図1において、医療情報システム2は、病院等の医療施設に構築され、診療科10に設置される診療科端末11、放射線検査科(以下、単に検査科という)12に設置されるレポート作成端末13、データベース(以下、DBと略す)サーバ14、およびこれらを通信可能に接続するネットワーク15を備える。ネットワーク15は、例えば、院内に敷設されたLAN(Local Area Network)である。
診療科端末11は、検査や読影を依頼する診療科10の医師(以下、依頼医という)によって操作される。診療科端末11は、カルテ16の閲覧や入力の他、検査科12に対して検査を依頼するためのオーダを発行する際に利用される。診療科端末11は、検査科12から提供される検査画像17やレポート18を表示して、依頼医の閲覧に供する。
レポート作成端末13は、読影を専門とする検査科12の医師(以下、読影医という)によって操作される。レポート作成端末13は、読影医がオーダを確認したり、レポート18を作成したりするときに利用される。レポート作成端末13は、画像表示画面やレポート編集画面44(図3参照)を表示して、レポート18の作成を支援する。
DBサーバ14には、カルテDB19、画像DB20、レポートDB21、病変DB22等の複数のDBが構築されている。カルテDB19は、患者毎のカルテ16のデータ等を格納する。画像DB20は、CR装置、CT装置、MRI装置といった検査科12のモダリティ23によって撮影された検査画像17のデータを格納する。レポートDB21は、レポート作成端末13によって作成されたレポート18のデータを格納する。病変DB22は、レポート18のデータから抜き出された患者毎の病変のデータを病変テーブル24(図11参照)に格納する。
DBサーバ14は、ネットワーク15を通じて、モダリティ23から検査画像17のデータを受信して、受信した検査画像17のデータを画像DB20に格納する。つまり、DBサーバ14は、いわゆるPACS(Picture Archiving and Communication Systems)サーバとして機能し、モダリティ23とともにPACSを構成する。
検査画像17のデータは、個々の検査画像17を識別するための画像IDを有する。検査画像17のデータは、例えば、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)に準拠したファイル形式で、画像DB20に格納される。検査画像17のファイルには、患者ID、検査ID、検査日、検査種等の項目を含む付帯情報を記録したDICOMタグが付与される。画像DB20に格納された検査画像17のデータは、DICOMタグの各種項目を検索キーとして、検索が可能である。
DBサーバ14は、診療科端末11およびカルテDB19とともにカルテシステムを構成する。また、DBサーバ14は、レポート作成端末13、画像DB20、並びにレポートDB21とともにレポート作成支援システムを構成する。レポート18のデータは、検査画像17のデータと同様、個々のレポート18を識別するためのレポートIDを有し、レポートID、検査ID、患者ID、患者名等の検索キーによって検索が可能である。なお、本例では、各DB19〜22を一つのDBサーバ14に構築した例で説明しているが、各DB19〜22を別々のDBサーバに構築してもよい。
診療科端末11が発行するオーダは、患者ID、患者名、依頼日、依頼元、検査種(CTやMRI等)、検査目的、読影の要否等の情報を記録する各種項目を有する。依頼元の項目には、内科、脳外科等の依頼医の所属、氏名、医師IDといった情報が記録される。検査目的の項目には、治療中の病巣に対する治療効果を判定する治療効果判定、転移巣の有無を調べる転移検索等の情報が記録される。
診療科端末11が発行したオーダは、検査科12に設置されたオーダ受付端末(図示せず)に送信されて、検査科12に受け付けられる。オーダ受付端末は、受信したオーダに検査IDを付与して、オーダのデータを管理する。検査IDは、受付完了通知とともにオーダ受付端末から診療科端末11に送信される。検査科12のスタッフ(検査技師)は、オーダ受付端末で受信したオーダに基づいて、モダリティ23による撮影を行う。
読影が必要な場合(オーダの読影の要否の項目が要の場合)には、検査IDが付与されたオーダが、オーダ受付端末からレポート作成端末13に送信される。読影医は、レポート作成端末13を介してオーダを確認し、画像DB20から読影の対象となる検査画像17のデータを読み出す。そして、読み出した検査画像17の読影結果をレポート18にまとめる。治療効果判定といった病変の経過観察を検査目的とする場合は、当該患者の前回のレポート18をコピー利用し、前回と異なる部分を修正する等してレポート18を作成する。
レポート18の作成が完了すると、読影医は、オーダ発行元の診療科端末11に対して、レポート作成端末13を通じて作成完了通知を送信する。作成完了通知には、検査画像17やレポート18が格納される各DB20、21内のアドレスが含まれている。依頼医は、診療科端末11を通じて作成完了通知に含まれるアドレスにアクセスして、検査画像17やレポート18を閲覧する。
各端末11、13およびDBサーバ14は、それぞれ、パーソナルコンピュータ、サーバ用コンピュータ、ワークステーションといったコンピュータをベースに、オペレーティングシステム等の制御プログラムや、クライアントプログラム又はサーバプログラムといったアプリケーションプログラムをインストールして構成される。
図2において、各端末11、13およびDBサーバ14を構成するコンピュータは、基本的な構成は略同じであり、それぞれ、CPU30、メモリ31、ストレージデバイス32、LANポート33、およびコンソール34を備えている。これらはデータバス35を介して相互接続されている。
ストレージデバイス32は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)である。ストレージデバイス32には、制御プログラムやアプリケーションプログラム(以下、APという)36が格納される。また、レポート作成端末13のストレージデバイス32には、各パネル51、52、用語選択ボタン53の選択状態や入力ボックス56の入力状態(以下、まとめて選択入力状態という)に応じて所見文を作成するための所見文作成用定義(図示せず)や描画データ75(図5参照)が格納される。描画データ75は、ディスプレイ37に表示する各種操作画面のGUI(Graphical User Interface)の種類、配置、大きさ、色等を規定したものである。
