JP5494656B2 - 撥水部材、車載用ガラス、及び、撥水部材の製造方法 - Google Patents

撥水部材、車載用ガラス、及び、撥水部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、撥水性に優れ、かつ耐候性及び耐摩耗性に優れた撥水部材車載用ガラス、及び、撥水部材の製造方法に関する。
一般に、撥水部材は、建材用の窓材や車載(輸送車両)、船舶用の窓材に用いられるが、その表面に水滴、汚れ等の視界を妨げるものが付着しないことが望まれる。
例えば、車載(輸送車両)、船舶用窓材として用いる場合、雨滴、埃、汚れ等が付着したり、大気中の湿度、温度の影響で水分が凝縮すると、透明性、透視性が悪化し、走行運転に支障をきたすこととなる。そのため、車載、船舶用の窓ガラス表面に付着した水滴は、ワイパーを用いたり、手で拭き取る等の物理的手段で除去されている。しかし、水滴を物理的手段で除去する場合、水滴等に伴う異物粒子等の摩擦によって窓ガラスの表面に微細な傷を付けることがある。さらに、ガラス表面の水滴中にガラス成分が溶出し、表面が浸食される、いわゆる焼けを生じる。焼けが激しく生じたガラスや表面に微細な凹凸を生じたガラスは、その表面で光の散乱が生じる。従って、車載、船舶用窓ガラスに用いられるガラスには、優れた撥水性と共に、これらの特性が長期間にわたり持続する耐候性、耐摩耗性(ワイパー等の摺動に対する耐性)が要求されている。
上記課題に対し、フッ素樹脂(耐候性・撥水性)にシリコーン(滑落性)を添加し撥水膜をコートする技術(例えば、特許文献1参照)がある。しかしこの技術では、添加するシリコーンが表面上にブリードアウトしているだけであり、初期の性能はよいが、簡単な磨耗で拭き取られてしまい耐摩耗性がない。
これを改善するために、添加するシリコーンをあらかじめ重合し、フッ素樹脂と共重合した共重合体を用いる技術(例えば、特許文献2参照)があるが、耐磨耗性が要求されているレベルまでに達していない。
一方、撥水膜を粗面化して接触角を増大させ、撥水性を向上する技術が開示されている(例えば、特許文献3〜6参照。)。しかしながらこの技術では、外力負荷を平面で受ける平滑面に比べ一部分(局部)で受け止めるために面積当たりの負荷は増大し、ワイパーブレードの耐久性は劣化する。
一方、撥水膜に大小粒子を複合させることにより耐摩耗性を改善する技術が開示されている(例えば、特許文献7参照。)が、基本的に粒子添加により耐摩耗性が劣化する方向であり、その劣化をやや改善するに止まり、本発明で目指す高耐久撥水膜には到底達し得ないものであった。
一方、平滑な撥水層に関する技術としては、特許文献8に記載されている例がある。該特許文献8によると、通常のガラスは雨で濡れるとワイパーとガラスの間に均一に水膜が形成され、この水膜が潤滑剤の役割を果たすのに対し、撥水ガラスでは水をはじくためワイパーとガラスの間に水膜が形成し難く、水滴のある部分、無い部分で摩擦むらが生じ、ワイパー動作が悪化することから、ワイパーブレードの方で摩擦係数低減が必要となったが、それだけでは不十分で、撥水ガラス表面の平滑化で撥水性被膜の寿命とワイパー動作の両立を図ったことが記載されている。しかし、元々摩擦係数の高い表面と特殊ワイパーとの組み合わせのため、低摩擦で拭き取り性が良く、且つ寿命を大幅に向上させるまでには至っていない。
また、下引層を形成し、下引層中の炭素原子を20at%未満含ませることにより、基材との密着性を向上させる方法(例えば特許文献9参照)があるが、耐候性を向上させる効果についてはまだ知られていない。
特開2001−139745号公報 特開2001−151831号公報 特開2002−322432号公報 特開2002−325839号公報 特開平9−132433号公報 特開平9−309745号公報 特開2008−119924号公報 国際公開第2007/18184号 特開2002−113805号公報
本発明の目的は、高耐久性の撥水部材を形成することであり、良く滑る撥水材料を基材表面に緻密に形成することを目的とするものである。また、撥水層表面を平滑にすることにより、滑る対象物、例えばワイパーブレードなどとのスムーズな接触が得られ、スリップやビビリ(引っかかり)といったワイパーブレードの速度変動のない優れた撥水部材車載用ガラス、及び、撥水部材の製造方法を得ることである。
我々は、鋭意検討を行い、撥水層の摩擦係数を低くし、かつ下引層を形成し、表面粗さを特定の範囲内に納めることにより、撥水層寿命とワイパー寿命と動作性を大幅に向上できることを見いだした。これにより、特開平6−262943号公報に記載の撥水ガラス専用のワイパーばかりではなく、汎用のワイパーでも動作性に優れた撥水部材および車載用ガラスを得ることができた。
即ち、上記課題は、本発明は下記の構成により達成することができた。
1.基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層の下引層を有し、更にその上に撥水層を有する撥水部材において、該撥水層の表面粗さRaが100nm以下であり、該撥水層が、反応性シリル基を有するフルオロエーテル高分子Si化合物から形成され、該下引層が、前記撥水層と結合する反応性基を有する有機金属化合物からプラズマCVD法により形成されたものであって、該下引層中に炭素原子、窒素原子、塩素原子若しくはフッ素原子の少なくとも1種を含有し、前記含有する原子の合計が0.3〜50at%であることを特徴とする撥水部材。
2.前記含有する原子の合計が1〜20at%であることを特徴とする前記1に記載の撥水部材。
3.前記撥水層の表面の動摩擦係数が0.3以下であることを特徴とする前記1または2に記載の撥水部材。
4.前記フルオロエーテル高分子Si化合物の重量平均分子量が1500以上であることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の撥水部材。
5.前記1〜4の何れか1項に記載の撥水部材を用いたことを特徴とする車載用ガラス。
6.基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層の下引層を有し、更にその上に撥水層を有し、該撥水層の表面粗さRaが100nm以下であり、該下引層中に炭素原子、窒素原子、塩素原子若しくはフッ素原子の少なくとも1種を含有し、前記含有する原子の合計が0.3〜50at%である撥水部材の製造方法であって、反応性基を有する有機金属化合物をプラズマCVD法により反応性基を残存させて前記基材上に乾式塗布して前記下引層を形成し、反応性シリル基を有するフルオロエーテル高分子Si化合物を前記下引層上に湿式塗布法により塗布して前記撥水層を形成し、前記反応性基と前記反応性シリル基とを結合させることを特徴とする撥水部材の製造方法。
本発明により、高耐久性の撥水部材を形成することができ、撥水性に優れ、ワイパーブレードによる高耐摩耗性、高耐候性の撥水部材、車載用ガラス、及び、撥水部材の製造方法を得ることができた。
