図1に従来の転写紙基材の構成図を示す。図1(b)は転写紙基材の層構成を示す図である。転写紙基材は、ノーサイズ原紙基体2上に、三種のコート層を有する。原紙基体2は広葉樹などから抄造したノーサイズ原紙基体であり、その上にピグメントを有する第一コート層3を塗工する。塗工液にはクレー、軽質炭酸カルシウム、重炭酸カルシウムなどのピグメント他、各種ラテックス、潤滑剤、保水剤を含有させることもできる。その上の第二コート層4および第三コート層5はそれぞれ遅水性再湿糊層と速水溶性再湿糊層からなっている。
遅水性再湿糊層の第二コート層4としては、吸水性を抑制するための可溶性デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、デキストリン、アラビアゴムなどの水溶性樹脂が用いられる。
速水溶性再湿糊層の第三コート層5としては、黄色デキストリンまたはカルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の合成系水溶性接着剤、酸化デンプン、エステル化澱粉、酵素変性澱粉、これらをフラッシュ乾燥して得られる冷水可溶性澱粉等の天然系水溶性接着剤、スチレン−ブタジエン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル系共重合体等の疎水性樹脂エマルジョンを使用することができる。これら水溶性接着剤単独、あるいは疎水性樹脂エマルジョンと2種以上を混合して使用することができる。
従来の焼成絵柄画像形成用転写用紙は、図1(b)に示す転写紙基材上に、図1(a)に示す焼成後に有色なトナー画像形成層6と該トナー画像形成層6を含む該転写紙基材上に樹脂皮膜層7を有してなる。
図1に示すこの転写用紙を水に浸すと糊剤が溶けて樹脂皮膜層7で保持された焼成後に有色であるトナー画像形成層6は図1の第一コート層3から分離するので、これを陶磁器製品などの耐熱性固体表面に貼り付け、焼き付けることにより、耐熱性固体表面に焼成画像を得ることができる。図1(a)に示す本発明の焼成絵柄画像形成転写用紙を水に浸すと上述の転写紙基材の第二コート層4と第三コート層5は水に溶解する。この為、焼成後に有色なトナー画像層6は樹脂皮膜層7に保持された状態で第一コート層3から分離する。
本発明の焼成絵柄画像形成用転写基材(以下「転写基材」ともいう)は紙又はフィルムからなる基体上に上述の遅水性再湿糊層と速水溶性再湿糊層の両方あるいは図2に示す様に速水溶性再湿糊層を有する。基体としては、紙又はPET、PE、PVCなどのプラスチックフィルムやOHPシートなど耐水性フィルムであれば特に制限なく使用可能である。サイズはA3ノビ以内であれば良いが、電子写真方式で用いる為、転写基材の厚さは、前述の糊層を含め転写基材として5mm程度以下が好ましい。
電子写真法でトナー画像層を転写基材に定着させる場合、通常120℃〜160℃程度の定着ローラーの熱にてトナーを可塑化させ着させる方式が一般的である。しかし、図1(b)の2に示す様な水溶性の糊層を有する転写紙基材の場合、定着したトナー画像層が脱離するという不具合を有する。この現象は通常のオフィス用紙では全く観測されない現象である為、トナー画像層の脱離は、転写紙基材に原因があることは明白である。
図3はA4サイズに裁断した原紙基体2の裏面にカール防止の為のバックコート層を持たない図1(b)に示す転写紙基材と普通紙の吸水量を測定した結果である。製造直後の転写紙基材と普通紙のそれぞれを温度湿度が28℃75%の環境中に3時間放置し、経過時間における重量増加分を測定した。重量増加分は吸水量を示すが、転写紙基材の吸水量は普通紙の2倍程度以上であることが分かった。
次に、吸水量を測定したそれぞれの紙を40℃60%の室温環境下に一昼夜放置した後、それぞれの重量変化量を測定した。その結果、転写紙基材の吸水量は約0.13gのままであり、一方普通紙の吸水量は約0gであった。これらの結果から、転写紙基材は製造後に高湿環境下にさらされると水分を吸収し、一旦吸収した水分は普通紙の場合とは異なり、40℃程度の環境下では放出されないことが分かった。
電子写真方式の熱定着において、定着温度は100℃以上であるが、水は通常の圧力下において100℃を超えると液体から気化することは広く知られている。
図4は図3にて測定した転写紙基材の3時間後の吸水量0.13gが100℃以上になった時、全て気化したと仮定した場合の体積変化を算出した結果である。水の気化による体積膨張変化から1cm2あたりの高さ方向変化量は例えば100℃の場合7.1mm、200℃の場合には7.7mm程度であり、転写紙基材表面とトナー層面に空間が生ずることが分かる。
上述の如く、図1(b)、図2に示す様な水溶性の糊層を有する転写紙基材のトナー画像層脱離の現象には、100℃以上のトナー定着工程にて転写紙基材の吸水成分の気化による体積膨張が関与していることが検証された。
本発明のトナー定着方法としては、トナー中の結着樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有した定着液を転写基材上のトナーに付与して該トナーを転写基材に定着させる方法を用いる。また、各種非加熱定着方式を併用することもできる。
以下では、非加熱定着方式である液状定着液を転写基材上に形成されたトナー画像層に付与してトナーを転写基材に定着させる方法について詳述する。
(液状定着液)
トナー定着液としての液状定着液は、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を膨潤・軟化させる成分と水系分散媒と、非水系分散媒からなり、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を膨潤・軟化させる成分を水系分散媒に分散させて調製した水系の分散媒を非水系分散媒に分散して形成され、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を膨潤・軟化させてトナーを転写基材に定着させる。
トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を膨潤・軟化させる成分としての軟化剤は特に限定されないが、具体例としては脂肪族エステルを挙げることができる。この脂肪族エステルは、トナー等に含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる溶解性又は膨潤性に優れている。また本発明の転写基材の糊層を変質させることが無いものが好ましい。この脂肪族エステルは飽和脂肪族エステルを含む。脂肪族エステルが飽和脂肪族エステルを含む場合にはトナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を膨潤・軟化させる成分の保存安定性(酸化、加水分解などに対する耐性)を向上させることができる。
−脂肪族エステル−
前記の脂肪族エステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、飽和脂肪族エステル、脂肪族モノカルボン酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル及び脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルであってもよい。
−−飽和脂肪族エステル−−
前記の脂肪族エステルが飽和脂肪族エステルである場合には、液体可塑剤の保存安定性(酸化、加水分解等に対する耐性)を向上させることができる。また、前記の飽和脂肪族エステルは、人体に対する安全性が高く、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内等の短時間で溶解乃至膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、転写基材に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解乃至膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
−−脂肪族モノカルボン酸エステル−−
前記飽和脂肪族エステルは、下記一般式(2)で表される化合物を含むことが好ましい。
R1COOR2 一般式(2)
[式中、R1は炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は炭素数が1以上6以下の直鎖型又は分岐型のアルキル基である]この化合物を含む場合にはトナーに含まれる樹脂に対する膨潤・軟化性を向上させることができる。
前記の脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えばラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。なお、これらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって糊層への影響は無い。
−−脂肪族ジカルボン酸エステル−−
脂肪族エステルは脂肪族ジカルボン酸エステルを含むことが好ましい。脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナーに含まれる樹脂を溶解または膨潤させることができる。
脂肪族ジカルボン酸エステルは下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
R3(COOR4)2 一般式(3)
[式中、R3は炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は炭素数が2以上5以下の直鎖型又は分岐型のアルキル基である。]
脂肪族ジカルボン酸エステルとして上記化合物を含む場合には、トナーに含まれる樹脂に対する膨潤・軟化性を向上させることができる。
前記脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えばコハク酸ジエチル、コハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。前記化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは非水系分散媒に溶解するが、水系分散媒には溶解しない。よって、これらも脂肪族モノカルボン酸エステル同様に、糊層への悪影響はない。
−−脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキル−−
さらに、トナー定着液を形成する脂肪族エステルは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含んでも良い。脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、転写基材に対するトナーの定着性を向上させることができる。前記脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
R5(COOR6−O−R7)2 一般式(4)
[式中R5は炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は炭素数が1以上4以下のアルキル基である。]
トナー定着液がこの化合物を含む場合には、トナー3に含まれる樹脂に対する膨潤・軟化性を向上させることができる。
前記化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えばコハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。前記化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの多くは水に若干溶解する(若干水性である)。したがって前記化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの多くに
ついては、直接、粒子として非水系媒体に分散させることによってトナー定着液を得ることができる。
更に、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの類似構造として、一般式(5)で表される化合物は、エーテル基の分子内での割合が高くなるため、希釈剤である水に対する溶解性が非常に高くなり、高濃度の液体可塑剤を含有した定着液とすることができる。
R8(COO−(R9−O)n−R10)2 一般式(5)
式中のnは1以上3以下であり、R8は炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R9は炭素数が1以上3以下のアルキレン基であり、R10は炭素数が1以上4以下のアルキル基構ある。
