以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
本発明の感光性エレメントは、支持フィルムと、該支持フィルム上に形成された感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメントであって、前記支持フィルムのヘーズが、0.01〜2.0%であり、該支持フィルム中に含まれる直径5μm以上の粒子及び直径5μm以上の凝集物の総数が5個/mm2以下であり、前記感光性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物及び(C)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であり、前記(C)光重合開始剤が、(C1)アクリジニル基を2つ有するアクリジン化合物を含み、(C2)アクリジニル基を1つ有するアクリジン化合物をさらに含むものである。
図1は、本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した感光性エレメント1は、支持フィルム10と、感光性樹脂組成物層20とで構成される。感光性樹脂組成物層20は支持フィルム10の第1の主面12上に設けられている。また、支持フィルム10は、第1の主面12とは反対側に第2の主面14を有している。
(支持フィルム)
支持フィルム10は、感光性樹脂組成物層20を支持することができれば特に制限されないが、耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムが好適に用いられる。重合体フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と表記する)等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンからなる群より選ばれる1種以上の樹脂材料を含むフィルムが挙げられる。
また、本発明に用いる支持フィルム10は、密着性及び解像度を向上させ、レジストの側面ギザを抑制し、レジストの微小欠損部の発生数を低減する観点から、ヘーズが0.01〜2.0%であり、かつ支持フィルム10中に含まれる直径5μm以上の粒子及び直径5μm以上の凝集物(以下、単に「粒子等」という)の総数が5個/mm2以下のものである。ここで、レジストパターンの側面ギザとは、レジストパターンの形状がストレートではなく、ギザつき(凹凸)があって好ましくない状態をいう。
ここで、支持フィルム10のヘーズは、0.01〜2.0%であり、好ましくは0.01〜1.5%であり、より好ましくは0.01〜1.0%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5%である。このヘーズが0.01%未満では支持フィルム自体の製造が容易でなくなる傾向があり、2.0%を超えると感度及び解像度が低下する傾向がある。ここで、「ヘーズ」とは曇り度を意味する。本発明におけるヘーズは、JIS K 7105に規定される方法に準拠して、市販の曇り度計(濁度計)を用いて測定された値をいう。ヘーズは、例えば、NDH−1001DP(日本電色工業株式会社製、商品名)等の市販の濁度計などで測定が可能である。
また、支持フィルム10中に含まれる直径5μm以上の粒子等は、支持フィルムの主面から突出しているもの及び、フィルム内部に存在するものの両方が含まれる。また、直径5μm以上の粒子等には、直径5μm以上の一次粒子及び直径5μm未満の一次粒子の凝集物が含まれる。
上記直径5μm以上の粒子等は、5個/mm2以下であり、3個/mm2以下であることが好ましく、1個/mm2以下であることがより好ましい。この粒子等の数が1mm2当たり5個を超えると、露光及び現像後のレジストの部分的な欠損(レジストの微小欠損)が生じ易くなる。そして、このような感光性エレメントをプリント配線板に使用すると、エッチング時のオープン不良の発生や、めっき時にショート不良の発生の一因となり、プリント配線板の製造歩留まりが低下する傾向がある。
なお、直径5μm未満の粒子は、支持フィルムの主面から数多く突出していても光散乱に対する影響は大きくない。その要因は、露光工程において、感光性樹脂組成物層に光を照射した場合、感光性樹脂組成物層の光硬化反応は光照射部のみでなく、若干であるが光が直接照射されていない横方向(光照射方向に対し垂直方向)へも進行する。このため粒子径が小さい場合は、粒子直下部の光硬化反応が十分に進行するが、粒子径が大きくなるに伴い、粒子直下部の光硬化反応が十分に進行しないため、レジスト微小欠損が発生すると考えられる。
支持フィルム10に含まれる直径5μm以上の粒子等は、支持フィルムを構成する成分、例えば、ゲル状のポリマー、原料であるモノマー、製造時に使用される触媒、必要に応じて含まれる無機又は有機微粒子がフィルム作製時に凝集し形成される凝集物、滑剤含有層をフィルム上に塗布した際に発生する滑剤と接着剤による膨らみ、フィルム中に含有される直径5μm以上の粒子等に起因して生じたものが挙げられる。直径5μm以上の粒子等を5個/mm2以下にするには、これらの粒子等のうち、粒径の小さなもの又は分散性に優れたものを含むような支持フィルムを選択的に用いればよい。
上記直径5μm以上の粒子等の数は、偏光顕微鏡を用いて測定することができる。なお、直径5μm以上の一次粒子と直径5μm未満の一次粒子とが凝集して形成される凝集物は、1個として数える。図2は、直径5μm以上の粒子等を有する支持フィルムの表面を観察した偏光顕微鏡写真である。図2中、丸で囲まれている部分は、直径5μm以上の粒子等に相当する部分の一例を示している。そして、図3は、直径5μm以上の粒子等を多数有する支持フィルム上に感光性樹脂組成物層を備える感光性エレメントを用いて形成したレジストパターンの走査型電子顕微鏡写真である。このように、支持フィルムの表面に直径5μm以上の粒子等が存在するとレジストの微小欠損が生じる。
また、支持フィルム10は単層構造であってもよく、複数の組成からなるフィルムを積層した多層構造を有していても良い。例えば、2層からなる2層支持フィルムを用いる場合、二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に、微粒子を含有する樹脂層を積層してなる2層フィルムを支持フィルムとして使用し、上記微粒子を含有する樹脂層を形成した面とは反対側の面に感光性樹脂組成物層を形成することが好ましい。また、支持フィルムとして3層からなる多層支持フィルム(例えば、A層/B層/A層)を用いることもできる。多層支持フィルムの構成は特に制限されないが、最外層(上記3層からなるものの場合はA層)はいずれも微粒子(2μm未満)を含有する樹脂層であることが、フィルムの滑り性等の見地から好ましい。
本発明においては、微粒子を有する樹脂層を、二軸配向ポリエステルフィルムの両面に押出し成形して作製した3層からなる多層支持フィルムを用いることがより好ましい。なお、従来の2層支持フィルムは、微粒子を有する樹脂層を二軸配向ポリエステルフィルムに塗布して製造しているため、感光性フィルムのラミネート時に微粒子を含有する樹脂層が剥がれやすく、剥がれた樹脂層が感光層に付着して不良の原因になる可能性がある。
本発明においては、支持フィルム中に含まれる直径5μm以上の粒子等を5個/mm2以下に調整し、ヘーズを0.01〜2.0%とすると同時に、上述したように、微粒子を含有する樹脂層を備えた多層支持フィルムであることが特に好適である。これにより、支持フィルム表面の滑り性が良くなると共に、露光時の光散乱の抑制をバランスよく、より高いレベルで成し遂げることができる。微粒子の平均粒子径は、5μm以下であり、1μm以下が好ましく、特に、0.1μm以下が好ましく、下限は、特に制限はないが、0.001μm以上が好ましい。
