はじめに、本発明の原理について概説すると、本発明は、図1に示すように、後述する泡状定着液生成手段によって定着液を泡で構成された泡状定着液14とすることで、定着液のカサ密度を低くできると共に塗布ローラ11上の定着液層を厚くすることができ、更には定着液の表面張力による影響が抑えられるため、塗布ローラ11への樹脂含有微粒子のオフセットを防止できることがわかった。更に、樹脂含有微粒子の大きさが5μm〜10μm程度の場合、樹脂含有微粒子層13を乱すことなく泡状定着液14を樹脂含有微粒子層13に付与するには、泡状定着液14の泡径範囲が、5μm〜50μm程度が必要であることがわかった。なお、図2に示すように、気泡22で構成された泡状定着液20は、気泡22のそれぞれを区切る液膜境界(以下、プラトー境界と称す)21から構成される。
一方、一般的に0.5mm〜1mm程度の大きな泡の場合、単なる撹拌等により比較的容易に泡を生成可能であり、大きな泡の生成には数秒以下の時間(0.1秒もかからない)で生成することができる。そこで、この所望の泡径よりも大きな泡であって、目視で観察できる程度の大きさの泡の生成が容易で、かつすばやく得ることができる点に着目し、大きな泡から素早く5μm〜50μm程度の微小な泡を生成する方法を鋭意検討した結果、大きな泡にせん断力を加えることで大きな泡を分泡すると、上記のような液状態から微小な泡を起泡させる方法に比べ、極めて素早く所望の大きさの微小な泡が生成できることがわかった。
図3は本発明の一実施の形態に係る定着装置における泡状定着液生成部の構成を示す概略図である。同図に示す本実施の形態の定着装置における泡状定着液生成部30における定着液容器31に収納された定着液32は、流量制御を可能とする搬送ポンプ33及び液搬送パイプ34等の液輸送手段を用いて気体・液体混合部35へ供給される。定着液容器31は軟化剤により軟化又は膨潤しない微粒子36を定着液中に分散させるための分散装置37を備えている。分散装置37は、定着液32が泡立たない程度に定着液容器31を微少振動させることが可能であり、定着液容器中の微粒子36を定着液中にて十分に分散させることが可能である。この分散装置の構成に限らず、液面に水平な中心軸に対して回転可能な定着液容器をモータにより回転させ、液内に生じる遠心力により分散させる構成、ならびに定着液容器中に攪拌子を導入し、マグネットスターラにより液中微粒子を分散させる構成も望ましい。そして、気体・液体混合部35には、空気口38が設けられ、液の流れとともに、空気口38に負圧が発生し、空気口38から気体が気体・液体混合部35に導入され、液体と気体が混合し、更に微小孔シート39を通過することで、泡径の揃った大きな泡を生成させることができる。孔径は、30μm〜100μm程度が望ましい。図3の微小孔シート39に限らず、連泡構造の多孔質部材であればよく、孔径30μm〜100μm程度を有する焼結セラミックス板や不織布や発泡樹脂シートであってもよい。また、別の大きな泡の生成方法としては、上記の搬送ポンプより供給された液状定着液と空気口からの空気を羽根状攪拌子で攪拌しながら、液に気泡を巻き込みながら大きな泡を生成させる構成や、上記の搬送ポンプより供給された液状定着液に空気供給ポンプ等でバブリングを行い大きな泡を生成する構成も望ましい。
次に、大きな泡を分割して2つ以上に分泡化するために、大きな泡にせん断力を加えるための、図3に示すような泡状定着液生成手段30における微小な泡生成部40として、閉じた二重円筒で、内側円筒が回転可能な構成とし、外部円筒の一部より、大きな泡状定着液を供給し、内部の回転する円筒と外部円筒の隙間(ここが流路となる)を通過しながら、回転円筒によりせん断力を受ける。このせん断力により、大きな泡は微小な泡へと変化し、外側円筒に設けられた泡の出口より、所望の微小な泡径を有する泡状定着液を得ることができる。
また、回転する内側円筒の回転数と内側円筒の長手方向の長さにより液搬送速度は決定される。外側円筒内径をd1(mm)、円筒長さがL(mm)とし、内側円筒外径をd2(mm)とし、回転数をR(rpm)とすると、微小な泡を生成するための液搬送速度V(mm3/秒)は、下記の式(1)で決まることがわかった。
V=L×π×(d12−d22)/4/(1000/R)・・・(1)
例えば、d1が10mm、d2が8mm、Lが50mm、回転数が1000rpmとすると、液搬送速度は約1400mm3/秒(1.4cc/秒)となる。A4の紙を定着するために必要な泡状定着液が3ccであるとすると、液状定着液から必要量の泡状定着液を生成するのに立上り時間は約2秒ですみ、極めて素早く、所望の泡径を有する泡状定着液を生成可能となる。内側円筒にらせん状の溝を設けて、円筒内での液搬送性をよくしてもよい。
このように、液状定着液を大きな泡径を有する液へと変化させる大きな泡生成部と、大きな泡にせん断力を加えて微小な泡を生成する微小な泡生成部を組み合わせることで、液状定着液を極めて短時間に5μmから50μm程度の微小な泡径を有する泡状定着液を生成させることができる。
