JP5478876B2 - ホイール用ディスクの製造方法 - Google Patents
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Description
図13に示すように、大、中型の自動車用ホイールのディスク101は、ハブ取り付け部102と、ハブ取り付け部102に連なり、半径方向外側と軸方向内側に延び、ハブ取り付け部102板厚よりも薄くなる断面形状をもつ立ち上がり部103とから構成されている。立ち上がり部103は、ハブ取り付け部102に連なり半径方向外側と軸方向内側に斜めに延びる傾斜部103aと、先端部で軸方向に延びる鉛直部103bとにより構成されている。なお、「軸方向内側」とは、ホイールを車両に取付けた際、ホイールの軸方向から見て、車両側となる部分をいう。
この形状のディスクは以下のように製造される。まず、ほぼ正方形(又は、矩形)の板材を打ち抜いて円盤状のワークを作成する。次にコールドスピニングやプレスによる絞り成形加工により、必要な板厚分布を有する立ち上がり部103を形成し、ディスク101の断面形状を作成する。そして、ハブ穴104、ボルト穴105、飾り穴106等の開口等を行い、ディスク101の完成品を作成する。しかし、この従来方法では矩形の板材からブランク材を作成する際の材料の無駄や、ブランク材中央に大径のハブ穴104を形成する際の材料の無駄が多く、経済的ではなかった。
従って本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、材料歩留まりが高いと共に、設備コストを低くすることができ、さらに製造が容易なホイール用ディスクの製造方法の提供を目的とする。
又、厚みの薄い側を外円側にし、厚みの厚い側を内円側に巻回すると、径差拡大工程で厚みの厚い内円側の加工量が大きくなり内径を小さくできる。さらに厚みが薄い外円側を加工せずに残すことで、立ち上がり部の薄肉化が一層図られる。
径差拡大工程で円環材の内径が小さくなる量を見越して、径差拡大工程前の円環材の内径を大きくすることができるので巻回し易くなる。
さらに、素材を円環状に巻回すると、厚みが均一な素材を用いても、内円側で厚みが厚く、外円側では素材が引き伸ばされて厚みが薄くなる。そのため、円環材の内円側が厚く材料が余っているため、径差拡大工程によって、内円側の材料が容易に内側に流れて内径を小さくし易くなる。
このようにすると、螺旋状に巻回した素材をホイール用ディスク1個分ずつに切断するだけで、螺旋状部分がそれぞれ分離し、多数の円環状部分を同時に得ることができ、生産性が向上する。
ここで、公式な耐久強度は我国のJIS D 4103「自動車部品―ディスクホイール―性能及び表示」 であるが、将来、規格が変わった場合は、その時点で我国の日本工業規格JIS(及び/又は国際標準化機構ISO)が定めるホイールの公式な耐久強度をいう。
まず、上記した素材20を、その幅方向Wが径方向となるよう円環状に巻回する(図2(a):巻回工程)。ここで、素材20を巻回する際、図2の矢印Dの方向に、円環状の部分が巻回の軸方向に次々と連続して重なるよう螺旋状に巻回し、所定直径の円環状の部分を複数個螺旋状に連続して形成させる。
ここで、素材20を幅方向Wが径方向となるように巻回する方法としては、所定の治具やローラで素材20の所定位置を支持しながら曲げ成形機で負荷を加える方法がある。
次に、螺旋状に巻回した素材20を切断部22cでホイール用ディスク1個分ずつに切断すると、螺旋状部分がそれぞれ分離し、多数の円環状部分22を得ることができる(図2(b):切断工程)。なお、「ホイール用ディスク1個分ずつ」とは、切断部22Cで切断した個々の円環状部分22を加工すると、ホイール用ディスクが1個形成される分の材料の大きさをいう。又、巻回時にホイール用ディスク1個分の材料分だけ巻回してもよい。ただし、前記巻回工程で、材料20の巻回はじめの始端部と、巻回おわりの終端部に不完全な形成部分を生じる場合は、不完全な形成部分を切り落とし、円環状の材料端面を付き合わせ溶接が可能な形状に揃える必要がある。したがって、円環状の部分を複数個螺旋状に連続して多数形成させる方が、ホイール用ディスク1個分の材料分だけ別個に巻回するより材料歩留まりを改善することができる。
ところで、円環材10の内円側と外円側では半径が異なるため、伸び側(外円側)と圧縮側(内円側)で応力差が生じ、素材の幅Wが大きくなる程応力差が大きくなって巻回が困難になる。そこで、本発明においては、巻回時の円環材10の内径(開口10bの直径)を、次工程の径差拡大工程にて内径が小さくなる量(縮まり代)を見越して大きくする。その結果、巻回時に円環材の内円側と外円側との半径の差を少なくすることができ、巻回が容易になる。
さらに、巻回時の円環材10の外径についても、径差拡大工程で外径が広がる量を見越して小さくすれば、巻回時に円環材10の内円側と外円側との半径の差をさらに少なくすることができ、巻回をさらに容易にすることができる。
例えば、円環材10の内径をハブ穴の直径より大きくする方法としては、素材20の幅W方向が径方向となるよう巻回した後、板厚方向に加工をして所定の板厚としたときに、円環材の内径縮まり代が、ハブ穴抜き仕上げ代を上回るような条件を設定する。さらに、円環材の外径の広がり代を考慮に入れて素材20の幅Wを設定すると、素材の幅を狭くする効果を有する。