本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。 本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。 図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。 角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に、下引層を有し、その上に撥水層を有する撥水部材であって、該下引層は反応性基を有する有機金属化合物から形成され、且つ、該下引層中に前記反応性基を一部残存させ、更に、その上にフルオロエーテル高分子Si化合物からなる撥水層を形成し、その表面粗さRa(中心線平均粗さ:JIS 0601−1976表面粗さの規格に準拠)を100nm以下とする構成により、撥水性、滑落性(水滴転落性)および高耐久性、高耐摩耗性、高耐傷性の撥水部材を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
すなわち、下引層中に反応性基の一部を残存させ、その上に撥水層を形成することにより、下引層と撥水層を緻密に、強固に結合させること、および表面粗さRaを特定範囲以下とすることにより、高耐久性が得られたものと推測している。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
〔下引層〕
本発明の下引層としては、反応性基を有する有機金属化合物から形成されたものであり、反応性基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、イソシアネート基、シラザン基、カルボキシル基、水酸基、アジド基及びエポキシ基等から選ばれる基が挙げられる。
特に反応性基として好ましくは、ハロゲン原子、シラザン基またはアルコキシ基である。
反応性基を有する有機金属化合物の金属原子としては、例えば、Si、Ti、Ge、Zr、Sn、Hf、Zn、Al等が挙げられる。
本発明に用いられる反応性基を有する有機金属化合物であって、金属原子がSiの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン、エトキシシラントリイソシアネート等が挙げられる。
その他、含フッ素シランカップリング剤、アルキルシランカップリング剤、ポリジメチルシロキサン骨格化合物等を挙げることができる。
含フッ素シランカップリング剤の具体例としては、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジクロロシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、CFCHCHSi(OCH、CF(CFCHCHSi(OCH、CF(CFCHCHSi(OCHが挙げられる。
また、含フッ素シランカップリング剤としては、例えば、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)、信越化学工業(株)、ダイキン工業(株)(例えば、オプツールDSX)、また、Gelest Inc.、ソルベイ ソレクシス(株)等により上市されており、容易に入手することができる他、例えば、J.Fluorine Chem.,79(1).87(1996)、材料技術,16(5),209(1998)、Collect.Czech.Chem.Commun.,44巻,750〜755頁、J.Amer.Chem.Soc.1990年,112巻,2341〜2348頁、Inorg.Chem.,10巻,889〜892頁,1971年、米国特許第3,668,233号明細書等、また、特開昭58−122979号、特開平7−242675号、特開平9−61605号、同11−29585号、特開2000−64348号、同2000−144097号公報等に記載の合成方法、あるいはこれに準じた合成方法により製造することができる。
本発明に用いられ反応性基を有する有機金属化合物であって、金属原子がTiの具体例としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、イソシアネートプロピルトリメトキシチタン、イソシアネートプロピルトリエトキシチタン、γ−アミノプロピルトリメトキシチタン、γ−アミノプロピルトリエトキシチタン、ビニルトリクロロチタン、ビニルトリメトキシチタン、ビニルトリエトキシチタン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)チタン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシチタン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシチタン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシチタン、γ−クロロプロピルトリメトキシチタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシチタン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシチタン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシチタン、ビニルチタニルトリイソシアネート、テトライソシアネートチタン、エトキシチタントリイソシアネート等が挙げられる。
本発明に用いられ反応性基を有する有機金属化合物であって、金属原子がZrの具体例としては、テトラメトキシジルコニア、テトラエトキシジルコニア、イソシアネートプロピルトリメトキシジルコニア、イソシアネートプロピルトリエトキシジルコニア、γ−アミノプロピルトリメトキシジルコニア、γ−アミノプロピルトリエトキシジルコニア、ビニルトリクロロジルコニア、ビニルトリメトキシジルコニア、ビニルトリエトキシジルコニア、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)ジルコニア、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシジルコニア等が挙げられる。
本発明に用いられる反応性基を有する有機金属化合物であって、その他の金属原子としてSn、Zn、Ge、Al等の有機金属化合物も好ましい化合物として用いることが出来る。
本発明の下引層の形成方法としては、前記反応性基を有する有機金属化合物をスプレー法、スピンコート法、ディップ法等の湿式塗布法や、スパッタリング法、イオンアシスト法、プラズマCVD法、後述する大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等の乾式塗布法を適用して形成することができる。
そして、本発明においては、反応性基の一部を下引層中に残存させることが必要であり、これらの反応性基を残存することによって、その上に形成される撥水層との結合を強固とすることが可能となる。しかし、残存しすぎると下引層が脆くなり、経時で劣化することになり、好ましくない。
