本発明の光学顕微鏡は、第1の光源が生成する第1の光周波数を有する第1の光パルス列と、前記第1の光パルス列と時間的に同期した、第2の光源が生成する第2の光周波数を有する第2の光パルス列とを試料に照射し、前記試料からの散乱光を検出する光学顕微鏡であって、前記第1の光源が生成する光パルス列の繰り返し周波数が、前記第2の光源が生成する光パルス列の繰り返し周波数の整数分の一である。
このようにすることで、例えば、誘導ラマン散乱顕微鏡に用いた場合には、第1の光周波数と第2の光周波数との周波数差が試料の分子振動周波数に一致した際に、誘導ラマン散乱が生じて試料からの散乱光が強度変調され、この強度変調成分を検出することで試料の分子振動イメージングが可能となる。このため、従来のような強度変調のための素子を用いることなく、簡易な光学顕微鏡の系を有し、光パルス列の変調周波数を高く設定することが容易な誘導ラマン散乱を用いた光学顕微鏡を得ることができる。
また、本発明の光学顕微鏡において、前記第1の光源が生成する光パルス列の繰り返し周波数が、前記第2の光源が生成する光パルス列の繰り返し周波数の二分の一であることが好ましい。このようにすることで、第1の光パルス列と第2の光パルス列とから、誘導ラマン散乱を最も効果的に生成させることができ、より良好に試料の分子振動イメージが作成できる光学顕微鏡を得ることができる。
さらに、前記第1の光源と、前記第2の光源と、前記第1の光パルス列と前記第2の光パルス列とを同時に前記試料に照射する照射光学系と、前記試料からの散乱光のうち、前記第1の光パルス列を除去して他を集光する集光光学系と、前記集光光学系で集光された散乱光を電気信号に変換して出力する受光素子と、前記受光素子の出力信号を同期検波する電子回路とを備えることが好ましい。このようにすることで、簡易な系の光学顕微鏡を容易に実現することができる。
さらにまた、前記第1の光源および前記第2の光源の少なくともいずれか一方がファイバーレーザーであり、前記第1の光パルス列と前記第2の光パルス列のタイミング差を検出するタイミング差検出光学系を備え、前記タイミング差検出光学系からの出力信号に基づいて、前記ファイバーレーザーの共振器内に配置された光路長変調手段を駆動して、前記第1の光パルス列のタイミングと前記第2の光パルス列のタイミングとを整合させることが好ましい。このようにすることで、高精度に、第1の光パルス列のタイミングと第2の光パルス列のタイミングを整合させることができ、S/N比の高いクリアな分子振動イメージが得られる光学顕微鏡を実現することができる。
また、前記タイミング差検出光学系において、前記第1の光パルス列のレーザー光と前記第2の光パルス列のレーザー光が集光照射されて生じる二光子吸収電流を検出することが好ましい。このようにすることで、高い精度で2色の超短光パルスレーザービームのタイミングずれを検出することができる。
さらに、前記光路長変調手段が、可変遅延線、および、位相変調器であることが好ましい。このようにすることで、光路長を長距離にわたって機械的に調節することができる可変遅延線と、印加される電圧によって結晶の屈折率を変化させることで高速に光路長を調節できる位相変調器を用いて、より高精度かつ長時間安定なタイミング同期を実現できる。
さらにまた、前記第1の光源が生成する光パルス列の繰り返し周波数が、10MHz以上であることが好ましく、前記第1の光源が生成する光パルス列の繰り返し周波数が、38MHz以上であることがより好ましい。
また、本発明の光学顕微鏡として、第1の光周波数を有する第1の光パルス列と、前記第1の光パルス列と時間的に同期した、第2の光周波数を有する第2の光パルス列とを試料に照射し、前記試料からの散乱光をフォトダイオードで検出する光学顕微鏡であって、前記フォトダイオードからの出力信号を取得するフォトダイオード駆動回路が、前記フォトダイオードと並列に接続されたインダクタンスと、前記インダクタンスに並列に接続された抵抗値が100Ω以上の負荷抵抗とを有していることを特徴とする。
このような構成とすることで、高いロックイン周波数でのイメージ画像の検出において、フォトダイオードの寄生容量による周波数特性の低下を効果的に防止することができる。
さらに本発明は、第1の光源から生成された第1の光パルス列と、第2の光源から生成された第2の光パルス列とを用いて、ロックイン検出を行う光学計測であって、前記第1の光源が生成する光パルス列の繰り返し周波数が、前記第2の光源が生成する光パルス列の繰り返し周波数の整数分の一であることを特徴とする光学計測として把握することができる。
