JP5497673B2 - 樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリオレフィン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を含有する樹脂組成物に関する。また、当該樹脂組成物の製造方法に関する。
従来、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンからなる層と、バリア性に優れるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(以下、EVOHと略称することがある)からなる層とを含む多層構造体は、そのバリア性を活かして各種用途、特に食品包装容器や燃料容器などに広く用いられている。このような多層構造体はフィルム、シート、カップ、トレイ、ボトルなどの各種成形品として用いられる。このとき、上記各種成形品を得る際に発生する端部や不良品等を回収し、溶融成形してポリオレフィン層とEVOH層を含む多層構造体の少なくとも1層として再使用する場合がある。このような回収技術は、廃棄物削減や経済性の点で有用であり、広く採用されている。
しかしながら、ポリオレフィン層とEVOH層を含む多層構造体の回収物を再使用する際には、溶融成形時の熱劣化によりゲル化を起こしたり、劣化物が押出機内に付着したりして、長期間の連続溶融成形を行うことが困難であった。また、このような劣化物が押出機内に付着すると、得られる成形品において、凹凸が発生するという問題があった。さらに、多層構造体の回収物の再使用を繰り返すにつれ、これらの問題が顕著になった。
このような問題を解決する方策として、特許文献1には、ポリオレフィン;エチレン含有率が20〜65モル%で酢酸ビニル成分のけん化度が96モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物;炭素数8〜22の高級脂肪酸金属塩、エチレンジアミン四酢酸金属塩及びハイドロタルサイトから選ばれる少なくとも1種の化合物;及びエチレン含有率が68〜98モル%で酢酸ビニル成分のけん化度が20%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物からなる樹脂組成物が記載されている。さらに、炭素数8〜22の高級脂肪酸金属塩としては、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸などの高級脂肪酸と、カルシウム、マグネシウム、亜鉛との金属塩が好適であると記載されている。この樹脂組成物は優れた相溶性を有しており、この樹脂組成物を用いて得られた成形物の表面には波模様の発生がなく、外観が美麗であるとされている。しかしながら、特許文献1の実施例に記載されているステアリン酸カルシウムを配合した樹脂組成物は、スクリューへの付着物を生じることがあり、得られる成形品において凹凸を生じることがあった。
特許文献2には、マグネシウム、カルシウム、亜鉛から選ばれる少なくとも1種を含有し、その含有量の総計が10〜500ppmである、エチレン含有量が10〜60モル%で酢酸ビニル成分のけん化度が95モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を中間層とし、少なくとも両最外層に熱可塑性樹脂を積層した積層体の粉砕物をリグラインド層に用いることを特徴とする燃料容器の製造方法が記載されている。ここでは、リグラインド層に用いる積層体の中間層に、脂肪酸金属塩を配合したエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物が用いられている。脂肪酸金属塩としてはマグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩から選ばれる少なくとも1種が用いられている。また、脂肪酸としては、低級脂肪酸及び/又は高級脂肪酸が用いられている。この製造方法によれば、溶融成形性、機械的特性などに優れた燃料容器が得られるとされている。しかしながら、特許文献2の実施例に記載されたステアリン酸亜鉛の配合量では、積層体の溶融成形時に劣化物がスクリューに付着し、得られる成形品において、凹凸が生じることがあるという問題があった。
特開平3−72542号公報 特開2001−348017号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ポリオレフィン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を含有し、溶融成形時にスクリューへの付着物が少なく、得られる成形品の凹凸が少ない樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
上記課題は、ポリオレフィン(A)、エチレン含有量20〜65モル%、酢酸ビニル単位のけん化度96%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(B)脂肪酸金属塩(C)、エチレン含有量68〜98モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)及びハイドロタルサイト(G)を含有する樹脂組成物であって、
脂肪酸金属塩(C)が、炭素数4〜24の脂肪酸と、オールレッド(A.L.Allred)とロコウ(E.G.Rochow)による電気陰性度が1.5以上である金属との塩であり
エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)が、酢酸ビニル単位のけん化度20%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(D1)及び/又は酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D2)を含み、
前記樹脂組成物中の、ポリオレフィン(A)の含有量が80〜99.9質量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(B)の含有量が0.1〜20質量%、脂肪酸金属塩(C)の含有量が0.02〜2質量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)の含有量が0.1〜20質量%、ハイドロタルサイト(G)の含有量が0.05〜2質量%であり、かつ
エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(B)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(D1)及び酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D2)の合計量との質量比[B/(D1+D2)]が1〜25であることを特徴とする樹脂組成物を提供することによって解決される。
このときさらに未変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D3)を含有し、未変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D3)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(D1)及び酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D2)の合計量との質量比[D3/(D1+D2)]が0.1〜50であることが好適である。脂肪酸金属塩(C)が亜鉛塩又は鉛塩であることも好適である。
上記課題は、ポリオレフィン(A)の層とエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(B)の層とを有する多層構造体の回収物と、脂肪酸金属塩(C)、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)及びハイドロタルサイト(G)を含有する回収助剤とを溶融混練する樹脂組成物の製造方法を提供することによっても解決される。さらに、前記樹脂組成物からなる層を有する多層構造体を提供することによっても解決される。
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を含有し、溶融成形時にスクリューへの付着物が少なく、それを用いて得られる成形品の凹凸が少ない。
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン(A)、エチレン含有量20〜65モル%、酢酸ビニル単位のけん化度96%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(以下、EVOHと略称することがある)(B)及び脂肪酸金属塩(C)を含有する樹脂組成物であって、脂肪酸金属塩(C)が、炭素数4〜24の脂肪酸とオールレッド(A.L.Allred)とロコウ(E.G.Rochow)による電気陰性度が1.5以上である金属との塩であり、かつ前記樹脂組成物中の脂肪酸金属塩(C)の含有量が0.02〜2質量%であることを特徴とする樹脂組成物である。