さらに、DBサーバ14には、プログラムを格納するHDDとは別に、DB用のストレージデバイス32として、例えば、HDDを複数台連装したディスクアレイが設けられる。ディスクアレイは、DBサーバ14の本体に内蔵されるものでもよいし、本体とは別に設けられ、本体にケーブルやネットワークを通じて接続されるものでもよい。
メモリ31は、CPU30が処理を実行するためのワークメモリである。CPU30は、ストレージデバイス32に格納された制御プログラムをメモリ31へロードして、プログラムに従った処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。メモリ31には、選択入力状態を表す一時記憶データ76(図5参照)が一時記憶される。
LANポート33は、ネットワーク15との間の伝送制御を行うネットワークインタフェースである。コンソール34は、ディスプレイ37と、キーボードやマウス等の入力デバイス38とからなる。
診療科端末11には、AP36として、カルテ16の閲覧や編集を行うカルテ用ソフトウエア、検査画像17やレポート18の閲覧を行うビューアソフトウエアといったクライアントプログラムがインストールされる。クライアントプログラムが起動されると、診療科端末11のディスプレイ37には、GUIによる操作画面が表示される。操作画面には、カルテDB19、画像DB20、レポートDB21から、それぞれ読み出されたカルテ16、検査画像17、レポート18を表示する表示画面が含まれる。
診療科端末11には、入力デバイス38を通じて、カルテ16の入力・編集の指示や、オーダの入力・発行の指示といった操作指示が入力される。入力されたカルテ16やオーダのデータは、カルテDB19に格納される。
レポート作成端末13には、AP36として、レポート作成支援を行うレポート編集用のクライアントプログラムがインストールされている。レポート作成端末13は、レポート編集用のクライアントプログラムによって、検査画像17の表示処理と、レポート18の編集処理とを行う。DBサーバ14には、AP36として、クライアントである各端末11、13からの要求に応じて処理を実行し、処理結果を応答するサーバプログラムがインストールされている。
図3において、レポート作成端末13のCPU30は、レポート編集用のクライアントプログラムを起動すると、コンソール制御部(表示制御手段に相当)40、DBアクセス部41、編集処理部42、およびオーダ取得部43として機能する。オーダ取得部43は、オーダ受付端末からネットワーク15を介してオーダを取得する。取得したオーダは、例えば、レポート作成端末13のストレージデバイス32に設けられたオーダテーブル(図示せず)に登録される。
レポート作成端末13は、CPU30が設けられた端末本体に、二台のディスプレイ37a、37bを接続した構成である。一台のディスプレイ37aには、検査画像17の観察用に使用される画像表示画面が出力される。もう一台のディスプレイ37bには、レポート18の作成に使用されるレポート編集画面44が出力される。
画像表示画面およびレポート編集画面44は、GUIによる操作画面を構成する。コンソール制御部40は、入力デバイス38の操作に応じた描画データ75をストレージデバイス32から読み出し、読み出した描画データ75に基づいてこれらの操作画面を各ディスプレイ37a、37bに出力する。コンソール制御部40は、操作画面を通じて、入力デバイス38からの操作指示の入力を受け付ける。
画像表示画面およびレポート編集画面44は、連動して起動する。レポート編集画面44から、読影対象の検査画像17が含まれる検査IDが入力されると、コンソール制御部40は、DBアクセス部41を通じて、検査IDに対応する検査画像17のデータを画像DB20から取得する。コンソール制御部40は、取得した検査画像17をディスプレイ37aに出力する際に、画像表示画面を起動する。
画像表示画面には、超音波診断装置で撮影された超音波画像、あるいはCR装置で撮影された放射線による透視画像や、CT装置やMRI装置で撮影された断層画像、断層画像に基づいて生成される三次元画像といった各種の検査画像17が表示される。画像表示画面は、一画面に六コマの断層画像を配列して表示するというように、複数の検査画像17を同時に表示することが可能である。画像表示画面には、操作ボタン、リストボックス、アイコンといった、GUIを構成する各種の操作ツールが設けられている。こうした操作ツールを通じて、入力デバイス38からの各種の操作指示が入力される。
レポート編集画面44には、基本情報表示領域45、所見文入力領域46、診断名表示領域47、用語選択入力領域48、診断名入力領域49、および操作ボタン領域50が設けられている。これら各領域は、GUIを構成する各種の操作ツールである。こうした操作ツールを通じて、入力デバイス38からの各種の操作指示が入力される。操作指示には、レポートDB21からレポート18のデータを読み出す指示、レポートDB21へレポート18のデータを保存する指示、所見文入力領域46を選択してアクティブ(入力が可能な状態)にする指示等が含まれる。
基本情報表示領域45には、患者名(「富永士郎」)、検査ID(「CT0803」)、検査画像17の撮影日(「10/7/30(2010年7月30日)」)といった基本情報が表示される。これらの基本情報は、オーダから読み出される。
所見文入力領域46には、読影医が検査画像17を観察して認識した、病変の状態等の観察記録、すなわち所見を表す文(以下、所見文という)が入力される。図においては、所見文入力領域46は一つだけ表示されているが、所見文入力領域46は追加することも可能である。所見文入力領域46を追加する際には、検査目的が複数ある場合(例えば、治療効果判定と転移検索等)に、検査目的毎に所見を分けて入力するといった使い方がされる。また、研修医と指導医、一次読影を行う読影医と二次読影を行う読影医等、複数の読影医が所見をそれぞれ入力するという使い方も可能である。
用語選択入力領域48は、マウスのクリック操作によって、所見文入力領域46へ所見文を入力するための操作ツールであり、テンプレート式操作ツールとも呼ばれる。用語選択入力領域48は、「肝臓」、「胆管」といった臓器別の大分類パネル51と、小分類パネル52とを有する。小分類パネル52は、「肝臓の形態」、「腫瘤性病変」といった、臓器毎に所見として記入されるべき項目を類型化した所見項目を有する。各パネル51、52は、タブによって切り替え選択が可能である。大分類パネル51として選択された臓器名は、所見文入力領域46の横に表示される。図3では、大分類パネル51として「肝臓」が、小分類パネル52として「肝臓の形態」がそれぞれ選択されている。