このように、ロックイン検出を行う繰り返し周波数が異なる第1の光パルス列および第2の光パルス列が、異なる繰り返し周波数の光を生成する光源から生成されていることで、S/N比を高くできる高い周波数でロックイン検出を行う光学計測が、簡易な構成で可能になる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる誘導ラマン散乱(SRS)効果を用いた光学顕微鏡の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の誘導ラマン散乱顕微鏡100は、第1の光パルス列を生成する第1の光源1と、第2の光パルス列を生成する第2の光源2と,ミラー3,ハーフミラー4と第1の対物レンズ5からなる照射光学系21と、第2の対物レンズ7,フィルタ8および集光レンズ9からなる集光光学系22と、受光素子であるフォトダイオード10,フォトダイオード10の出力信号を同期検波する電子回路であるロックインアンプ11とを有している。
また、図1に示すように、第1の対物レンズ5と第2の対物レンズ7との間に、測定対象の試料6が配置されている。
本実施形態の誘導ラマン散乱顕微鏡100では、ストークス光(ωS)の第1の光パルス列を生成する第1の光源1として、チタンサファイヤレーザー光源が用いられている。レーザー光の光周波数は中心周波数が1000nm、パルス幅は200fs(フェムト秒)で、繰り返し周波数は38MHzに設定されている。
また、反ストークス光(ωAS)である第2の光パルス列を生成する第2の光源2は、第1の光源と同様、チタンサファイヤレーザー光源が用いられていて、光周波数は770nm程度までの適宜の値であり、パルス幅は100fsで、繰り返し周波数は76MHzである。この、第2の光パルス列の光周波数は、第1の光パルス列の光周波数との周波数差が、測定対象試料の分子振動周波数と一致するように、測定対象試料に合わせて適宜調整されるものである。
なお、本実施形態の誘導ラマン散乱顕微鏡100では、第1の光源と第2の光源とに、それぞれ別々のパルスレーザー光源を用い、これらのレーザーパルス光源の同期を取るために、両者を電気的に接続している。しかし、本発明の第1の光源および第2の光源はこれに限らず、例えば、一方の光源をパルスレーザー光源、他方をパラメトリック発振器とすることもできる。
また、本実施形態の誘導ラマン散乱顕微鏡100では、上記のように、第1の光源で生成される第1の光パルス列の繰り返し周波数を、第2の光源で生成される第2の光パルス列の繰り返し周波数の二分の一としている。以下、本実施形態では、この第1の光パルス列の繰り返し周波数をfと、また、第2の光パルス列の繰り返し周波数を2fとする。このようにすることで、第1の光源で生成される第1の光パルス列は、第2の光源で生成される第2の光パルス列の二つに一つと同期したタイミングで生成されるために、例えば、第1の光源で生成される第1の光パルス列の繰り返し周波数を、第2の光源で生成される第2の光パルス列繰り返し周波数の三分の一や四分の一とする場合と比較して、誘導ラマン散乱効果を引き起こす回数を最も多くすることができて、より高い精度で試料の分子振動イメージの取得が可能となるからである。
しかし、本発明の誘導ラマン散乱顕微鏡において、第1の光パルス列の繰り返し周波数は、第2の光パルス列の繰り返し周波数の二分の一とすることは、必ずしも必須の要件ではなく、三分の一や四分の一など、第1の光パルス列の繰り返し周波数を第2の光パルス列の繰り返し周波数の整数分の一とすることで、誘導ラマン散乱効果による試料の分子振動イメージの取得が可能となる。
また、上記本実施の形態では、2つの光パルス列のうち、繰り返し周波数の低い第1の光パルス列を、ストークス光として用いる場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、繰り返し周波数の低い第1の光パルス列を、反ストークス光として用いることもできる。
照射光学系21のミラー3で向きを変えられた、第2の光源2で生成された繰り返し周波数2fの第2の光パルス列は、照射光学系21のハーフミラー4によって、第1の光源1で生成された繰り返し周波数fの第1の光パルス列と同軸に合波される。合波された光パルス列は、照射光学系21の第1の対物レンズ5によって、試料6に集光照射される。なお、本実施形態では第1の対物レンズ5として、倍率×40、開口数(NA)0.6のものを用いた。
このように、第1の光周波数(1色目の色)を持つ第1の光パルス列の繰り返し周波数をf、第2の光周波数(2色目の色)を持つ第2の光パルス列の繰り返し周波数を2fとしたとき、時間1/2fごとに、2色のパルスの両方と、2色目のパルスの一方のみとが、交互に現れる。このとき、第1の光周波数と第2の光周波数との周波数差が、測定試料6の被測定分子の分子振動数と一致した場合に誘導ラマン散乱が生じ、2色の光パルスの両方が照射された場合にのみ、第2の光パルス列の励起光パルスに周波数fの強度変調が生じる。
この試料6からの散乱光は、集光光学系22の第2の対物レンズ7で集光される。この第2の対物レンズ7として、本実施形態では第1の対物レンズ5と同様に、倍率×40、開口数(NA)0.6のものを用いた。第2の対物レンズ7で集光された散乱光から、集光光学系22のショートパスフィルタ8によって、第2の光パルス列のみを透過させ、集光光学系22の集光レンズ9で集光する。
