はじめに、本発明の原理について概説すると、本発明は、図1に示すように、後述する泡状定着液生成手段によって定着液を泡で構成された泡状定着液14とすることで、定着液のカサ密度を低くできると共に塗布ローラ11上の定着液層を厚くすることができ、更には定着液の表面張力による影響が抑えられるため、塗布ローラ11への樹脂含有微粒子のオフセットを防止できることがわかった。更に、樹脂含有微粒子の大きさが5μm〜10μm程度の場合、樹脂含有微粒子層13を乱すことなく泡状定着液14を樹脂含有微粒子層13に付与するには、泡状定着液14の泡径範囲が、5μm〜50μm程度が必要であることがわかった。なお、図2に示すように、気泡22で構成された泡状定着液20は、気泡22のそれぞれを区切る液膜境界(以下、プラトー境界と称す)21から構成される。
一方、一般的に0.5mm〜1mm程度の大きな泡の場合、単なる撹拌等により比較的容易に泡を生成可能であり、大きな泡の生成には数秒以下の時間(0.1秒もかからない)で生成することができる。そこで、この所望の泡径よりも大きな泡であって、目視で観察できる程度の大きさの泡の生成が容易で、かつすばやく得ることができる点に着目し、大きな泡から素早く5μm〜50μm程度の微小な泡を生成する方法を鋭意検討した結果、大きな泡にせん断力を加えることで大きな泡を分泡すると、上記のような液状態から微小な泡を起泡させる方法に比べ、極めて素早く所望の大きさの微小な泡が生成できることがわかった。
そして、大きな泡を生成した後大きな泡を分泡し微小な処方の泡を生成する泡状定着液生成手段30における大きな泡生成部としては、図3に示すように、定着液容器31内の液状定着液32を搬送ポンプ33及び液搬送パイプ34等の液輸送手段を用いて気体・液体混合部35へ供給する。気体・液体混合部35には、空気口36が設けられ、液の流れとともに、空気口36に負圧が発生し、空気口36から気体が気体・液体混合部35に導入され、液体と気体が混合し、更に微小孔シート37を通過することで、泡径のそろった大きな泡を生成させることができる。孔径は、30μm〜100μm程度が望ましい。図3の微小孔シート37に限らず、連泡構造の多孔質部材であればよく、孔径30μm〜100μm程度を有する焼結セラミックス板や不織布や発泡樹脂シートであってもよい。また、別の大きな泡の生成方法としては、上記の搬送ポンプより供給された液状定着液と空気口からの空気を羽根状攪拌子で攪拌しながら、液に気泡を巻き込みながら大きな泡を生成させる構成や、上記の搬送ポンプより供給された液状定着液に空気供給ポンプ等でバブリングを行い大きな泡を生成する構成も望ましい。
次に、大きな泡を分割して2つ以上に分泡化するために、大きな泡にせん断力を加えるための、図3に示すような泡状定着液生成手段30における微小な泡生成部38として、閉じた二重円筒で、内側円筒が回転可能な構成とし、外部円筒の一部より、大きな泡状定着液を供給し、内部の回転する円筒と外部円筒の隙間(ここが流路となる)を通過しながら、回転円筒によりせん断力を受ける。このせん断力により、大きな泡は微小な泡へと変化し、外側円筒に設けられた泡の出口より、所望の微小な泡径を有する泡状定着液を得ることができる。
また、回転する内側円筒の回転数と内側円筒の長手方向の長さにより液搬送速度は決定される。外側円筒内径をd1(mm)、円筒長さがL(mm)とし、内側円筒外径をd2(mm)とし、回転数をR(rpm)とすると、微小な泡を生成するための液搬送速度V(mm3/秒)は、下記の式(1)で決まることがわかった。
V=L×π×(d12−d22)/4/(1000/R)・・・(1)
例えば、d1が10mm、d2が8mm、Lが50mm、回転数が1000rpmとすると、液搬送速度は約1400mm3/秒(1.4cc/秒)となる。A4の紙を定着するために必要な泡状定着液が3ccであるとすると、液状定着液から必要量の泡状定着液を生成するのに立上り時間は約2秒ですみ、極めて素早く、所望の泡径を有する泡状定着液を生成可能となる。内側円筒にらせん状の溝を設けて、円筒内での液搬送性をよくしてもよい。
このように、液状定着液を大きな泡径を有する液へと変化させる大きな泡生成部と、大きな泡にせん断力を加えて微小な泡を生成する微小な泡生成部を組み合わせることで、液状定着液を極めて短時間に5μm〜50μm程度の微小な泡径を有する泡状定着液を生成させることができる。
次に、本発明の定着装置における定着液付与手段について説明する。
図4は本発明の定着装置における定着液付与手段の一例を示す概略構成図である。ここで、本発明における樹脂含有微粒子はトナー粒子である。同図の(a)に示す定着液付与手段40は、上述した泡状定着液生成手段30によって生成された所望の微小な泡の泡状定着液を樹脂含有微粒子層(トナー粒子層)へ付与するための塗布ローラ41と、塗布ローラ面に所望の微小な泡の泡状定着液の膜厚を制御し、泡状定着液の最適な膜厚の制御を行う液膜厚制御用ブレード42と、塗布ローラ41と対峙する位置に加圧ローラ43とを具備している。同図の(b)に示すように、塗布ローラ41上には泡状定着液の層が液膜厚制御用ブレード42を通して形成されており、この液膜厚制御用ブレード42によって泡状定着液の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間に対して最適化した定着液層の膜厚となる。同図に示す定着液付与手段40によって付与された泡状定着液を用いることにより、樹脂含有微粒子は塗布ローラ上にオフセットしない。仮に、泡状の定着液は、樹脂含有微粒子層及び記録媒体に厚く付与されたとしても、泡状の定着液のかさ密度が極めて低いため、所定の泡沫時間経過後に含有している気泡が破泡することで、軟化剤を含有した液体の樹脂含有微粒子層への微量付与とすることができる。所望の微小な泡の泡状定着液は、上記のように、大きな泡を生成する大きな泡生成部と大きな泡をせん断力で分泡して微小な泡を生成する微小な泡生成部とを含んで構成されている泡状定着液生成手段30で生成され、液供給口より液膜厚制御用ブレード42と塗布ローラ41の間に滴下される。
なお、泡状の定着液のかさ密度としては、0.01g/cm3〜0.1g/cm3程度の範囲が望ましい。更に、定着液は、紙等の記録媒体上のトナー等の樹脂含有微粒子層への塗布時に泡状となっていればよく、保存容器内で泡状である必要はない。保存容器中では気泡を含有しない液体で、容器から液を供給する時点や、樹脂含有微粒子層へ付与するまでの液搬送経路で泡状にする手段を設ける構成が望ましい。これは、保存容器では液体で、容器から液を取り出した後に泡状とする構成のほうが、容器の小型化ができるという大きな利点を有するためである。
また、泡状定着液の塗布ローラ上での膜厚制御は、図5に示すように、塗布ローラ41とギャップを設けた液膜厚制御用ブレード42を用い、図5の(a)に示すように膜厚を薄くするときはギャップを狭くし、図5の(b)に示すように膜厚を厚くするときはギャップを広くする。ギャップの制御は液膜厚制御用ブレード42の端部に駆動を有する回転軸を用い、トナー層の厚さや環境温度等、更には泡状定着液の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間を調整するための最適な膜厚を制御する。
