JP5252288B2 - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
このような非加熱定着方式としては、トナーの樹脂成分の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する定着液を記録媒体表面上のトナー像に付与してトナー像を定着させる湿式定着方式が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献4に記載の定着装置で用いる定着方式)。このように、湿式定着方式の定着装置ではトナーを軟化させるために加熱処理を行う必要がないため、熱定着方式に比べて省エネルギー化を実現することができる。
図21(a)に示すように、塗布ローラ301を用いて転写紙302上の未定着のトナー層303へ定着液304を塗布する構成において、定着液304を転写紙302に微量付与するために、塗布ローラ301上の定着液304の膜厚がトナー層303の厚みよりも薄くなる場合、図21(b)のようになる。塗布ローラ301上の定着液304には、塗布ローラ301の表面が転写紙Pと接触する塗布位置で塗布ローラ301から転写紙302に付与されるものの他に、図21(b)中の矢印F1で示すように塗布位置を通過した後も塗布ローラ301の表面に残留するものがある。そして、塗布ローラ301の表面が転写紙302から分離する位置で、塗布ローラ301表面に残留する定着液304の液膜によって生じる表面張力(図21中の矢印F2方向に働く)でトナー層303のトナー粒子が引っ張られてしまう。これにより、塗布ローラ301の表面にオフセットしたトナー粒子303aが付着し、塗布ローラ301と剥離した後の転写紙302上のトナー層303によって形成される画像が大幅に乱れてしまう。
このように、塗布ローラを用いて定着液を塗布する構成では、定着液の塗布量が多すぎると、トナー粒子が流されることによる画質劣化、定着液の乾燥時間が長くなることによる定着応答性の低下、記録媒体によっては紙詰まりが発生しやすくなる、といった問題が生じる。一方、これらの問題を防止するために定着液を微量塗布する構成とすると、上述したように塗布ローラの表面にトナー粒子がオフセットしてしまう。よって、定着応答性向上や残液感低減やカール防止のために記録媒体上のトナー層に定着液を微量塗布することと塗布ローラへのトナーオフセットを防止することとを両立することが極めて難しい。
残留泡状定着液は、泡状定着液として塗布部材に供給された後、時間が経過しており、且つ、塗布位置で機械的な力を受けているため、泡の一部が消泡するなど、塗布部材に供給されたときよりも定着液の密度が上昇することが考えられる。このため、塗布部材に残留泡状定着液が残留している状態で新たな泡状定着液を塗布部材に供給すると、密度が異なる泡状定着液が混ざって記録媒体に泡状定着液を均一に付与することができなくなるおそれがある。さらに、泡状定着液を用いることにより、オフセットして塗布部材に付着するトナーは通常の液状の定着液を用いる構成に比べて少なくなるものの、オフセットは起こり得るものであり、オフセットしたトナーが記録媒体に再転写され、画像劣化となるおそれがある。このように、記録媒体に付与する泡状定着液が不均一になったり、オフセットしたトナーが記録媒体に再転写されたりすることを防止するために、塗布部材クリーニング手段を設け、残留泡状定着液を回収することが望ましい。
このような泡状定着液を収容可能な大きなタンクを画像形成装置に配置すると、装置の大型化につながるという問題がある。
このような問題は、樹脂としては記録媒体上のトナー像を形成するトナー粒子に限るものではなく、記録媒体上の樹脂含有微粒子層に塗布部材によって泡状の定着液を塗布し、塗布部材をクリーニングする構成ではどの場合も生じ得る問題点である。
また、請求項2の発明は、請求項1の定着装置において、上記泡状定着液回収手段が回収した上記泡状定着液を貯蔵する泡貯蔵手段を有し、上記加熱手段を該泡貯蔵手段内、或いは、該泡貯蔵手段の近傍に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の定着装置において、上記泡貯蔵手段内の泡状定着液の有無を検知する泡検知手段を有し、該泡検知手段の検知結果に基づいて上記加熱手段による加熱動作の制御を行う加熱制御手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の定着装置において、上記加熱制御手段は、上記泡検知手段が泡の存在を検知している間のみ加熱するように上記加熱手段の加熱動作を制御することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項3または4の定着装置において、上記泡検知手段は、上記泡貯蔵手段内に配置された複数の電極を備え、該複数の電極間の抵抗を検知することによって泡の有無を検知することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1の定着装置において、上記加熱手段を上記泡状定着液回収手段に設けることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、樹脂と色剤を含有する上記樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、該定着手段として、請求項1、2、3、4、5または6の定着装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の画像形成装置において、上記加熱手段は、該画像形成装置の排熱部により生じた熱を利用することを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の画像形成装置において、上記加熱手段は、上記排熱部から上記泡状定着液を加熱する加熱部へ熱の伝導を介在するヒートパイプを備えることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段と、該樹脂微粒子を担持する記録媒体に該泡状定着液を塗布する塗布部材とを有する定着装置において、上記塗布部材をクリーニングする塗布部材クリーニング手段を有し、該塗布部材クリーニング手段は、該塗布部材に付着した上記泡状定着液を回収する泡状定着液回収手段と、該泡状定着液回収手段によって回収された該泡状定着液を消泡する消泡手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、樹脂と色剤を含有する上記樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、該定着手段として、請求項10の定着装置を用いることを特徴とするものである。