上記微粒子は、微粒子を含有する樹脂層中に0.01〜50質量%含有されていることが好ましい。そして、上記微粒子としては、例えば、各種核剤により重合時に生成した微粒子、凝集体、二酸化珪素微粒子(凝集シリカ等)、炭酸カルシウム微粒子、アルミナ微粒子、酸価チタン微粒子、硫酸バリウム微粒子等の無機微粒子、架橋ポリスチレン微粒子、アクリル微粒子、イミド微粒子等の有機微粒子、これらの混合体を用いることができる。
3層以上の多層支持フィルムにおいて、微粒子を含有する最外層で挟まれた1以上の中間層は、上記微粒子を含有するものであっても含有しないものであってもよいが、解像度の見地からは、上記微粒子を含有していないことが好ましい。中間層が上記微粒子を含有する場合は、中間層における含有量は最外層の含有量の1/3以下であることが好ましく、1/5以下であることがより好ましい。
また、解像度の見地からは、上記微粒子を含有する樹脂層の層厚は、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜3μmであることがより好ましく、0.1〜2μmであることがさらに好ましい。そして、最外層の中間層に対向しない面は、1.2以下の静摩擦係数を有することが好ましい。静摩擦係数が1.2を超えるとフィルム製造時及び感光性エレメント製造時にしわが入りやすく、また、静電気を生じやすくなるためごみが付着しやすくなる傾向がある。本発明において、静摩擦係数は、ASTM D1894に準じて測定することができる。
なお、支持フィルム10中に含まれる直径5μm以上の粒子等が5個/mm2以下とするためには、樹脂層が含有する微粒子のうちの大多数の微粒子の粒径が、5μm未満であることが好ましい。そして、露光時の光散乱をより一層低減するために、微粒子の粒径に合わせて微粒子を含有する樹脂層の層厚を適宜調整することが好ましい。
なお、支持フィルム10は、その感光特性を損なわない範囲で、必要に応じて、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
また、支持フィルム10の厚さは5〜40μmであることが好ましく、8〜35μmであることがより好ましく、10〜30μmであることがさらに好ましく、12〜25μmであることが特に好ましい。厚さが5μm未満であると、感光性エレメント1から支持フィルム10を剥離する際に、支持フィルム10が破れやすくなる傾向がある。また、厚さが40μmを超えると、解像度が低下する傾向があると共に、廉価性に劣る傾向がある。
また、支持フィルム10は、市販の一般工業用フィルムの中から、感光性エレメント11の支持フィルムとして使用可能なものを入手し、適宜加工して用いてもよい。支持フィルム10として使用可能な市販の一般工業用フィルムとしては、例えば、最外層が微粒子を含有する3層構造の二軸配向PETフィルムである、「QS−48」(東レ株式会社製、商品名)、「HTR−02」(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名)、微粒子を含有する層を一方の面に有する2層構造の二軸配向PETフィルム「A−1517」(東洋紡績株式会社製、商品名)等が挙げられる。
(感光性樹脂組成物層)
感光性樹脂組成物層20は、感光性樹脂組成物からなる層である。感光性樹脂組成物層20を構成する感光性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマー(以下、場合により「(A)成分」という)と、(B)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物(以下、場合により「(B)成分」という)と、(C)光重合開始剤(以下、場合により「(C)成分」という)と、を含有し、且つ、前記(C)光重合開始剤が、(C1)アクリジニル基を2つ有するアクリジン化合物を含み、(C2)アクリジニル基を1つ有するアクリジン化合物をさらに含む感光性エレメントを提供する。
(A)成分であるバインダーポリマーとしては、従来の感光性樹脂組成物に用いられているものであれば特に限定はされず、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
これらの中で、アルカリ現像性の見地からは、アクリル樹脂が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
バインダーポリマーは、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。重合性単量体としては、スチレン及び、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、並びに、α−メチルスチレン及び、α−メチルスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエーテル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸及びプロピオール酸等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
バインダーポリマーは、アルカリ現像性の見地から、分子内にカルボキシル基を含有するものが好ましい。カルボキシル基を有するバインダーポリマーは、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体とをラジカル重合させることにより製造することができる。
バインダーポリマーは、現像液耐性と剥離性とのバランスの見地から、下記一般式(I)、(II)及び(III)で表される構造単位を含むことが好ましい。なお、現像液耐性の向上に起因して、密着性及び解像度が向上する傾向にある。
[一般式(I)、(II)、(III)中、R
7、R
8及びR
10はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R
9は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、R
11は炭素数1〜6のアルキル基を示し、pは0〜5の整数を示し、pが2以上のとき、複数存在するR
9は互いに同一でも異なっていてもよい。]
上記一般式(I)で表される構造単位は、(メタ)アクリル酸に基づく構造単位であり、メタクリル酸に基づく構造単位(R7=メチル基)であることが好ましい。
上記一般式(I)で表される構造単位の含有割合は、共重合体である(A)バインダーポリマーの固形分全量を基準として、10〜50質量%であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましく、20〜35質量%であることがさらに好ましい。この割合が10質量%未満では現像液及び剥離液に一般的に使用されているアルカリ水溶液に対する耐性が向上し、現像及び剥離が困難となる傾向があり、この割合が50質量%を超えると、現像液耐性が悪くなり、密着性及び解像度が低下する傾向がある。
上記一般式(II)で表される構造単位は、スチレン(R8=水素原子)、スチレン誘導体、α−メチルスチレン(R8=メチル基)及び、α−メチルスチレン誘導体に基づく構造単位である。本発明において、「スチレン誘導体」及び「α−メチルスチレン誘導体」とは、スチレン及びα−メチルスチレンのベンゼン環における水素原子が置換基R9(炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、OH基、ハロゲン原子)で置換されたものをいう。上記スチレン誘導体としては、例えば、メチルスチレン、エチルスチレン、tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ヒドロキシスチレン及びクロロスチレン等が挙げられ、p−位にR9が置換した構造単位であることが、より好ましい。α−メチルスチレン誘導体としては、上記スチレン誘導体において、ビニル基のα−位の水素原子がメチル基で置換されたものが挙げられる。
