JP5495035B2 - 電子写真感光体、それを用いた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、それを用いた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ Download PDF

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本発明は、商業印刷分野においてオンデマンド印刷可能な電子写真方式を採用する画像形成方法、画像形成装置、それらに用いられる電子写真感光体、画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
近年、オンデマンド印刷が容易なことからオフィス分野で広く普及していた電子写真方式の画像形成装置が商業印刷分野へ普及を始めている。商業印刷分野では、高速印刷、大量印刷、高画質、用紙対応性、印刷物の低コスト化がこれまで以上に求められている。
高速印刷、大量印刷、印刷物の低コスト化を達成するためには、電子写真の中心デバイスである電子写真感光体が長寿命である必要がある。感光体にはアモルファスシリコンを代表とする無機感光体と有機電荷発生材料及び有機電荷輸送材料からなる有機感光体が用いられているが、(I)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(II)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(III)材料の選択範囲の広さ、(IV)製造の容易さ、(V)低コスト、(VI)無毒性等から有機感光体が有利と考えられている。一方、有機感光体は、傷や摩耗に弱く、傷は画像欠陥に、摩耗は感度の劣化や帯電性の劣化や電荷リークを引き起こし画像濃度低下や地肌汚れ等の異常画像の原因となる。
この有機感光体の耐傷性、耐摩耗性を向上させる手段として、従来の有機感光体上に機械的に丈夫な保護層を形成した感光体が提案されている。例えば、特許文献1の特開2000−66425号公報には、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有する感光層が提案されている。
また、特許文献2の特開2006−113321号公報、特許文献3の特許第4145820号公報、特許文献4の特開2004−302451号公報には、ラジカル重合性電荷輸送性化合物と3官能以上のラジカル重合性モノマーと光重合開始剤とを混合した組成物に紫外線を照射して架橋膜とした保護層を有する感光体が提案されている。
この感光体は、優れた耐傷性、耐摩耗性を有しており、環境安定性にも優れているため、ドラムヒーターを使用せずに安定した画像出力が可能である。
また、特許文献5の特開2004−302452号公報には、上記架橋膜を保護層とする感光体の紫外線照射による電気特性低下を防止するために、前記架橋膜中に紫外線吸収剤を含有させ、感光体製造中の感光材料の劣化を防止することが提案されている。
これらの検討からラジカル重合性電荷輸送性化合物(特にアクリル基を有する電荷輸送性化合物)を単独又は他のアクリルモノマーと混合し、3次元架橋させた保護層を有する感光体が優れた耐傷性、耐摩耗性を有し、感光体としての電気特性も良好なものであり、多量に印刷する商業印刷に適したものであることがわかった。しかし、近頃の商業印刷分野では、従来以上に高画質が求められるようになり、そのために、感光体の印刷経時での電位変動や感光体面内の電位ムラを極力抑える必要がある。それらに対し、上記感光体は十分な特性を有していなかった。
その原因として、ラジカル反応により架橋密度の高い保護層を形成させるためには、光分解性のラジカル重合開始剤を含有させて光(特に紫外線)照射する方法や更にエネルギーの高い電子線や放射線を照射して直接アクリル基を励起して重合開始させる必要があるが、いずれにしても保護層中の電荷輸送性化合物が同時に励起されることでその一部が分解し、その分解物が感光体として重要な機能である電荷輸送機能を低下させていることが考えられる。
この様な問題に対し、例えば紫外線による分解抑制には上記特許文献5で提案されているように紫外線吸収剤を含有させる事が想起されるが、従来より知られた紫外線吸収剤の添加は電荷輸送機能に大きな副作用があり、感光体の電荷輸送機能を大きく低下させてしまうという問題や、ラジカル重合反応も同時に抑制してしまい十分な架橋密度を持った保護層形成ができなくなるという問題があり、実用化に至っていない。
また、色素の分解反応を抑制する添加剤として1重項酸素クエンチャー(例えばニッケルジチオラート錯体等)も知られているが、この様な材料を保護層中に添加すると感光体の光導電性が全く無くなるという弊害があり使用することができない。
このように少なくともラジカル重合性電荷輸送性化合物を紫外線や電子線で硬化させ3次元架橋膜とした保護層を有する感光体の保護層に起因する問題を改良し、商業印刷分野で求められる高画質(印刷経時での画像濃度の安定性や画像面内の濃度安定性)に対応することができていなかった。
そのため、より優れた電荷輸送性を有する保護層を有し、十分な耐傷性や耐摩耗性を有しながら従来よりも高画質な画像出力が可能な電子写真感光体及びそれを用いた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジの開発が望まれていた。
本発明の課題は、従来の順層積層感光体上にラジカル重合性の電荷輸送性化合物やラジカル重合性モノマーを紫外線や電子線を照射して3次元架橋させた保護層を形成した感光体(すなわち導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、ホール輸送層、ラジカル重合により3次元架橋されたホール輸送性保護層を順に積層した感光体)において、該保護層の機械的強度を保ったまま電荷輸送性をさらに改良し、印刷経時での電位変動や印刷物面内の電位変動をより小さくすることで印刷経時での画像濃度変動や印刷物の面内濃度ムラの少ない高画質な画像出力を可能にする電子写真感光体およびそれを用いた高画質で高寿命でコストパフォーマンスに優れた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することである。
感光体の帯電性、光導電性等の基本機能への副作用がなく、ラジカル連鎖重合を阻害せず、それでいて架橋保護層形成時の電荷輸送性化合物の分解を抑制でき、分解によって発生する電荷トラップ(電荷輸送性を低下させる原因)の発生を抑制できる添加剤について鋭意検討した結果、特定のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を保護層に含有させることが有効であることがわかった。
すなわち、上記課題は、本発明の(1)〜(7)により解決される。
(1)導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、ホール輸送層、ホール輸送性保護層を順に積層し、該保護層が少なくともラジカル重合性ホール輸送性化合物を紫外線又は電子線を照射することで連鎖重合させて得られる3次元架橋膜からなる電子写真感光体において、該保護層中に下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を含有させたことを特徴とする電子写真感光体。
Figure 0005495035
(式中、RとRはそれぞれ炭素数4〜15の炭化水素の1価基を表し、同一でも異なっていても良い。)
Figure 0005495035
(式中、RとRはそれぞれ炭素数4〜15の炭化水素の1価基を表し、同一でも異なっていても良く、Xは、単結合または炭素数1〜10の炭化水素の2価基を表す。)
(2)ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の含有量がラジカル重合性ホール輸送性化合物の0.5〜10重量%であることを特徴とする前記(1)に記載の電子写真感光体。
(3)一般式(1)または一般式(2)で表されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物のR1〜R4が直鎖状脂肪族炭化水素の1価基であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電子写真感光体。
(4)ラジカル重合性ホール輸送性化合物のラジカル重合性反応基がアクリロイルオキシ基であることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(5)前記(1)乃至(4)のいずれか1に記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも
帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行なうことを特徴とする画像形成方法。
(6)前記(1)乃至(4)のいずれか1に記載の電子写真感光体を有することを特徴と
する画像形成装置。
(7)前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段
、転写手段、クリーニング手段および除電手段よりなる群から選ばれた少なくとも一つの
手段を有するものであって、画像形成装置本体に着脱可能としたことを特徴とする画像形
成装置用プロセスカートリッジ。