本発明で用いられるポリオレフィン(A)は、例えば、ポリエチレン(低密度、直鎖状低密度、中密度、高密度など);エチレンと1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン類またはアクリル酸エステルを共重合したエチレン系共重合体;ポリプロピレン;プロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン類を共重合したプロピレン系共重合体;ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、上述のポリオレフィンに無水マレイン酸を作用させた変性ポリオレフィン;アイオノマー樹脂などを含んでいる。中でも、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体などのポリプロピレン系樹脂、またはポリエチレン、エチレン系共重合体などのポリエチレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。ポリオレフィン(A)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。特に、本発明の樹脂組成物からなる層を有する多層構造体を食品包装材として用いる場合には、二次加工性に優れる観点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。
本発明で用いられるEVOH(B)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル単位をけん化して得られたものである。エチレン含有量が少なく、かつ酢酸ビニル単位のけん化度が高いEVOHは、ポリオレフィンとの相容性が不良となりやすい。一方、EVOHのエチレン含有量が多すぎる場合には、ガスバリア性が低下する。また、酢酸ビニル単位のけん化度が低いEVOHは、EVOH自体の熱安定性が不良となりやすい。このような観点から、EVOH(B)のエチレン含有量は20〜65モル%である。エチレン含有量は25モル%以上であることが好ましい。また、エチレン含有量は55モル%以下であることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましい。また、EVOH(B)をけん化する前のエチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量は、35〜80モル%である。酢酸ビニル含有量は45モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましい。また、酢酸ビニル含有量は75モル%以下であることが好ましい。一方、EVOH(B)の酢酸ビニル単位のけん化度は96%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、99%以上であることがさらに好ましい。特に、エチレン含有量が20〜65モル%であり、かつけん化度が99%以上のEVOHは、ポリオレフィンと積層して用いることにより、バリア性に優れる容器類を得ることができる。
EVOH(B)は、本発明の効果を阻害しない範囲、一般的には5モル%以下の範囲で、他の重合性単量体を含んでいてもよい。このような重合性単量体としては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン;(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;アルキルビニルエーテル;N−(2−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミドまたはその4級化物、N−ビニルイミダゾールまたはその4級化物、N−ビニルピロリドン、N,N−ブトキシメチルアクリルアミド、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランなどが挙げられる。
また、EVOH(B)のメルトインデックス(MI;190℃、2160g荷重下で測定)は0.1g/10分以上、好適には0.5g/10分以上であり、また100g/10分以下、好適には50g/10分以下、最適には30g/10分以下であることが望ましい。このとき、EVOH(B)の分散性の観点から、EVOH(B)のMIをMI(EVOH)、ポリオレフィンのMI(190℃、2160g荷重下で測定)をMI(PO)としたときの比[MI(EVOH)/MI(PO)]は0.1〜100であることが好ましく、0.3〜50であることがより好ましい。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。
本発明で用いられる脂肪酸金属塩(C)は、炭素数4〜24の脂肪酸とオールレッド(A.L.Allred)とロコウ(E.G.Rochow)による電気陰性度が1.5以上である金属との塩である脂肪酸金属塩である。電気陰性度には、種々の算出方法により異なった値があるが、ここではAllred&Rochowの方法(A.L.Allred and E.G.Rochow,J.Inor.Nucl.Chem.,5巻、264頁、1958年)による値を用いる。電気陰性度が1.5よりも小さい金属との塩を用いた場合、劣化物がスクリューに付着し、成形品に凹凸が生じやすい。電気陰性度が1.5以上である金属との塩を用いた場合に、溶融成形時にスクリューへの付着物が少なく、凹凸が少ない成形品が得られる理由は定かではないが、スクリューを構成する鉄やクロム等の金属と適度な相互作用が得られるためと推測される。電気陰性度が1.55以上である金属が好適である。電気陰性度は通常17以下である。具体的には、金属が亜鉛又は鉛であることがより好適である。金属が亜鉛であることがさらに好適である。また、脂肪酸金属塩(C)としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの炭素数4〜24の脂肪酸の金属塩が挙げられる。炭素数が25以上の脂肪酸との塩を用いた場合、劣化物がスクリューに付着し、成形品に凹凸が生じやすい。脂肪酸の炭素数が21以下であることが好適である。脂肪酸の炭素数は19以下であることがより好適である。一方、炭素数が3以下の脂肪酸との塩を用いた場合、スクリュー付着を抑制する効果が低い。脂肪酸の炭素数は6以上であることが好適であり、10以上であることがより好適である。
本発明の樹脂組成物を構成する成分として、上記のポリオレフィン(A)、EVOH(B)及び脂肪酸金属塩(C)に加えて、エチレン含有量68〜98モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)(以下、(D)成分と略称することがある)を配合することが好ましい。(D)成分を配合することによってポリオレフィン(A)及びEVOH(B)の相容性を改善する効果がある。
本発明で用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)のエチレン含有量は68〜98モル%である。(D)成分のエチレン含有量が68モル%未満の場合、ポリオレフィン(A)及びEVOH(B)の相容性が悪くなるおそれがある。(D)成分のエチレン含有量は、70モル%以上であることが好ましく、72モル%以上であることがより好ましい。一方、(D)成分のエチレン含有量が98モル%より多い場合、ポリオレフィン(A)及びEVOH(B)の相容性が悪くなるおそれがある。(D)成分のエチレン含有量は、96モル%以下であることが好ましく、94モル%以下であることがより好ましい。なお、(D)成分として2種以上の共重合体を用いる場合、それぞれの共重合体のエチレン含有量を混合質量比により加重平均した値が上記範囲であることが好ましく、それぞれの共重合体のエチレン含有量が上記範囲であることがより好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)の酢酸ビニル含有量((D)成分がけん化物である場合は、けん化前のエチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量)は、2〜32モル%である。(D)成分の酢酸ビニル含有量が2モル%未満の場合、EVOH(B)の分散性の改善に十分な効果が得られないことがある。(D)成分の酢酸ビニル含有量は、5モル%以上であることが好ましい。(D)成分の酢酸ビニル含有量が32モル%より多い場合、EVOH(B)の分散性の改善に十分な効果が得られないことがある。(D)成分の酢酸ビニル含有量は、25モル%以下であることが好ましい。なお、(D)成分として2種以上の共重合体を用いる場合、それぞれの共重合体の酢酸ビニル含有量を混合質量比により加重平均した値が上記範囲であることが好ましく、それぞれの共重合体の酢酸ビニル含有量が上記範囲であることがより好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)のMI(190℃、2160g荷重下で測定)は0.03g/10分以上であることが好ましく、0.05g/10分であることがより好ましい。一方、(D)成分のMIは、100g/10分以下であることが好ましく、80g/10分以下であることがより好ましく、70g/10分以下であることがさらに好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)のエチレン含有量は、EVOH(B)のエチレン含有量より高く、EVOH(B)のエチレン含有量と(D)成分のエチレン含有量との差が10〜70モル%の範囲であることが好ましい。10モル%未満の場合はEVOH(B)及び(D)成分とポリオレフィン(A)との相容性が悪くなり、(D)成分によるポリオレフィン(A)とEVOH(B)の相容性向上効果が得られにくくなるため、成形品に凹凸が生じやすくなる。上記差は20モル%以上がより好ましい。一方、70モル%を超えるとEVOH(B)と(D)成分との相容性が悪くなり、この場合も(D)成分によるポリオレフィン(A)とEVOH(B)の相容性向上効果が得られにくくなるため、成形品に凹凸が生じやすくなる。上記差は68モル%以内がより好ましい。
