この従来例に係る水栓によると、使用空間の状況によっては、取付部に取り付ける作業を円滑、かつ確実に行うことができない場合がある。以下、この点について、図31に示す具体例を用いて説明する。
この具体例に係る水栓100は、所謂、その水栓本体110を台部(デッキ部)200に取り付けて使用する台付きタイプ(デッキタイプ)のものである。この水栓100を構成する水栓本体110の内部には摺動弁装置(図示を省略)が内蔵されると共に、水栓本体110の上部には摺動弁装置を操作するためのレバーハンドル120が装着されている。また、水栓本体110の下端部側には、水栓本体110への給湯を行うための給湯用の接続管130と、水栓本体110への給水を行うための給水用の接続管140とが配設されている。
また、給湯用の接続管130の1次側の端部が、「台部200の下方に予め設置された給湯用の元配管210の端末部211」に接続され、給水用の接続管140の1次側の端部が、「台部200の下方に予め設置された給水用の元配管220の端末部221」に接続される。そして、レバーハンドル120に適宜、回動操作や傾動操作を施すことで、シャワーヘッド230から所望温度の湯水(湯、水、若しくは、湯と水とを混合した混合水)を流出可能とされている。
ところで、通常、元配管210、220の施工と、水栓100の施工は異なる業者によって行われる。つまり、水栓100の施工に先立って、元配管の施工業者が給湯用の元配管210の端末部211と、給水用の元配管220の端末部221とを台部200の下方に設置する作業を行う。この作業によって設置される両端末部211、221は、通常、台部200の下方に位置する奥壁部250から略等距離の位置において鉛直上方に開口する状態とされる。そして、水栓の施工業者は、このように設置された端末部211、221に対して、給湯用の接続管130と給水用の接続管140とを接続する作業を行う。
しかし、水栓100の取付態様や台部200の状況によっては、水栓本体110を台部200に取り付ける作業を円滑、かつ確実に行うことが困難な場合がある。すなわち、水栓100は、通常、レバーハンドル120が正面前方に向くような状態(以下、「基本状態」という。)に取り付けられるが(図31を参照)、水栓100の取付態様によっては、レバーハンドル120の軸線を斜め方向等に向けることが必要となる場合がある。
例えば、図32に示す水栓100Aのように、流し台300の上面部において流し台水槽301の角部302の斜め後方に位置する部位に水栓本体110Aを取り付ける場合がある。かかる場合、流し台水槽301の中央部前方に位置する使用者にとっては、レバーハンドル120を斜め方向(具体的には、流し台水槽301の対角線方向若しくは対角線寄りの方向)に向けた方が、レバーハンドル120の操作性が高くなるからである。尚、このような場合、レバーハンドル120が正面前方を向いた状態であると、流し台水槽301の中央部前方に位置する使用者にとっては、レバーハンドル120の操作性が低かったり、レバーハンドル120に手が届かない場合がある。また、次善策として、図32に併記したレバーハンドル120Aのように、その全長を長くすると、このレバーハンドル120Aが流し台300の周囲の壁部380等に衝突し、レバーハンドル120Aの使用性が更に低下する可能性がある。
このレバーハンドル120のように、その方向を斜め方向に向けるためには、水栓本体110Aの流し台300の上面部に対する取付状態を変更することが必要となる。例えば、図32に図示するように、水栓本体110Aを鉛直方向に向かう回転軸回りに約45度回転させた状態(前述の基本状態を基準に約45度回転させた状態であって、以下、「回転状態」という。)で流し台300の上面部に取り付けること等が必要となるが、この場合、図33に示すように、水栓本体110の下端部から垂れ下がる給湯用の接続管130と給水用の接続管140も、前述の回転軸回りに約45度回転することになる。尚、図33は、「給湯用の接続管130及び給水用の接続管140」と、「給湯用の元配管210の端末部211及び給水用の元配管220の端末部221」との位置関係を示す概略的な平面図であり、図33(a)は、両接続管130、接続管140に回転を加える前の位置関係を示し、図33(b)は、両接続管130、接続管140に回転を加えた後の位置関係を示している。
このように、給湯用の接続管130及び給水用の接続管140を、前述の回転軸回りに約45度回転させると、各接続管130、140と、各端末部211、221との相対位置にズレを生ずるため、両接続管130、140のうちの一方の長さが過剰気味(端末部211、221と水栓本体110とを接続する上で過剰気味)となり、両接続管130、140のちの他方の長さが不足気味となる等の不具合を招く可能性がある。この場合、一方の接続管130(140)の過剰部分をミリ単位で切除することが必要となり、接続管130、140と端末部211(221)との接続作業が面倒なものとなる可能性がある。若しくは、他方の接続管130、140と端末部221(211)との間のシール不良を生じたり、他方の接続管130、140と端末部221(211)との間の接続自体が不可能となる可能性を生ずるからである。
更に、台部200の下方の障害物が存在する場合には、両接続管130、140を前述の回転軸回りに約45度回転することによって何れかの接続管130、140が当該障害物に抵触(衝突)する可能性がある。かかる場合においても、接続管130、140を端末部211、221に接続することが困難となることがある。つまり、この接続管130、140を端末部211、221に接続するためには、障害物を迂回した経路を通過させつつ端末部211、221に到達させることが必要となる。ところが、この接続管130、140の長さが不足し、端末部211、221に到達させることが不可能となる場合があるからである。
以上の問題点について、湯水混合水栓を例にとって説明したが、単水栓においても同様な問題を生じ得る。つまり、水栓本体110に流体(湯、水、若しくは、混合水)を流入させるために、水栓本体110から1つの接続管が垂れ下がる場合においても、接続管を水栓本体110の回転軸回りに回転させることによって、接続管と、元配管の端末部との位置関係に変更を生じ、接続管と、元配管の端末部の接続を的確に行うことができない可能性がある。また、接続管が水栓本体110の回転軸回りに回転することによって、この接続管が台部200の下方の障害物に抵触(衝突)する可能性を生ずるからである。
本発明は、上述の課題を解決するものであり、使用空間の状況にかかわらず、水栓を種々の取付部に取り付ける作業を円滑、かつ確実に行うことを可能とする取付装置を提供することを目的とする。
請求項1の発明の取付装置は、
弁機構を内蔵する水栓本体を取付部に取付けるための取付装置であって、
前記取付部に固定されると共に挿入用凹部を有する固定取付部材と、
前記挿入用凹部に対して回動可能な状態に挿入される挿入部を有すると共に前記水栓本体を一体回動可能な状態に保持する可動取付部材と、
を備え、
前記固定取付部材には流体供給用流路が形成され、前記可動取付部材には該流体供給用流路を通じて供給される流体を前記水栓本体に到達させるための到達用流路が形成され、
前記挿入用凹部の内壁部と前記挿入部の外面部との間に略環状若しくは略円弧状の経路を描く流入側連通空間が設けられ、
前記挿入部の外面部で開口する前記到達用流路の1次側の端部と、前記挿入用凹部の内壁部で開口する前記流体供給用流路の2次側の端部とが前記流入側連通空間を介して連通し、
前記可動取付部材を挿入する状態で前記可動取付部材に装着される支持筒部と、前記支持筒部の外周部から突出する吐水管部と、を備えると共に前記水栓本体から流出する流体を吐水する吐水管部材を具備し、
前記吐水管部材は、前記可動取付部材に対して回動可能であり、
前記固定取付部材には、前記流体供給用流路とは別に第2の流体供給用流路が形成され、前記流体供給用流路と前記第2の流体供給用流路のうちの一方が給湯用流路で他方が給水用流路であり、
前記可動取付部材には、前記到達用流路と別に第2の到達用流路が形成され、前記第2の流体供給用流路を通じて供給される流体を、該第2の到達用流路によって前記水栓本体に到達させ、
前記挿入用凹部の内壁部と前記挿入部の外面部との間に略環状若しくは略円弧状の経路を描く第2の流入側連通空間が設けられ、
前記挿入部の外面部で開口する前記第2の到達用流路の1次側の端部と、前記挿入用凹部の内壁部で開口する前記第2の流体供給用流路の2次側の端部とが前記第2の流入側連通空間を介して連通することを特徴とする。
請求項2の発明の取付装置は、
弁機構を内蔵する水栓本体を取付部に取付けるための取付装置であって、
前記取付部に固定されると共に挿入用凹部を有する固定取付部材と、
前記挿入用凹部に対して回動可能な状態に挿入される挿入部を有すると共に前記水栓本体を一体回動可能な状態に保持する可動取付部材と、
を備え、
前記固定取付部材には流体供給用流路が形成され、前記可動取付部材には該流体供給用流路を通じて供給される流体を前記水栓本体に到達させるための到達用流路が形成され、
前記挿入用凹部の内壁部と前記挿入部の外面部との間に略環状若しくは略円弧状の経路を描く流入側連通空間が設けられ、
前記挿入部の外面部で開口する前記到達用流路の1次側の端部と、前記挿入用凹部の内壁部で開口する前記流体供給用流路の2次側の端部とが前記流入側連通空間を介して連通し、
前記可動取付部材を挿入する状態で前記可動取付部材に装着される支持筒部と、前記支持筒部の外周部から突出する吐水管部と、を備えると共に前記水栓本体から流出する流体を吐水する吐水管部材を具備し、
前記吐水管部材は、前記可動取付部材に対して回動可能であり、
前記可動取付部材には、前記水栓本体から流出する流体を通過させる通過用流路が形成され、前記固定取付部材には、前記通過用流路を通過した流体を前記固定取付部材の外部に流出させるための流出用流路が形成され、
前記挿入用凹部の内壁部と前記挿入部の外面部との間に略環状若しくは略円弧状の経路を描く流出側連通空間が設けられ、
前記挿入部の外面部で開口する前記通過用流路の2次側の端部と、前記挿入用凹部の内壁部で開口する前記流出用流路の1次側の端部とが前記流出側連通空間を介して連通することを特徴とする。
ここで、本明細書において「混合水」及び「湯水」を以下のように定義する。つまり、「混合水」とは、「湯(給湯器等の給湯源から供給された湯)」及び「水(水道配管の端末等の給水源から供給された水)」を混合して生成される「湯水」を指す。また、「湯水」を「水栓が取り扱う流体の総称」として用いる。つまり、「湯水」には、「湯(給湯源から供給された湯)」、「水(給水源から供給された水)」及び「混合水」が含まれる。また、本明細書において「流体」を、「水栓が取り扱う流体の総称」として用いている。つまり、「湯水」と同じ意味で用いているため、請求項2の発明の「流体供給用流路」は、湯を通過させる流路であってもよいし、水を通過させる流路であってもよいし、混合水を通過させる流路であってもよい。
請求項1の発明及び請求項2の発明の取付装置は、取付部に固定される固定取付部材と、この固定取付部材に回動可能な状態に装着されつつ水栓本体を一体回動可能な状態に保持する可動取付部材とを備えている。また、水栓本体(挿入部)を所定量回動させても、固定取付部材の流体供給用流路と可動取付部材の到達用流路とを流入側連通空間によって連通状態に維持できる。そして、取付装置を用いて取付部に取り付けられた水栓本体は、流体供給用流路の一次側の端部と、元配管の端末部とを接続部材(例えば、銅管やフレキシブルホース等を用いて構成される接続管)を用いて接続等すれば使用可能となる。
