JP2016029340A - 計測装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】広帯域かつ高分解能のラマンスペクトル計測を高速に実施可能な低コストの計測装置を提供すること。【解決手段】第1の光を生成する第1の光生成手段1と、第1の光とは異なる光周波数を有する第2の光を生成する第2の光生成手段2と、第1の光を光周波数に応じて異なる方向に分離する光分散素子12と、第1の光の光分散素子への入射角度を変更する入射角度変更手段11と、光分散素子から出射する第1の光の一部の光周波数帯域を抽出する光抽出手段15と、第1の光および第2の光に対し光周波数に応じた時間遅延を与えるチャープ付与手段19,26と、第1の光と第2の光を合成して試料に照射する照射光学系22,28〜32と、を有し、入射角度変更手段は、光分散素子への入射角度を第1の状態から第2の状態に変化させることで、第1の光生成手段から試料までの光学距離を時間遅延の変化量に応じて変化させる。【選択図】 図1
Description
本発明は、誘導ラマン散乱を利用して分子振動イメージングを行う計測装置に関する。
特許文献1には、互いに光周波数が異なる2つのパルス光(ポンプ光およびストークス光)を試料に照射する誘導ラマン散乱計測装置について開示がある。特許文献1では、2つのパルス光の光周波数の差が試料の分子振動周波数と一致すると誘導ラマン散乱という現象が生じることを利用して、試料の分子の振動情報を反映した分子振動イメージングを行っている。また、ストークス光の光周波数をスキャンさせるため、光分散素子にストークス光が入射する入射角を変化させる構成が開示されている。
非特許文献1には、Spectral Focusing法を使って2つのパルス光に群速度分散によるパルス光内での時間遅延を与え、両パルス光のチャープ(時間に対する光周波数の変化)を平行にすることが開示されている。また、平行になる様にチャープさせた2つのパルス光の相対的な時間差を調整するとともに、パルス光の一方の光周波数の変換を行うことによって、パルス光間の差周波数を可変にすることが開示されている。
Jue Su, Ruxin Xie, Carey K. Johnson, Rongqing Hui, "Single−fiber−laser−based wavelength tunable excitation for coherent Raman spectroscopy" J. Opt. Soc. Am. B Vol. 30 No. 6 pp. 1671−1682 (2013).
短時間で正確に試料に含まれる分子を同定・区別するためには、広帯域でスペクトル分解能が良く低ノイズのラマンスペクトルを高速に取得する必要がある。
特許文献1では、スペクトル幅の狭いポンプ光と、元々スペクトル幅の広いパルス光から光周波数可変バンドパスフィルタによって狭帯域化したストークス光を試料に照射することで、ラマンスペクトルを高分解能で高速に取得している。高速で低ノイズの誘導ラマン散乱計測をするためには十分強い光パワーが必要であるが、狭帯域化する際にストークス光は著しく強度が低下するので、特許文献1では、試料に照射する前にファイバアンプにより増幅をしている。しかしながら、一般にファイバアンプで増幅可能な光周波数帯域は限られているため、ストークス光の光周波数掃引範囲も制限される。この状態で広帯域のラマンスペクトルを取得するために、特許文献1ではポンプ光の発生手段を多段化し異なる光周波数のポンプ光を切り替えてサンプルに照射しており、装置が複雑で高コストになるという問題があった。
非特許文献1では、可変光減衰器(Variable Optical Attenuator)とフォトニッククリスタルファイバを用いて、ストークス光の光周波数を可変にしている。また、同時に遅延ステージを動かすことによって時間分布を可変にし、光周波数の変更に伴い生じたポンプ光とストークス光のパルスのタイミングのずれを解消している。この方法の場合、レーザパルス光の光周波数帯域を必ずしも狭帯域に抽出する必要性は無いため、ファイバアンプを用いる事が出来ない光周波数帯域のパルス光源を用いても誘導ラマン散乱計測を行うのに十分なパワーを得る事が可能である。しかし、この場合は、可変の遅延ステージが必要で、これを光周波数掃引のための可変光減衰器と連動して動かす必要があるため、構成および制御が複雑になり光周波数掃引の高速化と低コスト化に課題があった。
そこで、本発明の目的は、広帯域かつ高分解能のラマンスペクトル計測を高速に実施可能な低コストの計測装置を提供することである。
本発明の一側面としての計測装置は、第1の光を生成する第1の光生成手段と、前記第1の光とは異なる光周波数を有する第2の光を生成する第2の光生成手段と、前記第1の光を光周波数に応じて異なる方向に分離する光分散素子と、前記第1の光の前記光分散素子への入射角度を変更する入射角度変更手段と、前記光分散素子から出射する前記第1の光の一部の光周波数帯域を抽出する光抽出手段と、前記第1の光および前記第2の光に対し光周波数に応じた時間遅延を与えるチャープ付与手段と、前記第1の光と前記第2の光を合成して試料に照射する照射光学系と、を有し、前記入射角度変更手段は、前記光分散素子への入射角度を第1の状態から第2の状態に変化させることで、前記第1の光生成手段から前記試料までの光学距離を前記時間遅延の変化量に応じて変化させることを特徴とする。
本発明によれば、広帯域かつ高分解能のラマンスペクトル計測を高速に実施可能な低コストの計測装置を提供することができる。
以下に本発明の実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
まず、図6を用いて、従来のラマンスペクトル計測の問題点について説明する。なお、以下ではパルス光の光電場の角周波数を光周波数と呼び、ωで表す。
