はじめに、本発明の定着装置における背景及び原理について概説する。
pHが7以上9以下の状態で最も起泡性に優れるアニオン系界面活性剤、特に脂肪酸塩を含有した水性の液と、エステル基を有する軟化剤を含有した水性の液を混合しておくと、長期の保存中に、軟化剤が加水分解により化学的に分解するという問題があった。そこで、この問題の解決手段として、保存容器中では、起泡剤を含有した水性液(pH=7)と軟化剤を含有した水性液を独立した状態で保存し、容器内もしくは定着装置内にて、定着装置稼動とともにこれらの水性液を混合して、直ちに泡化してフォーム状定着液を作製し、媒体に付着した未定着のトナーなどの樹脂微粒子層に付与する方法が考えられる。なお、起泡剤を含有する液中に、軟化剤の分解促進剤を含有する液を混在させない理由は、アニオン系界面活性剤のエステル基を分解してしまう加水分解酵素を用いるからである。
ここで、本発明を適用する泡状定着液について概説すると、図1に示すように、後述する泡状定着液生成手段によって定着液を泡で構成された泡状定着液14とすることで、定着液のカサ密度を低くできると共に図1の塗布ローラ11上の定着液層を所望の層厚で厚くすることができ、更には定着液の表面張力による影響が抑えられるため、塗布ローラ11への樹脂含有微粒子13のオフセットを防止できることがわかった。更に、樹脂含有微粒子13の大きさが5μm〜10μm程度の場合、記録媒体12上の樹脂含有微粒子層を乱すことなく泡状定着液14を樹脂含有微粒子層に付与するには、泡状定着液14の泡径範囲が5μm〜50μm程度必要であることがわかった。なお、図2に示すように、気泡22で構成された泡状定着液20は気泡22のそれぞれを区切る液膜境界(以下、プラトー境界と称す)21から構成される。
ところで、泡状定着液の起泡剤としては、界面活性剤の中でもアニオン系界面活性剤が、優れた起泡性と泡沫安定性を実現することができる。特にアニオン系界面活性剤の中でも、脂肪酸塩は、最も泡沫安定性に優れ、定着液の起泡剤として最も適する。一方、軟化剤は、消泡作用が強く、定着液中で軟化剤の濃度上昇と共に、定着液の起泡性及び泡沫安定性が悪くなり、なかなか起泡しなくなり、泡が直ぐに破泡するため泡密度の低い泡状定着液を得ることができなくなる。
そこで、この定着液中の軟化剤濃度を高めたときの起泡性劣化問題を解決するため、アニオン系界面活性剤の種類や濃度を因子として多種の試作を行った。また、非特許文献1にも記載されている「スーパーファット」と呼称される技術、つまり固形洗浄剤(石鹸)に含有されている遊離脂肪酸に着目して試作を行った。ここで、スーパーファットと呼称される技術について概説すると、酸化されにくい遊離脂肪酸を少量加え、過剰油脂分を増やす方法であり、ケン化されない油脂を少量分残すことによって、例えば保湿作用を高めるなどの効果があるとされている。非特許文献1には、石鹸水溶系に極少量の脂肪酸を添加すると、起泡性能が向上する上、泡質が一層クリーミィになることが知られており、スーパーファットソープと呼ばれていると記載されている。このスーパーファットと同様に軟化剤を有する定着液に極少量の脂肪酸を添加して泡化しようとしたが起泡性及び泡沫安定性のいずれも悪かった。
ところが、後述するように、本発明によれば、樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させることで樹脂を含有する微粒子を軟化させる軟化剤と、希釈溶媒と、軟化剤の分解促進剤を、使用する直前に混合することに特徴がある。これにより、粘着感(タック感)のない定着画像を提供できることを見出したのである。ここで、本発明の泡状定着液を詳細に説明すると、軟化剤を含有した定着液において、単に水を起泡する場合に比較して、脂肪酸塩の炭素数としては、12から18が起泡性に優れている。具体的には、ラウリン酸塩(炭素数12)、ミリスチン酸塩(炭素数14)、パルミチン酸塩(炭素数16、)、ステアリン酸塩(炭素数18)が適する。また、ペンタデシル酸(炭素数15)、マルガリン酸(炭素数17)なども適する。一方、脂肪酸と軟化剤との作用について説明すると、軟化剤はエステル基を化学構造中に有しており、脂肪酸はカルボニル基を化学構造中に有している。この点から、軟化剤のエステル基と脂肪酸のカルボニル基が定着液の系内で、電気的な作用を示し、またそれが分子間の結合作用を生じさせ、定着液の特性として起泡性及び泡沫安定性を向上させている。
また、炭素数12から18の範囲においても、炭素数が少ないほうが起泡性に優れているが泡沫安定性が悪く、炭素数が多いほうが起泡性にあまりよくないが泡沫安定性に極めて優れている。そこで、定着液中で、単独の脂肪酸塩でも良いが、炭素数12から18の脂肪酸塩を混合する方がさらに優れている。混合比率としては、ミリスチン酸塩(炭素数14)を最も多く含み、ラウリン酸塩(炭素数12)、ステアリン酸塩の割合を低くすることが望ましい。より具体的な脂肪酸塩の比率としては、ラウリン酸塩:ミリスチン酸塩:パルミチン酸塩:ステアリン酸塩の重量比で、0:6:3:1、1:5:3:1、1:4:4:1などが適する。
ところで、定着液中に起泡剤である脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有することで軟化剤の濃度が高くなっても起泡性及び泡沫安定性を維持することができる。軟化剤の濃度として、10wt%未満では、脂肪酸を含有しなくても起泡性は問題ない。しかし、軟化剤の濃度が10wt%以上、特に軟化剤の濃度が30wt%以上になると、脂肪酸塩だけでは、ほとんど起泡しなくなり起泡性が悪くなる。このような軟化剤濃度30wt%において、脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有させると、起泡性を維持できる。
但し、脂肪酸の含有量が多くなりすぎると、起泡剤である脂肪酸塩の比率が下がり、起泡性が再び悪くなる。そこで、脂肪酸塩のモル数を、脂肪酸のモル数と同じに、又は大きくするほうがよい。あるいは、脂肪酸と脂肪酸塩の比率を、5:5から1:9の範囲とした場合起泡性が優れている。
なお、同じ炭素数の脂肪酸と脂肪酸塩の組合せだけでなく、例えば、脂肪酸塩がミリスチン酸アミンで、脂肪酸がステアリン酸の組合せや脂肪酸塩がパルミチン酸カリウムで脂肪酸がステアリン酸のような炭素数が12から18の範囲で異なる組合せであってもよい。要は、炭素数12から18の範囲の脂肪酸を定着液に含有することで、高濃度の軟化剤を含有しても、起泡性が悪くならず、泡沫安定性に優れ、密度の極めて低い泡化を可能とする。
また、他のアニオン系界面活性剤、例えばアルキルエーテル硫酸塩(AES)を起泡剤として、炭素数12から18の脂肪酸を含有した定着液であっても、軟化剤濃度増加による起泡性が悪くなるのを防止する効果があることがわかった。但し、最も組み合わせとして優れているのは脂肪酸塩との組合せである。