また、上記請求項10の構成を備えた定着装置では、泡状定着液回収手段によって回収された泡状定着液を消泡する消泡手段を有するため、経時で自然に消泡するまで待つことなく、泡状定着液を消泡して液状の定着液とすることができる。
図2は、プリンタ100の概略構成を示す構成図である。
プリンタ100は、図2に示すように、像形成手段としての各構成部材を収納する位置固定された装置本体1と、転写紙Pを収納する引き出し可能な給紙カセット2とを備えている。装置本体1の中央部には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、黒(K)の各色のトナー像を形成するための画像ステーション3Y、3C、3M、3Kを備えている。以下、各符号の添字Y、C、M、Kは、それぞれイエロー、シアン、マゼンダ、黒用の部材であることを示す。
なお、4つの画像ステーション3Y、3C、3M、3K及びトナーボトル7Y、7C、7M、7Kの配列順は図2に示す例に限らず、どのような順番であってもよい。
また、本発明の特徴部を有する定着装置を備えた画像形成装置としては、図2のプリンタ100の構成に限るものではない。
上述した特許文献1には、トナーを溶解または膨潤可能で、水に不溶または難溶な有機化合物が水に分散混合された水中油滴型の定着剤を、未定着のトナーが所定位置に配設された被定着物の表面から噴霧または滴下してトナーを溶解または膨潤させた後、被定着物を乾燥させるトナーの湿式定着方式が記載されている。
一方、特許文献5に記載の定着装置では、定着液を泡状とし、定着液のかさ密度を下げ、トナー像に対する定着液の表面張力の影響をなくすことで、従来よりも極微量の定着液塗布量でトナー画像を乱すことなく定着する技術が開示されている。そして、本実施形態の定着装置6も特許文献5と同様に定着液を泡状として記録媒体上のトナー層に塗布する構成である。
図1は、定着装置6を模式的に示す説明図である。なお、本発明における樹脂微粒子はトナー粒子である。
定着装置6は、軟化剤を含む定着液を泡状とした泡状定着液を生成する泡状定着生成手段としての泡状定着液生成部130と、生成された泡状定着液を記録媒体である転写紙Pに塗布する定着液塗布手段である定着液塗布部60とを有する。
泡状定着液生成部130は、液状の定着液132を収容する定着液収容手段としての定着液ボトル131と、液状の定着液132に対して液中に気泡を分散させて泡を多く含んだ泡状定着液120とする定着液泡状化手段としての定着液泡状化装置500とを備える。また、定着液ボトル131から定着液132を定着液泡状化装置500に搬送する定着液搬送手段として、定着液搬送ポンプ133と定着液搬送管134とを備える。定着液ボトル131中の定着液132は、定着液搬送ポンプ133を駆動することにより定着液搬送管134を介して定着液泡状化装置500へと搬送され、定着液泡状化装置500で泡状定着液120となる。
定着液塗布部60は、定着液泡状化装置500の定着液供給口501から泡状定着液120が供給され、泡状定着液を転写紙Pに塗布する塗布部材としての塗布ローラ61を備える。
この構成は、気泡を大量に含有し泡状の液体が極めてかさ密度が低いことに着目した構成である。上述したように、転写紙Pに接触して定着液を塗布する接触塗布手段である塗布ローラ61を用いて、塗布ローラ61へのトナーのオフセットが生じない塗布を行うためには、塗布ローラ61上の定着液の膜厚を厚く形成する必要がある。このことは、樹脂微粒子のオフセットが生じないように定着液を均一に塗布するためには、塗布ローラ61表面に定着液の体積がある程度必要であることを意味している。
一方、定着液を塗布した後の記録媒体上の樹脂微粒子層上の定着液量は少ない方が定着応答性や残液感に優れており、これは定着液の重量が少ないことが望ましいことを意味する。
記録媒体に塗布する際は定着液の体積が多く、かつ塗布後の記録媒体上の定着液重量は少ない条件を満たすためには、塗布時の定着液の密度が低ければよく、定着液のかさ密度を低くすることにより、塗布時に体積は多くても、実質的な塗布重量は小さくすることができる。即ち、かさ密度(定着液の重量をその体積で割った値)の低い定着液を使用すれば、定着液を塗布する際のオフセットを防止しつつ、定着応答性や残液感を良好にすることが可能である。
図4に示すように、定着液泡状化装置500によって液状の定着液132を泡で構成された泡状定着液120とすることで、定着液のカサ密度を低くでき、少量の定着液で塗布ローラ61上の定着液の膜厚を厚くすることができる。これにより、定着液の表面張力による影響が抑えられるため、定着液の量が少量であっても塗布ローラ61への樹脂微粒子のオフセットを防止できることが分かった。
図5は、泡状定着液120の拡大模式図であり、図5に示すように、液中に多くの気泡122が分散されて泡状となった泡状定着液120は、気泡122と気泡のそれぞれを区切る液膜境界(以下、プラトー境界121と称す)とから構成される。
一般的に、通常の液状の液体から0.5[mm]〜1[mm]程度の大きな気泡を含んだ泡状液体を生成する場合、単なる撹拌等により比較的容易に泡を生成可能であり、大きな泡からなる泡状液体は数秒以下の時間(0.1[s]もかからない)で生成することができる。一方、通常の液状の液体から5[μm]〜50[μm]程度の微小な気泡を含んだ泡状液体を生成する場合、気泡の小径化が困難であり、生成するために時間がかかるという問題があった。
そこで、本発明者らは、この所望の泡径(5[μm]〜50[μm]程度)よりも大きな気泡を含み、目視で観察できる程度の大きさの気泡を含んだ泡状液体の生成が容易で、かつすばやく得ることができる点に着目し、泡径が大きな泡状液体から泡径が5[μm]〜50[μm]程度の微小な気泡を含んだ泡状液体を素早く生成する方法を鋭意検討した。その結果、大きな気泡を含む泡状液体にせん断力を加えることで大きな泡を分泡すると、上述したように通常の液状の液体から微小な泡を起泡させる方法に比べ、極めて素早く所望の大きさの微小な気泡を含有した泡状液体が生成できることがわかった。