図4は本実施の形態の定着装置における泡状定着液生成部の別の構成を示す概略図である。同図に示す泡状定着液生成部30によれば、定着液を収納する定着液容器31に空気口41が設けられ、エアポンプ42によって空気口41から空気を定着液容器内に注入して定着液32をバブリングさせることにより定着液中の微粒子36を定着液中において分散させることが可能であり、かつ大きな泡を生成させることができる。定着液中に浸漬した空気口41の先端は、ストロー形状や、連泡構造の多孔質部材を具備していることが望ましく、また空気口41が複数設けられている構成も望ましい。バブリングによって生成した大きな泡は搬送ポンプ等を介することなく、液搬送パイプ34を移動する。エアポンプ42としては、定着液中にてバブリングを生じさせ、発泡させる程度の吐出圧力を有するものならば何れでも良いが、ガス圧縮による圧力ならびに流量の脈動を防ぐために、圧力センサ、パルスダンパ等を具備した脈流の少ないポンプが好適である。
次に、本発明の定着装置における定着液付与手段について説明する。
図5は本発明の定着装置における定着液付与手段の一例を示す概略構成図である。ここで、本発明における樹脂含有微粒子はトナー粒子である。同図の(a)に示す定着液付与手段40は、上述した泡状定着液生成手段30によって生成された所望の微小な泡の泡状定着液を樹脂含有微粒子層(トナー粒子層)へ付与するための塗布ローラ51と、塗布ローラ面に所望の微小な泡の泡状定着液の膜厚を制御し、泡状定着液の最適な膜厚の制御を行う膜厚制御用ブレード52と、塗布ローラ51と対峙する位置に加圧ローラ53とを具備している。なお、塗布側もしくは加圧側の少なくとも一方をベルト構成とすることで容易にニップ幅を広くすることも可能であり、紙にしわが発生するような無理な力をかけることもなくなり、ニップ時間が同じであるとすると紙の搬送速度を速くすることが可能であり、高速定着が可能となる。同図の(b)に示すように、塗布ローラ51上には泡状定着液の層が膜厚制御用ブレード52を通して形成されており、この膜厚制御用ブレード52によって未定トナーを形成する画像の画像情報に基づく泡状定着液の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間に対して最適化した定着液層の膜厚となる。同図に示す定着液付与手段50によって付与された泡状定着液を用いることにより、樹脂含有微粒子は塗布ローラ上にオフセットしない。仮に、泡状の定着液は、樹脂含有微粒子層及び記録媒体に厚く付与されたとしても、泡状の定着液のかさ密度が極めて低いため、所定の泡沫時間経過後に含有している気泡が破泡することで、軟化剤を含有した液体の樹脂含有微粒子層への微量付与とすることができる。所望の微小な泡の泡状定着液は、上記のように、大きな泡を生成する大きな泡生成部と大きな泡をせん断力で分泡して微小な泡を生成する微小な泡生成部とを含んで構成されている泡状定着液生成手段30で生成され、液供給口より膜厚制御用ブレード52と塗布ローラ51の間に滴下される。
なお、加圧ローラ53には、弾性多孔質体(以下、スポンジと記す)を用いることでニップ幅を変えることが容易となる。スポンジの代わりに弾性ゴムも適するが、スポンジは弾性ゴムよりも弱い力で変形させることが可能であり、塗布ローラ51の加圧力を過剰に高くすることなく長いニップ幅を確保することができる。なお、定着液中には樹脂軟化または膨潤剤が含有されており、スポンジの加圧ローラ53に定着液が万が一付着した場合、スポンジ素材が軟化等の不具合が発生する恐れがあるため、スポンジ素材の樹脂材は、該軟化または膨潤剤に対し軟化や膨潤を示さない素材が望ましい。また、スポンジの加圧ローラ53は、可撓性フィルムで覆った構成であってもよい。スポンジ素材が該軟化または膨潤剤で劣化する素材であっても、軟化または膨潤剤により軟化や膨潤を示さない可撓性フィルムで覆うことでスポンジの加圧ローラ53の劣化を防止することができる。スポンジ素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどの樹脂の多孔質体などが適する。また、スポンジを覆う可撓性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、四フッ化エチレン・バーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが適する。
また、図5において、塗布ローラ51とスポンジの加圧ローラ53が常時接触している構成の場合、紙が搬送されていない時に塗布ローラ上の泡状定着液がスポンジの加圧ローラ53に付着し汚す恐れがあり、その防止のため、紙先端検知手段(図示せず)を塗布ローラ51へ紙が搬送される手前に設け、紙先端検知信号に応じて、紙の先端から後方にのみ定着液が塗布されるようなタイミングで塗布ローラ51に泡状定着液を形成することが望ましい。
更に、図5において、図示していない駆動機構により、待機時は塗布ローラ51とスポンジの加圧ローラ53は離れ、塗布時のみ紙の紙先端検知手段に応じて塗布ローラ51とスポンジの加圧ローラ53を接触させる構成も望ましい。この場合、紙の後端検知も行い、紙後端検知信号に応じて塗布ローラ51とスポンジの加圧ローラ53を離すことが望ましい。