前記一般式(5)で表される化合物としては、例えば、コハク酸ジエトキシエトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエトキシエチル、コハク酸ジメトキシエトキシエチル、コハク酸ジメトキシメトキシプロピル等が挙げられる。
(分散媒)
水系分散媒は単価又は多価のアルコール類、例えばエタノール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、グリセリン等を含んでいても構わない。水系分散媒がエタノールを含む場合は、エタノールは人体に対して極めて安全な材料であり、揮発性有機物の中で唯一、オフィス環境でも使用が可能となる材料である。しかも各種の多孔質部材に対して優れた浸透性を示す材料であり、分散媒として転写基材への優れた浸透性が得られ、定着応答性の向上が図れる。
非水系分散媒はn−アルカンを含むことが好ましい。n−アルカンを含む場合には、特に撥水性処理されたトナーに対して高い親和性を有し、撥水性処理されたトナーを顕著に濡らすことができる。すなわち、パラフィン系溶剤であるn−アルカンは25mN/m以下の低い表面張力を有し、撥水性処理されたトナーに対して高い親和性を有する。その結果、トナー定着液を転写基材に載せた撥水性処理されたトナーに付与するとき、撥水性処理されたトナーによって形成される画像の乱れを低減することができる。例えば、n−アルカンのうちデカン、ドデカン、ウンデカン、トリデカンは低い揮発性を有し、これらのn−アルカンのいずれかを用いることが好ましい。
また、非水系分散媒はジメチルシリコーンを含んでいてもよい。非水系分散媒がジメチルシリコーンを含む場合には、特に撥水性処理されたトナーに対して高い親和性を有し、撥水性処理されたトナーを、顕著に濡らすことができる。すなわち、シリコーン系溶剤であるジメチルシリコーンは20mN/m程度の低い表面張力を有し、撥水性処理されたトナーに対して高い親和性を有する。その結果、トナー定着液を転写基材に載せた撥水性処理されたトナーに付与するとき、撥水性処理されたトナーによって形成される画像の乱れを低減することができる。例えば、3mPa・秒以上の粘度を有するジメチルシリコーンは低い揮発性を有し好ましい。
(泡状定着液)
泡状定着液は、前記液状定着液を泡状にして使用するものである。泡状定着液は、定着液を泡状とする起泡剤と、トナー等の樹脂微粒子を軟化させる軟化剤としての可塑剤、を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなるものである。本発明の定着方法においては、この泡状定着液を用いることが好ましい。
上述の軟化剤は水を主成分として泡状にした後、トナー未定着画像に付与することで、トナー画像を乱すことなく未定着トナーを定着させることが知られている。しかし、本発明のフィルム基体には水溶性の糊層があり、この糊層の変質は軟化剤を含む泡状の定着液の媒体が水であることから泡状定着液のかさ密度に留意する必要があることが分かった。
泡状定着液のかさ密度に着眼し転写紙基材上の糊層変質に関して検討した結果、かさ密度は0.04〜0.1g/cm3程度の範囲にあると糊層の変質に影響がでない事が分かった。0.04未満であると泡状定着液の媒体である水成分が多い為に糊層を溶解してしまい、定着後の樹脂皮膜層の分離に支障を来たすことがある。
0.1g/cm3を超える場合には未定着画像を定着する際に画像が乱れる場合があり好ましくない。このかさ密度は軟化剤液に増粘剤、起泡剤や表面張力調整剤を定量調合することで調節することができる。例えば、軟化剤液の表面張力調整剤としては、アクリル系、シリコン系、ビニル系、フッ素系、他、溶媒としても使用可能なアルコール類、グリコール類がある。表面張力が40mN/m以下であり、25℃における粘度が100mPa・s以下のアルコール等としては、例えば、1−ブタノール、1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エトキシエタノール、2−n−ブトキシエタノール、n−ブチルカルビトール等が挙げられる。本件発明では、上記表面張力調整剤のうち、2−n−ブトキシエタノールや1−ブタノールを用いることが、糊層の水溶性特性を維持させるという機能観点からも好ましい。
<固体可塑剤>
固体可塑剤は、常温で固体であり、かつ、後述の希釈剤に可溶であって、この希釈剤に溶解している状態でトナーなどの樹脂微粒子を軟化させる得る限り、特に制限はない。ここで、「常温」とは、熱したり冷やしたりせずに達成される温度のことをいい、例えば、JIS Z8703にて定義されている、5℃〜35℃であることが好ましい。この常温の範囲内であると、固体可塑剤は固体状態となる。すなわち、泡状態の定着液においては水を含むために固体可塑剤は溶融している状態にあるが、未定着のトナーに付与され、該トナーに浸透し、さらにトナーに浸透した定着液の水分が気化などにより量が低下した場合には、前記固体可塑剤は固体の状態に変化する。固体可塑剤を含む定着液を用いた場合には、このように、固体可塑剤が固体の状態に変化する点に注目し、この特性を利用することで定着液付与後のトナー固さを高めることができる。また、常温における適当な条件下で固体可塑剤が樹脂微粒子に対する可塑能力を発揮するとともに、可塑能力を失い固体の状態となると、それ自体が硬化し、タックの防止に寄与することとなる点で、好ましい。
固体可塑剤としては、例えば、被定着物である樹脂微粒子と一定の相溶性を有するなどの親和性を有する官能基を有することが好ましい。ここでいう親和性を有する官能基とは、好ましくは、樹脂微粒子を構成する分子に含まれる官能基と、固体可塑剤に含まれる官能基とが同一である場合に加え、これらの官能基間で一定の相互作用をし得る官能基を有することを意味する。固体可塑剤に含まれる官能基が樹脂微粒子を構成する分子と一定の相互作用をし得る官能基を有すると、これらの官能基の相互作用により樹脂微粒子を構成する分子間に固体可塑剤が進入するきっかけとなり、結果として、固体可塑剤と樹脂微粒子との間でいわゆるポリマーブレンドの状態を形成し、固体可塑剤がトナーなどの樹脂微粒子の少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる際に効果的であるためである。
具体的な例を挙げると、固体可塑剤がポリエチレングリコールであって、該ポリエチレングリコールにエチレンオキサイド基が含まれる。そして、対応する樹脂微粒子には、樹脂分子中にエチレンオキサイド基を含む組合せがそれに相当する。このような場合、固体可塑剤と樹脂微粒子の両者にエチレンオキサイド基が含まれ、これにより親和性を高めることで、両者の相溶性を高める効果が奏するものである。一方、この考え方は、固体可塑剤と樹脂微粒子の両者に親和性を有する官能基を有することで成り立つため、前記エチレンオキサイド基に限定されることはなく、他の例としては、プロピレンオキサイド基を利用してもよく、さらには、公知のトナーに含まれる官能基を固体可塑剤内に含ませる場合も有効に作用する。
固体可塑剤としては、上記の要件のほか、一定の条件下で可塑能力を発揮するものが挙げられ、例えば、下記のものが挙げられる。
(1)後述の希釈剤に溶解することで可塑能力が発揮されるもの:
エチレンオキサイド基を有する部剤:ポリエチレングリコールのうち、分子量が1,000〜2,000のもの
(2)希釈剤に溶解されても可塑能力は発揮されないが後述の液体可塑剤が少量存在すると可塑能力が発揮されるもの
エチレンオキサイド基を有する部剤:ポリエチレングリコールのうち、分子量が2,000〜10,000のもの
(3)希釈剤に溶解されても可塑能力は発揮されないが若干の加温(例えば、50℃〜100℃程度)により可塑能力が発揮されるもの
エチレンオキサイド基を有する部剤:ポリエチレングリコールのうち、分子量が2,000〜10,000
ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル類:ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテルなど
上記(1)で例示したポリエチレングリコールの分子量が、1,000未満であると、周囲環境によって定着画像が溶融する場合があり、2,000を超えると、前記常温状態で固体状態ではなくなるため、固体可塑剤のみを利用し、任意成分である後述の液体可塑剤を共有しない定着液の系内においては十分な可塑能力が発揮できない場合がある。このような技術的な意義のもと、前記分子量は、1000〜2000であることが好ましい。
上記(2)で例示したポリエチレングリコールの分子量が、10,000を超えると、常温状態で明らかに固体状態ではなくなるため、被定着物である樹脂微粒子間に粒界が生じてしまう場合がある。このような観点から、固体可塑剤のみを利用し、液体可塑剤を共有しない定着液の系内においては、分子量が10000以上である場合は使用が困難であることを明らかにすると共に、定着液に水を含む態様にて使用される場合には、分子量を1000から10000が使用可能な分子量であることを見出した。
上記(3)に例示の固体可塑剤の加温の温度としては、可塑能力が発揮できる範囲であれば、特に制限はないが、50℃〜100℃が好ましい。上記加温の温度が、50℃未満であると、定着が不十分である場合があり、100℃を超えると、エネルギー消費の点で、不経済である。
固体可塑剤の含有量としては、特に制限はないが、定着液の質量に対して、5質量%〜30質量%であることが好ましい。含有量が、5質量%未満であると、定着が困難となるためであり、30質量%を超えると、定着液及び泡状定着液としての粘度が高くなり、加えて泡立ちの悪さや、泡としての安定性に欠け、品質上問題が生じる。
<液体可塑剤>
定着液は、液体可塑剤を有してもよい。希釈剤に可溶であって、一定の条件下で可塑能力を発揮するものであれば、特に制限はなく、例えば、単独で可塑能力を発揮してトナーを構成する樹脂微粒子の少なくとも一部を溶解乃至膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させるものであってもよいが、上記の固体可塑剤と組み合わせることで可塑能力を発揮するものであってもよい。液体可塑剤の例としては、一定の条件下で溶解性乃至膨潤性に優れている点で、エステル化合物が挙げられる。このエステル化合物のなかでも、樹脂の軟化能力が優れている点、又は後述する希釈剤による起泡性の阻害の程度が低い点で、脂肪族エステル又は炭酸エステルが、より好ましい。当該脂肪族エステルとしては、前記液状定着液の軟化剤として例示した脂肪族エステル(例えば、飽和脂肪族エステル、脂肪族モノカルボン酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル及び脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキル)を目的に応じて適宜選択して好ましく用いることができる。
液体可塑剤は、人体に対する安全性の観点から、その急性経口毒性LD50が3g/kgよりも大きいことが好ましく、5g/kg以上であることがより好ましい。液体可塑剤として、前記の脂肪族エステルは、化粧品原料として多用されているように、人体に対する安全性が高いものであることから、特に好ましい。
また、転写基材に対する樹脂微粒子としてのトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、液体可塑剤は、トナーの転写基材への定着後にもトナー中に残留するため、転写基材に対するトナーの定着は、揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。この点で、液体可塑剤は、揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。前記の脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し刺激臭を持たない点で、より好ましい。
−炭酸エステル−
液体可塑剤の一例である炭酸エステルとしては、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート)などの環状エステル類、グリセロール1,2−カルボナート、4−メトキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン等が挙げられる。
また、前記以外のエステル化合物としては、例えばクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル;エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジアセタート等のグリコールをエステル化した化合物;モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン等のグリセリンをエステル化した化合物等が挙げられる。