更に、脂肪酸塩としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸アミンが適している。更に、最も適している脂肪酸アミンは、具体的には、水を加熱し、脂肪酸を添加し、その後トリエタノールアミンを添加して、一定時間撹拌しながら加熱してケン化反応させることで作製することができる。このとき、脂肪酸とトリエタノールアミンとのモル比を、1:0.5から1:0.9の範囲と脂肪酸比率を高くすることで、ケン化後、未反応の脂肪酸が残留し、定着液中に脂肪酸と脂肪酸アミンを混合させることができる。同じことは、ナトリウム塩やカリウム塩でも可能である。
次に、上述した本発明の定着液を泡状化する媒体面全体に対し樹脂含有微粒子層の厚みに応じて、後述するように定着液付与手段の面における泡状定着液層厚みを制御している。しかし、例えば樹脂含有微粒子がトナーであり、媒体上にカラー画像や白黒文字が混在する場合、媒体面全体を同じ厚みの泡状定着液層で付与するとカラー写真画像のごとく厚いトナー層では定着不良や画像抜けが生じたり、白黒文字部に粘着感が生じて印刷物同士がくっついたいりする部分不具合が生じる場合がある。以下に、その不具合原因について詳細に説明する。
一方、一般的に0.5mm〜1mm程度の大きな泡の場合、単なる撹拌等により比較的容易に泡を生成可能であり、大きな泡の生成には数秒以下の時間(0.1秒もかからない)で生成することができる。そこで、この所望の泡径よりも大きな泡であって、目視で観察できる程度の大きさの泡の生成が容易で、かつすばやく得ることができる点に着目し、大きな泡から素早く5μm〜50μm程度の微小な泡を生成する方法を鋭意検討した結果、大きな泡にせん断力を加えることで大きな泡を分泡すると、上記のような液状態から微小な泡を起泡させる方法に比べ、極めて素早く所望の大きさの微小な泡が生成できる。
図3は本発明の一実施の形態に係る定着装置の構成を示す概略構成図である。同図に示す本実施の形態の定着装置30において、定着液を生成する軟化剤液は軟化剤液密封容器31に、起泡剤液は起泡剤液密封容器32に、軟化剤分解促進剤液は軟化剤分解促進剤液密封容器33に、それぞれ独立した状態で分離して保存されている。定着装置の稼動時に、後述する主制御部45からの駆動制御信号に基づいて液搬送ポンプ34、35、36によって、軟化剤液密封容器31からの軟化剤液と、起泡剤液密封容器32からの起泡剤液と、軟化剤分解促進剤液密封容器33からの軟化剤分解促進剤液とは所望の混合比となるように供給され、所望の混合比の混合液は羽根状攪拌子で攪拌しながら、液に気泡を巻き込みながら大きな泡を生成させる構成であるバブリング槽37へと送られる。そして、後述する主制御部35からの駆動制御信号に基づいてバブリング槽37では混合液が到達するタイミングで空気ポンプ38を作動させ、混合液をバブリングし、更に微小孔シート39を通過することで泡径の揃った大きな泡径のフォーム状定着液を生成する。なお、微小孔シート39の孔径は、30μm〜100μm程度が望ましい。図3の微小孔シート37に限らず、連泡構造の多孔質部材であればよく、孔径30μm〜100μm程度を有する焼結セラミックス板や不織布や発泡樹脂シートであってもよい。このときの泡は目視でもわかるくらいの大きな泡である。生成した大きな泡は、泡にせん断力を加えて細かな泡とするフォーム状定着液生成手段40に送られてフォーム状定着液を形成する。このフォーム状定着液生成手段40は2重の円筒部材を有し、内部の円筒部材が軸回転することで内部の円筒部材における外周面と外部の円筒部材における内周面とに発生するせん断力によって大きな泡から所望の泡径の小さな泡を生成するものである。なお、フォーム状定着液生成手段40の内側円筒にらせん状の溝を設けて、円筒内での液搬送能力を高くしてもよい。
このように、液状定着液を大きな泡径を有する液へと変化させる大きな泡生成部と、大きな泡にせん断力を加えて微小な泡を生成する微小な泡生成部を組み合わせることで、液状定着液を極めて短時間に5μm〜50μm程度の微小な泡径を有する泡状定着液を生成させることができる。
なお、泡状の定着液のかさ密度としては、0.01g/cm3〜0.1g/cm3程度の範囲が望ましい。更に、定着液付与時に媒体面に残液感を生じないようにするためには、泡の密度として、0.01g/cm3〜0.02g/cm3程度の範囲、特に0.02g/cm3以下が望ましい。なぜならば、図3の塗布ローラ42のように、接触付与手段面の定着液の泡膜は、媒体上の微粒子層の厚み以上であることが必須条件で(微粒子層の隙間を泡状定着液で埋めるため)、おおよそ、泡膜厚みは、50μmから80μmが望まれる。一方、媒体面への定着液付着における残液感(ぬれたような感触)がないためには、定着液付着量として、0.1mg/cm2以下が望まれる。このことから、泡の密度としては、0.0125g/cm3から0.02g/cm3の範囲が必要で少なくとも0.02g/cm3以下の泡の密度が望まれる。
このように生成されたフォーム状定着液は、供給口41から、塗布ローラ42に密接した泡膜制御ブレード43と塗布ローラ42との密接部に供給され、塗布ローラ42上に所望の泡膜を形成する。塗布ローラ42とそれに対峙する加圧ローラ44との間を未定着トナー画像が形成された記録媒体の紙を通すことで、フォーム状定着液の泡膜を未定着トナーに付与し、定着液中の軟化剤によりトナー樹脂が軟化し、加熱することなくトナー画像を紙に定着する。また、主制御部45は、定着装置の起動信号を受けて、液搬送ポンプ34、35、36の駆動、空気ポンプ38の駆動を制御することで、未定着トナー画像が形成された記録媒体の紙が搬送されるタイミングに合わせて混合、フォーム化を行い、フォーム状定着液を生成することができる。
ここで、樹脂を溶解又は膨潤することで軟化させる軟化剤は、脂肪族エステルを含む。この脂肪族エステルは、トナー等に含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる溶解性又は膨潤性に優れている。また、軟化剤については、人体に対する安全性の観点から、その急性経口毒性LD50が3g/kgよりも大きい、更に好ましくは5g/kgであることが好ましい。脂肪族エステルは、化粧品原料として多用されているように、人体に対する安全性が高い。
更に、定着液は、紙等の記録媒体上のトナー等の樹脂含有微粒子層への塗布時に泡状となっていればよく、保存容器内で泡状である必要はない。保存容器中では気泡を含有しない液体で、容器から液を供給する時点や、樹脂含有微粒子層へ付与するまでの液搬送経路で泡状にする手段を設ける構成が望ましい。これは、保存容器では液体で、容器から液を取り出した後に泡状とする構成のほうが、容器の小型化ができるという大きな利点を有するためである。
次に、定着液容器から液状定着液を泡化する機構に搬送する手段としては、図3では液搬送ポンプを用いている。液搬送ポンプとしては、ギヤポンプ、ベローズポンプ等があるが、チューブポンプが望ましい。ギヤポンプ等ごとく定着液中で振動機構や回転機構があると、ポンプ内で液が起泡し、液に圧縮性が出て、搬送能力が低下する恐れがある。また、上記の機構部品等が定着液を汚染したり、逆に機構部品を劣化させる恐れがある。一方、チューブポンプは、チューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であるため、定着液と接する部材はチューブだけであり、定着液に対し耐液性を有する部材を用いることで、液の汚染やポンプ系部品の劣化がない。また、チューブを変形させるだけなので、液が起泡せず、搬送能力の低下を防止できる。