なお、泡状の定着液のかさ密度としては、0.01g/cm3〜0.1g/cm3程度の範囲が望ましい。更に、定着液は、紙等の記録媒体上のトナー等の樹脂含有微粒子層への塗布時に泡状となっていればよく、保存容器内で泡状である必要はない。保存容器中では気泡を含有しない液体で、容器から液を供給する時点や、樹脂含有微粒子層へ付与するまでの液搬送経路で泡状にする手段を設ける構成が望ましい。これは、保存容器では液体で、容器から液を取り出した後に泡状とする構成のほうが、容器の小型化ができるという大きな利点を有するためである。
また、泡状定着液の塗布ローラ上での膜厚制御は、図6に示すように、塗布ローラ51とギャップを設けた膜厚制御用ブレード52を用い、図6の(a)に示すように膜厚を薄くするときはギャップを狭くし、図6の(b)に示すように膜厚を厚くするときはギャップを広くする。ギャップの制御は膜厚制御用ブレード52の端部に駆動を有する回転軸を用い、トナー層の厚さや環境温度等、更には泡状定着液の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間を調整するための最適な膜厚を制御する。
次に、定着液容器から液状定着液を泡化する機構に搬送する手段としては、図3では搬送ポンプを用いている。搬送ポンプとしては、ギヤポンプ、ベローズポンプ等があるが、チューブポンプが望ましい。ギヤポンプ等ごとく定着液中で振動機構や回転機構があると、ポンプ内で液が起泡し、液に圧縮性が出て、搬送能力が低下する恐れがある。また、上記の機構部品等が定着液を汚染したり、逆に機構部品を劣化させる恐れがある。一方、チューブポンプは、チューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であるため、定着液と接する部材はチューブだけであり、定着液に対し耐液性を有する部材を用いることで、液の汚染やポンプ系部品の劣化がない。また、チューブを変形させるだけなので、液が起泡せず、搬送能力の低下を防止できる。
また、図6の膜厚制御用ブレード52の他に、図7に示す膜厚制御用ワイヤバー54によって塗布ローラ51上の泡状定着液の膜厚を制御し、泡状定着液は、上記のように、大きな泡を生成する構成とその大きな泡をせん断力で分泡する構成からなる手段で生成し、液供給口より、膜厚制御用ワイヤバー54と塗布ローラ51の間に滴下する。膜厚制御用ワイヤバー54を膜制御手段として用いることで、膜厚制御用ブレードに比べ、塗布ローラ面の軸方向の泡状定着液膜均一性が向上する。
次に、定着液の液処方について説明する。泡状の定着液は、上述したように、軟化剤を含有した液体中に気泡を含有した構成である。軟化剤を含有した液体は、気泡を安定に含有し、なるべく均一な気泡の大きさからなる気泡層を構成する泡状とするため、起泡剤及び増泡剤を有することが望ましい。また、ある程度粘度が高いほうが、気泡が安定して液体中に分散するため、増粘剤を含有することが望ましい。
また、起泡剤としては、陰イオン界面活性剤、特に、脂肪酸塩が望ましい。脂肪酸塩は界面活性を有するため、水を含有する定着液の表面張力を下げ、定着液を発泡しやすくするとともに、泡表面で脂肪酸塩が層状ラメラ構造をとるため泡壁(プラトー境界)が他の界面活性剤よりも強くなり、泡沫安定性が極めて高くなるまた、脂肪酸塩の起泡性を効果的にするため、定着液には水を含有することが望ましい。脂肪酸としては、大気中での長期安定性の観点から酸化に強い飽和脂肪酸が望ましい。但し、飽和脂肪酸塩を含有する定着液に若干の不飽和脂肪酸塩を含有することで脂肪酸塩の水に対する溶解・分散性を助け、5℃〜15℃までの低気温において、優れた起泡性を有することができ、広い環境温度範囲において定着の安定を可能とし、また、定着液長期放置中の脂肪酸塩の定着液中分離を防止することができる。
更に、飽和脂肪酸塩に用いる脂肪酸としては、炭素数12、14、16及び18の飽和脂肪酸、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が適する。炭素数が11以下の飽和脂肪酸塩は臭気が大きくなり、当該定着液を用いるオフィス・家庭で用いる画像形成機器に適さない。また、炭素数19以上の飽和脂肪酸塩は、水に対する溶解性が低下し、定着液の放置安定性を著しく低下させてしまう。これらの飽和脂肪酸による飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。
また、不飽和脂肪酸塩を用いてもよく、炭素数18で2重結合数が1から3の不飽和脂肪酸が望ましい。具体的には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が適する。2重結合が4以上では反応性が強いため、定着液の放置安定性が劣ってしまう。これらの不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。また、上記飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩を混合して起泡剤として用いても構わない。