この請求項1の発明及び請求項2の発明の取付装置では、流体供給用流路の一次側の端部と元配管の端末部との位置関係を変化させずに、水栓本体を回転させることができる。このため、固定取付部材の取付部に対する固定を、流体供給用流路の一次側の端部と、元配管の端末部とを接続部材を用いて接続する上で都合の良い状態となるように行えばよい。そして、例えば、水栓本体を可動取付部材を介して固定取付部材に支持させた後、水栓本体に所望の回動を加えることで、「弁機構を操作するための操作部」を所望の方向に向けること等が可能となる。
このように、請求項1の発明及び請求項2の発明の取付装置では、元配管の端末部との接続に関与する固定取付部材と、水栓本体との接続に関与する可動取付部材を別体とし、固定取付部材を基準に可動取付部材を回動可能とする。つまり、請求項1の発明及び請求項2の発明の取付装置によると、使用空間の状況に応じて、水栓本体を挿入部の回動軸心回りに回動させることができるため、水栓を種々の取付部に取り付ける作業を円滑、かつ確実に行うことが可能である。
尚、各請求項の発明によると、使用空間のリフォームに迅速かつ的確に対応したり、近年の多様化する使用空間(取付部)の状況にも的確に対応することができる。
つまり、所定の取付部において既設の水栓を別の水栓に取り替る作業を行う際にも、可動取付部材及び水栓本体を取り替えるか、若しくは、水栓本体を取り替えることで、この取り替え作業を行うことができる。すなわち、元配管の端末部との接続に関与する固定取付部材を取付部に取り付けたままの状態で、この取り替え作業を行うことができる。換言すると、流体供給用流路の一次側の端部と、元配管の端末部との接続部材を用いた接続状態を、そのままの状態に維持しつつ、この取り替え作業を行うことができる。例えば、リフォーム時等においては、取付部の上方(取付部が台部の場合等)若しくは前方(取付部が壁部の場合等)において施工を行えば足り、取付部の下方(取付部が台部の場合等)若しくは後方(取付部が壁部の場合等)において施工を行うことが必要とならない。従って、請求項1の発明及び請求項2の発明によると、水栓の使用空間のリフォームに対して迅速かつ的確に対応することができる。
また、近年においては使用空間(取付部)の状況が多様化している。例えば、台所の壁側以外の部位(例えば、中央)に流し台を設置する場合もあり、この場合、流し台に取り付けられた水栓を複数方向(例えば、流し台の前方及び後方)から操作することが要望される。そして、この要望にも、各請求項の発明の取付装置を用いることで的確に対応することができる。つまり、各請求項の発明の取付装置を用いて取付部に取り付けられた水栓本体(水栓)であれば、可動取付部材と一体で回動可能なため、操作部の方向を所望の方向に向けることができるからである。
請求項1の発明及び請求項2の発明の「流入側連通空間」は、挿入部の外面部(外周部)を周回する方向(挿入部の回動軸心回りに周回する方向)に沿って略環状の経路若しくは略円弧状の経路を描く状態に形成される。また、請求項1の発明及び請求項2の発明の「流入側連通空間」の形成方法は種々選択でき、例えば、(A)挿入用凹部の内壁部及び挿入部の外面部のうちの少なくとも一方に、挿入部の回動軸心回りに略環状の経路若しくは略円弧状の経路を描く凹部を形成し、この凹部によって挿入用凹部の内壁部及び挿入部の外面部との間に「流入側連通空間」を構成する態様、(B)挿入部の外径を絞り込んで挿入用凹部の内壁部及び挿入部の外面部との間に空間を設け、この空間によって「流入側連通空間」を構成する態様、若しくは、(A)及び(B)の双方によって「流入側連通空間」を構成する態様、等を例示できる。
尚、「流入側連通空間」が略環状(円形)の経路を描く場合、水栓本体及び挿入部の回動位置(回転量)にかかわらず、流体供給用流路と到達用流路とを常時連通させることができる。また、「流入側連通空間」が略円弧状の経路を描く場合、この経路の中心角に応じ、流体供給用流路と到達用流路との連通状態を維持可能な「水栓本体及び挿入部の回転量」が定められる。この略円弧の経路の中心角としては、60度以上が望ましく、120度以上が更に望ましく、180度以上(360度よりも小さい)とすることが更に一層望ましい。但し、略円弧の経路の中心角を、360度よりも小さくすることで、意図的に、流体供給用流路と到達用流路との連通状態を解除することもできる。つまり、請求項1の発明及び請求項2の発明の取付装置によると、水栓本体を特定量回動させ、流体供給用流路と到達用流路との連通状態を解除して、水栓を休止状態(水栓を、吐水を行わない状態)とすることができる。
また、「流入側連通空間」が略円弧状の経路を描く場合には、「到達用流路の1次側の端部の周方向幅(挿入部の回動軸心回りに周回する方向に沿った幅)」と、「流体供給用流路の2次側の端部の周方向幅(挿入部の回動軸心回りに周回する方向に沿った幅)」とが、「流入側連通空間の周方向幅(挿入部の回動軸心回りに周回する方向に沿った幅)」よりも小さくされることが望ましい。
本明細書においては「使用空間」として、例えば、台所、洗面所、浴室、トイレ、洗濯室等を例示できる。また、各請求項の発明の「取付部」としては、例えば、この使用空間に設けられる台部や壁部を例示できる。
請求項2の発明の水栓本体に内蔵される弁機構の種類は種々選択でき、(1)吐止水の選択を行うための弁機構、(2)吐止水の選択と吐水量の選択を行うための弁機構、(3)吐水流路の選択を行うための弁機構、(4)吐水流路の選択と、吐止水の選択とを行うための弁機構、(5)吐水流路の選択と、吐止水の選択と、吐水量の選択とを行うための弁機構等を例示できる。また、本明細書において「吐水流路の選択」とは、対象となる水栓が、複数の吐水流路(例えば、カランに繋がるカラン吐水流路と、シャワーに繋がるシャワー吐水流路)を備える場合に、「使用する吐水流路を選択すること」を指す。
各請求項の発明の「操作部」としては、レバータイプの操作部(回動操作及び傾動操作のうちの少なくとも一方が施される操作部)の他に、ハンドルタイプの操作部(回動操作が施される操作部)、プッシュ式の操作部(プッシュスイッチ式の操作部)、フットスイッチ式の操作部、非接触式の操作部(非接触式の人感センサ等を用いるもの)等を例示できる。尚、本明細書においては、レバータイプの操作部の方向を、当該操作部が操作されていない状態(ニュートラルな状態)を基準に定める。つまり、当該操作部が操作されていない状態にあるときに、レバーの先端部が向く方向を、レバータイプの操作部の方向とする。
各請求項の発明においては、挿入用凹部に挿入される挿入部の回転範囲(回動範囲)を無制限としてもよいし、一定の範囲に限定してもよい。例えば、挿入部をその回動軸心回りに回転自在としてもよい。また、挿入部を所定の回動位置(例えば、操作部が正面前方を向く回動位置)を基準として、左右に180度ずつ回動可能としてもよいし(つまり、挿入部をその回動軸心回りに360度回転可能としてもよいし)、所定の回動位置(例えば、操作部が正面前方を向く回動位置)を基準として、左右に180度よりも小さい一定の角度だけ回動可能としてもよい。尚、回転範囲(回動範囲)に制限がある態様においては、所定の回動位置を基準として右回転方向に回転可能な角度と、左回転方向に回転可能な角度とが一致するか否かを特に問わない。
請求項1の発明の取付装置は湯水混合水栓への適用例を示している。そして、湯水混合水栓を施工する際には、「その水栓本体に対して流体を供給する元配管が」2つ存在するため(つまり、給湯用の元配管及び給水用の元配管が存在するため)、使用空間の状況による影響をより受け易くなる。つまり、水栓本体を鉛直方向に向かう所定の回転軸回りに回転させると、前述のように、給湯用流路の1次側の端部及び給水用流路の1次側の端部と、各元配管の端末部との相対位置にズレを生ずる(図33を参照)。このため、「給湯用流路の1次側の端部と給湯用の元配管の端末部とを接続するための給湯用の接続部材(給湯用の接続管)」と、「給水用流路の1次側の端部と給水用の元配管の端末部とを接続するための給水用の接続部材(給水用の接続管)」とのうちの一方の長さが過剰気味となり、他方の長さが不足気味となる等の不具合を招く可能性を生ずるからである。
これに対して、請求項1の発明の取付装置では、「給湯用流路の1次側の端部と給湯用の元配管の端末部との位置関係」と、「給水用流路の1次側の端部と給水用の元配管の端末部との位置関係」と、を位置関係を変更せずに、水栓本体を所定量回転(回動)させることができる。そして、請求項1の発明の取付装置では、「第2の流入側連通空間」を備えるため、水栓本体(挿入部)を所定量回動させても、第2の流体供給用流路と第2の到達用流路との連通状態を維持できる。
このため、固定取付部材の取付部に対する固定を、給湯用流路の1次側の端部と、給湯用の元配管の端末部との給湯用の接続部材を用いて接続すると共に、給水用流路の1次側の端部と、給水用の元配管の端末部との給水用の接続部材を用いて接続する上で都合の良い状態となるように行えばよい。そして、例えば、水栓本体を可動取付部材を介して固定取付部材に支持させた後、水栓本体に所望の回動を加えることで、「弁機構を操作するための操作部」を所望の方向に向けること等が可能となる。
このように、請求項1の発明の取付装置においては、元配管の端末部との接続に関与する固定取付部材と、水栓本体との接続に関与する可動取付部材を別体とし、固定取付部材を基準に可動取付部材を回動可能とする。従って、請求項1の発明の取付装置によると、使用空間の状況に応じて、水栓本体を挿入部の回動軸心回りに回動させることができるため、水栓を種々の取付部に取り付ける作業を円滑、かつ確実に行うことができる。また、請求項1の発明においては、前述のように、使用空間のリフォームに迅速・的確に対応したり、近年の多様化する使用空間(取付部)の状況にも的確に対応することができる。
請求項1の発明の水栓本体に内蔵される弁機構の種類は種々選択でき、(a)吐水温度を調節するための弁機構、(b)吐水温度を調節及び吐止水の選択を行うための弁機構等を例示できる。また、(b)の弁装置においては、吐止水の選択と共に吐水量の選択が行われてもよい。更に、請求項1の発明の水栓本体が、複数の弁機構を備えてもよい。例えば、吐水温度を調節するための弁機構と、この弁機構の2次側に配設されると共に吐止水の選択を行うための弁機構と、を備えてもよい。また、この「吐止水の選択を行うための弁機構」は吐水量の選択を行うものであってもよい。
請求項1の発明の「第2の流入側連通空間」は、挿入部の外面部(外周部)を周回する方向(挿入部の回動軸心回りに周回する方向)に沿って略環状の経路若しくは略円弧状の経路を描く状態に形成される。また、請求項1の発明の「第2の流入側連通空間」の形成方法は種々選択でき、例えば、(1)挿入用凹部の内壁部及び挿入部の外面部のうちの少なくとも一方に、挿入部の回動軸心回りに略環状の経路若しくは略円弧状の経路を描く凹部を形成し、この凹部によって挿入用凹部の内壁部及び挿入部の外面部との間に「第2の流入側連通空間」を構成する態様、(2)挿入部の外径を絞り込んで挿入用凹部の内壁部及び挿入部の外面部との間に空間を設け、この空間によって「第2の流入側連通空間」を構成する態様、若しくは、(1)及び(2)の双方によって「第2の流入側連通空間」を構成する態様、等を例示できる。
