JP5489612B2 - 走査光学装置及びそれを用いた画像形成装置 - Google Patents

走査光学装置及びそれを用いた画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、走査光学装置及びそれを用いた画像形成装置に関し、電子写真プロセスを有するレーザービームプリンタやデジタル複写機の画像形成装置に好適なものである。
従来、レーザービームプリンタやデジタル複写機に用いられている走査光学装置においては、光源手段の発光部の数を増やすことにより高速化や高い解像度を達成することができる。
光源手段の発光部の数を増加させ、高速化や高い解像度を達成する走査光学装置は、従来より種々と提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1では、複数の発光部をコリメータレンズの光軸に対して対称に配置することにより、複数の光束間の光学性能を改善する技術が開示されている。
特開平9−26550号公報
上記従来の走査光学装置は、入射光学係の光軸から主走査方向に距離が遠い位置に複数の発光部を有するマルチビーム光源手段に用いた場合、マルチビーム光源手段の各発光部から出射された各光束の被走査面上のピント位置がずれて光束間でスポット径に差が生じる。これによって、画像が劣化するという課題が生じる。
また、光束のスポット径に差が生じないようにするために、入射光学系のレンズ枚数を増やす必要があり、装置全体の大型化や複雑化を招くだけでなく、入射光学系の敏感度が高くなり、製造誤差による性能劣化が大きくなるという課題が生じる。
仮に、互いに主走査方向に間隔を有する複数の発光部を有する光源手段として、コリメータレンズの光軸から主走査方向に距離が異なる(設計上及び製作上の誤差が原因)2つの発光部を有する光源手段を用いたとする。このとき、入射光学系を構成するコリメータレンズのレンズ面の主走査断面内の形状が円弧であると、コリメータレンズのレンズ面において主走査方向の像面湾曲が起こる。つまり、コリメータレンズのレンズ面を通過した2つの光束の主走査方向の集光状態に違いが生じる。例えば、コリメータレンズのレンズ面を通過した2つの平行光束の主走査方向の平行度に違いが生じる。
2つの発光部から出射された2本の光束の被走査面上のピント位置が異なってくる。そうすると、被走査面上での2本の光束のスポット径が互いに異なってきて、2つの発光部から出射された2本の光束に基づく画像の画質に差が生じてくる。
本発明は、互いに主走査方向に間隔を有する複数の発光部が入射光学系を通過する際に起こる主走査方向の像面湾曲を低減した走査光学装置及びそれを用いた画像形成装置の提供を目的とする。
そこで、本発明では、互いに主走査方向に離間した複数の発光部を有する光源手段と、前記複数の発光部から出射した複数の光束を主走査方向に偏向する偏向手段と、前記複数の発光部から出射した複数の光束を前記偏向手段の偏向面に導光する入射光学系と、前記偏向手段により偏向された複数の光束を被走査面に集光する結像光学系と、を備える。
そして、前記入射光学系走査断面内において軸上から軸外に向って正のパワーが弱くなる非円弧形状の光学面を少なくとも1つ含む光学素子と、該光学素子を通過した光束主走査方向の光束幅を規定する絞りとを有し、記複数の発光部のうち主走査方向に最も離間した2つの発光部同士の間隔をW(mm)、少なくとも1つの光学面のうち前記光源手段に最も近い光学面から前記絞りまでの光路長をLa(mm)、前記入射光学系の主走査断面内での焦点距離をf(mm)、記光源手段に最も近い前記光学面上における、前記2つの発光部の夫々から出射した光束の主走査方向の光束幅をD(mm)とするとき、2D≧|W・La/2f|≧D/8なる条件を満足する構成とした。
本発明によれば、互いに主走査方向に間隔を有する複数の発光部が入射光学系を通過する際に起こる主走査方向の像面湾曲を低減することができる。よって、互いに主走査方向に間隔を有する複数の発光部から出射される複数の光束の被走査面上におけるスポット径のばらつきを低減できる。
本発明の実施例1の主走査断面図 本発明の実施例1の副走査断面図 本発明の実施例1の入射光学系の主走査断面図 本発明の実施例1の入射光学系の像面湾曲を示す図 本発明の実施例1の光源手段の模式図 本発明の実施例1の光源手段及びコリメータレンズの拡大図 本発明の実施例2の入射光学系の主走査断面図 実施例2の入射光学系の主走査方向の像面湾曲を示す図 実施例1におけるコリメータレンズを通過する光束位置を説明する図 本発明の実施例3の入射光学系の主走査断面図 実施例3の入射光学系の主走査方向の像面湾曲を示す図 本発明の実施例3の光源手段の模式図 本発明のカラー画像形成装置の模式図