次に、定着液容器から液状定着液を泡化する機構に搬送する手段としては、図3では搬送ポンプを用いている。搬送ポンプとしては、ギヤポンプ、ベローズポンプ等があるが、チューブポンプが望ましい。ギヤポンプ等ごとく定着液中で振動機構や回転機構があると、ポンプ内で液が起泡し、液に圧縮性が出て、搬送能力が低下する恐れがある。また、上記の機構部品等が定着液を汚染したり、逆に機構部品を劣化させる恐れがある。一方、チューブポンプは、チューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であるため、定着液と接する部材はチューブだけであり、定着液に対し耐液性を有する部材を用いることで、液の汚染やポンプ系部品の劣化がない。また、チューブを変形させるだけなので、液が起泡せず、搬送能力の低下を防止できる。
ところで、泡状定着液を用いることで液状定着液に比べ微量塗布量で画像劣化のない定着が行えるが、定着速度を早くすると塗布ローラにトナーがオフセットする問題が生じた。原理原則として、例え定着液が泡状であってもトナー等の微粒子が接触付与手段にオフセット付着し定着劣化が生じる場合があることが解析できた。
図6はジルコニアビーズを用いたラージスケールモデル実験で泡膜の厚みが微粒子層の厚みと同じ場合と泡膜の厚みが微粒子層の厚みよりも薄い場合の各結果を示す概略図である。なお、塗布ローラ41は撥液性を有し、紙等の媒体は親液性を示すものとする。図6の(a)に示すように、ジルコニアビーズを用いたラージスケールモデル実験で泡膜の厚みが微粒子層の厚みと同じ場合、塗布ローラ51等の接触付与手段の泡状定着液52が紙等の記録媒体53上のトナー等のトナー層54に接触してトナー層54を浸透し、記録媒体53まで到達した後のタイミングで塗布ローラ51を分離した場合、トナー同士、トナーと記録媒体53及びトナーと塗布ローラ51との間には液の表面張力による結合力が生じるが、塗布ローラ51は撥液性で、記録媒体53は親液性であるため、トナーと記録媒体53との結合力が勝り、トナーは塗布ローラ51に付着することなく塗布ローラ51は分離できる。一方、図6の(b)に示すように、泡膜の厚みが微粒子層の厚みよりも薄い場合、塗布ローラ51がトナー層54に接触した後、トナー層54を泡状定着液52が完全に浸透して記録媒体53まで到達しないタイミング(トナー層54の途中まで浸透しているタイミング)で塗布ローラ51が分離すると、泡状定着液52が浸透したトナー同士及びトナーと塗布ローラ51との間には液の表面張力による結合力が生じ、乾いたトナー間は弱い結合力であるため、乾いたトナー間でトナー層54の分離が起こり、塗布ローラ51にトナー層54のオフセット付着が発生する。このため画像劣化が生じる。
このモデルから、著しいトナー等の樹脂含有微粒子の接触付与手段へのオフセット付着を防止するためには、塗布ローラ等の接触付与手段の紙等の記録媒体との接触部ニップ時間が、トナー等の樹脂含有微粒子層を定着液が浸透し紙等の記録媒体に到達する時間よりも長いことが重要である。
なお、ニップとは、接触付与手段と紙等の媒体の接触開始点から分離開始点までの間の部分のことを示す。従って、ニップ時間は、接触開始から分離開始までの時間である。また、ニップ幅は、接触開始点から分離開始点までの間の部分の、紙等の媒体の搬送方向の長さを示す。ニップ圧はニップ部に加えられる圧力で、ニップ部への加重をニップ部の面積で割った値を示す。
そこで、トナー等の樹脂含有微粒子層を定着液が浸透し記録媒体に到達するまでの時間(浸透時間と定義する)を測定する方法を考案し、その方法に基づく浸透時間をもとに本発明におけるニップ時間と浸透時間の関係を以下に説明する。
図7は浸透時間測定装置の一例を示す概略図である。なお、定着液は泡状定着液で、樹脂はトナーの例である。定着液はイオン性の材料、例えばフォーム化に必要な起泡剤や分散剤が含有されているため107Ω・cm以下の抵抗値を示す導電性を有する。そこで、上部電極61を接触付与手段面に、下部電極62を記録媒体にそれぞれみたて、上部電極61上に泡状の定着液層63を形成し、下部電極62の面上にトナー層64を形成する。そして、電極同士の接触タイミングは、例えば下部電極62の下に加重検知ロードセル65を配置し、上下電極間には電圧を印加する。上部電極61を下部電極62に接触させると、加重検知ロードセル65が上部電極61の加重を検知し、接触開始点を決める。その後、泡状の定着液層63がトナー層64を通過して下部電極62に到達すると電極間に電流が流れ、印加電圧値が変化する。よって、加重検知ロードセル65の検出から電圧変化開始までのタイミングを測定することでトナー層浸透時間を計測することができる。
以上の解析から、接触付与手段への樹脂含有微粒子のオフセット付着を防止するためには、接触付与手段と媒体との接触部におけるニップ時間は、泡状定着液の媒体到達までの樹脂含有微粒子層浸透通過時間と同じかそれ以上に設定する必要がある。
また、上記の各測定例から、樹脂含有微粒子が5μm前後のトナーである場合、各種の泡状定着液及び塗布条件において、浸透時間はおおよそ50ミリ秒から300ミリ秒の範囲にある。そこで、接触付与手段における紙等の記録媒体との接触ニップ時間は、最低でも50ミリ秒から300ミリ秒の範囲を確保する必要がある。
さて、泡膜の液膜厚制御用ブレードと接触付与手段との位置関係を図8を用いて説明する。液膜厚制御用ブレード42は、接触付与手段の塗布ローラ41の曲面に対し、動径方向に対し直角をなす接面に平行に対峙させる。一般に、ブレードで液体の膜を制御するには、塗布部材に対してブレードエッジ面を向けて、カウンター方向もしくはトレーリング方向に配置し、塗布部材面に対して平行には配置しない。泡膜は、一般の液体の膜と異なり、内部流動性や表面張力の影響がほとんどなく、流体としての性質がない。本発明に用いている泡状定着液は、ドライフォームと呼ばれ、泡膜中の気泡が50μm以下で、通常のウエットフォーム(気泡が100μm以上)とは挙動が異なり、泡膜の形が崩れず、あたかも硬いソフトクリームのような状態である。このため、液体では普通な現象である液面のレベリング作用が生じない。一般に、液体の場合、ブレードエッジ面に凹凸があって、エッジ近傍はスジ状の膜厚ムラが生じるが、液体のレベリング作用によりスジ目がならされて液膜は平滑になる。一方、泡膜では、レベリング作用が全くないため、ブレードをカウンター角やトレーリング角をつけて配置するとブレードエッジ面の凹凸の影響をまともに受けて、スジ状のムラのある膜となってしまう。これに対し、ブレード面のエッジに泡膜を接触しないように、接面に平行に対峙すると、泡膜を撫でるように上から押さえつけるような力が生じるため、泡膜表面が平滑になりスジ状のムラのない均一な膜が得られる。即ち、泡膜にブレードエッジが触れず、ブレード面で膜厚を制御することが重要である。これは、従来の液体の膜の制御では認められない現象である。
ちなみに、上記のごとく、泡膜の厚みはトナー等の樹脂含有微粒子層の厚みよりも厚くする必要があるが、スジ状や周期的な泡膜ムラがあると、トナー等の樹脂含有微粒子層厚みよりも薄い部分が生じ、微粒子が接触付与部材に付着し定着不良を生じてしまう。このため、スジ状等のムラはなるべくなく、均一な膜厚が望まれる。