図6に示す定着液泡状化装置500は、気体・液体混合部510で大きな気泡を含んだ泡状定着液を生成した後に、微小径泡生成部520でこの泡状定着液の大きな泡を分泡して微小な泡径の泡状定着液を生成する装置である。
図6に示すように、定着液が搬送される定着液搬送管134が接続された気体・液体混合部510には空気口512が設けられている。そして、定着液搬送ポンプ133によって搬送力が付与された定着液132の流れとともに、空気口512に負圧が発生し、空気口512から気体が気体・液体混合部510内に導入される。これにより、液体状の定着液132と気体とが混合し、更に、混合したものが微小孔シート511を通過することで、泡径のそろった大きな泡の泡状定着液を生成することができる。
微小孔シート511の孔径は、30[μm]〜100[μm]程度が望ましい。なお、液体状の定着液を泡状定着液とする部材としては、定着装置6が備える微小孔シート511に限らず、連泡構造の多孔質部材であればよく、孔径30[μm]〜100[μm]程度の孔を有する焼結セラミックス板や不織布や発泡樹脂シートであってもよい。また、別の大きな泡の生成方法としては、定着液搬送ポンプ133によって供給された液状の定着液132と空気口512からの空気を羽根状攪拌子で攪拌しながら、定着液132に気泡を巻き込みながら大きな泡を含有する泡状定着液120を生成させる構成であってもよい。さらに、定着液搬送ポンプ133よって供給された液状の定着液132に空気供給ポンプ等でバブリングを行い大きな泡を含有する泡状定着液120を生成する構成であってもよい。
V={L×π×(d12−d22)/4}/(1000/R)・・・・(1)
図6に示す定着液泡状化装置500のように、液状の定着液を大きな泡径を含有する泡状定着液へと変化させる大径泡生成部である気体・液体混合部510と、大きな泡にせん断力を加えて微小な泡を含有する泡状定着液を生成する微小径泡生成部520とを組み合わせることで、液状の定着液から極めて短時間に、且つ、5[μm]〜50[μm]程度の微小な泡径を有する泡状定着液を生成させることができる。
図7は、定着液塗布部60を図1中の矢印B方向から見た斜視説明図である。
図1に示すように、定着液塗布部60は、上述した泡状定着液生成部130によって生成された所望の微小泡径の泡状定着液120を転写紙P上のトナー層T(未定着のトナー像)へ付与する定着液付与手段である。定着液塗布部60は、塗布ローラ61と、塗布ローラ61と対向する位置に配置された加圧ローラ62とを備える。さらに、塗布ローラ61と加圧ローラ62とが対向する位置に対して塗布ローラ61の表面移動方向上流側の塗布ローラ61の表面に近接または圧接する膜厚規制ブレード63を備える。なお、本実施形態の定着装置6の膜厚規制ブレード63は塗布ローラ61の表面に対して近接して配置され、詳細は後述するが塗布ローラ61とのギャップ幅を制御可能となっている。膜厚規制ブレード63は塗布ローラ61の表面上の泡状定着液の膜厚を制御するものである。
定着液をトナー層Tに塗布する構成の場合、記録媒体上のトナー層Tの厚み、記録媒体の種類及び環境温度等、定着環境によってトナー層Tに対する泡状定着液120の浸透し易さが異なる。一方、塗布ローラ61に対して加圧ローラ62が圧接することで形成される定着ニップの幅と記録媒体の搬送速度とは一定であるため、記録媒体が転写ニップを通過する時間は一定である。定着ニップを通過する間に記録媒体上のトナー層Tを形成するトナー粒子が軟化され、加圧されることで記録媒体に定着するため、定着ニップを通過する間にトナー粒子が十分に軟化される必要がある。記録媒体上のトナー層Tに塗布する泡状定着液120の泡状定着液膜Fbの膜厚を厚くすることによって、定着液がトナー粒子に浸透する時間の短縮を図ることができるが、過剰に泡状定着液120を塗布することは定着液の不要な消費となる。さらに、泡状でかさ密度が低くなった泡状定着液120であっても過剰に塗布すると、過剰な定着液によりトナー粒子が流されて画質劣化を生じたり、定着液の乾燥時間が長くなり定着応答性に問題が生じたりするおそれがある。このため、トナー粒子に定着液が浸透し易い定着条件であれば、塗布ローラ61上の泡状定着液膜Fbの膜厚が薄くなるように制御し、定着液が浸透し難い定着条件であれば、塗布ローラ61上の泡状定着液膜Fbの膜厚が厚くなるように制御することが望ましい。
実施形態の定着装置6では、膜厚規制ブレード63と塗布ローラ61とのギャップ幅を制御し、塗布ローラ61表面上の泡状定着液膜Fbの膜厚を制御することができるので、定着条件に適した泡状定着液膜Fbの膜厚にすることができる。よって、膜厚規制ブレード63によって転写紙P上の未定着トナーの層厚の定着液の浸透時間に対して最適化した定着液量となるような膜厚の泡状定着液膜Fbとなる。
図8は、膜厚規制ブレード63を用いた塗布ローラ61上の泡状定着液の膜厚制御の様子を示す概略図である。図8(a)は、膜厚規制ブレード63とのギャップ幅を狭くしたときの説明図であり、図8(b)は、膜厚規制ブレード63とのギャップ幅を広くしたときの説明図である。
膜厚規制ブレード63との対向部を通過した後の塗布ローラ61表面上の泡状定着液膜Fbを薄くするときは、図8(a)に示すように、ギャップ幅を狭くし、泡状定着液膜Fbを厚くするときは、図8(b)に示すように、ギャップ幅を広くする。ギャップ幅の制御は膜厚規制ブレード63の端部に不図示の駆動を有するブレード回転軸63aを用い、転写紙P上の未定着のトナー層Tの厚さに対する泡状定着液120の浸透時間を調整するための最適な膜厚となるように制御する。
図9は、図8を用いて説明した膜厚規制ブレード63の代わりに、泡状定着液膜厚規制部材としてワイヤーバー64を用いる構成の説明図である。ワイヤーバー64を用いた構成でも、図8を用いて説明した膜厚規制ブレード63を用いる構成と同様に、ワイヤーバー64によって塗布ローラ61上の泡状定着液120の厚みを制御して、所望の厚みに泡状定着液膜Fbとする。