上記一般式(II)で表される構造単位の含有割合は、共重合体である(A)バインダーポリマーの固形分全量を基準として、3〜60質量%であることが好ましく、10〜55質量%であることがより好ましく、15〜50質量%であることがより好ましく、20〜45質量%であることが特に好ましい。この含有量が3質量%未満では密着性及び解像度が低下する傾向があり、60質量%を超えると剥離片が大きくなり、剥離時間が長くなる傾向があり、更に硬化後のレジストの柔軟性が低下する傾向がある。
上記一般式(III)で表される構造単位は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位である。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、一般式(III)中、R11が、炭素数1〜12のアルキル基であるものが挙げられる。炭素数1〜12のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、水酸基、エポキシ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸tertブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、並びに、これらの構造異性体が挙げられる。解像度の向上及び剥離時間の短縮の観点から、中でも、R11は、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、置換基を有さない炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
上記一般式(III)で表される構造単位の含有割合は、共重合体である(A)バインダーポリマーの固形分全量を基準として、1〜40質量%であることが好ましく、2〜35質量%であることがより好ましく、4〜30質量%であることがさらに好ましく、5〜25質量%であることが特に好ましい。この含有量が1質量%未満ではレジストの剥離性が低下する傾向があり、40質量%を超えると解像度が低下する傾向がある。
また、バインダーポリマーは、密着性及び解像度と、剥離性とのバランスの見地から、さらに下記一般式(IV)で表される構造単位を含むことがより好ましい。
[一般式(IV)中、R
12は、水素原子又はメチル基を示し、R
13は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示す。qは0〜5の整数を示し、qが2以上のとき、複数存在するR
13は互いに同一でも異なっていてもよい。]
上記一般式(IV)で表される構造単位は、ベンジル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレート誘導体に基づく構造単位である。上記一般式(IV)で表される構造単位は、ベンジル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレート誘導体に基づく構造単位である。前記ベンジル(メタ)アクリレート誘導体としては、4−メチルベンジル(メタ)アクリレート、4−エチルベンジル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルベンジル(メタ)アクリレート、4−メトキシベンジル(メタ)アクリレート、4−エトキシベンジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシルベンジル(メタ)アクリレート、4−クロロベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記一般式(IV)で表される構造単位は、現像性、エッチング耐性、めっき耐性及び硬化膜の可とう性を保持する観点から、中でもベンジル(メタ)アクリレート(q=0のとき)に基づく構造単位であることが好ましい。
上記一般式(IV)で表される構造単位の含有割合は、共重合体である(A)バインダーポリマーの固形分全量を基準として、5〜60質量%含むことが好ましく、10〜55質量%であることがより好ましく、15〜50質量%であることがさらに好ましく、20〜45質量%であることが特に好ましい。この含有量が、5質量%未満では密着性が低下する傾向があり、60質量%を超えると剥離時間が長くなり、更に紫外線硬化後のレジストの柔軟性が低下する傾向がある。
(A)バインダーポリマーの重量平均分子量は、30,000〜150,000であることが好ましく、35,000〜100,000であることがより好ましく、40,000〜80,000であることがさらに好ましい。この重量平均分子量が30,000未満では、感光性樹脂組成物層が脆くなる傾向があり、150,000を超えると糸状現像残りが発生し、解像度が低下する傾向がある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と表記する)により測定し、標準ポリスチレン換算した値を使用したものである。
(A)バインダーポリマーの酸価は、30〜300mgKOH/gであることが好ましく、100〜250mgKOH/gであることがより好ましく、130〜200mgKOH/gであることがさらに好ましい。この酸価が30mgKOH/g未満では現像時間が長くなる傾向があり、300mgKOH/gを超えると光硬化したレジストのアルカリ現像液に対する耐性が低下する傾向がある。
これらのバインダーポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。2種以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーの組み合わせとしては、例えば、異なる共重合成分からなる(異なる繰り返し単位を構成成分として含む)2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度を有する2種類以上のバインダーポリマー等が挙げられる。また、特開平11−327137号公報に記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを使用することもできる。
なお、現像工程として有機溶剤での現像を行う場合は、カルボキシル基を有する重合性単量体を少量に調製することが好ましい。また、必要に応じてバインダーポリマーは感光性基を有していてもよい。
前記(B)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、上記一般式(3)で表される化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14であり、プロピレン基の数が2〜14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
(B)光重合性化合物は、感光性樹脂組成物の硬化物(硬化膜)の可とう性を向上させる観点から、前記(B)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物が、分子内にオキシエチレン鎖及びオキシプロピレン鎖の双方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。これらは、(B)成分全体の総量に対して5〜50質量%含むことがより好ましく、10〜40質量%含むことがさらに好ましい。