尚、「第2の流入側連通空間」が略環状(円形)の経路を描く場合、水栓本体及び挿入部の回動位置(回転量)にかかわらず、第2の流体供給用流路と第2の到達用流路とを常時連通させることができる。また、「第2の流入側連通空間」が略円弧状の経路を描く場合、この経路の中心角に応じ、第2の流体供給用流路と第2の到達用流路との連通状態を維持可能な「水栓本体及び挿入部の回転量」が定められる。この略円弧の経路の中心角としては、60度以上が望ましく、120度以上が更に望ましく、180度以上(360度よりも小さい)とすることが更に一層望ましい。但し、略円弧の経路の中心角を、360度よりも小さくすることで、意図的に、第2の流体供給用流路と第2の到達用流路との連通状態を解除することもできる。つまり、請求項1の発明の取付装置によると、水栓本体を特定量回動させ、第2の流体供給用流路と第2の到達用流路との連通状態を解除することで、湯水混合水栓を単水栓のように用いることもできる。また、「第2の流入側連通空間」が略円弧状の経路を描く場合には、「第2の到達用流路の1次側の端部の周方向幅(挿入部の回動軸心回りに周回する方向に沿った幅)」と、「第2の流体供給用流路の2次側の端部の周方向幅(挿入部の回動軸心回りに周回する方向に沿った幅)」とが、「第2の流入側連通空間の周方向幅(挿入部の回動軸心回りに周回する方向に沿った幅)」よりも小さくされることが望ましい。
請求項1の発明の取付装置においては、水栓本体への給湯を行う流路部分(以下、「給湯用の流路部分」という。)と、水栓本体への給水を行う流路部分(以下、「給水用の流路部分」という。)との間をシール部材(パッキン等)等を用いてシールすることになる。このシール部材は、例えば、挿入用凹部の内壁部若しくは挿入部の外面部において周回状に形成(環状に形成)される装着溝に装着されて、挿入用凹部の内壁部と挿入部の外面部との間に生じうる隙間を塞ぐことになる。
つまり、このシール部材は、挿入用凹部の内壁部若しくは挿入部の外面部に装着されて、「流体供給用流路の2次側の端部、到達用流路の1次側の端部及び流入側連通空間」と、「第2の流体供給用流路の2次側の端部、第2の到達用流路の1次側の端部及び第2の流入側連通空間」と、の間のシールを行うことになる。このシールを、例えば、流入側連通空間の両脇(挿入部の軸心方向に沿った両脇)にシール部材を配設し、両シール部材で挟まれた領域内において、流体供給用流路の2次側の端部と、到達用流路の1次側の端部とを開口させる。同時に、第2の流入側連通空間の両脇(挿入部の軸心方向に沿った両脇)にシール部材を配設し、両シール部材で挟まれた領域内において、第2の流体供給用流路の2次側の端部と、第2の到達用流路の1次側の端部とを開口させることで行うことができる。但し、流入側連通空間と第2の流入側連通空間との間に配設されるシール部材を、両流入側連通空間を対象とするシール部材として共用することもできる。
請求項2の発明では、水栓本体から流出する流体(湯水)を通過させる流路部分(以下、「流出用の流路部分」という。)を取付装置に設ける態様を示している。この請求項2の発明の取付装置では、「流出側連通空間」を備えるため、水栓本体を所定量回動させても、通過用流路と流出用流路とが連通することになる。
請求項2の発明の「流出側連通空間」も、挿入部の外面部(外周部)を周回する方向(挿入部の回動軸心回りに周回する方向)に沿って略環状の経路若しくは略円弧状の経路を描く状態に形成される。また、請求項2の発明の「流出側連通空間」の形成方法も種々選択でき、例えば、(a)挿入用凹部の内壁部及び挿入部の外面部のうちの少なくとも一方に、挿入部の回動軸心回りに略環状の経路若しくは略円弧状の経路を描く凹部を形成し、この凹部によって挿入用凹部の内壁部及び挿入部の外面部との間に「流出側連通空間」を構成する態様、(b)挿入部の外径を絞り込んで挿入用凹部の内壁部及び挿入部の外面部との間に空間を設け、この空間によって「流入出連通空間」を構成する態様等、若しくは、(a)及び(b)の双方によって「流入側連通空間」を構成する態様、等を例示できる。
尚、「流出側連通空間」が略環状(円形)の経路を描く場合、水栓本体及び挿入部の回動位置(回転量)にかかわらず、通過用流路と流出用流路とを常時連通させることができる。また、「流入側連通空間」が略円弧状の経路を描く場合、この経路の中心角に応じ、通過用流路と流出用流路との連通状態を維持可能な「水栓本体及び挿入部の回転量」が定められる。この略円弧の経路の中心角としては、60度以上が望ましく、120度以上が更に望ましく、180度以上(360度よりも小さい)とすることが更に一層望ましい。また、「流出側連通空間」が略円弧状の経路を描く場合には、「通過用流路の2次側の端部の周方向幅(挿入部の回動軸心回りに周回する方向に沿った幅)」と、「流出用流路の1次側の端部の周方向幅(挿入部の回動軸心回りに周回する方向に沿った幅)」とが、「第2の流入側連通空間の周方向幅(挿入部の回動軸心回りに周回する方向に沿った幅)」よりも小さくすることが望ましい。
請求項2の発明の取付装置が、(1)水栓本体への流体(湯、水若しくは混合水)の供給を行う流路部分(以下、「流体供給用の流路部分」という。)と、水栓本体から流出する流体(湯水)を通過させる流路部分(流出用の流路部分)とを備える態様(以下、「第1の態様」という。)であってもよいし、(2)水栓本体への給湯を行う流路部分(給湯用の流路部分)と、水栓本体への給水を行う流路部分(給水用の流路部分)と、水栓本体から流出する流体(湯水)を通過させる流路部分(流出用の流路部分)とを備える態様(以下、「第2の態様」という。)であってもよい。
「第1の態様」においては、「流体供給用の流路部分」と「流出用の流路部分」との間をシール部材(パッキン等)等を用いてシールすることになる。このシール部材も、例えば、挿入用凹部の内壁部若しくは挿入部の外面部において周回状に形成(環状に形成)される装着溝に装着されて、挿入用凹部の内壁部と挿入部の外面部との間に生じうる隙間を塞ぐことになる。つまり、このシール部材は、挿入用凹部の内壁部若しくは挿入部の外面部に装着されて、「流体供給用流路の2次側の端部及び到達用流路の1次側の端部」と、「通過用流路の2次側の端部、流出用流路の1次側の端部及び流路連絡用凹部」と、の間のシールを行うことになる。このシールを、例えば、流出側連通空間の両脇(挿入部の軸心方向に沿った両脇)にシール部材を配設し、両シール部材で挟まれた領域内において、通過用流路の2次側の端部、流出用流路の1次側の端部とを開口させることで行うことができる。但し、流出側連通空間と、流入側連通空間との間の位置に配設されるシール部材を、両連通空間を対象とするシール部材として共用することもできる。
「第2の態様」においては、「給湯用の流路部分」と「給水用の流路部分」と「流出用の流路部分」とがシール部材(パッキン等)等を用いてシールされることになる。このシール部材も、例えば、挿入用凹部の内壁部若しくは挿入部の外面部において周回状に形成(環状に形成)される装着溝に装着されて、挿入用凹部の内壁部と挿入部の外面部との間に生じうる隙間を塞ぐことになる。
つまり、「第2の態様」においては、「流体供給用流路の2次側の端部及び到達用流路の1次側の端部(以下、第1の連通部分という。)」と、「第2の流体供給用流路の2次側の端部、第2の到達用流路の1次側の端部及び流路連通用凹部(以下、第2の連通部分という。)」と、「通過用流路の2次側の端部、流出用流路の1次側の端部及び流路連絡用凹部(以下、第3の連通部分という。)」と、が挿入部の回動軸心に沿って間隔をおいて配設されることになる。
この場合、「第1の連通部分」と「第2の連通部分」と「第3の連通部分」とが挿入部の回動軸心に沿って並べられる順序は特に問わず、種々選択可能である。そして、このシール部材は、挿入用凹部の内壁部若しくは挿入部の外面部に装着されて、挿入部の回動軸心に沿って隣合う連通部分の間のシールを行うことになる。但し、挿入部の軸心方向に隣合う連通空間(流入側連通空間、第2の流入側連通空間、流出側連通空間)の間の位置に配設されるシール部材を、当該隣合う連通空間を対象とするシール部材として共用することもできる。
尚、請求項1の発明及び請求項2の発明では、到達用流路の1次側の端部と流体供給用流路の2次側の端部とが流入側連通空間内に向かって開口する態様(流入側連通空間外には開口しない態様)を特に例示できる。また、請求項1の発明では、第2の到達用流路の1次側の端部と第2の流体供給用流路の2次側の端部とが第2の流入側連通空間内に向かって開口する態様(第2の流入側連通空間外には開口しない態様)を特に例示できる。更に、請求項2の発明では、通過用流路の2次側の端部と流出用流路の1次側の端部とが流出側連通空間内に向かって開口する態様(流入側連通空間外には開口しない態様)を特に例示できる。
請求項1の発明において、第2の流入側連通空間の形成位置は、流入側連通流路の形成位置と挿入部の回動軸心の方向に沿って位置ずれを生じた位置とされる。また、請求項2の発明において、流出側連通空間の形成位置は、挿入用凹部の内壁部と挿入部の外面部との間に形成される他の連通流路(流入側連通流路)の形成位置と挿入部の回動軸心の方向に沿って位置ずれを生じた位置とされる。
請求項3の発明の取付装置は、請求項1又は請求項2に記載の取付装置において、
前記固定取付部材には、前記挿入部の抜止機能及び回転止機能のうちの少なくとも一方の機能を備えた止装置が設けられることを特徴とする。
請求項3の発明の取付装置は止装置を備えるため、より使用勝手に優れたものとなる。
請求項4の発明の取付装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の取付装置において、
前記挿入用凹部に規制用係合部を設け、前記挿入部の外面部に規制用被係合部を設けると共に、前記挿入部の回動位置が特定の回動位置となったときに、前記規制用係合部が前記規制用被係合部に係合して、前記挿入部の回動位置の位置決めが行われることを特徴とする。
請求項4の発明によると、規制用係合部と規制用被係合部との係合を用いて挿入部の回動位置、ひいては、水栓本体の回動位置に位置決めを行うことができるため、より一層、使用勝手に優れた取付装置を得ることができる。
請求項5の発明の取付装置は、請求項4に記載の取付装置において、
前記規制用係合部を前記固定取付部材に着脱自在に構成される係合部形成用部材で構成すること、
及び、
前記規制用被係合部を前記可動取付部材に着脱自在に構成される被係合部形成用部材で構成すること、のうちの少なくとも一方が行われることを特徴とする。
請求項5の発明によると、着脱自在に構成される係合部形成用部材と、着脱自在に構成される被係合部形成用部材のうちの少なくとも一方を用いて、挿入部の回動位置の位置決めを行うため、取付装置の利便性が更に向上する。例えば、着脱自在に構成される被係合部形成用部材を用いる場合、この被係合部形成用部材を、規制用被係合部の形成位置が異なる他の被係合部形成用部材に交換することができる。この場合、水栓本体(挿入部)の位置決めすべき回動位置を変更することができるため、取付装置の利便性が更に向上する。
各請求項の発明においては、取付装置に設けられる流路に分岐流路を設け、この分岐流路の2次側に他の水栓本体を配設することもできる。例えば、請求項1の発明の取付装置においては、固定取付部材に形成される給水用流路(流体供給用流路及び第2の流体供給用流路のうちの何れでもよい。)に分岐流路を設け、この分岐流路に浄水器を配設する態様を例示することもできる。
以上のように、請求項1〜5の各発明によると、使用空間の状況にかかわらず、水栓を種々の取付部に取り付ける作業を円滑、かつ確実に行うことを可能とする取付装置を得ることができる。
次に、本各発明に係わる「取付構造」の最良の形態(以下、「実施例」という。)を図面に従って詳細に説明する。
実施例では、湯水混合水栓Sを流し台80に取り付ける際に各請求項の発明の具体例を構成する取付装置Tを用いたものである。
湯水混合水栓Sの取り付け対象となる流し台80は、図1に示すように、所定の台所Dの壁部D1に接する状態に配設されている。つまり、流し台80は、その背面部を壁部D1に当接させた状態で台所D内に配設され、左右に2個の流し台水槽(以下、「水槽」という。)81、82を備えている。また、正面から見て左側に位置する水槽81は小型とされ、正面から見て右側に位置する水槽82は大型とされている。尚、「台所D」は使用空間の具体例を構成する。