更に、上記飽和脂肪酸塩又は不飽和脂肪酸塩において、当該定着液の起泡剤として用いる場合、ナトリウム塩、カリウム塩もしくはアミン塩であることが望ましい。定着装置に電源を投入後、素早く定着可能な状態にすることは定着装置の商品価値として重要な要素である。定着装置において定着可能な状態とするためには、定着液が適切な泡状となっていることが必須であるが、上記の脂肪酸塩は素早く起泡することで、電源投入後定着可能な状態を短時間でつくることができる。特に、アミン塩とすることで、定着液にせん断力を加えたときに最も短時間で起泡し、泡状定着液を容易に作製することが可能であり、定着装置への電源投入後の定着可能な状態を最も短時間でつくることができる。
樹脂を溶解又は膨潤することで軟化させる軟化剤は、脂肪族エステルを含む。この脂肪族エステルは、トナー等に含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる溶解性又は膨潤性に優れている。
また、軟化剤については、人体に対する安全性の観点から、その急性経口毒性LD50が3g/kgよりも大きい、更に好ましくは5g/kgであることが好ましい。脂肪族エステルは、化粧品原料として多用されているように、人体に対する安全性が高い。
更に、記録媒体に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、軟化剤はトナーの記録媒体への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。すなわち、軟化剤は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し、刺激臭を持たない。
なお、オフィス環境等における臭気を高い精度で測定することができる実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数(10×log(物質の臭気が感じられなくなるまでの物質の希釈倍率))を臭気の指標とすることができる。また、軟化剤に含まれる脂肪族エステルの臭気指数は、10以下であることが好ましい。この場合には、通常のオフィス環境では、不快臭を感じなくなる。更に、軟化剤のみならず、定着液に含まれる他の液剤も同様に、不快臭及び刺激臭を有さないことが好ましい。
本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族エステルは、飽和脂肪族エステルを含む。上記の脂肪族エステルが、飽和脂肪族エステルを含む場合には、軟化剤の保存安定性(酸化、加水分解などに対する耐性)を向上させることができる。また、飽和脂肪族エステルは、人体に対する安全性が高く、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内で溶解又は膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解又は膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
よって、本発明における定着液において、好ましくは、上記の飽和脂肪族エステルの一般式は、R1COOR2で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型アルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の飽和脂肪族エステルが、一般式R1COOR2で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、上記の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルの多くについては、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
また、本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができる。例えば、60ppm程度の高速印字では、記録媒体における未定着のトナーに定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するまでの時間は、1秒以内であることが望ましい。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、記録媒体における未定着のトナー等に定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するのに要する時間を、0.1秒以内にすることが可能となる。更に、より少量の、軟化剤の添加によって、トナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができるため、定着液に含まれる、軟化剤の含有量を低減することができる。
