JP5487707B2 - 投写レンズ、およびプロジェクター - Google Patents

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Description

本発明は、複数のレンズを有する投写レンズ、およびこの投写レンズを備えたプロジェクターに関する。
従来、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調して画像光を形成し、その画像光を投写レンズによって拡大投写するプロジェクターが知られている。この投写レンズは、光軸上に順次配置される移動可能なレンズを有しており、このレンズが移動されることによって、ズーム調整やフォーカス調整が行われるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の投写レンズ(レンズ鏡筒)は、同一合成樹脂材料で形成されたレンズ枠(レンズ保持枠)、案内筒(直進案内筒)、およびカム筒を備えている。レンズ枠は、レンズを保持するように形成され、外側に向かって突出するカムピン(カムフォロア)を有している。案内筒は、レンズ枠が嵌挿されるように形成され、直進案内溝が設けられている。カム筒は、案内筒が嵌挿されるように形成され、レンズ枠の移動動作を規定するカム溝が設けられている。そして、レンズ枠は、カムピンが直進案内溝およびカム溝に係合されて組み込まれる。投写レンズは、カム筒が回転されることにより、レンズ枠およびレンズ枠に保持されたレンズが光軸方向に沿って移動し、ズーム調整やフォーカス調整を行う。
特開2005−274802号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、レンズ枠、案内筒およびカム筒が同一合成樹脂材料で形成され、温度変化による寸法変化の割合が、各部品間で同じとなり、不均一な応力が少なくなるとはいうものの、照射される光束によってレンズ枠が熱変形し、レンズが所定の位置からずれる恐れがある。また、レンズが温度上昇して、屈折率が変わる恐れがある。レンズが所定の位置からずれたり、屈折率が変わると、レンズの焦点がずれ、投写レンズから投写される画像光のフォーカスが劣化して画質を低下させるという課題がある。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係る投写レンズは、光軸上に順次配置される複数のレンズを有する投写レンズであって、前記レンズを保持し、当該投写レンズに入射する光束を反射させる部材で形成された反射レンズ枠と、前記反射レンズ枠が嵌挿され、前記反射レンズ枠を前記光軸に沿って案内する案内筒と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、反射レンズ枠は、投写レンズに入射する光束を反射させる部材で形成されているので、照射された光束による温度上昇が抑制される。これによって、反射レンズ枠は、熱変形等が抑制され、安定した寸法を維持してレンズを保持し、精度良く案内筒に配置されることが可能となる。また、反射レンズ枠に保持されているレンズの温度上昇の抑制が可能となる。したがって、投写レンズは、フォーカス変動等を抑制して所望の光学性能を維持することが可能となる。
[適用例2]上記適用例に係る投写レンズにおいて、前記反射レンズ枠は、前記複数のレンズの中で屈折角が相対的に大きく設定されたレンズを保持することが好ましい。
レンズは、温度上昇すると、屈折率が変わるため、屈折角が大きく設定されたレンズ程、温度上昇による焦点の変動が大きくなる。また、屈折角が大きく設定されたレンズ程、位置ずれによる焦点の変動が大きくなる。
この構成によれば、複数のレンズの中で屈折角が大きく設定されたレンズ、つまり投写レンズのフォーカス変動に対して影響度が大きいレンズは、反射レンズ枠に保持される。反射レンズ枠は、温度上昇が抑制されるので、屈折角が大きく設定されたレンズは、温度上昇、および位置ずれが抑制される。したがって、投写レンズのフォーカス変動を効率的に抑制することが可能となる。
[適用例3]上記適用例に係る投写レンズにおいて、前記反射レンズ枠は、瞳の位置近傍に配置されたレンズを保持することが好ましい。
ここで瞳の位置とは、投写レンズに入射した光束が最も絞られる位置、換言すると、最も光束密度が大きくなる位置のことをいう。つまり、この瞳の位置近傍に配置されたレンズは、他のレンズより温度上昇の恐れがある。
この構成によれば、瞳の位置近傍に配置されたレンズ、つまり複数のレンズの中で最も温度上昇する恐れがあるレンズは、反射レンズ枠に保持される。これによって、投写レンズの温度上昇を効率的に抑制することが可能となり、投写レンズの光学性能の維持が図れる。