また、図3の泡膜制御ブレードのほかに、ワイヤーバーによって塗布ローラ上の泡状の定着液の厚みを制御し、泡状定着液は、上記のごとく、大きな泡を生成する大きな泡生成部とその大きな泡をせん断力で分泡する微小な泡生成部を有する泡状定着液生成手段によって生成され、液供給口より、膜制御ワイヤーバーと塗布ローラの間に滴下する。ワイヤーバーを膜制御手段として用いることで、ブレードに比べ、塗布ローラ面の軸方向の泡状定着液膜均一性が向上する。
図3に示すような構成を有する本実施の形態の定着装置において、液搬送部やバブリング槽や泡をフォーム状にする構成部分では、起泡剤液と軟化剤液と軟化剤分解促進剤とは混合しており、長期放置において軟化剤の化学的分解が起こる。従って、定着終了時もしくは、定着開始時に、密封容器からフォーム状定着液供給口までの流路内の定着液を廃棄しておくことが望ましい。更に、廃棄により定着液が無駄に消費されるため、密封容器からフォーム状定着液供給口までの流路内の容積は極力小さいことが望ましい。
また、起泡剤液と軟化剤液と軟化剤分解促進剤は、十分均一に混合されないと混合後の泡化の際に起泡性が悪くなり、フォーム状定着液の密度が所望の値よりも高くなり、泡膜形成ができなくなる恐れがある。また、軟化剤が泡のプラトー境界にて不均一に分布し、定着が不均一になる恐れがある。
そこで、図4に示すように、流路だけの液混合部を設けることが考えられる。駆動部がないため極めて簡便な混合が可能となる。液混合部50として、軟化剤液の流路51と起泡剤液の流路52と軟化剤分解促進剤液の流路53が合流して混合する混合液流路54で構成する。なお、軟化剤液の流路51の流体抵抗と起泡剤液の流路52の流体抵抗と軟化剤分解促進剤液の流路53の流体抵抗に対して混合液流路54の流体抵抗を小さくする。このような構成とすることで混合液流路54の流速が速くなり乱流が形成されるため、軟化剤液と起泡剤液と軟化剤分解促進剤液が十分に混合される。また、図4の(a)の構成を発展させ、図4の(b)に示すように軟化剤液の流路51の流体抵抗と起泡剤液の流路52の流体抵抗と軟化剤分解促進剤液の流路53の流体抵抗の比率を混合液堆積比率に近い設定とすると、互いの液の供給圧力を同じにするだけで、体積比率がいつも安定に保つことができ、混合比率の制御を容易にできる。
次に、本発明の定着装置に適する定着液保存容器について説明する。
図5は本発明の定着装置に適する定着液保存容器の構成を示す概略構成図である。同図に示す定着液保存容器60内には、軟化剤液を密封した容器61と起泡剤液を密封した容器62と軟化剤分解促進剤液を密封した容器63が独立した状態で設けられている。各容器は、アルミ箔をラミネートした樹脂のラミネード容器などが適する。各容器61〜63の先端には各供給口64〜66が設けられ、その供給口64〜66には連通手段としての封止ゴム67〜69がそれぞれ設けられて、各液を封止している。このような構成を有する定着液保存容器60を定着装置に着脱可能に装着すると、定着装置側から先端が針状となった供給パイプ70〜72が定着液保存容器60の各供給口64〜66にそれぞれ対峙し、供給パイプ70〜72の針状の先端が封止ゴム67〜69をやぶって各液容器内とつながる。この構成では、各液容器内の液の混合は定着装置内で行われ、液供給のポンプも定着装置内に設置する。このような定着液保存容器によれば、軟化剤液と起泡剤液と軟化剤分解促進剤液を独立した状態で分離して保存でき、かつ液漏れもなく、着脱自在で交換が容易である。
図6は本発明の定着装置に適する別の定着液保存容器の構成を示す概略断面図である。同図に示す定着液保存容器80は、樹脂ラミネートで形成されたジャバラ構造の容器である軟化剤液保存容器81及び起泡剤液保存容器82並びに軟化剤分解促進剤液保存容器83と、平行可動してジャバラ構造の軟化剤液保存容器81及び起泡剤液保存容器82並びに軟化剤分解促進剤液保存容器83の底側から加圧して収納されている液を押し出すための加圧板84〜86と、各容器の供給口87〜89と、各供給口87〜89から供給される3つの液を混合する混合液流路90と、連通手段としての封止ゴム91を具備する混合液供給口92とを有している。また、加圧板84〜86に圧力を加えるための加圧アクチュエータ93〜95を挿入するために、定着液保存容器80の容器外壁には、孔96〜98が設けられている。各供給口87〜89は混合液流路90につながり、当該混合液流路90には少なくとも一つの回転可能な撹拌羽根99が設けられている。
このような構成を有する定着液保存容器80を定着装置に装着すると、容器外壁の孔96〜98から定着装置内の加圧アクチュエータ93〜95が容器内に侵入し、加圧板84〜86を押す機構となっている。一方、混合液供給口92は封止ゴム91で封止され、定着装置に定着保存容器80が装着されると定着装置側から針を有する供給パイプ100が封止ゴムをやぶって混合液流路90内に侵入する。定着装置稼動時に、加圧アクチュエータ93〜95が作動して加圧板84〜86を押し、樹脂ラミネートで形成されたジャバラ構造の容器である軟化剤液保存容器81及び起泡剤液保存容器82並びに軟化剤分解促進剤液保存容器83が変形することで各液が各供給口87〜89から混合液流路90に供給される。供給後、撹拌羽根99で液同士が十分に混合され、定着液保存容器80の混合液供給口92より軟化剤液と起泡剤液と軟化剤分解促進剤液が均一に混合した定着液が供給される。なお、撹拌羽根は回転のための駆動源を持っていても良いが、液の流れで自然に回転する構成でも十分な撹拌能力は得られる。図6の構成では、定着保存容器内で既に軟化剤液と起泡剤液と軟化剤分解促進剤液の均一混合がなされているため、定着装置側は、泡化バブリング機構のみ設置すればよく、定着装置の簡素化が可能となる。
なお、定着液中で、不飽和脂肪酸塩を用いてもよく、炭素数18で2重結合数が1から3の不飽和脂肪酸が望ましい。具体的には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が適する。2重結合が4以上では反応性が強いため、定着液の放置安定性が劣ってしまう。これらの不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。また、上記飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩を混合して起泡剤として用いても構わない。
また、樹脂を溶解又は膨潤することで軟化させる軟化剤は、脂肪族エステルを含む。この脂肪族エステルは、トナー等に含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる溶解性又は膨潤性に優れている。
更に、軟化剤については、人体に対する安全性の観点から、その急性経口毒性LD50が3g/kgよりも大きい、更に好ましくは5g/kgであることが好ましい。脂肪族エステルは、化粧品原料として多用されているように、人体に対する安全性が高い。