上記ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、分子内の(ポリ)オキシアルキレン鎖として、(ポリ)オキシエチレン鎖及び(ポリ)オキシプロピレン鎖((ポリ)オキシ−n−プロピレン)鎖又は(ポリ)オキシイソプロピレン鎖)の双方を有するものが好ましい。また、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、さらに、(ポリ)オキシ−n−ブチレン鎖、(ポリ)オキシイソブチレン鎖、(ポリ)オキシ−n−ペンチレン鎖、(ポリ)オキシヘキシレン鎖や、これらの構造異性体等である炭素原子数4〜6程度の(ポリ)オキシアルキレン鎖を有していてもよい。
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの分子内において、(ポリ)オキシエチレン鎖及び(ポリ)オキシプロピレン鎖は、それぞれ連続してブロック的に存在しても、ランダムに存在してもよい。また、(ポリ)オキシイソプロピレン鎖において、プロピレン基の2級炭素が酸素原子に結合していてもよく、1級炭素が酸素原子に結合していてもよい。
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、特に下記一般式(4)、(5)又は(6)で表される化合物が好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
上記式(4)、(5)及び(6)中、Rは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示す。m1、m2、m3及びm4はオキシエチレン基からなる構成単位の繰り返し数を示し、n1、n2、n3及びn4はオキシプロピレン基からなる構成単位の繰り返し数を示し、オキシエチレン基の繰り返し総数m1+m2、m3及びm4(平均値)はそれぞれ独立に1〜30の整数を示し、オキシプロピレン基の繰り返し総数n1、n2+n3及びn4(平均値)は、それぞれ独立に1〜30の整数を示す。
上記一般式(4)、(5)又は(6)で表される化合物において、オキシエチレン基の繰り返し総数m1+m2、m3及びm4は1〜30の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは4〜9の整数であり、特に好ましくは5〜8の整数である。この繰り返し数の総数が30を超えると、十分な解像度、密着性及びレジスト形状が得られにくくなる傾向がある。
また、オキシプロピレン基の繰り返し総数n1、n2+n3及びn4は、1〜30の整数であり、好ましくは5〜20の整数であり、より好ましくは8〜16の整数であり、特に好ましくは10〜14の整数である。この繰り返し数の総数が30を超えると、十分な解像度が得られにくくなり、スラッジが発生しやすくなる傾向がある。
上記一般式(4)で表される化合物としては、R=メチル基、m1+m2=6(平均値)、n1=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成工業株式会社製、商品名FA−023M)等が挙げられる。上記一般式(5)で表される化合物としては、R=メチル基、m3=6(平均値)、n2+n3=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成工業株式会社製、商品名FA−024M)等が挙げられる。上記一般式(6)で表される化合物としては、R=水素原子、m4=1(平均値)、n4=9(平均値)であるビニル化合物(新中村化学工業株式会社製、試料名NKエステルHEMA−9P)等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
上記ウレタンモノマーとしては、例えば、β位に水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、EOはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有する。また、POはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有する。EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業株式会社製、製品名UA−11等が挙げられる。また、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業株式会社製、製品名UA−13等が挙げられる。また、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレートとしては、例えば、新中村化学工業株式会社製、製品名UA−21等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
また、(B)成分のエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物は、光感度及び解像度を良好にする見地から、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。解像度をさらに向上させる観点から、中でも2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンがより好ましい。
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられ、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業株式会社製、製品名)又はFA−321M(日立化成工業株式会社製、製品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
本発明における(B)成分がビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含有する場合、その含有量は、光感度及び解像性のバランスの見地から、(B)成分全体の質量に対して10〜90質量%であることが好ましく、20〜85質量%であることがより好ましく、30〜80質量%であることがさらに好ましい。
また、(B)成分は、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する光重合性化合物をさらに含むことが好ましい。(B)光重合性化合物が分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する光重合性化合物を含む場合、その含有量は、解像度、密着性、レジスト形状及び硬化後の剥離特性をバランスよく向上させる観点から、その含有量は、(B)成分全体の総量に対して1〜50質量%含むことが好ましく、5〜45質量%含むことがより好ましく、10〜40質量%含むことがさらに好ましい。
分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する光重合性化合物としては、前述のノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、上記一般式(3)で表される化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、なかでも、光感度及び解像性を良好にする見地から、上記一般式(3)で表される化合物を含むことが好ましい。