[適用例4]本適用例に係るプロジェクターは、光源と、前記光源から射出された光束を画像情報に応じて変調し、画像光を形成する電気光学装置と、前記画像光を投写する上記記載の投写レンズと、を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、プロジェクターは、上記投写レンズを備えているので、フォーカス変動等を抑制した品質の高い画像光を投写することが可能となる。
本実施形態のプロジェクターの概略構成を示す模式図。 本実施形態の投写レンズの斜視図。 本実施形態の投写レンズの断面図。 投写レンズを分解した図であり、フランジおよび前側筒を省略した図。 レンズ枠ユニットを分解した斜視図であり、前方から見た図。 レンズ枠ユニットを分解した斜視図であり、後方から見た図。 案内筒を後方から見た斜視図。 カム筒を後方から見た斜視図。 カム筒を内面側から見た展開図。
以下、本実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照して説明する。
本実施形態のプロジェクターは、光源から射出される光束を画像情報に応じて変調して画像光を形成し、この画像光をスクリーン等に拡大投写する。
図1は、本実施形態のプロジェクターの概略構成を示す模式的図である。
図1に示すように、プロジェクター1は、略L字状の光学ユニット2、機器本体を収納し、外装を構成する外装筐体3、図示しない制御部、制御部等に電力を供給する電源装置、およびプロジェクター1内部を冷却する冷却ファン等を備えている。
制御部は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備え、コンピューターとして機能するものであり、プロジェクター1の動作の制御、例えば、画像の投写に関わる制御等を行う。
光学ユニット2は、制御部による制御の下、光源211から射出された光束を光学的に処理して画像情報に対応した画像光を形成して投写するユニットである。光学ユニット2は、光源装置21、照明光学装置22、色分離光学装置23、リレー光学装置24、電気光学装置25、投写光学装置としての投写レンズ5およびこれらの光学部品を所定位置に配置する光学部品用筐体4を備える。
光源装置21は、光源211およびリフレクター212等を備える。そして、光源装置21は、光源211から射出された光束をリフレクター212によって射出方向を揃え、照明光学装置22に向けて射出する。
照明光学装置22は、第1レンズアレイ221、第2レンズアレイ222、偏光変換素子223、および重畳レンズ224を備える。第1レンズアレイ221および第2レンズアレイ222は、重畳レンズ224とともに、光源装置21から射出された光束を後述する液晶パネル253の表面に略重畳させる。偏光変換素子223は、第2レンズアレイ222から射出されたランダム偏光光を液晶パネル253で利用可能な略1種類の偏光光に揃える機能を有する。
色分離光学装置23は、2枚のダイクロイックミラー231,232、および反射ミラー233を備え、照明光学装置22から射出された光束を赤色光(以下「R光」という)、緑色光(以下「G光」という)、青色光(以下「B光」という)の3色の色光に分離する機能を有する。
リレー光学装置24は、入射側レンズ241、リレーレンズ243、および反射ミラー242,244を備え、色分離光学装置23で分離されたB光をB光用の液晶パネル253Bまで導く機能を有する。なお、光学ユニット2は、リレー光学装置24がB光を導く構成としているが、これに限らず、例えば、R光を導く構成としてもよい。
電気光学装置25は、入射側偏光板251、光変調装置として3つの液晶パネル253(R光用の液晶パネルを253R、G光用の液晶パネルを253G、B光用の液晶パネルを253Bとする)、射出側偏光板254、および色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム255を備える。電気光学装置25は、色分離光学装置23で分離された各色光を画像情報に応じて変調し、画像光を形成する。
投写レンズ5は、1つあるいは複数のレンズを1つのレンズ群とする複数のレンズ群を備えており、これらのレンズ群が光軸Cに沿って配置されている。そして、投写レンズ5は、入射する画像光をズーム調整する機能、およびフォーカス調整する機能を有し、電気光学装置25にて形成された画像光を拡大投写する。
光学部品用筐体4は、前述した光学部品21〜25、および投写レンズ5を光軸C上の所定の位置に配置する。