本発明において、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)が、酢酸ビニル単位のけん化度20%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(D1)(以下、S−EVOH(D1)と略称することがある)及び/又は酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D2)(以下、酸変性EVAc(D2)と略称することがある)を含むことがより好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)として、S−EVOH(D1)を配合することによってポリオレフィン(A)及びEVOH(B)の相容性を顕著に改善する効果が得られる。さらに、スクリュー付着を抑制する効果が得られる。これは、S−EVOH(D1)がEVOH(B)と水素結合することにより、これらの相容性が良好になるためであり、さらにEVOH(B)粒子とスクリューとの接触を抑制するからであると推測される。S−EVOH(D1)のエチレン含有量は、上記(D)成分で説明した通りである。
けん化を行う前のS−EVOH(D1)の酢酸ビニル含有量は、上記(D)成分で説明した通りである。S−EVOH(D1)における酢酸ビニル単位のけん化度は、20%以上である。上記けん化度は、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。けん化度の上限には特に限定はなく、99モル%以上であってもよく、実質的にほぼ100%のけん化度のものも使用できる。エチレン含有量が68モル%未満である場合、98モル%を超える場合、または酢酸ビニル単位のけん化度が20%未満の場合には、ポリオレフィン(A)及びEVOH(B)の相容性を改善する効果が不十分である。
S−EVOH(D1)のMI(190℃、2160g荷重下で測定)は、上記(D)成分で説明した通りであることが好ましい。なお、S−EVOH(D1)は変性されていてもよい。このとき、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されていてもよく、かかる不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸;前記した酸のメチルまたはエチルエステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。ただし変性量が2mmol/gを超えると、変性したS−EVOH同士の架橋により、成形品にフィッシュアイが増加するおそれがある。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。例えばS−EVOH(D1)として未変性のS−EVOHと変性S−EVOHを組合せて用いても良い。
S−EVOH(D1)のエチレン含有量は、EVOH(B)のエチレン含有量より高いことが好ましく、上記(D)で説明した通りである。
エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)として、酸変性EVAc(D2)を配合することによってポリオレフィン(A)及びEVOH(B)の相容性を顕著に改善する効果がある。さらに、外観を良好にする効果が得られる。これは、酸変性EVAc(D2)とEVOH(B)が反応することによってこれらの相容性が良好になるためであり、さらにEVOH(B)が良好に微分散するからであると推測される。
酸変性EVAc(D2)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体に酸又はその誘導体をグラフト化させたものであるか、エチレンと、酢酸ビニルと、酸又はその誘導体との共重合体である。前記エチレン−酢酸ビニル共重合体にグラフト化させる酸又はその誘導体としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体を用いることができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸;前記した酸の塩;前記した酸のエステル(メチルエステル、エチルエステルなど);前記した酸の無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸など)が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。このうち無水マレイン酸が最も好適に用いられる。なお、上記酸や酸無水物が後変性により部分的に塩やエステルに変換されていてもよい。
また、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体にグラフト化させる酸として、ボロン酸基又は水の存在下でボロン酸基に転化し得るホウ素含有基を有する化合物を用いることもできる。ここで、ボロン酸基とは下記式(I)で示されるものである。
Figure 0005497673
また、水の存在下でボロン酸基に転化し得るホウ素含有基(以下、ホウ素含有官能基と略記する)とは、水の存在下で加水分解を受けてボロン酸基に転化し得るホウ素含有基を指す。より具体的には、水単独、水と有機溶媒(トルエン、キシレン、アセトン等)との混合物、5%ホウ酸水溶液と前記有機溶媒との混合物等を溶媒とし、室温〜150℃の条件下に10分〜2時間加水分解したときに、ボロン酸基に転化し得る官能基を意味する。このような官能基の代表例としては、下記式(II)で示されるボロン酸エステル基、下記式(III)で示されるボロン酸無水物基、下記式(IV)で示されるボロン酸塩基等が挙げられる。
Figure 0005497673
[式中、R及びRは水素原子、脂肪族炭化水素基(炭素数1〜20の直鎖状、又は分岐状アルキル基、又はアルケニル基等)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基等)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基等)を表し、R及びRはそれぞれ同じ基でもよいし異なっていてもよい。ただし、R及びRがともに水素原子である場合は除かれる。ここで、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよく、また、RとRは結合していてもよい。]
Figure 0005497673
Figure 0005497673
[式中、R、R及びRは上記R及びRと同様の水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を表し、R、R及びRはそれぞれ同じ基でもよいし異なっていてもよい。またMはアルカリ金属を表す。]
一般式(II)で示されるボロン酸エステル基の具体例としては、ボロン酸ジメチルエステル基、ボロン酸ジエチルエステル基、ボロン酸ジプロピルエステル基、ボロン酸ジイソプロピルエステル基、ボロン酸ジブチルエステル基、ボロン酸ジヘキシルエステル基、ボロン酸ジシクロヘキシルエステル基、ボロン酸エチレングリコールエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基、ボロン酸ネオペンチルグリコールエステル基、ボロン酸カテコールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基、ボロン酸トリメチロールエタンエステル基、ボロン酸トリメチロールプロパンエステル基、ボロン酸ジエタノールアミンエステル基等が挙げられる。
また、一般式(IV)で示されるボロン酸塩基としては、ボロン酸のアルカリ金属塩基等が挙げられる。具体的には、ボロン酸ナトリウム塩基、ボロン酸カリウム塩基等が挙げられる。
このようなホウ素含有官能基のうち、熱安定性の観点からボロン酸環状エステル基が好ましい。ボロン酸環状エステル基としては、例えば5員環又は6員環を含有するボロン酸環状エステル基が挙げられる。具体的には、ボロン酸エチレングリコールエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基等が挙げられる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体への酸又はその誘導体のグラフト化は公知の方法により行うことができ、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体を適当な溶媒に溶解、或いは押出機で溶融させた状態でラジカル開始剤を加えて活性化させた後に酸又はその誘導体を加えてグラフト化させることによって酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D2)を得ることができる。