集光レンズ9で集光された光は、受光素子であるフォトダイオード10で光電変換され電気信号として出力される。このフォトダイオード10の出力信号を、電子回路であるロックインアンプ11によってロックイン周波数をfとして同期検波することで、誘導ラマン散乱によって生じた光のみを検出することができる。
図2は、誘導ラマン散乱顕微鏡での、ロックインアンプの出力信号の例を示すものである。
図2において、横軸は第1の光パルス列と第2の光パルス列とが合波された光の、集光焦点の位置を示し、縦軸はその焦点位置において得られた、ロックインアンプからの出力信号の強さを示している。なお、第2の光パルス列の第2の光周波数の値から、第1の光パルス列の第1の光周波数の値を差し引いた周波数差(ωAS−ωS)であるラマンシフト(Raman shift)量は、3247cm−1とした。
図2中の左側では、試料としてガラスのみをおいた場合の出力信号の推移を示していて、図2から明らかなように、空気中に焦点が位置している場合と、ガラス内に焦点が位置している場合での出力信号の差は生じていない。これに対し、試料としてガラスで水を挟んだものを用いた場合の出力信号を示す、図2の右側では、焦点がガラス部分に有る場合に比べて、焦点に水が存在している部分にあるときの出力信号電圧が大きくなっていることが分かる。これは、ガラス内では非共鳴信号が生じていないが、水のOH振動モードによる誘導ラマン散乱効果が検出できていることを示す。
ここで、誘導ラマン散乱顕微鏡による、誘導ラマン散乱効果により得られる分子振動イメージの例を図3に示す。
図3(a)は、周波数差(ωAS−ωS)であるラマンシフト(Raman shift)量を3023cm−1とした場合の分子振動イメージであり、ポリスチレンのみが白く光っており、周囲の水からの信号は抑制された高コントラストな像が得られる。このときのスキャンサイズは、縦10μm、横10μmである。
図3(b)は、図3(a)と同じ試料において、周波数差(ωAS−ωS)であるラマンシフト(Raman shift)量を3228cm−1とした場合の分子振動イメージであり、この場合には、ポリスチレンビーズの信号レベルが下がるとともに、OH振動に由来する水からの信号が若干現れて全体のコントラストが低下する。
図3(c)は、植物細胞(BY2)のCH振動モードを可視化したものである。図3(c)は、縦40μm、横40μmの範囲をスキャンした二次元の分子振動イメージであり、ラマンシフト(Raman shift)量は3023cm−1とした。細胞の周囲の水からの信号が抑制され、核や細胞壁が明確に可視化されていることが理解できる。
図3(d)は、図3(c)で示した二次元の分子振動イメージを、光軸方向に4μm間隔で40μmにわたって取得した結果から得られた三次元の分子振動イメージである。本実施形態の誘導ラマン散乱顕微鏡によれば、このように照射されるビームの焦点の位置を光軸方向にシフトさせて複数の二次元の分子振動イメージを得ることで、測定試料の分子構造の三次元の分子振動イメージを得ることができる。
また、本実施形態の誘導ラマン散乱顕微鏡では、分子状態をリアルタイムで分子振動イメージとして検出することができるので、生体の細胞の変化する状況を動画像として把握することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態にかかる誘導ラマン散乱(SRS)効果を用いた光学顕微鏡として、2つの光パルス列のタイミングを高精度に整合させて、高いS/N比で分子振動イメージを取得することができる光学顕微鏡の構成例について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態にかかる光学顕微鏡200の概略構成を示すブロック図である。
図4に示すように、本実施形態の誘導ラマン散乱効果を用いた光学顕微鏡200は、第1の光パルス列を生成する第1の光源としてのファイバーレーザー101と、第2の光パルス列を生成する第2の光源としてのチタンサファイヤレーザー102を備えている。また、本実施形態の光学顕微鏡200は、第1の光パルス列のレーザー光と、第2の光パルス列のレーザー光のタイミング差を検出するタイミング差検出光学系を有している点が、上記図1を用いて説明した第1の実施形態にかかる光学顕微鏡100とは異なっている。
第2の光源であるチタンサファイヤレーザー102から射出された第2の光パルス列である超短光パルスレーザービームは、ハーフミラー104によって、測定対象の試料123の分子振動イメージを得るための測定光131と、第1の光源から射出される第1の光パルス列である超短光パルスレーザービームとのタイミング差を検出するためのタイミング差検出光132に分離される。なお、タイミング差を検出する場合に、タイミング差検出光学系に導入されるタイミング差検出光132と、試料123の分子振動イメージを得るために試料に照射される測定光131との時間差を調整するために、測定光131の光路長を調整することができるよう、ミラー105とミラー106の位置が図中矢印Pで示す方向に調整可能となっている。