液体可塑剤の含有量は、定着液の質量に対して、0.5質量%〜50質量%であることが好ましく、5質量%〜40質量%であることがより好ましい。含有量が、0.5質量%未満であると、トナーに含まれる樹脂微粒子を溶解乃至膨潤させる効果が不十分になることがあり、50質量%を超えると、長時間に亘りトナーに含まれる樹脂の流動性を低下させることができず、定着トナー層が粘着性を有する可能性がある。
<溶解助剤>
定着液は、定着液中の液体可塑剤を溶解する目的で、溶解助剤を含有してもよい。溶解助剤としては、液体可塑剤を溶解させ得るものであれば、特に制限はなく、多価のアルコール類が挙げられる。この多価のアルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが挙げられる。なかでも、液体可塑剤が高濃度でも溶解可能であり且つ起泡剤の起泡性を劣化させない点で、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールであることが好ましい。前記多価のアルコール類の含有量は、定着液の質量に対して、1質量%〜30質量%の範囲が好ましい。含有量が、30質量%を超えると、起泡性がむしろ劣化するため適さず、1質量%未満では、定着液中の液体可塑剤濃度が高くなると希釈溶液である水に液体可塑剤が溶解しにくくなる場合がある。
<増泡剤>
定着液は、泡状化されて、後述の泡状定着液として、樹脂微粒子の定着に用いられるところ、塗布接触ニップ部にてトナー等の微粒子層に泡状定着液を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。そこで、本発明による定着液は、このような現象を抑え泡沫安定性を向上させる目的で、増泡剤をさらに有してもよい。増泡剤としては、特に制限はないが、脂肪酸アルカノールアミドであることが好ましく、泡沫安定性の点で、脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型であることがより好ましい。増泡剤の含有量としては、定着液の質量に対して、0.01質量%〜3質量%であることが好ましい。
<起泡剤>
本発明による定着液に含まれる起泡剤としては、定着液の泡状化するものであれば、特に制限はなく、優れた起泡性と泡沫安定性を実現することができる。起泡剤としては、飽和若しくは不飽和の脂肪酸塩、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩若しくはアルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、又はモノアルキルリン酸塩等のリン酸塩等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。
−脂肪酸塩−
起泡剤のなかでも、脂肪酸塩は、最も泡沫安定性に優れ、定着液の起泡剤として最も適する。
脂肪酸塩としては、脂肪酸ナトリウム塩、脂肪酸カリウム塩又は脂肪酸アミン塩であることが好ましく、脂肪酸アミン塩であることがより好ましい。これらの脂肪酸塩の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、水を加熱し、脂肪酸を添加し、その後トリエタノールアミンを添加して、一定時間撹拌しながら加熱してケン化反応させることで製造してもよい。このとき、脂肪酸とトリエタノールアミンとのモル比を、1:0.5〜1:0.9の範囲と脂肪酸比率を高くすることで、ケン化後、未反応の脂肪酸が残留し、定着液中に脂肪酸と脂肪酸アミン塩とを混合させることができる。同じことは、ナトリウム塩やカリウム塩でも可能である。
起泡剤として用い得る不飽和脂肪酸塩としては、特に制限はないが、炭素数18で2重結合数が1〜3の不飽和脂肪酸塩が好ましい。具体的には、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩が挙げられる。2重結合が4以上では反応性が強いため、定着液の放置安定性が劣ってしまう。これらの不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を一種単独又は二種以上を混合して起泡剤として用いてもよい。また、上記の飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩とを混合して起泡剤として用いてもよい。
液体可塑剤は、消泡作用が強く、定着液中で液体可塑剤の濃度上昇と共に、定着液の起泡性及び泡沫安定性が悪くなり、なかなか起泡しなくなり、泡が直ぐに破泡するため、泡密度の低い泡状定着液を得ることができなくなることがある。
そこで、定着液中の液体可塑剤濃度を高めたときの起泡性が劣化してしまうことを解消するため、起泡剤としてアニオン系界面活性剤のうちで炭素数12〜18の脂肪酸塩を用い、更に炭素数12〜18の脂肪酸を定着液中に含有することにより、液体可塑剤の濃度が高くなっても、定着液の起泡性を維持できる。
ここで、定着液に含まれる起泡剤において、脂肪酸塩の炭素数としては、単に水を起泡する場合と比較して起泡性に優れている点で、12〜18であることが好ましい。具体的には、ラウリン酸塩(炭素数12)、ミリスチン酸塩(炭素数14)、ペンタデシル酸(炭素数15)、パルミチン酸塩(炭素数16)、マルガリン酸(炭素数17)、ステアリン酸塩(炭素数18)が挙げられる。
起泡剤として用いられる脂肪酸塩と共に用いられる脂肪酸と、液体可塑剤との作用について説明する。液体可塑剤としてエステル化合物を用いた場合、エステル化合物はエステル基を化学構造中に有しており、脂肪酸はカルボニル基を化学構造中に有している。この点から、液体可塑剤のエステル基と脂肪酸のカルボニル基とが定着液の系内で、電気的な作用を示し、またそれが分子間の結合作用を生じさせ、定着液の特性として起泡性及び泡沫安定性を向上させると考えられる。
起泡剤として用い得る炭素数12〜18の脂肪酸塩において、炭素数が少ないほうが起泡性に優れているが泡沫安定性が悪く、炭素数が多いほうが起泡性にあまりよくないが泡沫安定性に極めて優れている。そこで、この脂肪酸塩としては、単独の脂肪酸塩を用いてもよいが、炭素数12〜18の脂肪酸塩であって異なる炭素数を有する複数の脂肪酸塩を混合する方がより好ましい。混合比率としては、ミリスチン酸塩(炭素数14)を最も多く含み、ラウリン酸塩(炭素数12)、ステアリン酸塩の割合を低くすることが好ましい。より具体的な脂肪酸塩の比率としては、ラウリン酸塩:ミリスチン酸塩:パルミチン酸塩:ステアリン酸塩の質量比で、0:6:3:1、0:4:3:1、1:5:3:1、1:4:4:1等が適する。
起泡剤の含有量は、定着液の質量に対して、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜10質量%であることがより好ましい。含有量が、0.1質量%未満であると、起泡性が不十分になることがあり、20質量%を超えると、定着液の粘度が高くなり、起泡性が低下する可能性がある。
定着液中に起泡剤である脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有することで、液体可塑剤の濃度が高くなっても起泡性及び泡沫安定性を維持することができる。液体可塑剤の濃度が、10質量%未満であると、脂肪酸を含有しなくても起泡性に問題はない。しかし、液体可塑剤の濃度が10質量%以上、特に液体可塑剤の濃度が30質量%以上になると、脂肪酸塩だけでは、ほとんど起泡しなくなり起泡性が悪くなる場合がある。起泡性が悪くなった場合であっても、脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有させると、起泡性を維持できる。
ただし、脂肪酸の含有量が多くなりすぎると、起泡剤である脂肪酸塩の比率が下がり、起泡性が再び悪くなる場合がある。このような場合、起泡性が優れている点で、脂肪酸塩のモル数は、脂肪酸のモル数以上のモル数としてもよく、脂肪酸と脂肪酸塩の比率を、5:5〜1:9の範囲としてもよい。
なお、同じ炭素数の脂肪酸と脂肪酸塩との組合せだけでなく、例えば、脂肪酸塩がミリスチン酸アミンであり脂肪酸がステアリン酸である組合せや、脂肪酸塩がパルミチン酸カリウムであり脂肪酸がステアリン酸である組み合わせのように、炭素数が12〜18の範囲で脂肪酸塩と脂肪酸との炭素数が異なる組合せであってもよい。炭素数12〜18の範囲の脂肪酸を定着液に含有することで、高濃度の液体可塑剤を含有しても、起泡性が悪くならず、泡沫安定性に優れ、密度の極めて低い泡化を可能とする。
また、起泡性が悪化するのを防止し得る点で、他のアニオン系界面活性剤(例えばアルキルエーテル硫酸塩(AES))を起泡剤とし、炭素数12〜18の脂肪酸をさらに含有してもよい。
<希釈剤>
本発明による定着液に含まれる希釈剤としては、水を含む限り特に制限はなく、例えば、水、水にアルコール類等を添加した水性溶媒、等が好ましい。水としては、例えばイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
希釈剤として水性溶媒を用いる場合には、界面活性剤を添加してもよく、なかでも、定着液の表面張力を20mN/m〜30mN/mとすることが好ましい。前記アルコール類としては、泡状の定着液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする点で、例えばセタノール等の単価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
希釈剤は、浸透性改善や紙等媒体のカール防止と目的として、油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成であることも好ましい。この油性成分としては、公知の種々の材料を用いることができる。油性成分を含有する希釈剤の場合、分散剤を用いてエマルジョンを形成してもよく、このエマルジョンの形成に用いる分散剤としては、公知の種々の材料を用いることができるが、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレート等のソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖エステル等が好ましい。
分散剤を用いて定着液をエマルジョンの形態に分散させる方法として、特に制限はなく、公知の種々の方法を用いればよい。例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、及び超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段が挙げられる。なかでも、定着液中の軟化剤に強いせん断応力を加える方法であることが好ましい。
(定着装置)
−泡状定着液を用いた場合の定着方法、定着装置−
[定着方法及び定着装置]
泡状定着液を用いた場合の定着方法は、泡状定着液生成工程と、膜厚調整工程と、泡状定着液付与工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
泡状定着液を用いた場合の定着装置は、泡状定着液生成手段と、泡状定着液付与手段と、膜厚調整手段とを有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
<泡状定着液生成工程及び泡状定着液生成手段>
泡状定着液生成工程は、定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する工程であり、泡状定着液生成手段により実施される。
図5に示すように、泡状定着液生成手段によって定着液を泡で構成された泡状定着液14とすることで、定着液のかさ密度を低くできると共に塗布ローラ11上の定着液層を厚くすることができ、更には定着液の表面張力による影響が抑えられるため、塗布ローラ11への樹脂微粒子のオフセットを防止しながら転写基材12上の樹脂微粒子層(トナー層)に均一に泡状定着液14を塗付することができる。
図6は塗布時の泡状定着液の層構成例を示す概略図である。同図に示す液体21は軟化剤を含有し、液体中に気泡22を含有した泡状の構成である。このように、気泡22を大量に含有することで、定着液20のかさ密度は極めて低くすることができる。この構成とすることで、定着液塗布時は、体積が多い状態で塗布しても、かさ密度が低く、塗布重量は小さいため、その後気泡22が破泡してしまえば、実質的な塗布量は極めて少なくすることができる。なお、本発明における泡状とは、液体中に気泡が分散し、液体が圧縮性を帯びた状態を示す。
泡状定着液生成工程及び泡状定着液生成手段としては、上記の本発明による定着液を泡状化して泡状定着液を生成し得るものであれば、特に制限はない。