上記一般式(3)で表される化合物としては、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、及びβ−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート等が挙げられ、なかでも、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレートが好ましい。γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレートはFA−MECH(日立化成工業株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
本発明における(B)成分が上記一般式(3)で表される化合物を含有する場合、その含有量は、光感度、剥離特性及び塗膜性のバランスの見地から、(B)成分全体の質量に対して1〜50質量%であることが好ましく、5〜45質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることがさらに好ましい。
前記(B)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物の含有量は、(A)成分及び(B)成分の固形分総量100質量部に対して、20〜60質量部とすることが好ましく、30〜55質量部とすることがより好ましく、35〜50質量部とすることが特に好ましい。(B)成分の含有量がこの範囲であると、感光性樹脂組成物の光感度及び塗膜性がより良好となる。
(C)光重合開始剤は、(C1)アクリジニル基を2つ有するアクリジン化合物を含む。(C1)成分としては、上記一般式(1)で表されるアクリジン化合物が好ましい。
上記一般式(1)中、R1は、炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のオキサジアルキレン基又は炭素数2〜20のチオジアルキレン基を示す。本発明の効果をより確実に得る観点から、R1は炭素数2〜20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数4〜14のアルキレン基であることがより好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、1,2−ビス(9−アクリジニル)エタン、1,3−ビス(9−アクリジニル)プロパン、1,4−ビス(9−アクリジニル)ブタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、1,6−ビス(9−アクリジニル)ヘキサン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,8−ビス(9−アクリジニル)オクタン、1,9−ビス(9−アクリジニル)ノナン、1,10−ビス(9−アクリジニル)デカン、1,11−ビス(9−アクリジニル)ウンデカン、1,12−ビス(9−アクリジニル)ドデカン、1,14−ビス(9−アクリジニル)テトラデカン、1,16−ビス(9−アクリジニル)ヘキサデカン、1,18−ビス(9−アクリジニル)オクタデカン、1,20−ビス(9−アクリジニル)エイコサン等のビス(9−アクリジニル)アルカン、1,3−ビス(9−アクリジニル)−2−オキサプロパン、1,3−ビス(9−アクリジニル)−2−チアプロパン、1,5−ビス(9−アクリジニル)−3−チアペンタン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
前記一般式(1)で表されるアクリジン化合物において、光感度及び解像度をより良好にする見地から、上記一般式(1)中でR1がヘプチレン基である化合物(例えば、旭電化工業株式会社製、製品名「N−1717」)を含むことが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物中、(C1)成分の含有量は、感度、解像度及び密着性の見地から、(A)成分及び(B)成分の固形分総量100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.03〜3質量部であることがより好ましく、0.05〜1質量部であることがさらに好ましい。
また、(C)光重合開始剤は、(C2)アクリジニル基を1つ有するアクリジン化合物をさらに含むことが好ましい。
前記(C2)分子内にアクリジニル基を1つ有するアクリジン化合物としては、例えば、9−フェニルアクリジン、9−(p−メチルフェニル)アクリジン、9−(m−メチルフェニル)アクリジン、9−(p−クロロフェニル)アクリジン、9−(m−クロロフェニル)アクリジン、9−アミノアクリジン、9−ジメチルアミノアクリジン、9−ジエチルアミノアクリジン、9−ペンチルアミノアクリジン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
(C)光重合開始剤が(C2)成分を含有する場合、その含有量は、感度、解像度及び密着性の見地から、(A)成分及び(B)成分の固形分総量100質量部に対して、0.01〜3質量部であることが好ましく、0.03〜1質量部であることがより好ましく、0.05〜0.5質量部であることがさらに好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、(C1)及び(C2)成分以外の光重合開始剤を含んでいてもよい。(C1)及び(C2)成分以外の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル1,4−ナフトキノン、及び2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、及びベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、及びエチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、及び2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、及び9,10−ジペントキシアントラセン等の置換アントラセン類、クマリン化合物、オキサゾール化合物、ピラゾリン化合物、トリアリールアミン化合物などが挙げられる。前記2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体の2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は同一で対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
感光性樹脂組成物が前述の光重合開始剤を含む場合、その含有量は、感度及び内部の光硬化性の観点から、(A)成分及び(B)成分の固形分総量100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜7質量部であることがより好ましく、0.2〜5質量部であることが特に好ましい。
前記(C)光重合開始剤の含有量は、感度、密着性及び内部の光硬化性の観点から、(A)成分及び(B)成分の固形分総量100重量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.05〜10質量部であることがより好ましく、0.1〜5質量部であることが特に好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、解像度の向上を目的として、さらに重合禁止剤を含んでいてもよい。
重合禁止剤としては、ラジカル重合に対して重合禁止効果があればよく、特に制限はないが、例えば、t−ブチルカテコール等のカテコール類、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、及びp−メトキシフェノール等のヒドロキノン類、メトキノン等のアルコキシキノン類、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、及びt−ブチル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン類が挙げられる。これらの中で、光感度及び解像度の見地から、カテコール類が好ましく、t−ブチルカテコールがより好ましい。