流し台80の台部80a(上面部或いは天板部と称することもある。)において、水槽81の周縁に位置する部位には2個の湯水混合水栓SV、Sが取り付けられている。つまり、台部80aにおいて、左側の水槽81の略中央部の後方に位置する部位80bに一方の湯水混合水栓SVが取り付けられ、右側の水槽82の右後方角部の斜め後方に位置する部位(以下、「斜め後方部」という。)80cに他方の湯水混合水栓Sが取り付けられている。
本実施例では、他方の湯水混合水栓Sが取付装置Tを用いて台部80aに取り付けられている。このため、本実施例では、他方の湯水混合水栓Sやその取付方法についてのみ説明を行い、一方の湯水混合水栓SVやその取付方法についての説明を省略する。尚、台部80aは「取付部」の具体例を構成する。
図2(a)及び(b)に示すように、台所Dの床面D2のうちで、斜め後方部80cの下方に位置する部位からは、給湯用の元配管Hの端末部85Hと、給水用の元配管Cの端末部85Cとが立ち上げられている。より具体的には、これらの端末部85H、85Cは軸線を鉛直上方に向けつつ上方に立ち上げられ、両端末部85H、85Cの軸線は略平行とされている。また、両端末部85H、85Cの壁部D1(つまり、取付部下方の奥壁部)との距離は略等しくされている。
尚、給湯用の元配管Hの始端部(1次側の端部)は給湯源(給湯器)に接続され、給水用の元配管Cの始端部(1次側の端部)は給水源(水道配管)に接続されている。また、本実施例では、給湯用の元配管Hの端末部85Hと、給水用の元配管Cの端末部85Cを床面D2から立ち上げる態様を例示したが、各端末部85H、85Cの施工態様はこれに限定されない。例えば、壁部D1(取付部下方の奥壁部)に、給湯用の接続具(L字状若しくはクランク状の接続具であって、所謂、ソケットと称するもの)と、給湯用の接続具(L字状若しくはクランク状の接続具であって、所謂、ソケットと称するもの)と装着する。その際、給湯用の接続具の一端部を給湯用の元配管Hの本管部分に接続し、給水用の接続具の一端部を給水用の元配管Cの本管部分に接続する。そして、給湯用の接続具の他端部を上方に向け、この他端部によって給湯用の元配管Hの端末部85Hを構成すると共に、給水用の接続具の他端部を上方に向け、この他端部によって給水用の元配管Cの端末部85Cを構成することとしてもよい(図31の態様を参照)。
斜め後方部80cには、図3に示すように、後述する取付装置Tを装着するための装着孔80dが設けられている。
湯水混合水栓Sは、図3に示すように、水栓本体30と、吐水管部材50と、レバーハンドル60とを備えている。このうち、水栓本体30は略円筒状に構成される外郭部31と、この外郭部31内に収納された摺動弁装置32とを備えている。また、外郭部31の内周面下端側には雌ネジ部31aが設けられている。更に、摺動弁装置32は外郭部31の下方側の開口部を通じて外郭部31内に挿入されている。また、摺動弁装置32はカートリッジ形式とされており、固定ディスク32aと、この固定ディスク32aに対して摺動する可動ディスク32bと、下端部を可動ディスク32bに係合させ、上端部を摺動弁装置32の外部に突出させた伝達部材32cと、を備えている。
伝達部材32cの上端部は、外郭部31の上方側の開口部を通じて、外郭部31の外部に露呈している。そして、この伝達部材32cの上端部にレバーハンドル60が装着されている。
固定ディスク32aには、摺動弁装置32の1次側から湯が流入する給湯孔(図示を省略)と、摺動弁装置32の1次側から水が流入する給水孔(図示を省略)と、摺動弁装置32の2次側に湯水を流出させるための流出口32dとが、肉厚方向に貫通する状態に形成されている。また、可動ディスク32bには連通穴32eが下方に開口する状態に形成されている
本湯水混合水栓Sにおいては、レバーハンドル60を上方に傾動させるほど、流出口32dから流出する湯水の流量が多くなり、レバーハンドル60を下方に傾動させるほど、流出口32dから流出する湯水の流量が少なくなる。そして、レバーハンドル60を最下方に傾動させたときに、流出口32dからの湯水の流出が停止される。一方、本湯水混合水栓Sにおいては、レバーハンドル60を左右に回動することで、流出口32dから流出する湯水の温度が調節される。
吐水管部材50は、略円筒状に構成される支持筒部51と、略筒状となりつつ、支持筒部51の外周部から上がり傾状に突出する吐水管部52とを備えている。また、支持筒部51の内部空間と吐水管部52の内部空間とは、支持筒部51をその肉厚方向に貫通する貫通孔51aによって連通している。
以上の湯水混合水栓Sは、図3に示すように、取付装置Tを用いて台部80aに取り付けられている。この取付装置Tについて、図4〜11について詳細に説明する。但し、図4は、取付装置Tの要部を誇張して示す縦図面である。
取付装置Tは、図4に示すように、固定ジョイント10と、可動ジョイント20と、抜け止めネジMと、シール部材P1、P2、P3、P4を備えている。
固定ジョイント10は、固定取付部材の具体例を構成すると共に、図5に示すように、略円柱状の外形を備える本体部11と、本体部11の上端側外周部から突出するフランジ部12とを備えている。また、固定ジョイント10は、その上面部で開口する状態に挿入用凹部13を有している。
この挿入用凹部13はその軸心位置を固定ジョイント10の軸心位置に一致させつつ、固定ジョイント10の上半部に設けられている。また、この挿入用凹部13は有底の穴形状とされており、底部13aを平面形状が略円形の略水平面によって構成している。また、この挿入用凹部13の空間形状は、中間部において直径を段差状に変化させた略円柱形状とされている。
この挿入用凹部13は、第1の空間部13cと、第2の空間部13dと、第3の空間部13vとを、この順にしかも、同心状に上方から下方に並べた構成を備えている。つまり、第1の空間部13cは、挿入用凹部13における上方側部分を構成し、3個の空間部13c、13d、13vのうちで最大の内径を有している。また、第1の空間部13cの下端側はその内径が段差状に拡大した拡径部(以下、「上部拡径部」という。)13eとされている。
第2の空間部13dは、挿入用凹部13における中間側部分を構成し、3個の空間部13c、13d、13vのうちで中間の内径を有している。
第3の空間部13vは、挿入用凹部13における下方側部分を構成し、3個の空間部13c、13d、13vのうちで最小の内径を有している。また、第3の空間部13vの下端側はその内径が段差状に拡大した拡径部(以下、「下部拡径部」という。)13wとされている。
つまり、固定ジョイント10において、「挿入用凹部13の内壁部13gのうちで上部拡径部13eの内壁部分を構成する部位」と、「挿入用凹部13の内壁部13gのうちで下部拡径部13wの内壁部分を構成する部位」は、それらの内径を拡大させるような円環状の凹部13p、13qとされている。尚、挿入用凹部13の内壁部13gは、「第1の空間部13c、第2の空間部13d及び第3の空間部13vの内周壁部」と、底部13aと、第1の空間部13c及び第2の空間部13dの間に位置する段部13jとで構成されている。
固定ジョイント10の上端部側(固定ジョイント10においてフランジ部12が形成されている部位)にはネジ孔13fが形成されている。このネジ孔13fは、固定ジョイント10をその半径方向に貫通する状態に形成され、フランジ部12の外周部と、挿入用凹部13の内壁部13gとにおいて開口している。
固定ジョイント10には給湯用流路14aと給水用流路14bとが上下方向に形成されている。このうち、給湯用流路14aは「流体供給用流路」の具体例を構成するものであり、固定ジョイント10の下面部側に1次側の端部14cを配設し、挿入用凹部13の内壁部13gのうちで下部拡径部13wの内周壁部分を構成する部分及び底部13aを構成する部分において、2次側の端部14dを開口させている。ここで、図5に示す二点鎖線Jは、後述する可動ジョイント20の回動軸心Jを示しているが、給湯用流路14aの2次側の端部14dは、回動軸心Jから偏心した位置(離れた位置)で開口している。また、固定ジョイント10の外周面(但し、フランジ部12を除く)には、雄ネジ部10mが設けられている。
給水用流路14bは「第2の流体供給用流路」の具体例を構成するものであり、固定ジョイント10の下面部側に1次側の端部14gを配設し、挿入用凹部13の内壁部13gのうちで上部拡径部13eの内周壁部分を構成する部分及び段部13jの上面部分を構成する部位において、2次側の端部14hを開口させている。尚、図4及び図5等に示すように、給水用流路14bの2次側の端部14hと、給湯用流路14aの2次側の端部14dは、挿入部20eの回動軸心Jの方向に沿って相互に所定の距離を有する位置(位置ずれを生じた位置)に開口している。
可動ジョイント20は、図6及び図7に示すように、内部に隔壁20kが形成された略円筒形状に構成されている。この可動ジョイント20は、図6に示すように、外径の大きな大径部20aと、中間の外径を備える中径部20bと、外径を下方に向かって徐々に縮径させる上方テーパ部20cと、外径の小さな小径部20dと、外径を下方に向かって徐々に縮径させる下方テーパ部20pと、を軸心方向に並べた構成を備える。また、中径部20bと、上方テーパ部20cと、小径部20dと、下方テーパ部20pからなる部分が挿入部20eを構成する。尚、この可動ジョイント20の軸心は、挿入部20eの回動軸心Jと一致している。また、上方テーパ部20cの下端部の外径は、下方テーパ部20pの上端部の外径と略等しくされている。
可動ジョイント20の内部空間は、図7(a)及び(b)に示すように、隔壁20kによって3つの空間部分に区画されている。つまり、可動ジョイント20の内部空間は隔壁20kによって、給湯用到達用流路21と、給水用到達用流路22と、湯水流出用流路23とに区画されている。このうち、給湯用到達用流路21は「到達用流路」の具体例を構成し、給水用到達用流路22は「第2の到達用流路」の具体例を構成している。
給湯用到達用流路21は、前述の給湯用流路14aを通じて供給される湯を水栓本体30に到達させるための流路であり、可動ジョイント20の軸心に沿って上下に形成されている。また、給湯用到達用流路21の1次側の端部21aは、可動ジョイント20の下方テーパ部20pの外周部(外面部)において開口し、給湯用到達用流路21の2次側の端部21bは可動ジョイント20の上端面20nで開口している。
給水用到達用流路22は、前述の給水用流路14bを通じて供給される水を水栓本体30に到達させるための流路であり、可動ジョイント20の軸心に沿って上下に形成されている。また、給水用到達用流路22の1次側の端部22aは、可動ジョイント20のテーパ部20cの外周面(外面部)において開口し、給水用到達用流路22の2次側の端部22bは可動ジョイント20の上端面20nで開口している。尚、給水用到達用流路22の2次側の端部22bと、給湯用到達用流路21の2次側の端部21bとは離間する状態とされている。
湯水流出用流路23は水栓本体30から流出する湯水を吐水管部材50に到達させるための流路であり、可動ジョイント20の軸心に沿って上下に形成されている。また、湯水流出用流路23の1次側の端部23aは可動ジョイント20の上端面20nで開口し、湯水流出用流路23の2次側の端部23bは大径部20aの外周面において開口している。