ラマンスペクトルは、試料に含まれる分子振動に起因し分子に固有であるため、これを測定する事によって、試料に含まれる分子の同定や区別を行う事ができる。従来、測定時間の短縮を目的として、非線形光学過程を利用したラマン散乱顕微鏡が提案されている。例えば、CARS(coherent anti−stokes Raman scattering、コヒーレントアンチストークスラマン散乱)顕微鏡やSRS(stimulated Raman scattering、誘導ラマン散乱)顕微鏡がある。これらの顕微鏡では光周波数の異なる2つのパルス光を顕微鏡下で試料に照射する。2つのパルス光のうち光周波数が高い方をポンプ光、低い方をストークス光と呼ぶ。SRS顕微鏡では、ポンプ光とストークス光の光周波数の差周波数が試料の分子振動数と一致した際にストークス光のエネルギーが増加し、ポンプ光のエネルギーが減少する。ここで、2つのパルス光の差周波数を掃引すると、分子振動周波数に応じてパルス光の強度(以後、SRS強度と呼ぶ)が変化する。このSRS強度変化を測定するとラマンスペクトルとして観測する事ができる。
図6(a)から(d)は、ポンプ光とストークス光の時間tおよび光周波数ωにおける分布の模式図を示している。図6(a)は特許文献1における分布を示している。光周波数ωpのポンプ光と光周波数ωsのストークス光の光周波数幅は狭く無視でき、SRSは差周波数であるΔωa(=ωp−ωs)によって生じる。高速に光周波数掃引可能な狭帯域な光周波数可変バンドパスフィルタによって狭帯域化したストークス光を試料に照射するのでラマンスペクトルを高分解能で高速に取得できるが、上述したように装置が複雑で高コストになるという問題があった。
そこで、広帯域の光周波数可変バンドパスフィルタを使用することでポンプ光とストークス光を広帯域の状態で試料に照射する場合を図6(b)に示す。図6(b)に示すようにポンプ光およびストークス光の光周波数における幅は無視できないほど広く、ストークス光は光周波数ωs1からωs2まで、ポンプ光はωp1からωp2までの広い範囲で分布しているとする。この場合は、ストークス光とポンプ光を共に照射した際の差周波数がΔωb(=ωp2−ωs1)からΔωb’(=ωp1−ωs2)の幅を持つ事になる。このため、差周波数はΔωbからΔωb’の範囲にわたって生じることとなり、この状態でラマンスペクトルを測定すると、Δωb−Δωb’に応じてラマンスペクトルのスペクトル分解能が悪化する。
そこで、2つのパルス光に群速度分散によるパルス光内での時間遅延を与え、両パルス光のチャープ(時間に対する光周波数の変化)を平行にした場合を図6(c)に示す。図6(c)では図6(b)と同じくスペクトル幅の無視できないストークス光を示しており、ストークス光が光周波数ωs1からωs2の範囲に広がっている。ポンプ光も無視できないスペクトル幅を持っている。図6(b)と異なる点は、ストークス光およびポンプ光にチャープ(パルス光内での光周波数の時間変化)を与えている点である。ポンプ光の光強度は時間t=t1からt2に渡って分布させている。ポンプ光と平行にチャープさせたストークス光を破線で示す。ストークス光の光周波数分布のうち、光抽出手段によって抽出した範囲をωs1からωs3とし網掛で示す。このとき抽出したストークス光もポンプ光と同様に時間t1からt2の範囲に分布している。この状態では、ポンプ光とストークス光のチャープが平行になっていることから、ポンプ光とストークス光の差周波数Δωcは時間t1からt2の範囲で一定の値Δωcに保ち、差周波数の幅を図6(b)のΔωb−Δωb’よりも小さくすることができる。ここで、ラマンスペクトルを測定するために、ストークス光の抽出範囲を図6(c)の塗りつぶしで示す光周波数ωs4からωs5までに変更した場合について考える。図6(c)に示すように、ただ抽出する光周波数の範囲を変更しただけでは、ポンプ光とストークス光の差周波数は変更前と同じΔωcであり、差周波数を可変にすることができない。また、抽出したストークス光の分布が時間t=t1からt2の範囲からはみ出すため、ポンプ光とストークス光が時間的に同時に試料にあたる時間が短くなり、SRSが生じにくくなる。
次に、非特許文献1に記載されている誘導ラマン散乱顕微鏡によるポンプ光とストークス光の分布を図6(d)に示す。この方法では、可変光減衰器とフォトニッククリスタルファイバを用いてストークス光の光周波数を可変にしており、チャープさせたストークス光の周波数分布を図6(d)のω−scanで示される矢印の方向に移動させることが可能となっている。また、同時に遅延ステージを動かすことによって時間分布をt−scanで示される矢印の方向に可変にし、光周波数の変更に伴い生じたポンプ光とストークス光のパルスのタイミングのずれを解消している。このため、ストークス光の光周波数を変更しても、ストークス光の分布を常に時間t1からt2の範囲に調整する事が可能となり、ポンプ光とストークス光が時間的に同時に試料にあたる時間を長くとることが可能となる。
ただし、この場合は、上述したように、可変の遅延ステージが必要で、これを光周波数掃引のための可変光減衰器と連動して動かす必要があり、構成および制御が複雑になり光周波数掃引の高速化と低コスト化に課題があった。
次に、本発明の実施形態にかかる非線形ラマン散乱顕微鏡(計測装置)について、図1〜5を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施例にかかる非線形ラマン散乱顕微鏡を表す図である。図1において、1は第1のパルス光70を放射するパルスレーザであり、ストークス光光源として用いる。2は第2のパルス光80を放射するパルスレーザであり、ポンプ光光源として用いる。本実施例においてパルスレーザ1は、ストークス光(第1の光)を生成する第1の光生成手段として構成される。また、パルスレーザ2は、ポンプ光(第1の光とは異なる光周波数を有する第2の光)を生成する第2の光生成手段として構成される。
図1でストークス光である第1のパルス光70の繰り返し周波数は40MHzであり、ポンプ光である第2のパルス光80は繰り返し周波数80MHzで放出されており、繰り返し周波数の比率が1:2となっている。つまり、ポンプ光の繰り返し周波数は、ストークス光の繰り返し周波数よりも高い。また、パルスレーザ1は、共振器長を変化させることによって繰り返し周波数の微調整が可能である。ポンプ光とストークス光が試料に照射されるタイミングを同期させることによって、試料33にはポンプ光のみの照射とポンプ光とストークス光の両光の照射が交互に生じる。ポンプ光とストークス光が同時に試料に照射された場合のみSRSが生じるため、ポンプ光は40MHzの周波数で強度変調される。