小分類パネル52には、さらに、複数の用語選択ボタン53が設けられている。用語選択ボタン53は、所見項目をさらに細分化した、「辺縁」、「表面」、「腫大」、「萎縮」等々の観察項目毎に、横並びに配列されている。例えば、「辺縁」の観察項目には、「鋭」、「やや鈍」、「鈍」、「表面」の観察項目には、「平滑」、「やや凹凸」、「凹凸」といった入力語句がある。「腫大」および「萎縮」の観察項目には、さらに「腫大程度」、「腫大部位」、「萎縮程度」、「萎縮部位」という従属項目がある。以下の説明では、特に区別する必要がない限り、観察項目と従属項目をまとめて観察項目という。用語選択ボタン53の用語には、各観察項目で使用される頻度が高い医療用語が使用されている。また、用語選択ボタン53の用語は全て、観察項目の程度や形状を表し、観察項目を修飾する語句である。
用語選択ボタン53は、各観察項目について一つだけ選択することが可能である。このため、例えば「辺縁−鋭」が選択されていて、「辺縁−鈍」を選択し直した場合は、「辺縁−鋭」の選択が自動的に解除される。
所見文入力領域46をアクティブにした状態で、所望の用語選択ボタン53にポインタ54を合わせて、マウスでクリック操作を行うと、選択された用語に基づいた所見文が所見文入力領域46に表示される。所見文入力領域46に入力された所見文には、キーボードを操作することで、修正加筆することも可能である。
所見文は、一個以上の用語選択ボタン53を選択したときに表示される。所見文は、用語選択ボタン53が追加選択される毎に表示が更新される。また、選択入力状態を表すメモリ31の一時記憶データ76も、用語選択ボタン53が追加選択される毎に更新される。追加選択は、例えば、二つの観察項目の用語選択ボタン53が選択されていて、三つ目の観察項目の用語選択ボタン53を選択する場合と、同一の観察項目で用語選択ボタン53の選択をし直す場合とを含む。
図3では、用語選択ボタン53として、斜線で示すように「辺縁−鈍」、「表面−凹凸」、「腫大程度−軽度」、「腫大部位−左葉」、「萎縮程度−高度」、「萎縮部位−右葉」、「実質均一度−不均一」、「実質濃度−低い」がそれぞれ選択されている。また、所見文として、「肝は辺縁鈍、表面凹凸、左葉の腫大は軽度、右葉の萎縮は高度、実質は不均一で低濃度です。」が所見文入力領域46に表示された状態を図示している。
診断名入力領域49には、確信度入力用のプルダウンメニュー55と診断名入力用の入力ボックス56とが設けられている。プルダウンメニュー55の横の逆三角の印をクリックすると、例えば高、中、低、あるいは確定、疑い等の確信度の度合いを示す選択肢がプルダウン表示される。入力ボックス56には、読影の結果導かれる診断名が読影医により入力される。入力ボックス56に入力された診断名は、診断名表示領域47に転載される。本例では診断名「肝硬変」が入力・表示された状態を示している。
操作ボタン領域50には、各種操作ボタン57〜60が設けられている。所見追加ボタン57は、所見文入力領域46を追加するためのものである。所見追加ボタン57にポインタ54を合わせてマウスをクリック操作すると、レポート編集画面44に所見文入力領域46が追加表示される。
所見文入力領域46に入力された所見文のデータ(以下、所見データという)は、個々を識別する所見IDを有する。所見IDは、検査画像17やレポート18と所見文との対応をとるためのものであり、所見文入力領域46の追加された順に付された番号を含む。N個目(Nは1以上の自然数)の所見文入力領域46に入力される所見文には、「F−N」の所見IDが割り当てられる。図3では、一個目の所見文入力領域46に所見文を入力する際を示しており、所見文入力領域46の上部に所見IDの「F−1」が表示されている。
終了ボタン58は、レポート18の編集を終了するためのものである。終了ボタン58が選択されると、レポート18のデータが確定保存される。確定保存されたレポート18は、不正な改ざんを防止するために、編集が禁止される。中断ボタン59は、レポート18の作成を一時中断するためのものである。中断ボタン59が選択されると、作成途中のレポート18のデータが一時保存される。キャンセルボタン60は、レポート編集画面44を閉じる際に選択される。
DBアクセス部41は、コンソール制御部40や編集処理部42からの指令に基づいて、DBサーバ14に対する処理要求の送信と処理結果の受信とを行う。画像DB20に対する処理要求には、検査IDや画像IDといった情報を検索キーとして、検査画像17を検索するための検索要求がある。レポートDB21に対する処理要求には、作成したレポート18のデータを格納するための格納要求と、作成したレポート18のデータや、作成途中のレポート18のデータの検索要求とがある。また、病変DB22に対する処理要求には、各患者の病変のデータの格納要求と、同一患者の病変の経過情報の検索要求とがある。
DBアクセス部41は、格納要求の対象となるデータを、編集処理部42から受け取り、DBサーバ14へ送信する。また、検索要求の対象となるデータを、DBサーバ14から受信して、コンソール制御部40に引き渡す。
DBサーバ14のCPU30は、サーバプログラムを実行することにより、検査画像17、およびレポート18のデータの格納処理部61および検索処理部62として機能する。格納処理部61は、レポート作成端末13やモダリティ23といったクライアントからの各データの格納要求に応じて、各DB19〜22へのデータの格納処理を実行する。検索処理部62は、診療科端末11、レポート作成端末13からの各データの配信要求に応答して、要求されたデータを各DB19〜22から検索・抽出して、抽出したデータを要求元へ配信する。
編集処理部42は、レポート編集画面44の所見文入力領域46に入力された所見データ、および各パネル51、52、用語選択ボタン53等の選択入力状態を、コンソール制御部40を通じて受け付ける。編集処理部42は、受け付けた所見データを、所見文入力領域46毎に区別してブロック化する。
編集処理部42は、ブロック化した所見データのそれぞれに「F−1」、「F−2」等の所見IDを付加して、これらをレポート18のデータに記録する。編集処理部42は、所見データの他に、オーダから読み出された検査ID、患者ID、患者名、選択入力状態といった情報を、レポート18のデータに付加する。選択入力状態のデータは、レポート18の確定保存時にメモリ31に記憶されていた一時記憶データ76である。