また、エチレンと、酢酸ビニルと、酸又はその誘導体との共重合体において、エチレンと酢酸ビニルに共重合させる酸又はその誘導体としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体を用いることができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸;前記した酸の塩;前記した酸のエステル(メチルエステル、エチルエステルなど);前記した酸の無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸など)が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。このうち無水マレイン酸が最も好適に用いられる。なお、上記酸や酸無水物が後変性により部分的に塩やエステルに変換されていてもよい。
エチレンと、酢酸ビニルと、酸又はその誘導体とを共重合させる方法としては特に限定されず、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合などの公知の方法が適用されるが、溶液重合が最も好適に用いられる。
本発明で用いられる酸変性EVAc(D2)のエチレン含有量は、上記(D)成分で説明した通りである。また、酸変性EVAc(D2)の酢酸ビニル単位のけん化度は、20%未満であり、けん化されていないことが好ましい。上記酢酸ビニル単位の含有量は、上記(D)成分で説明した通りである。
酸変性EVAc(D2)の酸変性量は、0.01〜2mmol/gであることが好ましい。0.01mmol/g未満では、EVOH(B)との反応性が乏しくなり、相容性が不足するおそれがある。酸変性量は0.02mmol/g以上であることがより好ましく、0.05mmol/g以上であることがさらに好ましい。一方、2mmol/gを越えると、EVOH(B)との反応性が過剰になるため、成形品に凹凸が発生しやすくなる。酸変性量は1.9mmol/g以下であることがより好ましく、1.5mmol/g以下であることがさらに好ましい。なお、本発明の酸変性量とはJIS規格K2501に基づいて測定された酸価を水酸化カリウムの分子量で除することにより算出される酸性成分の量をいう。
酸変性EVAc(D2)のメルトインデックス(MI;190℃、2160g荷重下で測定)は、(D)成分に記載した通りである。
酸変性EVAc(D2)のエチレン含有量は、EVOH(B)のエチレン含有量より高く、上記(D)成分で説明した通りである。
本発明において、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)が、未変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D3)(以下、未変性EVAc(D3)と略称することがある)を含むことがさらに好ましい。未変性EVAc(D3)を配合することによって、S−EVOH(D1)及び/又は酸変性EVAc(D2)によるポリオレフィン(A)及びEVOH(B)の相容性改善の効果をさらに高めることができる。本発明で用いられる未変性EVAc(D3)は、酢酸ビニル単位のけん化度が20%未満であって、酸変性されていないものである。未変性EVAc(D3)は、好適には、エチレンと酢酸ビニルの二元共重合体であるが、酸ではない単量体を、本発明の結果を阻害しない範囲で共重合していても構わない。また、未変性EVAc(D3)としては、エチレンと酢酸ビニルを公知の方法にて重合したランダム共重合体のほか、さらに他のモノマーを共重合した三元共重合体などであってもよい。
本発明で用いられる未変性EVAc(D3)のエチレン含有量は、上記(D)成分で説明した通りである。また、未変性EVAc(D3)の酢酸ビニル単位のけん化度は、20%未満であり、けん化されていないことが好ましい。上記酢酸ビニル単位の含有量は、上記(D)成分で説明した通りである。
未変性EVAc(D3)のメルトインデックス(MI;190℃、2160g荷重下で測定)は、上記(D)成分で説明した通りである。
本発明の樹脂組成物を構成する成分として、上記のポリオレフィン(A)、EVOH(B)、脂肪酸金属塩(C)、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)に加えて、ハイドロタルサイト(G)を配合することも好ましい。ハイドロタルサイト(G)を配合することによって、回収物を再使用して得られた成形品のフィッシュアイの発生を抑制しやすくなる。ハイドロタルサイト(G)としては、
Al(OH)2x+3y−2z(b)・aH
(mはMg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Pb、Snの1つ以上を表わし、bはCOまたはHPOを表わし、x、y、zは正数であり、aは0または正数であり、2x+3y−2z>0である)
で示される複塩であるハイドロタルサイト(G)を好適なものとして挙げることができる。
上記ハイドロタルサイト中、mとしてはMg、CaまたはZnが好ましく、これらの2つ以上の組み合わせがより好ましい。これらハイドロタルサイトの中でも特に好適なものとしては次のようなものが例示できる。
MgAl(OH)16CO・4H
MgAl(OH)20CO・5H
MgAl(OH)14CO・4H
Mg10Al(OH)22(CO・4H
MgAl(OH)16HPO・4H
CaAl(OH)16CO・4H
ZnAl(OH)16CO・4H
MgZnAl(OH)12CO・2.7H
MgZnAl(OH)20CO・1.6H
MgZn1.7Al3.3(OH)20(CO1.65・4.5H
本発明の樹脂組成物に、本発明の効果を阻害しない範囲で共役ポリエン化合物を配合することもできる。共役ポリエン化合物を配合することで成形品の凹凸をより少なくさせることができる。共役ポリエン化合物とは、炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる構造であって、炭素−炭素二重結合の数が2個以上である、いわゆる共役二重結合を有する化合物である。具体例としては、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、フルベン、トロポン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、センブレン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、アビエチン酸等の炭素−炭素二重結合2個の共役構造よりなる共役ジエン化合物;1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール等の炭素−炭素二重結合3個の共役構造からなる共役トリエン化合物;シクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の炭素−炭素二重結合4個以上の共役構造からなる共役ポリエン化合物などが挙げられる。
これらの共役ポリエン化合物は1種類の化合物を単独で用いてもよく、2種類以上の化合物を併用することもできる。また共役ポリエン化合物の添加量は樹脂組成物中に0.000001〜1質量部の範囲で配合されていることが好ましい。添加量が0.000001質量部よりも少ない場合には成形品の外観の凹凸を改善する効果が十分に得られず、一方、1質量部を超えると、得られる樹脂組成物のゲル化を促進する恐れがある。
また、本発明の樹脂組成物に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の添加剤を配合することもできる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤、又は他の高分子化合物を挙げることができる。添加剤の具体的な例としては次のようなものが挙げられる。
酸化防止剤:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(6−t−ブチルフェノール)など。
紫外線吸収剤:エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンなど。
可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステルなど。
滑剤:ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、N−オレイルパルミトアミド、N−ステアリルエルカアミド、流動パラフィン、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックス、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、モンタン酸、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ステアリルなど。
充填剤:グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウムなど。
また、他の多くの高分子化合物も、本発明の作用効果が阻害されない程度に樹脂組成物に配合することもできる。