更に、上記の現象を詳細に記述する。図8における液膜厚制御用ブレード42と曲面を有する接触付与手段との位置関係に関して、ブレードエッジと動径線との位置関係は極めて重要である。図9〜図11に液膜厚制御用ブレードと曲面を有する接触付与手段との位置関係及び泡膜面の様子の具体例を示す。図9及び図10は、動径線よりも液膜厚制御用ブレード42のブレードエッジが上流の場合、図11はブレードエッジが動径線よりも少し下流にある場合を示す。図9の(a)に示すように、液膜厚制御用ブレード42のブレードエッジが動径線よりも上流の場合、泡膜に液膜厚制御用ブレード42のブレードエッジが触れ、図9の(b)に示すように、液膜厚制御用ブレード42のブレードエッジの凹凸の影響で泡膜面にスジ目が発生した。更に、液膜厚制御用ブレード42のブレードエッジと接触付与手段の面の所望の間隔よりも広くなるため、泡膜の厚みが所望よりも厚くなる。また、図10の(a)に示すように、液膜厚制御用ブレード42のブレードエッジに泡状定着液の溜まりが発生し、泡膜面が波打ち現象を生じ、図10の(b)に示すように、泡膜面に周期的な厚みムラが発生する。一方、図11の(a)に示すように、液膜厚制御用ブレード42のブレードエッジが動径線よりも少し下流にある場合、泡膜は液膜厚制御用ブレード42のブレード面で剥離し、ブレードエッジと泡膜面との間隔があき、泡膜が液膜厚制御用ブレード42のブレードエッジに触れることはない。膜厚も所望の厚みを得ることができ、図11の(b)に示すように、均一な泡膜を得ることができる。
以上のように、ブレード部材面のエッジ部に泡膜が接触した状態では、接触部材面の泡膜にスジ状や周期的な膜厚ムラが生じてしまう。従って、液膜厚制御用ブレードのブレード面と曲面を有する接触付与手段の曲面とが一定の間隔を持ち、その間に泡膜が保持され、かつ液膜厚制御用ブレードのブレードエッジに泡膜が触れないように液膜厚制御用ブレードを配置する必要がある。なお、液膜厚制御用ブレードの長手方向に対する断面は、図8に示すような長方形の他に、台形や三角形でも構わない。
次に、液膜厚制御用ブレードのブレードエッジに泡膜が触れないような配置の最適な一例について概説する。液膜厚制御用ブレードのブレードエッジと動径線との位置関係は、均一な泡膜を形成するために、極めて重要で、接触付与手段が回転面の少なくとも一部に曲面を有する回転部材であり、泡状定着液の膜厚を制御する液膜厚制御用ブレードのブレード面が接触付与手段の曲面とが離して曲面の接面に平行に配置され、接面に垂直な動径線に対し、液膜厚制御用ブレードのブレード面の端部が回転方向に対し必ず後方に位置することが望ましい。
ところで、あまりギャップが大きくなると、泡膜が液膜厚制御用ブレードのブレード面から剥離する場所が下流となり、泡膜の厚みが所望の厚みよりも極端に厚くなり、更には液膜厚制御用ブレードのブレード面の泡膜剥離部に泡膜の波打ちが起こり、周期的な膜厚ムラが生じる恐れがある。そこで、図12に示すように、液膜厚制御用ブレード42のブレードエッジと動径線の位置関係が望ましい。即ち、接触付与手段の塗布ローラ41が回転面の少なくとも一部に曲率半径Rの曲面を有する回転部材であり、泡状定着液の膜厚を制御する液膜厚制御用ブレード42のブレード面が曲面とギャップ幅Gの間隔を離して曲面の接面に平行に配置され、接面に垂直な動径線に対し、液膜厚制御用ブレード42のブレード面の端部が回転方向に対し必ず後方に位置し、動径線とブレード部材面端部との間隔Dが最大で下記の式(2)の関係を満たすことが重要である。
D=(R2−(R−g)2)1/2 ・・・(2)
ただし、g=0.1*G〜0.3*G
上記の式(2)で、g=0.1*G〜0.3*Gとは、接触付与手段の塗布ローラ41の曲面と液膜厚制御用ブレード42のブレードとのギャップに対し、ギャップ幅の許容範囲としてギャップの増加分として10%増から30%増が望ましいことを意味している。
また、上記の式(2)において、具体的には、曲面を有する接触付与手段の塗布ローラ41の半径R=15mmで、液膜厚制御用ブレード42を塗布ローラ41のローラ面の接面に対し平行にギャップ幅G=0.05mmで配置する場合、液膜厚制御用ブレード42のブレード端部の動径線からの最大位置はD=0.387mm〜0.671mmが望ましい。
更に、曲面を有する接触付与手段の塗布ローラ41の半径R=20mmで、液膜厚制御用ブレード42を塗布ローラ41のローラ面の接面に対し平行にギャップ幅G=0.05mmで配置する場合、液膜厚制御用ブレード42のブレード端部の動径線からの最大位置はD=0.447mm〜0.774mmが望ましい。
また、曲面を有する接触付与手段の塗布ローラ41の半径R=5mmで、液膜厚制御用ブレード42を塗布ローラ41のローラ面の接面に対し平行にギャップ幅G=0.05mmで配置する場合、液膜厚制御用ブレード42のブレード端部の動径線からの最大位置はD=0.224mm〜0.387mmが望ましい。
ところで、上記構成では、液膜厚制御用ブレードに泡状定着液を供給する手段は、ブレード上流の接触付与手段、例えば塗布ローラに泡状定着液を滴下する構成である。この構成では、泡膜溜り上部が開放しており、定着液中の水の蒸発により定着液中の成分比が変化する恐れがある。そこで、必要なときだけ泡状定着液を供給し、泡状定着液を塗布ローラ上に溜めないことを検討し、スロットダイコータヘッドの概念を利用した。図13はその具体例である。
図13の(a),(b)に示すように、液膜厚制御用ブレード70は、ブレード板内部に、泡状定着液パイプ71とマニホールド部72とスロット部73を連通させて具備し、供給口は一箇所でもマニホールド部72の流体抵抗Rmとスロット部73の流体抵抗Rsとすると、Rs>>Rmとすることで、供給口が1つであっても、スロット部73の流体抵抗が大きいため、泡状定着液は、まずマニホールド部72を満たし、その後、マニホールド部72は均一な圧力となっているため、スロット部73へ泡状定着液が均一に流れ出す。このため、スロット部73の出口でスロット長手方向に均一な泡状定着液の供給をすることができる。なお、供給口は複数設け、複数の供給口に応じてスロット部を独立に分割してもかまわない。供給口を複数設けることで、画像余白部には液を補給しないようにすることが可能となり、定着液の塗布量削減となる。
図14は本発明の一実施の形態に係る定着装置の構成を示す概略構成図である。同図に示す本実施の形態の定着装置は、図13の液膜厚制御用ブレード70を用いた定着装置の一例である。なお、加圧ローラ43は弾性層としてスポンジ素材を用いて構成した。上述したように、泡状定着液がトナー等の樹脂含有微粒子層を浸透して紙等の媒体まで到達した後に塗布ローラと樹脂含有微粒子層が剥離するようにニップ時間のタイミングを取る必要がある。このため、ニップ時間として50ミリ秒から300ミリ秒の範囲を確保するため、弱い加圧力で大きく変形可能なスポンジ部材を用いた。
なお、ニップ時間は、ニップ時間=ニップ幅/紙の搬送速度により算出される。紙の搬送速度は、紙搬送駆動機構の設計データにより求めることができる。ニップ幅は、塗布ローラ全面に乾燥しない着色塗料を薄くつけて、記録媒体を塗布ローラ41及び対峙する加圧ローラ43に挟んで加圧(ローラは回転させない状態で)し、記録媒体に着色塗料を付着させ、着色部(通常長方形の形に着色)における紙搬送方向の長さをニップ幅として測定することで求めることができる。