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1の主走査断面図、図2は、本発明の実施例1の副走査断面図である。
尚、以下の説明において、副走査方向(Z方向)とは、偏向手段の回転軸と平行な方向である。主走査断面とは、副走査方向(偏向手段の回転軸と平行な方向)を法線とする断面である。主走査方向(Y方向)とは、偏向手段の偏向面で偏向走査される光束を主走査断面に投射した方向である。副走査断面とは、主走査方向を法線とする断面である。
図中、1は光源手段であり、互いに主走査方向及び副走査方向に離れた複数の発光部を有する半導体レーザーより成っている。半導体レーザー1の複数の発光部は、コリメータレンズ3の光軸から主走査方向の距離が異なっている。半導体レーザー1は、図5に示すように互いに主走査方向及び副走査方向に離れた8個の発光部が一次元状に配列された8ビームレーザーで構成されている。2は、第1の絞り(副走査絞り)であり、副走査方向の通過光束の光束幅を制限してビーム形状を整形している。3は、光源手段1から出射された光束を平行光束に変換するモールディングプロセスで作製されたガラス製の第1光学素子である。第1光学素子としてのコリメータレンズ3の出射面は、光軸から周辺部に向かい凸(正)のパワーが弱くなる回転対称な非円弧で形成されたレンズ面(光学面)を有している。
これによって、複数の発光部から出射された光束の被走査面上のピント位置を同一にして、被走査面上での複数の光束間のスポット径を同一にするとともに、光源手段1から出射された発散光束を主走査断面内及び副走査断面内において平行光束に変換している。尚、本実施例では、コリメータレンズ3の出射面を主走査断面内において非円弧としたが、入射面、もしくは両面を主走査断面内において非円弧としても良い。本発明では、主走査断面内において非円弧な光学面を少なくとも1面含んでいれば良い。
4は、副走査方向のみパワーを有するモールディングプロセスで作製されたガラス製の第2光学素子4としてのシリンドリカルレンズ4である。シリンドリカルレンズ4は、副走査断面内において、コリメータレンズ3を通過した光束を光偏向器10の偏向面10a上に主走査方向に長い線像として結像させている。尚、コリメータレンズ3とシリンドリカルレンズ4を1つの複合光学素子としてのアナモフィックレンズより構成しても良い。アナモフィックレンズは、主走査方向のパワーと副走査方向のパワーが異なるコリメート機能及び偏向面上に副走査方向に結像させる機能の両方を備えている。5は、第2の絞り(主走査絞り)であり、光偏向器10に入射する光束の主走査方向の光束幅を規定している。
また、第2の絞り5は、偏向面10a上での各発光部からの光束の主光線を近接させることによって、互いに主走査方向に間隔を有する複数の発光部から出射した複数の光束の被走査面上における主走査方向のジッター量を低減している。主走査方向のジッターとは、被走査面上に結像する複数のスポットの主走査方向の結像位置ずれを意味する。尚、光源手段側から順に並べられた、第1の絞り2、コリメータレンズ3、シリンドリカルレンズ4、第2の絞り5の各要素は、入射光学系LAとしての一要素を構成している。10は、5面構成の回転多面鏡より成っており、駆動手段により図中矢印A方向に一定速度で回転している。6は、fθ特性とを有する結像光学系であり、第1の結像レンズ6a、第2の結像レンズ6bよりなる。
副走査断面内において、結像光学系6は、光偏向器10の偏向面10aと感光ドラム面7との間を共役関係にする面倒れ補正光学系の機能を備えている。7は、被走査面としての感光ドラム面である。
画像情報に応じて光源手段1から光変調され出射した8本の光束1a、1b、1c・・・は、第1の絞り2により副走査方向の光束幅が制限される。そして、8本の光束は、コリメータレンズ3により平行光束に変換され、シリンドリカルレンズ4に入射する。シリンドリカルレンズ4に入射した光束は、主走査断面内において集光状態が変化する事なく出射して第2の絞り5により主走査方向の光束幅が制限される。
また、シリンドリカルレンズ4に入射した光束は、副走査断面内において収束して、第2の絞り5にて主走査方向の光束幅が制限され、光偏向器10の偏向面10aに主走査方向に長手の線像として結像する。