尚、可動ジョイント20において、「湯水流出用流路23の2次側の端部23b」が開口する部位は、その上下の部分に比べて、可動ジョイント20の半径方向内側に凹む、連通溝30nとされている。この連通溝30nは可動ジョイント20の外周部を周回する状態に形成され、この連通溝30nの底部において2次側の端部23bが開口している(図8を参照)。また、図4及び図6に示すように、給湯用到達用流路21の1次側の端部21aと、給水用到達用流路22の1次側の端部22aと、湯水流出用流路23の2次側の端部23bは、挿入部20eの回動軸心Jの方向に沿って相互に所定の距離を有する位置(位置ずれを生じた位置)に開口している。
可動ジョイント20の外周部の上端側には雄ネジ部25が形成されている。また、大径部20aにおいて「湯水流出用流路23の2次側の端部23b」の上方に位置する部位と下方に位置する部位には周回状の装着溝26a、26bが形成され、これらの装着溝26a、26bにはシール部材(パッキン)P1、P2が装着されている(図4を参照)。尚、本実施例では、これらのシール部材P1、P2として、所謂「Xパッキン(断面形状が略X字状のパッキン)」を用いている。これにより、支持筒部51の内周部とシール部材(パッキン)P1、P2との間の摩擦抵抗が低減され、吐水管部材50の回転(支持筒部51の軸心回りの回転)が容易なものとされている。
また、可動ジョイント20の外周部において、「給水用到達用流路22の1次側の端部22a」の上方に位置する部位(中径部20bの外周部の下半部)と、「給水用到達用流路22の1次側の端部22a」の上方に位置する部位(小径部20dの外周部)にも、周回状の装着溝26c、26dが形成されている。そして、これらの装着溝26c、26dにも、シール部材(パッキン)P3、P4が装着されている。尚、本実施例では、これらのシール部材P3、P4として、所謂「Oリング(断面形状が略円形のパッキン)」を用いている。これにより、固定ジョイント10の内壁部(挿入用凹部13の内壁部13g)と、挿入部20eの外周部との間の水密性が高められる。
このように、「装着溝26c、26dに装着されるシール部材(Oリング)P3、P4と、固定ジョイント10の内壁部との間の摩擦抵抗」は、「装着溝26a、26bに装着されるシール部材(Xパッキン)P1、P2と、支持筒部51の内周部との間の摩擦抵抗よりも大きくされている。つまり、「水栓本体30に流体を流入させる流路」の流体力は、「水栓本体30に流体を流出させる流路」の流体圧よりも遙かに高くなる。すなわち、本実施例では、「給湯用流路14a及び給湯用到達用流路21からなる給湯系の流路における給湯圧」と、「給水用流路14b及び給水用到達用流路22からなる給水系の流路における給水圧」は、「湯水流出用流路23等からなる吐水系の流路における流体圧」よりも高くなる。
それにもかかわらず、本実施例では、給湯系の流路及び給水系の流路を、「相対回転可能に配置される別部材(固定ジョイント10及び可動ジョイント20)に設けられる複数の流路」の組み合わせ(給湯用流路14a及び給湯用到達用流路21の組み合わせ、給水用流路14b及び給水用到達用流路22の組み合わせ)で構成する。このため、給湯系の流路と給水系の流路において、別部材(固定ジョイント10及び可動ジョイント20)の流路が組み合わされる部分(給湯用流路14a及び給湯用到達用流路21が連通する部分と、給水用流路14b及び給水用到達用流路22が連通する部分)等において、特に堅固な水密性を維持することが必要となる。よって、給湯系の流路と、給水系の流路を対象とするシール部分をシール性能の高い「シール部材P3、P4(Oリング)を用いて構成している。
更に、中径部20bの外周部の上半部には、周回状の抜止溝27が形成されている。この抜止溝27には、後述するように、抜け止めネジMの軸部M1の先端部が挿入され、可動ジョイント20の固定ジョイント10からの抜け止めが図られる(図4を参照)。
次に、取付装置Tを用いた湯水混合水栓Sの施工例について説明する。この施工例においては、先ず、図4に示すように、固定ジョイント10に給湯用の接続管5と、給水用の接続管6とが接続される。この接続は、給湯用流路14aの1次側の端部に給湯用の接続管5の2次側の端部を接続し、給水用流路14bの1次側の端部に給水用の接続管6の2次側の端部を接続することによって行われる。この接続を行うと、給湯用の接続管5と給水用の接続管6とが固定ジョイント10から突出することになるが、両接続管5、6においてその突出量が等しくされている。尚、固定ジョイント10を製造した業者等が施工現場外において、両接続管5、6の固定ジョイント10への接続を完了していてもよい。
次いで、図8に示すように、固定ジョイント10を流し台80に装着する。つまり、固定ジョイント10の下端部(本体部11の下端部)を、台部80aの装着孔80dの上方に位置合わせし、両接続管5、6において、固定ジョイント10から突出する部分を装着孔80dに挿通させつつ本体部11を装着孔80dに挿入する。但し、装着孔80dの内径は、フランジ部12の外径よりも小さくされているため、フランジ部12の下面に装着されたシール部材18が台部80a(装着孔80dの周縁部)に当接したところで、この挿入を完了する。
更に、図8に示すように、台部80aの下方から固定ジョイント10にシール部材88aを装着した後、固定ジョイント10の外周面(雄ネジ部10m)に固定ナット88bを螺合する。そして、固定ナット88bのフランジ部88cと、固定ジョイント10のフランジ部12とで台部80aを挟持することで、固定ジョイント10の取付作業を完了する。
但し、この取付作業に際して、固定ジョイント10をその軸心(鉛直方向を向いた軸心)回りに回転させて、各接続管5、6と、各端末部85H、85Cとの間の位置合わせが行われる(図2を参照)。つまり、給湯用流路14aの1次側の端部14cと、給湯用の元配管Hの端末部85Hとを給湯用の接続管5を用いて接続すると共に、給水用流路14bの1次側の端部14gと、給水用の元配管Cの端末部85Cとを給水用の接続管6を用いて接続する上で都合の良い状態となるように、固定ジョイント10の回転位置を決定する。
例えば、図11(a)に示すように、給湯用流路14aの1次側の端部14cと給湯用の元配管Hの端末部85Hとの間の水平方向に沿った距離と、給水用流路14bの1次側の端部14gと給水用の元配管Cの端末部85Cとの間の水平方向に沿った距離とが等しくなるように、固定ジョイント10の回転位置を決定する。換言すると、固定ジョイント10から突出する両接続管5、6が、同じ条件で、各端末部85H、端末部85Cに接続可能となるように、回転位置を決定する。
このように、固定ジョイント10が台部80aに装着されると、台部80aの下方において、給湯用の元配管Hの端末部85Hと、給湯用の接続管5の1次側の端部との接続と、給水用の元配管Cの端末部85Cと給水用の接続管6との接続が行われる。また、固定ジョイント10が台部80aに装着されると、挿入用凹部13は台部80aの上方に開放された状態となる。
台部80aに装着された固定ジョイント10には、可動ジョイント20を介して水栓本体30等が取り付けられるが、この取り付けに先だって、可動ジョイント20の水栓本体30への装着と、可動ジョイント20への吐水管部材50の装着とがこの順に行われる。ここで、図8に示すように、可動ジョイント20の水栓本体30への装着は、外郭部31の雌ネジ部31aに可動ジョイント20の雄ネジ部25を螺合することによって行われる。
これにより、水栓本体30は可動ジョイント20によって一体回動可能な状態に保持される。但し、この雌ネジ部31aへの雄ネジ部25に際しては、水栓本体30と、可動ジョイント20とが可動ジョイント20の軸心(後述する回動軸心J)回りに以下のように位置合わせされる。つまり、給湯用到達用流路21の2次側の端部21bが固定ディスク32aの給湯孔(図示を省略)と連通し、給水用到達用流路22の2次側の端部22bが、固定ディスク32aの給水孔(図示を省略)に連通すると共に、湯水流出用流路23の1次側の端部23aが固定ディスク32aの流出口32dと連通するように位置合わせされる。
尚、この位置合わせを円滑に行う上では、水栓本体30と可動ジョイント20との間に、可動ジョイント20の螺合量を規制するための規制手段を設けることが望ましい。例えば、水栓本体30に被当接部を設け、可動ジョイント20に当接部を設けると共に、水栓本体30への可動ジョイント20の螺合量が適量となったときに、当接部を被当接部に対して、可動ジョイント20の回転方向(螺合を行う際の回転方向)に当接させ、それ以上の可動ジョイント20の回転方向(螺合)を規制してもよい。
一方、可動ジョイント20への吐水管部材50への装着は、支持筒部51に対して可動ジョイント20をその下端側から挿入することによって行われ、支持筒部51の下端の開口部から挿入部20eを突出させることで完了する。この装着によって、図8に示すように、支持筒部51の貫通孔51aと、湯水流出用流路23の2次側の端部23bとが、可動ジョイント20の半径方向に位置合わせされる。このため、湯水流出用流路23の2次側の端部23bと、吐水管部52の内部とが連通溝30n及び貫通孔51aを介して連通する。
また、可動ジョイント20に吐水管部材50を装着すると、図8に示すように、「湯水流出用流路23の2次側の端部23b」の上方の装着溝26aに装着されたシール部材P1が、支持筒部51の内周面のうちで貫通孔51aの上方に位置する部位に水密状に当接し、「湯水流出用流路23の2次側の端部23b」の下方の装着溝26bに装着されたシール部材P2が、支持筒部51の内周面のうちで貫通孔51aの下方に位置する部位に水密状に当接する。このため、可動ジョイント20及び吐水管部材50間の水密性が維持される。また、可動ジョイント20に吐水管部材50を装着すると、吐水管部材50がその軸心回りに回動可能となるが、貫通孔51a上下のシール部材P1、P2から吐水管部材50の内周面に摩擦力が加わる。このため、吐水管部材50が無秩序に回動することが防止される。
そして、図8に示すように、水栓本体30を保持しつつ吐水管部材50が装着された可動ジョイント20は固定ジョイント10に装着される。つまり、台部80aの上方に開放された状態の挿入用凹部13に、「支持筒部51の下端から突出する挿入部20e」を挿入する作業が行われる。この挿入作業は、可動ジョイント20の大径部20aの底面が固定ジョイント10の上端面に当接することで完了する。
このとき、抜止溝27と固定ジョイント10のネジ孔13fとが、可動ジョイント20の半径方向に位置合わせされる。このため、ネジ孔13fに抜け止めネジMを螺合させると、その軸部M1の先端部が抜止溝27内に進入する。これにより、挿入部20eの挿入用凹部13からの抜け止めが図られる。この状態で、挿入用凹部13内に挿入された挿入部20eはその軸心(回動軸心J)を基準に360度回転可能とされる。
但し、抜け止めネジMの螺合量を増加させ、軸部M1の先端部を抜止溝27の底部に当接させると、挿入部20eの挿入用凹部13内での回り止めが図られる。つまり、抜け止めネジMは、挿入部20eの抜止機能及び回転止機能を備えた止装置として機能する。
以上のように、可動ジョイント20を固定ジョイント10に装着すると、図8に示すように、中径部20bが「第1の空間部13cにおける上部拡径部13eよりも上方側の空間部分」に挿入され、上方テーパ部20cが上部拡径部13eに挿入され、小径部20dが第2の空間部13dに挿入されると共に、下方テーパ部20pが下部拡径部13wに挿入される。
これにより、図9に示すように、給湯用到達用流路21の1次側の端部21aと、給湯用流路14aの2次側の端部14dとが、「下部テーパ部20pを周回する状態に形成される流入側連通空間20S」を介して連通する。つまり、この流入側連通空間20Sは、下部拡径部13wのうちで、下部テーパ部20pの周囲に位置する環状の空間部分131pによって構成される。この流入側連通空間20Sは、挿入部20eの外面部を周回する方向(回動軸心J回りを周回する方向)に沿って円環状の経路を描く状態に形成される。そして、図9(a)及び(b)に示すように、挿入部20eを回動軸心J回りに回転させても、給湯用到達用流路21と、給湯用流路14aと、流入側連通空間20Sを介して常時連通する。