従来の順層積層感光体上にラジカル重合性の電荷輸送性化合物やラジカル重合性モノマーを紫外線や電子線を照射して3次元架橋させた保護層を形成した感光体(すなわち導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、ホール輸送層、ラジカル重合により3次元架橋されたホール輸送性保護層を順に積層した感光体)において、保護層に特定のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を添加することで、感光体の電気特性や機械的特性を劣化させることなく架橋膜形成時に生じる電荷輸送性化合物の分解を抑制し、保護層の電荷トラップを低減し、従来よりも電荷輸送性に優れた電子写真感光体の提供が可能になる。
この保護層の電荷輸送性の改良により印刷経時での電位変動や印刷物面内の電位変動をより小さくすることで印刷経時での画像濃度変動や印刷物の面内濃度ムラの少ない高画質な画像出力が可能になる。
従って、商業印刷分野で強く求められている高画質で高寿命でコストパフォーマンスに優れた画像出力を可能にする電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供できる。
本発明の電子写真感光体の断面図の一例である。 本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。 本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。 微小表面硬度計による弾性変位率の測定法を示す概略図である 荷重に対する塑性変位と弾性変位の関係を示す図である。 本発明の実施例に用いたチタニルフタロシアニンのX線回折スペクトルを示す図である。
本発明は、従来の積層感光体上に主としてラジカル重合性ホール輸送性化合物又は多官能ラジカル重合性モノマーとの混合物を高エネルギー線照射でラジカル連鎖重合を開始させ3次元架橋膜とした保護層を有する感光体に関し、この保護層を3次元架橋膜として形成する際に保護層中に特定のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を含有させることで保護層中に形成される電荷トラップ及びその発生ムラを抑制し、それによって生じる感光体経時での電位変動や感光体面内各箇所での光減衰電位にバラツキが生じることを防止し、連続印刷時の画像濃度の変化や画像面内での濃度ムラのない商業印刷に要求される高画質な画像形成を可能にしたものである。
商業印刷に要求される高画質な画像を形成できる感光体には、同じ光書き込みを行った場合にどの場所でも同じ電位になるような面内の電位均一性と印刷枚数経時での帯電及び露光電位が同じになるような印刷枚数間電位保持性が要求され、架橋保護層の膜厚や均質性だけでなく保護層内部の電荷トラップの有無やそのムラを抑えることが必要である。
下層の構成材料等の架橋保護層への溶出等を防止し均一な塗布膜を形成しても、保護層の架橋反応を開始させるための高エネルギー線を照射するときに設備条件等により照射ムラが発生する。例えば、光重合開始剤を用いて紫外線照射する場合、紫外線照射装置のランプ境界領域や装置内の光反射により、感光体表面への紫外線照射ムラが生じ、架橋層の膜厚や均質性に影響を及ぼす。光照射ムラは、架橋保護層の架橋密度ムラにつながると予想され、光照射量を増大させて全体を完全架橋に近づけることでの架橋密度ムラ回避を試みたが、明瞭な効果はなかった。むしろ光照射の増大は感光体特性の劣化を引き起こした。従って光照射ムラが架橋密度ムラというより保護層中の電荷輸送性を担うラジカル重合性電荷輸送性化合物の光分解物生成量ムラにつながっていると推測された。従って、この光分解を抑制できれば電位均一性や電位保持性を劣化させる原因となる保護層中の電荷トラップの発生やムラを抑制できると考えられた。
そこでこの光分解を防止し、且つ、紫外線等の高エネルギー線照射時に硬化重合反応を阻害しない添加剤を鋭意検討したところ、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体の添加が有効であることを見出した。そのメカニズムの詳細は不明であるが、高エネルギー線によって励起状態となったラジカル重合性ホール輸送性化合物と特定のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体とが分子間励起子会合体(Exciplex)を形成し、そこから失活することで、ラジカル重合性電荷輸送性化合物の励起状態からの分解反応を抑制できるためと推測する。
ここから判るように、本発明で用いられるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体は電子輸送材として感光体に用いられることも知られているが、本発明での役割は電子輸送性を付与することではなく、ホール輸送を担うラジカル重合性ホール輸送性化合物の硬化反応時及び経時での分解を抑制するものである。
従って、添加量はそれらを加味して決定される。
さらに、ラジカル重合性ホール輸送性化合物の酸化電位に比べてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体の酸化電位は大きく、したがって保護層中にあってもホールトラップにはならず、ホール輸送能を低減させることがないこと、さらにナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体は吸収波長が短いものが多く、紫外線硬化の場合には重合開始に必要な波長域の吸収が少なく架橋反応を阻害しないこと、さらに、ラジカル重合性ホール輸送性化合物の励起ポテンシャルレベルに比べてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体のレベルが低く、励起子会合体(Exciplex)を形成しやすいこと、という条件を全て満たす材料群のため、感光体としての基本的な電気特性や機械的特性を損なうことなく、紫外線照射等の高エネルギー線照射時のラジカル重合性ホール輸送性化合物の光分解を抑制し保護層中の電荷トラップの発生を抑制できていると推測される。
保護層中の電荷トラップ生成が減少したことで、面内の紫外線照射ムラ等が有ってもその影響が少なくなり、感光体面内の電位均一性や経時での電位安定性が向上したと考えられる。
このような電子写真感光体を用いることで画像濃度均一性に優れた高画質な画像出力が可能になる。
以下、本発明をその層構造に従い説明する。
図1は、本発明の電子写真感光体を表わす断面図であり、導電性支持体(31)上に、電荷発生機能を有する電荷発生層(35)と、ホール輸送層(37)とさらにホール輸送性保護層(39)が積層された順層積層構造の感光体である。この4層は必須構成であり、さらに、導電性支持体(31)と電荷発生層(35)の間に1層又は複数層の下引き層が挿入されていても良い。また、電荷発生層(35)とホール輸送層(37)とホール輸送性保護層(39)を合わせた層構成部分を感光層(33)と称する。
<導電性支持体>
導電性支持体(31)としては、従来公知のものが使用される。
アルミニウム、ニッケル等の体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもので有れば良く、アルミドラム、アルミ蒸着フィルム、ニッケルベルト等が好ましく使用される。
商業印刷分野での高画質の為には、感光体の寸法精度が厳しく求められるために、引き抜き工法などで製造されたアルミドラムを切削、研磨加工して表面の平滑性や寸法精度を上げたものが好ましい。また、ニッケルベルトとしては、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルトを用いることができる。
<電荷発生層>
電荷発生層(35)は、従来の有機電子写真感光体に用いられてきた電荷発生層がその
まま使用できる。すなわち、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。好ましい電荷発生物質としては、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料やアゾ顔料であり、金属フタロシアニンとしては、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が使用される。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層(35)の形成は、例えば、上述の電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共に、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
<ホール輸送層>
ホール輸送層には、ホール輸送物質をバインダー樹脂中に分散した従来公知の電荷輸送層がそのまま使用できる。
ホール輸送物質としては、従来公知の材料がそのまま使用できる。
例えば、オキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等が挙げられる。これらは、単独または混合して使用することができる。
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。電荷輸送物質の量はバインダー樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。ホール輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、形成には電荷発生層(35)と同様な塗工法が可能である。