本実施形態ではこのSRSによるポンプ光の強度変調を検出する事によってSRSを測定している。
3は第1のパルス光70を分波するビームスプリッタであり、パルス光4とパルス光5へと分け、パルス光4は試料33に照射するため、パルス光5はポンプ光との同期をとるために用いる。6、7、8、9はパルス光4を導くミラーである。
11はパルス光4の光分散素子12への入射角度を変更(調整)する入射角度変更手段である。入射角度変更手段11は、本実施形態ではガルバノミラーである。10は、光入射角度変更手段11を駆動するドライバである。12はパルス光4を分散させる光分散素子であり、本実施形態では反射型回折格子である。光分散素子12は、パルス光4を光周波数に応じて異なる方向に分離する作用を有する。ドライバ10で入射角度変更手段11を駆動する事によって、光分散素子12へ入射する角度が調整され、その結果光分散素子12から分散されながら反射するパルス光4の角度を調整する事が可能になる。
光分散素子12によって分散されたパルス光4は再度入射角度変更手段11とミラー9で反射する。13はD字型ミラーであり、ミラー8からのパルス光4はその反射面の近傍を通り抜けるが、ミラー9からのパルス光4は反射される。14はレンズであり、D字型ミラー13からのパルス光4を集光する。15はレンズ14によって集光された光の一部を抽出する光抽出手段であり、本実施形態ではスリットである。レンズ14の焦点にスリットの開口部が配置されており、前述のドライバ10によって光抽出手段15を透過するパルス光4の光周波数を選択する事が可能となる。換言すれば、光抽出手段15は、光分散素子12から出射するパルス光4の一部の光周波数帯域を抽出する。なお、入射角度変更手段11と光抽出手段15はリトロー配置で設置されている。
100は、ドライバ10、入射角度変更手段11、光分散素子12から成る分散光学ユニットであり、この分散光学ユニット100を拡大表示したのが図2である。
分散光学ユニット100に入射したパルス光4は、図2に示されるように入射角度変更手段11上の位置Aで反射している。位置Aは、パルス光4が入射角度変更手段11に入射する入射位置、または、パルス光4を光分散素子12に反射する反射位置である。
光分散素子12は位置Aから距離dだけ離れて設置されており、光分散素子12によってパルス光4が反射される位置はドライバ10で駆動される入射角度変更手段11の角度に応じて変化し、図2ではB1とB2で示されている。以下では、パルス光4が光分散素子12の位置B1に入射および反射している状態を第1の状態、位置B2に入射および反射している状態を第2の状態という。なお、パルス光4が光分散素子12に入射する入射角度がΘ1のときの状態を第1の状態、入射角度がΘ2のときの状態を第2の状態としてもよい。
図2に示すように、位置B1で反射される場合の光分散素子12への入射角度をΘ1、入射角度変更手段11の点Aから位置B1までの光学距離をl1とする。この際、リトロー配置で反射される光の光周波数はω1とする。同様に位置B2で反射される場合はそれぞれΘ2、l2、ω2とする。換言すれば、第1の状態におけるパルス光4の光分散素子12への入射角度をΘ1、第1の状態における入射角度変更手段11から光分散素子12への光学距離をl1、第1の状態における光抽出手段15が抽出する光周波数帯域内の任意の光周波数をω1、とする。また、第2の状態におけるパルス光4の光分散素子12への入射角度をΘ2、第2の状態における入射角度変更手段11から光分散素子12への光学距離をl2、第2の状態における光抽出手段15が抽出する光周波数帯域内の任意の光周波数をω2とする。
光分散素子12によって反射されたパルス光4は位置Aに戻っており、位置Aから位置B1を経由して再度位置Aに到達するまでの光学距離は2l1であり、同様に位置B2を経由した場合は2l2である。なお、光周波数の単位はラジアン/秒とする。
位置B1で反射した場合と位置B2で反射した場合の光学距離の差ΔLは、入射角度変更手段11の角度によって決まり、数式(1)で表される。
ただし、図2で示される第1の実施例の場合は、L1=2l1,L2=2l2である。
この光学距離の差によって、相対的に、数式(2)で表される遅延τaが生じる。つまり、入射角度変更手段11によって光分散素子12への入射角度が第1の状態から第2の状態に変化することで光学距離が変化することによって遅延(時間差)が生じる。
ただし、ここでcは光速である。
この光学距離の差が生じることによって、入射角度変更手段11を動かすと、光抽出手段15を通過する光周波数を選択する事が可能であると同時に、入射角度変更手段11の角度に応じて、数式(2)で表される遅延を与えることが可能である。本実施形態では光分散素子12として反射型回折格子を用いており、この場合の光周波数の選択は、数式(3)で表されるグレーティング方程式に従う。
ただし、Θiは回折格子への入射角、Θrは反射角、πは円周率、Nは(回折格子の)格子定数、mは回折次数、ωは光周波数とする。
また、パルス光4のチャープ率αを時間変化Δt/光周波数変化Δωと定義すると、パルス光4を抽出する際の光周波数の選択に応じて、光周波数とチャープ率αを乗じた遅延が生ずる。つまり、後述するチャープ付与手段19が付与する時間遅延は、入射角度変更手段11による第1の状態から第2の状態への変更に伴って、光抽出手段15により抽出されるパルス光4の一部の光周波数帯域が変化することにより変化する。この時間遅延の変化量(遅延τb)は、抽出するパルス光4の一部の光周波数帯域が変化する量と、パルス光4の光周波数変化Δωに対する時間変化Δtの割合で定義されるチャープ率αと、を乗じて得られる。抽出する光周波数がω1とω2である場合の遅延τbは、数式(4)で表される。
数式(2)と数式(4)で示される遅延が互いに相殺する条件τa=τbで光学系を配置すれば、入射角度変更手段11以外に別途パルス光の遅延を調節する部品を可動させる必要は無く、パッシブな光学系によってパルス光の遅延を相殺する。具体的には、次の数式(5)を満たせばよい。