よって、本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族ジカルボン酸エステルの一般式は、R3(COOR4)2で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の脂肪族ジカルボン酸エステルが、一般式R3(COOR4)2で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記の化合物である脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、コハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
更に、本発明における定着液において、好ましくは上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの一般式は、R5(COOR6−O−R7)2で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式R5(COOR6−O−R7)2で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記の化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
また、脂肪酸エステルではないが、クエン酸エステルや炭酸エチレンや炭酸プロピレンも軟化もしくは膨潤剤として適する。
定着液中に含有される、軟化剤により軟化又は膨潤しない微粒子は、定着液中において軟化、溶解及び膨潤しない粒子であれば何れでも良く、Al2O3、ZrO、TiO2、Fe2O3、ZnOなどの金属酸化物、SiO2や、脂肪族エステルによって軟化又は膨潤しない高分子材料、例えば、PP、PC、PET、POM、PEEKなどが好適である。また、定着液中ならびに泡状定着液中での微粒子の分散を容易とするため、微粒子のかさ密度が1g/ml以下であることが望ましい。
また、樹脂微粒子の粒径が5〜10μm、軟化剤により溶解又は膨潤しない微粒子の径は3〜20μmとすると、図8の(a)に示すように、軟化剤により軟化又は膨潤しない微粒子の粒径は樹脂微粒子の空隙間よりも大きく、微粒子が樹脂微粒子層の表層部に残存し、樹脂微粒子層上の接触界面積が減少することで記録媒体上の樹脂のタック力を軽減させることが可能になる。更に、定着液付与後フィルム化した樹脂微粒子層厚みが30〜40μm、軟化剤により溶解又は膨潤しない微粒子の径が50〜100μmとすると、図8の(b)に示すように、軟化剤により溶解又は膨潤しない微粒子が、少なくともフィルム化した樹脂微粒子層の表層部に露出し、樹脂微粒子層上の接触界面積が減少することで記録媒体上の樹脂のタック力を軽減させることが可能になる。
ところで、泡状定着液において、塗布接触ニップ部にてトナー等の微粒子層に泡状定着液を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。そこで泡沫安定性に優れる泡が求められる。このため、定着液中に脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有することが望ましい。脂肪酸アルカノールアミドには(1:1)型と(1:2)型があるが、本発明における泡沫安定性には(1:1)型が適することがわかった。
なお、定着の対象となる樹脂を含有する微粒子は、トナーに限定されず、樹脂を含有する微粒子であれば何れでもよい。例えば、導電性部材を含有した樹脂含有微粒子でもよい。また、記録媒体は、記録紙に限定されず、金属、樹脂、セラミックス等何れでもよい。但し、媒体は定着液に対し浸透性を有することが望ましく、媒体基板が液浸透性を持たない場合は、基板上に液浸透層を有する媒体が望ましい。記録媒体の形態もシート状に限定されず、平面及び曲面を有する立体物でもよい。
例えば、紙のごとき媒体に透明樹脂微粒子を均一に定着させ紙面を保護する(所謂、ニスコート)用途においても、本発明は適用できる。
上記の樹脂を含有する微粒子のうち、電子写真プロセスで用いるトナーは、本発明の定着液との組合せにおいて最も定着への効果が高い。トナーは、色剤と帯電制御剤と結着樹脂や離型剤などのような樹脂を含む。トナーに含まれる樹脂は、特に限定されないが、好適な結着樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、離型剤としては、例えばカルバナウワックスやポリエチレンなどのワックス成分などが挙げられる。トナーは、結着樹脂の他に、公知の着色剤、電荷制御剤、流動性付与剤、外添剤などを含んでもよい。また、トナーは、メチル基を有する疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子をトナーの粒子の表面に固着させることによって、撥水性処理されていることが好ましい。媒体のうち、記録媒体は、特に限定されず、例えば、紙、布、及び液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。本発明における油性とは、室温(20℃)における水に対する溶解度が、0.1重量%以下である性質を意味する。