第1の光源であるファイバーレーザー101から射出された第1の光パルス列である超短光パルスレーザービームも、第2の光パルス列と同様に、ハーフミラー111によって、試料123の分子振動イメージを得るための測定光141と、第2の光源から射出される第2の光パルス列とのタイミング差を検出するためのタイミング差検出光142に分離される。
ファイバーレーザー101から射出された第1の光パルス列のタイミング差検出光142と、チタンサファイヤレーザー102から射出された第2の光パルス列のタイミング差検出光132とは、ダイクロイックミラー115で同軸に合波されて、レンズ117を経てフォトダイオード118に集光照射される。このフォトダイオード118としては、合波されたレーザービームの二光子吸収を検出するために、例えば近赤外領域での光吸収が無く、可視域のみに吸収を有し、また、高周波特性に優れたGaAsPフォトダイオードを用いることが好ましい。なお、本実施形態では、第1の光パルス列のタイミング差検出光142と、第2の光パルス列のタイミング差検出光132とを集光照射するレンズ117と、照射された2つのレーザー光によって生じる二光子吸収電流を検出するフォトダイオード118とが、タイミング差検出光学系を形成する。
一方、ファイバーレーザー101から射出された第1の光パルス列の測定光141と、チタンサファイヤレーザー102から射出された第2の光パルス列の測定光131も、ハーフミラー115で同軸に合波されて、ビーム拡張器121でビーム径が拡大された後、第1の対物レンズ122の瞳全体に入射され、同対物レンズにより集光されて測定対象の試料123に照射される。試料123からの散乱光は、第2の対物レンズ124とショートパスフィルタ125を経て、受光素子であるフォトダイオード126で電気信号に変換され、フォトダイオード126の出力信号をロックインアンプ127で同期検波される。
本実施形態の光学顕微鏡200では、ファイバーレーザー101で生成される第1の光パルス列のレーザー光が、ストークス光(ωS)であり、中心波長が1030nm程度の適宜の値、パルス幅が300fsで、繰り返し周波数が38MHzに設定されている。また、チタンサファイヤレーザー102で生成される第2の光パルス列のレーザー光が反ストークス光(ωAS)であり、中心波長が780nm程度の適宜の値、パルス幅が300fsで、繰り返し周波数が76MHzである。第1の実施形態の光学顕微鏡と同様、第1の光パルス列および第2の光パルス列の波長は、その光周波数差が測定対象試料の分子振動周波数と一致するように、測定対象試料に合わせて適宜調整される。
本実施形態の光学顕微鏡200において、チタンサファイヤレーザーを繰り返し周波数の高い第2の光パルス列のレーザー光を生成する第2の光源としたのは、チタンサファイヤレーザーは、繰り返し周波数を低く設定するのがファイバーレーザーと比較して困難であるためである。したがって、このことは本発明における必須の要件ではなく、設定される繰り返し周波数に応じて適宜、第1の光源としてチタンサファイヤレーザーを用い、第2の光源としてファイバーレーザーを用いることができる。また、第1の光源、第2の光源の双方を、ファイバーレーザーとすることもできる。
なお、第1の光源で生成される第1の光パルス列の繰り返し周波数は、第2の光源で生成される第2の光パルス列の繰り返し周波数の二分の一でなく、整数分の一であればよい点、2つの光パルス列のうち、いずれをストークス光および反ストークス光として用いてもよいことは、上記第1の実施形態の誘導ラマン散乱顕微鏡100の場合と同様である。
さらに、光学部材の仕様なども第1の実施形態の誘導ラマン散乱顕微鏡100と同様でよく、例えば、第1の対物レンズ122および第2の対物レンズ124として、倍率×40、開口数(NA)0.6のものを用いることができる。また、倍率×100、NA1.4の対物レンズを用いればより高い空間分解能を得ることができる。
図4において、103,105,106,107,108,109,110,112,113,114,116,120はいずれもミラーを示している。これらミラーを用いた第1および第2の超短光パルスレーザービーム光の具体的な経路が、適宜変更可能であることは言うまでもない。
図5は、本実施形態の光学顕微鏡200で用いられるファイバーレーザー101の具体的な構成例を示すブロック図である。
図5に示すように、本実施形態の光学顕微鏡200で第1の光源として用いられるファイバーレーザー101は、イッテルビウム添加ファイバー151,複数の波長板152、偏光ビームスプリッター153、分散補償器154、可変遅延線155、位相変調器156、アイソレーター157から構成されている。このファイバーレーザー101の構成は、一般的なモード同期ファイバーレーザーの共振器内に光路長変換手段である可変遅延線155および位相変調器156を挿入したものである。
