JP5490283B2 - ケトール脂肪酸の包接化合物 - Google Patents
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Description
[2] 前記ケトール脂肪酸の炭素原子数が18であり、かつ、炭素間の二重結合が2か所存在する、項目[1]に記載の包接化合物。
[3] 前記ケトール脂肪酸が、以下の式(I):
[4] 前記シクロデキストリンが、β-デキストリン及び/又はγ-デキストリンである、項目[1]〜[3]のいずれか一つに記載の包接化合物。
[5] 前記包接化合物が、固体状態の包接化合物である、項目[1]〜[4]に記載の包接化合物。
[6] 項目[1]〜[5]のいずれか一つに記載の包接化合物の製造方法であって、前記ケトール脂肪酸と、シクロデキストリンとを溶液中で混合する工程を含む、前記製造方法。
[7] 炭素原子数が4〜24のケトール脂肪酸のカルボニル基を構成する炭素原子と水酸基が結合した炭素原子が、α位またはγ位の位置にあり、炭素間の二重結合が1〜6か所(ただし、この二重結合数は、ケトール脂肪酸の炭素結合数を超えることはない)存在する、ケトール脂肪酸又はその塩の保存方法であって、シクロデキストリンと、上記ケトール脂肪酸とを溶液中で混合し、乾燥する工程を含む、前記保存方法。
[8] 前記乾燥工程が、凍結乾燥である、項目[7]に記載の保存方法。
[9] 溶媒で前記ケトール脂肪酸を抽出する工程を含む、項目[7]又は[8]に記載の保存方法。
[10] 前記ケトール脂肪酸の炭素原子数が18であり、かつ、炭素間の二重結合が2か所存在する、項目[7]〜[9]のいずれか一項に記載の前記保存方法。
[11] 前記ケトール脂肪酸が、以下の式(I):
(1)α-シクロデキストリン
α‐シクロデキストリン(1.56g,16mmol)(塩水港精糖株式会社、デキシーパールα−100)に純水を加え95mLとした後に、マグネティックスターラーを用いて溶解させた。このα-シクロデキストリン溶液に、特許文献3に記載の酵素法により得られた32mMのKODAのエタノール溶液5mL(1.6mmol)を加えマグネティックスターラーにて3時間攪拌した。攪拌後、白色の沈殿を含む混合液を得た。
β‐シクロデキストリン(1.81g,16mmol)(塩水港精糖株式会社、デキシーパールβ−100)に純水を加え95mLとした後に、マグネティックスターラーを用いて溶解させた。このα-シクロデキストリン溶液に、特許文献3に記載の酵素法により得られた32mMのKODAのエタノール溶液5mL(1.6mmol)を加えマグネティックスターラーにて3時間攪拌した。攪拌後、白色の沈殿を含む混合液を得た。
γ‐シクロデキストリン(2.07g,16mmol)(塩水港精糖株式会社、デキシーパールγ−100)に純水を加え95mLとした後に、マグネティックスターラーを用いて溶解させた。このα-シクロデキストリン溶液に、特許文献3に記載の酵素法により得られた32mMのKODAエタノール溶液5mL(1.6mmol)を加えマグネティックスターラーにて3時間攪拌した。攪拌後、白色の沈殿を含む混合液を得た。
シクロデキストリンによるKODAの包接時に、30分おきに2.5時間までサンプル採取を行った。包接時に生成する包接物と考えられる白色の沈殿を遠心分離にて沈殿させた後に、上澄み液を採取し、HPLC(Agilent Technologies、1100 Series、移動相溶媒:50%アセトニトリル(0.02%トリフルオロ酢酸を含む)、送液量:1mL/min、カラム:CAPCELL PAK C18(SHISEIDO)、カラム温度:40℃、サンプル導入量:10μL、検出波長:210nm)にて上澄み液中のKODA濃度を確認した。この結果を図1に示す。この結果より、α‐シクロデキストリン溶液にKODAエタノール溶液を添加後、上澄み液中のKODA濃度が低下していたため、KODAがシクロデキストリンに包接されていると考えられた。また、βおよびγ‐シクロデキストリンにKODAエタノール溶液を添加後、上澄み液中のKODA濃度は30分で速やかに低下していたため、KODAがシクロデキストリンに包接されていると考えられる。特にβ‐シクロデキストリンの包接速度は極めて早くKODAエタノール溶液添加直後に白沈の生成が認められ、上澄み中のKODA濃度が即座に低下していた(図1)。