このとき、挿入部20eをその回動軸心J回りに所定量回転させると、給湯用到達用流路21の1次側の端部21aと、給湯用流路14aの2次側の端部14dが挿入部20eの径方向に沿って対向する。また、可動ジョイント20を固定ジョイント10に装着すると、給湯用到達用流路21の1次側の端部21a、給湯用流路14aの2次側の端部14d、及び流入側連通空間20Sの軸心方向位置(挿入部20eの軸心J方向に沿った位置)が揃えられる。
また、このように、可動ジョイント20を固定ジョイント10に装着すると、図10に示すように、給水用到達用流路22の1次側の端部22aと、給水用流路14bの2次側の端部14hとが、「上部テーパ部20cを周回する状態に形成される第2の流入側連通空間20R」を介して連通する。つまり、この第2の流入側連通空間20Rは、上部拡径部13eのうちで、上部テーパ部20cの周囲に位置する環状の空間部分131eによって構成される。この上部流入側連通空間20Rは、挿入部20eの外面部を周回する方向(回動軸心J回りを周回する方向)に沿って円環状の経路を描く状態に形成される。そして、図10(a)及び(b)に示すように、挿入部20eを回動軸心J回りに回転させても、給水用到達用流路22と、給水用流路14bとが第2の流入側連通空間20Rを介して常時連通する。
このとき、挿入部20eをその回動軸心J回りに所定量回転させると、給水用到達用流路22の1次側の端部22aと、給水用流路14bの2次側の端部14hとが挿入部20eの径方向に沿って対向する。また、可動ジョイント20を固定ジョイント10に装着すると、給水用到達用流路22の1次側の端部22aと、給水用流路14bの2次側の端部14hと及び第2の流入側連通空間20Rの軸心方向位置(挿入部20eの軸心J方向に沿った位置)が揃えられる。
尚、流入側連通空間20Sは、下方に向かって外径を縮小する下部テーパ部20pを、内径が大きくされた下部拡径部13wに挿入して構成されている。よって、流入側連通空間20Sの流路断面が十分な大きさとされるため、給湯用流路14aから流出する湯は、給湯用到達用流路21に向かって円滑に導かれる。また、第2の流入側連通空間20Rも、下方に向かって外径を縮小する上部テーパ部20cを、内径が大きくされた上部拡径部13eに挿入して構成されている。よって、第2の流入側連通空間20Rの流路断面が十分な大きさとされるため、給水用流路14bから流出する水は、給水用到達用流路22に向かって円滑に導かれる。
可動ジョイント20を固定ジョイント10に装着すると、図8に示すように、中径部20bの装着溝26cに装着されたシール部材P3が、「固定ジョイント10のうちで、第1の空間部13cの内壁部を構成する部位」に水密状に当接し、小径部20dの装着溝26dに装着されたシール部材P4が、「固定ジョイント10のうちで、第2の空間部13dの内壁部を構成する部位」に水密状に当接する。このため、「給湯用の流路部分」と、「給水用の流路部分」との間の水密性が維持される。
以上のように、湯水混合水栓Sが流し台80に取り付けられると、給湯用の元配管Hの端末部85Hと固定ディスク32aの給湯孔(図示を省略)とが、給湯用の接続管5と給湯用流路14aと給湯用到達用流路21を介して連通状態となり、給水用の元配管Cの端末部85Cと固定ディスク32aの給水孔(図示を省略)とが、給水用の接続管6と給水用流路14bと給水用到達用流路22とを介して連通状態となる。そして、これらの連通状態は、水栓本体30(挿入部20e)の回動位置にかかわらず、常時維持される。
本実施例の取付装置Tは、台部80aに固定される固定ジョイント10と、この固定ジョイント10に回動可能な状態に装着されつつ水栓本体30を一体回動可能な状態に保持する可動ジョイント20とを備えている。また、可動ジョイント20(挿入部20e)の回動位置にかかわらず、給湯用流路14aと給湯用到達用流路21が連通状態となると共に、給水用流路14bと給水用到達用流路22とが連通状態となる。
従って、本実施例の取付装置Tによると、図11(a)及び(b)に示すように、「給湯用の元配管Hの端末部85Hと給湯用の接続管5との位置関係」と、「給水用の元配管Cの端末部85Cと給水用の接続管6との位置関係」を変化させずに、水栓本体30を回転させることができる。ここで、図11は、「給湯用の接続管5(但し、上端部を図示)及び給水用の接続管6(但し、上端部を図示)」と、「給湯用の元配管Hの端末部85H及び給水用の元配管Cの端末部85C」との位置関係を示す概略的な平面図である。そして、図11(a)は、水栓本体30に回転を加える前の位置関係を示し、図11(b)は、水栓本体30に回転を加えた後の位置関係を示しているが、この図11(a)及び(b)によると、水栓本体30に回転を加えても、「給湯用の元配管Hの端末部85Hと給湯用の接続管5との位置関係」と、「給水用の元配管Cの端末部85Cと給水用の接続管6との位置関係」が変化しない。
このため、固定ジョイント10の台部80aに対する固定を、「給湯用の元配管Hの端末部85Hと給湯用流路14aとを給湯用の接続管5を用いて接続すると共に、給水用の元配管Cの端末部85Cと給水用流路14bとを給水用の接続管6を用いて接続する上で良い状態」となるように行えばよい。
そして、例えば、水栓本体30を可動ジョイント20を介して固定ジョイント10に支持させた後、水栓本体30に所望の回動を加えることで、「摺動弁装置32を操作するためのレバーハンドル60」を所望の方向に向けること等が可能となる。つまり、本実施例では、図1に示すように、水槽82の中央正面前方に位置する使用者Gから見て、水栓本体30が右斜め前方に位置しているが、水栓本体30をその回動軸心回りに約45度回転させることで、レバーハンドル60が使用者G方向を向くようにされている(つまり、レバーハンドル60の軸心が略使用者G方向を向いている。)
このように、本実施例の取付装置Tでは、元配管H、Cの端末部との接続に関与する固定ジョイント10と、水栓本体30との接続に関与する可動ジョイント20を別体とし、固定ジョイント10を基準に可動ジョイント20を回動可能とする。つまり、本実施例の取付装置Tによると、使用空間(台所D)の状況に応じて、水栓本体30を挿入部20eの回動軸心J回りに回動させることができるため、湯水混合水栓Sを種々の取付部に取り付ける作業を円滑、かつ確実に行うことが可能である。
尚、本実施例の取付装置Tは、湯水混合水栓Sを用いて水汲み等を行う場合にも有効に機能する。つまり、図1に破線に示すように、水槽82内にバケツ500等を挿入し、湯水混合水栓Sからこのバケツ500等に湯水を注入した場合においても、水栓本体30をその回動軸心回りに(つまり、挿入部20eの回動軸心J回りに)回転させることで、レバーハンドル60及び吐水管部52を水槽82の上方から排除することができる(図1の符号60L、52Lを参照)。この場合、バケツ500等の水槽82内からの取り出す作業を、レバーハンドル60や吐水管部52等に邪魔をされることなく、円滑に行うことができる。
また、本実施例の取付装置Tによると、水栓本体30が固定ジョイント10を基準に回動可能であるため、近年の多様化する使用空間(取付部)の状況にも的確に対応することができる。例えば、図12(a)に示す応用例1のように、台所Dの壁部寄り以外の部位(例えば、中央部)に流し台80を配設した場合にも的確に対応できる。
つまり、応用例1の流し台80の台部80aのうちで、左右の並ぶ水槽81、82の間に位置する部位に、取付装置Tを用いて湯水混合水栓Sを取り付けた具体例を示している。この応用例1においては、右側の水槽82の中央前方の使用者Gが湯水混合水栓Sを使用する場合にも、左側の水槽81の中央後方の使用者G1が湯水混合水栓Sを使用する場合にも、水栓本体30をその回動軸心回りに(つまり、挿入部20eの回動軸心J回りに)回転させることで、レバーハンドル60が使用者G、G1方向を向くようにすることができる(符号60B、60Cを付したレバーハンドルを参照)。
また、応用例1においては、右側の水槽82の中央後方の使用者G2が湯水混合水栓Sを使用する場合にも、水栓本体30をその回動軸心回りに(つまり、挿入部20eの回動軸心J回りに)回転させることで、レバーハンドル60が使用者G2方向を向くようにすることもできる(符号60Dを付したレバーハンドルを参照)。
尚、本実施例では、水栓本体30をその回動軸心回りに(つまり、挿入部20eの回動軸心J回りに)、「所望の角度」回転させた後、抜け止めネジMの螺合量を増加させ、軸部M1の先端部を抜止溝27の底部に当接させると、水栓本体30の回転位置(挿入部20eの回動軸心J回りの回転位置)を固定することができる。
また、本実施例の取付装置Tによると、水栓本体30が固定ジョイント10を基準に回動可能であるため、取付部に隣接する他の水栓関連機器への湯水の供給を円滑に行うことができる。例えば、図12(b)に示す応用例2は、洗面台Eの台部E1から選択される取付部E2に、取付装置Tを用いて湯水混合水栓Sを取り付けた具体例を示している。この取付部E2は、洗面台Eの上面部のうちで、洗面ボールE3の右側方(特に、右斜め後方が望ましい。)に位置している。そして、この応用例2においては洗面台Eの右側方に洗濯機Fが設置されている。但し、取付部E2を洗面台Eの上面部のうちで、洗面ボールE3の左側方に設け、洗面台Eの左側方に洗濯機Fを設置することもできる。
この応用例2によると、水栓本体30が固定ジョイント10を基準に回動可能させることで、湯水混合水栓Sから吐水される湯水(特に、使用する汚れ落ちの良くなる「湯」が望ましい。)を洗濯機Fに円滑に供給することができる。
また、本実施例の取付装置Tによると、水栓本体30が固定ジョイント10から着脱可能であるため、使用空間のリフォームに迅速・的確に対応することができる。
例えば、図13(b)及び(c)の応用例3及び応用例4に示すように、湯水混合水栓Sを、別のタイプのシングルレバー式の湯水混合水栓S3、S4に取り替えることもできる。すなわち、「取り替えの対象となる他の水栓」に使用する固定ジョイント10と可動ジョイント20の寸法(外寸、内寸等の大きさ)を共通にすることにより、可動ジョイント20より上の水栓部分を交換することにより、色々な仕様の水栓に変更することができる。そのため、施工後の急な水栓仕様の変更が生じた場合でも、未使用時であれば簡単に変更することができ、更にリフォーム時においても、配管を変更せずに色々な仕様の水栓を自由に選択することができる。つまり、台部80aの上方にのみの施工(つまり、「上施工」)によってリフォーム等を円滑に行うことができる。
具体的には、本実施例では、図13(a)に示すように、水栓本体30の上部にレバーハンドル60を配設し、カラン(つまり、吐水管部52)を水栓本体30の下方に配置する態様を例示したが、同一の取付装置Tを用いつつも、取付部(台部80a)に別のタイプのシングルレバー式の湯水混合水栓S3、S4に取り付けることもできる。例えば、図13(b)の応用例3に示すように、カラン(吐水管部52)を水栓本体30の側部から突出させた湯水混合水栓S3を取り付けたり、図13(c)の応用例4に示すように、カラン(吐水管部52)を水栓本体30の上部から突出させ、レバーハンドル60を水栓本体30の側部に配設した湯水混合水栓S4を取り付けることもできる。