本発明の転写基材は電子写真方式により未定着画像を得た後、上述の定着液、好ましくは泡状定着液にて定着させることにより得られる。図7、8は泡状定着液を用いた場合の一例を示す概略構成図である。図7は泡状定着液生成手段の構成を示す概略図であり、図8は泡状定着液生成手段で生成した泡状定着液を塗布ローラに塗布し、塗布ローラに塗布された泡状定着液を未定着トナー付着塗布する定着液付与手段の構成を示す概略図である。
図7に示す泡状定着液生成手段30は、上記の本発明による定着液等の液状定着液32を貯留する定着液容器31と、液状定着液32を液搬送する液搬送パイプ34と、液搬送するための駆動を得る搬送ポンプ33と、気体と液体とを混合する気体・液体混合部35と、液状定着液32を泡状化して所望の泡状定着液を得る泡生成部38とを有する。
定着液容器31に貯留された液状定着液32は、搬送ポンプ33の駆動力によって液搬送パイプ34を液搬送され、気体・液体混合部35へと送られる。搬送ポンプとしては、液状定着液を液搬送し得るものであれば、特に制限はなく、ギヤポンプ、ベローズポンプ等があるが、チューブポンプが好ましい。ギヤポンプ等の振動機構や回転機構があると、ポンプ内で定着液が起泡し、定着液に圧縮性が出て、搬送能力が低下する恐れがある。また、上記の機構部品等が定着液を汚染したり、逆に機構部品を劣化させる恐れがある。一方、チューブポンプは、チューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であるため、定着液と接する部材はチューブだけであり、定着液に対し耐液性を有する部材を用いることで、液の汚染やポンプ系部品の劣化がない。また、チューブを変形させるだけなので、液が起泡せず、搬送能力の低下を防止できる。
気体・液体混合部35には、空気口36が設けられ、液の流れとともに、空気口36に負圧が発生し、空気口36から気体が気体・液体混合部35に導入され、液体と気体が混合される。更に、微小孔シート37を通過することで、泡径の揃った大きな泡を生成させることができる。孔径は、30μm〜100μmが好ましい。図7の微小孔シート37に限らず、連泡構造の多孔質部材であればよく、孔径30μm〜100μmを有する焼結セラミックス板や不織布や発泡樹脂シートであってもよい。また、別の大きな泡の生成方法としては、上記の搬送ポンプより供給された液状定着液と空気口からの空気を羽根状攪拌子で攪拌しながら、液に気泡を巻き込みながら大きな泡を生成させる構成や、上記の搬送ポンプより供給された液状定着液に空気供給ポンプ等でバブリングを行い大きな泡を生成する構成も好ましい。
次に、空気と混合された液状定着液32は、所望の泡状定着液を得る泡生成部38に送液される。泡生成部38において、空気と混合された液状定着液32には、せん断力が加えられ、大きな泡を分割して2つ以上に分泡化される。泡生成部38の構成としては、このように行われ得るものであれば、特に制限はないが、閉じた二重円筒で、内側円筒が回転可能な構成とし、外部円筒の一部より、大きな泡状定着液を供給し、内部の回転する円筒と外部円筒との隙間(ここが流路となる)を通過しながら、回転円筒によりせん断力を受けるような構成であってもよい。このせん断力により、大きな泡は微小な泡へと変化し、外側円筒に設けられた泡の出口より、所望の微小な泡径を有する泡状定着液を得ることができる。また、内側円筒にらせん状の溝を設けて、円筒内での液搬送能力を高くしてもよい。
定着液は、転写基材上のトナー等の樹脂微粒子層への塗布時に泡状となっていればよく、定着液容器内で泡状である必要はない。定着液容器中では気泡を含有しない液体で、容器から液を供給する時点や、樹脂微粒子層へ付与するまでの液搬送経路で泡状にする手段を設ける構成が好ましい。これは、定着液容器では液体であり容器から液を取り出した後に泡状とする構成のほうが、容器の小型化ができるという大きな利点を有するためである。
一般的に0.5mm〜1mm程度の大きな泡の場合、単なる撹拌等により比較的容易に泡を生成可能であり、大きな泡の生成には数秒以下の時間(0.1秒もかからない)で生成することができる。そこで、この所望の泡径よりも大きな泡であって、目視で観察できる程度の大きさの泡の生成が容易で、且つすばやく得ることができる点に着目し、大きな泡から素早く5μm〜50μm程度の微小な泡を生成する方法を鋭意検討した結果、大きな泡にせん断力を加えることで大きな泡を分泡すると、上記のような液状態から微小な泡を起泡させる方法に比べ、極めて素早く所望の大きさの微小な泡が生成できることを見出した。この点、上記のような泡状定着液生成手段30の構成は、これを実現するために好ましい態様である。
このように、液状定着液を大きな泡径を有する液へと変化させる大きな泡生成部と、大きな泡にせん断力を加えて微小な泡を生成する微小な泡生成部とを組み合わせることで、液状定着液を極めて短時間に5μm〜50μmの微小な泡径を有する泡状定着液を生成させることができる。
特に、樹脂微粒子の平均粒径が5μm〜10μm程度の場合、転写基材12上の樹脂微粒子層13を乱すことなく泡状定着液14を樹脂微粒子層13に付与するには、泡状定着液14の泡径範囲が、5μm〜50μmであることが好ましい。なお、図2に示すように、気泡22で構成された泡状定着液20は、気泡22のそれぞれを区切る液体21から構成される。
<膜厚調整工程及び膜厚調整手段>
本発明による定着方法における膜厚調整工程は、泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する工程であり、膜厚調整手段により実施される。
膜厚調整手段としては、泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成し得る限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば膜厚調整用ブレード、ブレードと塗布ローラとの組み合わせが挙げられる。なお、膜厚調整工程及び膜厚調整手段の態様については、後述する。
<泡状定着液付与工程及び泡状定着液付与手段>
泡状定着液付与工程は、所望の厚みに形成された泡状定着液を媒体上の樹脂微粒子層に付与する工程であり、泡状定着液付与手段により実施される。
図8及び図9は、定着装置における泡状定着液付与手段及び膜厚調整手段の一例を示す概略構成図である。
図8に示す定着装置40は、上述した泡状定着液生成手段30によって生成された所望の微小な泡の泡状定着液を、トナー等を構成する樹脂微粒子からなる樹脂微粒子層(トナー粒子層)へ付与するための塗布ローラ41と、塗布ローラ面に所望の微小な泡の泡状定着液の膜厚を、転写基材上の未定着のトナー層の厚さに応じて調整し、泡状定着液の最適な膜厚の調整を行う膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード42と、塗布ローラ41と対峙する位置に加圧ローラ43とを有する。
この液膜厚調整ブレード42によって泡状定着液の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間に対して最適化した定着液層の膜厚となる。
図8に示す定着液付与手段によって付与された泡状定着液を用いることにより、焼成後に有色なトナーは塗布ローラ上にオフセットしないことが確認されている。また、泡状の定着液は、焼成後に有色なトナー層及および本発明の転写紙基材に厚く付与されたとしても、泡状の定着液のかさ密度が極めて低いため、所定の泡沫時間経過後に含有している気泡が破泡することで、軟化剤を含有した液体の焼成後に有色なトナー粒子の層への微量付与とすることができ未定着画像は乱れることがない他、本発明の転写紙基材上の糊層への悪影響は殆どないことが分かった。所望の微小な泡の泡状定着液は、図7に示す様な大きな泡を生成する大きな泡生成部と大きな泡をせん断力で分泡して微小な泡を生成する微小な泡生成部とを含んで構成されている泡状定着液生成手段で生成され、液供給口より液膜厚調整用ブレード42と塗布ローラ41の間に滴下され、膜厚調整用ブレード42によって膜厚調整され、所望の厚みの泡状定着液層として塗布ローラ41に配置される。
未定着トナーを表面上に有する転写基材は、塗布ローラ41と加圧ローラ43とからなるニップ部を通過する。一方、塗布ローラ41上に形成された泡状定着液層は、未定着トナーを有する転写基材のニップ部の通過に同期して、未定着トナー上に付与される。
また、図9は、塗布ローラ41及び膜厚調整用ブレード42を拡大した概略図であって、泡状定着液付与手段を構成する塗布ローラ41上には、泡状定着液の層が転写基材上の未定着のトナー層の厚さに応じて膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード42を通じて形成される。この膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード42によって泡状定着液の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間に対して最適化した定着液層の膜厚となる。所望の微小な泡の泡状定着液は、上記のように、大きな泡を生成する大きな泡生成部と大きな泡をせん断力で分泡して微小な泡を生成する微小な泡生成部とを含んで構成されている泡状定着液生成手段30で生成され、液供給口より塗布ローラ41と膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード42との間に滴下される。
泡状定着液の塗布ローラ上での膜厚調整は、図10及び図11に示すように、塗布ローラ41とギャップを設けた膜厚調整用ブレード42を用い、図10に示すように膜厚を薄くするときはギャップを狭くし、図11に示すように膜厚を厚くするときはギャップを広くするように行ってもよい。ギャップの調整は、膜厚調整用ブレード42の端部に、駆動可能な回転軸を用い、トナー層の厚さや環境温度等、更には泡状定着液の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間を調整するための最適な膜厚を調整してもよい。
泡状定着液付与手段を構成する塗布ローラの形状、構造、大きさ及び材質としては、泡状定着液を付与し得る限り、特に制限はないが、曲面部を少なくともその表面の一部に有するものであることが好ましい。
膜厚調整用ブレードとしては、図10及び図11の膜厚調整用ブレードのほかに、ワイヤーバーであってもよい。ワイヤーバーによって、塗布ローラ上の泡状定着液の厚みを調整し、泡状定着液は、上記のごとく、大きな泡を生成する大きな泡生成部とその大きな泡をせん断力で分泡する微小な泡生成部とを有する泡状定着液生成手段によって生成され、液供給口より、膜調整ワイヤーバーと塗布ローラとの間に滴下する。ワイヤーバーを膜厚調整手段として用いることで、ブレードに比べ、塗布ローラ面の軸方向の泡状定着液膜均一性が向上する。
図12は、本発明の一実施の形態に係る定着装置の構成を示す概略構成図である。図12に示す実施の形態の定着装置40において、加圧ローラ43は、弾性層として弾性多孔質体(以下、スポンジ素材とも称する。)を用いて構成してもよい。泡状定着液がトナー等の樹脂微粒子層を浸透して紙等の媒体まで到達した後に塗布ローラと樹脂微粒子層とが剥離するようにニップ時間のタイミングを取る必要がある。この点、スポンジ素材からなる加圧ローラ43は、ニップ時間として50ミリ秒〜300ミリ秒の範囲を確保し、且つ弱い加圧力で大きく変形可能であることから、好ましい。
なお、ニップ時間は、ニップ時間=ニップ幅/紙の搬送速度により算出される。紙の搬送速度は、紙搬送駆動機構の設計データにより求めることができる。ニップ幅は、塗布ローラ全面に乾燥しない着色塗料を薄くつけて、転写基材を塗布ローラ41及び対峙する加圧ローラ43に挟んで加圧(各ローラは回転させない状態で)し、転写基材に着色塗料を付着させ、着色部(通常長方形の形に着色)における紙搬送方向の長さをニップ幅として測定することで求めることができる。
転写基材の搬送速度に応じてニップ幅を調整することで、ニップ時間を泡状定着液のトナー層浸透時間と同じかそれ以上にする必要がある。図12に示す例では、加圧ローラ43を弾性層としてスポンジ素材とすることで、転写基材の搬送速度に応じて、塗布ローラ41と加圧ローラ43との軸間距離を変更しニップ幅を変えることが容易となる。スポンジの代わりに弾性ゴムを加圧ローラ43の素材として用いてもよいが、スポンジは弾性ゴムよりも弱い力で変形させることが可能であり、塗布ローラ41の加圧力を過剰に高くすることなく長いニップ幅を確保することができる。