α−、β−、又はγ−シクロデキストリンに包接させたKODAを含む混合液を、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら、500μLづつチューブに分注し、遠心濃縮(25℃、1,120rpm)によりエタノールを除去した。この後に凍結乾燥を行いシクロデキストリンに包接させたKODAを粉末化した。コントロール実験として、KODAエタノール溶液(1.6mM)を500μLチューブに取り、濃縮乾固したものを調製した。
実施例2で粉末化しされたシクロデキストリン包接KODAを40℃にて120日間貯蔵し、残存しているKODAの保存安定性を試験した。貯蔵開始後0日、5日、10日、15日、20日、30日、45日、60日、75日、90日、105日および120日後にサンプリングを行った。回収したサンプル(チューブに入った状態の粉末化したシクロデキストリン包接KODA)に500μLのエタノールを加え、KODAを抽出した。3時間抽出を行い、適宜攪拌しながら抽出を行った。抽出後、遠心分離(15,000rpm)にてシクロデキストリンを沈殿させた後に、上澄みのエタノールを200μL取り出し、HPLC(Agilent Technologies、1100 Series、移動相溶媒:50%アセトニトリル(0.02%トリフルオロ酢酸を含む)、送液量:1mL/min、カラム:CAPCELL PAK C18(SHISEIDO)、カラム温度:40℃、サンプル導入量:10μL、検出波長:210nm)にて上澄みエタノール中のKODA濃度を確認した。コントロール実験として、KODAエタノール溶液を濃縮乾固したものも、40℃にて保存安定性の確認を行った。
KODAの保存安定性
この結果、KODAの保存安定性は図2に示す通りとなった。β‐シクロデキストリンにてKODAを包接したものに関しては、貯蔵開始後20日で82%のKODAが残存していた。また貯蔵開始後60日でも56%と半分以上のKODAが残存していた。γ‐シクロデキストリンにてKODAを包接したものに関しては、貯蔵開始後20日で55%、60日後で28%のKODAが残存していた。これに対し、コントロールであるKODAのみを濃縮乾固させたものでは、貯蔵開始後1日でその残存率は4.5%にまで低下していた。また、貯蔵開始後7日後にはその残存率は0.7%にまで低下していた。この結果から、β−又はγ−シクロデキストリンで包接することによりKODAの安定性が飛躍的に上昇することが認められた。
実施例2において得られた粉末状のγ−シクロデキストリン包接KODAを、それぞれ以下に記す40℃以外の温度にて温度依存的保存安定性を試験した。温度依存性を試験するに当たり、試験温度を25℃、4℃、-20℃とし、それぞれの温度水準にて92日間貯蔵し、貯蔵後のKODAの保存安定性を試験した。貯蔵開始後0日、2日、5日、10日、17日、35日、50日、63日、73日、及び92日後にサンプリングを行った。回収したサンプル(チューブに入った状態の粉末化したγ−シクロデキストリン包接KODA)に500μLのエタノールを加え、KODAを抽出した。3時間抽出を行い、適宜攪拌しながら抽出を行った。抽出後、遠心分離(15,000rpm)にてγ−シクロデキストリンを沈殿させた後に、上澄みのエタノールを200μL取り出し、HPLC(Agilent Technologies、1100 Series、移動相溶媒:50%アセトニトリル(0.02%トリフルオロ酢酸を含む)、送液量:1mL/min、カラム:CAPCELL PAK C18(SHISEIDO)、カラム温度:40℃、サンプル導入量:10μL、検出波長:210nm)にて上澄みエタノール中のKODA濃度を確認し、結果を、実施例3のγ−シクロデキストリンで包接させて、40℃で貯蔵した場合の結果とともに、図3に示した。コントロール実験は、KODAエタノール溶液を濃縮乾固したもの(図中Cont.)、並びにシクロデキストリンの代わりに、デキストリンと混合して濃縮乾固したKODAもの(図中Dex)について、40℃にて保存安定性の確認を行った時の結果である。
貯蔵されたサンプルをHPLCにて分析した結果、シクロデキストリンで包接したKODA以外にも類縁体が生成していることを確認した。類縁体の構造決定は、DART−MS(500℃、negative ion mode)を用いて行われ、類縁体は、m/z 309.2080[M‐H]-(calcd for C18H29O4)を示し、分子式 C18H29O4 を得た。以下の表1に示した1H‐NMR、13C‐NMRの測定結果より、類縁体はKODAのC12−13の二重結合がC11−12に転移した構造を有するD−KODAであった。またC11−12の幾何異性体は、JH11,12=16Hzを基にEであると決定した。