ここで、投写レンズ5について詳細に説明する。なお、投写レンズ5に画像光が入射する入射側を後側、投写レンズ5より画像光が投写される投写側を前側とする。
図2は、投写レンズ5の斜視図であり、図3は、投写レンズ5の断面図である。
図2、図3に示すように、投写レンズ5は、入射側に配置されるフランジ51、案内筒52、カム筒53、前側筒54、および光軸Cに沿って前側から順に配置される第1レンズ群81〜第7レンズ群87を備えている。投写レンズ5は、第7レンズ群87から入射した画像光を光学的に処理した後、第1レンズ群81から射出する。
フランジ51は、平面視において外形が矩形状に形成されており、中央部には、第7レンズ群87が固定配置され、四隅には、ネジが挿通される丸孔511が形成されている。投写レンズ5は、このフランジ51がネジ固定されることによって光学部品用筐体4に取り付けられている。
案内筒52は、図3に示すように、大きな径の大円筒部521と、小さな径の小円筒部522とが互いの端部で結合された形状を有し、大円筒部521が前側となるように構成されている。案内筒52には、大円筒部521と小円筒部522とで形成される段差部から後方に向けて光軸Cの方向に沿って切り欠かれた直進溝524が形成されている。また、案内筒52は、外周面前側にネジ溝523が形成され、後方端部には、フランジ51がネジ固定されている。
カム筒53は、円筒状に形成されており、内側に案内筒52が嵌挿され、案内筒52に対して光軸Cを中心として回転可能になっている。カム筒53の内面には、第2レンズ群82〜第6レンズ群86の移動動作を規定するカム溝71,72,73,74等が形成されている。
前側筒54は、円筒状に形成され、フォーカス調整用の第1レンズ群81が固定配置されている。前側筒54は、内周面にネジ溝が形成されており、案内筒52のネジ溝523に螺合されて案内筒52に取り付けられている。そして、第1レンズ群81は、前側筒54が光軸Cを中心として回転されることによって、光軸C方向に沿って移動するように構成されている。
第1レンズ群81および第2レンズ群82は、負のパワーを有するレンズ群として構成され、第3レンズ群83〜第7レンズ群87は、正のパワーを有するレンズ群として構成されている。そして、第4レンズ群84は、第1レンズ群81〜第7レンズ群87の中で屈折角が相対的に大きく設定されている。また、第5レンズ群85の近傍は、投写レンズ5に入射した光束が最も絞られる瞳の位置が設定されている。
前述したように、第1レンズ群81は、前側筒54に固定配置され、第7レンズ群87は、フランジ51に固定配置される。
第2レンズ群82〜第6レンズ群86は、後述する5つのレンズ枠にそれぞれ保持されて案内筒52の小円筒部522に嵌挿され、光軸Cに沿って移動可能に構成されている。詳細は後述するが、レンズ枠には、カムピンが形成されており、このカムピンが直進溝およびカム溝に係合されている。そして、各レンズ枠は、このカムピンがカム筒53の回転により直進溝524とカム溝71,72,73,74との交点に誘導されることで光軸C方向に移動する。投写レンズ5は、これらのレンズ群が移動されることによって画像光のズーム調整やフォーカス調整を行う。
なお、本実施形態の投写レンズ5は、カム筒53および前側筒54が手動によって回転されるように構成されている。そして、カム筒53には、図示しないズームリングが取り付けられており、カム筒53は、このズームリングが操作されることによって回転される。また、以下では、説明の便宜上、前方から見て時計回りの方向を「右方向」、反時計回りの方向を「左方向」として記載する。
5つのレンズ枠、案内筒52、およびカム筒53についてさらに詳細に説明する。
先ず、各レンズ枠について詳細に説明する。
図4は、投写レンズ5を分解した図であり、フランジ51および前側筒54を省略した図である。
図4に示すように、5つのレンズ枠は、前側からレンズ枠61,62、反射レンズ枠63,64,65の順に配置され、反射レンズ枠63,64,65は、レンズ枠ユニット60として構成されている。
レンズ枠61は、PC(polycarbonate)等の合成樹脂製であり、図3、図4に示すように、第2レンズ群82を保持する保持部611、およびカムピン612を有している。
保持部611は、第2レンズ群82の外周を覆うように環状に形成され、光軸Cを中心とする半径方向の肉厚は、第2レンズ群82を安定して保持するような肉厚に設定されている。
カムピン612は、保持部611の外周面から光軸Cに対し交差する方向に突出して形成され、光軸Cを中心とする円周方向に120°の等間隔で3つ設けられている。カムピン612は、円柱状に形成されており、先端は、端部が細くなるテーパ状になっている。
