以下、図面を参照して発明を実施するための形態に係る熱回収装置、及び冷却システム
について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本件に開示されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等はそれらの記載のみに限定されるものではない。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る冷却システム1の概略構成を示す図である。本実施形態では、冷却システム1を、データセンター内の電子機器(ここでは、ブレードサーバを例とする)の冷却に適用する場合を例に説明する。
データセンターは、例えば、顧客のサーバを預かり、インターネットへの接続回線や保守・運用サービスなどを提供するための施設である。サーバとは、例えば、コンピュータネットワークにおいて、クライアントコンピュータに対して自身の有する機能、データなどを提供するコンピュータをいう。
ブレードサーバは、例えば1枚の基板にコンピュータとして必要な要素を実装したブレードをユニット化した機器である。ブレードサーバの1ユニット当たりに装着されるブレードの各々にはCPU(Central Processing Unit)、ハードディスク、メモリなどが配
置されている。その他、ブレードサーバの筐体側には、通常、ブレードの差込口が並び、各ブレードへの給電・制御ユニットなどが設けられている。
各ブレード内部に配置されるCPU、ハードディスク、メモリなどは、作動時に発熱する発熱体(発熱源)である。ここでは、各ブレード内に設けられたCPUを冷却する場合を例として、本実施形態に係る電子機器の冷却システム1を説明する。
第1実施形態に係る冷却システム1は、吸着式ヒートポンプ2と、冷媒を介して複数の発熱体から熱回収を行い、熱回収により加熱された冷媒を吸着式ヒートポンプ2に供給する熱回収装置3とを含む。吸着式ヒートポンプ2は周知の通り、吸着剤への吸着質の吸着・脱着(脱離)現象に付随して起こる相変化を利用して熱の汲み上げを行なう装置である。本実施形態では、吸着式ヒートポンプ2の冷熱生成能力によって得られた冷熱は冷房出力として外部に取り出され、ブレードサーバが設置されている室空間(空調空間)の空調を行うために利用される。
後述するように、吸着式ヒートポンプ2の作動過程における脱着工程では、吸着剤を加熱して吸着質を蒸発させるための熱源が必要である。そこで、本実施形態では、エネルギーの有効利用の観点から、熱回収装置3によって複数のCPU6から熱回収を行い、その熱を吸着式ヒートポンプ2の作動熱源として再利用することとしている。
熱回収装置3は、冷媒としての循環液が封入され、循環液が循環する循環通路300を有する。そして、循環通路300を循環する循環液を介して複数のCPU6から熱回収を行い、熱回収により加熱された循環液を吸着式ヒートポンプ2に供給する。本実施形態では、循環液に純水を用いているが、例えば不凍液を含んだ水やシリコーンオイル等を用いても良い。また、冷却対象たるCPU6の数は複数であれば特に限定されるものではないが、本実施形態では4つのCPU6(以下、各々のCPUを区別する場合、符号6A〜6Dにて表す)を冷却する場合を例に説明する。また、図中に示した矢印は、上記循環通路や後述する還流通路309内を循環液が流れる方向を模式的に表したものである。
循環通路300は、吸着式ヒートポンプ2の循環液流入口(冷媒流入口)2a及び循環液流出口(冷媒流出口)2bに接続されている。循環通路300には、吸着式ヒートポンプ2の循環液流出口2bから流出した循環液が循環液流入口2aから吸着式ヒートポンプ2へ流入するように循環通路300内の循環液を循環させる循環ポンプ(循環装置)301が設けられている。以下、本明細書中において、「上流」、「下流」とは循環液の流れ
方向を基準としている。そして、本明細書中では、循環通路300における「最上流部」を循環液流出口2bとの接続部とし、「最下流部」を循環液流入口2aとの接続部とする。