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。ホール輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。ホール輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。
ホール輸送層の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。このようにして形成されたホール輸送層上に、ホール輸送性保護層が形成される。
<ホール輸送性保護層>
本発明の特徴は、ホール輸送性保護層が少なくともラジカル重合性ホール輸送性化合物が高エネルギー線によりラジカル連鎖重合して形成された3次元架橋膜であり、該架橋膜中に特定のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物が含有されていることである。
本発明に必須の材料である特定のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物は、下記一般式(1)または一般式(2)で表される。
Figure 0005495035
(式中、RとRはそれぞれ炭素数4〜15の炭化水素の1価基を表し、同一でも異なっていても良い。)
Figure 0005495035
(式中、RとRはそれぞれ炭素数4〜15の炭化水素の1価基を表し、同一でも異なっていても良く、Xは、単結合または炭素数1〜10の炭化水素の2価基を表す。)
ここで、R1、R2、R3、R4は炭素数4〜15の炭化水素の1価基を表すが、炭化水素としては直鎖飽和炭化水素、分岐飽和炭化水素、二重結合のある直鎖炭化水素、分岐不飽和炭化水素、単環式炭化水素、芳香族単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素、及びこれらが結合した炭化水素を表す。
溶解性、架橋膜中の相溶性の点で好ましくは直鎖飽和炭化水素、分岐飽和炭化水素、分岐飽和炭化水素を置換基に有する芳香族単環式炭化水素である。
例えば、炭素数4〜15の炭化水素の1価基の例としては、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、n−ウンデカニル基、n−ドデカニル基、n−トリデカニル基、n−テトラデカニル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、5−メチルペンチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、イソへキシル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、1−メチルヘキシル基、フェニル基、2,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、フェネチル基、ベンジル基、シンナミル基、クメニル基、メシチル基、2,5−ジメチルフェニル基等があげられる。
Xは、単結合または炭素数1〜10の炭化水素の2価基を表すが、炭化水素としてはR1〜R4と同様である。炭素数1〜10の炭化水素の2価基の具体例としては、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、1−メチルプロパン−1,3−ジイル基、1−エチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、3,3,5,5−テトラメチルシクロヘキサン−1,α−ジイル基、1,4−ジエチルベンゼン−β、β’−ジイル基等があげられる。
これらのテトラカルボン酸ジイミド化合物は、従来から知られているように、公知のナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸無水物と適当なアミン化合物との脱水縮合反応により合成することができる。
片側ずつ脱水縮合反応させればR1及びR2の異なる非対称のテトラカルボン酸ジイミド化合物を得ることができ、また、二段階目でジアミン化合物を用いれば一般式(2)で表されるテトラカルボン酸ジイミドの2量体が合成できる。
以下に一般式(1)または(2)で表されるテトラカルボン酸ジイミド化合物の具体例を示すがこれらに限定されるわけではない。
Figure 0005495035
Figure 0005495035
Figure 0005495035
これらナフタレンカルボン酸ジイミド化合物は、次のようにして入手することができる。
即ち、例えば、J.Phys.Chem. A 2000,104,6545−6551、J.Am.Chem.Soc. 1996,118,6767−6777等に化合物例及び合成例が記載されている。
また、イミド化反応についてはChem.Ber.124(1991)529−535にペリレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の対称型及び非対称型の合成例が記載されており本発明のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の合成にも適用できる。また、特開2005−154409号公報にも合成法が記載されている。
また、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸無水物と2当量のイソブチルアミンをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、酢酸又はリン酸等の酸を添加して数日加熱還流させることで例示化合物1−No.1が合成される。
また、イソブチルアミンの代わりに1当量の2−メチルブチルアミンを使用して反応させ、途中からフェネチルアミンを添加して反応を継続させることで例示化合物1−No.4の左右非対称型の化合物が合成できる。
また、ジアミノ体である1−エチル1,3−ジアミノプロパンを初めに0.5当量用いて反応させ、途中から1当量の1−メチルヘキシルアミンを添加して反応を継続させることで例示化合物2−No.2が合成できる。同様にアミンの種類を変えることで他の化合物も合成できる。
これらナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物は、ホール輸送性保護層中に0.1〜30重量%の割合で添加される。少なすぎる場合は、面内電位変動量を低減する効果が見られなくなり、多すぎると感光体の感度特性が悪くなる。
前述のようにこれらナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物は、ホール輸送性を示さないため、保護層中に過剰に添加するとホール輸送性化合物を希釈することになり電荷輸送特性を低下させて感度劣化等を引き起こす。また、過剰添加はラジカル重合による架橋密度も低下させることになるため、保護層の機械的強度を弱め、耐摩耗性が悪くなる。
従って、効果の有る範囲でできるだけ少量添加することが望ましい。添加量を変えた実験により保護層中のラジカル重合性ホール輸送性化合物に対し0.5〜10重量%の範囲で添加するのが電荷トラップの発生を抑制する効果が明確に見られ、保護層への副作用が少ない点でより好ましい。
次に、ホール輸送性保護層を形成する方法及びナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物以外の組成物について説明する。
本発明のホール輸送性保護層は、主にラジカル重合性ホール輸送性化合物を重合させて3次元架橋させたものであるが、3次元架橋させるためには以下の条件がある。
(1)ラジカル重合性ホール輸送性化合物のラジカル重合性官能基数が1個の場合は、ラジカル重合性官能基を一分子中に2個以上有する多官能ラジカル重合性モノマーと混合して重合する。
(2)ラジカル重合性ホール輸送性化合物のラジカル重合性官能基数が2個以上の場合は、ラジカル重合性ホール輸送性化合物を単独で重合させることができ、又、ラジカル重合性官能基を一分子中に1個以上有するラジカル重合性モノマーと混合して重合する。
以上の条件でラジカル連鎖重合させることで3次元架橋膜を形成できる。ラジカル重合性官能基を一つしか持たない化合物でラジカル重合反応させても線状ポリマーにしかならず、分子鎖同士の絡み合いで不溶化したとしても本発明の耐摩耗性に優れる架橋膜とはならず不適当である。
また、上記(2)においては、ラジカル重合性ホール輸送性化合物のラジカル重合性官能基数が1個の場合は、ラジカル重合性官能基を一分子中に3個以上有する多官能ラジカル重合性モノマーと混合して重合するのがさらに好ましい。これは、保護層のホール輸送性を高めるためにはラジカル重合性ホール輸送性化合物の組成比を高める必要があり、その様な組成比で機械的強度に優れる架橋密度の高い膜にするには混合される多感応ラジカル重合性モノマーの官能基数が多い方が有利となるからである。
また、本発明においてホール輸送性保護層の形成には紫外線又は電子線等の高エネルギー線を照射することで重合を開始させ、架橋膜を形成させる。これは熱重合開始剤等を用いて加熱により重合反応させるよりも架橋密度の高い硬くて弾性仕事率の大きな膜が形成できるためで、本発明の保護層耐摩耗性確保のために必要な条件である。しかるに熱に比べて照射エネルギーが高いためにホール輸送性構造の励起が生じ、本発明の課題となっている。通常、このような高エネルギー線照射による材料の分解を防ぐために、窒素ガス下で酸素濃度を下げたり、照射時の温度上昇を防ぐために冷却したりするが、本発明でもその様な条件下で架橋させることができる。