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン(A)を80〜99.9質量%含有することが好適である。ポリオレフィン(A)の含有量が99.9質量%よりも大きい場合、回収による廃棄物削減効果が得られず、経済性の点で好ましくない。ポリオレフィン(A)の含有量が98質量%以下であることがより好適である。一方、ポリオレフィン(A)の含有量が80質量%未満の場合、ポリオレフィン(A)、脂肪酸金属塩(C)以外の成分のスクリュー付着を抑制することが困難になる。ポリオレフィン(A)の含有量が83質量%以上であることがより好適である。
本発明の樹脂組成物は、EVOH(B)を0.1〜20質量%含有することが好適である。EVOH(B)の含有量が20質量%よりも大きい場合、EVOH(B)のスクリューへの付着物が生じやすくなり、得られる成形品に凹凸が生じやすくなる。EVOH(B)の含有量が9質量%以下であることがより好適である。一方、EVOH(B)の含有量が0.1質量%未満の場合、回収による廃棄物削減効果が得られず、経済性の点で好ましくない。EVOH(B)の含有量が1.5質量%以上であることがより好適である。
本発明の樹脂組成物は、脂肪酸金属塩(C)を0.02〜2質量%含有することが必要である。脂肪酸金属塩(C)の含有量が2質量%よりも大きい場合、脂肪酸金属塩(C)由来の未溶融物が成形品中に発生し、得られる成形品に穴があくことがある。脂肪酸金属塩(C)の含有量が1.5質量%以下であることが好適である。一方、脂肪酸金属塩(C)の含有量が0.02質量%未満の場合、スクリューへの付着物が生じやすくなり、得られる成形品に凹凸が生じやすくなる。脂肪酸金属塩(C)の含有量が0.05質量%以上であることが好適である。
本発明の樹脂組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)を0.1〜20質量%含有することが好適である。(D)成分の含有量が20質量%よりも大きい場合、(D)成分自身が凝集してフィッシュアイとなるおそれがある。(D)成分の含有量が15質量%以下であることがより好適であり、10質量%以下であることがさらに好適である。一方、(D)成分の含有量が0.1質量%未満の場合、EVOH(B)の凝集によるフィッシュアイが発生する場合がある。(D)成分が0.5質量%以上であることがより好適である。
本発明の樹脂組成物は、S−EVOH(D1)を0.1〜20質量%含有することが好適である。S−EVOH(D1)の含有量が20質量%よりも大きい場合、S−EVOH(D1)自身がスクリューへの付着物となり、得られる成形品に凹凸が生じやすくなる。S−EVOH(D1)の含有量が10質量%以下であることがより好適である。一方、S−EVOH(D1)の含有量が0.1質量%未満の場合、EVOH(B)が分散不良によりスクリューに付着しやすくなる。S−EVOH(D1)の含有量が0.5質量%以上であることがより好適である。
本発明の樹脂組成物は、酸変性EVAc(D2)を0.1〜20質量%含有することが好適である。酸変性EVAc(D2)の含有量が20質量%よりも大きい場合、酸変性EVAc(D2)自身がスクリューへの付着物となり、得られる成形品に凹凸が生じやすくなる。酸変性EVAc(D2)の含有量が10質量%以下であることがより好適である。一方、酸変性EVAc(D2)の含有量が0.1質量%未満の場合、EVOH(B)が分散不良によりスクリューに付着しやすくなる。酸変性EVAc(D2)の含有量が0.5質量%以上であることがより好適である。
本発明の樹脂組成物は、未変性EVAc(D3)を0〜20質量%含有することが好適である。未変性EVAc(D3)の含有量が20質量%よりも大きい場合、未変性EVAc(D3)自身がスクリューへの付着物となり、得られる成形品に凹凸が生じやすくなる。未変性EVAc(D3)の含有量が18質量%以下であることがより好適である。一方、樹脂組成物が未変性EVAc(D3)を含有していない場合は、スクリューへの付着物が若干多くなる場合がある。未変性EVAc(D3)の含有量が0.1質量%以上であることがより好適であり、0.5質量%以上であることがさらに好適である。
本発明の樹脂組成物がハイドロタルサイト(G)を配合する場合、ハイドロタルサイト(G)の含有量は0.05〜2質量%であることが好適である。ハイドロタルサイト(G)の含有量が2質量%よりも大きい場合、未溶融のハイドロタルサイト(G)に由来するフィッシュアイが発生する場合がある。ハイドロタルサイト(G)の含有量が1質量%以下であることがより好適である。一方、ハイドロタルサイト(G)の含有量が0.05質量%未満の場合、得られる成形品のフィッシュアイの発生が抑制しにくくなる。ハイドロタルサイト(G)の含有量が0.075質量%以上であることがより好適である。
本発明の樹脂組成物中のEVOH(B)とエチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)の質量比(B/D)は、0.1〜50であることが好適である。質量比(B/D)が50よりも大きい場合、スクリューへの付着物が生じやすくなり、得られる成形品の凹凸が生じやすくなる。質量比(B/D)は25以下であることがより好適であり、15以下であることがさらに好適である。一方、質量比(B/D)が0.1未満の場合、EVOH(B)の分散性を向上させる更なる効果は得られない。質量比(B/D)は0.2以上であることがより好適である。
本発明の樹脂組成物中のEVOH(B)とエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(D1)及び酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D2)の合計量との質量比[B/(D1+D2)]は、1〜100であることが好適である。質量比[B/(D1+D2)]が100よりも大きい場合、スクリュー付着量が増加しやすくなる。質量比[B/(D1+D2)]は25以下であることがより好適である。一方、質量比[B/(D1+D2)]が1未満の場合、本発明が解決する課題の背景である、廃棄物削減や経済性の点で相応しくない。質量比[B/(D1+D2)]は3以上であることがより好適である。
本発明の樹脂組成物中の未変性EVAc(D3)と、S−EVOH(D1)及び酸変性EVAc(D2)の合計量との質量比[D3/(D1+D2)]は、0.1〜50であることが好適である。質量比[D3/(D1+D2)]が50よりも大きい場合、EVOH(B)の分散性を向上させる更なる効果は得られない。質量比[D3/(D1+D2)]は30以下であることがより好適である。一方、質量比[D3/(D1+D2)]が0.1未満の場合、EVOHが分散せず、スクリューへの付着物が生じやすくなり、得られる成形品の凹凸が生じやすくなる。質量比[D3/(D1+D2)]は0.4以上であることがより好適である。
次に、ポリオレフィン(A)、EVOH(B)、及び脂肪酸金属塩(C)を混合して、本発明の樹脂組成物を得る方法、および当該樹脂組成物の成形方法について述べる。
本発明の樹脂組成物を得るための各成分の混合手段としては、リボンブレンダー、高速ミキサーコニーダー、ミキシングロール、押出機、インテンシブミキサーなどが例示される。
本発明の樹脂組成物を得るための混合方法について特に制限はなく、ポリオレフィン(A)、EVOH(B)及び脂肪酸金属塩(C)を一度にドライブレンドして溶融混練する方法;ポリオレフィン(A)、EVOH(B)及び脂肪酸金属塩(C)の一部を予め溶融混練してから、他の成分を配合して溶融混練する方法;ポリオレフィン(A)、EVOH(B)、及び脂肪酸金属塩(C)の一部を含有する多層構造体と、他の成分を配合して溶融混練する方法が挙げられる。
中でも、ポリオレフィン(A)の層及びEVOH(B)の層を含有する多層構造体からなる成形物を得る際に発生する端部や不良品を回収したスクラップと、脂肪酸金属塩(C)を溶融混練する方法が好適である。このように、回収されたスクラップを溶融混練する際に配合される添加剤を回収助剤といい、ここでは、脂肪酸金属塩(C)が回収助剤として用いられる。このとき、脂肪酸金属塩(C)と熱可塑性樹脂とを予め溶融混練して、得られた樹脂組成物をスクラップに添加することが好ましい。このような回収助剤は、好適にはペレット形状でスクラップに配合される。スクラップは、適当な寸法に粉砕しておくことが好ましく、粉砕されたスクラップに対してペレット形状の回収助剤をドライブレンドしてから溶融混練するのが、本発明の樹脂組成物の好適な製造方法である。なお、スクラップとしては、一つの成形物から得られるスクラップを用いてもよいし、二つ以上の成形物から得られる関連するスクラップを混合して使用してもよい。なお、ポリオレフィン(A)の層及びEVOH(B)の層を含有する多層構造体は、通常、さらに接着性樹脂の層を有するため、得られるスクラップ及びそれを用いて得られた樹脂組成物は接着性樹脂を含有することとなる。ここで接着性樹脂としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィン樹脂を好適に用いることができる。
さらに、本発明の樹脂組成物の原料とされるスクラップが、回収物層を含有する多層構造体からなるものであってもよい。すなわち、回収物から得られた樹脂組成物からなる回収物層を含有する多層構造体からなる成形品を製造し、その成形品のスクラップ回収物を、再び同様の多層構造体における回収物層の原料として用いてもよい。
