JP2010024367A - 撥水性物品、建築用窓ガラス及び車両用窓ガラス - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、撥水性、滑水性(水滴滑落性)に優れ、かつ耐候性及び耐摩耗性に優れた撥水性物品、及びそれを適用した建築用窓ガラス及び車両用窓ガラスに関する。
一般に、建築用窓ガラス、自動車用窓ガラスは、その表面に水滴、汚れ等の視界を妨げるものが付着しないことが望まれる。例えば、自動車用窓ガラスの表面には、雨滴、埃、汚れ等が付着したり、大気中の湿度、温度の影響で水分が凝縮すると、透明性、透視性が悪化し、自動車の走行運転に支障をきたすこととなる。そのため、自動車用の窓ガラス表面に付着した水滴は、ワイパーを用いたり、手で拭き取る等の物理的手段で除去されている。しかし、水滴を物理的手段で除去する場合、水滴等に伴う異物粒子等の磨耗によって窓ガラスの表面に微細な傷を付けることがある。さらに、ガラス表面の水滴中にガラス成分が溶出し、表面が浸食される、いわゆる焼けを生じる。焼けが激しく生じたガラスや表面に微細な凹凸を生じたガラスは、本来の機能が低下し、その表面で光の散乱が生じる。従って、これらの建築用窓ガラス、自動車用窓ガラスに用いられるガラスには、優れた撥水性、滑水性(水滴滑落性)と共に、これらの特性が長期間にわたり持続する耐候性、耐摩耗性(ワイパー等の摺動に対する耐性)が要求されている。
上記課題に対し、フッ素樹脂(耐候性・撥水性)にシリコーン(滑落性)を添加する技術(例えば、特許文献1参照)がある。しかしこの技術では、添加するシリコーンが表面上にブリードアウトしているだけであり、初期の性能はよいが、簡単な磨耗で拭取られてしまい耐摩耗性がない。
これを改善するために、添加するシリコーンをあらかじめ重合し、フッ素樹脂と共重合した共重合体を用いる技術(例えば、特許文献2参照)があるが、シロキサンを使用しているために滑落性が悪く、耐磨耗性も要求されているレベルまでにはいかない。
一方、耐磨耗性を向上するために、ゾルゲル法を用いて微細な凹凸構造を作製し、その上に撥水膜(FAS)を付与する技術(例えば、特許文献3参照)がある。現在、主流であるこの技術では確かに耐磨耗性は良好であるが、表面がフルオロアルキルシラン系であるので撥水・撥油性が非常に優れるが、滑落性が悪い。また、耐候性もフッ素樹脂が含まれていないので弱いという問題を抱えている。
特開2001−139745号公報
特開2001−151831号公報
特開2005−281132号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、撥水性、滑水性(水滴滑落性)に優れ、かつ耐候性及び耐摩耗性に優れた撥水性物品、及びそれを適用した建築用窓ガラス及び車両用窓ガラスを提供することにある。
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
1.基材上に、少なくとも下記共重合体成分AとBを共重合してなるグラフト共重合体を設けたことを特徴とする撥水性物品。
A:ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有するフッ素樹脂
B:下記一般式(1)または(2)で表される片末端ラジカル重合性不飽和結合部分を有するシラノール
A:ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有するフッ素樹脂
B:下記一般式(1)または(2)で表される片末端ラジカル重合性不飽和結合部分を有するシラノール
(式中、R1は水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基を表し、R2〜R5は互いに同一でも異なっていてもよい水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基を表し、R6は水酸基を表し、nは2以上の整数を表す。)
(式中、R7は水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基を表し、R8〜R11は互いに同一でも異なっていてもよい水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基を表し、R12は水酸基を表し、pは0〜10の整数を表し、qは2以上の整数を表す。)
2.前記グラフト共重合体が、共重合体成分A、B、及び共重合体成分A、B以外のラジカル重合性単量体成分Cを共重合体してなるグラフト共重合体であることを特徴とする前記1に記載の撥水性物品。
2.前記グラフト共重合体が、共重合体成分A、B、及び共重合体成分A、B以外のラジカル重合性単量体成分Cを共重合体してなるグラフト共重合体であることを特徴とする前記1に記載の撥水性物品。
3.前記基材と前記グラフト共重合体を有する層との間に下地層を有することを特徴とする前記1または2に記載の撥水性物品。
4.前記下地層は酸化珪素を含有することを特徴とする前記3に記載の撥水性物品。
5.前記下地層は大気圧プラズマ法により形成されることを特徴とする前記3または4に記載の撥水性物品。
6.前記1〜5のいずれか1項に記載の撥水性物品を用いて構成されていることを特徴とする建築用窓ガラス。
7.前記1〜5のいずれか1項に記載の撥水性物品を用いて構成されていることを特徴とする車両用窓ガラス。
本発明により、撥水性、滑水性(水滴滑落性)に優れ、かつ耐候性及び耐摩耗性に優れた撥水性物品、及びそれを適用した建築用窓ガラス及び車両用窓ガラスを提供することができた。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に、少なくとも共重合体成分A(ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有するフッ素樹脂)と共重合体成分B(前記一般式(1)または(2)で表される片末端ラジカル重合性不飽和結合部分を有するシラノール)を共重合してなるグラフト共重合体を設けることにより、撥水性、滑水性(水滴滑落性)に優れ、かつ耐候性及び耐摩耗性に優れた撥水性物品が得られることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の撥水性物品は、基材上に、耐候性・撥水性に優れるフッ素樹脂部分と、シリコーンよりも滑落性に優れるシラノール部分を有し、これらを共重合して耐摩耗性を向上した共重合体を設けたものである。その結果、この撥水性物品は、撥水性物品の表面が、日光や雨水に晒されたり、あるいは汚れ等を拭き取る際に受ける機械的な磨耗に対しても強く、初期の性能を維持できる特徴を有する。
以上の理由により、撥水性物品、あるいはそれを適用した建築用窓ガラス、車両用窓ガラスは、耐候性、耐摩耗性に優れ、常に優れた撥水性、滑水性(水滴滑落性)を発揮できるものである。
以下、本発明の詳細について説明する。
〔グラフト共重合体〕
以下、本発明に係るグラフト共重合体について説明する。
以下、本発明に係るグラフト共重合体について説明する。
(共重合体成分A)
本発明に用いられるウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有するフッ素樹脂(共重合体成分A)、即ち、ラジカル重合性フッ素樹脂は、例えば、水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)を反応させることによって得ることができる。
本発明に用いられるウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有するフッ素樹脂(共重合体成分A)、即ち、ラジカル重合性フッ素樹脂は、例えば、水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)を反応させることによって得ることができる。
前記の水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)は、その構成成分として少なくとも水酸基含有単量体部分とポリフルオロパラフィン部分とを含むものであれば特に限定されるものではないが、例えば、繰り返し単位として少なくとも、下記
〔式中、R21及びR22は、各繰り返し単位毎に独立して、かつ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子(例えばフッ素原子または塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基またはヘキシル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子または塩素原子)で1個または複数個置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基またはトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えばフッ素原子または塩素原子)で1個または複数個置換された炭素数6〜10のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)を表す。〕で表される繰り返し単位、及び少なくとも、下記
〔式中、R23は、各繰り返し単位毎に独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子または塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基またはヘキシル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子または塩素原子)で1個または複数個置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基またはトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えばフッ素原子または塩素原子)で1個または複数個置換された炭素数6〜10のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、R24は、繰り返し単位毎に独立して、OR25a基、CH2OR25b基、COOR25c基から選択した2価の基であり、R25a、R25b及びR25cは、OとOHの間に位置し炭素数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基またはヘキサメチレン基)、炭素数6〜10のシクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン基)、炭素数2〜10のアルキリデン基(例えばイソプロピリデン基)、及び炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基またはキシリレン基)から選択した2価の残基である。〕で表される繰り返し単位を含むものであることができる。さらに、前記の水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)は、その構成成分として、例えば、下記