ただし、数式(5)では、ω1<ω2、L1 > L2、α>0を仮定した。
また、図2の光学系は一例として示した場合であって、反射型回折格子やガルバノミラーとは異なる種類の光分散素子や、入射角度変更手段を用いた場合でも可能である。それらの場合については実施例で述べる。
図2での入射角度変更手段11の角度によって生じる遅延(光学距離の変化によって生じる遅延)は近似として分散光学ユニット100内の光学距離l1およびl2について示されたものである。数式(5)で表される遅延の相殺を最適に行うためには、パルスレーザ1から試料33までの光学距離を透過するのにかかる時間の変化分で計算する必要がある。つまり、第1の状態におけるパルスレーザ1から試料33までの光学距離をL1、第2の状態におけるパルスレーザ1から試料33までの光学距離をL2として上述した計算を行う必要がある。この理由は、D字型ミラー13の反射面の近傍をミラー8からのパルス光4は通り抜けるが、ミラー9からのパルス光4は反射される様に往路と復路の光路をわずかにずらすためである。このずらしのため、現実的には入射角度変更手段11での反射において1回目と2回目のパルス光の入射位置は、必ずしも一致しないからである。
図3は本発明によってパルス光の遅延を相殺する様子を示す模式図であり、ポンプ光とストークス光の時間(t)および光周波数(ω)における分布を示している。ポンプ光は時間t1からt2の間に分布しており、チャープしている。破線で示される領域はパルス光4の抽出前の分布であり、図3ではStokes1,Stokes2と示されている。Stokes1のうち斜線で示される光周波数ωs1からωs3の範囲で分布している部分を抽出する。本発明では、入射角度変更手段11が光分散素子12への入射角度を第1の状態から第2の状態に変化させることで、光抽出手段15が抽出する光周波数帯域を変化させ、後述するチャープ付与手段19が付与する時間遅延を変化させている。また、第1の状態および第2の状態において、入射角度変更手段11は、パルスレーザ1から試料33までの光学距離を後述するチャープ付与手段19が付与する時間遅延の変化量に応じて変化させている。入射角度変更手段11の角度を変更し、抽出前のパルス光4の分布が図3のStokes2と示される状態になると、光学距離の変化によって、Stokes2はStokes1に対して時間t方向にずれる。しかし、入射角度変更手段11の角度を変更したことによって抽出される光周波数がωs3からωs2の範囲になる様に変更されているため、依然抽出後のパルス光4の分布は斜線で示される時間t1からt2の間に収まっており、遅延が相殺されている。例えば、入射角度変更手段11は、第1の状態から第2の状態に変化する際に後述するチャープ付与手段19が付与する時間遅延の変化量が正である場合、パルスレーザ1から試料33までの光学距離を短くするように入射角度を調整している。換言すれば、第1の状態においてパルスレーザ1から試料33までの光学距離をパルス光4が通過するのにかかる時間を第1の時間とし、第2の状態におけるパルスレーザ1から試料33までの光学距離をパルス光4が通過するのにかかる時間を第2の時間とする。このとき、第1の時間に対する第2の時間との差が負となるように入射角度を調整している。
図1の16はレンズであり、レンズ16の焦点がスリット15の位置になる様に配置し、スリット15を透過したパルス光4を平行光線にする。17,18はパルス光4を導くミラーである。19はパルス光4のチャープを調整するチャープ付与手段であり、本実施形態では硝子ブロックである。チャープ付与手段19は、図3に示すように、パルス光4(ストークス光)に対し光周波数に応じた時間遅延を与える。
20、21はパルス光4を導くミラーである。22はポンプ光とストークス光を同軸に合波する光合波手段であり、本実施形態ではダイクロイックミラーである。
28はパルス光の反射角度を2軸方向に変化させるスキャナであり、本実施形態では2個のガルバノミラーで構成される。光合波手段22によって合波された光は、スキャナ28で反射し、レンズ29、レンズ30を透過した後ミラー31によって対物レンズ32へと導かれ、試料33へ照射される。本実施例では、光合波手段22、スキャナ28、レンズ29,30、ミラー31、対物レンズ32によって、ストークス光(第1の光)とポンプ光(第2の光)を合成して試料33に照射する照射光学系が構成される。
試料33を透過したパルス光は対物レンズ34によって平行光線となり、光学フィルタ35へと導かれる。
光学フィルタ35を透過したパルス光4はレンズ36によって集光され、その焦点に置かれた光検出器37へ導かれる。光検出器37(検出手段)は、ストークス光(第1の光)とポンプ光(第2の光)が試料33に照射されることで生じた誘導ラマン散乱を検出する。38はプリアンプであり、光検出器37の電気信号を処理する。39はロックインアンプであり、プリアンプ38を通った電気信号からSRSによる信号を取り出す。
40は計算機であり、ロックインアンプ39によって取り出された信号の強度を記録する。このSRSの強度をスキャナ28の角度に応じて並べて表示し、SRS強度の画像を得る。
23は第2のパルス光80を分波するビームスプリッタであり、パルス光24とパルス光25に分ける。パルス光24は試料に照射するため、パルス光25はストークス光との同期をとるために用いる。26はパルス光24のチャープを調整するチャープ付与手段であり、本実施形態では硝子ブロックである。チャープ付与手段26は、図3に示すように、パルス光24(ポンプ光)に対し光周波数に応じた時間遅延を与える。27はパルス光24を導くミラーであり、光合波手段22を用いてパルス光4と合波する。
ビームスプリッタ3により分けられたパルス光5は、ミラー41によって導かれ、ダイクロイックミラー42でパルス光25と合波される。43は偏光板であり、パルス光5とパルス光25の偏光をそろえる。44はレンズであり、その焦点に光検出器45を置く。光検出器45ではパルス光5とパルス光25の両方の光スポットが重ねて照射されており、この光検出器45はパルスレーザ1とパルスレーザ2のパルス光のタイミングの遅延に応じて電気信号を出力する。