なお、定着液中には可塑剤が含有されており、スポンジ素材で形成された加圧ローラに定着液が万が一付着した場合、スポンジ素材が軟化等の不具合が発生する恐れがある。そのため、スポンジ素材の樹脂材は、液体可塑剤に対し軟化や膨潤を示さない素材が好ましい。また、スポンジ素材を用いた加圧ローラは、可撓性フィルムで覆った構成であってもよい。スポンジ素材が液体可塑剤で劣化する素材であっても、液体可塑剤により軟化や膨潤を示さない可撓性フィルムで覆うことでスポンジローラの劣化を防止することができる。スポンジ素材としては、特に制限はなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の樹脂の多孔質体が挙げられる。また、スポンジを覆う可撓性フィルムとしては、可撓性を有する限り、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が挙げられる。
図12において、塗布ローラ41とスポンジ素材を用いた加圧ローラ43とが常時接触している構成の場合、転写基材が搬送されていない時に塗布ローラ41上の泡状定着液が加圧ローラ43に付着し汚す恐れがある。これを防止するため、塗布ローラ41からみて転写基材の搬送方向の上流に紙先端検知手段(不図示)を設け、先端検知信号に応じて、転写基材の先端から後方にのみ泡状定着液が塗布されるようなタイミングで塗布ローラ41に泡状定着液を形成することが好ましい。
図12に記載の定着装置40は、待機時は塗布ローラ41とスポンジ素材を用いた加圧ローラ43とはそれぞれ離れており、図示していない駆動機構により、塗布時のみ、転写基材の先端検知手段に応じて塗布ローラ41とスポンジ素材を用いた加圧ローラ43とを接触させる構成であることも好ましい。また、図12に記載の定着装置40は、転写基材の後端検知も行い、転写基材の後端検知信号に応じて塗布ローラ41とスポンジ素材を用いた加圧ローラ43とを離すように構成することも好ましい。
図13は、本発明の一実施の形態に係る定着装置の別の構成を示す概略構成図である。図13に示す実施の形態の定着装置40は、図12の加圧ローラ43の代わりに加圧ベルト44を用いたものである。大きな泡を生成する大きな泡生成部と大きな泡をせん断力で分泡して微小な泡を生成する微小な泡生成部とを含んで構成されている泡状定着液生成手段30で生成され液供給口より所望の泡径を有する泡状定着液を、膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード42の供給口へチューブ等を用いて供給する。そして、膜厚調整手段の膜厚調整用ブレード42と塗布ローラ41とのギャップを調整して塗布ローラ41上の泡状定着液の層膜厚を調整し、泡状定着液の最適膜厚の調整を行う。加圧ベルト44の材料としては、例えばシームレスニッケルベルト、シームレスPETファイル等の基体にPFAのような離型性フッ素樹脂をコートした部材を用いてもよい。
このように、ベルトを用いる構成では、ニップ幅を容易に広くすることが可能となる。したがって、ベルトを用いる構成としては、図13に限らず、塗布ローラをベルトとし、加圧手段をベルトではなくローラとする構成も好ましい。また、塗布側又は加圧側の少なくとも一方をベルトとする構成とすることで容易にニップ幅を広くすることが可能となり、紙にしわが発生するような無理な力をかけることがない。また、ニップ時間と紙の搬送速度とが同様であると、紙の搬送速度を速くすることが可能となり、高速定着が可能となる。
また、トナーの定着装置は、本発明における定着液をトナーに供給した後、少なくともその一部が軟化乃至膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を有してもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、軟化乃至膨潤した上記のトナーを加圧することによって、軟化乃至膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、転写基材内へ軟化乃至膨潤したこのトナーを押し込むことによって、転写基材に対するトナーの定着性を向上させることができる。
<その他の工程及びその他の手段>
<<加温工程及び加温手段>>
本発明による定着方法及び定着装置は、泡状定着液が付与された樹脂微粒子層を加温する加温工程及び加温手段をさらに有してもよい。加温工程及び加温手段における加温の温度としては、十分な定着特性の得られる範囲であれば、特に制限はないが、例えば、50℃〜100℃が好ましい。上記加温の温度が、50℃未満であると、定着が不十分である場合があり、100℃を超えると、転写紙基材の吸水成分の気化による体積膨張による画像剥離の不具合が生じる。
加温手段の形態としては、上記の態様を実施できるものであれば、ローラーなど、適宜選択すればよい。加温手段をローラーで構成する場合、例えば図14に示すように、加圧ローラ46と加圧ローラ48とで構成し、被定着物と接する側のローラーに赤外線ヒータ47などの加温媒体を設けたものであってもよい。
本発明の画像形成方法は前記本発明の定着方法を用いており、本発明の画像形成装置は本発明の定着方法を具現化した定着装置を用いている。
本発明の画像形成方法は、潜像担持体表面に均一に帯電を施す帯電工程と、帯電した潜像担持体の表面に画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光工程と、現像剤担持体上に現像剤層規制部材により所定層厚の現像剤層を形成し、現像剤層を介して潜像担持体表面に形成された静電潜像を現像し、可視像化する現像工程と、潜像担持体表面の可視像を被転写体に転写する転写工程と、被転写体上の可視像を定着させる定着工程と、を有し、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。そして、定着工程は、本発明の定着方法により行われる。
本発明の画像形成装置は、潜像を担持する潜像担持体と、潜像担持体表面に均一に帯電を施す帯電手段と、帯電した該潜像担持体の表面に画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光手段と、潜像担持体表面に形成された静電潜像にトナーを供給し可視像化する現像手段と、潜像担持体表面の可視像を被転写体に転写する転写手段と、被転写体上の可視像を定着させる定着手段と、を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなり、前記トナーはBET比表面積が2.0〜8.0m2/gである。
前記静電潜像の形成は、例えば前記潜像担持体の表面を帯電手段により一様に帯電させた後、露光手段により像様に露光することにより行うことができる。
前記現像による可視像の形成は、現像剤担持体としての現像ローラ上にトナー層を形成し、現像ローラ上のトナー層を潜像担持体である感光体ドラムと接触させるように搬送することにより、感光体ドラム上の静電潜像を現像することでなされる。トナーは、撹拌手段により攪拌され、機械的に現像剤供給部材へ供給される。現像剤供給部材から供給され、現像剤担持体に堆積したトナーは現像剤担持体の表面に当接するよう設けられた現像剤層規制部材を通過することで均一な薄層に形成されるとともに、さらに帯電される。潜像担持体上に形成された静電潜像は、現像領域において、前記現像手段により帯電したトナーを付着させることで現像され、トナー像となる。
前記可視像の転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。
転写された可視像の定着は、転写基材に転写された可視像を定着装置を用いてなされ、各色のトナーに対し前記転写基材に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
次に本発明の実施形態に係る画像形成装置(プリンタ)の基本的な構成について図15及び図16を参照してさらに説明する。
図15は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、電子写真方式の画像形成装置に適用した一実施形態について説明する。画像形成装置は、イエロー(以下、「Y」と記す。)、シアン(以下、「C」と記す。)、マゼンタ(以下、「M」と記す。)、ブラック(以下、「K」と記す。)の4色のトナーから、カラー画像を形成するものである。
まず、複数の潜像担持体を備え、該複数の潜像担持体を表面移動部材の移動方向に並列させる画像形成装置(「タンデム型画像形成装置」)の基本的な構成について説明する。
この画像形成装置は、潜像担持体として4つの感光体1Y、1C、1M、1Kを備えている。なお、ここではドラム状の感光体を例に挙げているが、ベルト状の感光体を採用することもできる。各感光体1Y、1C、1M、1Kは、それぞれ表面移動部材である中間転写ベルト10に接触しながら、図15中矢印の方向に回転駆動する。各感光体1Y、1C、1M、1Kは、それぞれ中間転写ベルト10に接触しながら、図15中矢印の方向に回転駆動する。各感光体1Y、1C、1M、1Kは、比較的薄い円筒状の導電性基体上に感光層を形成し、更にその感光層の上に保護層を形成したものであり、また、感光層と保護層との間に中間層を設けてもよい。
図16は、感光体を配設する作像形成部2の構成を示す概略図である。なお、画像形成部2Y、2C、2M、2Kにおける各感光体1Y、1C、1M、1K周りの構成はすべて同じであるため、1つの作像形成部2についてのみ図示し、色分け用の符号Y、C、M、Kについては省略してある。感光体1の周りには、その表面移動方向に沿って、帯電手段としての帯電装置3、現像手段としての現像装置5、感光体1上のトナー像を転写基材又は中間転写体10に転写する転写手段としての転写装置6、感光体1上の未転写トナーを除去するクリーニング装置7の順に配置されている。帯電装置3と現像装置5との間には、帯電した感光体1の表面の画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光手段としての露光装置4から発せられる光が感光体1まで通過できるようにスペースが確保されている。
帯電装置3は、感光体1の表面を負極性に帯電する。本実施形態における帯電装置3は、いわゆる接触・近接帯電方式で帯電処理を行う帯電部材としての帯電ローラを備えている。即ち、この帯電装置3は、帯電ローラを感光体1の表面に接触又は近接させ、その帯電ローラに負極性バイアスを印加することで、感光体1の表面を帯電する。感光体1の表面電位が−500Vとなるような直流の帯電バイアスを帯電ローラに印加している。
なお、帯電バイアスとして、直流バイアスに交流バイアスを重畳させたものを利用することもできる。また、帯電装置3には、帯電ローラの表面をクリーニングするクリーニングブラシが設けてもよい。なお、帯電装置3として、帯電ローラの周面上の軸方向両端部分に薄いフィルムを巻き付け、これを感光体1の表面に当接するように設置してもよい。この構成においては、帯電ローラの表面と感光体1の表面との間は、フィルムの厚さ分だけ離間した極めて近接した状態となる。したがって、帯電ローラに印加される帯電バイアスによって、帯電ローラの表面と感光体1の表面との間に放電が発生し、その放電によって感光体1の表面が帯電される。
このようにして帯電した感光体1の表面には、露光装置4によって露光されて各色に対応した静電潜像が形成される。この露光装置4は、各色に対応した画像情報に基づき、感光体1に対して各色に対応した静電潜像を書き込む。なお、本実施形態の露光装置4は、レーザ方式であるが、LEDアレイと結像手段とからなる他の方式を採用することもできる。
トナーボトル31Y、31C、31M、31Kから現像装置5内に補給されたトナーは、供給ローラ5bによって搬送され、現像ローラ5a上に担持されることになる。この現像ローラ5aは、感光体1と対向する現像領域に搬送される。ここで、現像ローラ5aは、感光体1と対向する領域(以下、「現像領域」と記す。)において感光体1の表面よりも速い線速で同方向に表面移動する。そして、現像ローラ5a上のトナーが、感光体1の表面を摺擦しながら、トナーを感光体1の表面に供給する。このとき、現像ローラ5aには、図示しない電源から−300Vの現像バイアスが印加され、これにより現像領域には現像電界が形成される。そして、感光体1上の静電潜像と現像ローラ5aとの間では、現像ローラ5a上のトナーに静電潜像側に向かう静電力が働くことになる。これにより、現像ローラ5a上のトナーは、感光体1上の静電潜像に付着することになる。この付着によって感光体1上の静電潜像は、それぞれ対応する色のトナー像に現像される。