〔式中、R26は、各繰り返し単位毎に独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子または塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基またはヘキシル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子または塩素原子)で1個または複数個置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基またはトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えばフッ素原子または塩素原子)で1個または複数個置換された炭素数6〜10のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、R27は、繰り返し単位毎に独立して、OR28a基またはOCOR28b基であり、R28a及びR28bは、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子または塩素原子)、炭素数1〜20のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基またはヘキシル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子または塩素原子)で1個または複数個置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基またはトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えばフッ素原子または塩素原子)で1個または複数個置換された炭素数6〜10のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)である。〕で表される繰り返し単位を含むことができる。
前記の水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)の水酸基価は、5〜250であることが好ましく、10〜200であることがより好ましく、20〜150であることがさらに好ましい。水酸基価が5未満であると、イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)の導入量が少なくなるために反応混合物に濁りが生じたり、経時的に二層分離したりすることがある。一方、水酸基価が250を越えると後述の片末端ラジカル重合性不飽和結合部分を有するシラノール(B)との相溶性が悪化し、グラフト共重合が進行しなくなる場合がある。前記水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)は酸価を有していてもよい。即ち、遊離カルボキシル基を有することによって基材に対する塗膜の接着性が向上し、かつ、メラミン、イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートプレポリマー等の硬化剤と組み合わせたときの反応率が上昇するため、塗膜硬度、撥水性、撥油性が向上するので好ましい。
本発明で用いる水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)は公知の方法で調製することができるが、市販品を用いることもできる。市販品としては、ルミフロンLF−100、LF−200、LF−302、LF−400、LF−554、LF−600、LF−986N(旭硝子社製)、セフラルコートPX−40、A606X、A202B、CF−803(セントラル硝子社製)、ザフロンFC−110、FC−220、FC−250、FC−275、FC−310、FC−575、XFC−973(東亞合成社製)、ゼッフルGK−510(ダイキン工業社製)またはフルオネートシリーズ(大日本インキ化学工業社製)等を挙げることができる。前記の水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)は、単独で使用するかまたは2種類以上を混合して使用することができる。
イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)は、イソシアネート基とラジカル重合性を有する部分とを含むものであれば特に限定されるものではないが、好適なイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)としては、例えば下記
〔式中、R31は、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基、例えば炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、または炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えばシクロヘキシル基)であり、R32は酸素原子または炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の2価炭化水素基、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、またはヘキサメチレン基)、炭素数2〜10のアルキリデン基(例えばプロピリデン基)、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基またはキシリレン基)、または炭素数3〜10のシクロアルキレン基(例えばシクロヘキシレン基)である。〕で表されるラジカル重合性単量体、あるいは下記
〔式中、R41は、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基、例えば炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、または炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えばシクロヘキシル基)であり、R42は酸素原子または炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の2価炭化水素基、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基またはヘキサメチレン基)、炭素数2〜10のアルキリデン基(例えばプロピリデン基)、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基またはキシリレン基)、炭素数7〜10のアルキリデン−1,4−フェニレン基(例えば、イソプロピリデン−1,4−フェニレン基)、または炭素数3〜10のシクロアルキレン基(例えばシクロヘキシレン基)である。〕で表されるラジカル重合性単量体を用いるのが好ましい。
前記のイソシアネート基を有するラジカル重合製単量体(A−2)としては、メタクリロイルイソシアネート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、またはm−もしくはp−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートの1種または2種以上を用いるのが好ましい。
前記の水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)と前記のイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)とから前記のラジカル重合性フッ素樹脂(A)を調製する反応では、前記のイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)を、前記の水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)の水酸基1当量あたり、好ましくは0.001モル以上0.1モル未満の量、より好ましくは0.01モル以上0.08モル未満の量で反応させる。このイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)が0.001モル未満であるとグラフト共重合が困難となり、反応混合物が濁りが生じたり、経時的に二層分離したりすることがあり好ましくない。また、0.1モル以上であるとグラフト共重合の際にゲル化が起こりやすくなり好ましくない。また、水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)の反応は、無触媒下あるいは触媒存在下、室温〜100℃で行うことができる。
こうして得られた共重合体成分Aは、使用する共重合体成分全量に対して2〜66質量%、好ましくは3〜50質量%の範囲で用いることが好ましい。2質量%未満とすると塗膜としたときの撥水性、撥油性が低下することがあり、66質量%を越えるとグラフト共重合時にゲル化することがある。
(共重合体成分B)
本発明においては、片末端ラジカル重合性不飽和結合部分を有するシラノール(共重合体成分B)として、前記一般式(1)で表される単量体を用いることができる。前記一般式(1)中のR1は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基である。本明細書において炭素数1〜10の炭化水素基とは、例えば、炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えばフェニル基)、または炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えばシクロヘキシル基)を表すものとする。R1は、好ましくは水素原子、メチル基である。また、前記一般式(1)中のR2〜R5は互いに同一でも異なっていてもよい。R2〜R5は、それぞれ独立してメチル基、フェニル基であることが好ましく、R6は水酸基である。また、前記一般式(1)中のnは2以上の整数であり、好ましくは10以上の整数、より好ましくは30以上の整数である。