下引層表面に残存する反応性基の量を測定する方法として、本発明においては原子(炭素、窒素、塩素、フッ素)の含有量(at%)を測定することによって行うものである。
これらの原子の含有量をコントロールする方法としては、乾式コーティング法を利用する場合は、大気圧、真空に寄らずCVD法は、導入する薄膜形成性ガスをプラズマ、熱、光などのエネルギーに晒すことにより製膜する方法であるため、製膜時のエネルギーの調整や導入する薄膜形成性ガスのガス量、ガス流速、基材温度調整によりコントロールすることができる。
また、湿式コーティング法を利用する場合は、薄膜形成性成分を液体として用いるが、コーティング後に付与するエネルギー(プラズマ、熱、光など)の調整やコーティング液体自身への上記エネルギーの付与によりコントロールすることができる。
下引層表面の炭素原子、窒素原子、塩素原子或いはフッ素原子の含有量(at%)を測定する方法としては、公知の分析手段を用いて求めることができるが、本発明に好ましく用いられる測定法としては、下記のXPS法によって算出されるもので、例えば、炭素原子の場合以下のように定義される。
炭素原子数濃度%(atomic concentration)=炭素原子の個数/全原子の個数×100
窒素原子、塩素原子、フッ素原子についても同様である。
XPS表面分析装置は、本発明では、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。具体的には、X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5eV〜1.7eVとなるように設定した。
測定としては、先ず、結合エネルギー0eV〜1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。
次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンを行い、各元素のスペクトルを測定した。
得られたスペクトルは、測定装置、あるいは、コンピュータの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM (Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理を行い、各分析ターゲットの元素(炭素、酸素、ケイ素、チタン、窒素、塩素、フッ素等)の含有率の値を原子数濃度(atomic concentration:at%)として求めた。
定量処理を行う前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理を行った。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps*eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。また、Shirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
下引層の膜厚は特に制限はないが、1〜500nmであることが好ましく、さらに好ましくは10〜200nmである。
そして、本発明においては、下引層の形成方法としては、前述の如何なる方法を用いても良く、特に限定されるものではないが、得られる撥水部材の高耐久性を得るためには撥水層の表面粗さRaが100nm以下とすることが必要であるが、大気圧プラズマ法を適用することが、減圧チャンバー等が不要で、高速製膜ができ生産性の高い製膜方法である点から好ましい。なお、大気圧プラズマ法の層形成条件の詳細については、後述する。
(プラズマCVD法)
本発明の下引層を形成する方法として、プラズマCVD法について説明する。
例えば、有機金属化合物としてSi化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いることにより、珪素酸化物を得ることができ、また、分解ガスに二酸化炭素を用いることにより、珪素炭酸化物が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
このような無機物の原料としては、典型または遷移金属元素を有していれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。また、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。なお、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響はほとんど無視することができる。
原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の珪素炭化物、珪素窒化物、珪素酸化物、珪素ハロゲン化物、珪素硫化物を得ることができる。
これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。このような放電ガスとしては、窒素ガス及び/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも特に、窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
(大気圧プラズマ処理法)
次いで、大気圧プラズマ法(大気圧プラズマCVD法)について、さらに詳細に説明する。
従来から知られているプラズマCVD法は、プラズマ助成式化学的気相成長法、PECVD法とも称され、各種の無機物を、立体的な形状でも被覆性、密着性がよく、かつ基材温度をあまり高くすることなしに製膜することができる手法である。
通常のCVD法(化学的気相成長法)では、揮発・昇華した有機金属化合物が高温の基材表面に付着し、熱により分解反応が起き、熱的に安定な無機物の薄膜が生成されるというものである。このような通常のCVD法(熱CVD法とも称する)では、通常500℃以上の基板温度が必要であるため、樹脂基材への製膜には使用することができない。
一方、プラズマCVD法は、基材近傍の空間に電界を印加し、プラズマ状態となった気体が存在する空間(プラズマ空間)を発生させ、揮発・昇華した有機金属化合物がこのプラズマ空間に導入されて分解反応が起きた後に基材上に吹きつけられることにより、無機物の薄膜を形成するというものである。プラズマ空間内では、数%の高い割合の気体がイオンと電子に電離しており、ガス温度は低く保たれるものの、電子温度は非常な高温のため、この高温の電子、あるいは低温ではあるがイオン・ラジカル等の励起状態のガスと接するために無機膜の原料である有機金属化合物は低温でも分解することができる。従って、無機物を製膜する基材についても低温化することができ、プラスチック基材上へも十分製膜することが可能な製膜方法である。
しかしながら、プラズマCVD法においては、ガスに電界を印加して電離させ、プラズマ状態とする必要があるため、通常は、0.1〜10kPa程度の減圧空間で製膜するため、大面積のフィルムを製膜する際には設備が大きく操作が複雑であり、生産性の課題を抱えている方法である。