そして、光偏向器10の偏向面10aで偏向走査された複数の光束は、各々結像光学系6により感光ドラム面7上にスポット状に結像される。
また、光偏向器10の偏向面10aで偏向走査された複数の光束は、矢印A方向に回転する光偏向器10により感光ドラム面7上を矢印B方向(主走査方向)に等速度で光走査している。これにより、記録媒体である感光ドラム面7上に複数の走査線を同時に形成し、画像記録を行っている。
図2に示すように、3枚の平面ミラー8a、8b、8cを光偏向器10から被走査面7までの光路中に配置している。
光源手段としての半導体レーザー1は、図5に示すように8個の発光部が一次元方向にピッチ間隔50μmで配列されており、かつ主走査方向に対して角度α(α=9.2度)傾けた状態で配列されている。
よって、副走査方向の光学倍率を高くでき、半導体レーザーの隣接する発光部同士の間隔を広げることができる。
また、半導体レーザー1は、その組み立て時の取り付け誤差により発生するビーム間隔誤差を調整するために、入射光学系LAに光軸と平行な軸を中心に回転可能に保持されている。
尚、図5において、1aは、軸上に最も近い軸外の発光部、1b、1cは、主走査方向の最軸外の発光部である。発光部1b、1cは、入射光学系LAの光軸を基準として主走査方向に対称に配置されている。
本実施例では、主走査方向において互いに光軸から異なる位置に配置された2個以上の発光部から成る半導体レーザーならば、本発明は適用できる。
但し、本発明の課題は、複数の発光部が光軸から主走査方向に離れる距離が大きいマルチビーム走査光学装置において顕著になる。
よって、本発明では、主走査方向において互いに光軸から異なる位置に配置された発光部を4個以上有する半導体レーザーに適用するとより効果を発揮する。軸上に最も近い軸外の発光部1aと主走査方向の最軸外の発光部1b、1cは、設計上、主走査方向において互いに光軸から異なる位置に配置されている。
よって、軸上に最も近い軸外の発光部1aから出射された光束aと主走査方向の最軸外の発光部1b、1cから出射された光束b、cは、コリメータレンズ3のレンズ面の主走査断面の形状が円弧の場合、コリメータレンズ3のレンズ面において主走査方向の像面湾曲が起こる。
つまり、コリメータレンズのレンズ面を通過した光束a、光束b、cの主走査方向の集光状態に違いが生じる。コリメータレンズのレンズ面を通過した平行光束a、平行光束b、cの主走査方向の平行度に違いが生じる。光束a、光束b、cの被走査面上のピント位置が異なってくるので、被走査面上での光束a、光束b、cのスポット径が互いに異なってくる課題が起こる。
同様に、製造上の配置誤差により入射光学系LAの光軸を基準として主走査方向に対称に配置された主走査方向の最軸外の発光部1b、1cから出射された光束b、光束cの被走査面上におけるスポット径が互いに異なる課題が起こる。
本実施例の入射光学系の光学パラメータは、表1のように構成されている。本実施例では、主走査断面内において、コリメータレンズ3の出射面を軸上から軸外にむかって正のパワーが弱くなる非円弧にすることにより、被走査面上における主走査方向の像面湾曲を補正している。また、コリメータレンズ3は、レンズ成形上、有利になるように、コリメータレンズ3の入射面に弱い凸のパワー(r=100mm)をつけている。コリメータレンズ3のレンズ形状の定義式を以下に示す。
また、結像光学系は、各々結像レンズと光軸との交点を原点とし、図1に示すように、結像光学系の光軸に対して走査開始側と走査終了側で、光軸をX軸、主走査断面内において光軸と直交する方向をY軸、副走査断面内で光軸と直交する方向をZ軸とし、以下の関数で表せる。
但し、Rは、曲率半径、K、B、B、B、B10は、非球面係数である。
副走査断面の形状は、光軸に対して走査開始側と走査終了側で光軸をX軸、主走査断面内において光軸と直交する方向をY軸、副走査断面内で光軸と直交する方向をZ軸とし、以下の連続関数で表せる。R1面、R2面、R3面、R4面の副走査方向の形状を定義する関数である。
(r’は、副走査方向の曲率半径、D、D、D、D、D10は係数) 係数のサフィックスsは走査開始側、eは走査終了側を表している。
副走査方向の曲率半径とは、主走査方向の母線に直交する断面内における曲率半径である。副走査方向の曲率半径とは、言い方を換えれば、レンズ面の母線状における法線を含む断面内における曲率半径である。