本発明においては、片末端ラジカル重合性不飽和結合部分を有するシラノール(共重合体成分B)として、前記一般式(1)で表される単量体を用いることができる。前記一般式(1)中のR1は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基である。本明細書において炭素数1〜10の炭化水素基とは、例えば、炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えばフェニル基)、または炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えばシクロヘキシル基)を表すものとする。R1は、好ましくは水素原子、メチル基である。また、前記一般式(1)中のR2〜R5は互いに同一でも異なっていてもよい。R2〜R5は、それぞれ独立してメチル基、フェニル基であることが好ましく、R6は水酸基である。また、前記一般式(1)中のnは2以上の整数であり、好ましくは10以上の整数、より好ましくは30以上の整数である。
また、本発明においては、片末端ラジカル重合性不飽和結合部分を有するシラノール(共重合体成分B)として、前記一般式(2)で表される単量体を用いることができる。前記一般式(2)において、R7は水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、好ましくは水素原子、メチル基である。また、前記一般式(2)中のR8〜R11は互いに同一でも異なっていてもよい。R8〜R11はそれぞれ独立してメチル基、フェニル基であることが好ましく、R12は水酸基である。また前記一般式(2)中のpは0〜10の整数であり、好ましくは3である。また、前記一般式(2)中のqは2以上の整数であり、好ましくは10以上の整数、より好ましくは30以上の整数である。
このような片末端ラジカル重合性シラノール(B)は、公知の方法で調製することができる。また、特公平2−34997号公報に一例の記載があり、特公平6−45770号公報を参考に合成することができる。これらの原料となる両末端にシラノール基を導入した反応性シリコーンオイルは、市販品として、例えばX−21−5841、KF−9701(信越化学工業社製)等を挙げることができる。
本発明においては、前記一般式(1)で表される片末端ラジカル重合性不飽和結合部分を有するシラノールを単独でまたは2種類以上混合して、あるいは前記一般式(2)で表される片末端ラジカル重合性不飽和結合部分を有するシラノールを単独でまたは2種類以上混合して使用することができ、さらには前記一般式(1)で表される片末端ラジカル重合性不飽和結合部分を有するシラノールの1種もしくは2種類以上と、前記一般式(2)で表される片末端ラジカル重合性不飽和結合部分を有するシラノールの1種もしくは2種類以上とを混合して使用することができる。
これらの片末端ラジカル重合性不飽和結合部分を有するシラノールは、使用する共重合体成分全量に対して4〜40質量%、好ましくは5〜30質量%の範囲が好ましい。4質量%未満とすると所期の目的である撥水性、撥油性が不十分となり、結果的に耐汚染性が不十分となることがあり、40質量%を越えると重合後の未反応単量体成分が多くなり、塗膜の軟化、未反応単量体成分のブリード等好ましくない事態を招くことがある。
(共重合体成分C)
本発明に係るグラフト共重合体は、共重合体成分A、B、及び共重合体成分A、B以外のラジカル重合性単量体成分Cを共重合体してなるグラフト共重合体であることが好ましい。
本発明に係るグラフト共重合体は、共重合体成分A、B、及び共重合体成分A、B以外のラジカル重合性単量体成分Cを共重合体してなるグラフト共重合体であることが好ましい。
共重合体成分A、B以外のラジカル重合性単量体成分Cとしては、具体的には、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、またはビニルトルエン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、またはベンジル(メタ)アクリレート等の炭化水素基をもつ(メタ)アクリレート系単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、または分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ:シェル化学社製)等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、またはメタクリロニトリル等のアクリロニトリル系単量体;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、またはシクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、またはジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;ビニルピリジン、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、4−(N、N−ジメチルアミノ)スチレン、またはN−{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}ピペリジン等の塩基性窒素含有ビニル化合物系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、または3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有ビニル化合物系単量体;(メタ)アクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、マレイン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、またはモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系単量体;p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、またはこれらのε−カプロラクトン付加物、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、もしくはシトラコン酸のようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、または前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、分岐状カルボン酸グリシジルエステル(カージュラE;シェル化学社製)のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有ビニル化合物系単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、またはクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系単量体;その他マレイミド、ビニルスルホン等を挙げることができる。
共重合体成分Cとしては、前記の単量体を単独で用いても、あるいは2種類以上を混合して用いてもよく、主として共重合性及び耐黄変性の観点から(メタ)アクリレート系が好ましく用いられる。
共重合体成分Cは、使用する共重合体成分全量に対し0〜93質量%、好ましくは20〜80質量%の範囲が好ましい。4質量%未満では共重合体のガラス転移点、即ち塗膜としたときの硬度の調整が困難となり、93質量%を越えると撥水性、撥油性が不十分となり結果的に耐汚染性が不十分となる。
共重合体成分成分A、B、Cを用いて本発明の共重合体を調製するには、公知慣用の任意の重合方法を用いることができ、中でも溶液ラジカル重合法または非水分散ラジカル重合法によるのが最も簡便であり、特に推奨される。
重合の際に用いられる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、または芳香族炭化水素の混合溶剤(ソルベッソ100;エッソ石油社製)等の芳香族炭化水素化合物;n−ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ミネラルスピリット、またはケロシン等の脂肪族、脂環族炭化水素化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、またはブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル系化合物;アセトン、メチルエチルケトン、またはメチルイソブチルケトン等のケトン系化合物;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール系化合物等を挙げることができ、これらの溶剤は単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
前記の重合は、公知慣用の種々のラジカル重合開始剤、例えば、アゾ系化合物または過酸化物系化合物のようなラジカル重合開始剤を用いて、常法により実施することができる。重合時間は特に制限されないが、通常1〜48時間の範囲が選ばれる。また、重合温度は通常30〜120℃、好ましくは60〜100℃である。前記の重合は、さらに必要に応じて公知慣用の連鎖移動剤、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、またはα−メチルスチレンダイマー等を添加したり、公知慣用のレドックス触媒を添加して実施することもできる。
本発明におけるグラフト共重合体の分子量は特に限定されるものではないが、その重量平均分子量が、ポリスチレン換算のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、好ましくは約5,000〜2,000,000、より好ましくは約10,000〜1,000,000の範囲である。5,000未満とすると造膜性、耐候性、または耐薬品性が低下し、2,000,000を越えると重合時にゲル化する危険がある。
このようにして得られた本発明に係るグラフト共重合体は、塗料のバインダー成分等の組成物として使用することができる。本発明に係るグラフト共重合体の溶液をそのまま用いてもよいが、前記グラフト共重合体と硬化剤とを組み合わせて硬化型組成物として用いることが好ましい。
硬化剤としては、一般に硬化型アクリル塗料の硬化剤として知られている、例えば、アニリンアルデヒド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、イソシアネートプレポリマー、またはブロック化イソシアネートプレポリマー等を挙げることができる。