定着装置6の泡状定着液120は、上述したように大きな泡を生成する気体・液体混合部510と、その大きな泡をせん断力で分泡する微小径泡生成部520からなる定着液泡状化装置500で生成され、定着液供給口501より、膜制御用のワイヤーバー64と塗布ローラ61との間に滴下する。ワイヤーバー64を泡状定着液膜厚規制部材として用いることで、ブレードを用いる構成に比べ、塗布ローラ61表面の軸方向の泡状定着液膜Fbの均一性が向上する。
泡状定着液120は、上述したように、軟化剤を含有した液状の定着液132中に気泡を含有した構成である。軟化剤を含有した定着液132は、泡状定着液120としたときに気泡を安定に含有し、なるべく均一な気泡の大きさからなる気泡層を構成する泡状とするため、起泡剤及び増泡剤を有することが望ましい。また、ある程度粘度が高いほうが、気泡が安定して液体中に分散するため、増粘剤を含有することが望ましい。
また、起泡剤としては、陰イオン界面活性剤、特に、脂肪酸塩が望ましい。脂肪酸塩は界面活性を有するため、水を含有する定着液132の表面張力を下げ、定着液132を発泡しやすくするとともに、泡表面で脂肪酸塩が層状ラメラ構造をとるため泡壁(プラトー境界121)が他の界面活性剤よりも強くなり、泡沫安定性が極めて高くなる。また、脂肪酸塩の起泡性を効果的にするため、定着液には水を含有することが望ましい。脂肪酸としては、大気中での長期安定性の観点から酸化に強い飽和脂肪酸が望ましい。但し、飽和脂肪酸塩を含有する定着液に若干の不飽和脂肪酸塩を含有することで脂肪酸塩の水に対する溶解・分散性を助け、5[℃]〜15[℃]までの低気温において、優れた起泡性を有することができ、広い環境温度範囲において定着の安定を可能とし、また、定着液132を長期放置したときの脂肪酸塩の定着液中分離を防止することができる。
更に、記録媒体に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、トナーを記録媒体への定着した後にも軟化剤はトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。すなわち、軟化剤は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し、刺激臭を持たない。
なお、オフィス環境等における臭気を高い精度で測定することができる実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数(10×log{物質の臭気が感じられなくなるまでの物質の希釈倍率})を臭気の指標とすることができる。また、軟化剤に含まれる脂肪族エステルの臭気指数は、10以下であることが好ましい。この場合には、通常のオフィス環境では、不快臭を感じなくなる。更に、軟化剤のみならず、定着液に含まれる他の液剤も同様に、不快臭及び刺激臭を有さないことが好ましい。
R1COOR2
の一般式で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型アルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記飽和脂肪族エステルが、一般式R1COOR2で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記化合物の臭気指数は、10以下であり、上記化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
よって、本発明における定着液132において、好ましくは、上記脂肪族ジカルボン酸エステルは、
R3(COOR4)2
の一般式で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である。R3及びR4の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記脂肪族ジカルボン酸エステルが、一般式R3(COOR4)2で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記化合物の臭気指数は、10以下であり、上記化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記化合物である脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、コハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。上記化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液132に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
本発明における定着液において、好ましくは、上記脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、
R5(COOR6−O−R7)2
の一般式で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である。R5、R6及びR7の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式R5(COOR6−O−R7)2で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記化合物の臭気指数は、10以下であり、上記化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
また、脂肪酸エステルではないが、クエン酸エステルや炭酸エチレンや炭酸プロピレンも軟化もしくは膨潤剤として適する。
ところで、泡状定着液において、塗布接触ニップ部にてトナー等の微粒子層に泡状定着液を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。そこで泡沫安定性に優れる泡が求められる。このため、定着液中に脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有することが望ましい。脂肪酸アルカノールアミドには(1:1)型と(1:2)型があるが、本発明における泡沫安定性には(1:1)型が適することがわかった。