光検出器45にパルス光5とパルス光25が同時に照射されると、パルス光5に含まれるフォトンと、パルス光25に含まれるフォトンとによって二光子吸収が生じる。パルス光5とパルス光25の偏光は偏光板43によってそろえられており、この二光子吸収は効率よく生じる。
SRSが効率よく生じるために、パルス光5とパルス光25の繰り返し周波数の比率は1:2に調整された状態を維持する必要がある。この状態では、両パルス光の光検出器45への到達タイミングを一致させることができ、その場合、光検出器45の電気信号が二光子吸収によって増加する。46はフィードバック回路であり、光検出器45の出力の電気信号をフィードバック回路46の入力として用いる。47はパルスレーザ1内に設置した共振器長調整手段であり、フィードバック回路46の出力に応じて駆動する。共振器長調整手段47は本実施形態ではピエゾアクチュエータであり、共振器長を変化させることによって、パルスレーザ1の繰り返し周波数を調整できる。光検出器45の出力の電気信号の増減をフィードバック回路46と共振器長調整手段47で一定に維持する事によって、SRSが効率よく生じる様に、パルス光5とパルス光25の繰り返し周波数の比率は1:2に調整された状態を維持する事ができる。
以上の構成によって、SRSを計測する顕微鏡(計測装置)を構築・使用する事が可能である。
本実施形態のチャープ付与手段19では、硝子の群速度分散によって、硝子ブロックを透過したパルス光4の光周波数ごとに異なる時間遅延を与えることができるため、硝子ブロックを透過させることによってチャープを付与できる。また硝子ブロックの透過距離を調整する事によってチャープの調整が可能である。チャープ付与手段26についても同様である。なお、ストークス光(パルス光4)およびポンプ光(パルス光24)の光周波数変化に対する時間変化の割合で定義されるチャープ率αは互いに等しい。ここで、等しいとは、完全に等しい場合と、許容誤差の範囲内で完全に等しい場合からずれている場合とを含む意味である。
チャープ付与手段19はパルス光4のチャープを調整する事が可能であれば、必ずしもミラー18の下流である必要性は無く、パルス光4の光路上のどの位置にあっても良い。
レンズ29とレンズ30によって、スキャナ28と対物レンズ32の入射瞳は共役となる様に配置されており、スキャナ28によってパルス光の反射角度が変わっても遮光によって光量が変化することなく試料33へ照射できる。対物レンズ32の入射瞳サイズと入射するパルス光のビームサイズが等しくなるようにレンズ29とレンズ30の焦点距離は調整されており、試料33に照射するパルス光のスポットサイズを最小にできる。スキャナ28の角度を変えることによって試料上でのパルス光の照射位置を動かす事が可能であり、異なるスポット位置毎にSRSを計測することができる。
光学フィルタ35は試料33を透過したパルス光のうち、ポンプ光であるパルス光24のみを透過させ、ストークス光であるパルス光4を取り除く。また、光学フィルタ35は、CARS等のSRS以外の非線形光学現象によって発生する光も取り除く。
前述の通り、本実施形態ではポンプ光は、SRSによってストークス光の繰り返し周波数である40MHzで強度変調される。この強度変調成分がSRS強度に他ならない。このため、光検出器37によって得た電気信号はプリアンプ38を通った後、ロックインアンプ39で40MHzが取り出され、計算機40で画像化などの処理がなされる。
本発明を適用したSRS顕微鏡を再び図1と図2を用いて説明する。パルスレーザ1はストークス光光源、パルスレーザ2はポンプ光光源である。パルスレーザ2としてSpectra−Physics社のMaiTaiを利用する。
パルスレーザ2から放射されるパルス光80の中心波長は789ナノメートル、波長幅は10ナノメートルである。パルスレーザ1としてイッテルビウムドープドファイバレーザを利用する。パルスレーザ1から放射されるパルス光70の中心波長は1030ナノメートル、波長幅は30ナノメートルである。このように、パルス光70(ストークス光、第1の光)の波長幅は、パルス光80(ポンプ光、第2の光)の波長幅よりも大きい。
パルスレーザ1およびパルスレーザ2のチャープ率αを1.65*105 [fs2]となる様に調整する。その場合、ポンプ光の時間幅は5.5ピコ秒となる。
光分散素子12として近赤外光対応の格子密度1200[1/mm]のブレーズド反射型回折格子を使用し、リトロー配置で設置する。入射角度変更手段11としてガルバノミラーを使用し、パルス光4の光分散素子12への入射角度を調整する。リトロー配置の反射型回折格子で分光すると、波長λに対して光周波数ωはλ=2πc/ωと書けるため、数式(6)の関係が成り立つ。
ここでNは格子密度、Θは反射型回折格子への入射角度である。
波長1045ナノメートルの光に対して、光分散素子12への入射角度Θ1は38.8度であり、図2の光分散素子12の位置B1で反射しているとする。波長1015ナノメートルの光に対して、光分散素子12への入射角度Θ2は37.5度となり図2の位置B2で反射しているとする。
点AからB1の距離l1と点AからB2の距離l2は、それぞれ数式(7)、(8)の関係を満たす。dは、光分散素子12が配置される面の法線方向において、入射角度変更手段11の点Aから光分散素子12までの距離である。
B1を経由する経路とB2を経由する経路での光学距離の差ΔL=L2−L1は往復を考慮して数式(9)で表せる。
これは式(7),(8)より数式(10)で表せる。
したがって、数式(5)は、本実施例において、
(ω2−ω1)α = 2d(1/cosΘ1−1/cosΘ2)/c
で表せる。
(ω2−ω1)α = 2d(1/cosΘ1−1/cosΘ2)/c
で表せる。
このとき、数式(6)は、
2πcN/ωi = 2sinΘi,(i=1,2)
で表せる。
2πcN/ωi = 2sinΘi,(i=1,2)
で表せる。