編集処理部42は、所見IDに加えて、各所見データに対して、その所見文を入力した読影医を識別するための医師IDを付加する。医師IDは、レポート作成端末13の起動時のユーザ認証の際等に読影医によって入力される。所見データは、所見IDや医師IDによって検索することが可能である。
編集処理部42は、ストレージデバイス32に格納された所見文作成用定義に基づいて、各パネル51、52、用語選択ボタン53等の選択入力状態に応じた所見文を作成する。所見文作成用定義は、臓器の項目を頂点として、所見項目、観察項目、観察項目毎の語句の順にデータを階層構造でもち、各観察項目の節の所見文中の位置、および各観察項目の節内の語句の並び順を規定する。所見文作成用定義は、例えば、観察項目毎に所見文を主部および述部に分類し、主部および述部を本体部および本体部を修飾する修飾部に分類して、所見文を構成する語句をそれぞれの部に振り分けたものである。所見文作成用定義は、所見文の途中であるか末尾であるかによる使用位置、および肯定形であるか否定形であるかによる使用形式によって述部の本体部がさらに分類されている。図3では、観察項目「腫大程度」、「萎縮程度」において、用語選択ボタン53で「なし」を選択した場合のみ使用形式が否定である。それ以外は全て肯定を表す。
観察項目「腫大」を例に挙げると、主部の修飾部には従属項目「腫大部位」の入力語句である「肝全体の」、「右葉の」、「左葉の」、主部の本体部には観察項目の「腫大は」、述部の本体部には従属項目「腫大程度」の入力語句である「軽度」、「中等度」、「高度」の使用位置が途中、使用形式が肯定である「軽度、」、使用位置が末尾、使用形式が肯定である「軽度です。」等、使用位置が途中、使用形式が否定である「なく、」、使用位置が末尾、使用形式が否定である「ありません。」がそれぞれ登録されている。
用語選択ボタン53のいずれかが選択された場合、編集処理部42は、まず、各パネル51、52の選択状態に対応する、所見文作成用定義の臓器の項目、所見項目の階層を辿る。そして、選択された用語選択ボタン53に対応する観察項目(以下、アクティブな観察項目という)の語句を、所見文作成用定義から読み出す。
続いて、編集処理部42は、アクティブな観察項目の述部の本体部を決定する。編集処理部42は、アクティブな観察項目に関する節の使用位置、および使用形式を調べる。編集処理部42は、アクティブな観察項目と同じ階層レベル(兄弟関係)にある観察項目がアクティブであるか否かを、所見文作成用定義の登録順に見ていく。使用位置、および使用形式の判定対象となるアクティブな観察項目の後に、別のアクティブな観察項目がある場合は、使用位置は「途中」、そうでなければ「末尾」となる。
選択された用語選択ボタン53に対応する語句の使用形式が「否定」であった場合、すなわち図3の例で「腫大程度−なし」、「萎縮程度−なし」が選択された場合、編集処理部42は、「腫大」、「萎縮」の使用形式を「否定」と断じる。それ以外は全て「肯定」と断じる。編集処理部42は、以上のようにして所見文作成用定義から読み出した各部の語句を、主部の修飾部、本体部、述部の修飾部、本体部の順(所見文作成用定義の並び(登録)順)に従って連結し、所見文を作成する。
図3の各パネル51、52、用語選択ボタン53の選択状態を例に挙げて、編集処理部42の所見文の作成処理を説明する。各パネル51、52として「肝臓」、「肝臓の形態」が選択されているので、編集処理部42は、所見文作成用定義の「肝臓」、その下層の「肝臓の形態」を辿る。そして、アクティブな観察項目(この場合は「辺縁」〜「実質」まで全て)の主部の本体部、および主部と述部の修飾部等を所見文作成用定義から読み出す。
この場合、全ての観察項目がアクティブであるため、観察項目「辺縁」〜「実質均一度」までは、使用位置が「途中」である。また、「腫大程度−なし」、「萎縮程度−なし」が選択されていないため、観察項目の使用形式は全て「肯定」である。従って、編集処理部42は、観察項目「実質濃度」以外は述部の本体部として使用位置が途中、使用形式が肯定の語句を所見文作成用定義から選択的に読み出す。このようにして読み出した各種語句を、予め定められた順序に従って連結すると、図3および段落[0057]に記載した所見文となる。
他の例を挙げると、「辺縁−鈍」のみが選択された場合、所見文は「辺縁鈍です。」となる。また、「腫大程度−なし」のみが選択された場合は、所見文は「腫大はありません。」、「萎縮程度−中等度」、「萎縮部位−肝全体」のみが選択された場合は、所見文は「肝全体の萎縮は中等度です。」となる。「実質−不均一」のみが選択された場合は、所見文は「実質は不均一です。」である。アクティブな観察項目が一つである場合は、所見文は単文となり、アクティブな観察項目が複数である場合は、所見文は各観察項目に関する節からなる重文となる。
図4は、小分類パネル52のタブを「腫瘤性病変」に切り替えたときの用語選択入力領域48診断名入力領域49を示す。以下、「腫瘤性病変」の用語選択入力領域48および診断名入力領域49を特に病変記述テンプレート65と呼ぶ。
病変記述テンプレート65には、図3に示す例と同様に、「形状」、「内部エコー」等の複数の観察項目毎に、「不整形」、「低エコー」等の用語選択ボタン53が配されている。観察項目「部位」、「大きさ」、「浸潤先」には用語選択ボタン53は配されておらず、代わりにキーボード入力を受け付ける入力ボックス66が設けられている。入力ボックス66は、観察項目「個数」の右端にも設けられている。入力ボックス66には、「右葉」、「左葉」、「S1」〜「S8」等の腫瘤性病変の場所を示す語句、「15」、「10」、「3」等の大きさ、箇所を表す数値がキーボード操作により入力可能である。観察項目「個数」の右端の入力ボックス66は、検査画像17に写る病変が多数あり、各病変の部位、大きさ、様態が全く同じ場合に使用される。この病変記述テンプレート65の所見文作成用定義は、キーボード入力される部分を空欄として登録している。
図4では、用語選択ボタン53として、斜線で示すように「形状−不整形」、「内部エコー−低エコー」、「エコーパターン−混合性」、「均一性−不均一」、「後方エコー−不変」、「血流信号−僅か」、「石灰化−なし」がそれぞれ選択されている。また、「部位−S2」、「大きさ−30mm×20mm」が入力ボックス66にキーボード入力されている。用語選択ボタン53の選択の仕方や所見文の作成手順は図3の例と同様であるため説明を省略する。