また、記録媒体に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、軟化剤はトナーの記録媒体への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。すなわち、軟化剤は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し、刺激臭を持たない。
なお、オフィス環境等における臭気を高い精度で測定することができる実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数(10×log(物質の臭気が感じられなくなるまでの物質の希釈倍率))を臭気の指標とすることができる。また、軟化剤に含まれる脂肪族エステルの臭気指数は、10以下であることが好ましい。この場合には、通常のオフィス環境では、不快臭を感じなくなる。更に、軟化剤のみならず、定着液に含まれる他の液剤も同様に、不快臭及び刺激臭を有さないことが好ましい。
本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族エステルは、飽和脂肪族エステルを含む。また、飽和脂肪族エステルは、人体に対する安全性が高く、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内で溶解又は膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解又は膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
よって、本発明における定着液において、好ましくは、上記の飽和脂肪族エステルの一般式は、R1COOR2で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型アルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の飽和脂肪族エステルが、一般式R1COOR2で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、上記の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルの多くについて、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
上記の飽和脂肪族エステルを使用する際、その加水分解を抑制するには、R1COOR2の加水分解物であるR1COOHとR2OHの少なくとも1種類を定着液に含有させることで、軟化剤の分解を抑制できる。上記の加水分解物としては、例えば、ラウリン酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、ミリスチン酸、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。含有量については、特に限定しないが、カルボン酸化合物については、定着液のpHが7以下にならないような含有量、アルコール化合物については1wt%から30wt%の含有量の範囲が適当である。これらの含有量を超える場合は、定着液の起泡性が劣化するため適さない。
また、本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸エステルも含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができる。例えば、60ppm程度の高速印字では、記録媒体における未定着のトナーに定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するまでの時間は、1秒以内であることが望ましい。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、記録媒体における未定着のトナー等に定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するのに要する時間を、0.1秒以内にすることが可能となる。更に、より少量の軟化剤を添加することによって、トナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができるため、定着液に含まれる軟化剤の含有量を低減することができる。
よって、本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族ジカルボン酸エステルの一般式は、R3(COOR4)2で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の脂肪族ジカルボン酸エステルが、一般式R3(COOR4)2で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記の化合物である脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、コハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
更に、本発明における定着液において、好ましくは上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの一般式は、R5(COOR6−O−R7)2で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式R5(COOR6−O−R7)2で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記の化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
また、脂肪酸エステルではないが、炭酸エステルである炭酸エチレンや炭酸プロピレンや炭酸ブチレンも軟化もしくは膨潤剤として適する。
本発明における定着液において、上記の加水分解酵素は、エステル加水分解酵素であるカルボン酸エステル加水分解酵素、例えば、リパーゼ誘導体、エステラーゼ誘導体、フィラーゼ誘導体、アセチラーゼ誘導体、ヒドロラーゼ誘導体、ブテノリダーゼ誘導体、ポリメラーゼ誘導体、クチナーゼ誘導体、シンターゼ誘導体等が挙げられる。上記の軟化剤の加水分解酵素を含有する液を、起泡剤を含有した水性液と、軟化剤を含有した水性液を独立した状態で保存し、容器内もしくは定着装置内にて、定着装置稼動とともにこれらの水性液を混合して、直ちに泡化してフォーム状定着液を作製し、媒体に付着した未定着のトナーなどの樹脂微粒子層に付与させることで、媒体上に画像を形成させるまでは軟化剤の能力は維持し、定着後に余分な軟化剤の分解し、粘着感(タック感)のない定着画像を得ることが可能となり、定着信頼性が飛躍的に向上させることができる。
上記の加水分解酵素の含有量については、特に限定しないが、0.01wt%〜5.0wt%、好ましくは0.1wt%〜1.0wt%である。前記含有量が少なすぎると、分解させたい軟化剤の分解量が少なくなったり、前記含有量が多すぎると、定着液の起泡性が劣化するため適さない。また、上記の加水分解酵素の活性範囲がpH6〜11、好ましくはpH7〜10であるため、その範囲外になるような場合は、pHを調製する必要がある。なお、上記のpH範囲から外れる場合は、酵素活性が落ち、軟化剤の分解が起こりにくくなってしまう。