本発明の樹脂組成物が、ポリオレフィン(A)、EVOH(B)及び脂肪酸金属塩(C)以外の成分を含む場合、それらの成分を配合する方法は特に限定されず、上述の(A)〜(C)の各成分と同様の操作で配合することができる。中でも、本発明の樹脂組成物がエチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)を含有する場合、脂肪酸金属塩(C)とエチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)とからなる樹脂組成物を回収助剤として用いることが好適である。(D)成分として、S−EVOH(D1)、酸変性EVAc(D2)及び未変性EVAc(D3)のうち1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。その中でも、ポリオレフィン(A)及びEVOH(B)の相容性を改善し、スクリュー付着物を抑制し、得られる成形品の凸凹を改善できる観点から、(D)成分が、S−EVOH(D1)及び/又は酸変性EVAc(D2)を含むことがより好適である。さらに(D)成分が、S−EVOH(D1)及び/又は酸変性EVAc(D2)に加えて、未変性EVAc(D3)を含むことがさらに好適である。特にスクリュー付着を抑制する観点からは、S−EVOH(D1)を含むこと、又は、S−EVOH(D1)及び未変性EVAc(D3)を含むことが特に好適である。また、特に外観を良好にさせる観点からは、酸変性EVAc(D2)を含むこと、又は、酸変性EVAc(D2)及び未変性EVAc(D3)を含むことが特に好適である。また、本発明の樹脂組成物がハイドロタルサイト(G)を含有する場合にも、脂肪酸金属塩(C)とともに回収助剤として用いることが好適である。このような回収助剤の製造方法は、前述と同様の方法が採用される。
また、本発明の好適な実施態様は、ポリオレフィン(E)の層と、エチレン含有量20〜65モル%、酢酸ビニル単位のけん化度96%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(F)(以下、EVOH(F)と略称することがある)の層とを有する多層構造体の回収物に添加する回収助剤であって、該回収助剤が、炭素数4〜24の脂肪酸とオールレッド(A.L.Allred)とロコウ(E.G.Rochow)による電気陰性度が1.5以上である金属との塩である脂肪酸金属塩(C)を含有し、かつ該回収助剤中の脂肪酸金属塩(C)の含有量が0.5〜60質量%であることを特徴とする回収助剤である。
ここで用いられるポリオレフィン(E)としては、ポリオレフィン(A)について上述したものと同じものを用いることができる。また、EVOH(F)としては、EVOH(B)について上述したものと同じものを用いることができる。
本発明の回収助剤中の脂肪酸金属塩(C)の含有量は、0.5〜60質量%であることが好ましい。脂肪酸金属塩(C)の含有量が0.5質量%よりも小さい場合、スクリューに付着物が生じやすくなり、得られる成形品に凹凸が生じやすくなる。脂肪酸金属塩(C)の含有量が1質量%以上であることがより好適である。一方、脂肪酸金属塩(C)の含有量が60質量%よりも多い場合、得られた成形品に穴があくことがある。脂肪酸金属塩(C)の含有量が40質量%以下であることがより好適である。
本発明の樹脂組成物は、周知の溶融押出成形機、圧縮成形機、トランスファ成形機、射出成形機、吹込成形機、熱成形機、回転成形機、ディップ成形機などを使用して、フィルム、シート、チューブ、ボトル、カップなどの任意の成形品に成形することができる。成形に際しての押出温度は、本発明の樹脂組成物を構成するポリオレフィン(A)の種類、ポリオレフィン(A)およびEVOH(B)のメルトインデックス、ポリオレフィン(A)およびEVOH(B)の組成比または成形機の種類などにより適宜選択されるが、多くの場合170〜350℃の範囲である。
本発明の好適な実施態様は、上記樹脂組成物からなる層を有する多層構造体である。その層構成の適当な例としては、本発明の樹脂組成物をc、ポリオレフィンをa、EVOHをb、接着性樹脂をadで表わすと、例えば次のような層構成として表される。ここでadとしては、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィン樹脂を好適に用いることができる。
3層 c/ad/b
4層 a/c/ad/b
5層 c/ad/b/ad/c、a/ad/b/ad/c
6層 a/c/ad/b/ad/a、c/a/ad/b/ad/a、c/a/ad/b/ad/c、a/c/ad/b/ad/c
7層 a/c/ad/b/ad/c/a
またこのような多層構造体のスクラップを溶融混練することによって本発明の樹脂組成物を得ることもできる。したがって多層構造体にad層が存在する場合には、本発明の樹脂組成物中に接着性樹脂(ad)が構成成分として含まれることになる。
多層構造体の製造方法としては、樹脂層の種類に対応する数の押出機を使用し、この押出機内で溶融された樹脂の流れを重ねあわせた層状態で同時押出成形する、いわゆる共押出成形により実施する方法が好適である。別の方法として、押出コーティング、ドライラミネーションなどの成形方法も採用され得る。また、本発明の樹脂組成物の単独成形品または本発明の樹脂組成物を含む多層構造体を一軸延伸、二軸延伸またはブロー延伸などの延伸を実施することにより、力学的物性、ガスバリア性などに優れる成形物を得ることができる。
上記の層構成の多層構造体は、ガスバリア性に優れたEVOHを含有しているので、ガスバリア性の要求される食品、医薬品、医療用具などの包装材として有用である。
本発明の樹脂組成物は、溶融成形時にスクリューへの付着物が少なく、それを用いて得られる成形品の凹凸が改善され、外観が美麗であることから、その工業的意義は大きい。
本実施例では以下の原料を使用した。なお、以下の製造例、実施例および比較例において、(部)は特に断わりのない限り質量基準で表したものである。
[ポリオレフィン(A)]
A−1:ポリプロピレン[密度0.90g/cm、メルトインデックス1.4g/10分(ASTM−D1238、230℃、2160g荷重)]、日本ポリプロ株式会社製、「ノバテックPP EA7A」
[EVOH(B)]
B−1:エチレン含有量32モル%、酢酸ビニル含有量68モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体のけん化物。けん化度99.7モル%、含水フェノール中30℃における極限粘度1.1dL/g、密度1.15g/cm、メルトインデックス1.6g/10分(ASTM−D1238、190℃、2160g荷重)。
[脂肪酸金属塩(C)]
C−1:ステアリン酸亜鉛(C1735COO)Zn
C−2:ステアリン酸鉛(C1735COO)Pb
C−3:ベヘン酸亜鉛(C2143COO)Zn
C−4:ステアリン酸カルシウム(C1735COO)Ca
C−5:モンタン酸亜鉛(C2755COO)Zn
[S−EVOH(D1)]
D−1:エチレン含有量89モル%、酢酸ビニル含有量11モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体のけん化物。けん化度97モル%、メルトインデックス5.1g/10分(ASTM−D1238、190℃、2160g荷重)
[酸変性EVAc(D2)]
D−2:エチレン含有量89モル%、酢酸ビニル含有量11モル%の酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体。メルトインデックス16.0g/10分(ASTM−D1238、190℃、2160g荷重)、無水マレイン酸変性量0.2mmol/g
[未変性EVAc(D3)]
D−3:エチレン含有量93モル%、酢酸ビニル含有量7モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体。メルトインデックス2.5g/10分(ASTM−D1238、190℃、2160g荷重)、三井デュポンポリケミカル株式会社製、「エバフレックスEV460」
[酸変性EVAc(D2)と未変性EVAc(D3)の混合樹脂]
D−4:エチレン含有量93モル%、酢酸ビニル含有量7モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(メルトインデックス2.5g/10分(ASTM−D1238、190℃、2160g荷重)、三井デュポンポリケミカル株式会社製、「エバフレックスEV460」)と、エチレン含有量89モル%、酢酸ビニル含有量11モル%の酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(メルトインデックス16.0g/10分(ASTM−D1238、190℃、2160g荷重)、無水マレイン酸変性量0.2mmol/g)を85:15でドライブレンドした混合樹脂。エチレン含有量91.8モル%、酢酸ビニル含有量8.2モル%
[その他]
ハイドロタルサイト:協和化学工業株式会社製、「ZHT−4A」
LDPE:密度0.92g/cm、メルトインデックス1.2g/10分(ASTM−D1238、190℃、2160g荷重)、宇部丸善ポリエチレン株式会社製、「UBEC535」
接着性樹脂:密度0.90g/cm、メルトインデックス3.2g/10分(ASTM−D1238、230℃、2160g荷重)、三菱化学株式会社製、「モディックAP P604V」(ポリプロピレン用銘柄)
酸化防止剤:ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバスペシャリティーケミカルズ社製、「イルガノックス1010」
[酸変性量の定量]