病変記述テンプレート65の上部には、経過情報ボタン67、プルダウンメニュー68、および病変追加ボタン69が設けられている。プルダウンメニュー68は、病変記述テンプレート65の新規追加、またはコピーを選択指定するためのものである。プルダウンメニュー68の横の逆三角の印をクリックすると、新規、コピーの選択肢がプルダウン表示される。病変追加ボタン69は、プルダウンメニュー68で選択指定された新規追加、またはコピーの指示信号を入力する際に操作される。
また、病変記述テンプレート65には、観察項目のうちの「部位」と「大きさ」のみ追加可能とする追加ボタン70が設けられている。なお、一部追加可能とする観察項目は、上記例の「部位」、「大きさ」に限らず、「形状」等でもよい。多発性病変の場合に複数入力が必要であると想定される一部の観察項目を追加可能とすれば、より病変の所見文入力の円滑化、迅速化に資することができる。
病変記述テンプレート65の診断名入力領域49は、図3に示す例の確信度入力用のプルダウンメニュー55と入力ボックス56に加えて、良化、悪化、変化なしといった病変の経過や、I型、II型等の病期を入力するためのプルダウンメニュー71、72が用意されている。なお、病変記述テンプレート65としては、「腫瘤性病変」に限らず、例えば脳内出血やくも膜下出血等の「出血性病変」の病変記述テンプレートに適用しても可である。また、病期を入力するためのプルダウンメニュー72がない病変記述テンプレート65もある(図11の病変ID「00002」等参照)。
検査画像17に写る病変が多数あり、一方は充実性、他方は嚢胞性の腫瘤性病変等、各病変の様態が全く異なると認められる場合、読影医は、病変記述テンプレート65のプルダウンメニュー68の新規を選択し、病変追加ボタン69をクリックする。プルダウンメニュー68で新規が指定され、病変追加ボタン69がクリックされると、図5に示すように、新規追加指示信号がコンソール制御部40に送信される。コンソール制御部40は、新規追加指示信号を受けて、ストレージデバイス32の描画データ75から病変記述テンプレート65の描画データを読み出す。この描画データは、用語選択ボタン53が選択されておらず、入力ボックス56、66に何も入力されていないプレーンな状態の病変記述テンプレート65を表すものである。
コンソール制御部40は、読み出した描画データ75に基づいて、ディスプレイ37bの画面の表示を図4から図6に示す状態に切り替える。図6において、コンソール制御部40は、小分類パネル52の「腫瘤性病変」のタブの後に、新規追加した病変記述テンプレート65のタブ「#2」(新規追加タブ80)を表示させる。
一方、検査画像17に写る多数の病変の様態が一部異なると認められる場合、読影医は、プルダウンメニュー68のコピーを選択し、病変追加ボタン69をクリックする。プルダウンメニュー68でコピーが指定され、病変追加ボタン69がクリックされると、図5に示すように今度はコピー指示信号がコンソール制御部40に送信される。コンソール制御部40は、新規追加指示信号を受けたときと同様に、プレーンな状態の病変記述テンプレート65を表す描画データ75をストレージデバイス32から読み出す。また、コンソール制御部40は、コピー元である「腫瘤性病変」のタブの用語選択ボタン53の選択状態を表す一時記憶データ76をメモリ31から読み出す。
コンソール制御部40は、一時記憶データ76を用いて用語選択ボタン53の選択入力状態をプレーンな病変記述テンプレート65に再現し、ディスプレイ37bの画面の表示を図4から図7に示す状態に切り替える。図7に示すタブ「#2」(コピー追加タブ81)は、用語選択ボタン53が選択されていないプレーンな状態の新規追加タブ80とは異なり、「腫瘤性病変」のタブの用語選択ボタン53の選択状態がそのまま保持されている。図7では図4に示す病変記述テンプレート65と同じ選択状態である。
各追加タブ80、81の名称「#2」は、元々ある「腫瘤性病変」のタブの二個目という意味である。さらに病変記述テンプレート65を追加・コピーした場合は、「#3」、「#4」、・・・の各追加タブ80、81が「腫瘤性病変」のタブの後に順次追加されていく。新規追加タブ80の用語選択ボタン53を選択入力した後、これをコピーしたり、コピー追加タブ81をさらにコピーしたりすることも可能である。
新規追加タブ80またはコピー追加タブ81を追加した場合、病変記述テンプレート65の病変追加ボタン69の横には削除ボタン73が生成される。削除ボタン73は、新規追加タブ80またはコピー追加タブ81を削除する際にクリックされる。
多発性病変であるが、部位、大きさが異なり、他の様態は略同じである場合、読影医は、追加ボタン70をクリックする。追加ボタン70がクリックされると、コンソール制御部40は、観察項目「部位」と「大きさ」を元々の項目の下段に追加した描画データ75をストレージデバイス32から読み出し、図8の下側に示すようにディスプレイ37bに表示させる。追加された観察項目「部位」、「大きさ」(追加項目82)には、上記実施形態の各追加タブ80、81と同様に削除ボタン83が設けられ、観察項目「部位」、「大きさ」を自由に追加、削除することが可能である。
病変記述テンプレート65を用いて作成した所見文には、個々の病変を識別するための病変IDが関連付けて記憶される。各追加タブ80、81、追加項目82を追加した場合、所見文入力領域46が自動的に追加され、それらで入力される所見文には、元々の「腫瘤性病変」のタブや元々の観察項目「部位」と「大きさ」の項目とは別の病変IDが新規に発行される。
レポート18のデータ構造を示す図9において、レポート18は、患者ID、患者名といった患者情報、検査ID、検査日、検査目的といった検査情報、および所見情報等をデータとしてもつ。所見情報は、所見ID、所見データ、医師ID、選択入力状態等で構成され、病変記述テンプレート65による所見情報は、上記に加えて病変IDを有する。レポート18にはこの他にも、レポート18の作成時に参照した検査画像(キー画像)の画像IDやオーダの情報等が記憶されている。
図10に示すように、病変IDは、DBサーバ14の格納処理部61により付される。格納処理部61は、レポート作成端末13のDBアクセス部41から格納要求とともに送信されるレポート18のデータのうち、病変記述テンプレート65による所見情報に病変IDがない場合、すなわち新規にレポート18を作成した場合、あるいは各追加タブ80、81、追加項目82を追加した場合、病変IDを新規に発行して当該所見情報に付加する。
一方、病変の経過観察を検査目的とし、当該患者の前回のレポート18をコピー利用した場合は、既に病変IDが発行されて所見情報に付加されているので、格納処理部61はその病変IDを変更せずに引き継ぐ。