本実施例では、結像光学系を2枚の結像レンズで構成しているが、これに限らず、1枚もしくは3枚以上の結像光学素子で構成しても良い。
表2に本発明の実施例1における走査光学装置の各数値を示す。ここで「E−x」は「10−x」を示している。
R1面は、第1の結像レンズ6aの光偏向器10側の入射面、R2面は、第1の結像レンズの被走査面側の出射面である。R3面は、第2の結像レンズ6bの光偏向器10側の入射面、R4面は、第2の結像レンズの被走査面側の出射面である。以下の表2に本実施例の結像光学系で使用される光学パラメータを値を示す。
コリメータレンズ3の入射面は、球面であり、コリメータレンズ3の出射面は、光軸に対して回転対称な非球面であり、コリメータレンズ3は、主走査方向と副走査方向とで焦点距離が同一である。さらに、入射光学系LAの主走査断面内において非円弧な光学面のうち光源手段1に最も近い光学面上での主走査方向に最も離間した発光部から出射された光束の主走査方向の光束幅をD(mm)とする。光束幅Dは、コリメータレンズ3の出射面上での主走査方向に最も離間した発光部1bから出射された光束bの主走査方向の光束幅であり、第2の絞り5の開口幅によって制限される。
ここで、入射光学系の主走査断面(X−Y断面)を示す図9を用いて、主走査方向の軸外発光部1b(図5)から出射された光束bのコリメータレンズ3の通過位置Xの算出について説明する。ここで、軸外発光部1c(図5)からの出射された光束cの通過位置は、軸外発光部1bと同様に計算できるので省略している。図9における各光学素子は、図1および図5と同一の番号で示している。
5aは、入射瞳位置(主走査絞りのコリメータレンズ3による共役位置)、3a、3bは、コリメータレンズ3の後側主点位置及び前側主点位置を示している。また、f(mm)は、コリメータレンズ3の焦点距離、La(mm)は、後側主点位置3aから第2の絞り5までの光路長を示しており、Lb(mm)は、前側主点位置3bから入射瞳位置5aまでの光路長を示している。光源手段の軸外発光部1bから出射した光束bの主光線は、光軸からxだけ離れた位置を通過し、第2の絞り5でコリメータレンズ3の光軸と交わるので、近軸計算より、数式Aを得る。
また、三角形の相似を用いた幾何計算により数式Bを得る。
数式Aを数式Bに代入することによって数式Cを得る。
数式Cの導出過程においては、シリンドリカルレンズ4は、主走査方向にパワーを持たない光学素子のため、シリンドリカルレンズ4の屈折による影響は無視している。また、光源手段1からコリメータレンズ3の前側主点位置までの光路長は、波面収差の影響によりfからわずかにずれているが、そのずれは無視している。
よって、本発明では、La(mm)は、コリメータレンズ3の主走査断面内において非円弧な出射面から第2の絞り5までの光路長と近似して考えられる。つまり、光源手段1の複数の発光部のうち主走査方向に最も離間した発光部1b、1c同士の間隔をW(mm)、入射光学系LAの主走査断面内において非円弧な光学面のうち光源手段1に最も近い光学面から前記絞りまでの光路長をLa(mm)とする。
入射光学系LAの主走査方向の焦点距離をf(mm)、入射光学系LAの主走査断面内において非円弧な光学面のうち光源手段1に最も近い光学面上での主走査方向に最も離間した発光部1b、1cから出射された光束の主走査方向の光束幅をD(mm)とする。その場合、
2D≧|W・La/2f|≧D/8 ・・・・・(1)
なる条件を満足するように各要素を設定している。
条件式(1)の上限値より大きくなると、コリメータレンズ3の主走査方向の外形が大きくなり、入射光学系が大型化するので良くない。
また、条件式(1)の下限値より小さくなると、コリメータレンズ3の主走査断面内で非円弧のレンズ面上において、コリメータレンズ3の光軸から最も離間した軸外発光部1bから出射した光束bの主光線の光軸からの離間量xが小さくなる。その場合、コリメータレンズ3のレンズ面で発生する主走査断面内の平行度の崩れをコリメータレンズ3の出射面の主走査断面の形状を軸上から軸外にむかって連続的に正のパワーが小さくなる非円弧形状とすることで補正する際、非球面効果を有効に利用できない。
数1に示すように非球面係数A、B、C、・・・は、各々h項、h項、h項、・・・の係数であることから、コリメータレンズ3の光軸近傍の光束より光軸から離間した位置を通過する光束に非球面を適用した方が非球面効果を有効に利用できるためである。