これに対し、本発明に好適に用いることができる大気圧近傍でのプラズマCVD法(以下、大気圧プラズマCVD法あるいは大気圧プラズマ法という)は、真空下のプラズマCVD法に比べ、減圧にする必要がなく生産性が高いだけでなく、プラズマ密度が高密度であるために製膜速度が速く、さらにはCVD法の通常の条件に比較して、大気圧下という高圧力条件では、ガスの平均自由工程が非常に短いため、極めて平坦な膜が得られ、そのような平坦な膜は、光学特性が良好である。以上のことから、本発明においては、大気圧プラズマCVD法を適用することが、真空下のプラズマCVD法よりも好ましい。
以下、本発明に好ましく用いられる大気圧あるいは大気圧近傍での大気圧プラズマCVD法を用いた下引層を形成する装置について詳述する。
本発明の撥水部材の製造方法において、下引層の形成に使用されるプラズマ製膜装置の一例について、図1〜図4に基づいて説明する。図中、符号Fは基材の例として、ガラス基板或いは長尺フィルムである。
図1は、本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電界印加手段の他に、図1では図示してない(後述の図2に図示してある)ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
プラズマ放電処理装置10は、第1電極11と第2電極12から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極11からは第1電源21からの周波数ω、電界強度V、電流Iの第1の高周波電界が形成され、また第2電極12からは第2電源22からの周波数ω、電界強度V、電流Iの第2の高周波電界が形成されるようになっている。第1電源21は第2電源22より高い高周波電界強度(V>V)を印加でき、また第1電源21の第1の周波数ωは第2電源22の第2の周波数ωより低い周波数を印加できる。
第1電極11と第1電源21との間には、第1フィルター23が設置されており、第1電源21から第1電極11への電流を通過しやすくし、第2電源22からの電流をアースして、第2電源22から第1電源21への電流が通過しにくくなるように設計されている。
また、第2電極12と第2電源22との間には、第2フィルター24が設置されており、第2電源22から第2電極への電流を通過しやすくし、第1電源21からの電流をアースして、第1電源21から第2電源への電流を通過しにくくするように設計されている。
第1電極11と第2電極12との対向電極間(放電空間)13に、後述の図2に図示してあるようなガス供給手段からガスGを導入し、第1電極11と第2電極12から高周波電界を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材Fとで作る処理空間をプラズマ状態のガスG°で満たし、図示してない基材の元巻き(アンワインダー)から巻きほぐされて搬送して来るか、あるいは前工程から搬送して来る基材Fの上に、処理位置14付近で薄膜を形成させる。
25、26は高周波電圧プローブを示し、27、28はオシロスコープを示す。高周波電圧プローブ25、26及びオシロスコープ27、28で高周波電界強度(印加電界強度)と放電開始電界強度の測定が可能となっている。
薄膜形成中、後述の図2に図示してあるような電極温度調節手段から媒体が配管を通って電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成等は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラができるだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、複数基接して直列に並べて同時に同じプラズマ状態のガスを放電させることができるので、何回も処理され高速で処理することもできる。また各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、異なった層、例えば、組成の異なる下引層の積層薄膜を形成することもできる。
図2は、本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
本発明に有用な大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置30、二つの電源を有する電界印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
図2は、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との対向電極間(放電空間)32で、フィルム状の基材Fをプラズマ放電処理してその表面に薄膜の下引層を形成するものである。図2においては、1対の角筒型固定電極群(第2電極)36とロール回転電極(第1電極)35とで、1つの電界を形成し、この1ユニットで、例えば、低炭素原子数濃度層の形成を行う。図2においては、このような構成からなるユニットを、計5カ所備えた構成例を示してあり、それぞれのユニットで、供給する原材料の種類、出力電圧等を任意に独立して制御することにより、本発明で規定する炭素原子数濃度構成からなる積層型の透明ガスバリア層を連続して形成することができる。
ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第1電極)35には第1電源41から周波数ω、電界強度V、電流Iの第1の高周波電界を、また角筒型固定電極群(第2電極)36にはそれぞれに対応する各第2電源42から周波数ω、電界強度V、電流Iの第2の高周波電界をかけるようになっている。
ロール回転電極(第1電極)35と第1電源41との間には、第1フィルター43が設置されており、第1フィルター43は第1電源41から第1電極への電流を通過しやすくし、第2電源42からの電流をアースして、第2電源42から第1電源への電流を通過しにくくするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)36と第2電源42との間には、それぞれ第2フィルター44が設置されており、第2フィルター44は、第2電源42から第2電極への電流を通過しやすくし、第1電源41からの電流をアースして、第1電源41から第2電源への電流を通過しにくくするように設計されている。
なお、本発明においては、ロール回転電極35を第2電極、また角筒型固定電極群36を第1電極としてもよい。いずれにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より高い高周波電界強度(V>V)を印加することが好ましい。また、周波数はω<ωとなる能力を有している。
また、電流はI<Iとなることが好ましい。第1の高周波電界の電流Iは、好ましくは0.3〜20mA/cm、さらに好ましくは1.0〜20mA/cmである。また、第2の高周波電界の電流Iは、好ましくは10〜100mA/cm、さらに好ましくは20〜100mA/cmである。
