を消泡及び固形分と水分とに分離する消泡分離工程と、を備えたことを特徴とする。
このため、消泡分離工程により、泡状の定着液14を消泡及び固形分と水分とに分離するので、固形分と水分とをそれぞれに適した方法で独立して処理することができる。
したがって、泡状の定着液14を用いて樹脂微粒子を軟化させて記録媒体12に定着させる構成において、定着に寄与せずに残留した泡状の定着液14を環境負荷を与えないように処理することができる。
また、本実施の形態に係る定着方法は、消泡分離工程が、除去工程により除去された泡状の定着液14を回収ユニット84に収容し、この泡状の定着液14を消泡及び固形分と水分とに分離する凝集剤を添加することを特徴とする。
このため、回収ユニット84内において、泡状の定着液14に凝集剤を添加することで、泡状の定着液14の消泡と、固形分と水分との分離の両方を行うことができるので、消泡のための装置と分離のための装置を個別に備える必要が無い。
また、本実施の形態に係る定着方法は、消泡分離工程が、回収ユニット84内で泡状の定着液14と凝集剤とを攪拌することを特徴とする。
このため、泡状の定着液14と凝集剤とを攪拌することで、速やかに泡状の定着液14の消泡と、固形分と水分との分離を行うことができる。
また、本実施の形態に係る定着方法は、消泡分離工程が、比重差とろ過分離により、泡状の定着液14を固形分と水分とに分離することを特徴とする。
このため、比重差とろ過分離により、高い分離度で、泡状の定着液14を固形分と水分とに分離することができる。
また、本実施の形態に係る定着方法は、凝集剤が、アルミニウム塩系、鉄塩系、ポリシリカ鉄塩系、アルギン酸塩系、キチン・キトサン系、カチオン系合成高分子、アニオン系合成高分子及びノニオン系合成高分子からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする。
このため、高い消泡作用と凝集作用を得ることができる。
また、本実施の形態に係る定着方法は、消泡分離工程が、回収ユニット84に定期的に凝集剤を供給することを特徴とする。
このため、凝集剤供給部88により回収ユニット84に凝集剤を供給することで、継続的に泡状の定着液14を消泡及び固形分と水分とに分離することができる。
また、本実施の形態に係る定着方法は、回収ユニット84が、軟化剤に溶解しない材料から構成されることを特徴とする。
このため、定着液14が含有する軟化剤により回収ユニット84が溶解することを防止することができる。