また、従来の検討でラジカル重合性ホール輸送性化合物には官能基数が1個のものを使用し、これに3官能以上のラジカル重合性モノマーを混合し、光重合開始剤を加えて紫外線照射によりラジカル反応を開始させて重合硬化させ、3次元架橋膜とした系が、ホール輸送性に優れ耐摩耗性にも優れたホール輸送性保護層を形成できることが知られており、本発明においてもこの系を最も好ましい系として適用できる。
すなわち、1官能のラジカル重合性ホール輸送性化合物と3官能以上のラジカル重合性モノマーと光重合開始剤と前記ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を適当な溶媒に溶解させ、ホール輸送層上に塗布した後、紫外線を照射して架橋反応させることにより最適なホール輸送性保護層を形成できる。
かかる塗工液はラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて上述のように溶媒により希釈して塗布される。
このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
紫外線照射は、高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できる。
照射光量は50mW/cm以上、1000mW/cm以下が好ましく、50mW/cm未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cmより強いと反応の進行が不均一となり、架橋表面層の凹凸や電気特性の劣化が激しくなる。
ここで、ラジカル重合性ホール輸送性化合物、3官能以上のラジカル重合性モノマー、光重合開始剤、塗工溶媒、塗工方法、乾燥方法、紫外線照射条件等は、例えば、特開2005−266513号公報、特開2004−302452号公報や特許第4145820号公報に記載されるラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー及び2官能のラジカル重合性モノマー、光重合開始剤が本発明のラジカル重合性ホール輸送性化合物、多官能ラジカル重合性モノマー、光重合開始剤に対応して使用でき、それら先願資料に記載の塗工溶媒、塗工方法、乾燥方法、紫外線照射条件がそのまま適用できる。
すなわち、本発明に用いられるラジカル重合性ホール輸送性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造を有しており、且つラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。1分子中のラジカル重合性官能基の数は、1個以上複数個でも良いが、架橋表面層の内部応力を抑え平滑な表面性を得やすいため、また良好な電気特性を持続させるためには、ラジカル重合性官能基が1個である方が好ましい。電荷輸送性化合物が2個以上ラジカル重合性官能基を有する場合、嵩高い正孔輸送性化合物が複数の結合で架橋結合中に固定されるためによる大きな歪みからその余裕度が低下する場合があり、電荷輸送性構造や官能基数から凹凸やクラック、膜剥が起こる場合がある。また、この大きな歪みは電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こりやすくなる。ラジカル重合性ホール輸送性化合物のホール輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が高移動度性から好適である。
本発明に用いられるラジカル重合性ホール輸送性化合物は、架橋表面層のホール輸送性能を付与するために重要で、この成分は架橋表面層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%になるように塗工液成分の含有量を調整する。この成分が20重量%未満では架橋表面層のホール輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる。また、80重量%を超えるとホール輸送構造を有しない3官能モノマーの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
本発明に用いられる多官能ラジカル重合性モノマーとは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどのホール輸送性構造を有しておらず、且つラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。
例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
前記多官能ラジカル重合性モノマーとしては、架橋表面層中に緻密な架橋結合を形成するために、該モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、架橋表面層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、上記モノマー中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。また、表面層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの成分割合は、架橋表面層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%になるように、塗工液固形分中の含有量を調整する。モノマー成分が20重量%未満では架橋表面層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。また、80重量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される耐摩耗性や電気特性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
本発明に用いられる光重合開始剤としては、光により容易にラジカルを発生させる重合開始剤であれば特に限定されないが、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。これらの重合開始剤は一種又は二種以上を混合して用いてもよい。その含有量は塗工液固形分中のラジカル重合性を有する総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
本発明の架橋表面層は、塗工時の粘度調整、架橋表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
さらにラジカル重合性ホール輸送性化合物のラジカル重合性基の官能基数が2個以上の場合について詳述する。基本構造は前述したようにトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの従来から知られている芳香族3級アミン構造を有するホール(正孔)輸送性構造を有し、ラジカル重合性基を分子内に2個以上有するものである。
例えば、特開2004−212959公報の表3〜表86には数多くの化合物例が記載されており本発明でも使用できる。特にラジカル重合性基としては前述したアクリロイルオキシ基やメタクリロイルオキシ基が好ましく、これらの重合性基がホール輸送性構造と炭素数2以上より好ましくは3以上のアルキレン鎖をかいして結合しているものが特に好ましい。これにより2官能以上のラジカル重合性ホール輸送性化合物の欠点として前述した歪みの発生を緩和することができる。
次に電子線照射による架橋膜の作製方法について記す。
電子線照射は、光重合開始剤を添加する必要が無く、ラジカル重合性ホール輸送性化合物単独あるいはラジカル重合性モノマーとの混合物を適当な溶媒に溶解させ、ホール輸送層上に塗布した後に、照射することで3次元架橋膜を形成できる。これらの架橋条件については上記特開2004−212959公報にも記載されており、公知技術をそのまま使用することができる。例えば、電子線の加速電圧は250kV以下、照射線量は1Mrad〜20Mradの範囲が好ましく、照射時の酸素濃度を10000ppm以下とするのが好ましい。
<下引き層>
本発明の感光体においては、導電性支持体(31)と感光層(33)との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は1〜15μmが適当である。
<各層への酸化防止剤の添加について>
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、ホール輸送層、ホール輸送性保護層、電荷発生層、下引き層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。添加する酸化防止剤は、従来公知の材料を使用することができ、下記のものが挙げられる。
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%である。
<画像形成方法及び装置>
次に図面に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、耐摩耗性及び耐傷性が非常に高く、且つクラックや膜剥がれが生じにくい架橋型電荷輸送層を表面に有する積層型感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法ならびに画像形成装置である。場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