転写装置6における中間転写ベルト10は、3つの支持ローラ11、12、13に張架されており、図15中矢印の方向に無端移動する構成となっている。この中間転写ベルト10上には、各感光体1Y、1C、1M、1K上のトナー像が静電転写方式により互いに重なり合うように転写される。静電転写方式には、転写チャージャを用いた構成もあるが、ここでは転写チリの発生が少ない転写ローラ14を用いた構成を採用している。具体的には、各感光体1Y、1C、1M、1Kと接触する中間転写ベルト10の部分の裏面に、それぞれ転写装置6としての一次転写ローラ14Y、14C、14M、14Kを配置している。ここでは、各一次転写ローラ14Y、14C、14M、14Kにより押圧された中間転写ベルト10の部分と各感光体1Y、1C、1M、1Kとによって、一次転写ニップ部が形成される。そして、各感光体1Y、1C、1M、1K上のトナー像を中間転写ベルト10上に転写する際には、各一次転写ローラ14に正極性のバイアスが印加される。これにより、各一次転写ニップ部には転写電界が形成され、各感光体1Y、1C、1M、1K上のトナー像は、中間転写ベルト10上に静電的に付着し、転写される。
中間転写ベルト10の周りには、その表面に残留したトナーを除去するためのベルトクリーニング装置15が設けられている。このベルトクリーニング装置15は、中間転写ベルト10の表面に付着した不要なトナーをファーブラシ及びクリーニングブレードで回収する構成となっている。なお、回収した不要トナーは、ベルトクリーニング装置15内から図示しない搬送手段により図示しない廃トナータンクまで搬送される。
また、支持ローラ13に張架された中間転写ベルト10の部分には、二次転写ローラ16が接触して配置されている。この中間転写ベルト10と二次転写ローラ16との間には二次転写ニップ部が形成され、この部分に、所定のタイミングで転写基材が送り込まれるようになっている。この転写基材は、露光装置4の図中下側にある給紙カセット20内に収容されており、給紙ローラ21、レジストローラ対22等によって、二次転写ニップ部まで搬送される。そして、中間転写ベルト10上に重ね合わされたトナー像は、二次転写ニップ部において、転写紙上に一括して転写される。この二次転写時には、二次転写ローラ16に正極性のバイアスが印加され、これにより形成される転写電界によって中間転写ベルト10上のトナー像が転写紙上に転写される。
二次転写ニップ部の転写基材搬送方向下流側には、図示していない露光装置からの画像情報に基づいてフォーム状の定着液の膜厚を調整する定着装置によって定着される。すなわち、転写基材に転写された未定着のトナー像には、図示していない露光装置からの画像情報、例えばカラー画像又は黒ベタ画像に基づいてフォーム状の定着液層の膜厚が制御されたトナーの定着装置から供給されるフォーム状の定着液が付与され、フォーム状の定着液に含まれる、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる軟化剤によって、未定着のトナー像を、転写基材に定着させる。これにより、転写紙上に載っていたトナー像が転写基材に定着される。そして、定着後の転写紙は、排紙ローラ24によって、装置上面の排紙トレイ上に排出される。
−噴霧方式による定着方法、定着装置−
[定着方法及び定着装置]
図17には、複写機、プリンター、ファクシミリ、またはそれらの複合機などの画像形成装置の要部構成を示す。図示のものは、電子写真方式のタンデム型カラー画像形成装置であって、中間転写体を用いずに、像担持体上のトナー像を転写基材に直接画像転写する直接転写方式のものである。
図17中符号10は、無端ベルト状の搬送ベルトである。搬送ベルト10は、図示例では駆動ローラ12と従動ローラ13間に掛けまわして図中反時計まわりに回転走行可能に設ける。もちろん、搬送ベルト10を掛けまわすローラは、2つに限らず、別途搬送ベルト10の片寄りを調整するローラや、テンションローラなどを設けて、3つ以上のローラに掛けまわすようにしてもよい。
搬送ベルト10のまわりには、駆動ローラ12と従動ローラ13間の水平張り渡し部分上に、搬送ベルト10の走行方向に沿って順に、ブラック・マゼンタ・シアン・イエローの4つの作像手段15K・15M・15C・15Yを横に並べて設置し、タンデム作像装置16を構成する。タンデム作像装置16の上には、図示省略するが、さらに露光装置などを設けてなる。
搬送ベルト10とタンデム作像装置16間には、搬送ベルト10の反時計まわりの走行とともに図17中右から左へと、転写基材17を搬送する転写基材搬送路を形成する。転写基材搬送路に沿って、上流には図示しないレジストローラを配置し、下流には定着装置18を設置する。
図18には、図17に示す画像形成装置に備える1つの作像手段15の概略構成を示す。4つの作像手段15K・15M・15C・15Yは、それぞれ図18に示すような同一構成とする。
図18中符号20は、ドラム状の像担持体である感光体である。感光体20のまわりには、左上方に配置する帯電装置21から図中矢示する回転方向に順に、現像装置22、転写装置23、クリーニング装置24、除電装置25などを配置する。
ここで、帯電装置21は、図示例では帯電チャージャを用いて均一なマイナス帯電を与える非接触帯電方式を採用したが、もちろん帯電ローラを用いる接触帯電方式を採用してもよい。現像装置22は、この例では、プラス帯電キャリア26とマイナス帯電トナー27とからなる二成分現像剤を使用し、それを現像スリーブ28で担持して感光体20にトナー27のみを付着し、感光体20上の静電潜像を可視像化する。
また、転写装置23は、図示例では非接触のプラス転写コロナチャージャ方式を採用し、搬送ベルト10を挟んで感光体20に対向するように配置するが、非接触のコロナチャージャ方式の他に導電性ブラシや転写ローラなどを用いることもできる。また、クリーニング装置24には、クリーニング部材として、クリーニングブラシ30と、クリーニングブレード31を設ける。これにより、クリーニングブラシ30やクリーニングブレード31で掻き落としたトナーは、不図示の回収スクリュやトナーリサイクル装置で現像装置22に回収して再利用することができる。また、除電装置25としては、例えば除電ランプを用いる。
そして、感光体20の時計まわりの回転とともに、感光体20の表面を帯電装置21で一様に帯電し、不図示の露光装置で書込み光L(図17ではLk・Lm・Lc・Ly)を照射してそれぞれ感光体20上に静電潜像を形成して後、現像装置22で各色トナーを付着してその静電潜像を可視像化し、各感光体20上に各色の単色トナー像を形成する。
転写基材17は、搬送路を通して搬送し、感光体20上に形成した各色トナー像にタイミングを合わせてレジストローラで搬送ベルト10上に送り込む。そして、搬送ベルト10の走行とともにさらに転写基材17を搬送してその搬送する転写基材17にそれぞれ転写装置23で、各感光体20上の単色トナー像を順次転写し、その転写基材17上に各色の単色トナー像を重ね合わせて合成カラー画像を形成する。トナー像転写後の感光体20は、表面をクリーニング装置24で清掃して後、除電装置25で除電して初期化し、再び帯電装置21からはじまる再度の画像形成に備える。
合成カラー画像を形成する転写基材17上のマイナス帯電トナー27は、この時点では電気的に転写基材17に付いているだけであり、強い衝撃を受けたり擦ったりすると、転写基材17上から離れてしまうことから、合成カラー画像を形成した転写基材17は、搬送ベルト10で搬送して定着装置18へと導き、その定着装置18で転写画像を定着して後、不図示の排紙スタック部へと排出する。
定着装置18には、図17に示すように、トナー定着液が定着液滴として噴霧される噴霧手段33と、その噴霧手段33で噴霧された定着液滴に未定着トナーと同極性のマイナスの電荷を付与させる液滴帯電手段34と、その液滴帯電手段34で電荷を付与させた定着液滴の雰囲気中を通して、未定着トナーが載っている転写基材17を搬送する媒体搬送手段35と、その媒体搬送手段35で搬送する転写基材17を未定着トナーおよび定着液滴とは逆極性のプラスに帯電させる帯電手段36とが備えられている。
図19には、図17に示す定着装置18を拡大して示す。
図19から判るとおり、噴霧手段33は、筐体37で区画された噴霧室38内に向けて設置されており、不図示の定着液貯留部に貯留されるトナー定着液が、最頻値の滴径が15μm以下の定着液滴として噴霧されて、噴霧室38が定着液滴で満たされる。
液滴帯電手段34としては、イオナイザなどを用い、噴霧室38内に空気イオンを噴霧して、噴霧手段33で噴霧された定着液滴に混ぜ合わせ、定着液滴を未定着トナーと同極性のマイナスに帯電させる。図示例とは異なり、未定着トナーがプラスに帯電しているときは、定着液滴もプラスに帯電させる。
媒体搬送手段35は、複数のローラ40と、それらのローラ40に掛けまわされて静電吸着して転写基材17を搬送する搬送ベルト41とで構成されている。そして、転写装置23で転写されて図示するように残留電荷がマイナスの未定着トナー42が乗っている転写基材17が、搬送ベルト10により搬送されて定着装置18に送り込まれ、定着装置18の媒体搬送手段35の搬送ベルト41で引き続いて図19中右から左に、液滴帯電手段34で電荷を付与させた定着液滴の雰囲気中を通して搬送される。
転写基材帯電手段36は、ローラ40に掛けまわされている搬送ベルト41の内側に配置される電極44と、その電極44に接続される電源45とで構成されている。そして、電源45により搬送ベルト41の内側に配置される電極44に電圧が印加されて、搬送ベルト41で搬送される転写基材17を未定着トナー42および定着液滴とは逆極性のプラスに帯電させる。このとき、もちろん搬送ベルト41は、転写基材17の帯電を妨げない材料で形成される。これにより、クーロン力で転写基材17の裏側から吸引することで、転写基材17に付着された定着液滴がさらに転写基材17の裏側まで浸透するようにし、転写基材17の表裏でなお一層液濃度を均等にして転写基材17のカールを少なくすることができる。
なお、図19中符号46は、定着装置18から出た転写基材17に接触して除電する除電部材としての除電ローラであり、もちろんローラに限らずブラシなどでもよい。
以上のとおり、図17〜19の図示例によれば、噴霧手段33で噴霧された定着液滴に、液滴帯電手段34で転写基材17上の未定着トナー42と同極性の電荷を付与させる一方、電荷を付与させた定着液滴の雰囲気中を通して、媒体搬送手段35で、未定着トナー42が載っている転写基材17が搬送され、その搬送される転写基材17を転写基材帯電手段36で未定着トナー42および定着液滴とは逆極性に帯電させ、クーロン力で強制的に吸引されて転写基材17に未定着トナー42および定着液滴53が吸着され、転写基材17に定着される。
噴霧手段33でトナー定着液が、最頻値の滴径が15μm以下の定着液滴53として噴霧されると、噴霧された定着液滴53がドライミストとして空間に均一に浮遊して、転写基材17に無駄なくムラなく付着されるので、定着液滴53を転写基材17に無駄なく付着して定着液の有効使用を図るとともに定着ムラを解消することができる。
−接触手段方式による定着方法、定着装置−
[定着方法及び定着装置]
図20に示すものは、電子写真方式のタンデム型カラー画像形成装置であって、中間転写体を用いて、像担持体上のトナー像をいったん中間転写体に一次転写した後、その中間転写体上のトナー像を転写基材に二次転写する中間接転写方式のものである。
図20は、本実施形態に係る画像形成装置の定着手段としての定着装置を含む部分の概略構成図である。本実施形態の画像形成装置は、中間転写ベルト10の表面移動方向において2次転写部の上流側に定着装置90が配置されている。この定着装置90は、中間転写ベルト10の表面と微小間隔を開けて対向するように配置される定着液供給手段としての供給ローラ91を備えている。定着装置90は、供給ローラ91が中間転写ベルト10の表面に対して近接したり離間したりできるように、図示しない駆動機構によって移動可能な構成となっている。また、定着装置90の定着液タンク93の内部には定着液92が収容されており、この定着液92に供給ローラ91が浸った状態で配置されている。供給ローラ91は、トナーに定着液92を付与する際には図中矢印の方向に回転駆動する。これにより、供給ローラ91の表面に定着液92が汲み上げられる。このようにして汲み上げられた定着液92は、メータリングブレード94によって規制され、供給ローラ91の表面に付着する定着液が適量に調整される。そして、供給ローラ91上の定着液は、供給ローラ91の回転に伴って中間転写ベルト10の表面との対向位置まで搬送され、中間転写ベルト10の表面に定着液を供給する。
また、中間転写ベルト10上のトナーに定着液を供給する定着液供給手段として供給ローラ91を用いた場合、中間転写ベルト10上に担持されたトナー像を乱してしまうおそれがある。そのため、本実施形態では、導電性材料で構成した基体を絶縁層又は高抵抗層で覆った供給ローラ91を用い、その供給ローラ91に電界形成手段としての電源95を接続している。具体的には、例えば、ステンレス製の芯金に導電性のゴム層を形成し、その表面を絶縁性のPFAチューブで覆ったものを用いることができる。このような構成により、供給ローラ91と中間転写ベルト10との間には、トナーを中間転写ベルト側に押し付ける方向の電界が形成される。このような電界を形成することで、液供給位置における中間転写ベルト10上のトナーの中間転写ベルト10側への拘束力を高めることができる。これにより、中間転写ベルト10上に担持されたトナー像を乱すことなく、そのトナーに対して定着液92を供給することができる。