また、泡状となった定着液は、好ましくは、撥水性処理されたトナーの粒子に対して、十分な親和性を有することが望ましい。ここで、親和性とは、液体が固体に接触したときに、固体の表面に対する液体の拡張濡れの程度を意味する。すなわち、泡状となった定着液は、撥水性処理されたトナーに対して十分な濡れ性を示すことが好ましい。疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子で撥水性処理されたトナーの表面は、疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンの表面に存在するメチル基によって覆われており、おおよそ20mN/m程度の表面エネルギーを有する。現実には撥水性処理されたトナーの表面の全面が疎水性微粒子によって完全に覆われてはいないため、撥水性処理されたトナーの表面エネルギーは、おおよそ、20〜30mN/mであると推測される。よって、撥水性トナーに対して親和性を有する(十分な濡れ性を有する)ためには、泡状となった定着液の表面張力は、20〜30mN/mであることが好ましい。
水性溶媒を用いる場合、界面活性剤を添加することで、表面張力を20〜30mN/mとすることが好ましい。また、水性溶媒の場合、単価もしくは多価アルコールを含有していることが望ましい。これらの材料は、泡状の定着液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする利点を有する。例えばセタノールなどの単価アルコールや、グリセンリン、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコールなどの多価アルコールが望ましい。また、これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
また、定着液中に浸透性改善や紙等媒体のカール防止のために油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成も望ましく、その場合、具体的な分散剤としては、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステルなどが望ましい。
なお、定着中での軟化剤を溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させるため方法としては、例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、及び超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段が挙げられる。いずれにしても、強いせん断応力を定着液中の軟化剤に加えることで溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させる。
また、トナーの定着装置は、本発明における定着液をトナーに供給した後、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)によって溶解又は膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を有してもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、溶解又は膨潤したトナーを加圧することによって、溶解又は膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、記録媒体内へ溶解又は膨潤したトナーを押し込むことによって、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
上述した本発明による画像形成方法を用いて、樹脂を含むトナーの画像を記録媒体に形成する。よって、この別の発明の一実施の形態例の画像形成装置によれば、それぞれ、上述したように、より効率的にトナーを記録媒体に定着させることが可能な画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
図9は別の発明の画像形成装置の構成を示す概略図である。同図に示す画像形成装置は複写機又はプリンタであってもよい。図9の(a)はカラー電子写真のタンデム方式の画像形成装置全体の概略図であり、図9の(b)は図9の(a)の画像形成装置の1つの画像形成ユニットの構成を示す図である。図9の(a),(b)に示す画像形成装置100はトナー像担持体として中間転写ベルト101を有する。この中間転写ベルト101は、3つの支持ローラ102〜104に張架されており、図中の矢印Aの方向に回転する。この中間転写ベルト101に対しては、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成ユニット105〜108が配列されている。これら画像形成ユニットの上方には、図示していない露光装置が配置されている。例えば、画像形成装置が複写機である場合には、スキャナで原稿の画像情報を読み込み、この画像情報に応じて、各感光体ドラム上に静電潜像を書き込むための各露光L1〜L4が露光装置により照射される。中間転写ベルト101を挟んで中間転写ベルト101の支持ローラ104に対向する位置には、二次転写装置109が設けられている。二次転写装置109は、2つの支持ローラ110,111の間に張架された二次転写ベルト112で構成されている。なお、二次転写装置109としては、転写ベルト以外に転写ローラを用いてもよい。また、中間転写ベルト101を挟んで中間転写ベルト101の支持ローラ102に対向する位置には、ベルトクリーニング装置113が配置されている。ベルトクリーニング装置113は、中間転写ベルト101上に残留するトナーを除去するために配置されている。