循環通路300における循環ポンプ301と循環液流入口2aとの間には、互いに並列に配置された複数の熱回収部302が形成されている。熱回収部302は、循環通路300における循環ポンプ301と循環液流入口2aとの間に形成された分岐部303から分岐し、分岐部303と循環液流入口2aとの間に形成された合流部304において再び合流している。
各熱回収部302には、CPU6から受熱する受熱器305が設けられており、対応するCPU6から熱を回収する。受熱器305は、CPU6と熱的に接触している所謂CPUジャケットであり、CPU6の熱が受熱器305を通過する循環液に伝達される。
各受熱器305は、CPU6ごとに個別に設置されている。そして、各受熱器305において循環液の冷熱によってCPU6が冷却される。これによって、ブレードサーバが設置されている室空間を空調するための空調電力使用量の削減が図られている。以下、循環通路300において、循環液流出口2bと分岐部303との間の部分を「熱回収前通路部306」と称し、循環液流入口2aと合流部304との間の部分を「熱回収後通路部307」と称す。
次に、吸着式ヒートポンプ2について説明する。図2は、第1実施形態に係る吸着式ヒートポンプ2の概略構成を示した図である。吸着式ヒートポンプ2は、第1吸着器201、第2吸着器202、蒸発器203、凝縮器204を主として備えている。これらは何れも内部が大気圧に比べて減圧された状態に保持されている。
第1吸着器201には吸着剤205が、第2吸着器202には吸着剤206が、それぞれ収容されている。そして、第1吸着器201及び第2吸着器202は、吸着熱を放出しつつ吸着剤に吸着質を吸着する「吸着工程」、及び外部の温熱により吸着剤から吸着質を脱着(脱離)する「脱着工程」を、順次繰り返す。
蒸発器203は、内部に収容された吸着質を蒸発させて冷熱を生成すると共に、その冷熱を外部に取り出す。なお、蒸発器203において発生した吸着質の蒸気は、第1吸着器201及び第2吸着器202へと供給される。
凝縮器204は、第1吸着器201及び第2吸着器202から脱着した吸着質の蒸気を外部から供給される冷熱により凝縮させる。また、凝縮器204は、凝縮した吸着質を蒸発器203に供給し、且つ、吸着質の凝縮により得られた温熱を外部へ放出する。
本実施形態において吸着質として水を採用しているが、これに限定されるものではなく、例えばアルコール、アンモニアなど、他の吸着質を採用しても良い。また、吸着剤205,206としてはシリカゲル(例えば、平均粒径600〜800μm程度)を採用しているが、これに限定されるものでなく、例えばゼオライト、活性炭など他の吸着剤を採用しても良い。
第1吸着器201及び第2吸着器202のそれぞれは、蒸発器203と凝縮器204との間に並列に配置されている。第1吸着器201は、第1連通路207を介して蒸発器203と接続され、第2連通路208を介して凝縮器204と接続されている。また、第2吸着器202は、第3連通路209を介して蒸発器203と接続され、第4連通路210を介して凝縮器204と接続されている。
各々の連通路207〜210には第1遮断弁V1〜第4遮断弁V4が設けられている。第1遮断弁V1〜第4遮断弁V4は、制御装置5と電気的に接続されており、制御装置5によってこれらが制御される(電気配線は不図示)。すなわち、制御装置5は、各遮断弁V1〜V4の開閉状態を切り替えることで、連通路207〜210の連通、遮断の状態を切り替え、後述するように第1吸着器201及び第2吸着器202の「吸着工程」、「脱着(再生)工程」を切り替える。なお、蒸発器203と凝縮器204とは、凝縮器204において凝縮した吸着質を蒸発器203に戻すための戻し用通路211によって接続されている。
凝縮器204には、凝縮器204に導入された吸着質の蒸気を凝縮させるための冷熱を供給する熱媒体が封入されている第1熱交換回路212が設けられている。第1熱交換回路212には、凝縮器204内に収容された凝縮器内部熱交換器213、凝縮器204の外部に配置された凝縮器外部熱交換器214、ポンプ215が設けられている。第1熱交換回路212内に封入されている熱媒体は、ポンプ215によって駆動され、第1熱交換回路212内を循環する。また、凝縮器外部熱交換器214の近傍には、凝縮器外部熱交換器214からの放熱を促進するための冷却ファン(図示省略)が配置されている。