hは、コリメータレンズ3の光軸からの光束の離間量を考える。また、非球面係数A、B、C、・・・は、被走査面上における複数の光束の光学性能に寄与する走査光学装置内の全ての光学パラメータとのバランスを考慮して決定される。よって、非球面係数A、B、C、・・・は、本発明の課題のみを解決するための設計値として扱えない。
通常のマルチビーム走査光学装置では、コリメータレンズ3の光軸上に配置された仮想発光部から出射された仮想光束がコリメータレンズ3にて完全な平行光束に変換されるように設計される。
よって、コリメータレンズ3のレンズ面で発生する主走査断面内の平行度の崩れは、コリメータレンズ3の光軸近傍の軸外発光部1aから出射した平行光束aの方がコリメータレンズ3の光軸から最も離間した軸外発光部1bから出射した平行光束bに比べて小さくなるように設計される。軸外発光部1aは、コリメータレンズ3の光軸近傍に配置されているので、光束aが主走査断面の形状が非円弧であるコリメータレンズ3の出射面を通過する離間量xが小さくなる。
しかし、軸外発光部1aから出射した光束aは、コリメータレンズ3のレンズ面で発生する主走査断面内の平行度の崩れは小さいので、非球面効果による補正量が小さくても良い。
条件式(1)の技術的意義を以下に説明する。条件式(1)の|W・La/2f|の値を大きくすることで、コリメータレンズ3の光軸から最も離間した軸外発光部1bから出射した光束bの主光線の光軸からの離間量xを大きくできる。よって、コリメータレンズ3の出射面の主走査断面の形状を軸上から軸外にむかって連続的に正のパワーが小さくなる非円弧形状による非球面効果が有効利用できる。|W・La/2f|の値を大きくするためには、|La|、Wの値を大きくするか、fの値を小さくすれば良い。
しかし、Wの値は、被走査面上における走査線のピッチに制約される。
よって、本実施例では、|La|>2×fを満たす事で、コリメータレンズ3の光軸から最も離間した軸外発光部1bから出射した光束bの主光線の光軸からの離間量xを大きくしている。離間量xを大きくするために、本実施例では、|La|>80mmが好ましい。
入射光学系の光路長が長くなり、入射光学系が大型化しないように、8×f>|La|、200mm>|La|が好ましい。よって、
8×f>|La|>2×f ・・・(2)
なる条件を満足するように各要素を設定している。
本実施例では、0.25mm<W<1mmの値をとることが好ましい。
Wの下限値より小さくなると、隣接する発光部から出射される光束のクロストークが問題となる。Wの上限値より大きくなると、被走査面上の走査線ピッチ(解像度)を実現するために走査光学装置の光学系の設計自由度が落ちる問題が起こる。また、本実施例では、被走査面上での主走査方向のスポット径の大きさを考慮した場合、2mm<D<8mmの値をとることが好ましい。また、光源手段1から光偏向器10の偏向面10aまでの光路長をL(mm)、第2の絞り5から光偏向器10の偏向面10aまでの光路長をM(mm)とする。ここで、偏向面までの光路長とは、偏向面が被走査面の走査範囲の中心を走査しているときで、光束の中心光束が偏向面に入射している点までの光路長である。
互いに主走査方向に間隔を有する複数の発光部から出射した複数の光束の被走査面上における主走査方向のジッター量を低減するために、
0<M/L<0.6 ・・・(3)
なる条件を満足するように各要素を設定している。Mの値が小さいと、第2の絞り5を光偏向器10に近づけられ、主走査方向のジッター量を低減できる。0<M<50、100<L<300であることが好ましい。
更に、望ましくは、条件式(1)、(2)、(3)を次の如く設定するのが良い。
D≧|W・La/2f|≧D/6 (1a)、|La|>2.5×f (2a)、0<M/L<0.5 ・・・(3a)
図3に、図1の入射光学系の模式図を示す。図5に示す8個の発光部(発光点)のうち、コリメータレンズ3の光軸から主走査方向に最も離れた位置にある発光部1bが、主走査方向に0.175mm離れた位置にある。図4にコリメータレンズ3で起こる主走査方向及び副走査方向の像面湾曲を示す。図4では、主走査方向と副走査方向とで同じ像面湾曲形状となっている。図4において、縦軸は、発光部の主走査方向位置を示し、横軸はコリメータレンズ3の像面湾曲量を示す。座標位置400(横軸=0)は、光軸近傍の軸外発光部1aのピント位置を示し、座標位置401(横軸=0.17)は、最軸外発光部1bの像面湾曲を示している。