格納処理部61は、レポート18のデータからレポートID、患者ID、検査日、病変記述テンプレート65の選択入力状態や診断名、経過、病期、病変ID等のデータを抜き出し、病変DB22に格納された図11に示す病変テーブル24に登録する。病変テーブル24は、病変ID、選択入力状態、診断名、経過、病期、レポートID、検査日等の項目を有する。これらの項目は、患者ID毎、つまり同一患者毎にまとめられている。この病変テーブル24によれば、ある患者が今までに発症した病変の履歴とその経過を辿ることができる。
例えば、患者ID「01234」の患者の病変ID「00001」の病変は、「10/7/30(2010年7月30日)」の検査で初めて発見され、レポートID「01524」のレポート18に所見文が記述されている。そのときの選択入力状態は、図4に示す例と同様に「部位−S2」、「大きさ−30mm×20mm」、「形状−不整形」、「内部エコー−低エコー」等となっている。診断名は「悪性腫瘍」、病期は「I型」である。初めて発見された病変であるため、経過の項目には何も登録されていない。
病変ID「00001」の病変は、その後の三回の経過観察の検査でも見られ、これに対応する情報が最初の行に続けて登録されている。三回の経過観察で選択入力状態の大きさが「34mm、25mm」、「22mm、15mm」、「22mm、15mm」となっており、経過が悪化、良化、変化なしと推移している。病期は「I型」で一貫している。他方、病変ID「00002」の病変は、二回目の経過観察で手術や薬剤投与によって治癒し消滅している。
病変ID「00002」の病変と病変ID「00003」の病変の初回の検査から二回目の経過観察までのレポートID、検査日は同一である。つまり、これらの病変は同じ検査で発見され、各追加タブ80、81、あるいは追加項目82を追加して同一のレポート18にて記述されたものである。
格納処理部61は、新規に病変IDを発行した場合、病変テーブル24の当該患者の行にその病変IDを登録するための行を新設し、選択入力状態その他の項目を埋める。既存の病変IDを継承した場合は、格納処理部61は病変テーブル24の当該患者の当該病変IDの行に一行追加し、その行に他の項目を追記する。このため、新たな病変が発見された場合、あるいは経過観察の検査毎に、当該患者の行、または当該病変IDの行に病変に関する情報が追記される。手術や薬剤投与によって病変が治癒した場合には、病変に関する情報の追記はそこで止まる。
患者IDや検査ID等を検索キーとし、入力デバイス38を通じてコンソール制御部40から前回のレポート18をコピー利用する指示を受信した場合、DBアクセス部41は、DBサーバ14の検索処理部62に検索要求を送信する。検索処理部62は、指示されたレポート18のデータをレポートDB21から検索・抽出し、抽出したデータをDBアクセス部41に引き渡す。コンソール制御部40は、DBアクセス部41に引き渡されたデータと描画データ75を元に、前回のレポート18の選択入力状態を再現したレポート編集画面44をディスプレイ37bに表示させる。過去のレポート18のコピー利用ではなく、新規にレポート18を作成する指示がされた場合は、レポート18のデータの検索・抽出は行われず、プレーンな状態のレポート編集画面44が表示される。
なお、オーダ取得部43で受け付けたオーダの患者IDや検査目的等の情報を検索キーとし、当該患者に対して以前に同じ条件で検査が行われているか否かを過去のオーダから検索することにより、そのオーダが初回の検査であるか経過観察等の再検査であるかを判定してもよい。初回の検査と判定した場合は新規にレポート18を作成するためのレポート編集画面44を表示させ、再検査と判定した場合は前回のレポート18を自動検索して、選択入力状態を再現したレポート編集画面44を表示させる。
経過情報ボタン67は、病変の経過観察を検査目的とし、当該患者の前回のレポート18をコピー利用した場合に選択可能となる。経過情報ボタン67がクリックされると、コンソール制御部40は、その病変記述テンプレート65で所見文を記述中の病変の経過情報を取得するための検索キーをDBアクセス部41に送信する。検索キーは、具体的にはコピー利用したレポート18のデータに付された当該病変の病変IDであり、一つの場合もあれば複数の場合もある。
図10において、DBアクセス部41は、受信した検索キーによる経過情報の検索要求をDBサーバ14の検索処理部62に送信する。検索処理部62は、検索キーの病変IDと一致する病変IDを病変テーブル24から検索・抽出する。検索処理部62は、抽出した病変IDの行に記憶された各項目の情報を元に図12に示す経過情報リスト90を作成して、これを検索結果としてDBアクセス部41に送信する。
図12において、経過情報リスト90は、検索キーで指定された病変IDの行のうち、患者ID、診断名、経過、病期といった項目を病変テーブル24から抜き出し、さらに選択入力状態のデータの部位、大きさ、容積等の数値を抽出してリスト化したものである。(A)は検索キーとして図11に示す病変テーブル24の病変ID「00001」が指定された場合、(B)は病変ID「00002」、「00003」が指定された場合をそれぞれ示す。病変ID「00002」、「00003」は、前述のように同一の検査で発見されて同一のレポート18に記述されているので、一緒に検索キーとして送信される。図示は省略したが、経過情報リスト90には、レポートIDや、レポートIDから辿ることができるキー画像の画像ID等も添付されている。
DBアクセス部41は、検索処理部62から受けた経過情報リスト90をコンソール制御部40に引き渡す。コンソール制御部40は、経過情報リスト90をそのまま、あるいは経過情報リスト90を加工して見易いレイアウトに変更する等してディスプレイ37bに表示させる。
検索キーとして病変ID「00002」、「00003」が指定され、図12の(B)に示す経過情報リスト90が送信された場合の表示例を図13に示す。この例では、キー画像のサムネイルと、容積の数値、折れ線グラフ、並びに経過、診断名の検査日毎の推移を表示している。キー画像のサムネイルは、経過情報リスト90の画像IDを検索キーとして画像DB20から検索・抽出する。容積の折れ線グラフは、容積の数値の最大値で規格化した検査日毎の各数値を、適当な縦軸のスケールでプロットしたものである。本例では病変ID「00002」、「00003」の二つの病変の診断名や折れ線グラフを同一のスキンに表示しているが、各病変の診断名や折れ線グラフを別々に表示してもよいし、これらの表示を切り替え可能に構成してもよい。