ところで、泡状定着液において、塗布接触ニップ部にてトナー等の微粒子層に泡状定着液を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。そこで泡沫安定性に優れる泡が求められる。このため、定着液中に脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有することが望ましい。脂肪酸アルカノールアミドには(1:1)型と(1:2)型があるが、本発明における泡沫安定性には(1:1)型が適することがわかった。
なお、定着の対象となる樹脂を含有する微粒子は、トナーに限定されず、樹脂を含有する微粒子であれば何れでもよい。例えば、導電性部材を含有した樹脂含有微粒子でもよい。また、記録媒体は、記録紙に限定されず、金属、樹脂、セラミックス等何れでもよい。但し、媒体は定着液に対し浸透性を有することが望ましく、媒体基板が液浸透性を持たない場合は、基板上に液浸透層を有する媒体が望ましい。記録媒体の形態もシート状に限定されず、平面及び曲面を有する立体物でもよい。例えば、紙のごとき媒体に透明樹脂微粒子を均一に定着させ紙面を保護する(所謂、ニスコート)用途においても、本発明は適用できる。
上記の樹脂を含有する微粒子のうち、電子写真プロセスで用いるトナーは、本発明の定着液との組合せにおいて最も定着への効果が高い。トナーは、色剤と帯電制御剤と結着樹脂や離型剤などのような樹脂を含む。トナーに含まれる樹脂は、特に限定されないが、好適な結着樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、離型剤としては、例えばカルバナウワックスやポリエチレンなどのワックス成分などが挙げられる。トナーは、結着樹脂の他に、公知の着色剤、電荷制御剤、流動性付与剤、外添剤などを含んでもよい。また、トナーは、メチル基を有する疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子をトナーの粒子の表面に固着させることによって、撥水性処理されていることが好ましい。媒体のうち、記録媒体は、特に限定されず、例えば、紙、布、及び液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。本発明における油性とは、室温(20℃)における水に対する溶解度が、0.1重量%以下である性質を意味する。
また、泡状となった定着液は、好ましくは、撥水性処理されたトナーの粒子に対して、十分な親和性を有することが望ましい。ここで、親和性とは、液体が固体に接触したときに、固体の表面に対する液体の拡張濡れの程度を意味する。すなわち、泡状となった定着液は、撥水性処理されたトナーに対して十分な濡れ性を示すことが好ましい。疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子で撥水性処理されたトナーの表面は、疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンの表面に存在するメチル基によって覆われており、おおよそ20mN/m程度の表面エネルギーを有する。現実には撥水性処理されたトナーの表面の全面が疎水性微粒子によって完全に覆われてはいないため、撥水性処理されたトナーの表面エネルギーは、おおよそ、20〜30mN/mであると推測される。よって、撥水性トナーに対して親和性を有する(十分な濡れ性を有する)ためには、泡状となった定着液の表面張力は、20〜30mN/mであることが好ましい。
水性溶媒を用いる場合、界面活性剤を添加することで、表面張力を20〜30mN/mとすることが好ましい。また、水性溶媒の場合、多価アルコールを含有していることが望ましい。これらの材料は、泡状の定着液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする利点を有する。例えばセタノールなどの単価アルコールや、グリセンリン、プロピレングリコール、1、3ブチレングリコールなどの多価アルコールが望ましい。また、これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
また、定着液中に浸透性改善や紙等媒体のカール防止のために油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成も望ましく、その場合、具体的な分散剤としては、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステルなどが望ましい。
なお、定着中での軟化剤を溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させるため方法としては、例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、及び超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段が挙げられる。いずれにしても、強いせん断応力を定着液中の軟化剤に加えることで溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させる。
また、トナーの定着装置は、本発明における定着液をトナーに供給した後、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)によって溶解又は膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を有してもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、溶解又は膨潤したトナーを加圧することによって、溶解又は膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、記録媒体内へ溶解又は膨潤したトナーを押し込むことによって、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
上述した本発明による画像形成方法を用いて、樹脂を含むトナーの画像を記録媒体に形成する。よって、この別の発明の一実施の形態例の画像形成装置によれば、それぞれ、上述したように、より効率的にトナーを記録媒体に定着させることが可能な画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