図4から光軸近傍の軸外発光部1a(図4の400)と主走査方向の最軸外発光部1b(図4の401)では、横軸の座標が異なっている。つまり、光軸近傍の軸外発光部1aと最軸外発光部1bからの光束は、被走査面上で主走査方向のピント方向(X軸方向)にずれた位置に結像することを示している。光軸近傍の発光部1aは、設計上の被走査面上で主走査方向のピントズレがゼロであり、最軸外発光部1bの被走査面上の主走査方向のピント位置が、ΔM=|Δmcol|×(ffΘ/f)だけずれている。但し、
|Δmcol|:発光部1aと発光部1bの入射光学系LAの主走査方向の像面湾曲差 ffΘ:結像光学系6の主走査断面内での焦点距離 f:コリメータレンズ3の焦点距離
また、図4に示すように、本実施例の入射光学系LAは、発光部が光軸から0.5mm離れた位置にあっても像面湾曲が良好に補正されており、主走査方向に最も離間した発光部同士の間隔W=1.0mmの半導体レーザーを使用しても発光部間の被走査面上の主走査方向のピント差が抑えられるように構成されている。
図6にコリメータレンズ3の光源手段1近傍の拡大図を示す。
光軸近傍の軸外発光部1aと主走査方向の最軸外発光部1bからの光束は、ほぼ同一に発散角で図3に示すシリンドリカルレンズ4から射出されている。これは、コリメータレンズ3から出射される複数の光束は、主走査方向の像面湾曲がないことを示しており、コリメータレンズ3に主走査方向の像面湾曲がある場合は、この発散角に差が生じる。
一般的に像面湾曲を低減するためには(a)ペッツバール和(レンズのパワー)、(b)非球面形状、(c)発光部間隔を適切に設定する必要がある。
本実施例では、f=24.9mm、W=0.35mm、La=111.48mm、D=4.0mmに設定している。
|W・La/2f|=0.35×111.48/2×24.9=0.78
となる。これは、前記条件式(1)を満足している。よって、本実施例では、コリメータレンズ3を通過する光束を分離させることが可能となり、コリメータレンズ3に適切な非球面量を設定できる。よって、光軸近傍の軸外発光部1aと主走査方向の最軸外発光部1b間の被走査面上における主走査方向のピント差を抑制することができる。
また、本実施例では、La=111.48mm、f=24.9mm、M=22.5mm、L=169.8mmに設定している。
|La|=111.48mm、2f=49.8mm
M/L=22.5/169.8=0.133
となる。これは、条件式(2)、(3)を満足している。
尚、本実施例において、被走査面の主走査方向のピントズレ量が1mm発生した場合の主走査方向のジッター量(書き出し位置ずれ量ΔY)とするとき、主走査方向のジッター量は、
ΔY=M×W/(f×ffθ) ・・・(5)
で表せる。従って、ΔYは、以下の値となる。
ΔY=22.5×0.35/(24.9×200)=1.58μm
また、本実施例では、主走査方向の画像の書き込み解像度は1200Dpiであり、よって、書き出し位置ずれ量ΔY(1.58μm)は、1画素(21.2μm)の1/4以下となっているので、画像への影響はない。
本実施例において、第1の絞り2(副走査絞り)は、光源手段1とコリメータレンズ3との間に配置され、コリメータレンズ3の入射面r1(光源手段側の面)から4.0mmの位置に配置にある。これは、結像光学系6の副走査方向の射出瞳位置を被走査面から遠ざけ、被走査面が光軸方向にずれても副走査方向のピッチ間隔が変化しないようにするためである。尚、本実施例では、副走査方向の射出瞳位置が第2の結像レンズ6b上にあり、複数の発光部から出射された光束は、副走査断面において、第2の結像レンズ6b上でクロスしているので、各ビームの副走査方向の光学性能を一致しやすくしている。
本実施例における被走査面上での主走査方向のピント差ΔMは、
ΔM=0.00003×(200/24.9)=0.002mm
である。通常、主走査方向のピント差ΔMは、2mm以下であれば問題ないが、光学素子の製造誤差や取り付け誤差を考慮すると、望ましくは1mm以下、さらに望ましくは0.5mm以下に抑える必要がある。
(実施例2)
図7は、本発明の実施例2における入射光学系の主走査断面図である。
本実施例2において、実施例1と異なる点は、コリメータレンズ13を光軸に対して回転対称な球面レンズとし、シリンドリカルレンズ14の出射面の主走査断面の形状を非円弧で構成したことである。