記録媒体の搬送速度に応じて、ニップ幅を調整することでニップ時間を泡状定着液のトナー層浸透時間と同じかそれ以上にする必要がある。図14に示す例では、加圧ローラ43を弾性層として弾性多孔質体(以下スポンジと称す)とすることで、記録媒体の搬送速度に応じて、塗布ローラ41と加圧ローラ43の軸間距離を変更しニップ幅を変えることが容易となる。加圧ローラ43をスポンジの代わりに弾性ゴムも適するが、スポンジは弾性ゴムよりも弱い力で変形させることが可能であり、塗布ローラ41の加圧力を過剰に高くすることなく長いニップ幅を確保することができる。
なお、定着液中には樹脂軟化または膨潤剤が含有されており、スポンジ素材で形成された加圧ローラに定着液が万が一付着した場合、スポンジ素材が軟化等の不具合が発生する恐れがあるため、スポンジ素材の樹脂材は、軟化または膨潤剤に対し軟化や膨潤を示さない素材が望ましい。また、スポンジ素材を用いた加圧ローラは、可とう性フィルムで覆った構成であってもよい。スポンジ素材が軟化または膨潤剤で劣化する素材であっても、軟化または膨潤剤により軟化や膨潤を示さない可とう性フィルムで覆うことでスポンジローラの劣化を防止することができる。スポンジ素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどの樹脂の多孔質体などが適する。また、スポンジを覆う可とう性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、四フッ化エチレン・バーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが適する。
図14において、塗布ローラ41とスポンジ素材を用いた加圧ローラ43が常時接触している構成の場合、記録媒体が搬送されていない時に塗布ローラ41上の泡状定着液が加圧ローラ43に付着し汚す恐れがあり、その防止のため、紙先端検知手段(図示せず)を塗布ローラ41へ記録媒体が搬送される手前に設け、先端検知信号に応じて、記録媒体の先端から後方にのみ泡状定着液が塗布されるようなタイミングで塗布ローラ41に泡状定着液を形成することが望ましい。
また、図14において、待機時は塗布ローラ41とスポンジ素材を用いた加圧ローラ43はそれぞれ離れており、図示していない駆動機構により、塗布時のみ、記録媒体の先端検知手段に応じて塗布ローラ41とスポンジ素材を用いた加圧ローラ43を接触させる構成も望ましい。更に、記録媒体の後端検知も行い、記録媒体の後端検知信号に応じて塗布ローラ41とスポンジ素材を用いた加圧ローラ43を離すことが望ましい。
更に、泡状定着液の泡粘度により浸透時間が変化するため、ニップ時間及びニップ圧力が一定であると、例えば定着液処方の変更や使用環境温度の低下が原因で泡粘度が上昇した場合、トナー層浸透時間がニップ時間よりも長くなり画像劣化を起こす恐れがある。これを防止するため、ニップ圧力によりトナー層浸透時間が変化することを利用し、泡状定着液の泡粘度に応じて、必ずニップ時間がトナー層浸透時間よりも同じか長くなるよう調整することが望ましい。
ここで、泡粘度とは、上記のごとくコーンプレート式回転粘度計における回転粘度のことである。実際の定着装置又は画像形成装置において、泡粘度検知手段としては、このコーンプレート式回転粘度計の測定原理に近い手段が望ましい。例えば、図14において、所望の泡状定着液を作成した後補給口から出す手前の流路パイプ内に回転子を設け、回転子にかかるモータトルクを検出し、正式な回転粘度の代用値として泡粘度とみなす手段や、カンチレバー型の振動子を設け、固有振動数変化を検知し、正式な回転粘度の代用値として泡粘度とみなす手段が望ましい。また、ニップ圧力の調整手段としては、塗布ローラと加圧ローラとの軸間距離を可変できる機構を設け、泡粘度検出信号に応じて、塗布ローラと加圧ローラの軸間距離を変える手段が望ましい。
次に、トナー層浸透時間をなるべく短くするためには、接触付与手段上の泡状定着液層の厚みはトナー層の厚み以上とする必要がある。これは、トナーに限らず、他の樹脂含有微粒子の場合も同様である。さて、樹脂含有微粒子がトナーの場合、カラー画像では、記録媒体上のトナー層厚みは色や明暗により異なる。そこで、泡状定着液層の厚みは、トナー層の厚みは紙上の付着トナー層の最大値を基準として設定する。画像信号からトナー層の最大値は求めることができるため、画像信号に応じて、トナー層の最大値に対し、例えば図14において、塗布ローラ41上の泡状定着液の層厚みを液膜厚制御用ブレード70の隙間制御により行い(図5参照)、必ず最大トナー層厚み以上になるように泡状定着液層厚みを制御する。各画像機器において、記録媒体上の付着トナー層は、スキャナやPCからの画像信号に応じて設定テーブルに基づき算出された値によって一定に決まる。そこで、画像信号をもとに記録媒体上に付着する設定値の最大値に合わせてその最大値以上に塗布ローラ上の泡状定着液の層厚みを調整する。
また、トナー層厚みが異なると、トナー層浸透時間が異なる(トナー層が厚いほど浸透時間は長くなる)ことから、トナー層厚みに応じて、塗布ローラと記録媒体との接触部のニップにおけるニップ時間を可変にする必要がある。ニップ時間可変手段としては、紙搬送速度を変化させる手段やニップ幅を変化させる手段が適する。画像情報信号から記録媒体上のトナー層最大値を算出し、浸透時間を換算しその浸透時間以上となるようにニップ幅や紙搬送速度を変化させる。
図15は本発明の一実施の形態に係る定着装置の別の構成を示す概略構成図である。同図に示す本実施の形態の定着装置は、図13の液膜厚制御用ブレードを用いた定着装置の別の例である。図15に示すように、図14の塗布ローラの代わりに塗布ベルトを用いて記録媒体上の未定着トナーに塗布し、図14の加圧ローラの代わりに加圧ベルトを用いたものである。大きな泡を生成する構成とその大きな泡をせん断力で分泡する構成からなる泡状定着液生成手段30で生成し、液供給口より所望の泡径を有する泡状定着液を液膜厚制御用ブレード70供給口へチューブ等を用いて供給する。なお、図15に示す定着装置は、液膜厚制御用ブレード70を、塗布ベルト81の搬送ローラ82の曲面部に、接面に対し平行に配置した例である。そして、液膜厚制御用ブレード70のブレード板と塗布ベルト81のギャップを調整し、塗布ベルト81上の泡状の定着液の層膜厚を制御し、泡状定着液の最適膜厚の制御を行っている。なお、塗布ベルト81としては、例えばシームレスニッケルベルトやシームレスPETファイルなどの基体にPFAのような離型性フッ素樹脂をコートした部材を用いる。
このように、接触付与手段にベルトを用いる構成では、ニップ幅を容易に広くすることが可能となる。従って、接触付与手段にベルトを用いる構成は図15に限らず、図16に示すように塗布ローラはベルトで、加圧手段をベルトではなく、ローラとする構成も望ましい。また、塗布側は塗布ローラとし、加圧手段をベルトとする構成も望ましい。泡状定着液の作製手段は上記構成と同じである。液膜厚制御用ブレード70は図13の構成とし、液供給口より、所望の泡径を有する泡状定着液を図13の構成の液膜厚制御用ブレード70の供給口へチューブ等を用いて供給する。なお、図16において、塗布ベルト81の一部にベルト支持ローラ84を設けて曲面を形成し、液膜厚制御用ブレード70を、その曲面部の接面に対し平行に配置した。本発明における泡状定着液は、流体としての性質が極めて小さな状態であるため、重力方向に対して泡状定着液が垂れ落ちることがない。このため、ブレードのスロット部面が、下向きであっても液だれがないため問題なく配置することができる。