ガス供給手段50のガス発生装置51で発生させたガスGは、流量を制御して給気口よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されてくるか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群36との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との両方から電界をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。
基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。なお、放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。
薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)35及び角筒型固定電極群(第2電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、68及び69はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
図3は、図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
図3において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。プラズマ放電処理中の電極表面温度を制御するため、温度調節用の媒体(水もしくはシリコンオイル等)が循環できる構造となっている。
図4は、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
図4において、角筒型電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図3同様の誘電体36Bの被覆を有しており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の温度調節が行えるようになっている。
なお、角筒型固定電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されており、該電極の放電面積はロール回転電極35に対向している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
図4に示した角筒型電極36aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
図3及び図4において、ロール電極35a及び角筒型電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35A及び36Aの上に誘電体35B及び36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工しやすいので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることができるが、後述の理由からはチタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
対向する第1電極及び第2の電極の電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことを言う。
双方の電極に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離の最短距離のことを言う。電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
プラズマ放電処理容器31は、パイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い、絶縁性を付与してもよい。図2において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3-4500
A2 神鋼電機 5kHz SPG5-4500
A3 春日電機 15kHz AGI-023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50-4500
A5 ハイデン研究所 100kHz* PHF-6k
A6 パール工業 200kHz CF-2000-200k
A7 パール工業 400kHz CF-2000-400k
等の市販のものを挙げることができ、何れも使用することができる。
また、第2電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 パール工業 800kHz CF-2000-800k
B2 パール工業 2MHz CF-2000-2M
B3 パール工業 13.56MHz CF-5000-13M
B4 パール工業 27MHz CF-2000-27M
B5 パール工業 150MHz CF-2000-150M
等の市販のものを挙げることができ、何れも好ましく使用できる。
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
本発明においては、このような電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つことができる電極を大気圧プラズマ放電処理装置に採用することが好ましい。
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極(第2の高周波電界)に1W/cm以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成ガスに与え、薄膜を形成する。第2電極に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm、より好ましくは20W/cmである。下限値は、好ましくは1.2W/cmである。なお、放電面積(cm)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
また、第1電極(第1の高周波電界)にも、1W/cm以上の電力(出力密度)を供給することにより、第2の高周波電界の均一性を維持したまま、出力密度を向上させることができる。これにより、更なる均一高密度プラズマを生成でき、更なる製膜速度の向上と膜質の向上が両立できる。好ましくは5W/cm以上である。第1電極に供給する電力の上限値は、好ましくは50W/cmである。
ここで、高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側(第2の高周波電界)は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
また、本発明で膜質をコントロールする際には、第2電源側の電力を制御することによっても達成できる。