図2は、画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ(3)が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラー帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。特に本発明の構成は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような、感光体組成物の分解の原因となる帯電手段からの近接放電が生じるような帯電手段を用いた場合に特に有効である。ここで言う接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラー、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。一方の近接帯電方式とは、例えば帯電ローラーが感光体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲が適当である。
次に、均一に帯電された感光体(1)上に静電潜像を形成するために画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
次に、感光体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するために転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写体(9)を感光体(1)より分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段と同様の方式が利用可能である。次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。
また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図3に示す。
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体(101)を内蔵し、他に帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(107)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
図3に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(103)による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
本発明は、耐摩耗性及び耐傷性が非常に高く、且つクラックや膜剥がれが生じにくい架橋型電荷輸送層を表面に有する積層型感光体と帯電、現像、転写、クリーニング、除電手段の少なくとも一つを一体化した画像形成装置用プロセスカートリッジを提供するものである。
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
本発明の測定方法の詳細について記述する。
<微小表面硬度計による弾性変位率の測定>
本発明の弾性変位率τeは、ダイヤモンド圧子を用いた微小表面硬度計の負荷−除荷試験により測定される。図4に示すように、圧子がサンプルに接触した点(a)から一定負荷速度で圧子を押し込み(負荷過程)、設定荷重に達したときの最大変位(b)で一定時間静止し、更に一定除荷速度で圧子を引き上げ(除荷過程)、最終的に圧子に荷重がかからなくなった点を塑性変位(c)とする。このとき、得られる押し込み深さと荷重の曲線が図5のように記録され、最大変位(b)と塑性変位(c)弾性変位率τeは以下の式で算出される。
Figure 0005495035
かかる弾性変位率測定は、一定温湿度下で行われ、本発明で弾性変位率とは、温度22℃、相対湿度55%の環境条件下で行なわれた上記試験の測定値を示す。
本発明では、ダイナミック微小表面硬度計DUH−201(島津製作所製)、三角すい圧子(115゜)を用いているが、これと同等の性能を有するいかなる装置で測定された値でもよい。弾性変位率τeの標準偏差はサンプル上の任意の10箇所について弾性変位率τeを測定し、この10個の値より算出した。測定においては本発明の架橋表面層を有する感光体をアルミニウムシリンダー上に作製し、これを適宜切断して用いた。弾性変位率τeは基板のバネ特性の影響を受けるため、基板としては剛直な金属版、スライドガラスなどが適当である。更に、架橋表面層の下層(例えば、電荷輸送層、電荷発生層など)の硬度や弾性の要素も影響するため、これらの影響を減らすように最大変位が架橋表面層膜厚の1/10になるように規定加重を調整した。架橋表面層のみを単独で基板上に作製すると、下層成分の混入、下層との接着性が変わり、必ずしも感光体の表面架橋層を正確に再現できないため、好ましくない。
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、すべて重量部を表わす。
φ60mmの表面研磨したアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、ホール輸送層用塗工液を順次、浸積塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、22μmのホール輸送層を形成した。このホール輸送層上にラジカル重合性ホール輸送性化合物に対し5重量%のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を添加した下記組成のホール輸送性保護層用塗工液をスプレー塗工し、20分自然乾燥した後、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm、照射時間:180秒の条件で光照射を行ない塗布膜を硬化させた。更に130℃で30分乾燥を加え4.0μmのホール輸送性保護層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
〔下引き層用塗工液〕
・アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
・メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業製)
・酸化チタン 50部
(CR−EL:石原産業社製、平均一次粒径0.25μm)
・メチルエチルケトン 50部
〔電荷発生層用塗工液〕
・チタニルフタロシアニン 1.5部
・ポリビニルブチラール樹脂 0.5部
(XYHL、UCC製)
・シクロヘキサノン 200部
・メチルエチルケトン 80部
前記チタニルフタロシアニン結晶は、次のようにして合成した。
即ち、特開2004−83859号公報に準じ、1、3−ジイミノイソインドリン292部とスルホラン1800部を混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド204部を滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。
反応終了後、放冷した後、析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、次にメタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過し、次いで、洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)により水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.6μS/cmであった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。
得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40部をテトラヒドロフラン200部に投入し、室温下でホモミキサー(ケニス、MARKIIfモデル)により強烈に撹拌(2000rpm)し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら(撹拌開始後20分)、撹拌を停止し、直ちに減圧濾過を行った。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキを得た。これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶8.5部を得た。前記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒は、前記ウェットケーキに対する質量比で33倍の量を用いた。
なお、この合成例の原材料には、ハロゲン含有化合物を使用していない。得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、CuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、更に9.4±0.2°、9.6±0.2°、24.0±0.2°に主要なピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。その結果を図6に示す。
<X線回折スペクトル測定条件>
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
〔ホール輸送層用塗工液〕
・ビスフェノールZ ポリカーボネート樹脂 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