また、定着液中に浸透性改善や紙等媒体のカール防止のために油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成も望ましく、その場合、具体的な分散剤としては、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステルなどが望ましい。
また、トナーの定着装置は、本発明における定着液をトナーに供給した後、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)によって溶解又は膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を有してもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、溶解又は膨潤したトナーを加圧することによって、溶解又は膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、記録媒体内へ溶解又は膨潤したトナーを押し込むことによって、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
・希釈溶媒:イオン交換水 53[wt%]
・軟化剤:コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社 クローダDES)
10[wt%]
炭酸プロピレン 20[wt%]
・増粘剤:プロピレングリコール 10[wt%]
・増泡剤:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂 マーポンMM)
0.5[wt%]
・起泡剤:パルミチン酸アミン 2.5[wt%]
ミリスチン酸アミン 1.5[wt%]
ステアリン酸アミン 0.5[wt%]
・分散剤:POE(20)ラウリルソルビタン(花王 レオドールTW−S120V)
1[wt%]
ポリエチレングリコールモノステアレート(花王 エマノーン3199)
1[wt%]
図1に示すように、定着装置6は、塗布ローラ61をクリーニングする塗布部材クリーニング手段として塗布ローラクリーニング装置200を有する。そして、塗布ローラクリーニング装置200は、塗布ローラ61が転写紙Pに泡状定着液120を塗布する塗布位置を通過した後の塗布ローラ61表面に残留する残留泡状定着液Fcを回収する定着液回収ブレード211を含む泡状定着液回収手段と、この泡状定着液回収手段によって回収された回収泡状定着液Fdを加熱して消泡する加熱手段としてのヒーター222を有する。
泡状定着液120を転写紙Pに塗布する定着装置6の塗布ローラ61は、転写紙P上のトナー層Tに対して接触しながら泡状定着液120を付与するという機能を持っている。したがって、理想的な状態としては、転写紙Pが塗布ローラ61との接触部である塗布位置を通過したあとは、塗布ローラ61上の泡状定着液膜Fbを形成する泡状定着液120が全て転写紙P上のトナー層Tに付与され、塗布ローラ61がクリーンな状態であるということになる。しかし、現実的には、部品や組み付けのばらつき、環境変動、経時変動等の影響により、全てのプロセスが理想どおりに進むとは考えにくく、実際問題としては、塗布ローラ61上に残留泡状定着液Fcや、オフセットしたトナーT2が残留することが懸念される。これらが塗布ローラ61上に残留したままだと、塗布ローラ61が1周したときに、定着液供給口501から供給される泡状定着液120と残留泡状定着液Fcとが混ざって泡状定着液120の供給量が不安定になったり、オフセットしたトナーT2が転写紙Pに再転写して画像品質の低下を招いたりする恐れがある。さらには、トナーを含んだ泡状定着液120が循環することになり、汚れた泡状定着液120を用いることにより、定着の品質が低下する恐れがある。このため、塗布ローラ61に残留した残留泡状定着液FcやオフセットしたトナーT2をクリーニングする必要がある。
図10は、定着装置6の定着液塗布部60を図1中の矢印C方向から見た説明図である。また、図11は定着液塗布部60を図10中のE‐E´断面で見た断面説明図である。なお、図1中の定着液塗布部60は、図10中のE‐E´断面で見た断面説明図である。
塗布ローラクリーニング装置200は、大きく分けると泡状定着液回収手段である泡状定着液回収部210と泡状定着液回収部210で回収した回収泡状定着液Fdを一時的に貯蔵する泡貯蔵手段である泡貯蔵部220に分けられる。
泡状定着液回収部210は、塗布ローラ61上の残留泡状定着液FcやオフセットしたトナーT2を塗布ローラ61から除去し、それを泡貯蔵部220まで運搬する機能を主な機能とする。構成としては、主に、定着液回収ブレード211、ハウジング212、泡寄せ手段である泡寄せ板213、泡寄せ手段駆動手段である泡寄せ板駆動部214より、成り立っている。なお、定着液回収ブレード211はブレードホルダ211aによってハウジング212に固定され、その先端が塗布ローラ61に当接する。
定着液回収ブレード211の材質としては、塗布ローラ61を傷つけないということから、ゴム、樹脂系のものが望ましい。一般的なクリーニングブレードはゴム製のものが多いが、厚の薄い樹脂のブレードを用いて弾力効果を持たせているものもある。いずれの場合も、泡状定着液120と接したときに物性変化を起こさないものが望ましいということは言うまでもない。
この泡寄せ板213の塗布ローラ61の軸方向に沿った移動によって、ハウジング212内の回収泡状定着液Fdや回収トナーT3を、ハウジング212における塗布ローラ61の軸方向端部の側面に設けた排出開口部212bから押し出すことが出来る。泡寄せ板213の材質としては、塗布ローラ61、ハウジング212、定着液回収ブレード211にならって且つ密着性(シール性)が要求されるため、柔らかい材質が望ましい。具体的には、ウエブ、防水フォーム、フェルト、ゴム材など、種々のものが考えられる。繰り返して言うが、泡状定着液120と接したときに物性変化を起こさないものが望ましいということは言うまでもない。また、泡寄せ手段としては泡を寄せることができればよく、その形状としては板状に限るものではない。
ここで、何も工夫しなければ、泡寄せ板213の往復動作で、ハウジング212の軸方向両側端部の側面に回収泡状定着液Fdや回収トナーT3を押し込むことになるため、排出開口部212bの配置を片側の側面のみに限定するためには、例えば以下に述べる手法がある。