本発明で用いる感光性樹脂組成物が重合禁止剤を含む場合、その含有量は、解像度をより良好にする見地から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.001〜0.05質量部であることが好ましく、0.002〜0.01質量部であることがより好ましい。
また、本発明で用いる感光性樹脂組成物には必要に応じて、マラカイトグリーン、ビクトリアピュアブルー、ブリリアントグリーン、及びメチルバイオレット等の染料、ロイコクリスタルバイオレット、ジフェニルアミン、ベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン及びo−クロロアニリン等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを(A)成分及び(B)成分の固形分総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度含有することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
本発明で用いる感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して固形分30〜60質量%程度の溶液として塗布することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
図1に示したように本発明の感光性エレメント11における感光性樹脂組成物層20は、上述の感光性樹脂組成物を支持フィルム10上に塗布し、溶剤を除去することにより形成することができる。ここで、塗布方法としては、例えば、ロールコート、コンマコート、グラビアコート、エアーナイフコート、ダイコート、バーコート等の公知の方法を採用することができる。また、溶剤の除去は、例えば、70〜150℃の温度で5〜30分間程度処理することで行うことができる。なお、感光性樹脂組成物層20中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、2質量%以下とすることが好ましい。
このようにして形成される感光性樹脂組成物層20の厚さは、乾燥後の厚さで3〜50μmであることが好ましく、5〜45μmであることがより好ましく、7〜40μmであることがさらに好ましく、10〜30μmであることが特に好ましい。この厚さが3μm未満であると、回路形成用基板に感光層を積層する際に不具合が発生しやすくなる、又はテンティング性が劣り、現像及びエッチング工程中でレジストが破損し、オープン不良の一因になる可能性があり、プリント配線板の製造歩留りが低下する傾向がある。一方、厚さが50μmを超えると、感光性樹脂組成物層20の解像度が悪化する、又はエッチング液の液まわりが悪化するため、サイドエッチングの影響が大きくなり、高密度なプリント配線板の製造が困難になる傾向がある。
また、感光性エレメント11は、感光性樹脂組成物層20の支持フィルム10に接する第1の主面12とは反対側の主面上に保護フィルム(図示せず)を備えていてもよい。保護フィルムとしては、感光性樹脂組成物層20と支持フィルム10との間の接着力よりも、感光性樹脂組成物層20と保護フィルムとの間の接着力が小さくなるようなフィルムを用いることが好ましく、また、低フィッシュアイのフィルムを用いることが好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の不活性なポリオレフィンフィルムが挙げられる。感光性樹脂組成物層20からの剥離性の見地から、ポリエチレンフィルムが好ましい。保護フィルムの厚みは、用途により異なるが1〜100μm程度であることが好ましい。
感光性エレメント11は、支持フィルム10、感光性樹脂組成物層20及び保護フィルムの他に、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層又は保護層を更に備えていてもよい。
本実施形態の感光性エレメント11は、例えば、そのままの状態で又は感光性樹脂組成物層20上に保護フィルムを更に積層したものを、円筒状の巻芯に巻き取った状態で貯蔵されてもよい。
この際、支持フィルム10が最外層になるようにロール状に巻き取られることが好ましい。また、ロール状に巻き取った感光性エレメント11の端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法として、透湿性の低いブラックシートに包んで包装することが好ましい。
巻芯の材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックが挙げられる。
(レジストパターンの形成方法)
本実施形態のレジストパターンの形成方法は、上記感光性エレメント11を、感光性樹脂組成物層20、支持フィルム10の順に回路形成用基板上に積層する積層工程と、活性光線を、上記支持フィルム10を通して感光性樹脂組成物層20の所定部分に照射して、感光性樹脂組成物層20に光硬化部を形成させる露光工程と、上記光硬化部以外の感光性樹脂組成物層20の部分を除去する現像工程と、を含む方法である。
積層工程において、感光性樹脂組成物層20を回路形成用基板上に積層する方法としては、感光性樹脂組成物層20上に保護フィルムが存在している場合には、該保護フィルムを除去した後、感光性樹脂組成物層20を70〜130℃程度に加熱しながら回路形成用基板に0.1〜1MPa程度の圧力で圧着することにより積層する方法等が挙げられる。この積層工程において、減圧下で積層することも可能である。なお、回路形成用基板の積層される表面は通常金属面であるが、特に制限されない。また、積層性を更に向上させるために、回路形成用基板の予熱処理を行ってもよい。
次に、上記積層工程で積層が完了した感光性樹脂組成物層20に対して、ネガ又はポジマスクパターンを有するフォトマスクを支持フィルム10の第2の主面14に位置合わせをして密着させる。その後、露光工程では、感光性樹脂組成物層20に対して、支持フィルム10を通して活性光線が画像状に照射し、感光性樹脂組成物層20に光硬化部が形成される。上記活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線や可視光等を有効に放射するものが用いられる。なお、レーザ直接描画露光法を用いて、感光性樹脂組成物層20に光硬化部を形成することもできる。
一方、レーザ直接描画露光法では、上記のようにして積層が完了した感光性樹脂組成物層を、LDI(Laser Direct Imaging)露光法、DLP(Digital Light Processing)露光法等のレーザ直接描画露光法により活性光線を画像状に照射する。活性光線の光源としては、波長350〜410nmのYAGレーザ、半導体レーザ及び窒化ガリウム系青紫色レーザ等の公知の光源を用いることができる。
本発明の効果をより確実に得るため、露光工程で感光性樹脂組成物層に照射される活性光線の波長は、350〜360nmであることが好ましく、355nmであることがより好ましい。
次いで、上記露光工程後、支持フィルム10を感光性樹脂組成物層20から剥離除去する。次に現像工程において、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウエット現像、ドライ現像等で感光性樹脂組成物層20の未露光部を除去して現像し、レジストパターンを製造することができる。
上記アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが用いられる。