・下記構造のホール輸送材(HTM−1) 10部
Figure 0005495035
・テトラヒドロフラン 100部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
・酸化防止剤 BHT 0.2部
〔ホール輸送性保護層用塗工液〕
・多官能ラジカル重合性モノマー 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
・下記構造のラジカル重合性ホール輸送性化合物(RHTM−1) 10部
Figure 0005495035
・光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
・ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物 0.5部
前記具体例(化合物例1−No.1)の化合物
・テトラヒドロフラン 100部
実施例1においてホール輸送材(HTM−1)及びラジカル重合性ホール輸送性化合物(RHTM−1)を下記構造のホール輸送材(HTM−2)及びラジカル重合性ホール輸送性化合物(RHTM−2)にそれぞれ変え、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物に前記具体例(化合物例1−No.2)の化合物を使用する他は同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 0005495035
Figure 0005495035
実施例2においてラジカル重合性ホール輸送性化合物(RHTM−2)を下記構造のラジカル重合性ホール輸送性化合物(RHTM−3)に変え、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物に前記具体例(化合物例1−No.3)の化合物を使用する他は同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 0005495035
実施例1においてホール輸送性保護層用塗工液を以下のように変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
〔ホール輸送性保護層用塗工液〕
・多官能ラジカル重合性モノマー(1) 5部
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
・多官能ラジカル重合性モノマー(2) 5部
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPCA−120、日本化薬製)
分子量:1947、官能基数:6官能、分子量/官能基数=325
・下記構造のラジカル重合性ホール輸送性化合物(RHTM−4) 10部
Figure 0005495035
・光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
・ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物 0.5部
前記(化合物例1−No.4)の化合物
・テトラヒドロフラン 100部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
実施例1においてホール輸送性保護層用塗工液を以下の様に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
〔ホール輸送性保護層用塗工液〕
・多官能ラジカル重合性モノマー 10部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(SR−295,化薬サートマー製)
分子量:352、官能基数:4官能、分子量/官能基数=88
・下記構造のラジカル重合性ホール輸送性化合物(RHTM−5) 10部
Figure 0005495035
・光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
・ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物 0.5部
前記具体例(化合物例1−No.7)の化合物
・テトラヒドロフラン 100部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
実施例1においてホール輸送性保護層用塗工液を以下の様に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
〔ホール輸送性保護層用塗工液〕
・多官能ラジカル重合性モノマー(1) 5部
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARADTMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
・多官能ラジカル重合性モノマー(2) 5部
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPCA−60、日本化薬製)
分子量:1263、官能基数:6官能、分子量/官能基数=211
・下記構造のラジカル重合性ホール輸送性化合物(RHTM−6) 10部
Figure 0005495035
・光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
・ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物 0.5部
前記具体例(化合物例2−No.1の化合物)
・テトラヒドロフラン 100部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
実施例1においてホール輸送性保護層用塗工液を以下の様に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
〔ホール輸送性保護層用塗工液〕
・多官能ラジカル重合性モノマー 4部
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARADTMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
・下記構造のラジカル重合性ホール輸送性化合物(RHTM−7) 6部
Figure 0005495035
・光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
・ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物 0.5部
前記具体例(化合物例1−No.6)の化合物
・テトラヒドロフラン 100部
φ30mmの表面研磨したアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、ホール輸送層用塗工液を順次、浸積塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、25μmのホール輸送層を形成した。このホール輸送層上にラジカル重合性ホール輸送性化合物に対し5重量%のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を添加した下記組成のホール輸送性保護層用塗工液をスプレー塗工し、50℃で10分乾燥させた後、加速電圧150KV、照射線量5Mradの条件で電子線照射し、膜厚5μmのホール輸送性保護層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
〔下引き層用塗工液〕
・アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
・メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業製)
・酸化チタン 50部
・メチルエチルケトン 50部
〔電荷発生層用塗工液〕
・下記構造式のビスアゾ顔料(CGM−1) 2.5部
Figure 0005495035
・ポリビニルブチラール樹脂 0.5部
(XYHL、UCC製)
・シクロヘキサノン 200部
・メチルエチルケトン 80部
〔ホール輸送層用塗工液〕
・ビスフェノールZ ポリカーボネート樹脂 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
・前記構造のホール輸送材(HTM−1) 10部
・テトラヒドロフラン 100部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
・酸化防止剤 BHT 0.2部
〔ホール輸送性保護層用塗工液〕
・多官能ラジカル重合性モノマー 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARADTMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
・前記構造のラジカル重合性ホール輸送性化合物(RHTM−2) 10部
・ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物 0.5部
前記具体例(化合物例2−No.1)の化合物
・テトラヒドロフラン 100部
実施例8においてホール輸送性保護層用塗工液を以下の様に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
〔ホール輸送性保護層用塗工液〕
・下記構造のラジカル重合性ホール輸送性化合物(RHTM−8) 20部