以上の図15及び図16に示す本実施の形態の定着装置のように、塗布側をベルト構成とすることで容易にニップ幅を広くすることが可能となり、紙にしわが発生するような無理な力をかけることもなくなり、ニップ時間が同じだとすると紙の搬送速度を速くすることが可能となり、高速定着が可能となる。
次に、定着液の液処方について説明する。泡状の定着液は、上述したように、軟化剤を含有した液体中に気泡を含有した構成である。軟化剤を含有した液体は、気泡を安定に含有し、なるべく均一な気泡の大きさからなる気泡層を構成する泡状とするため、起泡剤及び増泡剤を有することが望ましい。また、ある程度粘度が高いほうが、気泡が安定して液体中に分散するため、増粘剤を含有することが望ましい。
また、起泡剤としては、陰イオン界面活性剤、特に、脂肪酸塩が望ましい。脂肪酸塩は界面活性を有するため、水を含有する定着液の表面張力を下げ、定着液を発泡しやすくするとともに、泡表面で脂肪酸塩が層状ラメラ構造をとるため泡壁(プラトー境界)が他の界面活性剤よりも強くなり、泡沫安定性が極めて高くなるまた、脂肪酸塩の起泡性を効果的にするため、定着液には水を含有することが望ましい。脂肪酸としては、大気中での長期安定性の観点から酸化に強い飽和脂肪酸が望ましい。但し、飽和脂肪酸塩を含有する定着液に若干の不飽和脂肪酸塩を含有することで脂肪酸塩の水に対する溶解・分散性を助け、5℃〜15℃までの低気温において、優れた起泡性を有することができ、広い環境温度範囲において定着の安定を可能とし、また、定着液長期放置中の脂肪酸塩の定着液中分離を防止することができる。
更に、飽和脂肪酸塩に用いる脂肪酸としては、炭素数12、14、16及び18の飽和脂肪酸、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が適する。炭素数が11以下の飽和脂肪酸塩は臭気が大きくなり、当該定着液を用いるオフィス・家庭で用いる画像形成機器に適さない。また、炭素数19以上の飽和脂肪酸塩は、水に対する溶解性が低下し、定着液の放置安定性を著しく低下させてしまう。これらの飽和脂肪酸による飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。
また、不飽和脂肪酸塩を用いてもよく、炭素数18で2重結合数が1から3の不飽和脂肪酸が望ましい。具体的には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が適する。2重結合が4以上では反応性が強いため、定着液の放置安定性が劣ってしまう。これらの不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。また、上記飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩を混合して起泡剤として用いても構わない。
更に、上記飽和脂肪酸塩又は不飽和脂肪酸塩において、当該定着液の起泡剤として用いる場合、ナトリウム塩、カリウム塩もしくはアミン塩であることが望ましい。定着装置に電源を投入後、素早く定着可能な状態にすることは定着装置の商品価値として重要な要素である。定着装置において定着可能な状態とするためには、定着液が適切な泡状となっていることが必須であるが、上記の脂肪酸塩は素早く起泡することで、電源投入後定着可能な状態を短時間でつくることができる。特に、アミン塩とすることで、定着液にせん断力を加えたときに最も短時間で起泡し、泡状定着液を容易に作製することが可能であり、定着装置への電源投入後の定着可能な状態を最も短時間でつくることができる。
樹脂を溶解又は膨潤することで軟化させる軟化剤は、脂肪族エステルを含む。この脂肪族エステルは、トナー等に含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる溶解性又は膨潤性に優れている。
また、軟化剤については、人体に対する安全性の観点から、その急性経口毒性LD50が3g/kgよりも大きい、更に好ましくは5g/kgであることが好ましい。脂肪族エステルは、化粧品原料として多用されているように、人体に対する安全性が高い。
更に、記録媒体に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、軟化剤はトナーの記録媒体への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。すなわち、軟化剤は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し、刺激臭を持たない。
なお、オフィス環境等における臭気を高い精度で測定することができる実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数(10×log(物質の臭気が感じられなくなるまでの物質の希釈倍率))を臭気の指標とすることができる。また、軟化剤に含まれる脂肪族エステルの臭気指数は、10以下であることが好ましい。この場合には、通常のオフィス環境では、不快臭を感じなくなる。更に、軟化剤のみならず、定着液に含まれる他の液剤も同様に、不快臭及び刺激臭を有さないことが好ましい。
本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族エステルは、飽和脂肪族エステルを含む。上記の脂肪族エステルが、飽和脂肪族エステルを含む場合には、軟化剤の保存安定性(酸化、加水分解などに対する耐性)を向上させることができる。また、飽和脂肪族エステルは、人体に対する安全性が高く、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内で溶解又は膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解又は膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
よって、本発明における定着液において、好ましくは、上記の飽和脂肪族エステルの一般式は、
R1COOR2
で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型アルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の飽和脂肪族エステルが、一般式R1COOR2で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、上記の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルの多くについては、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
また、本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができる。例えば、60ppm程度の高速印字では、記録媒体における未定着のトナーに定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するまでの時間は、1秒以内であることが望ましい。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、記録媒体における未定着のトナー等に定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するのに要する時間を、0.1秒以内にすることが可能となる。更に、より少量の、軟化剤の添加によって、トナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができるため、定着液に含まれる、軟化剤の含有量を低減することができる。