本発明において用いる焼成後に有色であるトナーとは、450℃以上に加熱したときに灰化しない着色剤を含有するトナーである。本発明において用いる焼成後に有色であるトナーは、例えば、周期律表の1族のCu、Ag、Au、2族のCd、4族のTi、5族のV、Sb、6族のSe、Cr、Mo、W、U、7族のMn、8族のFe、Co、Ni、Ir、Pt等の元素の酸化物などを、単独あるいは配合(混合)して使用した窯業用顔料などの着色剤および熱可塑性樹脂を含有するものである。
従来の窯業用顔料は一般に顔料自身の吸光係数が低い為、着色剤としてこれら窯業用顔料を含有するトナーを用いて画像濃度の高いフルカラー画像を形成させるには、トナー付着量を多くすることが必要となる。
本発明において用いる焼成後に有色であるトナーにおける着色剤としては、特に、上記金属あるいはその酸化物を複数配合(混合)し、これを1000〜1200℃に加熱して溶融し、複数金属の合金化処理を施した合金顔料が好ましい。
この合金顔料は吸光係数が高く、着色剤としてこの合金顔料を含有するトナーを用いることにより、少ないトナー付着量で画像濃度の高いフルカラー画像を形成させることができる。複数金属の合金化により着色度が高くなる理由としては、単体の金属のときには縮重していた金属元素のd軌道が複合金属の影響でスプリットすることにより、電子遷移可能な軌道数が増加し、見かけ上の振動子強度が増加するためであると推定される。
さらに、本発明において用いる焼成後に有色であるトナーには、着色剤および熱可塑性樹脂と共に釉薬フリットを用いることが好ましい。トナー中に釉薬フリットを含有させる方法としては、例えば、着色剤と釉薬フリットとの混合物を用いる方法、着色剤と釉薬フリットとの混合物を加熱溶融した後冷却し、それを粉砕して着色剤として用いる方法などがある。
特に、複数金属の合金化処理した合金顔料と釉薬フリットとを所定量で混合し、それを例えば650〜800℃で加熱溶融した後冷却し、それを粉砕し着色剤として用いることが好ましい。
この様な着色剤を含有するトナーを用いることにより、少ないトナー付着量で画像濃度が高く鮮明なフルカラー画像を転写基材上に形成することができ、そのトナー画像を窯業製品などの耐熱固体表面上に転写し、それを焼き付けることにより、耐熱性固体表面上に画像濃度が高く鮮明な焼き付け絵柄を形成することができる。
トナー中における釉薬フリットの含有量としては、着色剤と釉薬フリットとの重量割合で2/8〜6/4が好ましく、特に3/7〜5/5が好ましい。2/8よりも釉薬フリット成分を増やすとトナーの着色度が低くなり、6/4よりも釉薬フリットを減らすとトナー画像を耐熱性固体表面上に焼き付けた際に、焼き付け絵柄が耐熱性固体表面から脱離する場合が生じるようになる。
釉薬フリットは、耐熱固体表面上に転写されたトナー画像を焼き付ける際に、耐熱性固体表面にトナー中の着色剤を焼結する役割を果たすものであり、焼き付け時に溶解あるいは半溶解状態となり、室温に冷却されると完全に固化し、着色剤を耐熱固体表面上に焼結させるものである。
釉薬フリットとしては、水酸化リチウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸リチウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物、塩化アルミニウム、ほう酸、およびアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物のほう酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物のメタほう酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のりん酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のピロりん酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の珪酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のメタ珪酸塩、珪酸ジルコニウム、骨灰、棚砂、メタバナジン酸アンモニウム、酸化タングステンや五酸化バナジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化モリブデン等の金属酸化物、フッ化カルシウムやフッ化アルミニウム等の金属フッ化物、ガラスレットなどを基本材料として、これらの単独または複数混合したものが挙げられる。
釉薬フリットの結合を強める方法として、石灰長石やカリ長石、ソーダ長石、ベタライト(リチウム長石)等の長石類、カオリン、珪石、アルミナ、シリカ、石英、酸化チタン、酸化鉛、シャモット、土灰類、石灰石、マグネサイト、タルク、ドロマイト等の天然鉱物や炭酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸ストロンチウムなどを基本材料として、これら予め混合した後溶解させ、それをトナーに含有させてもよい。
さらに、本発明において用いる焼成後に有色であるトナーには、必要に応じて帯電制御剤を含有させてもよい。この様な帯電制御剤としては従来公知のものが使用可能であり、例えばニグロシン系染料、四級アンモニウム塩、Cr含金染料、Zn含金染料、Fe含金染料、モリブデン酸キレート染料、フッ素変成4級アンモニウム塩等が帯電極性に応じて適宜選択して用いられる。
帯電制御剤の使用量は、熱可塑性樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、およびトナー中の分散方法を含めたトナー製造方法により異なるが、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲が適当であり、特に2〜6重量部が好ましい。0.1重量部未満では、トナーの帯電量が不足し、トナー飛散、地肌汚れ等の不具合が発生する。10重量部を超える場合には、キャリアとの静電的付着力が強くなるため現像剤の流動性が低下したり、現像量が少なくなる等の不具合の原因となる。この他、トナーの流動性を向上させるために必要に応じて、疎水性シリカ、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、酸化チタンなどの従来公知の添加剤を添加してもよい。
本発明において用いる焼成後に有色であるトナーは、トナー単独の現像剤として静電潜像を顕像化する、いわゆる一成分現像剤として用いることができ、またトナーとキャリアを混合してなる二成分現像剤として用いることができる。二成分現像剤として用いる場合のキャリアとしては、鉄粉、フェライト、ガラスビーズなど従来公知キャリアを用いることができ、キャリアはポリフッ化炭素、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フェノール樹脂、ポリビニルアセタール、シリコン樹脂等で被覆されたものでもよい。トナーとキャリアの混合割合は、キャリア100重量部に対してトナー1〜30重量部程度が適当であり、8〜16重量部が好ましい。
本発明の焼成絵柄画像形成用転写基材を用いて陶磁器製品などの耐熱性固体表面に絵付けするには、前述の図2に示すフィルム基材を用い前述の泡状定着液にて焼成後に有色なトナー画像を定着させた後、該トナー画像を含む該転写基材上にアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等の溶液を塗布して樹脂皮膜層を形成させた後、この焼成絵柄画像形成用転写基材を水に浸すことにより転写基材の水溶性層を溶解させて該トナー画像を保持した樹脂皮膜層を図2の転写基材から剥離し、該トナー画像を保持した樹脂皮膜層を耐熱性固体表面に貼り付け、それを焼き付ければよい。この樹脂皮膜層の樹脂の灰化温度はトナー中の熱可塑性樹脂より低い方が好ましい。さらに分離した基体に前述の糊層を施すことで基体を繰り返し使用することが可能となり、再利用可能な焼成絵柄画像形成用転写基材とすることができる。
耐熱性固体表面への焼き付け方法は、耐熱性固体の表面近傍に焼き付けるか、表面からより深く焼き付けるかによって適時選定されるが、いずれの場合も電気炉あるいはガス炉を用いて行なうことができる。
耐熱性固体表面の表面近傍に焼き付けを行なう場合は、例えば室温から200℃/1時間程度の昇温条件で徐々に温度を上げ、750〜850℃で約30分〜1時間この温度に保ち、その後室温まで温度を下げて電気炉あるいはガス炉から取り出すことにより行なわれ、これによりトナー中の着色剤が釉薬フリットで耐熱性固体表面に焼結され絵付けされた陶磁器製品などの耐熱性固体製品が得られる。
また、耐熱性固体表面の奥深くに焼き付けを行ないたい場合には、室温から200℃/1時間程度の昇温条件で1100〜1300℃まで徐々に温度を上げ、その後室温まで温度を下げる方法が採用される。この時、昇温開始温度は室温に限定されるものではないが、昇温時および冷却時において急激な温度変化を与えると、耐熱性固体によっては、耐熱性固体の厚さや材質により若干の差はあるものの、割れ、形状変化が発生する場合があるので、焼き付けを行なう場合の温度変化は50℃/1時間〜500℃/1時間が好ましい。
50℃/1時間より昇温時あるいは冷却時の温度変化を遅くすると焼き付け時間が遅くなり効率が悪くなる。500℃/1時間より昇温時あるいは冷却時の温度変化を早くすると焼きムラの発生や耐熱性固体の形状変化が発生する場合がある。昇温時あるいは冷却時の温度変化の条件としては、100℃/1時間〜300℃/1時間が特に好ましい。
本発明における焼付け用転写基材の皮膜形成樹脂としては、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、これらの共重合体樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂や、それら混合物樹脂からなる。この樹脂の液としては、上記樹脂をソルベントナフサ、ベンゼン、トルエン、キシレンの他、エーテル類や工業用ガソリンに溶解して調合される。これらの樹脂液は支持体サイズに合わせスクリーン印刷、ワイヤーバー、ドクターブレードなどにて該トナー画像上にこれら樹脂の皮膜層を形成することができる。
また、この樹脂皮膜層の膜厚に関しては、10〜3000μmが適正な膜厚である。10μm以下になると該転写紙を窯業製品等の耐熱性固体表面に貼り付ける際、破れたり伸びたりすることがあり、好ましくない。逆に3000μm以上になると、膜の可塑性が損なわれ、曲面への張り付けが困難となり好ましくない。この様な平滑性、膜厚を有するための好ましい樹脂液の粘度としては70〜10000mPa・sである。70mPa・s以下の場合樹脂液の粘性が低すぎて、トナー面の裏に樹脂液が回り込み、本発明の焼成絵柄画像形成用転写基材の分離に支障をきたすことがある。一方、10000mPa・sの場合は粘度が高いため、スクリーンメッシュの目詰まりを発生させ、平滑性の良い樹脂皮膜層を得ることが困難になる。
樹脂溶液中に焼成によって気化し消失する着色物を混入させることで透明な樹脂皮膜層の有無を目視確認できる。この為に基本構造が有機物質からなる顔料ならび染料が用いられる。樹脂溶液中への溶解性を考慮すると染料が好ましい。この染料としては、特に制限はないが、カチオン染料、アニオン染料などの水溶性染料は、耐熱固体表面上への本発明の焼成絵柄画像形成用転写基材の水転写工程において、染料が水中に解け出し、作業性を劣化させるため、バット染料、分散染料、油溶性染料の使用が好ましく、特に、油溶性染料が好ましい。この様な染料としては、例えば、以下のような染料が挙げられる。
C.I.SOLVENT YELLOW(6,6,17,31,35,100,102,103,105)
C.I.SOLVENT orange(2,7,13,14,66)
C.I.SOLVENT RED(5,16,17,18,19,22,23,143,145,146,149,150,151,157,158)
C.I.SOLVENT VIOLET(31,32,33,37)
C.I.SOLVENT BULE(22,63,78,83,84,85,86,91,94,95,104)
C.I.SOLVENT GREEN(24,25)
C.I.SOLVENT BROWN(3,9)など。