また、現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等が好ましい。また、現像に用いるアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
上記水系現像液としては、水又はアルカリ性水溶液と一種以上の有機溶剤とからなるものが用いられる。ここでアルカリ性水溶液の塩基としては、前記物質以外に、例えば、ホウ砂やメタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ジアミノプロパノール−2、モルホリン等が挙げられる。現像液のpHは、レジストの現像が充分にできる範囲でできるだけ小さくすることが好ましく、pH8〜12とすることが好ましく、pH9〜10とすることがより好ましい。
上記有機溶剤としては、例えば、3−アセトンアルコール、アセトン、酢酸エチル、炭素数1〜4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。有機溶剤の濃度は、通常、2〜90質量%とすることが好ましく、その温度は、現像性にあわせて調整することができる。また、水系現像液中には、界面活性剤、消泡剤等を少量混入することもできる。単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、引火防止のため、1〜20質量%の範囲で水を添加することが好ましい。
本発明のレジストパターンの形成方法においては、必要に応じて上述した2種以上の現像方法を併用してもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには最も適している。また、現像後の処理として、必要に応じて60〜250℃程度の加熱又は0.2〜10J/cm2程度の露光を行うことによりレジストパターンをさらに硬化して用いてもよい。
本発明の感光性エレメントを用いてプリント配線板を製造する場合、現像されたレジストパターンをマスクとして、回路形成用基板の表面を、エッチング又はめっき等の公知方法で処理する。
上記金属面のエッチングには塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素系エッチング液を用いることができるが、エッチファクターが良好な点から塩化第二鉄溶液を用いることが望ましい。上記めっき法としては、例えば、硫酸銅めっき及びピロリン酸銅めっき等の銅めっき、ハイスローはんだめっき等のはんだめっき、ワット浴(硫酸ニッケル−塩化ニッケル)めっき及びスルファミン酸ニッケルめっき等のニッケルめっき、ハード金めっき及びソフト金めっき等の金めっきなどがある。これらは公知の方法を適宜用いることができる。
次いで、レジストパターンは、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液よりさらに強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1〜10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。剥離方式としては、例えば、浸漬方式又はスプレー方式等が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、併用してもよい。
なお、上記本発明のプリント配線板の製造法は、単層プリント配線板のみならず多層プリント配線板の製造にも適用可能であり、小径スルーホールを有するプリント配線板等の製造にも適用可能である。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
(実施例1〜2及び比較例1〜5)
[バインダーポリマー(A−1)の合成]
表1に示す組成のバインダーポリマーを合成例1にしたがって合成した。
(合成例1)
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、質量比6:4であるメチルセロソルブ及びトルエンの配合物400gを加え、窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、80℃まで加熱した。一方、共重合単量体としてメタクリル酸125g、メタクリル酸メチル150g、及びスチレン225gと、アゾビスイソブチロニトリル1.5gとを混合した溶液(以下、「溶液a」という)を用意し、80℃に加熱された質量比6/4であるメチルセロソルブ及びトルエンの上記配合物に溶液aを4時間かけて滴下した後、80℃で撹拌しながら2時間保温した。さらに、質量比6/4であるメチルセロソルブ及びトルエンの配合物100gにアゾビスイソブチロニトリル1.2gを溶解した溶液を、10分かけてフラスコ内に滴下した。滴下後の溶液を撹拌しながら80℃で3時間保温した後、30分間かけて90℃に加温した。90℃で2時間保温した後、冷却して(A)成分であるバインダーポリマー(A−1)を得た。
このバインダーポリマー(A−1)の不揮発成分(固形分)は50質量%であった。バインダーポリマー(A−1)の重量平均分子量は50,000、酸価は163mgKOH/gであった。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの条件は、以下に示す。
(GPC条件)
ポンプ:日立 L−6000型[株式会社日立製作所製]
カラム:Gelpack GL−R420 + Gelpack GL−R430 + Gelpack GL−R440(計3本)[以上、日立化成工業株式会社製]
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:25℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI[株式会社日立製作所製]
(感光性樹脂組成物の調製)
表1に示す材料を同表に示す配合量で混合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
表1に示す材料は以下のとおりである。
*1:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン(25/30/45(質量比))の共重合体、重量平均分子量50,000、酸価163mgKOH/g、50質量%メチルセルソルブ/トルエン=6/4(質量比)溶液
*2:2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(日立化成工業株式会社製、製品名)
*3:ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジアクリレート(オキシエチレン鎖6モル、オキシプロピレン鎖12モル変性)(日立化成工業株式会社製、製品名)
*4:γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレート(日立化成工業株式会社製、製品名)
*5:1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン(旭電化工業株式会社製、製品名)
*6:9−フェニルアクリジン(新日鐵化学株式会社製、製品名)
(感光性エレメントの作製)
感光性エレメントの支持フィルムとして、表2に示すポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と表記する)フィルム(a)〜(e)を用意した。各PETフィルムの種類は、(a)QS−48*7(商品名)、(b)A−1517*8(商品名)、(c)HTF−01*9(商品名)、(d)R−340*10(商品名)、(e)HTR−02*11(商品名)、である。これらの支持フィルムの厚みは、いずれも16μmであった。