本発明に係るグラフト共重合体の水酸基価は、硬化塗膜の性質を左右する因子の一つである。この水酸基価は、前記のラジカル重合性フッ素樹脂(A)成分の水酸基価で調整することができ、さらに、前記ラジカル重合性単量体成分C中に水酸基を有する単量体が含まれる場合にはその使用量によって調整することができる。グラフト共重合体の水酸基価は特に制限されるものではないが、10〜200とすることが塗膜硬度、耐薬品性、及び耐汚染性の点から好ましい。
また、前記ラジカル重合性単量体成分C中にアルコキシシリル基を有する単量体が含まれる場合には、特に硬化剤を必要とせず、空気中の水分によって硬化させることもできる。
また、本発明に係るグラフト共重合体を基材上に形成する方法は特に制限されるものではなく、用途、使用方法によって適宜選択されるが、濃度は、通常10〜60質量%の組成物とすることが好ましい。乾燥条件も特に制限されないが、通常、室温〜200℃の範囲で1分間〜14日間程度の乾燥を行う。さらに、本発明の目的を逸脱しない範囲で必要に応じて、他の樹脂、例えばフッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等や、各種添加剤、例えば、界面活性剤、増量剤、着色顔料、防錆顔料、フッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、防錆剤、染料、ワックス等を添加してもよい。
〔下地層〕
本発明では、前記基材と前記グラフト共重合体を有する層との間に下地層を有することが好ましく、下地層は酸化珪素を含有することが好ましい。
本発明では、前記基材と前記グラフト共重合体を有する層との間に下地層を有することが好ましく、下地層は酸化珪素を含有することが好ましい。
また、下地層の膜厚は特に制限はないが、1〜500nmであることが好ましく、さらに好ましくは10〜200nmである。
本発明に係る酸化珪素を含有する下地層は、後述する原材料をスプレー法、スピンコート法、スパッタリング法、イオンアシスト法、プラズマCVD法、後述する大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等を適用して形成することができる。
しかしながら、スプレー法やスピンコート法等の湿式法では、分子レベル(nmレベル)の平滑性を得ることが難しい。そこで、本発明においては、大気圧プラズマ法を適用することが、減圧チャンバー等が不要で、高速製膜ができ生産性の高い製膜方法である点から好ましい。なお、大気圧プラズマ法の層形成条件の詳細については、後述する。
例えば、珪素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いることにより、珪素酸化物を得ることができ、また、分解ガスに二酸化炭素を用いることにより、珪素炭酸化物が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
このような無機物の原料としては、典型または遷移金属元素を有していれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。また、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール,エタノール,n−ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響はほとんど無視することができる。
このような酸化珪素膜である下地層を形成する珪素化合物としては、例えば、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等が挙げられる。
また、これらの珪素原子を含む原料ガスを分解して酸化珪素膜を得るための分解ガスとしては、例えば、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガス等が挙げられる。
珪素元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の珪素炭化物、珪素窒化物、珪素酸化物、珪素ハロゲン化物、珪素硫化物を得ることができる。
これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。このような放電ガスとしては、窒素ガス及び/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも特に、窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
(大気圧プラズマ処理法)
次いで、大気圧プラズマ法(大気圧プラズマCVD法)について、さらに詳細に説明する。
次いで、大気圧プラズマ法(大気圧プラズマCVD法)について、さらに詳細に説明する。
従来より知られているプラズマCVD法は、プラズマ助成式化学的気相成長法、PECVD法とも称され、各種の無機物を、立体的な形状でも被覆性、密着性がよく、かつ基材温度をあまり高くすることなしに製膜することができる手法である。
通常のCVD法(化学的気相成長法)では、揮発・昇華した有機金属化合物が高温の基材表面に付着し、熱により分解反応が起き、熱的に安定な無機物の薄膜が生成されるというものである。このような通常のCVD法(熱CVD法とも称する)では、通常500℃以上の基板温度が必要であるため、樹脂基材への製膜には使用することができない。
一方、プラズマCVD法は、基材近傍の空間に電界を印加し、プラズマ状態となった気体が存在する空間(プラズマ空間)を発生させ、揮発・昇華した有機金属化合物がこのプラズマ空間に導入されて分解反応が起きた後に基材上に吹きつけられることにより、無機物の薄膜を形成するというものである。プラズマ空間内では、数%の高い割合の気体がイオンと電子に電離しており、ガス温度は低く保たれるものの、電子温度は非常な高温のため、この高温の電子、あるいは低温ではあるがイオン・ラジカル等の励起状態のガスと接するために無機膜の原料である有機金属化合物は低温でも分解することができる。従って、無機物を製膜する基材についても低温化することができ、プラスチック基材上へも十分製膜することが可能な製膜方法である。
しかしながら、プラズマCVD法においては、ガスに電界を印加して電離させ、プラズマ状態とする必要があるため、通常は、0.1kPa〜10kPa程度の減圧空間で製膜するため、大面積のフィルムを製膜する際には設備が大きく操作が複雑であり、生産性の課題を抱えている方法である。
これに対し、本発明に好適に用いることができる大気圧近傍でのプラズマCVD法(以下、大気圧プラズマCVD法あるいは大気圧プラズマ法という)は、真空下のプラズマCVD法に比べ、減圧にする必要がなく生産性が高いだけでなく、プラズマ密度が高密度であるために製膜速度が速く、さらにはCVD法の通常の条件に比較して、大気圧下という高圧力条件では、ガスの平均自由工程が非常に短いため、極めて平坦な膜が得られ、そのような平坦な膜は、光学特性が良好である。以上のことから、本発明においては、大気圧プラズマCVD法を適用することが、真空下のプラズマCVD法よりも好ましい。
以下、大気圧あるいは大気圧近傍での大気圧プラズマCVD法を用いた下地層を形成する装置について詳述する。
本発明の撥水性物品の製造方法において、下地層の形成に使用されるプラズマ製膜装置の一例について、図1〜図4に基づいて説明する。図中、符号Fは基材の一例としての長尺フィルムである。
図1は、本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電界印加手段の他に、図1では図示してない(後述の図2に図示してある)ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
プラズマ放電処理装置10は、第1電極11と第2電極12から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極11からは第1電源21からの周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界が印加され、また第2電極12からは第2電源22からの周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界が印加されるようになっている。第1電源21は第2電源22より高い高周波電界強度(V1>V2)を印加でき、また第1電源21の第1の周波数ω1は第2電源22の第2の周波数ω2より低い周波数を印加できる。
第1電極11と第1電源21との間には、第1フィルター23が設置されており、第1電源21から第1電極11への電流を通過しやすくし、第2電源22からの電流をアースして、第2電源22から第1電源21への電流が通過しにくくなるように設計されている。
また、第2電極12と第2電源22との間には、第2フィルター24が設置されており、第2電源22から第2電極への電流を通過しやすくし、第1電源21からの電流をアースして、第1電源21から第2電源への電流を通過しにくくするように設計されている。
第1電極11と第2電極12との対向電極間(放電空間)13に、後述の図2に図示してあるようなガス供給手段からガスGを導入し、第1電極11と第2電極12から高周波電界を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材Fとで作る処理空間をプラズマ状態のガスG°で満たし、図示してない基材の元巻き(アンワインダー)から巻きほぐされて搬送して来るか、あるいは前工程から搬送して来る基材Fの上に、処理位置14付近で薄膜を形成させる。薄膜形成中、後述の図2に図示してあるような電極温度調節手段から媒体が配管を通って電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成等は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラができるだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、複数基接して直列に並べて同時に同じプラズマ状態のガスを放電させることができるので、何回も処理され高速で処理することもできる。また各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、異なった層、例えば、防汚層の積層薄膜を形成することもできる。
図2は、本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置30、二つの電源を有する電界印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