JIS規格K2501に基づいて、酸変性EVAc(D2)の酸価から酸変性量(mmol/g)を算出した。混合樹脂の酸変性量は各成分の酸変性量を合計することにより算出した。
[マスターバッチの製造]
以下の方法にしたがって、マスターバッチ(MB1〜MB14)を得た。
MB1
脂肪酸金属塩(C)としてC−1、S−EVOH(D1)としてD−1、未変性EVAc(D3)としてD−3、ハイドロタルサイト、酸化防止剤を用い、C−1/D−1/D−3/ハイドロタルサイト/酸化防止剤=5/25/67.4/2.5/0.1の質量比になるようにドライブレンドで配合した。得られた混合物を30mmφの同方向二軸押出機(日本製鋼所製、TEX−30N)を用いて200℃の押出温度で溶融混練した後ペレット化し、マスターバッチ(MB1)を得た。
MB2
脂肪酸金属塩(C)をC−1からC−2に変えたこと以外はMB1と同様に実施し、マスターバッチ(MB2)を得た。
MB3
脂肪酸金属塩(C)をC−1からC−3に変えたこと以外はMB1と同様に実施し、マスターバッチ(MB3)を得た。
MB4
脂肪酸金属塩(C)としてC−1、S−EVOH(D1)としてD−1、未変性EVAc(D3)としてD−3、ハイドロタルサイト、酸化防止剤を用い、C−1/D−1/D−3/ハイドロタルサイト/酸化防止剤=30/25/42.4/2.5/0.1の質量比になるようにドライブレンドで配合した以外はMB1と同様に実施し、マスターバッチ(MB4)を得た。
MB5
脂肪酸金属塩(C)としてC−1、酸変性EVAc(D2)としてD−2、LDPE、ハイドロタルサイト、酸化防止剤を用い、C−1/D−2/LDPE/ハイドロタルサイト/酸化防止剤=5/15/77.4/2.5/0.1の質量比になるようにドライブレンドで配合した以外はMB1と同様に実施し、マスターバッチ(MB5)を得た。
MB6
脂肪酸金属塩(C)としてC−1、酸変性EVAc(D2)及び未変性EVAc(D3)の混合樹脂としてD−4、ハイドロタルサイト、酸化防止剤を用い、C−1/D−4/ハイドロタルサイト/酸化防止剤=5/92.4/2.5/0.1の質量比になるようにドライブレンドで配合した以外はMB1と同様に実施し、マスターバッチ(MB6)を得た。
MB7
脂肪酸金属塩(C)としてC−1、S−EVOH(D1)としてD−1、LDPE、ハイドロタルサイト、酸化防止剤を用い、C−1/D−1/LDPE/ハイドロタルサイト/酸化防止剤=5/25/67.4/2.5/0.1の質量比になるようにドライブレンドで配合した以外はMB1と同様に実施し、マスターバッチ(MB7)を得た。
MB8
脂肪酸金属塩(C)としてC−1、S−EVOH(D1)としてD−1、未変性EVAc(D3)としてD−3、ハイドロタルサイト、酸化防止剤を用い、C−1/D−1/D−3/ハイドロタルサイト/酸化防止剤=5/3/89.4/2.5/0.1の質量比になるようにドライブレンドで配合した以外はMB1と同様に実施し、マスターバッチ(MB8)を得た。
MB9
脂肪酸金属塩(C)としてC−1、S−EVOH(D1)としてD−1、未変性EVAc(D3)としてD−3、ハイドロタルサイト、酸化防止剤を用い、C−1/D−1/D−3/ハイドロタルサイト/酸化防止剤=5/1.5/90.9/2.5/0.1の質量比になるようにドライブレンドで配合した以外はMB1と同様に実施し、マスターバッチ(MB9)を得た。
MB10
脂肪酸金属塩(C)をC−1からC−4に変えたこと以外はMB1と同様に実施し、マスターバッチ(MB10)を得た。
MB11
脂肪酸金属塩(C)をC−1からC−5に変えたこと以外はMB1と同様に実施し、マスターバッチ(MB11)を得た。
MB12
脂肪酸金属塩(C)を配合せず、S−EVOH(D1)としてD−1、未変性EVAc(D3)としてD−3、ハイドロタルサイト、酸化防止剤を用い、D−1/D−3/ハイドロタルサイト/酸化防止剤=25/72.4/2.5/0.1の質量比になるようにドライブレンドで配合した以外はMB1と同様に実施し、マスターバッチ(MB12)を得た。
MB13
脂肪酸金属塩(C)としてC−1、S−EVOH(D1)としてD−1、未変性EVAc(D3)としてD−3、ハイドロタルサイト、酸化防止剤を用い、C−1/D−1/D−3/ハイドロタルサイト/酸化防止剤=0.3/25/72.1/2.5/0.1の質量比になるようにドライブレンドで配合した以外はMB1と同様に実施し、マスターバッチ(MB13)を得た。
MB14
脂肪酸金属塩(C)としてC−1、S−EVOH(D1)としてD−1、未変性EVAc(D3)としてE−1、ハイドロタルサイト、酸化防止剤を用い、C−1/D−1/D−3/ハイドロタルサイト/酸化防止剤=70/21.5/5.9/2.5/0.1の質量比になるようにドライブレンドで配合した以外はMB1と同様に実施し、マスターバッチ(MB14)を得た。
比較例6
[回収物の製造]
最外層にポリオレフィン(A)としてA−1、最内層にEVOH(B)としてB−1、接着性樹脂層に三菱化学株式会社製「モディックAP P604V」を用い、フィードブロックダイにてポリオレフィン層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/ポリオレフィン層=200μm/20μm/20μm/20μm/200μmの3種5層共押出を行い、多層フィルムを作成した。フィードブロックへのそれぞれの樹脂の供給は、ポリオレフィン層は32mmφ押出機、接着性樹脂層は25mmφ押出機、EVOH層は20mmφ押出機をそれぞれ使用し、また押出の温度は各樹脂とも220℃、ダイス部、フィードブロック部も220℃で行った。
続いて、得られた多層フィルムを径8mmφメッシュの粉砕機で粉砕して回収物を得た。得られた回収物の質量比は、ポリオレフィン(A−1)/EVOH(B−1)/接着性樹脂=85.9/5.5/8.6であった。
[繰り返しペレット化]
回収物と脂肪酸金属塩(C)としてC−1を、回収物/C−1=100/0.15の質量比でドライブレンドし、10.3kgの混合物を25mmφの同方向二軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて押出温度220℃、吐出6kg/hで溶融混練した後ペレット化した。続いて得られたペレットを熱風乾燥機で80℃、1時間乾燥した後、再び25mmφの同方向二軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて押出温度220℃、吐出6kg/hで溶融混練した後ペレット化した。さらに上記方法と同様の乾燥、ペレット化を3回繰り返した。
[スクリュー付着量の測定]
上述のとおり計5回ペレット化した後、続けて0.5kgのLDPE(日本ポリエチレン株式会社製、「ノバテックLD LA320」)を投入し、ペレット化した。そしてLDPEが流れきった後に運転を止めて、スクリューを取り出し、スクリュー付着物を回収し、得られたスクリュー付着物の質量を秤量した。結果を表1に記載する。
[単層フィルムの作成]
5回ペレット化した後のペレットを熱風乾燥機で80℃、8時間乾燥した後、20mmφの一軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、ラボプラストミル)に300mmのダイスを装着して厚さ60μmの単層フィルムを作成し、得られた単層フィルムの外観を以下のとおり評価した。結果を表1に記載する。
[単層フィルムの外観]
単層フィルムをA4サイズに切り出し、偏光膜を単層フィルムの両側に挟み、超高輝度面照射装置(電通産業株式会社製、DSK−17i−HF45W8−LC60K)を用いて、蛍光灯をフィルムに照射させることでフィルムの凹凸を目視で確認し、凹凸を以下の様に評価した。尚、上記方法で行なうことにより、凹凸は白黒の陰影で浮かび上がり、特に凹が白い箇所として確認できる。
AA:凹凸は見当たらず、さらに、Aと比較してフィルムを手で触ったときの感触が滑らかである。
A:凹凸が見当たらない。
B:凹凸が若干確認できる。
C:凹凸がはっきりと確認できる。
D:フィルムのところどころに穴があいている。
実施例2
脂肪酸金属塩C−1の替わりにマスターバッチ(MB1)を用い、回収物/MB1=100/3の質量比でドライブレンドしたこと以外は、比較例6と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
実施例3
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB2)を用いたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
実施例4
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB3)を用いたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
実施例5
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB4)を用いたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
実施例6
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB5)を用いたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
実施例7