パルスレーザ1のパルス光4を1045ナノメートルの波長λ1で抽出した場合と、1015ナノメートルの波長λ2で抽出した場合、それぞれ光周波数ω1=1.804*1015[ラジアン/秒],ω2=1.857*1015[ラジアン/秒]に相当する。したがって、その際の遅延τbは、式(4)より8.75ピコ秒になる。この遅延を相殺するには、数式(5)の左辺が8.75ピコ秒、右辺は式(10)を光速cで割ったものと等しくすればよい。そのため、数式(11)より距離dが求まり、光分散素子12を入射角度変更手段11の点Aから距離dが57.3ミリメートルとなる様に配置すればよい。
本実施例では、光抽出手段15としてスリットを用いている。入射角度変更手段11の角度を変えることで光抽出手段15によって抽出されるストークス光の光周波数を変化させても、ポンプ光と時間的に同期した状態を維持する事ができる。
本実施例によれば、非特許文献1に記載されるような可変の遅延ステージを必要とせず、また遅延ステージを光周波数掃引のための可変光減衰器と連動して動かす必要もない。本実施例によれば、上述した構成を採用することで、ラマンスペクトルのスペクトル分解能が良く、また測定が高速かつ安定に動作し、部品点数が少なく、必ずしもパルス光の抽出を狭帯域に限定しない設計が可能である。したがって、広帯域かつ高分解能のラマンスペクトル計測を高速に実施可能な低コストの非線形ラマン散乱顕微鏡を提供することができる。
ストークス光を波長幅10ナノメートルで抽出した場合、ストークス光の抽出後の時間幅は3ピコ秒程度となる。ソリトンモードロックしたパルス光の一般的な波形の関数であるSech2分布を仮定した場合、この時間幅ではラマンスペクトルにおいて4cm−1程度のスペクトル分解能を得ることができ、この値は固体の分光を行うのには十分である。
入射角度変更手段11の角度を変えることによって、点B1から点B2まで8.5ミリメートル程度の距離を反射位置が走査する。この走査範囲は、一般的な1インチ角の反射型回折格子の大きさに収まる。
本発明の実施例2にかかるSRS顕微鏡を図1と図4を用いて説明する。本実施例のSRS顕微鏡の構成は第1の実施例と同様であるが、図1の分散光学ユニット100のみ異なり、代わりに図4の分散光学ユニット200を使う。図1において分散光学ユニット100に入射したパルス光4は図4の分散光学ユニット200に入射する。
202はパルス光4の入射角度を変更(調整)する入射角度変更手段であり、本実施例ではステッピングモータである。201は入射角度変更手段を駆動するドライバである。203はパルス光4を分散させる光分散素子であり、本実施例では反射型回折格子である。光分散素子203の刻線方向は紙面に平行である。ドライバ201で入射角度変更手段202を駆動する事によって、光分散素子203へ入射する角度が調整され、その結果光分散素子203から分散されながら反射するパルス光4の角度を調整する事が可能になる。パルス光4は分散光学ユニット200に入射して、光分散素子203の位置Aで反射する。このときパルス光4の入射角度はΘである。光分散素子203はリトロー配置になっている。
図4では入射角度変更手段202の回転中心(入射角度変更手段202に固定される光分散素子203の回転中心)が原点Oにあり、原点Oを中心としてX軸とY軸を取り、X軸に平行にパルス光4が導かれている。パルス光4がY軸を横切る位置をO’とし、距離OO’をd’とする。換言すれば、距離d’は、パルス光4が光分散素子203に入射する方向(X方向)と直交する方向(Y方向)において、パルス光4から入射角度変更手段202(によって回転する反射型回折格子)の回転中心(原点O)までの距離を指す。
実施例1と同様に、光分散素子203で分散した光をリトロー配置で反射させ、図1の光抽出手段15で抽出する。光抽出手段15は本実施例でもスリットである。入射角度変更手段202と光分散素子203を平行に固定しているため、光分散素子203がY軸となす角度はパルス光4の入射角度と等しくΘである。
点O’と点Aとの距離をlとする。このとき、数式(12)の関係となる。
実施例1では図2の光分散素子12の位置を固定して、光分散素子12へ入射する角度を変化させていたが、実施例2では図4の光分散素子203の位置と回転向きが変化することにより、入射角度Θが変化するとともに、距離lも変化する。実施例1と同じ光源を用い、実施例1と同じ入射角度Θ1、Θ2の場合の光学距離lの差は数式(12)を用いて、数式(13)で表せる。
この光学距離の差によって生じるパルス光のタイミングの変化分は、光速で割ることによって求まり、数式(14)で表せる。
したがって、数式(5)は、本実施例において、
(ω2−ω1)α = 2d’(tanΘ1−tanΘ2)/c
で表せる。
(ω2−ω1)α = 2d’(tanΘ1−tanΘ2)/c
で表せる。
このとき、数式(6)は、
2πcN/ωi = 2 sinΘi,(i=1,2)
で表せる。
2πcN/ωi = 2 sinΘi,(i=1,2)
で表せる。
実施例1と同様のチャープ率α、格子密度Nを用いるとする。この際チャープによって生じるパルス光のタイミングの変化分も等しく8.75ピコ秒であり、それが式(14)と等しいとして式を解けば、ストークス光を抽出しても、ポンプ光と時間的に同期した状態を維持する事ができる。これはd’として35.4ミリメートルの位置に設置することによって達成される。
本実施例によれば、非特許文献1に記載されるような可変の遅延ステージを必要とせず、また遅延ステージを光周波数掃引のための可変光減衰器と連動して動かす必要もない。本実施例によれば、上述した構成を採用することで、ラマンスペクトルのスペクトル分解能が良く、また測定が高速かつ安定に動作し、部品点数が少なく、必ずしもパルス光の抽出を狭帯域に限定しない設計が可能である。したがって、広帯域かつ高分解能のラマンスペクトル計測を高速に実施可能な低コストの非線形ラマン散乱顕微鏡を提供することができる。
また、この実施例2を用いた場合は、実施例1と比べてミラーの部品点数が少なくなる。
本発明の実施例3にかかるSRS顕微鏡を図1と図5を用いて説明する。本実施例のSRS顕微鏡の構成は実施例1と同様であるが、図1の分散光学ユニット100のみ異なり、代わりに図5の分散光学ユニット300を使う。図1において分散光学ユニット100に入射したパルス光4は図5の分散光学ユニット300に入射する。