図2は、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との対向電極間(放電空間)32で、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。図2においては、1対の角筒型固定電極群(第2電極)36とロール回転電極(第1電極)35とで、1つの電界を形成し、この1ユニットで、例えば、低炭素原子数濃度層の形成を行う。図2においては、このような構成からなるユニットを、計5カ所備えた構成例を示してあり、それぞれのユニットで、供給する原材料の種類、出力電圧等を任意に独立して制御することにより、本発明で規定する炭素原子数濃度構成からなる積層型の透明ガスバリア層を連続して形成することができる。
ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第1電極)35には第1電源41から周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界を、また角筒型固定電極群(第2電極)36にはそれぞれに対応する各第2電源42から周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界をかけるようになっている。
ロール回転電極(第1電極)35と第1電源41との間には、第1フィルター43が設置されており、第1フィルター43は第1電源41から第1電極への電流を通過しやすくし、第2電源42からの電流をアースして、第2電源42から第1電源への電流を通過しにくくするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)36と第2電源42との間には、それぞれ第2フィルター44が設置されており、第2フィルター44は、第2電源42から第2電極への電流を通過しやすくし、第1電源41からの電流をアースして、第1電源41から第2電源への電流を通過しにくくするように設計されている。
なお、本発明においては、ロール回転電極35を第2電極、また角筒型固定電極群36を第1電極としてもよい。いずれにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より高い高周波電界強度(V1>V2)を印加することが好ましい。また、周波数はω1<ω2となる能力を有している。
また、電流はI1<I2となることが好ましい。第1の高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0〜20mA/cm2である。また、第2の高周波電界の電流I2は、好ましくは10〜100mA/cm2、さらに好ましくは20〜100mA/cm2である。
ガス供給手段50のガス発生装置51で発生させたガスGは、流量を制御して給気口よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されてくるか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群36との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との両方から電界をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。
基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。なお、放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。
薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)35及び角筒型固定電極群(第2電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、68及び69はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
図3は、図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
図3において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。プラズマ放電処理中の電極表面温度を制御するため、温度調節用の媒体(水もしくはシリコンオイル等)が循環できる構造となっている。
図4は、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
図4において、角筒型電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図3同様の誘電体36Bの被覆を有しており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の温度調節が行えるようになっている。
なお、角筒型固定電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されており、該電極の放電面積はロール回転電極35に対向している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
図4に示した角筒型電極36aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
図3及び図4において、ロール電極35a及び角筒型電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35A及び36Aの上に誘電体35B及び36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工しやすいので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることができるが、後述の理由からはチタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
対向する第1電極及び第2の電極の電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことを言う。
双方の電極に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離の最短距離のことを言う。電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
プラズマ放電処理容器31は、パイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い、絶縁性を付与してもよい。図2において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3−4500
A2 神鋼電機 5kHz SPG5−4500
A3 春日電機 15kHz AGI−023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50−4500
A5 ハイデン研究所 100kHz* PHF−6k
A6 パール工業 200kHz CF−2000−200k
A7 パール工業 400kHz CF−2000−400k
等の市販のものを挙げることができ、何れも使用することができる。
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3−4500
A2 神鋼電機 5kHz SPG5−4500
A3 春日電機 15kHz AGI−023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50−4500
A5 ハイデン研究所 100kHz* PHF−6k
A6 パール工業 200kHz CF−2000−200k
A7 パール工業 400kHz CF−2000−400k
等の市販のものを挙げることができ、何れも使用することができる。
また、第2電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 パール工業 800kHz CF−2000−800k
B2 パール工業 2MHz CF−2000−2M
B3 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
B4 パール工業 27MHz CF−2000−27M
B5 パール工業 150MHz CF−2000−150M
等の市販のものを挙げることができ、何れも好ましく使用できる。
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 パール工業 800kHz CF−2000−800k
B2 パール工業 2MHz CF−2000−2M
B3 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
B4 パール工業 27MHz CF−2000−27M
B5 パール工業 150MHz CF−2000−150M
等の市販のものを挙げることができ、何れも好ましく使用できる。
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
本発明においては、このような電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つことができる電極を大気圧プラズマ放電処理装置に採用することが好ましい。
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極(第2の高周波電界)に1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成ガスに与え、薄膜を形成する。第2電極に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm2、より好ましくは20W/cm2である。下限値は、好ましくは1.2W/cm2である。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
また、第1電極(第1の高周波電界)にも、1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給することにより、第2の高周波電界の均一性を維持したまま、出力密度を向上させることができる。これにより、更なる均一高密度プラズマを生成でき、更なる製膜速度の向上と膜質の向上が両立できる。好ましくは5W/cm2以上である。第1電極に供給する電力の上限値は、好ましくは50W/cm2である。