泡寄せ板213の形状は、ハウジング212と定着液回収ブレード211と塗布ローラ61で構成される内側の空間の断面形状に沿った形状で構成されているが、先にも述べたように泡寄せ手段自身の材質として、柔らかい材質を用いている。
塗布ローラクリーニング装置200では、ガイドモータ214bを駆動し、スクリューガイド214aを図11中の反時計回りに回転させたときに、泡寄せ板213が図10中の矢印Gで示すように右方向に進行する。すなわち、排出開口部212bの方向に進行するので、回収泡状定着液Fdや回収トナーT3を搬送する動作でなければならない。
スクリューガイド214aを図11中の反時計回り方向、すなわち、図13(a)に示すように矢印g方向に回転させると、泡寄せ板213はスクリューガイド214aとともに回転にして、塗布ローラ61、及び、定着液回収ブレード211に押し付けられる。このように、泡寄せ板213が定着液回収ブレード211等に押し付けられた状態でスクリューガイド214aがさらに図13(a)中の矢印g方向に回転することによって、泡寄せ板213は定着液回収ブレード211等に押し付けられた状態でスクリューガイド214aの軸方向に沿って排出開口部212bの方向(図10中矢印G方向)に進行する。これにより、定着液回収ブレード211で掻き取った回収泡状定着液Fdや回収トナーT3は、初期的には塗布ローラ61及び定着液回収ブレード211の表面に溜まるので、それらの排出開口部212bへの搬送を確実に行うことが出来る。
塗布ローラクリーニング装置200では、スクリューガイド214aを図11中の時計回り方向、すなわち、図13(b)に示すように矢印h方向に回転させると、泡寄せ板213はスクリューガイド214aとともに回転し、塗布ローラ61、及び、定着液回収ブレード211に対して離間する方向に移動し、ハウジング212の内壁に押し付けられる。このように、泡寄せ板213がハウジング212の内壁に押し付けられた状態でスクリューガイド214aがさらに図13(b)中の矢印h方向に回転することによって、泡寄せ板213はハウジング212の内壁に押し付けられた状態でスクリューガイド214aの軸方向に沿って排出開口部212bから離れる方向(図10中矢印H方向)に進行する。ここで、泡寄せ板213は柔らかい材質で構成されているため、ハウジング212の内壁に押さえつけられていることによって、泡寄せ板213が圧縮変形することになる。これにより、泡寄せ板213が、塗布ローラ61及び定着液回収ブレード211等に対して圧縮変形した分だけ離間した状態で排出開口部212bから離れる方向に移動していくことになる。よって、定着液回収ブレード211で掻き取った回収泡状定着液Fdや回収トナーT3は、初期的には塗布ローラ61及び定着液回収ブレード211に溜まるので、泡寄せ板213の離間量が充分あれば、回収泡状定着液Fdや回収トナーT3を排出開口部212bとは逆の方向に搬送してしまうことを確実に回避することが出来る。
泡貯蔵部220を構成する材質に関しては、泡状定着液120と接したときに物性変化を起こさないものが望ましいということは言うまでもない。また、廃棄系収容手段としては、定着液回収ボトル221のような廃液タンクに限るものではなく、廃液吸収材(フェルト、スポンジ系など)を用いたものなど、他の構成であってもよい。
泡貯蔵部220から泡がオーバーフローすることを防止する最も好ましい手法としては、回収泡状定着液Fdを液化、すなわち消泡することである。消泡することによって、回収泡状定着液Fdのかさは劇的に減少し、さらに液体になることによって、重力によって下方に沈み込むようになるので、定着液回収ボトル221を泡貯蔵部220の下方に置けば、回収泡状定着液Fdや回収トナーT3を容易に定着液回収ボトル221に導くことが可能になる。当然、ポンプ等を使って定着液回収ボトル221に導いてもよい。泡状の液体よりも通常の液状の液体の方がポンプにおいても取り扱い性がよいからである。
強制的に消泡する手段としてはいくつか考えられるが、出来るだけ短時間で消泡できる手段が望ましい。アルコール等の溶剤を用いる手段もその一つだが、本実施形態における定着装置6、画像形成装置であるプリンタ100では、定着液を用いている以上、消費する液体を増やすのは、機械の取り扱いが煩雑になることが懸念される。しかも、アルコール類は使用が制限されている。
なお、本実施形態の定着装置6のように、湿式定着方式の定着装置では熱を使わない定着方法であることを前提としたものであるから、熱を使って消泡をするという方法は、この前提に反するとも考えられる。しかし、一般的に消泡するためには、50[℃]くらいに昇温させれば十分であり、さらに、泡貯蔵部220内に泡が存在しているときだけ消泡動作を行えばよいので、150[℃]以上の高熱まで昇温させる場合が多い熱定着方式に必要な熱量と比較すると比べ物にならない程、省エネルギーであるといえる。
図14は、図10に示す泡寄せ板213が排出開口部212bに最も近づいた状態でのヒーター222近傍の拡大説明図である。図14に示すように、泡貯蔵部220内に蓄積された回収泡状定着液Fdがヒーター222によって消泡されて液化して回収定着液132dとなり、その結果、かさを小さくすることが出来るので、泡貯蔵部220の容積が小さくてもすむことになる。
図15は、泡センサ223の具体例の説明図である。
図15に示すように、泡センサ223は、第一電極223aと第二電極223bとの2本の電極で主に構成されている。そして、これらの2本の電極間の抵抗を検知する抵抗検知部223cを有している。第一電極223aと第二電極223bとは離間して設けられており、図15(a)のように何もない空間中に泡センサ223の2本の電極が置かれた場合、当然ながら抵抗は無限大となる。一方、図15(b)のように、2本の電極間に回収泡状定着液Fdが入り込んできた場合、2本の電極の間に泡を構成する泡膜が介在することになる。泡膜そのものは定着液132の成分であり、液体なのでいくらかの導電性を有する。したがって、図15(a)のような何もない空間中と比較して、図15(b)のように回収泡状定着液Fd中の方が2本の電極間の抵抗が下がった状態になる。この抵抗の違いを検出することによって、回収泡状定着液Fdの有無を検知する。なお、抵抗を検知する方法としては、いろいろ考えられるが、一定電圧をかけたときの、電流値を検知するなどといった方法が考えられる。このような構成にすることによって、泡検知手段を非常にシンプルな構成で安価に提供することが出来る。