蒸発器203には、吸着質が蒸発する際に生成された冷熱を回収するための熱媒体が封入されている第2熱交換回路217が設けられている。第2熱交換回路217には、蒸発器203内に収容された蒸発器内部熱交換器218、及び室空間(空調空間)と熱交換するための室内機219、ポンプ220が設けられている。第2熱交換回路217内に封入されている熱媒体は、ポンプ220によって駆動され、第2熱交換回路217内を循環する。
本実施形態において、第1熱交換回路212(第2熱交換回路217)に封入する熱媒体として水を用いているが、凝縮器204(蒸発器203)内に導入されている吸着質と熱交換の可能な媒体であれば、特に限定されるものではない。
吸着式ヒートポンプ2の内部には、循環液流入口2aにおいて循環通路300の熱回収後通路部307に接続される第1通路228、循環液流出口2bにおいて循環通路300の熱回収前通路部306に接続される第2通路229が設けられている。
第1通路228及び第2通路229は、第1吸着器側通路221及び第2吸着器側通路222を介して連通されている。第1通路228、第1吸着器側通路221、第2吸着器側通路222の各々は、第1切り替え弁V5を介して互いに接続されている。また、第2通路229、第1吸着器側通路221、第2吸着器側通路222の各々は、第2切り替え弁V6を介して互いに接続されている。
第1切り替え弁V5及び第2切り替え弁V6は、いわゆる三方弁である。第1切り替え弁V5は、第1通路228を、第1吸着器側通路221と第2吸着器側通路222の何れか一方と連通させ、他方と遮断させる。第2切り替え弁V6は、第2通路229を、第1吸着器側通路221と第2吸着器側通路222の何れか一方と連通させ、他方と遮断させる。
第1切り替え弁V5及び第2切り替え弁V6は、制御装置5と電気的に接続されており、制御装置5によって制御される(電気配線は不図示)。制御装置5は、循環通路300の熱回収後通路部307から吸着式ヒートポンプ2に流入してくる循環液を第1吸着器側通路221側に導く場合には、第1吸着器側通路221が第1通路228及び第2通路229に連通するように第1切り替え弁V5と第2切り替え弁V6とを制御する。一方、循
環液を第2吸着器側通路222側に導く場合には、制御装置5は、第2吸着器側通路222が第1通路228及び第2通路229に連通するように第1切り替え弁V5と第2切り替え弁V6とを制御する。
以上のように、第1切り替え弁V5及び第2切り替え弁V6を制御することで、循環通路300の熱回収後通路部307を介して供給されると共に、熱回収前通路部306から排出される循環液の流路が切り替えられる。
第1吸着器側通路221における第1吸着器201近傍の部分には、第3切り替え弁V7及び第4切り替え弁V8が配置されている。以下、第1吸着器側通路221において、第3切り替え弁V7及び第4切り替え弁V8の間の部分を「第1吸着器側中間通路221A」、第1切り替え弁V5及び第3切り替え弁V7の間の部分を「第1吸着器側上流通路221B」、第4切り替え弁V8及び第2切り替え弁V6の間の部分を「第1吸着器側下流通路221C」と称呼する。図示のように、第1吸着器側中間通路221Aの一部は、第1吸着器201の内部に形成されている。
一方、第2吸着器側通路222における第2吸着器202近傍の部分には、第5切り替え弁V9及び第6切り替え弁V10が配置されている。以下、第2吸着器側通路222において、第5切り替え弁V9及び第6切り替え弁V10の間の部分を「第2吸着器側中間通路222A」、第1切り替え弁V5及び第5切り替え弁V9の間の部分を「第2吸着器側上流通路222B」、第6切り替え弁V10及び第2切り替え弁V6の間の部分を「第2吸着器側下流通路222C」と称呼する。図示のように、第2吸着器側中間通路222Aの一部は、第2吸着器202の内部に形成されている。
第3切り替え弁V7には、吸着剤205に冷熱を供給する熱媒体を第1吸着器側中間通路221Aへと導く第1熱媒体導入路223が接続されている。また、第4切り替え弁V8には、第1吸着器側中間通路221Aから排出される熱媒体が導かれる第1熱媒体排出路224が接続されている。同様に、第5切り替え弁V9には、吸着剤206に冷熱を供給する熱媒体を第2吸着器側中間通路222Aへと導く第2熱媒体導入路225が接続されている。また、第6切り替え弁V10には、第2吸着器側中間通路222Aから排出される熱媒体が導かれる第2熱媒体排出路226が接続されている。