ここで、高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側(第2の高周波電界)は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
また、本発明で膜質をコントロールする際には、第2電源側の電力を制御することによっても達成できる。
このような大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、さらに好ましくは5×10−6/℃以下、特に好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
1:金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜
2:金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング
3:金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜
4:金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング
5:金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜
6:金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング
7:金属質母材がセラミックス及びアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜
8:金属質母材がセラミックス及びアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記1項または2項及び5〜8項が好ましく、特に1項が好ましい。
1:金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜
2:金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング
3:金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜
4:金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング
5:金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜
6:金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング
7:金属質母材がセラミックス及びアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜
8:金属質母材がセラミックス及びアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記1項または2項及び5〜8項が好ましく、特に1項が好ましい。
本発明において、金属質母材は、上記の特性からは、チタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることができる。
本発明に適用できる大気圧プラズマ放電処理装置としては、上記説明した以外に、例えば、特開2004−68143号公報、同2003−49272号公報、国際特許第02/48428号パンフレット等に記載されている大気圧プラズマ放電処理装置を挙げることができる。
〔基材〕
本発明の撥水性物品に適用可能な基材としては、透明性に優れた基材であることが好ましく、透明ガラス基材等の無機質の透明基材やプラスチック基材等の有機質の透明樹脂基材が挙げられる。
本発明の撥水性物品に適用可能な基材としては、透明性に優れた基材であることが好ましく、透明ガラス基材等の無機質の透明基材やプラスチック基材等の有機質の透明樹脂基材が挙げられる。
透明樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン類、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、あるいはこれらの樹脂とシリカ等との有機無機ハイブリッド樹脂等が挙げられる。
本発明においては、本発明の撥水性、滑水性や耐久性等の優れた特性を付与できる観点から、基材が透明ガラス基材であり、かつ最終的な撥水性物品として、可視光領域における平均透過率が、85%以上であることが、建築用窓ガラスあるいは車両用窓ガラスに適用した際に、優れた透明性を得ることができる観点から好ましい。
本発明でいう可視光領域における平均透過率とは、400〜700nmまでの可視光領域の透過率を、少なくとも5nm毎に測定して求めた可視光域の各透過率を積算し、その平均値として求めたものと定義する。各測定波長における透過率は、従来公知の測定機器を用いることができ、例えば、島津製作所社製の分光光度計UVIDFC−610、日立製作所社製の330型自記分光光度計、U−3210型自記分光光度計、U−3410型自記分光光度計、U−4000型自記分光光度計等を用いて測定することにより、求めることができる。
本発明に適用可能なガラス基材としては、表面に官能基(水酸基、アミノ基、チオール基等)を有する無機ガラスや有機ガラス、ソーダライムシリケートガラス基材等のアルカリ含有ガラス基材や、ホウケイ酸ガラス基材等の無アルカリガラス基材等を挙げることができる。また、ガラス基材は、合わせガラス、強化ガラス等であってもよい。
〔撥水性物品の作製方法〕
本発明の撥水性物品を作製する方法の一例を以下に示すが、本発明においては、ここで例示する作製方法に限定されるものではない。
本発明の撥水性物品を作製する方法の一例を以下に示すが、本発明においては、ここで例示する作製方法に限定されるものではない。
本発明の撥水性物品は、以下の作製工程に従って作製することができる。
工程1:基材の洗浄工程
基材、特にガラス基材表面に付着した異物、塵等を取り除くため、グラフト共重合体を有する層を設ける前に、基材表面をプラズマ洗浄法、湿式洗浄法等により洗浄処理を施す。
基材、特にガラス基材表面に付着した異物、塵等を取り除くため、グラフト共重合体を有する層を設ける前に、基材表面をプラズマ洗浄法、湿式洗浄法等により洗浄処理を施す。
工程2:基材の親水化処理
基材に対するグラフト共重合体を有する層(下地層)の形成安定性を高める目的で、基材表面にコロナ放電、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、プラズマ処理、レーザー処理、オゾン酸化処理等の表面処理や、シランカップリング剤等の塗布を行う。この工程2は、工程1と兼ねて行われることもある。
基材に対するグラフト共重合体を有する層(下地層)の形成安定性を高める目的で、基材表面にコロナ放電、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、プラズマ処理、レーザー処理、オゾン酸化処理等の表面処理や、シランカップリング剤等の塗布を行う。この工程2は、工程1と兼ねて行われることもある。
工程3:下地層の形成
基材上に、グラフト共重合体を有する層を設ける前にセラミック膜である下地層を、ウェット塗布方式、大気圧プラズマ法により形成する。この工程3は、必要に応じて行われる。
基材上に、グラフト共重合体を有する層を設ける前にセラミック膜である下地層を、ウェット塗布方式、大気圧プラズマ法により形成する。この工程3は、必要に応じて行われる。
工程4:グラフト共重合体を有する層の形成
基材上に、あるいは下地層上に、本発明に係るグラフト共重合体を有する層を、ウェット塗布方式、大気圧プラズマ法、プラズマ溶射法等により形成する。その中でも、本発明においては、大気圧プラズマ法によりグラフト共重合体を有する層を精緻に形成することが好ましい。
基材上に、あるいは下地層上に、本発明に係るグラフト共重合体を有する層を、ウェット塗布方式、大気圧プラズマ法、プラズマ溶射法等により形成する。その中でも、本発明においては、大気圧プラズマ法によりグラフト共重合体を有する層を精緻に形成することが好ましい。
工程5:後処理1
グラフト共重合体を有する層を形成した後、後処理1として、熱焼成、プラズマ溶着、フレーム溶着、紫外線照射、電子線照射等を施して、グラフト共重合体を有する層を構成する材料間の接着強度を高める。この工程5は、必要に応じて行われる。
グラフト共重合体を有する層を形成した後、後処理1として、熱焼成、プラズマ溶着、フレーム溶着、紫外線照射、電子線照射等を施して、グラフト共重合体を有する層を構成する材料間の接着強度を高める。この工程5は、必要に応じて行われる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例
《撥水性物品の作製》
(グラフト重合体1の合成)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコートCF−803(水酸基を有するフッ素樹脂、セントラル硝子社製)1554部、キシレン233部、2−イソシアナトエチルメタクリレート6.3部を入れ、乾燥窒素雰囲気下80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、不揮発分が50%のラジカル重合性不飽和結合成分を有するフッ素樹脂A1を得た。
《撥水性物品の作製》
(グラフト重合体1の合成)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコートCF−803(水酸基を有するフッ素樹脂、セントラル硝子社製)1554部、キシレン233部、2−イソシアナトエチルメタクリレート6.3部を入れ、乾燥窒素雰囲気下80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、不揮発分が50%のラジカル重合性不飽和結合成分を有するフッ素樹脂A1を得た。
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記フッ素樹脂A1 36.2部、メチルメタクリレート11.6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.9部、下記化合物B1(特公平2−34997号公報参照)10.5部、メタクリル酸0.4部、キシレン1.5部、酢酸n−ブチル60.2部、パーブチルO(0.3部、ラジカル重合開始剤、日本油脂社製)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1部)を追加し、さらに90℃で5時間保持することによって、不揮発分が40%のグラフト共重合体1の溶液を得た。