記録媒体としての記録紙114は、一対の給紙ローラ115で二次転写部へ導かれ、トナー像を記録紙114に転写する際に、二次転写ベルト112を中間転写ベルト101に押し当てることによって、トナー像の転写を行う。トナー像が転写された記録紙114は、二次転写ベルト112によって搬送され、記録紙114に転写された未定着のトナー像は、図示していない露光装置からの画像情報に基づいて泡状の定着液の膜厚を制御する本発明の定着装置によって定着される。すなわち、記録紙104に転写された未定着のトナー像には、図示していない露光装置からの画像情報、例えばカラー画像又は黒ベタ画像に基づいて泡状の定着液層の膜厚が制御されたトナーの定着装置から供給される本発明における泡状の定着液が付与され、泡状の定着液に含まれる、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)によって、未定着のトナー像を、記録紙114に定着させる。
次に、画像形成ユニットについて説明する。図9の(b)に示すように、画像形成ユニット105〜108には、感光体ドラム116の周辺に、帯電装置117、現像装置118、クリーニング装置119及び除電装置120が配置されている。また、中間転写ベルト101を介して、感光体ドラム116に対向する位置に、一次転写装置121が設けられている。また、帯電装置117は、帯電ローラを採用した接触帯電方式の帯電装置である。帯電装置117は、帯電ローラを感光体ドラム116に接触させて、感光体ドラム116に電圧を印加することにより、感光体ドラム116の表面を一様に帯電する。この帯電装置117としては、非接触のスコロトロン等を採用した非接触帯電方式の帯電装置を採用することもできる。また、現像装置118は、現像剤中のトナーを感光体ドラム116上の静電潜像に付着させ、静電潜像を可視化させる。ここで、各色に対応するトナーは、それぞれの色に着色された樹脂材料からなり、これらの樹脂材料は、本発明における定着液により溶解又は膨潤する。なお、現像装置118は、図示しない攪拌部及び現像部を有し、現像に使用されなかった現像剤は、攪拌部に戻され、再利用される。攪拌部におけるトナーの濃度は、トナー濃度センサによって検出され、トナーの濃度が、一定であるように制御されている。更に、一次転写装置121は、感光体ドラム116上で可視化されたトナーを中間転写ベルト101に転写する。ここでは、一次転写装置121としては、転写ローラを採用しており、転写ローラを、中間転写ベルト101を挟んで感光体ドラム116に押し当てている。一次転写装置121としては、導電性ブラシ、非接触のコロナチャージャー等を採用することもできる。また、クリーニング装置119は、感光体ドラム116上の不要なトナーを除去する。クリーニング装置119としては、感光体ドラム116に押し当てられる先端を備えたブレードを用いることができる。ここで、クリーニング装置119によって回収されたトナーは、図示しない回収スクリュー及びトナーリサイクル装置によって、現像装置118に回収され、再利用される。更に、除電装置120は、ランプで構成されており、光を照射して感光体ドラム116の表面電位を初期化する。
次に、本発明における定着液及び定着の具体例について説明する。
本発明における以下の具体例では、樹脂含有微粒子としてトナーを用い、以下の製造方法の一例により作製した。
[具体例1]
<定着液の第1の処方>
軟化剤:コハク酸ジカルビトール(高級アルコール工業(株)、試薬)
25.0wt%
希釈溶媒:イオン交換水 69.9wt%
増泡剤:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂 マーポンMM)
0.50wt%
起泡剤:パルミチン酸アミン 2.5wt%
ミリスチン酸アミン 1.5wt%
ステアリン酸アミン 0.5wt%
軟化剤により軟化又は膨潤しない微粒子:タルク((株)石澤研究所)
0.1wt%
<定着液の第2の処方>
軟化剤:コハク酸ジカルビトール(高級アルコール工業(株)、試薬)
30.0wt%
希釈溶媒:イオン交換水 64.9wt%
増泡剤:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂 マーポンMM)
0.50wt%
起泡剤:パルミチン酸アミン 2.5wt%
ミリスチン酸アミン 1.5wt%
ステアリン酸アミン 0.5wt%
軟化剤により軟化又は膨潤しない微粒子:タルク((株)石澤研究所)
0.1wt%
<定着液の第3の処方>
軟化剤:コハク酸ジカルビトール(高級アルコール工業(株)、試薬)
25.0wt%
希釈溶媒:イオン交換水 70.0wt%
増泡剤:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂 マーポンMM)