イッテルビウム添加ファイバー151は、波長1.03μmの光パルスを増幅する。複数個の波長板152は、イッテルビウム添加ファイバー151の入射光および射出光の偏光を調節する。偏光ビームスプリッター153は、ファイバーレーザー101内部の光パルスの一部を取り出して射出光158とするとともに、イッテルビウム添加ファイバー151内の非線形偏波回転効果によるモード同期動作を行う。分散補償器154は、ファイバーレーザー101内の群速度分散を調節するために挿入される。
可変遅延線155と位相変調器156とは、レーザー共振器の光路長を調節し、繰り返し周波数を制御するために挿入されている。可変遅延線155は、光路長を機械的に調節することができる。また、位相変調器156は、電気光学結晶を用いた導波路型デバイスであり、印加される電圧によって結晶の屈折率を変化させることで光路長を調節できる。位相変調器156は、調節可能な最大の光路長が数ミクロンと小さいものの、機械的な動作が不要なため、光路長をMHz以上の高速性をもって制御することができる。アイソレーター157は、共振器内の光パルスの進行方向を規定する。
このような構成のファイバーレーザー101内において、モード同期動作により光パルスが生成され、周回することによって、レーザー共振器内の光路長に依存した時間間隔で光パルスを出力させ、繰り返し周波数の制御された光パルス列を得ることができる。
図4に示した、同軸に合波された第1の光パルス列のタイミング差検出光142と第2の光パルス列のタイミング差検出光132とが入射されたフォトダイオード118の二光子吸収電流としての光電流は、例えば300Ωの負荷抵抗で電圧値として検出することで、1MHz以上の帯域をもって検出することができる。このとき、検出された信号に含まれる熱雑音等の揺らぎの影響を抑制するために、十分大きな二光子吸収電流を得る必要がある。このためには、2つのパルス列を同軸で合波し、開口数の大きなレンズ、例えば開口数0.55、倍率50倍のレンズでフォトダイオードに絞り込むことが有効である。
この検出されたタイミング差を示す電圧信号を、ループフィルター119を介して、ファイバーレーザー101の共振器内の可変遅延線155と位相変調器156に導入した。そして、上記電圧信号が一定となるよう、可変遅延線155のループ帯域を1Hz程度、位相変調器156のループ帯域を140kHz程度として制御した。
なお、図5で示した本実施形態の光学顕微鏡200で用いられるファイバーレーザーでは、光路長変調手段として可変遅延線155と位相変調器156との2つを用いたが、本発明においてこのことは必須の事項ではなく、ファイバーストレッチャーなど、ファイバーレーザー共振器内の光路長を変化させることができる部材であれば、これを光路長変調手段として用いることを排除するものではない。但し、ループ帯域を100kHz以上に設定できるよう、高速な光路長制御手段を用いることが必要となる。例えば、光路長変調手段としてピエゾ素子のみを用いた場合、ループ帯域を1kHz以上に高めることは困難である。ファイバーレーザーが出力する光パルス列は元来大きなジッターを有しているため、ピエゾ素子のように低速な素子を用いてタイミング制御する場合は、2ピコ秒程度の大きなジッターが残留する。
図6は、本実施形態の光学顕微鏡200における、第1および第2のレーザービームパルスの同期ずれを検出するためのタイミング差検出光学系に用いられたフォトダイオード118からの出力信号の状態を示している。
図6において、縦軸が二光子吸収によるフォトダイオード118での出力電圧値を示し、横軸が2つのレーザービームパルスのタイミングずれ量を示したものである。2つのパルスのタイミングが一致したときに最も高い電圧が得られ、また、タイミングがパルス時間幅以上ずれると、電圧が低下する様子が見て取れる。このことから、二光子吸収を用いて高精度なタイミング検出が可能になる。
本実施形態の光学顕微鏡200では、2色のレーザービームパルスのタイミングのずれを、そのピーク位置である図6に示すDelay=0で検出するのではなく、約7V/psの傾きを有する図6中「A」で示した部分で検出することにより、フォトダイオード118からの出力電圧値の変化から、直ちに、ファイバーレーザー101で生成される第1の光パルス列のレーザービームと第2の光パルス列のレーザービームとのタイミング差を検出し、ファイバーレーザーの繰り返し周波数制御に使用することができる。
このようにすることで、本実施形態の光学顕微鏡200では、超短光パルスレーザービームのジッターの影響を回避し、高い精度で2色の超短光パルスレーザービームのタイミングを同期させることができる。
また、本実施形態の光学顕微鏡では、二光子吸収電流と繰り返し周波数制御の帯域を広くとり、ループ帯域を広くすることで、2つの光パルス列の同期が極めて容易となっている。このことは以下のように理解できる。
二光子吸収電流変化は、2つの光パルス列のタイミングがパルス時間ΔT程度まで近接した場合しか生じない。ここで、光パルス列が同期していない、すなわち、第1の光パルス列の繰り返し周波数fの2倍と、第2の光パルス列の繰り返し周波数2fの間にΔfの差がある場合について考える。実際、未制御時のレーザーの繰り返し周波数は1Hzのオーダーの揺らぎを有しており、このことはΔfが時間とともに約1Hz以内で変化すると考えることができる。