(グラフト重合体2の合成)
グラフト重合体1の合成において、化合物B1を下記化合物B2(特公平6−45770号公報参照)に代え、他は同様にして、不揮発分が40%のグラフト共重合体2の溶液を得た。
グラフト重合体1の合成において、化合物B1を下記化合物B2(特公平6−45770号公報参照)に代え、他は同様にして、不揮発分が40%のグラフト共重合体2の溶液を得た。
(グラフト重合体3の合成)
グラフト重合体1の合成において、化合物B1 10.5部を、サイラプレーンFM−0721(片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、チッソ社製)10.5部、及び、ライトエステルFM−108(ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、共栄社化学社製)7.7部に代え、他は同様にして、不揮発分が40%のグラフト共重合体3の溶液を得た。
グラフト重合体1の合成において、化合物B1 10.5部を、サイラプレーンFM−0721(片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、チッソ社製)10.5部、及び、ライトエステルFM−108(ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、共栄社化学社製)7.7部に代え、他は同様にして、不揮発分が40%のグラフト共重合体3の溶液を得た。
〔撥水性物品1の作製〕
ガラス基材として市販の3mm厚みソーダライムガラス(オプトン社製)を中性洗剤、水、アルコールで順次洗浄し乾燥した後、アセトンで払拭した。その上に、ルミフロンLF−600(フッ素樹脂、旭硝子社製)10部、デュラネート(硬化剤、TPA−100、旭化成ケミカルズ社製)1部、KF96H(ジメチルポリシロキサン、信越化学社製)2部を酢酸ブチルに溶解し、ディップ塗布法で塗布、乾燥して乾燥膜厚が20nmの撥水性層を有する撥水性物品1を作製した。
ガラス基材として市販の3mm厚みソーダライムガラス(オプトン社製)を中性洗剤、水、アルコールで順次洗浄し乾燥した後、アセトンで払拭した。その上に、ルミフロンLF−600(フッ素樹脂、旭硝子社製)10部、デュラネート(硬化剤、TPA−100、旭化成ケミカルズ社製)1部、KF96H(ジメチルポリシロキサン、信越化学社製)2部を酢酸ブチルに溶解し、ディップ塗布法で塗布、乾燥して乾燥膜厚が20nmの撥水性層を有する撥水性物品1を作製した。
〔撥水性物品2の作製〕
撥水性物品1の作製において、KF96H(ジメチルポリシロキサン、信越化学社製)を、X−21−5841(両末端シラノール変性ポリシロキサン、信越化学社製)に代えて、他は同様にして撥水性物品2を作製した。
撥水性物品1の作製において、KF96H(ジメチルポリシロキサン、信越化学社製)を、X−21−5841(両末端シラノール変性ポリシロキサン、信越化学社製)に代えて、他は同様にして撥水性物品2を作製した。
〔撥水性物品3の作製〕
撥水性物品1の作製において、ルミフロンLF−600(フッ素樹脂、旭硝子社製)10部、KF96H(ジメチルポリシロキサン、信越化学社製)2部を、グラフト重合体3に代えて、他は同様にして撥水性物品3を作製した。
撥水性物品1の作製において、ルミフロンLF−600(フッ素樹脂、旭硝子社製)10部、KF96H(ジメチルポリシロキサン、信越化学社製)2部を、グラフト重合体3に代えて、他は同様にして撥水性物品3を作製した。
〔撥水性物品4の作製〕セントラルガラスタイプ
特開2005−281132号公報の実施例1に記載のクリア・フロートガラス基板を、撥水性物品1の作製に用いたソーダライムガラス(オプトン社製)に代え、その上に、特開2005−281132号公報の実施例1に記載の方法でゾルゲル膜及び撥水性酸化物膜(撥水性層)を形成して、撥水性物品4を作製した。
特開2005−281132号公報の実施例1に記載のクリア・フロートガラス基板を、撥水性物品1の作製に用いたソーダライムガラス(オプトン社製)に代え、その上に、特開2005−281132号公報の実施例1に記載の方法でゾルゲル膜及び撥水性酸化物膜(撥水性層)を形成して、撥水性物品4を作製した。
〔撥水性物品5の作製〕
撥水性物品3の作製において、グラフト重合体3を、グラフト重合体1に代えて、他は同様にして撥水性物品5を作製した。
撥水性物品3の作製において、グラフト重合体3を、グラフト重合体1に代えて、他は同様にして撥水性物品5を作製した。
〔撥水性物品6の作製〕
〈下地層の形成〉
基材として、上記ソーダライムガラス(オプトン社製)を中性洗剤、水、アルコールで順次洗浄し乾燥し、アセトンで払拭した後、その上に、紫外線硬化型アクリル塗膜を5μm設けた後、下記の大気圧プラズマ放電処理装置及び放電条件で、3層からなる下地層を積層した。
〈下地層の形成〉
基材として、上記ソーダライムガラス(オプトン社製)を中性洗剤、水、アルコールで順次洗浄し乾燥し、アセトンで払拭した後、その上に、紫外線硬化型アクリル塗膜を5μm設けた後、下記の大気圧プラズマ放電処理装置及び放電条件で、3層からなる下地層を積層した。
(大気圧プラズマ放電処理装置)
17本の角筒型固定電極中、上流側より4本を下記第1層の製膜用に、次の4本を下記第2層の製膜用に、次の9本を下記第3層の製膜用に使用し、各条件を設定して1パスで3層を積層した。
17本の角筒型固定電極中、上流側より4本を下記第1層の製膜用に、次の4本を下記第2層の製膜用に、次の9本を下記第3層の製膜用に使用し、各条件を設定して1パスで3層を積層した。
(第1層)
下記の条件で、プラズマ放電を行って、厚さ約90nmの第1層を形成した。
下記の条件で、プラズマ放電を行って、厚さ約90nmの第1層を形成した。
〈ガス条件〉
放電ガス:窒素ガス 94.9体積%
薄膜形成性ガス:テトラエトキシシラン(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化) 0.08体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
〈電源条件〉
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm2
第2電極側 電源種類 パール工業社製高周波電源
周波数 13.56MHz
出力密度 8W/cm2
上記形成した第1層の炭素原子数濃度は、VGサイエンティフィックス社製のESCALAB−200Rを用いたXPS法で測定した結果、9原子数%であった。
放電ガス:窒素ガス 94.9体積%
薄膜形成性ガス:テトラエトキシシラン(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化) 0.08体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
〈電源条件〉
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm2
第2電極側 電源種類 パール工業社製高周波電源
周波数 13.56MHz
出力密度 8W/cm2
上記形成した第1層の炭素原子数濃度は、VGサイエンティフィックス社製のESCALAB−200Rを用いたXPS法で測定した結果、9原子数%であった。
(第2層目)
下記の条件で、プラズマ放電を行って、厚さ約45nmの第2層を形成した。
下記の条件で、プラズマ放電を行って、厚さ約45nmの第2層を形成した。
〈ガス条件〉
放電ガス:窒素ガス 94.91体積%
薄膜形成性ガス:テトラエトキシシラン(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化) 0.09体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
〈電源条件〉
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm2
第2電極側 電源種類 パール工業社製高周波電源
周波数 13.56MHz
出力密度 10W/cm2
上記形成した第2層の炭素原子数濃度は、4原子数%であった。
放電ガス:窒素ガス 94.91体積%
薄膜形成性ガス:テトラエトキシシラン(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化) 0.09体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
〈電源条件〉
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm2
第2電極側 電源種類 パール工業社製高周波電源
周波数 13.56MHz
出力密度 10W/cm2
上記形成した第2層の炭素原子数濃度は、4原子数%であった。
(第3層目)
下記の条件で、プラズマ放電を行って、厚さ約45nmの第3層を形成した。
下記の条件で、プラズマ放電を行って、厚さ約45nmの第3層を形成した。
〈ガス条件〉
放電ガス:窒素ガス 94.95体積%
薄膜形成性ガス:テトラエトキシシラン(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化) 0.05体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
〈電源条件〉
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm2
第2電極側 電源種類 パール工業社製高周波電源
周波数 13.56MHz
出力密度 10W/cm2
上記形成した第3層の炭素原子数濃度は、0原子数%であった。
放電ガス:窒素ガス 94.95体積%
薄膜形成性ガス:テトラエトキシシラン(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化) 0.05体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
〈電源条件〉
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm2
第2電極側 電源種類 パール工業社製高周波電源
周波数 13.56MHz
出力密度 10W/cm2
上記形成した第3層の炭素原子数濃度は、0原子数%であった。
〈撥水性層の形成〉
上記下地層の上に、撥水性物品5の作製と同様にして、グラフト重合体1を含む撥水性層を形成して、撥水性物品6を作製した。