実施例2において得られた粉末状のγ−シクロデキストリン包接KODAを、それぞれ以下に記す40℃以外の温度にて温度依存的D−KODAの生成量を試験した。温度依存性を試験するに当たり、試験温度を25℃、4℃、-20℃とし、それぞれの温度水準にて92日間貯蔵し、生成したD−KODAを測定した。貯蔵開始後0日、2日、5日、10日、17日、35日、50日、63日、73日、及び92日後にサンプリングを行った。回収したサンプル(チューブに入った状態の粉末化したγ−シクロデキストリン包接KODA)に500μLのエタノールを加え、KODA及び類縁体を抽出した。3時間抽出を行い、適宜攪拌しながら抽出を行った。抽出後、遠心分離(15,000rpm)にてγ−シクロデキストリンを沈殿させた後に、上澄みのエタノールを200μL取り出し、HPLC(Agilent Technologies、1100 Series、移動相溶媒:50%アセトニトリル(0.02%トリフルオロ酢酸を含む)、送液量:1mL/min、カラム:CAPCELL PAK C18(SHISEIDO)、カラム温度:40℃、サンプル導入量:10μL、検出波長:210nm)にて上澄みエタノール中のD−KODA濃度を確認し、結果を、実施例5のγ−シクロデキストリンで包接させて、40℃で貯蔵した場合の結果とともに図5に示した。コントロール実験は、KODAエタノール溶液を濃縮乾固したもの(図中Cont.)、並びにシクロデキストリンの代わりに、デキストリンと混合して濃縮乾固したKODAもの(図中Dex)について、40℃にて保存安定性の確認を行った時の結果である。温度が高いほど、D−KODAの生成が促進され、4℃では、ほとんど生成しないことが示された。
実施例3の試験において、貯蔵後のサンプルについて、HPLCによるKODAおよびD‐KODAの定量を行い、生理活性成分としてのKODAおよびD‐KODAの合算値から活性成分の残存率を算出した。この結果を図6に示す。β‐シクロデキストリンにてKODAを包接した場合、貯蔵開始後30日で81%、60日後で63%のKODAおよびD‐KODAが残存していることが認められた。γ‐シクロデキストリンにてKODAを包接した場合、貯蔵開始後30日で95%、60日後で91%のKODAおよびD‐KODAが残存していることが認められた。これに対しコントロールであるKODAのみを濃縮乾固させたものでは、貯蔵開始後15日の時点で0.6%のKODAおよびD‐KODAしか残存していないことが認められた。D−KODAもKODAと同様の生理活性を示すことから、KODAのみの残存率ではなく、KODA及びD−KODAの両成分の残存率を調べることが、活性成分の保存の点で重要である。したがって、活性成分の保存の観点では、β−シクロデキストリンよりもγ−シクロデキストリンにより保存することが好ましいことが示された。これまでKODAは、保存安定性が非常に悪かったことから、β−シクロデキストリンを使用した場合であっても十分に保存安定性が高まったといえる。
実施例4及び6の試験において、貯蔵後サンプルについて、HPLCによるKODA及びD−KODAの合算値を測定し、貯蔵温度に応じた生理活性成分の残存率を算出した。この結果を図7に示す。40℃の温度では、保存日数を経るにしたがい、活性成分の残存率が減少する(90日で90%弱)一方で、−20℃、4℃、及び25℃の温度では活性成分はほとんど減少しないことが示された。これにより、γ−シクロデキストリンを用いてKODAの包接を行うことにより、生理活性成分の室温での長期貯蔵が可能になることが示された。
Claims (6)
- 前記包接化合物が、固体状態の包接化合物である、請求項2に記載の包接化合物。
- 請求項2又は3に記載の包接化合物の製造方法であって、9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(Z),15(Z)−オクタデカジエン酸又はその塩と、γ-シクロデキストリンとを溶液中で混合する工程を含む、前記製造方法。
- さらに乾燥工程を含む、請求項4に記載の製造方法。
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