以下、上記構成による作用について、図14〜図16に示すフローチャートを参照して説明する。依頼医は、診療科端末11を使用してオーダを発行する。レポート作成端末13は、診療科端末11から発行されたオーダを、検査科12のオーダ受付端末を経由して受信する。
読影医は、レポート作成端末13にアクセスしてオーダを確認し、レポート18の作成を開始する。レポート編集画面44がディスプレイ37bに表示されると、これと連動して画像表示画面がディスプレイ37aに表示される。読影医は、画像表示画面で検査画像17を観察しながら、レポート編集画面44の所見文入力領域46に、それぞれ臓器別の所見文を入力する。
所見文の入力は、用語選択ボタン53を選択することにより行われる。図14において、用語選択ボタン53が選択されると(ステップ(以下、Sと略す)10でyes)、コンソール制御部40から編集処理部42に、各パネル51、52、用語選択ボタン53等の選択入力状態が通知される。また、選択入力状態は、コンソール制御部40を通じてメモリ31に送られ、メモリ31に一時記憶データ76が記憶される(S11)。
次いで、各パネル51、52、用語選択ボタン53等の選択入力状態を元にした所見文作成用定義の検索が編集処理部42で実行され、各観察項目の語句が所見文作成用定義から読み出される(S12)。
続いて、各観察項目に関する節の使用位置、使用形式が編集処理部42で判定される(S12)。具体的には、判定対象の観察項目と同じ階層レベルで、且つ判定対象の観察項目の後の観察項目がアクティブであった場合、使用位置が「途中」と判定され、そうでなければ「末尾」と判定される。また、選択された用語選択ボタン53に対応する入力語句の使用形式が「否定」であった場合、使用形式が「否定」と判定される。それ以外は全て「肯定」と判定される。この使用位置、使用形式の判定結果に基づいた述部の本体部の語句が所見文作成用定義から読み出される。
そして、読み出された各種語句が所見文作成用定義の並び順に連結され、所見文が作成される(S13)。作成された所見文は、編集処理部42からコンソール制御部40に引き渡され、コンソール制御部40の制御の下、所見文入力領域46に表示される(S14)。このように、読影医は、用語選択ボタン53を選択したり入力ボックス56に語句を入力したりしながら、所見文の入力を行う。これら一連の処理は、用語選択ボタン53が追加選択等される度に繰り返し実行される。
読影医は、所見文の入力を終えると、終了ボタン58を選択する(S15でyes)。終了ボタン58が選択されると、レポート18のデータの格納要求がDBアクセス部41からDBサーバ14に送信される。レポート作成端末13から格納要求を受信すると、DBサーバ14では、格納処理部61によって、レポート18のデータの格納処理が実行される。レポート18のデータは、レポートDB21に格納される。以上をもって、一回のレポート18の作成処理を終了する。
図15において、レポート18のデータの格納処理に際して、新規にレポート18を作成した場合、あるいは各追加タブ80、81、追加項目82を追加した場合(S20でyes)、格納処理部61により病変IDが新規に発行され、そのレポート18の所見情報に付加される。また、新規発行した病変IDの分の行が病変テーブル24に新設され、各項目がレポート18のデータから抜き出されて登録される(S21)。
一方、前回のレポート18をコピー利用した場合(S20でno)は、既存の病変IDが継承されてレポート18のデータが格納される。また、病変テーブル24の当該患者の当該病変IDの行に一行追加されて各項目が追記される(S22)。
レポート18の作成が完了すると、レポート作成端末13から、依頼医の診療科端末11に対して、作成完了通知が送信される。依頼医は、診療科端末11を通じてレポートDB21にアクセスして、作成完了通知に含まれるレポート18のアドレスに基づいて、レポート18を読み出す。診療科端末11のディスプレイ37には、レポート表示画面と、レポート18に関連する検査画像17を表示する画像表示画面が出力される。依頼医は、これらの画面を閲覧して、レポート18の内容を確認する。
図16において、前回のレポート18をコピー利用していて、病変記述テンプレート65の画面にて経過情報ボタン67が選択された場合(S30でyes)、コンソール制御部40からDBアクセス部41に検索キーが送信され、DBアクセス部41からDBサーバ14の検索処理部62に検索キーによる経過情報の検索要求が送信される(S31)。
そして、検索処理部62により、検索キーの病変IDと一致する病変IDが病変テーブル24から検索・抽出され(S32)、抽出した情報を元に経過情報リスト90が作成されて検索結果としてDBアクセス部41に送信される(S33)。
DBアクセス部41で受信された経過情報リスト90はコンソール制御部40に引き渡される。そして、コンソール制御部40により、経過情報リスト90を元にしたキー画像のサムネイルや折れ線グラフ等のディスプレイ37bへの表示がなされる(S34)。
以上説明したように、本発明は、病変記述テンプレート65の選択入力状態を病変単位で格納・管理し、検索要求に応じて病変の経過情報を検索・抽出して表示するので、所見文から数値や語句を抽出する従来技術と比べて病変の経過情報の抽出精度を高めることができる。形態素解析といった特別な解析をする必要がなく、病変記述テンプレート65の選択入力状態や診断名等が経過情報にそのまま反映されるので、経過情報の妥当性、信憑性も担保される。
各病変を一意に識別する病変IDを検索キーとしているので、抽出される経過情報は必ず指定した病変IDのものとなり、検索ミスは起こりようがない。従って、経過情報の妥当性、信憑性に疑いを差し挟む余地はなく、読影医は安心してレポート18を作成する際の参考資料として経過情報を用いることができる。
上記実施形態では、病変IDを検索キーとして同一患者の同一病変の経過情報を検索・抽出し、その検索結果を表示しているが、検索キーとして選択入力状態のデータを利用してもよい。こうすれば、検査を受けている患者に限らず、選択入力状態、つまり症状が同等の他患者の複数の病変の経過情報を検索・抽出して表示することができる。