3つのカムピン612は、同一長さに設定されており、図4に示すように、3つのカムピン612を含むレンズ枠61の外径寸法D1は、案内筒52の小円筒部522の外径寸法より大きく設定されている。つまり、カムピン612の長さは、図3に示すように、レンズ枠61が案内筒52に嵌挿された際に、先端が直進溝524から飛び出すように設定されている。
レンズ枠62は、PC(polycarbonate)等の合成樹脂製であり、レンズ枠61と同様に、環状の保持部621、および3つのカムピン622を有している。そして、保持部621の内面には、第3レンズ群83が保持部621の縁部と図示しない金属板とに挟持されて取り付けられている。
保持部621は、外径寸法が保持部611の外径寸法と同一の寸法を有している。カムピン622は、カムピン612と同形状に形成され、レンズ枠62が案内筒52に嵌挿された際に、カムピン612と同様に、先端が直進溝524から飛び出すように設定されている。
レンズ枠ユニット60は、前述したように、反射レンズ枠63,64,65を備えている。
図5、図6は、レンズ枠ユニット60を分解した斜視図であり、図5は、前方から見た図、図6は、後方から見た図である。
反射レンズ枠63,64,65は、白色のPC(polycarbonate)等の合成樹脂製であり、投写レンズ5に入射する光束を効率良く反射させる部材で形成されている。
反射レンズ枠63は、図5、図6に示すように、レンズ枠61と同様に、環状の保持部631、および3つのカムピン632を有している。保持部631は、外径寸法が保持部611の外径寸法と同一の寸法を有している。そして、図3に示すように、保持部631前側の内面には、第4レンズ群84が保持され、第4レンズ群84の後方には、反射レンズ枠64が移動可能に挿入されている。
カムピン632は、カムピン612と同形状に形成され、図5、図6に示すように、保持部631の外周面前側に設けられている。具体的に、カムピン632は、反射レンズ枠63に挿入される反射レンズ枠64のカムピン642の前方に位置するように形成されている。そして、カムピン632の長さは、カムピン612の長さと同一に形成され、レンズ枠ユニット60が案内筒52に嵌挿された際に、カムピン612と同様に、先端が直進溝524から飛び出すように設定されている。
保持部631には、図5、図6に示すように、それぞれのカムピン632の後方に、光軸Cに沿って切り欠かれた切欠き633が形成されている。切欠き633は、幅寸法がカムピン642の径寸法より大きく形成されており、反射レンズ枠64が移動される際にカムピン642が通過するための逃げ部である。
また、保持部631の外周面後側には、図5、図6に示すように、外側に突出する突起部636が形成されている。突起部636は、光軸Cを中心とする円周方向に60°の等間隔に6つ形成されており、その6つの突起部636の外面を結ぶ外形寸法は、小円筒部522の内径寸法より僅かに小さく設定されている。
反射レンズ枠63の後方端面には、図6に示すように、光軸Cに沿って延出する位置決めピン634、およびネジ穴635が円周方向に120°の等間隔でそれぞれ3つ設けられている。なお、ネジ穴635は、タップネジSCが挿入される下穴として形成されており、タップネジSCの締め付けトルクが比較的小さくなるように、通常の穴径より僅かに大きな穴径が設定されている。
反射レンズ枠64は、レンズ枠61と同様に、環状の保持部641、および3つのカムピン642を有し、保持部641の内面には、第5レンズ群85(図3参照)が保持されている。反射レンズ枠64は、反射レンズ枠63に遊嵌され、カムピン642が反射レンズ枠63の切欠き633から飛び出し、光軸C方向にスムーズに移動できるように構成されている。
カムピン642は、カムピン612と同形状に形成され、その長さは、3つのカムピン642を含む反射レンズ枠64の外径寸法D2(図5参照)が外径寸法D1(図4参照)と同一になるように設定されている。そして、カムピン642は、レンズ枠ユニット60が案内筒52に嵌挿された際に、カムピン612と同様に、先端が直進溝524から飛び出すように設定されている。
反射レンズ枠65は、外径が保持部631の外径と同等の寸法を有して環状に形成され、その内面には、第6レンズ群86(図3参照)が保持されている。反射レンズ枠65は、光軸Cに沿って移動可能に配置される複数のレンズ枠のうち、最も後方に配置されている。
反射レンズ枠65は、反射レンズ枠63の後方端面にネジ固定されるよう構成されている。具体的に、反射レンズ枠65の外周縁部には、図6に示すように、反射レンズ枠63の位置決めピン634に嵌合する孔651、および反射レンズ枠63のネジ穴635に対応する丸孔652が形成されている。