図7は別の発明の画像形成装置の構成を示す概略図である。同図に示す画像形成装置は複写機又はプリンタであってもよい。図7の(a)はカラー電子写真のタンデム方式の画像形成装置全体の概略図であり、図7の(b)は図7の(a)の画像形成装置の1つの画像形成ユニットの構成を示す図である。図7の(a)、(b)に示す画像形成装置200はトナー像担持体として中間転写ベルト201を有する。この中間転写ベルト201は、3つの支持ローラ202〜204に張架されており、図中の矢印Aの方向に回転する。この中間転写ベルト201に対しては、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成ユニット205〜208が配列されている。これら画像形成ユニットの上方には、図示していない露光装置が配置されている。例えば、画像形成装置が複写機である場合には、スキャナで原稿の画像情報を読み込み、この画像情報に応じて、各感光体ドラム上に静電潜像を書き込むための各露光L1〜L4が露光装置により照射される。中間転写ベルト201を挟んで中間転写ベルト201の支持ローラ204に対向する位置には、二次転写装置209が設けられている。二次転写装置209は、2つの支持ローラ210、211の間に張架された二次転写ベルト212で構成されている。なお、二次転写装置209としては、転写ベルト以外に転写ローラを用いてもよい。また、中間転写ベルト201を挟んで中間転写ベルト201の支持ローラ202に対向する位置には、ベルトクリーニング装置213が配置されている。ベルトクリーニング装置213は、中間転写ベルト201上に残留するトナーを除去するために配置されている。
記録媒体としての記録紙214は、一対の給紙ローラ215で二次転写部へ導かれ、トナー像を記録紙214に転写する際に、二次転写ベルト212を中間転写ベルト201に押し当てることによって、トナー像の転写を行う。トナー像が転写された記録紙214は、二次転写ベルト212によって搬送され、記録紙214に転写された未定着のトナー像は、図示していない露光装置からの画像情報に基づいて泡状の定着液の膜厚を制御する本発明の定着装置によって定着される。すなわち、記録紙214に転写された未定着のトナー像には、図示していない露光装置からの画像情報、例えばカラー画像又は黒ベタ画像に基づいて泡状の定着液層の膜厚が制御されたトナーの定着装置から供給される本発明における泡状の定着液が付与され、泡状の定着液に含まれる、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)によって、未定着のトナー像を、記録紙214に定着させる。
次に、画像形成ユニットについて説明する。図7の(b)に示すように、画像形成ユニット205〜208には、感光体ドラム216の周辺に、帯電装置217、現像装置218、クリーニング装置219及び除電装置220が配置されている。また、中間転写ベルト201を介して、感光体ドラム216に対向する位置に、一次転写装置221が設けられている。また、帯電装置217は、帯電ローラを採用した接触帯電方式の帯電装置である。帯電装置217は、帯電ローラを感光体ドラム216に接触させて、感光体ドラム216に電圧を印加することにより、感光体ドラム216の表面を一様に帯電する。この帯電装置217としては、非接触のスコロトロン等を採用した非接触帯電方式の帯電装置を採用することもできる。また、現像装置218は、現像剤中のトナーを感光体ドラム216上の静電潜像に付着させ、静電潜像を可視化させる。ここで、各色に対応するトナーは、それぞれの色に着色された樹脂材料からなり、これらの樹脂材料は、本発明における定着液により溶解又は膨潤する。なお、現像装置218は、図示しない攪拌部及び現像部を有し、現像に使用されなかった現像剤は、攪拌部に戻され、再利用される。攪拌部におけるトナーの濃度は、トナー濃度センサによって検出され、トナーの濃度が、一定であるように制御されている。更に、一次転写装置221は、感光体ドラム216上で可視化されたトナーを中間転写ベルト201に転写する。ここでは、一次転写装置221としては、転写ローラを採用しており、転写ローラを、中間転写ベルト201を挟んで感光体ドラム216に押し当てている。一次転写装置221としては、導電性ブラシ、非接触のコロナチャージャー等を採用することもできる。また、クリーニング装置219は、感光体ドラム216上の不要なトナーを除去する。クリーニング装置219としては、感光体ドラム216に押し当てられる先端を備えたブレードを用いることができる。ここで、クリーニング装置219によって回収されたトナーは、図示しない回収スクリュー及びトナーリサイクル装置によって、現像装置218に回収され、再利用される。更に、除電装置220は、ランプで構成されており、光を照射して感光体ドラム216の表面電位を初期化する。
次に、本発明で使用した定着液の調整方法について説明する。
脂肪酸であるミリスチン酸(関東化学試薬)を4.00g、パルミチン酸(関東化学試薬)を3.00g、ステアリン酸を1.00g(関東化学試薬)とし、中和剤であるトリエタノールアミンを3.41gになるようにそれぞれ計量し、それらを液温80℃のイオン交換水中で、30分間スターラー(100rpm)で撹拌したら、室温になるまで自然冷却する。そして、この起泡剤である脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を6.8g、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.8g、希釈剤であるイオン交換水を92.4g、混合した起泡剤液60.0g、軟化剤液であるプロピレンカーボネート(関東化学試薬、PC)40.0wt%を超音波ホモジナイザーにて10分間撹拌し、それを定着液(フォーム化する前の原液)とした。
◇大きな泡生成部
図3を基に作製した。上記の液状定着液保存容器:PET樹脂からなるボトル1つ(実施例では1つのみ使用)、液搬送ポンプ:チューブポンプ(チューブ内径2mm、チューブ材質:シリコーンゴム)、搬送流路:内径2mmのシリコーンゴムチューブ、大きな泡を作るための微細孔シート:#400のステンレス製メッシュシート(開口部約40μm)という構成になっている。なお、混合した状態の経時変化を確認するため、予め混合した定着液を所定の時間をおいて、上記装置に導入する実験も実施した。
◇微小な泡生成部
図3を基に作製した。2重円筒の内側円筒は、回転軸に固定され、図示していない回転駆動モータにより回転する。2重円筒の材質は、PET樹脂とした。外側円筒内径:10mm、長さ120mm、内側円筒外形:8mm・長さ100mmとした。回転数は、300rpmとした。回転時間は10秒間とした。
◇定着液付与手段
図3を基に作製した。泡状の定着液を作成し泡膜制御ブレードに供給する構成とした。泡膜制御ブレードと塗布ローラとのギャップは40μmとした。加圧ローラ:アルミ合金製ローラ(φ10mm)を芯金とし、外径φ50mmのポリウレタンフォーム材(イノアック社商品名「カラーフォームEMO」)を形成したスポンジローラ、塗布ローラ:PFA樹脂を焼付け塗装したSUS製ローラ(φ30mm)、膜厚制御ブレード:アルミ合金製支持板に厚み1mmの並板ガラスを接着した、ガラス面を塗布ローラ側に向け、10μmから100μmの範囲で塗布ローラとガラス面の隙間を制御できるようにした、紙搬送速度:150mm/sという構成になっている。