このとき、1/Δfの時間間隔で2つのパルス列のタイミングが揃い、それに伴って二光子吸収電流が変化する。しかし、その二光子吸収電流変化の生じる時間は、2つのパルスのタイミングが重なる時間、すなわちΔT/TΔfである。同期を実現するためには、この時間内にタイミング制御を行う必要がある。
ここで、タイミング制御周波数帯域をBとすると、タイミング同期に要する時間は約1/Bで表されるから、不等式 1/B<ΔT/TΔf、すなわちΔf<BΔT/Tが成立する必要がある。ここで、ΔTを300fs、Tを12ns、Bを140kHzとすると、Δf<3.5Hzを得る。従って、このようにタイミング制御周波数帯域Bを大きくすることで、1Hzオーダーの揺らぎがあったとしても、二光子吸収による同期が達成できる。一方、Bが小さい場合には、Δfに対する要求条件は厳しくなり、未制御時のレーザーを同期させることは事実上不可能である。このような場合、他の同期手法を併用して低精度な同期を行った上で二光子吸収による同期を行う必要があり、系が複雑化する。
図7は、本実施形態にかかる光学顕微鏡200での2色の超短光パルスレーザービームの同期状態を示す図である。
図7に示すように、本実施形態の光学顕微鏡200では、2色の超短光パルスレーザービームの偏差として得られるタイミングジッターを、約6.0fsにすることができる。一般的に、SRS顕微鏡で分子振動イメージを観察する場合には、タイミングジッターを照射光パルスの時間幅の10分の1以下とすることが好ましいと考えられるのに対し、本実施形態の光学顕微鏡200では、タイミングジッターの大きさは、照射光パルスの時間幅の100分の1程度が実現できている。
以上説明したように、本実施形態の光学顕微鏡200では、高速光検出器でタイミング差を検出する場合のように測定系を複雑化させることなく、簡素な構成で2光子吸収を検出するとともに、ファイバーレーザーの繰り返し周波数を位相変調器で高速制御することにより、タイミングジッターの影響を抑えた高感度でかつ高いS/N比での分子振動イメージを得ることができる。
なお、上記本発明の第2の実施形態では、タイミング差検出光学系で、第1の光パルス列のレーザー光と第2の光パルス列のレーザー光とによって生じる二光子吸収電流を検出する場合について説明したが、これは、本発明の光学顕微鏡のタイミング差検出光学系を限定するものではない。例えば、タイミング差検出光学系として、和周波発生を用いて2色の超短光パルスレーザービームのタイミング差を検出することもできる。
以上のように、本発明の光学顕微鏡によれば、一方の光パルス列の繰り返し周波数をもう一方の整数分の一とした2色(光周波数:ωAS,ωS)の光パルス列を試料に集光照射した時に、2色の周波数差が、集光点の試料の分子振動周波数と一致したときに生じる誘導ラマン散乱現象によって、繰り返し周波数の高い励起光パルスの強度変調成分を検出する。この、誘導ラマン散乱は電子の非線形性の影響を受けないため、本顕微鏡で得られる出力信号には、バックグラウンド信号が存在せず、高コントラストな分子振動イメージを得ることができる。
そして、本顕微鏡では、2色の光パルス列の繰り返し周波数を、一方が他方の整数分の一とすることによって、従来の誘導ラマン散乱顕微鏡で用いられていたような、一方の光パルス列に強度変調を与える音響光学素子などが不要となり、光学顕微鏡の系を簡易化でき、かつ、レーザーの強度雑音低減や動画でのイメージ取得により有利な、照射ビームの高周波変調が可能となる。この結果、簡易な系でありながら、信号対雑音の比率であるS/N比の高い、かつ、高品質の動画像を得ることができる光学顕微鏡を実現することができる。
ここで、誘導ラマン散乱顕微鏡において、ロックイン周波数と、得られる分子振動イメージとの関係について説明する。
図8、および、図9は、いずれも誘導ラマン散乱顕微鏡により得られた、試料の分子振動イメージである。
図8は、試料として水中のポリスチレンビーズを用いたものである。図8(a)が、ロックイン周波数が2MHzの場合の分子振動イメージであり、図8(b)が、ロックイン周波数が10MHzの場合の分子振動イメージである。なお、図8(a)の分子振動イメージを得たときの光パワーは5mW、分子振動イメージを得るために要した積算時間は50msであった。また、図8(b)の分子振動イメージを得たときの光パワーは0.6mW、分子振動イメージを得るために要した積算時間は2msであった。
ロックイン周波数の低い図8(a)の分子振動イメージは、ロックイン周波数の高い図8(b)の分子振動イメージよりも明らかに解像度が低く、得られたイメージ画像の周囲がぼやけてビーズの直径が大きく見えてしまっている。また、ロックイン周波数が高くなると、分子振動イメージを得るために必要なビーム照射パワーが小さくなり、ビーム照射系に対する負担が少なくなる。さらに、分子振動イメージを得るために要する時間も短くなり、動画像の取得にもより適していることがわかる。