ここで、径差拡大工程における加工として、転圧又はスピニング加工が挙げられる。転圧又はスピニング加工は、転造、フローフォーミングとも称され、回転する成形型(マンドレル)に取付けた素材にローラやへら等の工具を押し当てる塑性加工である。このうち、転圧加工は素材にローラを押し当てる加工であり、スピニング加工は素材に点接触で工具を押し当てる加工である。又、コールドスピニング加工とは冷間で行うスピニング加工である。
つまり、厚みが均一な素材を用いても、円環材10の厚みは内円側が厚く、外円側が薄くなる。円環材10の厚みがこのようになっているため、径差拡大工程で円環材10の内径を狭め易くなる。これは、円環材10の内円側が厚く材料が余っているため、転圧加工によって内円側の材料が容易に内側に流れて円環材10の内径を縮める方向に働くからである。
まず、円環材10の開口10bの縁をプレス抜きし、ディスクの中心にハブ穴4を開口する(図6(a))。次に、ハブ穴4より外周側の平面部(ハブ取り付け部)に、ハブを取付けるための複数のボルト孔5を同心円上にプレス抜きして開口する(図6(b))。
さらに、傾斜部3aに少なくとも1個以上の飾り穴6をプレス抜きして開口する(図6(c))。飾り穴6は通常、タイヤへのエアーサービス、軽量化及びブレーキ放熱のために形成される。そして、ハブ取り付け部の寸法品質を向上させるため、平面部2xの平面矯正を行い、ディスクの最終製品(図6(e))とする。なお、ハブ取付け部2は、ハブ穴4とボルト孔5が形成された略円盤状の平面部分である。
ディスク1は、上記したように、ハブ取り付け部2と、ハブ取り付け部2に連なり、半径方向外側と軸方向内側に延び、ハブ取り付け部の板厚よりも薄くなる断面形状をもつ立ち上がり部3とから構成されている。立ち上がり部3は、ハブ取り付け部2に連なり半径方向外側と軸方向内側に斜めに延びる傾斜部3aと、先端部で軸方向に延びる鉛直部3bとにより構成される。
そして、ディスク1とリムとを溶接して車両用ホイールを製造する。リムは略円筒状をなし、その両端に形成された外側フランジ及び内側フランジの間にタイヤを収容するようになっているが、リムの形状や構造は公知であるので説明を省略する。
なお、図8の例では、長辺20L2側から幅方向内部に向かって厚みt2xが一定であり、さらに長辺20L1側に向かってテーパー状に厚みt1xが薄くなっていて、厚みt2xが一定の領域がハブ取り付け部(となる平面部)に対応している。
図9において、素材20xを巻回して得られた円環材10xの外円側は、先細りのテーパー部10x1を有している。この円環材10xを下型400に設置して径差拡大工程を行うと、回転ローラ220で転圧された部分の厚みが薄くなり、円環材10xの内円側の厚みがより厚いのでより多く転圧され、その結果、内径がより縮まる。(図9の中心線Oより左側が転圧加工前の円環材10xであり、中心線Oより右側が転圧加工後の円環材10xsである)。ここで、転圧加工による最終厚みtxを、テーパー部10xs1の厚みtx1より厚くなるようにすれば、テーパー部10xs1が転圧加工されずに残るため、転圧加工で得られた円環材10xsの外円側の厚みが薄くなる。そのため、立ち上がり部形成工程で、立ち上がり部(傾斜部3a、鉛直部3b)をさらに薄くすることができる。
なお、図10の例では、長辺20L2側(厚みt2y)から幅方向内部に向かって一定のテーパーで厚みが薄くなっていて、長辺20L1側で厚みt1yとなる。そして、径差拡大工程で、長辺20L2側の厚い領域が内径側から順次転圧加工を受け、ハブ取り付け部の領域が一定板厚にされると共に、内径を縮めることができる。
例えば、下型400の回転に合わせてスピニングローラ230を回転させつつ円環材10の板厚方向に加圧する。そして、スピニングローラ230を順次円環材の径方向内側又は、及び外側に移動させて、スピニング加工を行う。それによって、より小さな加工力で径差拡大工程を行うことができる。さらに、径差拡大工程にプレス成形で行ってもよい。
例えば、本発明は、ハブ取り付け部となる平面部と、この平面部の周縁から軸方向内側に延びる立ち上がり部とを有するディスクに適用することができ、飾り穴の位置は上記実施形態に限定されない。又、ハブ取り付け部と立ち上がり部の間に、意匠性や強度を向上させるため、各種の凹凸やスポーク部が形成されていてもよい。
3a、3b 立ち上がり部
4 ハブ穴
10、10x 円環材
10a 突合せ部分
10b 円環材の開口(内径)
20、20x 帯板状の素材
20L1 素材のうち厚みの薄い長辺
W 素材の幅方向
Claims (3)
- 帯板状の素材を、その幅方向が径方向となるよう円環状に巻回する巻回工程と、
巻回した前記素材を溶接し、円環材を作成する円環材作成工程と、
前記円環材を板厚方向に薄くし、前記円環材の内径寸法と外径寸法の差を拡大する径差拡大工程と、
該円環材の平面部に対して角度を持った立ち上がり部を形成する立ち上がり部形成工程とを有し、
前記素材は、幅方向に厚みが異なっていて、前記巻回工程で前記素材の厚みの厚い側を内円側に巻回することを特徴とするホイール用ディスクの製造方法。 - 前記径差拡大工程は、前記円環材の内径を小さくする加工を含む請求項1に記載のホイール用ディスクの製造方法。
- 前記巻回工程において、前記素材の幅方向が径方向となるよう円環状に巻回すると共に、螺旋状に巻回し、前記円環状の部分を複数個螺旋状に連続させ、
前記螺旋状に巻回した前記素材を前記ホイール用ディスク1個分ずつに切断し、それぞれ分離した前記円環状部分を得る切断工程をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載のホイール用ディスクの製造方法。
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