上記下地層の上に、撥水性物品5の作製と同様にして、グラフト重合体1を含む撥水性層を形成して、撥水性物品6を作製した。
〔撥水性物品7の作製〕
撥水性物品6の作製において、グラフト重合体1をグラフト重合体2に代えて、他は同様にして、撥水性物品7を作製した。
撥水性物品6の作製において、グラフト重合体1をグラフト重合体2に代えて、他は同様にして、撥水性物品7を作製した。
《撥水性物品の評価》
〔評価1:作製直後の撥水性物品の評価〕
(撥水性の評価:静的接触角の測定)
上記作製した各撥水性物品について、検液として水を用いた静的接触角を、接触角計(CA−DT、協和界面科学(株)製)により、2mgの質量の水滴による静的接触角を測定し、下記の基準に従って撥水性の評価を行った。この静的接触角の値が大きいほど、静的な撥水性が優れていることを表している。
〔評価1:作製直後の撥水性物品の評価〕
(撥水性の評価:静的接触角の測定)
上記作製した各撥水性物品について、検液として水を用いた静的接触角を、接触角計(CA−DT、協和界面科学(株)製)により、2mgの質量の水滴による静的接触角を測定し、下記の基準に従って撥水性の評価を行った。この静的接触角の値が大きいほど、静的な撥水性が優れていることを表している。
◎:静的接触角が110°以上である
○:静的接触角が100℃以上、110°未満である
△:静的接触角が90℃以上、100°以下である
×:静的接触角が90℃未満である
(滑水性の評価:臨界滑落角の測定)
上記作製した各撥水性物品について、接触角計(CA−DT、協和界面科学(株)製)を用いて、直径2mmの水滴を滴下した後、撥水性物品を保持しているステージの角度0℃(水平)から90℃(直角)方向に徐々に傾斜させ、水滴が撥水性物品表面を転がりはじめる角度を求め、これを臨界滑落角とし、下記の基準に従って滑水性(水滴滑落性)の評価を行った。臨界滑落角が小さい程、動的な撥水性が優れており、例えば、走行中の自動車のフロントガラス窓に付着した雨滴が飛散しやすくなって、運転者の視界が妨げられないことを表している。
○:静的接触角が100℃以上、110°未満である
△:静的接触角が90℃以上、100°以下である
×:静的接触角が90℃未満である
(滑水性の評価:臨界滑落角の測定)
上記作製した各撥水性物品について、接触角計(CA−DT、協和界面科学(株)製)を用いて、直径2mmの水滴を滴下した後、撥水性物品を保持しているステージの角度0℃(水平)から90℃(直角)方向に徐々に傾斜させ、水滴が撥水性物品表面を転がりはじめる角度を求め、これを臨界滑落角とし、下記の基準に従って滑水性(水滴滑落性)の評価を行った。臨界滑落角が小さい程、動的な撥水性が優れており、例えば、走行中の自動車のフロントガラス窓に付着した雨滴が飛散しやすくなって、運転者の視界が妨げられないことを表している。
◎:臨界滑落角が10°未満である
○:臨界滑落角が10°以上、20°未満である
△:臨界滑落角が20°以上、30°未満である
×:臨界滑落角が20°以上、30°未満である
〔評価2:耐候性の評価〕
(耐候性試験)
耐候性試験として、耐紫外線試験機(アイスーパーUVテスター W−13、岩崎電気製)を用いて、各撥水性物品の撥水性層を有する面側に、波長340nm、強度0.6W/cm2の紫外線を、ブラックパネル温度48±2℃の条件で、照射20時間、暗黒4時間のサイクルで、1時間毎に30秒間イオン交換水シャワーリングをする条件で、合計400時間の紫外線照射を行った。
○:臨界滑落角が10°以上、20°未満である
△:臨界滑落角が20°以上、30°未満である
×:臨界滑落角が20°以上、30°未満である
〔評価2:耐候性の評価〕
(耐候性試験)
耐候性試験として、耐紫外線試験機(アイスーパーUVテスター W−13、岩崎電気製)を用いて、各撥水性物品の撥水性層を有する面側に、波長340nm、強度0.6W/cm2の紫外線を、ブラックパネル温度48±2℃の条件で、照射20時間、暗黒4時間のサイクルで、1時間毎に30秒間イオン交換水シャワーリングをする条件で、合計400時間の紫外線照射を行った。
(各特性値の測定)
上記耐候性試験を行った各撥水性物品について、評価1と同様の方法で、撥水性(静的接触角)及び滑水性(臨界滑落角)の測定を行った。
上記耐候性試験を行った各撥水性物品について、評価1と同様の方法で、撥水性(静的接触角)及び滑水性(臨界滑落角)の測定を行った。
〔評価3:耐摩擦性の評価〕
(耐摩擦試験)
耐摩擦性試験として、往復摩耗試験機(HEIDON−14DR)にネル布を取り付けて、荷重1kg/cm2の条件で各撥水性物品の撥水性層表面を30mm/secで5000回往復摺動させた。
(耐摩擦試験)
耐摩擦性試験として、往復摩耗試験機(HEIDON−14DR)にネル布を取り付けて、荷重1kg/cm2の条件で各撥水性物品の撥水性層表面を30mm/secで5000回往復摺動させた。
(各特性値の測定)
上記耐摩擦試験を行った各撥水性物品について、評価1と同様の方法で、撥水性(静的接触角)及び滑水性(臨界滑落角)の測定を行った。
上記耐摩擦試験を行った各撥水性物品について、評価1と同様の方法で、撥水性(静的接触角)及び滑水性(臨界滑落角)の測定を行った。
以上により得られた各評価結果を表1に示す。
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定するグラフト共重合体を有する本発明の撥水性物品は、比較例に対し、作製直後における撥水性(静的接触角)及び滑水性(臨界滑落角)に優れ、かつ長期間にわたり紫外線の照射を受けたり、あるいは表面が摩耗された後でも、その優れた特性が持続されていることが分かる。本発明の中でも、特に、大気圧プラズマ法で下地層を作製した撥水性物品6、7が優れていることが分かる。
10 プラズマ放電処理装置
11 第1電極
12 第2電極
21 第1電源
22 第2電源
30 プラズマ放電処理室
35a ロール電極
36b 角筒型電極
41、42 電源
51 ガス供給装置
F 元巻き基材
11 第1電極
12 第2電極
21 第1電源
22 第2電源
30 プラズマ放電処理室
35a ロール電極
36b 角筒型電極
41、42 電源
51 ガス供給装置
F 元巻き基材
Claims (7)
- 基材上に、少なくとも下記共重合体成分AとBを共重合してなるグラフト共重合体を設けたことを特徴とする撥水性物品。
A:ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有するフッ素樹脂
B:下記一般式(1)または(2)で表される片末端ラジカル重合性不飽和結合部分を有するシラノール
- 前記グラフト共重合体が、共重合体成分A、B、及び共重合体成分A、B以外のラジカル重合性単量体成分Cを共重合体してなるグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の撥水性物品。
- 前記基材と前記グラフト共重合体を有する層との間に下地層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の撥水性物品。
- 前記下地層は酸化珪素を含有することを特徴とする請求項3に記載の撥水性物品。
- 前記下地層は大気圧プラズマ法により形成されることを特徴とする請求項3または4に記載の撥水性物品。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の撥水性物品を用いて構成されていることを特徴とする建築用窓ガラス。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の撥水性物品を用いて構成されていることを特徴とする車両用窓ガラス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008188337A JP2010024367A (ja) | 2008-07-22 | 2008-07-22 | 撥水性物品、建築用窓ガラス及び車両用窓ガラス |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008188337A JP2010024367A (ja) | 2008-07-22 | 2008-07-22 | 撥水性物品、建築用窓ガラス及び車両用窓ガラス |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010024367A true JP2010024367A (ja) | 2010-02-04 |
Family
ID=41730483
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2008188337A Pending JP2010024367A (ja) | 2008-07-22 | 2008-07-22 | 撥水性物品、建築用窓ガラス及び車両用窓ガラス |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2010024367A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2014077155A1 (ja) * | 2012-11-13 | 2014-05-22 | ダイキン工業株式会社 | 表面処理組成物 |
WO2023008241A1 (ja) * | 2021-07-27 | 2023-02-02 | 株式会社村上開明堂 | 滑水膜、および表面に滑水膜を有する物品 |
-
2008
- 2008-07-22 JP JP2008188337A patent/JP2010024367A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2014077155A1 (ja) * | 2012-11-13 | 2014-05-22 | ダイキン工業株式会社 | 表面処理組成物 |
JP2014198818A (ja) * | 2012-11-13 | 2014-10-23 | ダイキン工業株式会社 | 表面処理組成物 |
US9909027B2 (en) | 2012-11-13 | 2018-03-06 | Daikin Industries, Ltd. | Surface treatment composition |
WO2023008241A1 (ja) * | 2021-07-27 | 2023-02-02 | 株式会社村上開明堂 | 滑水膜、および表面に滑水膜を有する物品 |
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