このような泡センサ223を、泡貯蔵部220内でヒーター222の近傍に配置し、不図示の制御部が抵抗検知部223cの検知結果に基づいて、ヒーター222の加熱動作を制御することにより加熱制御の精度は高いものになる。
先にも言ったように、消泡をする必要があるときにのみ、消泡を行えばいいので、泡センサ223が泡の存在を検知してから、ヒーター222を動作するように制御するということは言うまでもない。図16に示すタイミングテーブルは一番シンプルなケースで、泡センサ223が泡の存在を検知してから、ヒーター222の加熱動作を「ON」にし、泡センサ223が泡の存在を検知しなくなったら、ヒーター222の加熱動作をOFFにするというものである。このように制御することによって、効率のいい加熱動作すなわち消泡動作を行うことが出来、省電力化を実現することが出来る。
なお、ヒーター222の加熱動作の制御は、図16に示す例に限る必要はなく、加熱動作を断続的にするとか、泡センサ223による泡検知後一定時間経過してから加熱動作に入る等、制御のやり方はいろいろあるので、最も適したやり方を選べばよい。いずれの場合も共通なことは、泡センサ223が泡の存在を検知してから、ヒーター222の加熱動作の制御がスタートするということである。
しかし、観点を変えれば、塗布ローラ61からの回収時において、消泡が出来れば、泡のかさを問題とする必要は全くなくなり、泡状定着液回収手段である泡状定着液回収部210を構成するハウジング212や泡貯蔵手段である泡貯蔵部220の容積を小さくしても問題はなくなる。場合によっては、泡貯蔵部220をそのまま廃棄系収容手段として利用することも出来る。
図17は、残留泡状定着液Fcを塗布ローラ61から回収するときに消泡する構成の一例を示す説明図である。
回収時に消泡する場合は、塗布ローラ61上で回収泡状定着液Fdが消泡されて液化してしまうので、重力による垂れ流れに注意しなければならない。これを踏まえて、液化された回収定着液132dをうまく泡貯蔵部220に導くには、図17に示すように、定着液回収ブレード211を傾斜させて塗布ローラ61に当て、その傾斜の一番低くなっているところに泡貯蔵部220を配置するようにすればよい。この構成によれば、泡寄せ手段や泡寄せ手段駆動手段が必要なくなる。
上述した説明では、定着装置6が備える塗布ローラ61をクリーニングするという前提で行われた。現実問題、最もクリーニングが必要な箇所は塗布ローラ61であるが、塗布ローラ61に対峙する加圧ローラ62にもクリーニング手段を設けても良い。図18に示す構成例では、加圧ローラクリーニング装置400が備える各部材(411、412、413及び414)として、上述した塗布ローラクリーニング装置200が備える各部材(211、212、213及び214)と同様のものを用いることにより、装置を大型化することなく、加圧ローラ62のクリーニングを行うことができる。
泡状定着液120は、本来は転写紙P上に乗ったトナーに対して与えられるものであり、転写紙Pの余白マージンβを利用して、転写紙Pにのみ泡状定着液120が付与されるよう、塗布ローラ61上に与える泡状定着液120の領域を制御するということが望ましい。すなわち、図19中の斜線部で示す泡状定着液付与部γのように、その境界が余白マージンβの範囲内となるように転写紙Pに泡状定着液120を塗布することが望ましい。
しかし、近年の電子写真装置に代表される画像形成装置では、図19に示すように余白マージンβはせいぜい3[mm]程度しか許容されないことが多い。すなわち、塗布ローラ61上に与える泡状定着液120の位置精度は3[mm]の許容範囲しか与えられないことになる。泡状定着液120を塗布される範囲が画像形成領域αよりも狭い(ショート)と転写紙P上のトナーが乗った箇所の一部に未定着部が発生し、転写紙Pよりも広い範囲に泡状定着液120を塗布される(オーバー)と、塗布ローラ61上の泡状定着液120がそのまま加圧ローラ62に転写されることになる。転写紙P上のトナーが乗った箇所に未定着部が発生することは画像形成装置としてあってはならないことであり、加圧ローラ62に泡状定着液120が転写した場合、転写紙Pの裏汚れ等各種問題が発生する。このため、泡状定着液付与部γのように、その境界が余白マージンβの範囲内となるように転写紙Pに泡状定着液120を塗布することが望ましいが、泡状定着液120の塗布領域を3[mm]以内の精度で制御することを保証するのは、プロセス上困難である。
未定着部の発生は、基本的にあってはならないことなので、方向性としてはショートするよりもオーバーする方にシフトすることが望ましい。したがって、加圧ローラ62上に泡状定着液120が多少転写してしまうことはやむなしと考えて、オーバーするような泡状定着液120の塗布を行い、加圧ローラ62に付着した泡状定着液120はクリーニングすることで転写紙Pの裏汚れを防止する構成が望ましい。このことを省みて、図18に示す構成例では加圧ローラ62にもクリーニング手段を設けている。
ヒーター222は、泡センサ223が泡の存在を検知しているときに動作されるように制御されることが、省電力の面でも望ましいため、ON/OFFの制御が可能な加熱手段であることが望ましい。具体的に電熱ヒーターが挙げられるが、IHヒーターなども含めて種々の制御可能な加熱手段が考えられる。
なお、上述したように、消泡するためには50[℃]程度に昇温しれば機能を果たすため、プリンタ100本体からの排熱で充分事が足りる場合もあると考えられる。この排熱の熱源としては、各種駆動用のモータや、電気回路基板に搭載された各種回路素子、電源ユニットなどいろいろ挙げられる。これらは、定着装置の定着方式が熱定着であろうと、本実施形態の定着装置6のように湿式の定着であろうと関係なく発生するものである。
図20は、加熱手段として排熱を利用する構成例の定着液塗布部60を図10と同方向から見た説明図である。
図20に示す定着液塗布部60では、加熱手段がヒートパイプ230を備えた構成であり、泡貯蔵部220内に加熱部222aが配置され、ヒートパイプ230を介して不図示の排熱部と接続されている。
加熱手段として排熱を利用する構成としてはいろいろあるが、最も効率的な構成はヒートパイプである。ヒートパイプは瞬時に熱を移動させることが出来るので、排熱部のヒートシンクそのものの温度を加熱部まで導くことが出来る。