そして、反射レンズ枠65は、治具によって保持された反射レンズ枠63に反射レンズ枠64が挿入された後、反射レンズ枠63の後方端面にタップネジSCによって固定される。
このように、レンズ枠ユニット60は、反射レンズ枠63と反射レンズ枠65とがネジ固定されて一体的に移動可能に構成され、反射レンズ枠64が反射レンズ枠63と反射レンズ枠65との間に移動可能に配置され、案内筒52に嵌挿される1つのユニットとして構成されている。つまり、反射レンズ枠63に保持されている第4レンズ群84、および反射レンズ枠65に保持されている第6レンズ群86は、一体的に移動され、反射レンズ枠64に保持されている第5レンズ群85は、第4レンズ群84と第6レンズ群86との間で、第4レンズ群84および第6レンズ群86とは異なった移動が可能になっている。
前述したように、投写レンズ5は、第7レンズ群87から入射した光束を第1レンズ群81から射出する。レンズ枠ユニット60には、第7レンズ群87から射出された光束が入射する。そして、第7レンズ群87から射出された光束は、第6レンズ群86、第5レンズ群85、第4レンズ群84の順で光学的に処理された後、第3レンズ群83に射出される。
また、各レンズ群から射出される光束の一部は、反射レンズ枠63,64,65に照射されて反射する。具体的に、第7レンズ群87から射出された光束の一部は、反射レンズ枠65に照射されて反射する。第6レンズ群86から射出された光束の一部は、反射レンズ枠64および反射レンズ枠63に照射されて反射する。同様に、第5レンズ群85から射出された光束の一部は、反射レンズ枠63に照射されて反射する。
次に、案内筒52について詳細に説明する。
図7は、案内筒52を後方から見た斜視図である。
案内筒52は、ガラス繊維入りPC(polycarbonate)等の合成樹脂製であり、図4、図7に示すように、前述した大円筒部521および小円筒部522を有している。なお、案内筒52は、合成樹脂に限らず、アルミニウム等の金属で形成してもよい。また、案内筒52は、大円筒部521および小円筒部522を別体で形成し、ネジ等で固定して一体的に構成してもよい。
大円筒部521は、内径がレンズ枠61の外径寸法D1より大きく設定されており、レンズ枠61,62およびレンズ枠ユニット60が挿入可能な大きさに設定されている。大円筒部521の外周には、前述したように、前側筒54が螺合されるネジ溝523が形成されている。
また、大円筒部521の端部には、前側筒54の回転範囲を規定するための切欠き521Aが形成されている。前側筒54は、大円筒部521に螺合された後、図示しない外周面に設けられたネジ孔にネジが挿通され、このネジは、切欠き521A内に飛び出すようになっている。このネジは、前側筒54が案内筒52に対して回転されると、左右の回転方向に対応して切欠き521Aの円周方向における端面と当接する。そして、前側筒54は、案内筒52に対して回転される範囲が規定される。また、前側筒54は、回転される範囲が規定されることによって、案内筒52から離脱されないようになっている。
小円筒部522は、大円筒部521から挿入されたレンズ枠61,62およびレンズ枠ユニット60が嵌挿され、光軸C方向にスムーズに移動できるように設定されている。また、前述したように、大円筒部521と小円筒部522とで形成される段差部から後方に向かって直進溝524が設けられている。直進溝524は、カムピン612,622,632,642が係合され、各レンズ枠を光軸C方向に沿って案内する。
直進溝524は、光軸Cを中心とする円周方向に120°の等間隔で3つ設けられている。そして、直進溝524は、レンズ枠61,62およびレンズ枠ユニット60が案内筒52の前方側から挿入されることによって、カムピン612,622,632,642と係合されるように形成されている。また、直進溝524の幅寸法は、カムピン612の外径寸法より僅かに大きな寸法に設定されている。
直進溝524は、レンズ枠61,62およびレンズ枠ユニット60が案内筒52内に嵌挿された際に、カムピン612,622,632,642それぞれに左右両側から係合する。そして、直進溝524は、レンズ枠61,62、反射レンズ枠63および反射レンズ枠64を、左右方向、すなわち光軸Cに対して円周方向に回転することを阻止しながら、光軸Cに沿って案内するようになっている。