この場合、経過情報ボタン67の横に、同一患者の同一病変の経過情報を検索するか、他患者の類似病変の経過情報を検索するかを選択させるためのプルダウンメニューを設ける。そして、病変記述テンプレート65の用語選択ボタン53や入力ボックス66を選択入力した後、プルダウンメニューで他患者の類似病変の経過情報の検索を指定して経過情報ボタン67をクリックしたときに、そのときの選択入力状態のデータを検索キーとして、DBサーバ14の検索処理部62に病変テーブル24を検索させる。この場合は当該患者の病変を検索対象から除外する。検索キーが容積や大きさ等の数値の場合は、数値範囲に幅をもたせて検索してもよい。また、例えば直近1カ月の検査日に限定したり、経過が良化の事例のみにしたりする等の絞り込み検索を行ってもよい。
検索処理部62は、上記実施形態と同様に検索結果を経過情報リストとしてまとめ、DBアクセス部41に送信する。コンソール制御部40は、経過情報リストを元にした他患者の類似病変の経過情報をディスプレイ37bに表示させる。
例えば、初回の検査で「部位−被殻」、「容積−3.2cc」、「濃度−等吸収」の脳内出血が発症した場合を考える。読影医は、出血性病変用の病変記述テンプレート65(図示せず)の部位、容積の入力ボックス66に「被殻」、「3.2」と入力し、観察項目「濃度」の用語選択ボタン53の「等吸収」を選択した後、他患者の類似病変の経過情報の検索を指定して経過情報ボタン67をクリックする。
すると、DBアクセス部41から、「部位−被殻」、「容積−3.0cc〜3.5cc」、「濃度−等吸収」を検索キーとする検索要求が検索処理部62に送信される。検索処理部62は、病変テーブル24の各病変のうち、上記の検索キーと一致する病変のデータを抽出し、抽出した病変の発症時からの履歴を示す経過情報リストを作成してDBアクセス部41に送信する。
図17は、他患者の類似病変の経過情報の表示例である。この例では、6人の他患者の脳内出血の容積の発症時からの推移が折れ線グラフで表示されている。また、全件のうち経過が良化の事例が何件あるかといった情報が表示されている。良化事例に関わるカルテ16やレポート18のデータのリンクを表示し、リンクをクリックすることによりカルテ16やレポート18を閲覧可能に構成してもよい。選択入力状態を検索キーとした場合も、上記実施形態と同様に病変の経過情報の妥当性、信憑性を確保することができる。また、こうした他患者の類似病変の経過情報を提供することにより、治療効果の高い事例を参考にしてその後の治療計画の立案に役立てることができる。
上記実施形態では、レポート作成端末13にて読影医に病変の経過情報を提供する例を挙げたが、診療科端末11で依頼医がレポート18を閲覧中、あるいは患者を診察中に病変の経過情報を提供してもよい。この場合、診療科端末11のディスプレイ画面に検索キーの入力ボックスを設け、該入力ボックスに入力された病変IDや病変記述テンプレート65の選択入力状態に対応する病変の経過情報を上記実施形態と同様にDBサーバ14に検索・抽出させ、検索結果を診療科端末11に送信させる。あるいは、レポート18の作成完了通知と併せて経過情報リストを自動送信してもよい。病変の経過情報を依頼医の閲覧に供することで、診察時の患者とのインフォームドコンセントがし易くなる。また、治療計画の立案に役立てることもできる。
上記実施形態では、コピー追加タブ81を追加する際に用語選択ボタン53の選択状態のみをコピーしているが、入力ボックス66の入力内容をコピーしてもよい。
上記実施形態では、入力デバイスとして、キーボードやマウスを例に説明したが、入力デバイスとしてマイクを用いて、用語選択ボタン53の選択を音声によって受け付けてもよい。
上記実施形態では、検査科12で実施される検査を例示して説明したが、検査種はこれらに限定されるものではなく、PET(Positron Emission Tomography)検査、内視鏡検査等でもよい。要するに病変記述テンプレートを用いて病変の所見文を入力するものであれば、本発明を適用可能である。
上記実施形態では、レポート作成端末が一台の例で説明したが、レポート作成端末は複数台でもよい。また、レポート作成端末のストレージデバイスに描画データを格納する態様を例示したが、描画データの格納先は上記に限らず、DBサーバに格納しておいてもよい。この場合、レポート作成端末のDBアクセス部がDBサーバにアクセスして、描画データの検索要求の送信とその検索結果の受信とを行う。さらに、DBサーバに病変DBを構築し、本発明の医療情報提供装置をレポート作成端末とDBサーバで構成する例を説明したが、レポート作成端末(コンソール制御部)とDBサーバ(格納処理部、検索処理部)の機能を一体化し、病変の経過情報を提供する専用の装置を設けてもよい。
また、上記実施形態のように、クライアント(レポート作成端末)と、サーバ(DBサーバ)とからなるクライアントサーバ型の情報システムの場合には、レポート編集用のクライアントプログラムは、専用のプログラムを使用してもよいし、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)といった、WWW(World Wide Web)のプロトコルに対応した汎用的なブラウザを使用してもよい。
専用のプログラムを使用する場合には、レポート編集画面は、専用のプログラムで定義された画面データに基づいて生成される。汎用的なブラウザを使用する場合には、例えば、Webサーバにレポート編集画面のデータを格納しておき、クライアントはWebサーバにアクセスして、Webページの形式に加工されたレポート編集画面のデータをダウンロードする。クライアントのブラウザは、受信したWebページのソースコードを解釈してレポート編集画面を生成する。Webサーバは、DBサーバが兼用してもよいし、DBサーバとは別のサーバでもよい。汎用的なブラウザを使用する場合には、WebサーバのCPUが、クライアントのCPUと協働して、または単独で、編集処理部、コンソール制御部等を構成する。
また、DBが構築されるデータ格納装置としては、DBサーバ以外でもよく、例えば、NAS(Network Attached Storage)、SAN(Storage Area Network)といったネットワークを介して接続するストレージデバイスを使用してもよい。このように、コンピュータシステムの物理構成は適宜変更が可能である。
上記実施形態では、ネットワークとしてLANを例に説明しているが、診療科と検査科が複数の拠点に分散しているような場合には、ネットワークとしてLANとWAN(Wide Area Network)を組み合わせて使用してもよい。
なお、上記実施形態で示したとおり、本発明は、プログラムの形態、さらにはプログラムを記憶する記憶媒体にもおよぶことはもちろんである。