また、定着性を評価するため、上記で作製した微小な泡状定着液を、上述した方法で、「未定着トナーが形成された紙の上」に付与した。未定着トナーが形成された紙について、電子写真方式のプリンタ(リコー社製 IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像をPPC用紙(リコーT−6200)に形成させた。この際、トナー層の厚みは30〜40μmであり、塗布ローラ上の泡状定着液の厚みは約70μmであった。そして、この定着画像部のブロッキング評価を実施した。ロッキング評価とは、タックを簡易的に評価する方法である。測定方法については、下記に示す。なお、加水分解酵素を含む定着液を使用した。
<ブロッキングの評価>
○:定着画像上に1000枚(4kg)の紙を24時間乗せ、定着画像のある紙が上の紙に張り付かず、トナーも剥がれていない状態である。
×:定着画像上に1000枚(4kg)の紙を24時間乗せ、定着画像のある紙が上の紙に張り付いて、トナーも剥がれてしまう状態である。
次に、本発明で使用した定着液の別の調整方法について説明する。
脂肪酸であるミリスチン酸(関東化学試薬)を4.00g、パルミチン酸(関東化学試薬)を3.00g、ステアリン酸を1.00g(関東化学試薬)とし、中和剤であるトリエタノールアミンを3.41gになるようにそれぞれ計量し、それらを液温80℃のイオン交換水中で、30分間スターラ(100rpm)で撹拌したら、室温になるまで自然冷却する。それに、希釈剤(水)や増泡剤などの残りの材料を添加して超音波ホモジナイザーにて10分間撹拌し、それを起泡剤液とした。細かい成分量については、後で詳細に記述する。
定着液の軟化剤の分解状態を測定するため、図3の液混合部から定着液を取り出し、ガスクロマトグラフィー測定を実施した。その際、混合直後に取り出した定着液、15分後に取り出した定着液、30分後に取り出した定着液についても、ガスクロマトグラフィー測定を実施した。ガスクロマトグラフィー測定条件について、装置はHEWLETT PACKARD 5890 SERIESII、使用したカラムはHEWLETT PACKARD HP−1(30m×0.25mm×0.25μm)、カラム温度は50℃〜250℃、インジェクション温度は200℃、ディテクター温度は200℃、試料量は1μLとした。なお、ガスクロマトグラフィー測定は、装置内でガス化するものしか検出しない。
<実施例1>
《サンプル1−1》
(サンプル1−1−1⇒混合直後品、サンプル1−1−2⇒室温、15分保存品、サンプル1−1−3⇒室温、30分保存品)
起泡剤液は「脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を6.7g、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.8g、イオン交換水を92.5g、それぞれ予め混合した液59.8g」、軟化剤液は「プロピレンカーボネート(関東化学試薬、PC)40.0g」、加水分解酵素を含有する液は「トリアリシルブリセロール(リパーゼ)(和光純薬工業試薬)50%水溶液0.2g」とし、それぞれ図3の液保存容器(アルミ蒸着ポリエチレン樹脂製)に入れた。
《サンプル1−2》
(サンプル1−2−1⇒混合直後品、サンプル1−2−2⇒室温、15分保存品、サンプル1−2−3⇒室温、30分保存品)
起泡剤液は「脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を4.5g、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.6g、イオン交換水を94.9g、それぞれ予め混合した液89.8g」、軟化剤液は「コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社、クローダDES)10g」、加水分解酵素を含有する液は「トリアリシルブリセロール(リパーゼ)(和光純薬工業試薬)50%水溶液0.2g」とし、それぞれ図3の液保存容器(アルミ蒸着ポリエチレン樹脂製)に入れた。
《サンプル2−1》
(サンプル2−1−1⇒混合直後品、サンプル2−1−2⇒室温、15分保存品)
起泡剤液は「脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を6.7g、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.8g、イオン交換水を92.5g、それぞれ予め混合した液59.8g」、軟化剤液は「プロピレンカーボネート(関東化学試薬、PC)40.0g」、加水分解酵素を含有する液は「カルボキシエステラーゼ(和光純薬工業試薬)50%水溶液0.2g」とし、それぞれ図3の液保存容器(アルミ蒸着ポリエチレン樹脂製)に入れた。
《サンプル2−2》
(サンプル2−2−1⇒混合直後品、サンプル2−2−2⇒室温、15分保存品)
起泡剤液は「脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を4.5g、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.6g、イオン交換水を94.9g、それぞれ予め混合した液89.8g」、軟化剤液は「コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社、クローダDES)10g」、加水分解酵素を含有する液は「カルボキシエステラーゼ(和光純薬工業試薬)50%水溶液0.2g」とし、それぞれ図3の液保存容器(アルミ蒸着ポリエチレン樹脂製)に入れた。
《サンプル3−1》
(サンプル3−1−1⇒混合直後品、サンプル3−1−2⇒室温、15分保存品)
起泡剤液は「トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を6.7g、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.8g、イオン交換水を92.5gを予め混合した液59.8g」、軟化剤液は「プロピレンカーボネート(関東化学試薬、PC)40.0g」、加水分解酵素を含有する液は「アセチルヒドロラーゼ(和光純薬工業試薬)50%水溶液0.2g」とし、それぞれ図3の液保存容器(アルミ蒸着ポリエチレン樹脂製)に入れた。
《サンプル3−2》
(サンプル3−2−1⇒混合直後品、サンプル3−2−2⇒室温、15分保存品)
起泡剤液は「脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を4.5g、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.6g、イオン交換水を94.9gを予め混合した液89.8g」、軟化剤液は「コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社、クローダDES)10g」、加水分解酵素を含有する液は「アセチルヒドロラーゼ(和光純薬工業試薬)50%水溶液0.2g」とし、それぞれ図3の液保存容器(アルミ蒸着ポリエチレン樹脂製)に入れた。
<比較例1>
軟化剤の分解量測定(加水分解酵素を含まない従来の定着液)
《サンプル4−1》
(サンプル4−1−1⇒混合直後品、サンプル4−1−2⇒室温、15分保存品、サンプル4−1−3⇒室温、30分保存品)