市販品では例えば保土ヶ谷化学工業社製の愛染SOT染料Yellow-1.3,4、orange-1.2,3、Scarlet-1、Red-1.2,3、Brown-2、Blue-2、Violet-1、Green-1.2,3やBASF社製のSudan染料、Yellow-14.0,150、Orange-220、Red-290.380、Blue-670や三菱化成社製のダイシアン、Yellow-3G,F,H2G,HC,HL、orange-HSBlue-J,G,N,K,P,H3G,4G、やオリエント化学社製のオイルカラー、住友化学工業社製のスミプラスト、ブルーGP,OR、レッドFB,3B、イエローFL7G,GC、日本化薬社製のカヤロン、カヤセットRed-Bなどを使用することができる。これらは、組み合わせで適時選択することもできる。これら着色剤を皮膜形成樹脂液に含有させることにより、目視にて樹脂被膜の有無の他、平滑性、膜厚を確認することが可能になる。
なお、焼付け用転写基材の樹脂被膜を形成するための皮膜形成樹脂液は、その吸収スペクトルが、360〜830nmに吸収ピークを有し、石英1cmセルにおける該吸収ピークの吸光度が0.1以上であることが望ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、以下の実施の形態は例示であって本発明の範囲はこれらの例に限定されるものではない。
<定着液の処方と調合>
◇軟化剤を含有する液体
希釈溶媒:イオン交換水 65wt%
軟化剤:コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社 クローダDES) 10wt%
増粘剤:プロピレングリコール 10wt%
増泡剤:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(コミカドDEA) 2wt%
起泡剤:パルミチン酸カリウム 5wt%
ミリスチン酸カリウム 3wt%
ステアリン酸カリウム 2wt%
分散剤:POE(20)ラウリルソルビタン 2wt%
(花王 レオドールTW−S120V)
ポリエチレングリコールモノステアレート 1wt%
(花王 エマノーン3199)
なお、分散剤は、軟化剤の希釈溶媒への溶解性を助長するために用いた。上記成分比にて、先ずは、液温120℃にて軟化剤を除いて混合攪拌し溶液を作製した。次に、軟化剤を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて軟化剤が溶解した定着液(泡化する前の原液)を作製した。
<泡状定着液塗布手段>
◇大きな泡状の定着液を生成するための泡状定着液生成手段
図7を基に作製された。
上記の液状定着液の保存容器:PET樹脂からなるボトル
液搬送ポンプ:チューブポンプ(チューブ内径2mm、チューブ材質:シリコーンゴム)
搬送流路:内径2mmのシリコーンゴムチューブ
大きな泡を作るための微細孔シート:#400のステンレス製メッシュシート(開口部約40μm)
◇大きな泡から微細な泡を生成するせん断力付与手段
図7を基に作製された。
2重円筒の内側円筒は、回転軸に固定され、図示していない回転駆動モータにより回転する。2重円筒の材質は、PET樹脂とした。外側円筒内径:10mm・長さ120mm、内側円筒外形:8mm・長さ100mmとした。回転数は、1000rpmから2000rpmの範囲で可変とした。
<未定着画像の作成手段>
電子写真方式のプリンタ(リコー社製 IpsioColorCX8800)に現像剤を装着し、リコー社製タイプ6000用紙に未定着トナー画像を形成させた。
<定着液塗布手段>
図8を基に作製された。上記の泡状定着液生成手段及びせん断力付与手段を用いて所望の泡径の泡状定着液を作成し、液膜厚調整用ブレードに供給する構成とした。液膜厚調整用ブレードと塗布ローラとのギャップは40μmにて実施した。
上記未定着画像を図8を基に作製された定着装置にて以下の定着条件にて定着させる検討を行った結果、トナー層よりも厚い泡状定着層の塗布にて光沢のある良好な定着が行えることを確認できた。
<定着条件>
加圧ローラ:アルミ製ローラ(φ30mm)
塗布ローラ:PFA樹脂を焼付け塗装したSUS製ローラ(φ30mm)
液膜厚調整用ブレード:SUS製シート
紙搬送速度:150mm/s
加圧ローラと塗布ローラ間の加重:片側10N
[実施例1]
〈定着用樹脂の作成〉
恒温水槽中で回転する密閉可能な反応容器内に次のものを仕込んだ。
メタノール 100重量部
ポリビニルピロリドン 5重量部
容器を室温でゆるやかに撹拌し約1時間でポリビニルビロリドンを完全に溶解させた。このポリビニルピロリドンを溶解させたメタノール溶液250重量部を恒温水槽中で回転する密閉可能な反応容器内に移し次のものを仕込んだ。
スチレン 80重量部
アクリル酸nブチル 20重量部
容器を回転させることにより混合させながら、容器内にN2ガスを吹き込むことにより完全に空気を追い出し、容器を密閉した。その後水槽を60度に保ち、毎分100回転で撹拌しながら重合を行った。
この時、開始剤としては2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.0重量部を用い重合を開始した。重合開始から3時間後、1.0重量部のドデシルメルカプタンをメタノール30重量部に希釈して30分程度で重合系に添加した。なお、この時の重合率はガスクロマトグラフィーで内部標準法による測定の結果22%であった。さらに重合を続け24時間で重合を終了した。
重合終了時の重合率はガスクロマトグラフィーで内部標準法による測定の結果99.3%であった。
遠心沈降により樹脂粒子を精製し、乾燥した後、GPCによる分子量測定の結果、得られた樹脂の分子量は9800であった。
この樹脂を定着用樹脂とする。
〈転写基材の作成〉
転写基材の基体としてリコー社製OHPシート(タイプJ300)を用い、ヒドロキシアルキルエーテル化澱粉の「ソルファレックス2350」(松谷化学工業株式会社製)56%にデキストリンの「アベデックスW−90」(松谷化学工業株式会社製)39%、ピロリドンカルボン酸ソーダ(味の素株式会社製)5%を加えた混合液を、エアーナイフコーターを用いて乾燥膜厚が5μmとなるように塗工し、フィルム基材a1とした。
〈焼成後に有色なトナー現像剤の作成〉
まず、下記のようにして製造した釉薬フリットを用いて各色着色剤を製造した。
〈釉薬フリットの製造〉
Al2O3(80g)、SiO2(370g)、Na2O(50g)及びPbO(500g)を配合し、スタンプミルで粉砕したのち、ヘンシェルミキサーで混合し、それを1200℃で焼成し、粉砕して釉薬フリットを製造した。
〈ブラック着色剤(1)の製造〉
Cr2O3(110g)、MnO(270g)、Fe2O3(112g)およびCo2O3(508g)を配合し、スタンプミルで粉砕したのち、ヘンシェルミキサーで混合し、それを1100℃で焼成して粉砕した。その300gと上記釉薬フリット500gをヘンシェルミキサーで混合した後、750℃で焼成し、粉砕して合金顔料を含有するブラック着色剤(2)を製造した。
〈イエロー着色剤の製造〉
CuO(10g)、ZnO(190g)及びSb2O3(800g)を配合しスタンプミルで粉砕したのち、ヘンシェルミキサーで混合し、それを1100℃で焼成して粉砕した。その300gと上記釉薬フリット500gをヘンシェルミキサーで混合した後、750℃で焼成し、粉砕して合金顔料を含有するイエロー着色剤を製造した。
〈マゼンタ着色剤の製造〉
Fe2O3(160g)、NiO(40g)、CuO(40g)およびAu2O(760g)を配合しスタンプミルで粉砕したのち、ヘンシェルミキサーで混合し、それを1100℃で焼成して粉砕した。その300gと上記釉薬フリット500gをヘンシェルミキサーで混合した後、750℃で焼成し、粉砕して合金顔料を含有するマゼンタ着色剤を製造した。
〈シアン着色剤の製造〉
Cr2O3(170g)、Fe2O3(10g)、Co2O3(690g)およびZnO(130g)を配合しスタンプミルで粉砕したのち、ヘンシェルミキサーで混合し、それを1100℃で焼成して粉砕した。その300gと上記釉薬フリット500gをヘンシェルミキサーで混合した後、750℃で焼成し、粉砕して合金顔料を含有するシアン着色剤を製造した。
上記の着色剤を用いて、下記のようにして焼成後に有色であるトナーを含有する現像剤を製造した。
〈焼成後に有色であるブラックトナーを含有するブラック現像剤(1)の製造〉
定着用樹脂100重量部とサリチル酸亜鉛誘導体(ボントロンE84、オリエント化学社製)4重量部および前記ブラック着色剤(2)230重量部をミキサーで混合したのち、2本ロールで溶融混練した。混練物を圧延冷却した後、粉砕分級を行ない、体積平均粒子径9.5μmのブラックトナー(2)を製造した。さらに、疎水性シリカ(R972、日本アエロジェル社製)をブラックトナー(2)に0.5wt%添加し、ミキサーで攪拌した。以下実施例1と同様の方法にて、焼成後に有色であるブラックトナーを含有するブラック現像剤(2)を作成した。
〈焼成後に有色であるイエロートナーを含有するイエロー現像剤の製造〉
上記ブラック現像剤(1)の製造におけるブラック着色剤(1)の代わりに前記イエロー着色剤を用いて体積平均粒子径9.4μmのイエロートナーを製造し、そのイエロートナーを用いた以外は、上記ブラック現像剤(1)の製造と同様にしてイエロー現像剤を製造した。
〈焼成後に有色であるマゼンタトナーを含有するマゼンタ現像剤の製造〉
上記ブラック現像剤(1)の製造におけるブラック着色剤(1)の代わりに前記マゼンタ着色剤を用いて体積平均粒子径9.6μmのマゼンタトナーを製造し、そのマゼンタトナーを用いた以外は、上記ブラック現像剤(1)の製造と同様にしてマゼンタ現像剤を製造した。
〈焼成後に有色であるシアントナーを含有するシアン現像剤の製造〉
上記ブラック現像剤(1)の製造におけるブラック着色剤(1)の代わりに前記シアン着色剤を用いて体積平均粒子径9.5μmのシアントナーを製造し、そのシアントナーを用いた以外は、上記ブラック現像剤(1)の製造と同様にしてシアン現像剤を製造した。
〈樹脂皮膜層用樹脂液の調合〉
1gのSOLVENT BULE94を伊勢久株式会社のスクリーン印刷用品カバーコート(83454−ID)500gに添加し、皮膜形成樹脂液とした。
〈画像の形成・定着〉
次に電子写真方式のプリンタ(リコー社製 IpsioColorCX8800)に上記焼成後に有色であるトナー現像剤(2)を装着し、先に作成したフィルム基材a1上に焼成後に有色なトナーの未定着画像を形成させた。その後定着液塗布手段定着条件にてフィルム基材a1上に焼成後に有色なトナー画像を定着させた。
次にこの定着画像に上記樹脂皮膜層用樹脂液上にスクリーン印刷(70メッシュ使用)し、一昼夜乾燥させた。これを水槽に入れ樹脂皮膜層に保持されたトナー画像層を剥離したところ良好な剥離が確認され、本方式により、未定着画像を乱すことなく定着させることが可能であり、かつ転写基材の糊層の機能も失われていない事が確認できた。
樹脂皮膜を耐熱固体表面に500℃/1時間の条件で800℃、5時間焼成した。
また、焼成して得られた焼成画像絵柄は画像の乱れがなく良好なものであった。
[実施例2]
実施例1で用いた定着液を以下の処方に変える以外実施例1と同様の方法で定着画像上に樹脂皮膜層を形成させた。この場合も、樹脂皮膜層に保持されたトナー画像層を良好に剥離することが確認できた。
<定着液の処方と調合>
◇軟化剤を含有する液体
希釈溶媒:イオン交換水 53wt%
軟化剤:コハク酸ジエトキシエチル 10wt%
(クローダ社 クローダDES)
炭酸プロピレン 20wt%
増粘剤:プロピレングリコール 10wt%
増泡剤:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型 0.5wt%
(松本油脂 マーポンMM)
起泡剤:パルミチン酸アミン 2.5wt%
ミリスチン酸アミン 1.5wt%
ステアリン酸アミン 0.5wt%
分散剤:POE(20)ラウリルソルビタン 1wt%
(花王 レオドールTW−S120V)
ポリエチレングリコールモノステアレート 1wt%
(花王 エマノーン3199)
[比較例1]
実施例1と同様に焼成後に有色であるトナー現像剤(1)をリコー社製IpsioColorCX8800に装着し、実施例1と同様の紙搬送速度150mm/sにて定着ローラー温度を150℃に設定し、普通紙(リコー社製タイプ6000 70W)上に焼成後に有色なトナー画像を定着させた。その結果、良好な定着画像が得られた。
しかし、実施例1で用いたフィルム基材a1を用い同条件にてトナー画像を定着させたところ、トナー画像が層状に剥がれ落ちる現象が発生し、フィルム基材a1上に良好なトナー画像を定着することができなかった。得られた画像を図21に示す。
図21に示すように得られた画像ではトナーが層状に剥がれ落ちていた。
[実施例3]
実施例1で樹脂皮膜層に保持されたトナー画像層剥離後のフィルム基体のOHPシートに再度エアーナイフコーターにて、フィルム基材a1を作成した方法と同様の方法にてフィルム基材a2を作成した。
このフィルム基材a2を用い、実施例1と同様の方法にて定着画像上に樹脂皮膜層を形成させた。この焼成絵柄画像形成用転写基材も、樹脂皮膜層に保持されたトナー画像層を良好に剥離することが確認できた。