このような大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、さらに好ましくは5×10−6/℃以下、特に好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
1:金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜
2:金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング
3:金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜
4:金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング
5:金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜
6:金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング
7:金属質母材がセラミックス及びアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜
8:金属質母材がセラミックス及びアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記1項または2項及び5〜8項が好ましく、特に1項が好ましい。
本発明において、金属質母材は、上記の特性からは、チタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることができる。
本発明に適用できる大気圧プラズマ放電処理装置としては、上記説明した以外に、例えば、特開2004−68143号公報、同2003−49272号公報、国際公開第02/48428号パンフレット等に記載されている大気圧プラズマ放電処理装置を挙げることができる。
〔反応性シリル基を有するフルオロエーテル高分子Si化合物〕
次に、本発明に係る撥水層を形成するフルオロエーテル高分子Si化合物(以下、単に含フッ素ポリマーともいう)について説明する。
本発明に係るフルオロエーテル高分子Si化合物は、フルオロ炭化水素がエーテル結合されており、反応性シリル基を有することを特徴とする。含フッ素ポリマーの重量平均分子量は1500以上であることが好ましく、1500〜200000が好ましく、2000〜100000がより好ましく、特に好ましくは3000〜10000である。また、分子内に好ましくは2〜50個の反応性シリル基を有する。重量平均分子量Mwは、例えば標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜1000000迄の13サンプルによる校正曲線を使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
反応性シリル基を有するフルオロエーテル高分子Si化合物は、例えば、ヒドロキシ基を有するフロロエーテル系ポリマーにシラン変性剤を反応させて反応性シリル基を導入することによって得られる。ヒドロキシ基を有するフルオロエーテル系ポリマーは、フルオロオレフィンとヒドロキシアルキルビニルエーテルまたはアリルアルコール等のヒドロキシ基含有モノマーとをモノマー主成分として共重合させることによって得られるが、この場合、これらの成分に加えてアルキルビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、イソプロペニルエーテル等のその他のモノマー成分を配合したものを共重合させて得られたものであっても差支えない。
フルオロオレフィンとしては、特に限定されることなく、フッ素樹脂用モノマーとして通常用いられるものが使用されるが、パーフルオロオレフィンが好適であり、中でもクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロプロピルビニルエーテル及びこれらの混合物が特に好ましい。
前記反応性シリル基としては、アルコキシ基、クロル基、イソシアネート基、シラザン基、カルボキシル基、水酸基及びエポキシ基から選ばれる反応性シリル基が好ましい。中でもアルコキシ基が好ましい。
本発明に係る撥水層を形成する反応性シリル基を有するフルオロエーテル高分子Si化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましく用いられる。
式中、Rは炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基、Xはヨウ素原子または水素原子、Yは水素原子または低級アルキル基、Zはフッ素原子またはトリフルオロメチル基、Rは加水分解可能な基、Rは水素原子または不活性な一価の有機基、a、b、c、dは0〜200の整数、eは0または1、fは0〜10の整数、mおよびnは0〜2の整数、及びpは1〜10の整数を表す。
本発明に好ましく用いられる前記一般式(1)で表されるフルオロエーテル高分子Si化合物は、例えば、特許第2874715号公報等に記載の方法により製造することが可能であり、また下記のような化合物を市販品として入手することができる。
ダイキン工業株式会社製
オプツールAES−2 重量平均分子量約2000
オプツールAES−4 重量平均分子量約4000
オプツールAES−4E 重量平均分子量約4000
オプツールAES−6 重量平均分子量約6000
東レ・ダウコーニング株式会社製
DOW CORNING 2603 COATING 重量平均分子量約2000
DOW CORNING 2604 COATING 重量平均分子量約4000
DOW CORNING 2634 COATING 重量平均分子量約4000
DOW CORNING 2606 COATING 重量平均分子量約6000
これらの反応性シリル基を有するフルオロエーテル高分子Si化合物を用いて、前記下引層上に撥水層を形成する方法としては、これらの材料をそのまま或いは溶剤に溶解してディップ法、スプレー法やスピンコート法等の湿式法で塗布し、加熱、乾燥等を行った後、溶剤で処理することにより過剰の該フルオロエーテル高分子Si化合物を除去する方法である。
得られた撥水層の表面粗さRaは、100nm以下であることが、撥水層の高耐久性、高耐摩耗性等の点で必要であり、好ましくは50nm以下、更に好ましくは10nm以下である。
撥水層の表面粗さは、形成される基材表面の研磨、研削、ブラスト、刻印や表面処理(プラズマ、熱、光など)、火炎処理、機械加圧加熱処理(カレンダリング処理)によりコントロールすることが出来る。
表面粗さRaはエスアイアイナノテクノロジー(株)製、原子間力顕微鏡(AFM)SPA300や日本ビーコ(株)製、非接触3次元表面形状測定機などにより測定することができる。
〔基材〕
本発明の撥水部材に適用可能な基材としては、透明性に優れた基材であることが好ましく、透明ガラス基材等の無機質の透明基材やプラスチック基材等の有機質の透明樹脂基材が挙げられる。
透明樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン類、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、あるいはこれらの樹脂とシリカ等との有機無機ハイブリッド樹脂等が挙げられる。