起泡剤液は「脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を6.8g、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.8g、イオン交換水を92.4g、それぞれ予め混合した液60.0g」、軟化剤液は「プロピレンカーボネート(関東化学試薬、PC)40.0g」とし、それぞれ図3の液保存容器(アルミ蒸着ポリエチレン樹脂製)に入れた。
《サンプル4−2》
(サンプル4−2−1⇒混合直後品、サンプル4−2−2⇒室温、15分保存品、サンプル4−2−3⇒室温、30分保存品)
起泡剤液は「脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を4.5g、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.6g、希釈剤であるイオン交換水を94.9gを、それぞれ予め混合した液90.0g、軟化剤は「コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社、クローダDES)10g」とし、それぞれ図3の液保存容器(アルミ蒸着ポリエチレン樹脂製)に入れた。
上述の実施例1と比較例1のガスクロマトグラフィー測定結果を下記の表1に示す。
表1を参照して、実施例1と比較例1を比較すると、明らかに加水分解酵素を含有させた定着液の方は、軟化剤の分解が起こっており、更に、この分解反応は15分〜30分でほぼ止まっていることもわかった。これは、定着液中に加水分解酵素が存在することで、軟化剤の加水分解を促進させ、ある程度のところで分解反応が止まったと考えられる。
次に、別の実施例と比較例について説明する。
◇大きな泡生成部
図3を基に作製した。上記の液状定着液保存容器:PET樹脂からなるボトル3つ(「軟化剤」、「希釈剤」、「加水分解酵素」)、液搬送ポンプ:チューブポンプ(チューブ内径2mm、チューブ材質:シリコーンゴム)、搬送流路:内径2mmのシリコーンゴムチューブ、大きな泡を作るための微細孔シート:#400のステンレス製メッシュシート(開口部約40μm)という構成になっている。なお、混合した状態の経時変化を確認するため、予め混合した定着液を所定の時間をおいて、上記装置に導入する実験も実施した。
◇微小な泡生成部
図3を基に作製した。2重円筒の内側円筒は、回転軸に固定され、図示していない回転駆動モータにより回転する。2重円筒の材質は、PET樹脂とした。外側円筒内径:10mm、長さ120mm、内側円筒外形:8mm・長さ100mmとした。回転数は、300rpmとした。回転時間は10秒間とした。
◇定着液付与手段
図4を基に作製した。泡状の定着液を作成しブレードに供給する構成とした。ブレードと塗布ローラとのギャップは40μmとした。加圧ローラ:アルミ合金製ローラ(φ10mm)を芯金とし、外径φ50mmのポリウレタンフォーム材(イノアック社商品名「カラーフォームEMO」)を形成したスポンジローラ、塗布ローラ:PFA樹脂を焼付け塗装したSUS製ローラ(φ30mm)、膜厚制御ブレード:アルミ合金製支持板に厚み1mmの並板ガラスを接着した、ガラス面を塗布ローラ側に向け、10μmから100μmの範囲で塗布ローラとガラス面の隙間を制御できるようにした、紙搬送速度:150mm/sという構成になっている。
<実施例2>
定着液の泡密度(起泡性)測定と定着評価(加水分解酵素を含む定着液)
定着液の起泡性を評価するため、実施例1と同様な定着液から、微小な泡状定着液生成手段で泡を作製し、その泡の状態と密度を測定した。また、定着性を評価するため、上記で作製した微小な泡状定着液を、上述した方法で、未定着トナーが形成された紙の上に付与した。未定着トナーが形成された紙について、電子写真方式のプリンタ(リコー社製 IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像をPPC用紙(リコーT−6200)に形成させた。この際、トナー層の厚みは30〜40μmであり、塗布ローラ上の泡状定着液の厚みは約70μmであった。そして、この定着画像から、紙への定着液の塗布量、定着後の画像品質、ブロッキング評価を実施した。(ブロッキング評価とは、タックを簡易的に評価する方法である。)測定方法については、下記に示す。なお、実施例2については、加水分解酵素を含む定着液を使用した。
<泡の状態の評価>
○:1分間放置後も泡の状態が変化しない場合である。
×:1分放置で消泡し、泡沫安定性が悪い場合である。
<泡密度の測定方法>
泡密度は、5ccのカップ容器に泡を充填してすり切り、その重量とカップ容器の体積とから求めた。
<紙への定着液の塗布量>
紙への定着液の塗布量は、塗布前のA4サイズ紙+未定着トナーの重量を測定しておき、塗布後その重量を差し引いて求めた。
<定着後の画像品質>
○:トナーの紙への定着性良好(画像良好、紙に湿り気なし)
×:トナーの紙への定着性不良(トナーがオフセットしてしまう。)
<ブロッキングの評価>
○:定着画像上に1000枚(4kg)の紙を24時間乗せ、定着画像のある紙が上の紙に張り付かず、トナーも剥がれていない状態である。
×:定着画像上に1000枚(4kg)の紙を24時間乗せ、定着画像のある紙が上の紙に張り付いて、トナーも剥がれてしまう状態である。
<比較例2>
定着液の泡密度(起泡性)測定と定着評価(加水分解酵素を含まない従来の定着液)
実施例2と同様な操作で、泡密度(起泡性)測定と定着評価を実施した。なお、比較例2については、加水分解酵素を含まない従来の定着液を使用した。
上述の実施例2と比較例2の密度(起泡性)測定と定着評価を下記の表2に示す。
塗布ローラのように、接触付与手段面の定着液の泡膜は、媒体上の微粒子層の厚み以上であることが必須条件で(微粒子層の隙間を泡状定着液で埋めるため)、おおよそ、泡膜厚みは、50μmから80μmが望まれる。一方、媒体面への定着液付着における残液感(ぬれたような感触)がないためには、定着液付着量として、0.1mg/cm2以下が望まれる。このことから、泡の密度としては、0.0125g/cm3から0.020g/cm3の範囲が必要で少なくとも0.020g/cm3以下の泡の密度が望まれる。
上記表2を参照して、実施例2と比較例2の泡密度(起泡性)測定結果を参照すると、加水分解酵素の有無に関わらず、泡の状態も良く、密度も0.020g/cm3の以下であり、加水分解酵素の影響は見られなかった。
また、上記表2を参照して、実施例2と比較例2の定着評価結果を参照すると、加水分解酵素を含有させることで、ブロッキングが改善されることがわかった。また、起泡剤液と軟化剤液と加水分解酵素を含有する軟化剤分解促進剤液は、液混合部で混合されてからすぐに定着に使われることが望ましい。なぜならば、15分以上経過すると、軟化剤が分解してしまい、定着品質に悪影響が出るからである。つまり、起泡剤液と軟化剤液と加水分解酵素を含有する軟化剤分解促進剤液を混合してすぐに使用することで、タックのない画像品質が良好な定着画像が得られることがわかった。
なお、本発明は上記各実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。