図9は、試料として植物細胞(BY2)を用いたものである。図9(a)が、ロックイン周波数が2MHzの場合の分子振動イメージであり、図9(b)が、ロックイン周波数が10MHzの場合の分子振動イメージである。図9(a)の分子振動イメージを得たときの光パワーは4.5mW、分子振動イメージを得るために要した積算時間は100ms、図9(b)の分子振動イメージを得たときの光パワーは1mW、分子振動イメージを得るために要した積算時間は3msであった。
図8と同様に、図9(a)および図9(b)の分子振動イメージからも、ロックイン周波数が高いほど得られる分子振動イメージの信号対雑音比が高く、また、画像のコントラストも良好であり、植物細胞の詳細な様子が把握できることが分かる。また、図9(a)および図9(b)を得るためのデータから、ロックイン周波数が高いほど、分子振動イメージを得るための光パワーや積算時間が少なくてすむことが分かる。
以上より、本実施形態として示した誘導ラマン散乱顕微鏡において、一定以上の解像度の分子振動イメージを得るためには、ロックイン周波数が10MHz以上あることが好ましいことが分かる。ロックイン周波数を10MHzとするためには、繰り返し周波数の低い光パルス列の繰り返し周波数を10MHz、繰り返し周波数の高い光パルス列の繰り返し周波数を20MHzとすればよい。また、ロックイン周波数を10MHz以上とすると、分子振動イメージを得るために必要な光パワーが1mW程度で済み、この程度の光パワーであれば、ビーム照射系に大きな負担がかからない。さらに、ロックイン周波数を10MHz以上とすると、分子振動イメージを得るための積算時間が数ms程度となることから、動画像の取得を考慮する意味でも好ましい条件といえる。
次に、本実施形態として示した誘導ラマン散乱顕微鏡で得られたロックイン信号に含まれるノイズレベルと、イメージ受光部としてのフォトダイオードで得られる出力電流の大きさとの関係について、図10を用いて説明する。
図10は、上記第2の実施形態として示した光学顕微鏡200における、ロックイン信号中のノイズ成分を測定した結果を示すものである。図10中の「黒丸」が、測定結果データのプロットである。
図4に示した光学顕微鏡200において、チタンサファイヤレーザー102とファイバーレーザー101を同期させた状態で、チタンサファイヤレーザー光のみをフォトダイオード126に導入した。このとき、ファイバーレーザー光は、光フィルタ125により除去されている。フォトダイオード126の出力信号を、ロックインアンプ127に入力し、ファイバーレーザー101から得られる繰り返し周波数38MHzの電気信号を、ロックインアンプ127の参照信号として用いた。
そして、フォトダイオード126に入力する光の強度を変化させながら、ロックインアンプ127の出力雑音を測定した結果が、図10中のプロットである。なお、ロックインアンプ127の積分時間は0.1msとした。
図10において、横軸はフォトダイオード126から得られた光電流の直流成分を表している。また、フォトダイオード126の受光回路の雑音レベルを点線aで、光電流から計算されるフォトダイオード126のショット雑音を実線bで示した。
図10より、図10中左側に示す、光電流値が10−1mAよりも小さい領域では回路の雑音が支配的であるが、光電流が大きくなるにつれて雑音が増大することがわかる。ここで、チタンサファイヤレーザー光がショット雑音以上の過剰雑音を有する場合、ロックイン信号の雑音電圧は光電流に比例すること、また、チタンサファイヤレーザー光がショット雑音限界の低雑音性を有する場合、ロックイン信号の雑音電圧は光電流の平方根に比例することが知られている。
実験では、ロックイン信号の雑音電圧は、光電流値が0.2mAより大きい領域において、光電流の平方根に比例しており、ショット雑音限界の低雑音性が得られたことを示唆している。なお、この光電流値が0.2mAより大きい領域のプロットを結ぶ実線cと、ショット雑音の理論値を示す実線bとの間には、図中yとして示した約1.6dBの差があるが、これは光検出回路に含まれるバンドパスフィルタ回路の損失に起因すると推察される。
また、チタンサファイヤレーザーと光パラメトリック発振器により繰り返し周波数76MHzの光パルスを得て、後者に対して光変調器を用いて10.7MHzの光変調を行い、ロックイン検出を行ったシステムにおけるロックイン信号の雑音を、今回の実験条件に換算した結果を図中×(B)として示した。
図10より、従来の雑音レベルBと比較して、ロックイン周波数を38MHzと高周波化したことにより、雑音レベルを図中xとして示すように12dB以上抑制することができた。この結果からも、ロックイン周波数の高周波化による低雑音化の有効性が確認できた。図10の実験データから明らかなように、ロックイン周波数を38MHzとすることで、ロックイン信号のノイズレベルを受光素子であるフォトダイオード126のショット雑音レベルにまで低減できることから、ロックイン周波数を38MHz以上とすることで、極めてノイズレベルの小さな分子振動イメージが取得できることが分かる。