本発明においては、本発明の撥水性、滑水性や耐久性等の優れた特性を付与できる観点から、基材が透明ガラス基材であり、かつ最終的な撥水部材として、可視光領域における平均透過率が、85%以上であることが、建築用窓ガラスあるいは車載用ガラスに適用した際に、優れた透明性を得ることができる観点から好ましく、車載用ガラスに適用することが最も好ましい。
本発明でいう可視光領域における平均透過率とは、400〜700nmまでの可視光領域の透過率を、少なくとも5nm毎に測定して求めた可視光域の各透過率を積算し、その平均値として求めたものと定義する。各測定波長における透過率は、従来公知の測定機器を用いることができ、例えば、島津製作所社製の分光光度計UVIDFC−610、日立製作所社製の330型自記分光光度計、U−3210型自記分光光度計、U−3410型自記分光光度計、U−4000型自記分光光度計等を用いて測定することにより、求めることができる。
本発明に適用可能なガラス基材としては、表面に官能基(水酸基、アミノ基、チオール基等)を有する無機ガラスや有機ガラス、ソーダライムシリケートガラス基材等のアルカリ含有ガラス基材や、ホウケイ酸ガラス基材等の無アルカリガラス基材等を挙げることができる。また、ガラス基材は、合わせガラス、強化ガラス等であってもよい。
このような基材表面に、本発明の下引層および撥水層を形成し、その表面の動摩擦係数が0.3以下であることが好ましい。
本発明において、撥水層の表面動摩擦係数を上記で規定する範囲に制御する方法としては、下引層表面に付着又は結合する撥水層の量で調整することができる。
例えば、撥水層を、湿式コーティング方式を用いて形成する場合には、コーティング液体中の材料濃度、コーティング量、下引層表面に残存する反応性基量の調整や、撥水層を繰り返してコーティングする方法でもコントロールすることができる。また、撥水層材料の分子量や異なる分子量を持つ材料の併用や、界面活性剤、結合剤などの添加剤を加えるでもコントロールすることができる。
また、乾式コーティング方式を用いて、撥水層構成材料を薄膜形成ガスとして用いる場合は、下引層表面に供給するガス量、供給時間等の調整でコントロールすることができる。また、前記の表面粗さの調整でコントロールすることもできる。
動摩擦係数は、JIS−K−7125(1987)に準じて測定できる。
新東科学社製の往復摩耗試験機(HEIDON−14DR)を用いて、法線力0.98N/cm、速度1cm/secの条件で、撥水層表面を基準物質としてはポリエステル繊維を用いて、サンプル移動速度100mm/分、接触面積80mm×200mmの条件で水平に引っ張り、ポリエステル繊維が移動中の平均動摩擦力(F)を測定し、下記式より動摩擦係数(μ)を求める。
動摩擦係数=F(N)/法線力(N)
実施例1
厚さ3.5mmのフロートガラス(クリア)基板のトップ面を中性洗剤、水、アルコールで洗浄し、乾燥し撥水層形成用の基板1とした。
(下引層の形成1)
前記基板1のトップ面に図1記載の大気圧プラズマ放電処理装置を用い、下記のガス条件、電源条件で厚さ30nmの下引層付き基板Aを得た。
<ガス条件>
放電ガス:窒素ガス 97.9体積%
薄膜形成性ガス:テトラエトキシシラン(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化) 0.1体積%
添加ガス:水素ガス 2.0体積%
<電源条件>
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm
第2電極側 電源種類 パール工業社製高周波電源
周波数 13.56MHz
出力密度 8W/cm
得られた下引層について、XPS表面分析装置としてVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いて、含有する元素(at%)を測定した。以下得られた下引層について同様の分析を行った。得られた結果を表1に示す。
(撥水層の形成)
フルオロエーテル高分子Si化合物としてオプツールAES−4E(ダイキン工業社製)の1gをノベックHFE7100(住友3M社製)100gで希釈して固形分濃度を0.2%に調整し撥水層塗布液1を作製した。次いで、前記下引層付き基板Aにディッピング法により前記撥水層塗布液1を塗布し、乾燥させ、常温常湿環境下に1昼夜保管した後、アルコール洗浄により撥水層余剰分を取り除き、撥水基板1を得た。
以下、実施例記載の下引層に含有する原子種、比率になるように下引層形成時のガス条件・電源条件を変え、表1記載となるようにする事以外は全く同様にして撥水基板2〜5、10、11を得た。尚、撥水基板5は、撥水層を形成するフルオロエーテル高分子Si化合物として、オプツールAES−4E(ダイキン工業社製)に代えてオプツールAES−2(ダイキン工業社製)を用いた以外は撥水基板1と同様にして形成した。また、撥水基板11の撥水層を形成するフルオロエーテル高分子Si化合物は、特許第2874715号公報に記載の方法により合成し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、平均分子量約650のものを分取した化合物Aを用いた。
また、撥水基板7は、撥水基板1のガラス基板を同厚のアクリル樹脂基板に代えた以外は同様にして撥水基板を得たものである。
尚、表1記載の研磨処理「あり」とは、酸化セリウムを水に添加し5%混合液を作製し、前記5%混合液をガーゼに浸み込ませ厚さ3.5mmのフロートガラス(クリア)基板のトップ面を研磨してから中性洗剤、水、アルコールで洗浄したものであり、撥水基板1と同様に下引層、撥水層を形成し、撥水基板2を得た。
下引層形成時のガス条件を
放電ガス:窒素ガス 97.6体積%
薄膜形成性ガス:ヘキサメチルジシロキサン 0.1体積%
添加ガス:水素ガス 2.3体積%に変える事、オプツールAES−4E(ダイキン工業社製)に代えてオプツールAES−6(ダイキン工業社製)を用いた以外は撥水基板1と同様にして撥水基板6を得た。
下引層形成時のガス条件を
放電ガス:窒素ガス 99.89体積%
薄膜形成性ガス:n−プロピルトリクロロシラン 0.1体積%
添加ガス:酸素ガス 0.01体積%に変える事以外は全く撥水基板1と同様にして撥水基板12を得た。
下引層形成時のガス条件を
放電ガス:窒素ガス 99.79体積%
薄膜形成性ガス:メチルトリフルオロシラン 0.2体積%
添加ガス:酸素ガス 0.01体積%に変える事以外は全く撥水基板1と同様にして撥水基板13を得た。
下引層形成時のガス条件を
放電ガス:窒素ガス 99.89体積%
薄膜形成性ガス:ノナメチルトリシラザン 0.1体積%
添加ガス:酸素ガス 0.01体積%に変える事以外は全く撥水基板1と同様にして撥水基板14を得た。
下引層形成時のガス条件を
放電ガス:窒素ガス 98.0体積%
薄膜形成性ガス:チタンテトライソプロポキシド 0.1体積%
添加ガス:水素ガス 1.9体積%に変える事以外は全く撥水基板1と同様にして撥水基板8を得た。