また、本実施例では、湯水混合水栓Sとして、シングルレバー式の湯水混合水栓を例示したが、本実施例の取付装置Tの取付対象となる湯水混合水栓の形式はシングルレバー式に限定されず、例えば、サーモスタットタイプや、2ハンドルタイプであってもよい。ここで、図14及び図15の応用例5は、2ハンドルタイプの湯水混合水栓S5への適用例を示している。
この湯水混合水栓S5の基本的な使用態様は図14に示す態様である。つまり、取付部(台部80a)の下方において、使用者から見て左側に給湯用の元配管Hの端末部85Hが配設され、使用者から見て右側に給水用の元配管Cの端末部85Cが配設される(以下、この状況を「通常配管」という。)。そして、水栓本体30Aの上部においては、使用者から見て左側に湯量調節用のハンドル(以下、「湯側ハンドル」という。)65Hが配設され、使用者から見て右側に水量調節用のハンドル(以下、「水側ハンドル」という。)65Cが配設される。
この応用例5においても、水栓本体30Aを挿入部20eの回動軸心J回りに回転させることで、水栓本体30Aの方向を変更することができる。つまり、水栓本体30Aの正面部31Aが正面前方を向く状態を基本姿勢とする場合、水栓本体30Aの挿入部20eの回動軸心J回りに回転させ、この正面部31Aを斜め前方に向けることもできる。特に、本実施例のように、水栓本体30Aを、水槽82の斜め後方に位置する部位(斜め後方部)に設置する態様では、正面部31Aを斜め前方(水槽82の中央前方の使用者の方向)に向けることが望ましい。
また、この応用例5においては、図15に示すように、水栓本体30Aを挿入部20eの回動軸心J回りに180度回転させることで、使用者から見て右側に湯側ハンドル65Hが配設され、使用者から見て左側に水側ハンドル65Cが配設されることになる。この場合、例えば、左利きの使用者用の湯水混合水栓S5として好適である。このように、各請求項の発明が適用される「2ハンドルタイプの湯水混合水栓S5」においては、その水栓本体30Aを挿入部20eの回動軸心J回りに回転させることで、右側に湯側ハンドル65Hと、水側ハンドル65Cの位置関係(使用者から見た左右の位置関係)を、個々の使用者の特性、嗜好、要求等に応じて選択することができる。
尚、使用空間の状況によっては、給湯用の元配管Hの端末部85Hと、給水用の元配管Cの端末部85Cが左右逆に配設されることもある(以下、この状況を「逆配管」という。)。但し、応用例5によると、かかる場合においても、水栓本体30Aを挿入部20eの回動軸心J回りに180度回転させることで的確に対処できる。つまり、水栓本体30Aを180度回転させると、「逆配管」であるにもかかわらず、使用者から見て左側に湯側ハンドル65Hが配設され、使用者から見て右側に水側ハンドル65Cが配設されることになる。但し、この場合、給湯用の接続管5と給湯用流路14aと給湯用到達用流路21が給水用に用いられ、給水用の接続管6と給水用流路14bと給水用到達用流路22とが給湯用に用いられる。また、この「逆配管」への適用例は、2ハンドルタイプの湯水混合水栓のみでなく、シングルレバー式やサーモスタットタイプの湯水混合水栓にも適用可能である。
尚、本各発明の範囲は前記実施例に示す具体的な態様に限定されず、本各発明の範囲内で種々の変形例を例示できる。
更に、本実施例では、可動ジョイント20の固定ジョイント10からの抜け止めを、抜止溝27と抜け止めネジMとによって行った。但し、この抜け止めネジMを用いる方法の代わり、若しくは、この抜け止めネジMを用いる方法と共に別の方法を用いて、可動ジョイント20の固定ジョイント10からの抜け止めを行ってもよい。例えば、図16に示す変形例1のように、大径部20aの下端側外周部から抜け止め用のフランジ20Fを突出させると共に、筒状部10Tを固定ジョイント10の上端部から同心状に延設する。そして、筒状部10Tの外周部に雄ネジ部10Mを設ける。
また、雄ネジ部10Mに螺合可能な雌ネジ部10Nを有するナット本体10Pと、ナット本体10Pの内周部における軸方向奥側(雌ネジ部10Nが形成されていない部位)からナット本体10Pの半径内側方向に突出する押え部10Rとを有する抜け止め用ナット10Nを用意する。そして、筒状部10Tの雄ネジ部10Mに雌ネジ部10Nを螺合させ、筒状部10Tと押え部10Rとでフランジ20Fを挟持することで、可動ジョイント20の固定ジョイント10からの抜け止めを図ることもできる。
更に、本実施例では、湯水混合水栓Sを台部80aに取り付ける具体例を示したが、各請求項の発明は水栓を他の取付部に取り付ける場合にも使用できる。例えば、図17及び図18に示す変形例2のように、壁部(特に、壁面パネル)Wに、実施例と同様な湯水混合水栓Sを取り付ける場合にも、実施例の取付装置Tを使用することができる。
この変形例2においては、挿入部20eの回動軸心Jが水平方向に向けられる。よって、レバーハンドル60で温度調節のための操作(回動操作)を行うと、図18(a)に示すように、レバーハンドル60が左右(レバーハンドル60の正面から見た場合)に振り子状に揺動することになる。このため、仮に、図18(b)に示すように、レバーハンドル60の側方に障害物(他の壁部等)Xが存在する場合には、揺動するレバーハンドル60が、この障害物Xに衝突する可能性がある。ところが、変形例2においては、水栓本体30を挿入部20eの回動軸心J回りに回転させ、レバーハンドル60の揺動経路を、障害物Xに回避する状態に変更することで、レバーハンドル60と、障害物(他の壁部等)Xとの衝突を回避することができる。更に、変形例2においては、レバーハンドル60の方向を個々の使用者にとってより使い易い向きに変更できる。例えば、レバーハンドル60がハンドルが下向きに設置してあるのを、上向きに設置することも容易である。
また、実施例では、前述のように、水栓本体30が固定ジョイント10から着脱可能であるため、使用空間のリフォーム等に際して、湯水混合水栓Sを、分岐栓付きのものに取り替えることできる。また、実施例の取付装置Tにおいては、使用空間のリフォーム等に際して、可動ジョイント20の交換を行うこともできる。例えば、図19の変形例3に示すように、分岐栓28a、28bを備える可動ジョイント20との交換をすることができる。
尚、変形例3の可動ジョイント20は、給湯用到達用流路21を分岐するための「湯側の分岐栓28a」と、給水用到達用流路22を分岐するための「水側の分岐栓28b」とを備えている。そして、湯側の分岐栓28aを介して給湯用到達用流路21から分岐される分岐流路には、例えば、食器洗浄機(若しくは、食器洗浄乾燥機)が接続され、水側の分岐栓28bを介して給水用到達用流路22から分岐される分岐流路には、例えば、浄水器に接続される。但し、可動ジョイント20に設ける分岐栓を、「湯側の分岐栓28a」と「水側の分岐栓28b」とのうちの一方としてもよい。
また、実施例においては、図20〜図22の変形例4に示すように、水栓本体30(可動ジョイント20)の回動位置の位置決めを行うための位置決め手段が付加されてもよい。この変形例4では、図20に示すように、可動ジョイント20の外周部に3個の係合用凹部29a、29b、29cが形成され、挿入用凹部13の内壁部からは係合用突起13Tが突出している。尚、係合用凹部29a、29b、29cは規制用被係合部の具体例を示し、係合用突起13Tは規制用係合部の具体例を備えている。
係合用突起13Tは固定ジョイント10に装着されたボールプランジャBのボールB1を用いて構成されている。つまり、このボールプランジャBは、図21に示すように、有底筒形状のハウジングBHと、ハウジングBH内に収容された付勢手段(コイルスプリング)B2と、ハウジングBHの開口部に配設されたボールB1とを備える。このボールB1は、ハウジングBH外に略半球分だけ突出しているが、ハウジングBHの開口部の前方からの圧力を受けると、付勢手段B2の付勢力に対抗しつつ、ハウジングBHの内部に後退し、ハウジングBH外への突出量を減少させることができる。
一方、可動ジョイント20には、周回方向に沿った一部の外径を段差状に小さくした凹所20Hが形成されている。この凹所20Hと、係合用突起13Tとは挿入部20eの半径方向に位置合わせ可能とされる。つまり、レバーハンドル60の真後ろに位置する部位を中心として回動軸心Jに沿って左右に各々45度ずつたどる位置が外径が小さくされた凹所20Hとされている。以下の説明においては、「可動ジョイント20において係合用突起13Tとは挿入部20eの半径方向に位置合わせ可能な部位のうちで、凹所20Hを除く部位」、つまり、「外径を段差状に小さくしない部位」を通常部20Jと称する。
そして、凹所20Hの中央部(つまり、レバーハンドル60の後方の位置)に一個の係合用凹部(以下、「第1の係合用凹部」という。)29aが形成され、凹所20Hの一端部(回動軸心Jに沿って挿入部20eを周回する方向に沿った一端部)に残りの一方の係合用凹部(以下、「第2の係合用凹部」という。)29bが形成され、凹所20Hの他端部(回動軸心Jに沿って挿入部20eを周回する方向に沿った他端部)に残りの他方の係合用凹部(以下、「第3の係合用凹部」という。)29cが形成されている。尚、図21に示すように、第2の係合用凹部29b及び第3の係合用凹部29cにおいて、第1の係合用凹部29aから遠ざかる位置に存在する縁部291b、291cは凹所20Hの側壁部20V、20Wと一体化されている。
何れの係合用凹部29a、29b、29cも、係合用突起13Tと挿入部20eの半径方向に沿って位置合わせ可能とされているため、レバーハンドル60の軸心を、後方に延長した位置に係合用突起13T(ボールB1)が存在すると、この係合用突起13T(ボールB1)は付勢手段B2によってレバーハンドル60の方向に付勢されつつ、第1の係合用凹部29aに係合する。以下、このときの可動ジョイント20(水栓本体30)及びレバーハンドル60の回動位置を基本位置という。
可動ジョイント20(水栓本体30)が基本位置にあるときに、図22(a)に示すように、使用者が、レバーハンドル60を一方の回転方向(図中の矢印Yの方向)に回転させると、可動ジョイント20(水栓本体30)も回転するため、係合用突起13T(ボールB1)は付勢手段B2の付勢力に対抗しつつ第1の係合用凹部29aから脱出する。この際、使用者の手には所謂「クリック感(ノッチ感)」が伝わる。
そして、図22(a)に示すように、レバーハンドル60の回転量が45度となると、係合用突起13T(ボールB1)は第2の左係合用凹部29bに係合する。このとき、使用者の手には所謂「クリック感(ノッチ感)」が伝わるため、使用者は、レバーハンドル60の回転位置が、基本位置から45度(一方の回転方向に45度)変化したことが判ると共に、係合用突起13T(ボールB1)と、第2の係合用凹部29bとの係合で、レバーハンドル60の回転位置の位置決めが行われる。以下、このときの可動ジョイント20(水栓本体30)及びレバーハンドル60の回動位置を第1の回転位置という。
更に、図22(b)に示すように、レバーハンドル60の一方の回転方向への回転量を増量させたい場合には、「レバーハンドル60を基本位置から第1の回転位置に変化させる場合にレバーハンドル60に加えた力」よりも大きな力を、レバーハンドル60に加えることが必要となる。蓋し、この回転量の増量のためには、係合用突起13T(ボールB1)が、凹所20Hから脱出して通常部20Jの外周部に到達することが必要となる。その際、「第2の左係合用凹部29aの深さ」と、「凹所20Hの深さ」とを加えた量だけ、係合用突起13T(ボールB1)を可動ジョイント20の半径外側方向に後退させること、つまり、付勢手段B2を「第2の左係合用凹部29aの深さ」と、「凹所20Hの深さ」とを加えた量だけ、圧縮することが必要であるからである。