302はパルス光4の入射角度を変更(調整)する入射角度変更手段であり、本実施例ではガルバノミラーである。301は入射角度変更手段302を駆動するドライバである。303はパルス光4を分散させる光分散素子であり、本実施例では透過型回折格子である。304はミラー(反射部材)であり、光分散素子303を透過してきたパルス光4を正反射させる。図5では光分散素子303を配置する面と平行な方向にY軸を取っている。
分散光学ユニット300に入射したパルス光は、入射角度変更手段302によって位置Aで反射する。入射角度変更手段302の角度によって光分散素子303へ入射する位置は異なり、図5では例として位置B1とB2を示す。位置B1,B2からY軸と直交するようにX,X’軸を取る。距離B1B2をd”とする。すなわち、d”は、パルス光4が光分散素子303の位置B1に入射している第1の状態、および、位置B2に入射している第2の状態における、透過型回折格子に入射する入射位置B1,B2の間の距離である。また、第1の状態におけるパルス光4の透過型回折格子への入射角度をΘ1、第2の状態におけるパルス光4の透過型回折格子への入射角度をΘ2、第1の状態と第2の状態における透過型回折格子から出射する出射角度をΘtとする。また、第1の状態における入射角度変更手段302から透過型回折格子への光学距離をl1、第2の状態における入射角度変更手段302から透過型回折格子への光学距離をl2、とする。
図5では、距離AB1,AB2がそれぞれl1,l2であり、それぞれ光分散素子303へ角度Θ1,Θ2でパルス光4が入射した後、両方とも角度Θtで透過し、ミラー304上の位置C1,C2で正反射する。経路AB1C1を通る光の光周波数はω1であり、経路AB2C2では光周波数ω2である。どの経路も再度入射角度変更手段302の位置Aで反射し、図1の光抽出手段15で抽出される。光抽出手段15は本実施例でもスリットである。
実施例1と同じ光源を用い、チャープ率も同じ値を用いる。透過型回折格子として近赤外光対応の格子密度600[1/mm]の物を使用すると、二つの経路に関して数式(15),(16)で表せる透過型回折格子の式が成り立つ。
ここでλ1=2πc/ω1,λ2=2πc/ω2で定義され、実施例1と同じくλ1は1045ナノメートル、λ2は1015ナノメートルである。
また、光学系の配置より、数式(17),(18)が成り立つ。
したがって、数式(5)は、本実施例において、
(ω2−ω1)α = 2(l2 +d”sinΘt −l1 )/c
で表せる。
(ω2−ω1)α = 2(l2 +d”sinΘt −l1 )/c
で表せる。
このとき、数式(3)は、
sinΘi + sinΘt = 2πcN/ωi,(i=1,2)
で表せる。
sinΘi + sinΘt = 2πcN/ωi,(i=1,2)
で表せる。
さらに、光学距離の差によって生じる遅延が実施例1と同様に8.9ピコ秒と等しいという数式(19)が求まる。
本実施例の場合はΘ1,Θ2,Θt,l1,l2,d”の6変数に対して、拘束条件となる数式は(14)から(18)の5つしかない。このため、上記の6変数のうち一つを任意に決めることができる。ここでは、Θ1=0と置いた。この際、数式(15)から(19)を解くと、Θ2は約−1.03度、l1およびl2は約121ミリメートル、d”は約2.06ミリメートル、Θtは約38.8度で成り立つ。
本実施例は、上記の6変数のうち一つを任意に決めることができるため、設計の自由度が高いという特徴がある。
本実施例によれば、非特許文献1に記載されるような可変の遅延ステージを必要とせず、また遅延ステージを光周波数掃引のための可変光減衰器と連動して動かす必要もない。本実施例によれば、上述した構成を採用することで、ラマンスペクトルのスペクトル分解能が良く、また測定が高速かつ安定に動作し、部品点数が少なく、必ずしもパルス光の抽出を狭帯域に限定しない設計が可能である。したがって、広帯域かつ高分解能のラマンスペクトル計測を高速に実施可能な低コストの非線形ラマン散乱顕微鏡を提供することができる。
本発明は、CAR顕微鏡やSRS顕微鏡などの非線形ラマン散乱顕微鏡に適用することができる。
1 パルスレーザ(第1の光生成手段)
2 パルスレーザ(第2の光生成手段)
11 入射角度変更手段
12 光分散素子
15 光抽出手段
19,26 チャープ付与手段
22,28〜32 照射光学系
2 パルスレーザ(第2の光生成手段)
11 入射角度変更手段
12 光分散素子
15 光抽出手段
19,26 チャープ付与手段
22,28〜32 照射光学系
Claims (15)
- 第1の光を生成する第1の光生成手段と、
前記第1の光とは異なる光周波数を有する第2の光を生成する第2の光生成手段と、
前記第1の光を光周波数に応じて異なる方向に分離する光分散素子と、
前記第1の光の前記光分散素子への入射角度を変更する入射角度変更手段と、
前記光分散素子から出射する前記第1の光の一部の光周波数帯域を抽出する光抽出手段と、
前記第1の光および前記第2の光に対し光周波数に応じた時間遅延を与えるチャープ付与手段と、
前記第1の光と前記第2の光を合成して試料に照射する照射光学系と、
を有し、
前記入射角度変更手段は、前記光分散素子への入射角度を第1の状態から第2の状態に変化させることで、前記第1の光生成手段から前記試料までの光学距離を前記時間遅延の変化量に応じて変化させることを特徴とする計測装置。 - 前記入射角度変更手段は、前記第1の状態から前記第2の状態に変化する際に前記時間遅延の変化量が正である場合、前記光学距離を短くすることを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
- 前記第1の状態において前記第1の光生成手段から前記試料までの光学距離を前記第1の光が通過するのにかかる第1の時間に対する、前記第2の状態における前記第1の光生成手段から前記試料までの光学距離を前記第1の光が通過するのにかかる第2の時間との差が負であることを特徴とする請求項2に記載の計測装置。