Figure 0005495035
・ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物 0.5部
前記具体例(化合物例2−No.3)の化合物
・テトラヒドロフラン 100部
実施例4においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物に前記具体例(化合物例1−No.5)の化合物を使用し、その添加量をラジカル重合性ホール輸送性化合物の0.3%重量部とした他は同様にして電子写真感光体を作製した。
実施例10においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物(前記具体例(化合物例1−No.5))の添加量をラジカル重合性ホール輸送性化合物の0.5%重量部とした他は同様にして電子写真感光体を作製した。
実施例10においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物(前記具体例(化合物例1−No.5))の添加量をラジカル重合性ホール輸送性化合物の1%重量部とした他は同様にして電子写真感光体を作製した。
実施例10においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物(前記具体例(化合物例1−No.5))の添加量をラジカル重合性ホール輸送性化合物の5%重量部とした他は同様にして電子写真感光体を作製した。
実施例10においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物(前記具体例(化合物例1−No.5))の添加量をラジカル重合性ホール輸送性化合物の10%重量部とした他は同様にして電子写真感光体を作製した。
実施例10においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物(前記具体例(化合物例1−No.5))の添加量をラジカル重合性ホール輸送性化合物の15%重量部とした他は同様にして電子写真感光体を作製した。
<比較例1>
実施例1においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を用いない他は同様にして電子写真感光体を作製した。
<比較例2>
実施例2においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を用いない他は同様にして電子写真感光体を作製した。
<比較例3>
実施例3においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を用いない他は同様にして電子写真感光体を作製した。
<比較例4>
実施例4においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を用いない他は同様にして電子写真感光体を作製した。
<比較例5>
実施例5においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を用いない他は同様にして電子写真感光体を作製した。
<比較例6>
実施例6においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を用いない他は同様にして電子写真感光体を作製した。
<比較例7>
実施例7においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を用いない他は同様にして電子写真感光体を作製した。
<比較例8>
実施例8においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を用いない他は同様にして電子写真感光体を作製した。
<比較例9>
実施例9においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を用いない他は同様にして電子写真感光体を作製した。
<比較例10>
実施例1においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の変わりに下記構造の紫外線吸収剤(UV−1)を添加した他は同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 0005495035
<比較例11>
実施例1においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の変わりに下記構造の紫外線吸収剤(UV−2)を添加した他は同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 0005495035
<比較例12>
実施例1においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の変わりに下記構造の電子移動剤(ETM−1)を添加した他は同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 0005495035
<比較例13>
実施例1においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の変わりに下記構造の電子移動剤(ETM−2)を添加した他は同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 0005495035
<比較例14>
実施例1においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の変わりに下記構造の1重項酸素クエンチャー(Q−1)を添加した他は同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 0005495035
<ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の添加による電荷トラップ生成の抑制効果>
保護層中に生じた電荷トラップは、ホールの移動を遅くしたり停止させたりするために感光体の感度低下や残留電位の上昇を引き起こす。同一電位に負帯電させた感光体に光照射すると電荷発生層で生じたホールがホール輸送層及びホール輸送性保護層を移動して感光体表面に到達し、表面電位は消失していく。
表面電位が消失していくにつれて感光層にかかる電界が小さくなるため次第にホール移動性は遅くなり、もはや表面電位が下がらなくなる。この時の電位を飽和電位と定義する。
今、ホール輸送性保護層中に電荷トラップが生じているとその分表面電位が下がらなくなるため、飽和電位は高くなる。そこで、飽和電位を調べることで電荷トラップの生成が抑制されているかどうか評価した。
実施例1〜9で得られた電子写真感光体及びそれらに対応させてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を無添加とした比較例1〜9で得られた電子写真感光体を線速160mm/secで回転させながらスコロトロン帯電器により−800Vに帯電させ、655nmの半導体レーザー(アパーチャー70×80μm、解像度400dpi)で照射し、照射から80msec後の感光体表面電位を測定した。この測定を照射光量を次第に大きくしながら測定するとある光量以上でもはや表面電位が下がらなくなる。今回は、飽和するのに十分な光量1μJ/cmを照射した時の表面電位を飽和電位として計測した。その結果を表3に示す。
Figure 0005495035
以上のように種々の感光体構成においてナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を添加しない系との対応を見ると、いずれの場合もナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を添加した系の方がそれぞれ飽和電位が小さくなっている。
この結果から添加されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物が電荷トラップの生成を抑制していることが判る。
<ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の添加量の影響>
本発明で用いられるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物は、ホール輸送性及びラジカル反応性を有していない。従って、含有量が多くなるとホール輸送性低下や機械的強度低下を引き起こすと予想され、含有量が少ないと電荷トラップ生成の抑制効果が小さくなると予想される。従って、含有量に適当な範囲があると予想される。
これを確かめるために添加量を変えた電子写真感光体の前記飽和電位と機械的強度の指標となる弾性変位率τeを測定した。
実施例10〜15及び比較例4で得られた電子写真感光体を用い、上記と同様にして求めた飽和電位と、前記微小表面硬度計による弾性変位率の測定方法により求めた弾性変位率τeを表4に示す。
Figure 0005495035
表4から飽和電位はナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の添加量にある範囲で依存していることが分かる。
無添加の比較例と比較すると添加量が0.5%未満ではほとんど飽和電位が変わらなくなり電荷トラップ抑制効果は見られなくなる。一方、添加量が10%以上ではもはや飽和電位は下がらなくなっており過剰であることがわかる。