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB6)を用いたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
実施例8
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB7)を用いたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
比較例7
実施例2において、回収物の製造の際に、多層フィルムの層の厚みをポリオレフィン層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/ポリオレフィン層=200μm/20μm/100μm/20μm/200μmとしたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。なお、回収物の各成分の質量比は、ポリオレフィン(A−1)/エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(B−1)/接着性樹脂=70.5/22.5/7.0であった。結果を表1にまとめて記載する。
比較例8
実施例2において、回収物の製造の際に、多層フィルムの層の厚みをポリオレフィン層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/ポリオレフィン層=200μm/20μm/40μm/20μm/200μmとし、さらにマスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB8)を用いたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
比較例9
実施例2において、回収物の製造の際に、多層フィルムの層の厚みをポリオレフィン層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/ポリオレフィン層=200μm/20μm/10μm/20μm/200μmとし、さらにマスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB9)を用いたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
比較例10
[多層構造体の作成]
最外層にポリオレフィンとしてA−1、最外層の隣層に比較例6で作成したペレット、最内層にEVOH(B−1)、接着性樹脂層に接着性樹脂を用い、フィードブロックダイにてポリオレフィン層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/ポリオレフィン層=50μm/150μm/40μm/40μm/40μm/150μm/50μmの4種7層共押出を行い、多層構造体を作成した。フィードブロックへのそれぞれの樹脂の供給は、ポリオレフィン層及び樹脂組成物層は32mmφ押出機、接着性樹脂層は25mmφ押出機、EVOH層は20mmφ押出機をそれぞれ使用し、また押出の温度は各樹脂とも220℃、ダイス部、フィードブロック部も220℃で行った。
こうして得られた多層構造体は、表面に凹凸や穴空きが見当たらず、外観が美麗であった。
比較例1
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB10)を用いたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
比較例2
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB11)を用いたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
比較例3
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB12)を用いたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
比較例4
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB13)を用いたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
比較例5
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB14)を用いたこと以外は、実施例2と同様に繰り返しペレット化、製膜を行った。得られたスクリュー付着物の量と外観評価の結果を表1にまとめて記載する。
Figure 0005497673
上記結果によると、炭素数4〜24の脂肪酸と、オールレッド(A.L.Allred)とロコウ(E.G.Rochow)による電気陰性度が1.5以上である金属との塩である脂肪酸金属塩(C)を使用し、脂肪酸金属塩(C)の含有量が特定の範囲内にある実施例2〜8はペレット化後のスクリュー付着量が少なく、且つ得られる単層フィルムの外観にも優れていた。
一方、炭素数4〜24の脂肪酸と、オールレッド(A.L.Allred)とロコウ(E.G.Rochow)による電気陰性度が1.5以上である金属との塩である脂肪酸金属塩(C)以外の脂肪酸金属塩を使用した比較例1及び2、脂肪酸金属塩(C)を含有しない又は含有量が少ない比較例3及び4はいずれもスクリュー付着量が多く、また単層フィルムの外観も劣っていた。脂肪酸金属塩(C)の配合量が多い比較例5は、スクリュー付着量は少なかったものの、単層フィルムのところどころに穴が空いていた。

Claims (5)

  1. ポリオレフィン(A)、エチレン含有量20〜65モル%、酢酸ビニル単位のけん化度96%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(B)脂肪酸金属塩(C)、エチレン含有量68〜98モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)及びハイドロタルサイト(G)を含有する樹脂組成物であって、
    脂肪酸金属塩(C)が、炭素数4〜24の脂肪酸と、オールレッド(A.L.Allred)とロコウ(E.G.Rochow)による電気陰性度が1.5以上である金属との塩であり
    エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)が、酢酸ビニル単位のけん化度20%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(D1)及び/又は酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D2)を含み、
    前記樹脂組成物中の、ポリオレフィン(A)の含有量が80〜99.9質量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(B)の含有量が0.1〜20質量%、脂肪酸金属塩(C)の含有量が0.02〜2質量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)の含有量が0.1〜20質量%、ハイドロタルサイト(G)の含有量が0.05〜2質量%であり、かつ
    エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(B)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(D1)及び酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D2)の合計量との質量比[B/(D1+D2)]が1〜25であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. さらに未変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D3)を含有し、未変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D3)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(D1)及び酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(D2)の合計量との質量比[D3/(D1+D2)]が0.1〜50である請求項記載の樹脂組成物。
  3. 脂肪酸金属塩(C)が亜鉛塩又は鉛塩である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
  4. ポリオレフィン(A)の層とエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(B)の層とを有する多層構造体の回収物と、
    脂肪酸金属塩(C)、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はそのけん化物(D)及びハイドロタルサイト(G)を含有する回収助剤とを溶融混練する請求項1〜のいずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
  5. 請求項1〜のいずれか記載の樹脂組成物からなる層を有する多層構造体。
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