つまり、図7において、13は、第1光学素子としてのコリメータレンズであり、研磨で製作可能な入射面及び出射面が回転対称な球面であるガラス製の球面レンズより成っている。第2光学素子14としてのプラスティック製のシリンドリカルレンズ4は、副走査断面内において、コリメータレンズ3を通過した光束を光偏向器10の偏向面10a上に主走査方向に長い線像として結像させている。シリンドリカルレンズ14の出射面の主走査断面の形状は、光軸から周辺部に向かい凸(正)のパワーが弱くなる非円弧形状である。シリンドリカルレンズ14の入射面は、平面である。本実施例では、シリンドリカルレンズ14の出射面の母線は、r成分はゼロ(平面)であり、4次以上の非球面(非円弧)係数で構成されている。表3に本実施例の入射光学系の諸数値を示す。
ここで、前述の実施例1に示した条件式(1)、(2)の距離Laは、本実施例2において、シリンドリカルレンズ14の主走査断面において非円弧な出射面から第2の絞り5までの光路長となる。
また、条件式(1)のコリメータレンズ3の光軸から主走査方向に最も離れた発光部から出射された光束の光束幅Dは、シリンドリカルレンズ14の出射面上での光束の主走査方向の光束幅となる。
本実施例では、f=24.9、W=0.35、La=128.5、D=4.0に設定している。従って、
|W・La/2f|=0.35×128.5/2×24.9=0.9
となる。これは、前記条件式(1)を満足している。
また、本実施例では、La=133.98、f=24.9、M=22.5、L=160.7に設定している。従って、
|La|=133.98、2f=49.8、M/L=0.14
となる。これは、条件式(2)、(3)を満足している。
図8は、本発明の実施例2の入射光学系LAの主走査方向の像面湾曲を示す図である。図8において、800は、軸上近傍の発光部1aの近軸像面位置を示しており、801は、最軸外発光部1bの近軸像面位置を示している。また、光源手段1は、実施例1と同様に1次元に配列した8ビームレーザで構成している。
図8より、Δmcolは0.3μmであり、本実施例の被走査面7上での主走査方向のピント差ΔMは、
ΔM=|Δmcol|×(ffΘ/fcol
|Δmcol|:光軸近傍の発光部1aと最軸外発光部1bの入射光学系LAの主走査方向の像面湾曲差 ffΘ:結像光学系6の主走査断面内での焦点距離 fcol:コリメータレンズ13の焦点距離
で表わされる。よって、本実施例では、
ΔM=0.0003×(200/24.9)=0.02mm
であり、被走査面7上での主走査方向のピント差ΔMが0.5mm以下に抑えられている。尚、本実施例では、シリンドリカルレンズ14のr成分をゼロとしているが、成形上有利なようにゼロ以外で構成してもよく、また、シリンドリカルレンズのレンズ面上に回折素子で構成してもよい。尚、本実施例では、シリンドリカルレンズ14の出射面を主走査断面内において非円弧としたが、入射面、もしくは両面を主走査断面内において非円弧としても良い。
(実施例3)
図10は、本発明の実施例3における入射光学系の主走査断面図である。表4に本実施例の入射光学系の諸数値を示す。
本実施例3において、実施例1と異なる点は、コリメータレンズ73をプラスティック製のモールドレンズより構成したことと、コリメータレンズ73とシリンドリカルレンズ4との間の距離を実施例1より近づけたことである。さらに、図12に示すように二次元状に発光部を64個有する面発光レーザー1を用いたことである。11は光源手段、二次元状アレイ状の発光部を有する面発光レーザー(VCSEL)である。本実施例では、f=24.9、W=0.35、La=111.48、D=4.0に設定している。従って、
|W・La/2f|=1.4×80/2×24.9=2.2
となる。これは、実施例1と同様に条件式(1)を満足している。また、La=80.0、f=24.9、M=22.5、L=106.26
に設定している。従って、
|La|=111.48、2f=49.8、M/L=0.14
となる。これは、実施例1と同様に条件式(2)、(3)を満足している。
よって、本実施例3では、実施例1よりも入射光学系の短光路化と、被走査面7上での主走査方向のピント差の抑制を両立させている。図11は、本発明の実施例3の入射光学手段LAの主走査方向の像面湾曲を示す図である。図11において、1100は、軸上近傍の発光部1aの近軸像面位置を示しており、1101は、最軸外発光部1bの近軸像面位置を示している。
Δmcol=0.9μm、ΔM=0.0009×(200/24.9)=0.06mm
であり、ΔMが0.5mm以下に抑えられている。