弾性変位率は添加量が増えるに従い低下傾向を見せる。ラジカル反応性を有しない添加物の存在は、架橋密度の低下につながっていることを示す。しかしながら添加量が10%までは40%以上の弾性変位率を有しており保護層を有しない感光体に比べて十分な機械的強度を有していることが判る。しかしながら、添加量が10%を超えると弾性変位率は40%未満となってしまい、保護層として十分な強度とは言えなくなる。
これらより保護層としての機械的強度を有しながら電荷トラップの少ない電荷輸送性に優れた感光体を提供するにはナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の添加量がラジカル重合性ホール輸送性化合物に対して0.5重量%〜10重量%の範囲で添加されるのが適切であることが判る。
<連続画像出力時の機内電位変化及び面内濃度ムラへの影響>
特定のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を添加することで保護層の電荷トラップ生成を低減できることがわかったが、実際の画像出力時にどの様に効果が有るかどうか評価した。
実施例1〜9及び比較例1〜9で作製した電子写真感光体をリコー製デジタルフルカラー複合機MP C7500 SPのプロセスカートリッジに着装し、本体に取り付けて600×600dpiの解像度でリコーマイリサイクルペーパーGPのA4用紙を用い、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各中間調帯模様のテストパターンの連続500枚の画像出力を毎分60枚の印刷速度で行った。1〜5枚目及び495〜500枚目のブラック画像を並べ、画像濃度の面内ムラをそれぞれ目視でランク評価した。また、1枚目と500枚目の中間調帯模様部(1by1ドットブラック画像部)の画像濃度をマクベス濃度計により測定し、印刷開始時と終了時の画像濃度変化を見た。
画像濃度は、5箇所測定しその平均を求めた。
(面内ムラ ランクレベル)
ランク5:ムラが見られない
ランク4:ほとんどムラが見られない
ランク3:一部の画像で僅かなムラが見られる
ランク2:画像全てに僅かなムラが見られる
ランク1:画像全てにムラが明瞭に見られる
その結果を表5に記す。
Figure 0005495035
以上のように、本発明の電子写真感光体は、無添加品と比べて画像濃度の面内のムラが小さく、高画質な画像出力が可能になっている。また、この特性が大量高速画像出力の後にも持続されている。また、1枚目と500枚目の中間調画像部の濃度変化が明らかに小さくなっており、経時で安定した画像出力が可能になっていることが判る。
この傾向が先の飽和電位値の大小ではなく、添加剤の有無に従って見えることから、保護層中の電荷トラップの存在量が画像出力時の経時での濃度変化や面内濃度ムラに寄与していることを示している。
従って、特定のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を添加することで電荷トラップの生成を抑制できる本発明の電子写真感光体は、より高画質で安定性の求められる商業印刷分野の画像出力方法、画像出力装置、それに用いられる画像出力装置用プロセスカートリッジの提供に有効なものであることが判る。
<他の添加剤種との比較>
本発明のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の重要な機能は、紫外線や電子線等の高エネルギー線照射時のラジカル重合性ホール輸送性化合物の分解を抑制させることである。同様の機能を有するとして知られている紫外線吸収剤を添加した場合との相違を評価する。
また、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物は電子輸送材料としてよく知られている材料である。同様の機能を有するとして知られている電子輸送材を添加した場合との相違も評価する。
また、色素材料の光褪色防止に効果がある1重項酸素クエンチャーを添加した場合との相違も評価する。
比較例10〜14で得られた感光体について前記と同様にして飽和電位を求めた。その結果を表6に示す。
Figure 0005495035
以上のように無添加系の比較例1と比べて飽和電位を下げる効果が見られないばかりか、むしろ大きくなるものもあり、電荷輸送性への副作用が大きいことが判る。
これらのことから本発明で使用されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の効果は一般的なものではないことが判る。
<一般式(1)または一般式(2)で表されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物のR1〜R4が直鎖状脂肪族炭化水素の1価基の場合と分岐状脂肪族炭化水素の1価基の場合の比較>
実施例5及び実施例13で得られた電子写真感光体を先と同様にリコー製デジタルフルカラー複合機MP C7500 SPのプロセスカートリッジに着装し、ブラックステーションに装着し、リコーマイリサイクルペーパーGPのA4用紙を用い、5万枚の画像出力を行い、感光体の膜厚減少量を測定した。その結果を表7に示す。
Figure 0005495035
実施例5と13では、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の種類のみ異なり他の組成や処方量は全く同じである。どちらも良好な耐摩耗性を示すが僅かに実施例13の方が耐摩耗性が高い。
ここで使用されているナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の違いは、実施例5が1−メチルヘキシル基を置換基として有しており、実施例13がn−オクチル基を有している点のみである。分岐状脂肪族炭化水素では2級炭素を有するものが多い。ラジカル連鎖反応に架橋する過程でナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物は反応に関与しない方が良いと考えられるが、2級炭素は1級炭素よりもラジカルにより水素を引き抜かれやすいために分岐状脂肪族炭化水素基の場合は架橋反応に僅かながら影響するものと予測される。従って、置換としては直鎖状の炭化水素がより好ましいと言える。
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
31 導電性支持体
33 感光層
35 電荷発生層
37 第一の電荷輸送層(ホール輸送層)
39 第二の電荷輸送層(ホール輸送性保護層)
101 感光ドラム
102 帯電装置
103 露光
104 現像装置
105 転写体
106 転写装置
107 クリーニングブレード
特開2000−66425号公報 特開2006−113321号公報 特許第4145820号公報 特開2004−302451号公報 特開2004−302452号公報

Claims (7)

  1. 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、ホール輸送層、ホール輸送性保護層を順に積層し、該保護層が少なくともラジカル重合性ホール輸送性化合物を紫外線又は電子線を照射することで連鎖重合させて得られる3次元架橋膜からなる電子写真感光体において、該保護層中に下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を含有させたことを特徴とする電子写真感光体。
    Figure 0005495035
    (式中、RとRはそれぞれ炭素数4〜15の炭化水素の1価基を表し、同一でも異なっていても良い。)
    Figure 0005495035
    (式中、RとRはそれぞれ炭素数4〜15の炭化水素の1価基を表し、同一でも異なっていても良く、Xは、単結合または炭素数1〜10の炭化水素の2価基を表す。)
  2. ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の含有量がラジカル重合性ホール輸送性化合物の0.5〜10重量%であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 一般式(1)または一般式(2)で表されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物のR1〜R4が直鎖状脂肪族炭化水素の1価基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. ラジカル重合性ホール輸送性化合物のラジカル重合性反応基がアクリロイルオキシ基であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電子写真感光体。
  5. 前記請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行なうことを特徴とする画像形成方法。
  6. 前記請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載の電子写真感光体を有することを特徴とする画像形成装置。
  7. 前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段および除電手段よりなる群から選ばれた少なくとも一つの手段を有するものであって、画像形成装置本体に着脱可能としたことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
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