小円筒部522の外周面の前側縁部には、図7に示すように、円周方向に沿って突出する2つの帯状の突起部(前方係止部525、後方係止部526)が形成されている。この前方係止部525および後方係止部526は、カム筒53を光軸C方向に位置決めするための突起部であり、その外径寸法は、カム筒53の内径より僅かに小さく設定されている。
前方係止部525は、3つの直進溝524同士の間に形成されている。後方係止部526は、前方係止部525に対して後方に所定の距離を有して形成され、直進溝524同士の間に、一方の直進溝524に対しては、所定の距離離間し、他方の直進溝524に対しては、端部まで形成されている。
また、後方係止部526の後方には、小円筒部522の外周面に沿って後方係止部526の縁部から後方に向かって突出する回転規制突起529が2つ形成されている。2つの回転規制突起529は、互いの距離が所定の寸法に設定されており、カム筒53の回転範囲を規定する。
カム筒53は、案内筒52が嵌挿された後、後述するネジ孔534(図4参照)にネジが挿通され、このネジは、カム筒53の内面から飛び出し、2つの回転規制突起529の間に位置するようになっている。そして、カム筒53は、案内筒52に対して回転されることによって、内面から飛び出たネジが左右の回転方向に対応して2つの回転規制突起529のいずれかに当接し、回転される範囲が規定される。カム筒53は、回転される範囲が規定されることによって、案内筒52から離脱されないようになっている。また、小円筒部522の後側端面には、図7に示すように、フランジ51が取り付けられる位置決めピン527およびネジ穴528が複数形成されている。
次に、カム筒53について詳細に説明する。
カム筒53は、ガラス繊維入りPC(polycarbonate)等の合成樹脂製であり、案内筒52の小円筒部522が嵌挿される。そして、カム筒53は、前述したように、案内筒52に挿入されたレンズ枠61,62、および反射レンズ枠63,64,65の移動動作を規定するカム溝等が形成されている。なお、カム筒53は、合成樹脂に限らず、アルミニウム等の金属で形成してもよい。
カム筒53は、図4に示すように、前側端部に内面側に突出する前方突出部531が複数形成されている。
前方突出部531は、光軸Cを中心とする円周方向に120°の等間隔で形成されており、その内径は、小円筒部522の外径より僅かに大きく、案内筒52の前方係止部525および後方係止部526の外径寸法より小さく設定されている。
また、前方突出部531は、円周方向における長さが案内筒52の後方係止部526同士の間隔より短く、光軸C方向の幅寸法が前方係止部525と後方係止部526との間の距離より僅かに小さく設定されている。カム筒53は、案内筒52が嵌挿され、所定の位置まで回転された際に、この前方突出部531が前方係止部525と後方係止部526との間に挟持され、案内筒52に対して光軸C方向において位置決めされる。
図8は、カム筒53を後方から見た斜視図である。
カム筒53は、図8に示すように、後側端部に内側全周に亘って帯状に突出する後方突出部532が形成されている。
後方突出部532の内径は、前方突出部531の内径と同寸法に設定されている。
カム筒53は、小円筒部522が嵌挿された際に、この前方突出部531および後方突出部532が小円筒部522の外面と当接し、小円筒部522に対してガタつくこと無く滑らかに回転される。
また、カム筒53には、外周面前側に光軸Cを中心とする円周方向に120°の等間隔で外面から突出する3つのボス533が形成されている。このボス533には、ネジ穴が形成されており、ズームリングがこのボス533にネジ固定される。そして、カム筒53は、前述したように、このズームリングが操作されることによって回転される。
図9は、カム筒53を内面側から見た展開図である。
図8、図9に示すように、カム筒53の内面には、断面が凹形状の案内溝70、および前側から順に形成されたカム溝71,72,73,74がそれぞれ光軸Cを中心とする円周方向に120°の等間隔で3組設けられている。
案内溝70は、カム筒53の前側端部から光軸Cに沿って直線的に形成されている。案内溝70は、光軸Cから底部までの距離の2倍が、外径寸法D1よりわずかに大きくなるように設定されている。また、案内溝70の断面形状は、カムピン612,622,632,642の先端形状に沿うように形成されている。
そして、案内溝70は、レンズ枠61,62およびレンズ枠ユニット60が案内筒52に挿入される際に、直進溝524から飛び出したカムピン612,622,632,642が係合される。
カム溝71,72,73は、それぞれ案内溝70の中途部に繋がり、カム溝74は、案内溝70の終端部に繋がっている。カム溝71,72,73,74は、カムピン612,622,632,642にそれぞれ係合可能に形成され、レンズ枠61,62、および反射レンズ枠63,64,65をそれぞれ光軸Cに沿って移動させるように形成されている。