なお、実際に取得された分子振動イメージと、ノイズレベルについての実験データから確認できたように、ロックイン周波数が高くなるほど、より短時間でより鮮明な分子振動イメージを取得することができることが理解できる。このことは、特に、動画での分子振動イメージである動画像の取得にとって有利なものとなるが、フォトダイオードで分子振動イメージを取得するにはサンプルに照射される光パワーの平均レベルからの限界があり、ロックイン周波数を高くしすぎると投入された光エネルギーによるサンプルの損傷を引き起こす可能性がある。このため、ロックイン周波数の設定に当たっては、サンプルの損傷を起こさない限度において、受光回路系の能力を勘案した上で、適宜上限値を設定することが好ましい。
なお、図10のデータを得るに当たっては、受光回路の雑音レベル(図10における点線a)を低減するために、フォトダイオード126の受光回路として、図11に示すものを用いた。
図11に示すように、雑音レベルを低減する受光回路としては、フォトダイオードPDの寄生容量による周波数特性の低下を抑えるために、フォトダイオードPDと並列にインダクタンスLを接続し、かつ、インダクタンスLと並列に接続される負荷抵抗Rの値を、高周波回路に一般的に用いられる負荷抵抗値50Ωよりも高くした。
図10のデータを取得するための具体的な回路の一例としては、フォトダイオードPDの寄生容量が20pF、インダクタンスLが820nH、負荷抵抗Rの抵抗値を500Ωとした。本実施形態の光学顕微鏡200のように、誘導ラマン散乱顕微鏡に用いられるフォトダイオードPDは、受光面積が大きく寄生容量が大きくなりがちであるため、上記のような対策を受光回路に施すことで、雑音レベルを低減することができる。なお、このときの負荷抵抗Rの値としては、100Ω以上であることが好ましいと考えられる。したがって、フォトダイオードPDの寄生容量の数値と用いるインダクタンスLの値とを勘案しながら、負荷抵抗の値を100オーム以上の適宜な値とすることが好ましい。
また、フォトダイオードPDの受光回路として、図11に示したものを用いることによるフォトダイオードPDの周波数特性の低下を抑える効果は、試料に照射される光パルス列の生成経緯には関係のないものである。このため、図11に示したフォトダイオードPDの受光回路は、上記本発明の実施形態として示した、第1の繰り返し周波数の光パルス列と第2の繰り返し周波数の光パルス列とを異なる光源で生成する光学顕微鏡のみならず、非特許文献1および非特許文献2に示された、一方の光パルス列を変調して他方の光パルス列を生成する従来の光学顕微鏡にも用いることができ、良好な効果を奏することができる。
上記検討したように、本実施形態の光学顕微鏡においてより高い解像度の分子振動イメージを得る上では、ロックイン周波数を高くすることが極めて有利であることが理解できる。本発明の光学顕微鏡によれば、2色の光パルス列の繰り返し周波数を、一方が他方の整数分の一の繰り返し周波数を持つ2つの光源により生成することで、ロックイン周波数の高周波化に容易に対応することができる。このため、本発明の光学顕微鏡は、音響光学素子をはじめとする変調器が不可欠な、従来の誘導ラマン散乱顕微鏡と比較して、光学顕微鏡の系を簡易化でき、かつ、レーザーの強度雑音が低減できてS/N比の高い分子振動イメージを得ることができ、さらに、動画像の取得がより有利となるという、実用面での優れた特徴を有している。
以上、上記実施の形態では、本発明の光学顕微鏡として、誘導ラマン散乱を検出するものについて説明したが、本発明の構成を用いて検出できるのは、上記の誘導ラマン散乱に限られたものではない。例えば、他にも、2色の光パルスの和周波数であるωAS+ωSが試料の2光子吸収周波数と一致するように光パルスの波長を選択することにより、高コントラストな2光子吸収像を得ることができる。
また、上記実施形態では、本発明の適用対象を光学顕微鏡に限定して説明してきた。しかし、第2の光パルス列の繰り返し周波数の整数分の1の繰り返し周波数を有する第1の光パルス列を生成するに当たり、同じ繰り返し周波数の2つの光パルス列のうちの一方を変調して繰り返し周波数を整数分の1とする方法に比べ、一方の生成する光パルス列の繰り返し周波数が、他方の生成する光パルス列の繰り返し周波数の整数分の1である2つの光源を用いる本願発明の方法によれば、より高い周波数でのロックイン検出を簡易な構成で行うことができる。
したがって、本発明の技術思想は、光学顕微鏡への適用に留まるものではなく、高い周波数でのロックイン検出を行うことで、測定結果のノイズ成分が低減され、S/N比の高い測定結果が得られる点で、各種の光学計測に適用して良好な結果を得ることができるものである。なお、このような、本発明の技術思想を適用すべき光学計測として、たとえばポンププローブ計測などが想定できる。