よって、本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族ジカルボン酸エステルの一般式は、
R3(COOR4)2
で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の脂肪族ジカルボン酸エステルが、一般式R3(COOR4)2で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記の化合物である脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、コハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
更に、本発明における定着液において、好ましくは上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの一般式は、
R5(COOR6−O−R7)2
で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式R5(COOR6−O−R7)2で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記の化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
また、脂肪酸エステルではないが、クエン酸エステルや炭酸エチレンや炭酸プロピレンも軟化もしくは膨潤剤として適する。
ところで、泡状定着液において、塗布接触ニップ部にてトナー等の微粒子層に泡状定着液を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。そこで泡沫安定性に優れる泡が求められる。このため、定着液中に脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有することが望ましい。脂肪酸アルカノールアミドには(1:1)型と(1:2)型があるが、本発明における泡沫安定性には(1:1)型が適することがわかった。
なお、定着の対象となる樹脂を含有する微粒子は、トナーに限定されず、樹脂を含有する微粒子であれば何れでもよい。例えば、導電性部材を含有した樹脂含有微粒子でもよい。また、記録媒体は、記録紙に限定されず、金属、樹脂、セラミックス等何れでもよい。但し、媒体は定着液に対し浸透性を有することが望ましく、媒体基板が液浸透性を持たない場合は、基板上に液浸透層を有する媒体が望ましい。記録媒体の形態もシート状に限定されず、平面及び曲面を有する立体物でもよい。
例えば、紙のごとき媒体に透明樹脂微粒子を均一に定着させ紙面を保護する(所謂、ニスコート)用途においても、本発明は適用できる。
上記の樹脂を含有する微粒子のうち、電子写真プロセスで用いるトナーは、本発明の定着液との組合せにおいて最も定着への効果が高い。トナーは、色剤と帯電制御剤と結着樹脂や離型剤などのような樹脂を含む。トナーに含まれる樹脂は、特に限定されないが、好適な結着樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、離型剤としては、例えばカルバナウワックスやポリエチレンなどのワックス成分などが挙げられる。トナーは、結着樹脂の他に、公知の着色剤、電荷制御剤、流動性付与剤、外添剤などを含んでもよい。また、トナーは、メチル基を有する疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子をトナーの粒子の表面に固着させることによって、撥水性処理されていることが好ましい。媒体のうち、記録媒体は、特に限定されず、例えば、紙、布、及び液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。本発明における油性とは、室温(20℃)における水に対する溶解度が、0.1重量%以下である性質を意味する。
また、泡状となった定着液は、好ましくは、撥水性処理されたトナーの粒子に対して、十分な親和性を有することが望ましい。ここで、親和性とは、液体が固体に接触したときに、固体の表面に対する液体の拡張濡れの程度を意味する。すなわち、泡状となった定着液は、撥水性処理されたトナーに対して十分な濡れ性を示すことが好ましい。疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子で撥水性処理されたトナーの表面は、疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンの表面に存在するメチル基によって覆われており、おおよそ20mN/m程度の表面エネルギーを有する。現実には撥水性処理されたトナーの表面の全面が疎水性微粒子によって完全に覆われてはいないため、撥水性処理されたトナーの表面エネルギーは、おおよそ、20〜30mN/mであると推測される。よって、撥水性トナーに対して親和性を有する(十分な濡れ性を有する)ためには、泡状となった定着液の表面張力は、20〜30mN/mであることが好ましい。
水性溶媒を用いる場合、界面活性剤を添加することで、表面張力を20〜30mN/mとすることが好ましい。また、水性溶媒の場合、単価もしくは多価アルコールを含有していることが望ましい。これらの材料は、泡状の定着液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする利点を有する。例えばセタノールなどの単価アルコールや、グリセンリン、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコールなどの多価アルコールが望ましい。また、これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
また、定着液中に浸透性改善や紙等媒体のカール防止のために油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成も望ましく、その場合、具体的な分散剤としては、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステルなどが望ましい。
なお、定着中での軟化剤を溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させるため方法としては、例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、及び超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段が挙げられる。いずれにしても、強いせん断応力を定着液中の軟化剤に加えることで溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させる。