カム溝71,72,73,74は、図9に示すように、導入部71A,72A,73A,74A、および移動規定部71B,72B,73B,74Bをそれぞれ有し、断面形状は、案内溝70の断面形状と同一に形成されている。
導入部71A,72A,73A,74Aは、案内溝70、つまり光軸Cに対して略直交する方向に延出している。そして、導入部71A,72A,73A,74Aは、各レンズ枠が最も後退した位置、つまりワイド端に位置するように形成されている。
移動規定部71B,72B,73B,74Bは、導入部71A,72A,73A,74Aにそれぞれ連続して繋がり、各レンズ枠が最も後退した位置(ワイド端)から最も繰り出される位置(テレ端)までの間(ズーム域)を連続的に移動可能に形成されている。そして、投写レンズ5は、各レンズ枠に保持されている第2レンズ群82〜第6レンズ群86が移動されることによって画像光を変倍する。
具体的に、移動規定部71B,72B,73B,74Bは、カム筒53の内面に螺旋状の軌跡として形成されている。この軌跡は、光軸Cに対して前方に傾斜しており、この傾斜している角度(カム圧力角)は、各レンズ枠に対応して設定されている。また、移動規定部71B,72B,73B,74Bは、カム筒53が光軸Cを中心にして右方向に回転されると、各レンズ枠がワイド端側に移動し、左方向に回転されると、テレ端側に移動するように設定されている。なお、本実施形態の移動規定部71B,72B,73B,74Bは、カム筒53の回転角度の範囲が略60°で各レンズ枠がズーム域を移動できるように設定されている。
また、移動規定部71B,72B,73B,74Bは、画像光の所定の変倍および収差の補償等の光学特性を確保しつつ、カム筒53を回転させる操作性を損なわない範囲において、カム圧力角が大きく設定されている。そして、図3、図9に示すように、カム筒53の光軸C方向の長さLが短くなるように設定されている。なお、本実施形態の投写レンズ5は、約1.6倍の画像光の変倍が可能に設定されている。
そして、それぞれのレンズ枠は、各カムピンがカム筒53の回転によって、直進溝524と各カム溝との交点に誘導されてそれぞれ光軸Cに沿って移動する。
具体的に、レンズ枠61は、カムピン612がカム溝71に案内されて移動し、レンズ枠62は、カムピン622がカム溝72に案内されて移動する。
反射レンズ枠63,65は、カムピン632がカム溝73に案内されて移動し、反射レンズ枠64は、カムピン642がカム溝74に案内されて移動する。また、反射レンズ枠63,65は、カムピン642の前方に設けられたカムピン632に案内されるが、前述した突起部636によって光軸Cに対する傾きが抑制され、滑らかに移動可能になっている。
このように、レンズ枠61,62、および反射レンズ枠63,64,65にそれぞれ保持された第2レンズ群82〜第6レンズ群86は、カム筒53が案内筒52に対して回転されることによって、光軸Cに沿って移動する。そして、投写レンズ5は、移動されたレンズ群の位置に応じて画像光を変倍して投写する。
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)反射レンズ枠63,64,65は、照射された光束を効率良く反射させるので、温度上昇が抑制される。これによって、反射レンズ枠63,64,65は、熱変形等が抑制され、安定した寸法を維持して第4レンズ群84〜第6レンズ群86をそれぞれ保持し、精度良く案内筒52に配置されることが可能となる。また、反射レンズ枠63,64,65にそれぞれ保持されている第4レンズ群84〜第6レンズ群86の温度上昇の抑制が可能となる。したがって、投写レンズ5は、フォーカス変動等を抑制して所望の光学性能を維持することが可能となる。
また、第4レンズ群84〜第6レンズ群86の近傍に配置されている第3レンズ群83や第7レンズ群87の温度上昇の抑制が図れるので、投写レンズ5は、さらにフォーカス変動等を抑制することが可能となる。
(2)複数のレンズの中で屈折角が大きく設定されている第4レンズ群84は、反射レンズ枠63に保持されているので、温度上昇、および位置ずれが抑制される。したがって、投写レンズ5のフォーカス変動を効率的に抑制することが可能となる。
(3)瞳の位置近傍に配置され、最も温度上昇する恐れがある第5レンズ群85、および第5レンズ群85に隣接された第4レンズ群84、第6レンズ群86は、反射レンズ枠63,64,65に保持されている。これによって、投写レンズ5の温度上昇を効率的に抑制することが可能となり、投写レンズ5の光学性能の維持が図れる。