0.50wt%
起泡剤:パルミチン酸アミン 2.5wt%
ミリスチン酸アミン 1.5wt%
ステアリン酸アミン 0.5wt%
<定着液の第4の処方>
軟化剤:コハク酸ジカルビトール(高級アルコール工業(株)、試薬)
30.0wt%
希釈溶媒:イオン交換水 65.0wt%
増泡剤:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂 マーポンMM)
0.50wt%
起泡剤:パルミチン酸アミン 2.5wt%
ミリスチン酸アミン 1.5wt%
ステアリン酸アミン 0.5wt%
脂肪酸アミンは、脂肪酸とジエタノールアミンにより脂肪酸アミンを合成した。タルクの径は約10〜60μm程度、かさ密度は0.55g/mlであった。1000メッシュ(目開き20μm)及び1500メッシュ(目開き10μm)のJIS標準ふるい(大生工業株式会社製)を用いて、約10μmのタルクを分級した後、使用した。
<塗布装置>
◇大きな泡生成部
図4を基に作成した。
上記の定着液保存容器:PET樹脂からなるボトル
搬送流路及び空気口:内径2mmのシリコーンゴムチューブ
エアポンプ:電磁式エアポンプ(榎本マイクロポンプ製作所 MV−10H)
◇微小な泡生成部
図4を基に作製した。
2重円筒の内側円筒は、回転軸に固定され、図示していない回転駆動モータにより回転する。2重円筒の材質は、PET樹脂とした。外側円筒内径:10mm・長さ120m、内側円筒外径:8mm・長さ100mmとした。回転数は、1000rpmとした。
◇定着液付与手段
図5を基に作製した。上記の微小な泡を生成する微小な泡生成部を用い、泡状の定着液を作成し、膜厚制御用ブレードに供給する構成とした。膜厚制御用ブレードと塗布ローラとのギャップは38μmとした。
加圧ローラ:アルミ合金製ローラ(φ10mm)を芯金とし、外径Φ50mmのポリウレタンフォーム材(イノアック社商品名「カラーフォームEMO」)を形成した。
塗布ローラ:PFA樹脂を焼付け塗装したSUS製ローラ(φ30mm)
膜厚制御用ブレード:アルミ合金製支持板に厚み1mmの並板ガラスを接着した。ガラス面を塗布ローラ側に向け、10μm〜100μmの範囲で塗布ローラとガラス面の隙間を制御できるようにした。
紙搬送速度:300mm/s
微小な泡状定着液を、上述した方法で未定着トナーが形成された紙の上に付与した。トナー径はおよそ5μmであり、未定着トナーが付与された紙については、電子写真方式のプリンタ(株式会社リコー製、imagio MPC2500)を用い、未定着トナーのカラー画像をPPC用紙(株式会社リコー製、T−6200)に形成した。この際、トナー層の厚みは30μm〜40μmであり、塗布ローラ上の厚みは70μmであった。
<オフセットの評価>
泡状定着液塗布直後の塗布ローラ上にトナーがオフセットしていないかを目視で観察し、下記評価基準で評価した。評価結果を下記の表1に示す。
〔評価基準〕
トナーが塗布ローラ上にオフセットしていない場合(オフセットなし):○
トナーが塗布ローラ上に微量オフセットしている場合:△
トナーが塗布ローラ上にオフセットしている場合(オフセットあり):×
トナーが塗布ローラ上にオフセットし、かつ紙上の画像が欠損している場合:××
<記録媒体上トナーのタック力評価>
記録媒体上トナーのタック力を、タッキネステスタ(株式会社レスカ製)を用いて評価した。定着性評価と同様のサンプルにおいて、泡状定着液塗布後の画像部(記録媒体上トナー)に円柱形ステンレスプローブ(φ8.0mm)を圧縮荷重100gfで20sec押付けた後、120mm/minの速度で引抜き、引抜き時にかかる応力を測定し、下記評価基準で評価した。評価結果を下記の表1に示す。
〔評価基準〕
0.0〜4.0kPa:○(非画像部と同等、又はタックほぼ無し)
4.1〜10.0kPa:×(タック小)
10.1kPa以上:××(タック大)
上記表1より、定着液の第3の処方及び第4の処方と比較して、第1の処方及び第2の処方のタック力は小さく、軟化剤により軟化及び膨潤しない微粒子(微粒子径は、樹脂微粒子層の空隙間よりも大きい)を定着液中に含有させることにより、タック力が軽減することが示された。
[具体例2]
定着液処方は具体例1と同様、定着液の第1〜第4の処方の組成になるように作成した。脂肪酸アミンは、脂肪酸とジエタノールアミンにより脂肪酸アミンを合成した。タルクの径は約10〜60μm程度、かさ密度は0.55g/mlであった。325メッシュ(目開き50μm)のJIS標準ふるい(大生工業株式会社製)を用いて、約50μmのタルクを分級した後、使用した。なお、塗布装置、オフセットの評価方法、記録媒体上のタック力評価方法は、具体例1と同様とする。評価結果を下記の表2に示す。
上記表2より、定着液の第3の処方及び第4の処方と比較して、第1の処方及び第2の処方のタック力は小さく、軟化剤により軟化及び膨潤しない微粒子(微粒子径は、フィルム化した樹脂微粒子層厚みよりも大きい)を定着液中に含有させることにより、タック力が軽減することが示された。
なお、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。