- 前記時間遅延の変化量は、前記光周波数帯域が変化する量と、前記第1の光の光周波数変化に対する時間変化の割合で定義されるチャープ率と、を乗じて得られることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の計測装置。
- 前記第1の状態における前記第1の光生成手段から前記試料までの光学距離をL1、前記第2の状態における前記第1の光生成手段から前記試料までの光学距離をL2、前記第1の状態における前記光抽出手段が抽出する光周波数帯域内の任意の光周波数をω1、前記第2の状態における前記光抽出手段が抽出する光周波数帯域内の任意の光周波数をω2、前記第1の光の光周波数変化に対する時間変化の割合で定義されるチャープ率をα、光速をc、としたとき、
(ω2−ω1)α = (L1 −L2 )/c
なる条件を満たすことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の計測装置。 - 前記光分散素子は反射型回折格子であり、
前記入射角度変更手段と前記光抽出手段はリトロー配置されており、
前記第1の状態における前記反射型回折格子への入射角度をΘ1、前記第2の状態における前記反射型回折格子への入射角度をΘ2、前記反射型回折格子の格子定数をN、前記第1の状態における前記光抽出手段が抽出する光周波数帯域内の任意の光周波数をω1、前記第2の状態における前記光抽出手段が抽出する光周波数帯域内の任意の光周波数をω2、前記第1の光の光周波数変化に対する時間変化の割合で定義されるチャープ率をα、光速をc、円周率をπ、前記入射角度変更手段から前記反射型回折格子までの距離をd、としたとき、
(ω2−ω1)α = 2d(1/cosΘ1−1/cosΘ2)/c
なる条件を満たし、かつ、
2πcN/ωi = 2 sinΘi , i = 1,2
なる条件を満たすことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の計測装置。 - 前記入射角度変更手段は、前記第1の光を反射するガルバノミラーであることを特徴とする請求項6に記載の計測装置。
- 前記光分散素子は前記入射角度変更手段に固定された反射型回折格子であり、
前記入射角度変更手段と前記光抽出手段はリトロー配置されており、
前記第1の状態における前記反射型回折格子への入射角度をΘ1、前記第2の状態における前記反射型回折格子への入射角度をΘ2、前記反射型回折格子の格子定数をN、前記第1の状態における前記光抽出手段が抽出する光周波数帯域内の任意の光周波数をω1、前記第2の状態における前記光抽出手段が抽出する光周波数帯域内の任意の光周波数をω2、前記第1の光の光周波数変化に対する時間変化の割合で定義されるチャープ率をα、光速をc、円周率をπ、前記第1の光から前記入射角度変更手段によって回転する前記反射型回折格子の回転中心までの距離をd’、としたとき、
(ω2−ω1)α = 2d’(tanΘ1−tanΘ2)/c
なる条件を満たし、かつ、
2πcN/ωi = 2 sinΘi , i = 1,2
なる条件を満たすことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の計測装置。 - 前記光分散素子は透過型回折格子であり、
前記第1の状態における前記入射角度変更手段から前記透過型回折格子への光学距離をl1、前記第2の状態における前記入射角度変更手段から前記透過型回折格子への光学距離をl2、前記第1の状態における前記透過型回折格子への入射角度をΘ1、前記第2の状態における前記透過型回折格子への入射角度をΘ2、前記第1の状態と前記第2の状態における前記透過型回折格子に入射する入射位置の間の距離をd”、前記第1の状態と前記第2の状態における前記透過型回折格子から出射する出射角度をΘt、前記透過型回折格子の格子定数をN、前記第1の状態における前記光抽出手段が抽出する光周波数帯域内の任意の光周波数をω1、前記第2の状態における前記光抽出手段が抽出する光周波数帯域内の任意の光周波数をω2、前記第1の光の光周波数変化に対する時間変化の割合で定義されるチャープ率をα、光速をc、円周率をπ、としたとき、
(ω2−ω1)α = 2(l2 +d”sinΘt −l1 )/c
かつ、
l2cosΘ2 = l1cosΘ1
かつ、
sinΘi + sinΘt = 2πcN/ωi, i= 1,2
かつ、
l1 sinΘ1 - l2sinΘ2=d”
なる条件を満たすことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の計測装置。 - 前記入射角度変更手段は、前記第1の光を反射するガルバノミラーであることを特徴とする請求項9に記載の計測装置。
- 前記透過型回折格子から透過する光を反射する反射部材を有することを特徴とする請求項9または10に記載の計測装置。
- 前記第1の光と前記第2の光が前記試料に照射されることで生じた誘導ラマン散乱を検出する検出手段を有することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の計測装置。
- 前記第1の光は、ストークス光であり、
前記第2の光は、ポンプ光であることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の計測装置。 - 前記第1の光の波長幅は、前記第2の光の波長幅よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の計測装置。
- 前記第1の光および前記第2の光の光周波数変化に対する時間変化の割合で定義されるチャープ率は互いに等しいことを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の計測装置。
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CN112147629A (zh) * | 2020-09-27 | 2020-12-29 | 中国工程物理研究院激光聚变研究中心 | 一种宽速度域成像型多普勒速度仪 |
-
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