(4)本実施形態のプロジェクター1は、前述した投写レンズ5を備えているので、フォーカスずれ等を抑制した品質の高い画像光を投写することが可能となる。
(5)投写レンズ5を冷却するためのファンや、ファンから送風された空気を流通させる流通路を設けることなく、各レンズ群の温度上昇を抑制することが可能となるので、プロジェクター1の小型化や軽量化が図れる。
(変形例)
なお、前記実施形態は、以下のように変更してもよい。
反射レンズ枠63,64,65は、白色の合成樹脂で形成されているが、白色以外の合成樹脂を使用し、塗装やメッキ処理等を施すことによって照射される光束を反射するように構成してもよい。また、光束が照射される部位を部分的に塗装したり、部分的にメッキしたりするように構成してもよい。また、反射レンズ枠63,64,65は、合成樹脂に限らず金属で形成してもよい。
前記実施形態の投写レンズ5は、第4レンズ群84、第5レンズ群85および第6レンズ群86が反射レンズ枠63,64,65に保持されるように構成されているが、他のレンズ群が投写レンズ5に入射する光束を反射させる部材で保持されるように構成してもよい。また、前記実施形態の投写レンズ5は、第1レンズ群81〜第7レンズ群87の7つのレンズ群を有して構成されているが、これ以外の数のレンズ群で構成してもよい。
前記実施形態の投写レンズ5は、カム筒53および前側筒54が手動によって回転されるように構成されているが、モーター等を使用して電動によってカム筒53および前側筒54が回転されるように構成してもよい。
前記実施形態のカム溝71,72,73,74は、カム筒53が右方向に回転されると各レンズ枠がワイド端側に移動し、左方向に回転されると各レンズ枠がテレ端側に移動するように形成されているが、右方向に回転されるとテレ端側に移動し、左方向に回転されるとワイド端側に移動するように形成してもよい。
前記実施形態の投写レンズ5は、ズーム調整が可能、つまり焦点距離が変更可能に構成されているが、焦点距離が固定された単焦点レンズとして構成してもよい。また、前記実施形態の投写レンズ5は、回転されるカム筒53が外部に露出するように構成されているが、外部に露出する部材として固定部材を設け、この固定部材の内部にカム筒53を配置し、カム筒53がこの固定部材に対して回転されることによって各レンズ群が移動されるように構成してもよい。
前記実施形態のプロジェクター1は、光変調装置として透過型の液晶パネル253を用いているが、反射型の液晶パネルを利用したものであってもよい。また、光変調装置は、マイクロミラーアレイを用いたデバイス等を使用したものであってもよい。
前記実施形態の投写レンズ5は、プロジェクター1以外にも、画像光の変倍機能を有する一眼レフカメラ、ビデオカメラ、電子カメラ、医療機器用の光学機器等にも適用することが可能である。
1…プロジェクター、5…投写レンズ、25…電気光学装置、52…案内筒、53…カム筒、61,62…レンズ枠、63,64,65…反射レンズ枠、71,72,73,74…カム溝、81…第1レンズ群、82…第2レンズ群、83…第3レンズ群、84…第4レンズ群、85…第5レンズ群、86…第6レンズ群、87…第7レンズ群、211…光源、253…液晶パネル、524…直進溝、611,621,631,641…保持部、612,622,632,642…カムピン。

Claims (2)

  1. 光軸上に順次配置される複数のレンズを有する投写レンズであって、
    前記複数のレンズのうち一部のレンズのそれぞれを保持し、当該投写レンズに入射する光束を反射させる部材で形成された複数の反射レンズ枠と、
    前記複数の反射レンズ枠を保持部によりユニット化した反射レンズ枠ユニットと、
    前記反射レンズ枠が嵌挿され、前記反射レンズ枠を前記光軸に沿って案内する案内筒と、
    を備え、
    前記保持部は、前記複数の反射レンズ枠のうちの前記反射レンズ枠ユニットの一方端に位置する反射レンズ枠の環状部を含み、前記環状部の前記反射レンズ枠ユニットの他方端側には前記複数の反射レンズ枠のうち前記他方端に位置する反射レンズ枠が固定され、
    瞳の位置は前記反射レンズ枠ユニット内に位置することを特徴とする投写レンズ。
  2. 光源と、
    前記光源から射出された光束を画像情報に応じて変調し、画像光を形成する電気光学装置と、
    前記画像光を投写する請求項1に記載の投写レンズと、
    を備えていることを特徴とするプロジェクター。
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