また、トナーの定着装置は、本発明における定着液をトナーに供給した後、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)によって溶解又は膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を有してもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、溶解又は膨潤したトナーを加圧することによって、溶解又は膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、記録媒体内へ溶解又は膨潤したトナーを押し込むことによって、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
上述した本発明による画像形成方法を用いて、樹脂を含むトナーの画像を記録媒体に形成する。よって、この別の発明の一実施の形態例の画像形成装置によれば、それぞれ、上述したように、より効率的にトナーを記録媒体に定着させることが可能な画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
図17は別の発明の画像形成装置の構成を示す概略図である。同図に示す画像形成装置は複写機又はプリンタであってもよい。図17の(a)はカラー電子写真のタンデム方式の画像形成装置全体の概略図であり、図17の(b)は図17の(a)の画像形成装置の1つの画像形成ユニットの構成を示す図である。図17の(a),(b)に示す画像形成装置90はトナー像担持体として中間転写ベルト91を有する。この中間転写ベルト91は、3つの支持ローラ92〜94に張架されており、図中の矢印Aの方向に回転する。この中間転写ベルト91に対しては、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成ユニット95〜98が配列されている。これら画像形成ユニットの上方には、図示していない露光装置が配置されている。例えば、画像形成装置が複写機である場合には、スキャナで原稿の画像情報を読み込み、この画像情報に応じて、各感光体ドラム上に静電潜像を書き込むための各露光L1〜L4が露光装置により照射される。中間転写ベルト91を挟んで中間転写ベルト91の支持ローラ94に対向する位置には、二次転写装置99が設けられている。二次転写装置99は、2つの支持ローラ100,101の間に張架された二次転写ベルト102で構成されている。なお、二次転写装置99としては、転写ベルト以外に転写ローラを用いてもよい。また、中間転写ベルト91を挟んで中間転写ベルト91の支持ローラ92に対向する位置には、ベルトクリーニング装置103が配置されている。ベルトクリーニング装置103は、中間転写ベルト91上に残留するトナーを除去するために配置されている。
記録媒体としての記録紙104は、一対の給紙ローラ105で二次転写部へ導かれ、トナー像を記録紙104に転写する際に、二次転写ベルト102を中間転写ベルト91に押し当てることによって、トナー像の転写を行う。トナー像が転写された記録紙104は、二次転写ベルト102によって搬送され、記録紙104に転写された未定着のトナー像は、図示していない露光装置からの画像情報に基づいて泡状の定着液の膜厚を制御する本発明の定着装置によって定着される。すなわち、記録紙104に転写された未定着のトナー像には、図示していない露光装置からの画像情報、例えばカラー画像又は黒ベタ画像に基づいて泡状の定着液層の膜厚が制御されたトナーの定着装置から供給される本発明における泡状の定着液が付与され、泡状の定着液に含まれる、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)によって、未定着のトナー像を、記録紙104に定着させる。
次に、画像形成ユニットについて説明する。図17の(b)に示すように、画像形成ユニット95〜98には、感光体ドラム106の周辺に、帯電装置107、現像装置108、クリーニング装置109及び除電装置110が配置されている。また、中間転写ベルト91を介して、感光体ドラム106に対向する位置に、一次転写装置111が設けられている。また、帯電装置107は、帯電ローラを採用した接触帯電方式の帯電装置である。帯電装置107は、帯電ローラを感光体ドラム106に接触させて、感光体ドラム106に電圧を印加することにより、感光体ドラム106の表面を一様に帯電する。この帯電装置107としては、非接触のスコロトロン等を採用した非接触帯電方式の帯電装置を採用することもできる。また、現像装置108は、現像剤中のトナーを感光体ドラム106上の静電潜像に付着させ、静電潜像を可視化させる。ここで、各色に対応するトナーは、それぞれの色に着色された樹脂材料からなり、これらの樹脂材料は、本発明における定着液により溶解又は膨潤する。なお、現像装置108は、図示しない攪拌部及び現像部を有し、現像に使用されなかった現像剤は、攪拌部に戻され、再利用される。攪拌部におけるトナーの濃度は、トナー濃度センサによって検出され、トナーの濃度が、一定であるように制御されている。更に、一次転写装置111は、感光体ドラム106上で可視化されたトナーを中間転写ベルト91に転写する。ここでは、一次転写装置111としては、転写ローラを採用しており、転写ローラを、中間転写ベルト91を挟んで感光体ドラム106に押し当てている。一次転写装置111としては、導電性ブラシ、非接触のコロナチャージャー等を採用することもできる。また、クリーニング装置109は、感光体ドラム106上の不要なトナーを除去する。クリーニング装置109としては、感光体ドラム106に押し当てられる先端を備えたブレードを用いることができる。ここで、クリーニング装置109によって回収されたトナーは、図示しない回収スクリュー及びトナーリサイクル装置によって、現像装置108に回収され、再利用される。更に、除電装置110は、ランプで構成されており、光を照射して感光体ドラム106の表面電位を初期化する。
次に、本発明における定着液及び定着の具体例について説明する。
本発明における以下の具体例では、樹脂含有微粒子としてトナーを用い、以下の製造方法の一例により作製した。
[具体例1]
<定着液の処方>
◇軟化剤を含有する液体
希釈溶媒:イオン交換水 53wt%
軟化剤:コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社 クローダDES)
10wt%
炭酸プロピレン 20wt%
増粘剤:プロピレングリコール 10wt%
増泡剤:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂 マーポンMM) 0.5wt%
起泡剤:パルミチン酸アミン 2.5wt%
ミリスチン酸アミン 1.5wt%
ステアリン酸アミン 0.5wt%
分散剤:POE(20)ラウリルソルビタン(花王 レオドールTW−S120V) 1wt%
ポリエチレングリコールモノステアレート(花王 エマノーン3199) 1wt%
なお、分散剤は、軟化剤の希釈溶媒への溶解性を助長するために用いた。脂肪酸アミンは、脂肪酸とトリエタノールアミンにより脂肪酸アミンを合成した。
上記成分比にて、先ずは、液温120℃にて軟化剤を除いて混合攪拌し溶液を作製した。次に、軟化剤を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて軟化剤が溶解した定着液(フォーム化する前の原液)を作製した。
<塗布装置>