レバーハンドル60の回動位置を基本位置に戻すと、係合用突起13T(ボールB1)が第1の係合用凹部29aに係合するため、レバーハンドル60の回動位置を基本位置に位置決めされると共に、その際、使用者の手には所謂「クリック感(ノッチ感)」が伝わる。
また、図示を省略するが、可動ジョイント20(水栓本体30)位置が基本位置であるときに、使用者が、レバーハンドル60を他方の回転方向に回転させる場合においては、レバーハンドル60の回転量が45度となると、係合用突起13T(ボールB1)は第3の左係合用凹部29cに係合する。このとき、レバーハンドル60の回動位置(以下、「第2の回転位置」という。」が位置決めされると共に、その際、使用者の手には所謂「クリック感(ノッチ感)」が伝わる。更に、レバーハンドル60の他方の回転方向への回転量を増量させたい場合には、「レバーハンドル60を基本位置から第2の回転位置に変化させる場合にレバーハンドル60に加えた力」よりも大きな力を、レバーハンドル60に加えることが必要となる。
尚、変形例4においては、係合用凹部29a、29b、29cを可動ジョイント20に直接設ける態様を例示したが、図23(a)の変形例5のように、係合用凹部29dを可動ジョイント20とは別体の係合部形成用部材(例えば、樹脂製)290で構成すると共に、この係合部形成用部材290をネジ止め等の手法を用いて可動ジョイント20に着脱自在に装着してもよいし、接着、溶着等の手法を用いて可動ジョイント20に装着してもよい。また、変形例4及び変形例5のように、位置決めを行う場合には、図23(b)のように、固定ジョイント10の正面等に位置決めの目印となるラベル10Rや表示等を設けてもよい。
この場合、使用者のニーズや、使用空間の状況等に応じて、係合用凹部29dの形成数や、形成ピッチの異なる係合部形成用部材290を選択使用すること等ができる。
また、実施例、各応用例、各変形例においては、可動ジョイント20(水栓本体30)が挿入部20eの回動軸心J回りに360度回転可能な態様を例示したが、図24(a)に示す変形例6や図24(b)に示す変形例7に示すように、可動ジョイント20(水栓本体30)が回動可能な回動量を360度以下の範囲で設定することもできる。つまり、変形例6は、この回動量を90度とする具体例を示し、変形例7は、この回動量を180度とする具体例を示している。
つまり、変形例6の可動ジョイント20には、中心角が90度の溝600が形成され、この溝600内には、固定ジョイント10に装着されたボールプランジャBが挿入されている。また、変形例7の可動ジョイント20には、中心角が180度の溝610が形成され、この溝610内には、固定ジョイント10に装着されたボールプランジャBが挿入されている。そして、変形例6及び変形例7では、ボールプランジャBのハウジングBHが、溝600、610の側壁部に当接するまでの範囲(つまり、ハウジングBHが溝600、610内を移動可能な範囲)に、可動ジョイント20(水栓本体30)の回動範囲が規制されることになる。
更に、実施例、各応用例、各変形例においては湯水混合水栓(S等)への適用例を説明したが、図25の変形例8に示すように、単水栓への適用例を例示することもできる。ここで、変形例8の取付装置Tは以下の点で実施例と異なっている。つまり、変形例8の固定ジョイント10では、実施例において給湯用流路14aとして用いた流路を、固定ジョイント10の1次側で予め温度調節された湯水を通過させる混合水流路14Aとして使用し、実施例において給水用流路14bとして用いた流路を、流出用流路14Bとして用いている。尚、混合水流路14Aは、請求項1及び請求項2に示す「流体供給用流路」の他の具体例を示している。また、変形例8では、混合水の供給配管の端末部と、混合水流路14Aとの接続を行うための混合水用の接続管5Aが用いられる。
また、変形例8の可動ジョイント20では、実施例の可動ジョイント20における湯水流出用流路23が排除されると共に、実施例の可動ジョイント20において給湯用到達用流路21として使用した流路を、混合水到達用流路21Aとして用い、実施例の可動ジョイント20において給水用到達用流路22として使用した流路を、通過用流路22Aとして使用している。尚、混合水到達用流路21Aは、請求項1及び請求項2に示す「到達用流路」の他の具体例を示している。また、変形例8では、流出用流路14Bと、吐水手段(カラン、シャワーヘッド等)を接続するための連絡用配管6Aが用いられる。更に、変形例8の取付装置では、実施例において流入側連通空間20Rとして用いた流路を、請求項2の発明の具体例を構成する「流出側連通空間(図示を省略)」として用いる。
つまり、変形例8の可動ジョイント20によって保持される水栓本体(図示を省略)には吐止水の選択と、吐止量の選択を行うための弁装置が内蔵される。そして、混合水用の接続管5A、混合水流路14A、混合水到達用流路21Aをこの順に通過して水栓本体に供給される混合水は、水栓本体に装着される操作部の操作に応じて水栓本体から流出する。そして、この水栓本体から流出する混合水は、給湯用到達用流路21、「流出側連通空間(図示を省略)」、流出用流路14Bの順に通過し、更に、連絡用配管6Aを通過して吐水手段から吐水される。
更に、図26〜図28に示すように、請求項2の発明の湯水混合水栓への適用例(以下、「変形例9」という。)を例示することもできる。この変形例9では、固定ジョイント10及び可動ジョイント20の構成が、以下の点で実施例と異なっている。つまり、図29に示すように、固定ジョイント10の挿入用凹部13においては、第1の空間部13cの上方(挿入用凹部13の入口側)に、第1の空間部13cよりも内径の大きな「空間部(以下、「入口空間部」という。)13A」が付加されている。この入口側空間部13Aも、下端側はその内径が段差状に拡大した拡径部(以下、「入口側拡径部」という。)131Aとされている。
この変形例9の固定ジョイント10には、給湯用流路14aと給水用流路14bの他に、流出用流路14Dが形成されている。そして、この流出用流路14Dは固定ジョイント10の下面部側に2次側の端部143Dを配設し、挿入用凹部13の内壁部13gのうちで入口側拡径部131Aの内周壁部分を構成する部分及び段部(入口空間部13Aの底部を構成する段部)132Aの上面部分を構成する部位において、1次側の端部141Dを開口させている。尚、図27に示すように、変形例9においては、給水用流路14bの2次側の端部14hと、給湯用流路14aの2次側の端部14dと、流出用流路14Dの1次側の端部141Dは、挿入部20eの回動軸心Jの方向に沿って相互に所定の距離を有する位置(位置ずれを生じた位置)に開口している。尚、流出用流路14Dの2次側の端部143Dには、連絡用配管8を介して、吐水手段(カラン、シャワーヘッド等)が接続される(図26を参照)。
変形例9の可動ジョイント20においては、図28に示すように、大径部20a及び中径部20bの外径を更に大きくすると共に、中径部20bと上方テーパ部20cとの間に、外径を下方に向かって徐々に縮径させた付加テーパ部20Dと、略円柱状の外形を備える付加柱状部20Eと、が上方からこの順で付加されている。このうち、付加テーパ部20Dは、外径を下方に向かって徐々に縮径させるテーパ状とされ、上端部の外径を中径部20bの下端の外径と等しくすると共に、下端部の外径を付加柱状部20Eの上端の外径と等しくしている。更に、付加柱状部20Eの下端の外形は、下方テーパ部20pの上端部の外径と略等しくされている。
変形例9の可動ジョイント20の内部空間は、隔壁20kによって、給湯用到達用流路21と、給水用到達用流路22と、通過用流路23Bとに区画されている。このうち、流出用流路23Bは請求項2の発明の「流出用流路」の具体例を構成する。ここで、給湯用到達用流路21及び給水用到達用流路22は、実施例と同様な構成を備えている。また、通過用流路23Bは水栓本体30から流出する湯水を、前述の流出用流路14Dに到達させるための流路であり、可動ジョイント20の軸心に沿って上下に形成されている。また、通過用流路23Bの2次側の端部232Bは、可動ジョイント20の付加テーパ部20Dの外周面(外面部)において開口し、通過用流路23Bの1次側の端部231Bは可動ジョイント20の上端面20nで開口している。尚、通過用流路23Bの1次側の端部231Bと、給水用到達用流路22の2次側の端部22bと、給湯用到達用流路21の2次側の端部21bとは離間する状態とされている。
また、給湯用到達用流路21の1次側の端部21aと、給水用到達用流路22の1次側の端部22aと、通過用流路23Bの2次側の端部232Bは、挿入部20eの回動軸心Jの方向に沿って相互に所定の距離を有する位置(位置ずれを生じた位置)に開口している。また、付加テーパ部20Dにも、周回状の装着溝26Dが形成され、この装着溝26Dにもシール部材(パッキン)P5が装着されている(図28を参照)。
この変形例9においても、実施例と同様に、可動ジョイント20が固定ジョイント10に装着されると、給湯用の元配管Hの端末部85Hと固定ディスク32aの給湯孔(図示を省略)とが、給湯用の接続管5と給湯用流路14aと給湯用到達用流路21を介して連通状態となり、給水用の元配管Cの端末部85Cと固定ディスク32aの給水孔(図示を省略)とが、給水用の接続管6と給水用流路14bと給水用到達用流路22とを介して連通状態となる。
加えて、変形例9では、可動ジョイント20が固定ジョイント10に装着されると、付加柱状部20Eが、その装着溝26Dのシール部材(パッキン)P5を水密状に当接させつつ、入口空間部13Aの上方側(入口側拡径部131Aよりも上方側)に挿入されると共に、付加テーパ部20Dが入口側拡径部131Aに遊入される。これにより、通過用流路23Bの2次側の端部232Bと、流出用流路14Dの1次側の端部141Dとが、付加テーパ部20Dの回動軸心回りに円環状に形成される流出側連通空間(図示を省略)を介して連通する。つまり、この流出側連通空間は、入口側拡径部131Aのうちで、付加テーパ部20Dの周囲に位置する環状の空間部分によって構成される。この流出用連通空間は、挿入部20eの外面部を周回する方向(回動軸心J回りを周回する方向)に沿って円環状の経路を描く状態に形成される。そして、挿入部20eを回動軸心J回りに回転させても、通過用流路23Bと、流出用流路14Dとが、この流出用連通空間を介して常時連通する。
また、各請求項の発明においては、図29(a)の変形例10に示すように、固定ジョイント10の挿入用凹部13の底部13aにおいて、挿入部20eの回動軸心Jと偏心する位置に、流体供給用流路14Aの2次側の端部141Aと、第2の流体供給用流路14Bの2次側の端部141Bを開口させてもよい。
更に、各請求項の発明においては、図29(b)の変形例11に示すように、固定ジョイント10の内壁部に、ベアリングやボールプランジャB等の支持部材90を配設し、この支持部材90によって可動ジョイント20の外周部を支持してもよい。この場合、可動ジョイント20が挿入用凹部13内で滑らかに回転することになる。
また、実施例では、流入側連通空間20Rを、挿入部20eの回動軸心J回りを周回する経路(環状の経路)を描く状態に設けたが、図30(a)の変形例12に示すように、回動軸心J回りに円弧状の経路を描く状態に設けてもよい。この場合、可動ジョイント20の回動位置によっては、図30(b)に示すように、第2の流体供給用流路14Bと、第2の到達用流路22Bとが連通しない状態となる。つまり、変形例11の取付装置においては、可動ジョイント20の回動位置を選択することで、単水栓を取り付けるための取付装置としても好適に使用することができる。
実施例等では、可動ジョイント20にシール部材P1〜P4を装着する態様を例示したが、固定ジョイント10にシール部材を装着することもできる。