各PETフィルムの直径5μm以上の粒子等の個数及び、ヘーズ値(%)を測定した結果を表2に示した。上記粒子等の個数は、1mm2単位に存在する5μm以上の粒子等の数を偏光顕微鏡を用いて測定した。その際のn数は5とした。なお、n数とは繰り返し測定数のことであり、平均値を評価結果とする。また、ヘーズ値は、JIS K7105に準拠して測定した。
次に、それぞれのPETフィルム上に上記の感光性樹脂組成物の溶液を厚さが均一になるようにして塗布し、100℃の熱風対流乾燥機で2分間乾燥して溶媒を除去して感光性樹脂組成物層を形成した。乾燥後、ポリエチレン製保護フィルム(タマポリ株式会社製、商品名「NF−15」、厚さ20μm)で感光層を被覆して感光性エレメントを得た。なお、乾燥後の感光層の厚さは、いずれも25μmであった。
*7(a):QS−48(東レ株式会社製、商品名)は、微粒子を含有する層を表裏に有する3層構造の二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
*8(b):A−1517(東洋紡績株式会社製、商品名)は、微粒子を含有する層を一方の面に有する2層構造の二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
*9(c):HTF−01(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名)は、微粒子の含有率が表裏で異なる2層構造の二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
*10(d):R−340(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製,商品名)は、微粒子を含有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
*11(e):HTR−02(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名)は、微粒子を含有する層を表裏に有する3層構造の二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
(試験基板の作製)
次いで、銅箔(厚み12μm)を両面に積層したガラスエポキシ材である銅張積層板(日立化成工業株式会社製商品名MCL−E−67)の銅表面を、#600相当のブラシを持つ研磨機(株式会社三啓製)を用いて研磨し、水洗後、空気流で乾燥し、得られた銅張積層板を80℃に加温し、その銅表面上に前記感光性樹脂組成物層を保護フィルムを剥がしながら110℃のヒートロールを用い1.5m/分の速度でラミネートした。
<光感度の評価>
次に、試験基板の上に日立41段ステップタブレットを置いて、波長355nmの半導体レーザを光源とする直接描画露光装置(日本オルボテック株式会社製、商品名Paragon−9000)を用いて、所定のエネルギー量で露光した。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、30℃で1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を45秒間スプレーし、未露光部分を除去した後、銅張積層板上に形成された光硬化膜のステップタブレットの段数を測定し、現像後の残存ステップ段数が17.0段となるエネルギー量(mJ/cm2)を求め、感光性樹脂組成物の光感度を評価した。感度の評価はこの数値が小さいほど、感度が高いことを示す。
<解像度の評価>
前記試験基板上に解像度評価用パターンとしてライン幅/スペース幅が5/5〜47/47(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールデータを使用し、日立41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が17.0となるエネルギー量で露光を行った。ここで、解像度は、上記光感度の評価と同様の条件で現像処理を行った後、きれいに除去されたスペース部(未露光部)のうち、最も小さいスペース幅の値により評価した。解像度の評価は数値が小さいほど良好な値である。
<密着性の評価>
前記試験基板上に密着性評価用パターンとしてライン幅/スペース幅が5/15〜47/141(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールデータを使用して、日立41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が17.0となるエネルギー量で露光を行った。ここで、密着性は、上記光感度の評価と同様の条件で現像処理を行った後、きれいに残ったライン部(露光部)のうち、最も小さいライン幅の値により評価した。密着性の評価は数値が小さいほど良好な値である。
<レジストパターンの側面ギザ性の評価>
レジストパターンの側面ギザ性を調べるため、ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと、ライン幅/スペース幅が10/30(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールデータを使用し、波長355nmの半導体レーザを光源とする直接描画露光装置(日本オルボテック株式会社製、商品名Paragon−9000)を用いて、日立41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が17.0となる照射エネルギー量で露光を行った。次に、支持フィルムを剥離し、30℃で1質量%炭酸ナトリウム水溶液を最少現像時間の2倍の時間でスプレー現像し、未露光部分を除去した。次いで、得られたレジストパターンを、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名「SU−1500」)により観察し、レジストパターンの側面ギザ性を下記基準により評価した。レジストパターンの側面ギザとは、レジストパターンの形状がストレートではなく、ギザつき(凹凸)があって好ましくない状態をいい、レジストパターンの側面ギザの凹凸は浅く、滑らかな形状である方が好ましい。結果を表3に示した。
A:滑らかな形状(側面ギザの凹凸が1μm以下)が確認された
B:やや粗い形状(側面ギザの凹凸が1μm超2μm以下)が確認された
C:粗い形状(側面ギザの凹凸が2μm超)が確認された
<レジスト微小欠損部の評価>
レジストの微小欠損部の発生を調べるため、上記レジストパターンの側面ギザ性の評価で用いた基板において、偏光顕微鏡を用いてレジスト欠損部の個数を数えた。ライン長さが1mmでライン本数が10本を観察単位とし、n数を5とした時の平均値をレジスト微小欠損部の発生数とした。結果を表3に示した。
表2及び表3に示したように、参考例1、実施例1及び比較例1〜4で用いたPETフィルムのヘーズは、ほぼ同等だが、参考例1、実施例1で用いたPETフィルム1mm2単位に存在する5μm以上の粒子等の個数が1個であり、比較例1〜4で用いたPETフィルムに比較し極めて少なかった。そのため、レジスト微小欠損部の発生数においても参考例1、実施例1は、レジスト欠損が0であり、比較例1〜4に比べ極めて少ないという結果が得られた。さらに、参考例1、実施例1では、現像後のレジスト側面形状が滑らかであり、良好なパターンを形成することが確認できた。
さらに本発明の感光性エレメントを用いた参考例1、実施例1は、直接描画露光においていずれも高感度であり、密着性及び解像度に優れ、レジスト特性も良好であった。特に実施例1は特に光感度に優れていた。これに対し比較例1は、光感度及び密着性が不十分であった。