◇大きな泡生成部
図3を基に作製した。
上記の液状定着液保存容器:PET樹脂からなるボトル
液搬送ポンプ:チューブポンプ(チューブ内径2mm、チューブ材質:シリコーンゴム)
搬送流路:内径2mmのシリコーンゴムチューブ
大きな泡を作るための微小孔シート:#400のステンレス製メッシュシート(開口部約40μm)
◇微小な泡生成部
図3を基に作製した。
2重円筒の内側円筒は、回転軸に固定され、図示していない回転駆動モーターにより回転する。2重円筒の材質は、PET樹脂とした。外側円筒内径:10mm・長さ120mm、内側円筒外形:8mm・長さ100mmとした。回転数は、1000rpmから2000rpmの範囲で可変とした。
◇定着液付与手段
図4を基に作製した。上記の微細な泡を生成する手段を用い、泡状の定着液を作成し本実施の形態の定着装置における液膜厚制御用ブレードに供給する構成とした。
加圧ローラ:アルミ合金製ローラ(φ10mm)を芯金とし、外径Φ50mmのポリウレタン泡材(イノアック社 商品名「カラー泡EMO」)を形成したスポンジローラ
塗布ローラ:PFA樹脂を焼付け塗装したSUS製ローラ(φ30mm)
液膜厚制御用ブレード:アルミ合金製支持板に厚み1mmの並板ガラスを接着した。ガラス面を塗布ローラ側に向け、図5に示すように液膜厚制御用ブレードを回転可能とし、10μmから100μmの範囲で塗布ローラとガラス面の隙間を制御できるようにした。そして、図8に示すように、塗布ローラの動径方向に対し直角な接面に対し平行になるように液膜厚制御用ブレードのガラス面を配置した。本発明の効果をみるために、図8の液膜厚制御用ブレードのブレード端部と動径線との位置関係を変えられるようにアルミ合金製支持板に厚み1mmの並板ガラスを接着した。
紙搬送速度:150mm/s
<実施結果>
電子写真方式のプリンタ(リコー社製 IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像が形成されたPPC用紙(リコーT−6200)を定着装置に挿入するタイミングで、液搬送ポンプを駆動し、定着液容器から液状定着液をくみ上げ、液流路を通過させながら、大きな泡を生成する大きな泡生成部と泡を微小にする微小な泡生成部に定着液を通過させると、液排出口から1秒後に泡径5μmから30μmの微小な泡を有する泡状定着液を塗布ローラに供給することができた。泡状定着液のかさ密度はおおよそ0.05g/cm3であった。スポンジ素材を用いた加圧ローラと塗布ローラとの軸間距離を変えて、21mm(ニップ時間140ms)における塗布テストを実施した。なお、トナー層の厚みは30〜40μmとした。図7の浸透時間測定装置による泡状定着液によるトナー層浸透時間は、80ms〜100msであった。
ここで、図8で泡膜60μm±10μmを狙い、液膜厚制御用ブレードと塗布ローラのローラ面との間隔を0.05mm(50μm)とし、動径線に対し、液膜厚制御用ブレードのブレード端部が上流を負値、下流を正値そして、各値における塗布ローラのローラ面の泡膜厚み及び厚みムラの測定結果を以下の表1に示す。
なお、塗布ローラ上の泡膜の厚みは、レーザードップラー式変位計(キーエンス社)を用い、泡膜形成直後、塗布ローラの駆動を止めて、泡膜層と塗布ローラ地肌との段差測定にて求めた。塗布ムラは目視で判定した。
表1のように、ブレード端部位置+0.1mmから最大+0.7mmの範囲が狙いの泡膜の厚みが得られ、かつ塗布ローラのローラ面内で均一な泡膜形成ができる位置関係である。この結果から、動径線よりも液膜厚制御用ブレードのブレード端部は下流の位置である必要が確認でき、更に、上記式(2)から、塗布ローラの半径が15mm、ブレードと塗布ローラ面との間隔を0.05mmのとき、ブレード端部最大位置は、0.387mm〜0.671mmであることから、この結果は、上記式(2)を裏付けている。
[具体例2]
<定着液の処方>
具体例1と同じ。
<塗布装置>
◇微細な泡を生成する手段
具体例1と同じ。
◇定着液付与手段
図3を基に作製した。上記の微細な泡を生成する手段を用い、泡状の定着液を作成し、図13に示すマニホールド部とスロット部を有する液膜厚制御用ブレードにパイプにて供給する構成とした。
加圧ベルト:駆動ローラ(ローラ径Φ10mm)と搬送ローラ(ローラ径Φ10mm)の間にシームレスPETフィルムを形成した。
塗布ベルト:駆動ローラ(ローラ径Φ10mm)と2つの搬送ローラ(ローラ径Φ10mm)の間に、PFA樹脂を焼付け塗装したシームレスニッケル製ベルトを形成した。
液膜厚制御用ブレード:図13に示すように、アルミ合金製の材料でマニホールド部(縦5mm、横3mm、幅180mm)とスロット部(縦0.1mm、横2mm、幅180mm)を形成した。液膜厚制御用ブレードを、ブレード回転軸を中心に回転可能とし、10μmから100μmの範囲で塗布ローラとガラス面の隙間を制御できるようにした。そして、図8に示すように塗布ローラの動径方向に対し直角な接面に対し平行になるようにブレードを配置した。なお、本発明の効果をみるために、液膜厚制御用ブレードのブレード端部と動径線との位置関係を変えられるようブレード回転軸を上下に微小移動可能とした。
紙搬送速度:150mm/s
<実施結果>
電子写真方式のプリンタ(リコー社製 IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像が形成されたPPC用紙(リコーT−6200)を定着装置に挿入するタイミングで、液搬送ポンプを駆動し、定着液容器から液状定着液をくみ上げ、液流路を通過させながら、大きな泡を生成する大きな泡生成部と泡を微小にする微小な泡生成部に定着液を通過させると、液排出口から1秒後に泡径5μmから30μmの微細な泡を有する泡状定着液を塗布ローラに供給することができた。泡状定着液のかさ密度はおおよそ0/05g/cm3であった。スポンジ素材を用いた加圧ローラと塗布ローラとの軸間距離を変えて、21mm(ニップ時間140ms)における塗布テストを実施した。なお、トナー層の厚みは30〜40μmとした。図7の浸透時間測定装置による泡状定着液によるトナー層浸透時間は、80ms〜100msであった。
ここで、図8で泡膜60μm±10μmを狙い、液膜厚制御用ブレードと塗布ローラのローラ面との間隔を0.05mm(50μm)とし、動径線に対し、液膜厚制御用ブレードのブレード端部が上流を負値、下流を正値そして、各値における塗布ローラのローラ面の泡膜厚み及び厚みムラの測定結果を以下の表2に示す。
なお、塗布ベルト上の泡膜の厚みは、レーザードップラー式変位計(キーエンス社)を用い、泡膜形成直後、塗布ベルトの駆動を止めて、泡膜層と塗布ベルト地肌との段差測定にて求めた。塗布ムラは目視で判定した。
表2のように、ブレード端部位置+0.1mmから最大+0.35mmの範囲が狙いの泡膜の厚みが得られ、かつ、塗布ローラのローラ面内で均一な泡膜形成ができる位置である。この結果から、動径線よりも液膜厚制御用ブレードのブレード端部は下流の位置である必要が確認でき、更に、上記式(2)から、塗布ローラ半径が5mm、ブレードと塗布ローラ面との間隔を0.05mmのとき、ブレード端部最大位置は、0.224mm〜0.387mmであることから、この結果は、上記式(2)を裏付けている。
なお、本発明は上記各実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。