また、上述の実施形態では、塗布ローラ61上から回収した泡状定着液120を加熱して消泡する構成について説明したが、消泡手段としては過熱する構成に限るものではなく泡状定着液120を消泡し、回収する定着液の体積を小さくすることができればよい。このため、先に述べたアルコール等の溶剤を用いる構成であってもよい。
このように塗布ローラクリーニング装置200を備えることによって塗布ローラ61を常にクリーンな状態に保つことができ、回収泡状定着液Fdのかさを小さくすることによって、連続印刷時においても回収泡状定着液Fdを貯蔵する泡貯蔵部220から泡状定着液が溢れ出ないようすることができる。このため、小さな泡貯蔵部220を実現して、小型の定着装置6とすることができる。
さらに、ヒーター222を設けた構成であっても、ヒーター222の温度は熱定着の温度よりも十分に低温であるため、定着液を用いた湿式方式の定着装置の本質である、「熱を使わない定着」=「低消費電力」という基本コンセプトに基づいた機構とすることができる。
2 給紙カセット
3 画像ステーション
4 光学ユニット
5 中間転写ユニット
6,300 定着装置
7 トナーボトル
8 排紙トレイ
10 感光体
11 帯電装置
12 現像装置
13 クリーニング装置
20 転写ベルト
21 駆動ローラ
22 テンションローラ
23 従動ローラ
24 一次転写ローラ
25 二次転写ローラ
26 ベルトクリーニング装置
27 給紙ローラ
28 レジストローラ対
29 排出ローラ
60 定着液塗布部
61,301 塗布ローラ
62 加圧ローラ
63 膜厚規制ブレード
63a ブレード回転軸
64 ワイヤーバー
100 プリンタ
120 泡状定着液
121 プラトー境界
122 気泡
130 泡状定着液生成部
131 定着液ボトル
132,304 定着液
132d 回収定着液
133 定着液搬送ポンプ
134 定着液搬送管
200 塗布ローラクリーニング装置
210 泡状定着液回収部
211 定着液回収ブレード
211a ブレードホルダ
212 ハウジング
212a 回収開口部
212b 排出開口部
213 泡寄せ板
213a 泡寄せ板ホルダ
214 泡寄せ板駆動部
214a スクリューガイド
214b ガイドモータ
220 泡貯蔵部
221 定着液回収ボトル
221a 回収搬送管
222 ヒーター
222a 加熱部
223 泡センサ
223a 第一電極
223b 第二電極
223c 抵抗検知部
230 ヒートパイプ
303a トナー粒子
400 加圧ローラクリーニング装置
500 定着液泡状化装置
501 定着液供給口
510 気体・液体混合部
511 微小孔シート
512 空気口
515 泡状化装置内搬送管
520 微小径泡生成部
521 外側円筒部
522 内側円筒部
Fb 泡状定着液膜
Fc 残留泡状定着液
Fd 回収泡状定着液
P,302 転写紙
T,303 トナー層
T1 定着されたトナー
T2 オフセットしたトナー
T3 回収トナー
α 画像形成領域
β 余白マージン
γ 泡状定着液付与部
Claims (11)
- 樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段と、
該樹脂微粒子を担持する記録媒体の表面に該泡状定着液を塗布する塗布部材とを有する定着装置において、
上記塗布部材をクリーニングする塗布部材クリーニング手段を有し、
該塗布部材クリーニング手段は、該塗布部材に付着した上記泡状定着液を回収する泡状定着液回収手段と、
該泡状定着液回収手段によって回収された該泡状定着液を加熱して消泡する加熱手段とを有することを特徴とする定着装置。 - 請求項1の定着装置において、
上記泡状定着液回収手段が回収した上記泡状定着液を貯蔵する泡貯蔵手段を有し、
上記加熱手段を該泡貯蔵手段内、或いは、該泡貯蔵手段の近傍に設けたことを特徴とする定着装置。 - 請求項2の定着装置において、
上記泡貯蔵手段内の泡状定着液の有無を検知する泡検知手段を有し、
該泡検知手段の検知結果に基づいて上記加熱手段による加熱動作の制御を行う加熱制御手段とを有することを特徴とする定着装置。 - 請求項3の定着装置において、
上記加熱制御手段は、上記泡検知手段が泡の存在を検知している間のみ加熱するように上記加熱手段の加熱動作を制御することを特徴とする定着装置。 - 請求項3または4の定着装置において、
上記泡検知手段は、上記泡貯蔵手段内に配置された複数の電極を備え、該複数の電極間の抵抗を検知することによって泡の有無を検知することを特徴とする定着装置。 - 請求項1の定着装置において、
上記加熱手段を上記泡状定着液回収手段に設けることを特徴とする定着装置。 - 樹脂と色剤を含有する上記樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、
該定着手段として、請求項1、2、3、4、5または6の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。 - 請求項7の画像形成装置において、
上記加熱手段は、該画像形成装置の排熱部により生じた熱を利用することを特徴とする画像形成装置。 - 請求項8の画像形成装置において、
上記加熱手段は、上記排熱部から上記泡状定着液を加熱する加熱部へ熱の伝導を介在するヒートパイプを備えることを特徴とする画像形成装置。 - 樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段と、
該樹脂微粒子を担持する記録媒体に該泡状定着液を塗布する塗布部材とを有する定着装置において、
上記塗布部材をクリーニングする塗布部材クリーニング手段を有し、
該塗布部材クリーニング手段は、該塗布部材に付着した上記泡状定着液を回収する泡状定着液回収手段と、
該泡状定着液回収手段によって回収された該泡状定着液を消泡する消泡手段とを有することを特徴とする定着装置。 - 樹脂と色剤を含有する上記樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、
該定着手段として、請求項10の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
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