下引層形成時のガス条件を
放電ガス:窒素ガス 98.8体積%
薄膜形成性ガス:ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド0.1体積%
添加ガス:水素ガス 1.1体積%に変える事以外は全く撥水基板1と同様にして撥水基板9を得た。
参考例、下引層の形成2)
イソプロピルアルコール75.2gを攪拌しながらテトラエトキシシラン0.1gを添加し均一混合した後に同様に攪拌しながら30%HCl水溶液を5.2gを添加し、40℃に加温、2hr静置して、下引層塗布液を得た。実施例1と同様に厚さ3.5mmのフロートガラス(クリア)基板のトップ面を中性洗剤、水、アルコールで洗浄し、乾燥した撥水層形成用基板に、下引層塗布液をディッピング、乾燥後に100℃で1昼夜保温し膜厚25nmの下引層付き基板Bを得た。次に撥水基板1と全く同様にして撥水層を形成し参考例15を得た。
(下引層の形成3)
前記基板1のトップ面に図1記載の大気圧プラズマ放電処理装置を用い、下記のガス条件、電源条件で厚さ30nmの下引層付き基板Cを得た。
<ガス条件>
放電ガス:窒素ガス 97.9体積%
薄膜形成性ガス:テトラエトキシシラン 0.05体積%
n−プロピルトリクロロシラン 0.1体積%
(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化)
添加ガス:酸素ガス 2.0体積%
電源条件は下引層の形成1と同様である。
得られた下引層について、下引層付基板Aと同様にして含有する元素(at%)を測定した。得られた結果を表1に示す。
下引層付き基板Cを用いた以外は、撥水基板1の作製と同様にして撥水基板16を得た。
〔比較例〕
撥水基板2の研磨処理を3回繰り返し、それ以外は撥水基板2と全く同様にして比較例1を得た。
撥水基板1の下引層形成時の添加ガスを酸素ガスに変える事以外は全く同様にして比較例2を得た。
撥水基板1の下引層含有のCが表1記載になるように下引層形成時のガス条件と電源条件を変えて比較例3を得た。
撥水基板1の撥水層形成に用いたパーフロロエーテルSi化合物をドデシルトリエトキシシランに変え、ノベックHFE7100をイソプロピルアルコールに変える事以外は全く同様にして比較例4を得た。
撥水基板1の撥水層形成に用いたパーフロロエーテルSi化合物をヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロキシルトリエトキシシランに変え、ノベックHFE7100をイソプロピルアルコールに変える事以外は全く同様にして比較例5を得た。
以上の様にして作製した各試料を下記表1に纏めた。
得られた各試料について下記の評価を行った。
〔表面粗さの測定〕
得られた各撥水層の表面を、前述のエスアイアイナノテクノロジー(株)製、原子間力顕微鏡(AFM)SPA300により測定した。その結果を表2に示す。
〔撥水層耐摩耗性〕
新東科学(株)製の往復摩耗試験機トライボギアを用いて、荷重1kg/cm、速度15cm/secの条件で撥水層表面を1万往復摩擦摩耗させた。摩耗体はゴム(SBR)を用いた。摩擦摩耗前の撥水層表面の10μl水接触角をA°とし、摩擦磨耗後の同水接触角をB°とし、B/Aの比が、下記のランクで評価した。
×:0.5未満となったもの
△:0.5以上0.7未満となったもの
○:0.7以上0.9未満となったもの
◎:0.9以上となったもの
〔動摩擦係数〕
新東科学(株)製の往復摩耗試験機トライボギアを用いて、法線力0.98N/cm、速度1cm/secの条件で撥水層表面をポリエステル繊維で擦り、動摩擦係数を測定した。
〔撥水層耐候性〕
アトラスウェザオメータCi5000を用い、放射照度60w/m(300〜400nm)、ブラックパネル温度65℃、漕内温湿度35℃75%RHの条件下に撥水層面に直接光が当たるようにセットし、6000hr放射を継続した。
フィルタはCIRA/ソーダライムを用いた。
放射前の撥水層表面の10μl水接触角をC°とし、6000hr放射後の同水接触角をD°とし、D/Cの比を下記のランクで評価した。
×:0.5未満となったもの
△:0.5以上0.7未満となったもの
○:0.7以上0.9未満となったもの
◎:0.9以上となったもの
各試料の評価結果を下記表2に示した。
表2から分かる通り、本発明の試料は耐摩耗性、耐候性に優れていることが分かる。
また、撥水ガラス専用のワイパーおよび汎用のワイパーを用いて拭き取りを行った場合においても本発明の試料は優れた動作性を示した。
10 プラズマ放電処理装置
11 第1電極
12 第2電極
21 第1電源
22 第2電源
30 プラズマ放電処理室
35a ロール電極
36b 角筒型電極
41、42 電源
51 ガス供給装置
F 元巻き基材

Claims (6)

  1. 基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層の下引層を有し、更にその上に撥水層を有する撥水部材において、該撥水層の表面粗さRaが100nm以下であり、該撥水層が、反応性シリル基を有するフルオロエーテル高分子Si化合物から形成され、該下引層が、前記撥水層と結合する反応性基を有する有機金属化合物からプラズマCVD法により形成されたものであって、該下引層中に炭素原子、窒素原子、塩素原子若しくはフッ素原子の少なくとも1種を含有し、前記含有する原子の合計が0.3〜50at%であることを特徴とする撥水部材。
  2. 前記含有する原子の合計が1.0〜20at%であることを特徴とする請求項1に記載の撥水部材。
  3. 前記撥水層の表面の動摩擦係数が0.3以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の撥水部材。
  4. 前記フルオロエーテル高分子Si化合物の重量平均分子量が1500以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の撥水部材。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の撥水部材を用いたことを特徴とする車載用ガラス。
  6. 基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層の下引層を有し、更にその上に撥水層を有し、該撥水層の表面粗さRaが100nm以下であり、該下引層中に炭素原子、窒素原子、塩素原子若しくはフッ素原子の少なくとも1種を含有し、前記含有する原子の合計が0.3〜50at%である撥水部材の製造方法であって、
    反応性基を有する有機金属化合物をプラズマCVD法により反応性基を残存させて前記基材上に乾式塗布して前記下引層を形成し、
    反応性シリル基を有するフルオロエーテル高分子Si化合物を前記下引層上に湿式塗布法により塗布して前記撥水層を形成し、
    前記反応性基と前記反応性シリル基とを結合させることを特徴とする撥水部材の製造方法。
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