本実施例1〜3では、コリメータレンズ、シリンドリカルレンズの枚数は、1枚ずつであったが複数枚でも良い。そして、主走査断面の形状を軸上から軸外にむかって連続的に正のパワーが小さくなる非円弧形状のレンズ面は、コリメータレンズ及びシリンドリカルレンズの両方のレンズ面に複数面配置されていても良い。
[カラー画像形成装置]
図13は、本発明の実施例のカラー画像形成装置の要部概略図である。本実施例は、走査光学装置を4個並べ各々並行して像担持体である感光ドラム面上に画像情報を記録するタンデムタイプのカラー画像形成装置である。図13において、60はカラー画像形成装置、61、62、63、64は各々実施例1〜3のいずれかに示した構成を有する走査光学装置、21、22、23、24は各々像担持体としての感光体、31、32、33、34は各々現像器、51は搬送ベルトである。尚、図13においては現像器で現像されたトナー像を被転写材に転写する転写器(不図示)と、転写されたトナー像を被転写材に定着させる定着器(不図示)とを有している。
1 光源手段
2 第1の絞り
3 コリメータレンズ
4 シリンドリカルレンズ
5 第2の絞り
6 結像光学系
7 被走査面
10 光偏向器

Claims (9)

  1. 互いに主走査方向に離間した複数の発光部を有する光源手段と、前記複数の発光部から出射した複数の光束を主走査方向に偏向する偏向手段と、前記複数の発光部から出射した複数の光束を前記偏向手段の偏向面に導光する入射光学系と、前記偏向手段により偏向された複数の光束を被走査面に集光する結像光学系と、を備える走査光学装置であって、
    前記入射光学系は、走査断面内において軸上から軸外に向って正のパワーが弱くなる非円弧形状の光学面を少なくとも1つ含む光学素子と、該光学素子を通過した光束主走査方向の光束幅を規定する絞りとを有し、
    記複数の発光部のうち主走査方向に最も離間した2つの発光部同士の間隔をW(mm)、少なくとも1つの光学面のうち前記光源手段に最も近い光学面から前記絞りまでの光路長をLa(mm)、前記入射光学系の主走査断面内での焦点距離をf(mm)、記光源手段に最も近い前記光学面上における、前記2つの発光部の夫々から出射した光束の主走査方向の光束幅をD(mm)とするとき、
    2D≧|W・La/2f|≧D/8
    なる条件を満足することを特徴とする走査光学装置。
  2. 8×f>|La|>2×f
    なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の走査光学装置。
  3. 前記光学素子は、前記光源手段から出射した光束の集光状態を変換する第1光学素子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の走査光学装置。
  4. 前記入射光学系は、記第1光学素子と前記絞りとの間に配置され、前記第1光学素子を通過した束により前記向面に主走査方向に長手の線像を形成する第2光学素子有することを特徴とする請求項に記載の走査光学装置。
  5. 前記光学素子は、前記光源手段から出射した光束により前記偏向面に主走査方向に長手の線像を形成する第2光学素子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の走査光学装置。
  6. 前記入射光学系は、前記光源手段と前記第2光学素子との間に配置され、前記光源手段から出射した光束の集光状態を変換する第1光学素子を有することを特徴とする請求項5に記載の走査光学装置。
  7. 前記光源手段から前向面までの光路長をL(mm)、前記絞りから前記向面までの光路長をM(mm)とするとき、
    0<M/L<0.6
    なる条件を満足することを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の走査光学装置。
  8. 前記光源手段は、互いに主走査方向に離間した4つ以上の発光部をすることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の走査光学装置。
  9. 請求項1乃至の何れか一項に記載の走査光学装置と、前記被走査面に配置された感光体においてトナー像を現像する現像器と、現像された前記トナー像を被転写材に転写する転写器と、転写された前記トナー像を前記被転写材に定着させる定着器と、を有することを特徴とする画像形成装置。
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