第3切り替え弁V7〜第6切り替え弁V10は三方弁である。第3切り替え弁V7は、第1吸着器側中間通路221Aを、第1吸着器側上流通路221Bと第1熱媒体導入路223の何れか一方と連通させ、他方と遮断させる。第4切り替え弁V8は、第1吸着器側中間通路221Aを、第1吸着器側下流通路221Cと第1熱媒体排出路224の何れか一方と連通させ、他方と遮断させる。
第5切り替え弁V9は、第2吸着器側中間通路222Aを、第2吸着器側上流通路222Bと第2熱媒体導入路225の何れか一方と連通させ、他方と遮断させる。第6切り替え弁V10は、第2吸着器側中間通路222Aを、第2吸着器側下流通路222Cと第2熱媒体排出路226の何れか一方と連通させ、他方と遮断させる。
第3切り替え弁V7〜第6切り替え弁V10は制御装置5と電気的に接続されており、制御装置5によって制御される(電気配線は不図示)。制御装置5は、第1吸着器側上流通路221Bを流れる循環液を第1吸着器側中間通路221Aに導く場合、第3切り替え弁V7に第1吸着器側中間通路221A及び第1吸着器側上流通路221Bを連通させ、且つ、第4切り替え弁V8に第1吸着器側中間通路221A及び第1吸着器側下流通路221Cを連通させる。
一方、制御装置5は、第1吸着器側中間通路221Aに対して第1熱媒体導入路223から熱媒体を導く場合、第3切り替え弁V7に第1吸着器側中間通路221A及び第1熱媒体導入路223を連通させ、且つ、第4切り替え弁V8に第1吸着器側中間通路221A及び第1熱媒体排出路224を連通させる。
制御装置5は、第2吸着器側上流通路222Bを流れる循環液を第2吸着器側中間通路222Aに導く場合、第5切り替え弁V9に第2吸着器側中間通路222A及び第2吸着器側上流通路221Bを連通させ、且つ、第6切り替え弁V10に第2吸着器側中間通路222A及び第2吸着器側下流通路222Cを連通させる。
一方、制御装置5は、第2吸着器側中間通路222Aに対して第2熱媒体導入路225から熱媒体を導く場合、第5切り替え弁V9に第2吸着器側中間通路222A及び第2熱媒体導入路225を連通させ、且つ、第6切り替え弁V10に第2吸着器側中間通路222A及び第2熱媒体排出路226を連通させる。
吸着剤205,206に冷熱を供給する熱媒体は、第1熱交換回路212内を循環する水を採用しているが、これに限定されるものではない。本実施形態では、凝縮器内部熱交換器213において冷却された後の熱媒体、すなわち凝縮器外部熱交換器214の下流であって且つ凝縮器内部熱交換器213の上流を流れる熱媒体の一部を第1熱交換回路212から取り出し、第1熱媒体導入路223及び第2熱媒体導入路225に導いている。また、第1熱媒体排出路224及び第2熱媒体排出路226を流れる熱媒体は、凝縮器内部熱交換器213の下流であって且つ凝縮器外部熱交換器214の上流に戻される。尚、ここでいう「上流」、「下流」とは、第1熱交換回路212における熱媒体の循環方向を基準としたときの上流、下流を指す。
次に、吸着式ヒートポンプ2の動作について説明する。第1吸着器201と第2吸着器202の各々は、吸着質を吸着剤に吸着させる「吸着工程」、吸着工程において吸着剤に吸着させた吸着質を吸着剤から脱着(脱離)させる「脱着(再生)工程」の各工程を交互に繰り返す。より具体的には、制御装置5は、第1吸着器201が「脱着工程」のときに、第2吸着器202が「吸着工程」となるように各バルブを制御する第1制御と、第1吸着器201が「吸着工程」のときに、第2吸着器202が「脱着工程」となるように各バルブを制御する第2制御と、を交互に繰り返し実行する。
まず、第1制御に係る具体的な制御内容について説明する。制御装置5は、第1遮断弁V1及び第4遮断弁V4を閉止し、且つ、第2遮断弁V2及び第3遮断弁V3を開放する。また、制御装置5は、第1通路228及び第2通路229が第1吸着器側通路221と連通するように、第1切り替え弁V5及び第2切り替え弁V6を制御する。
更に、制御装置5は、第1吸着器側中間通路221Aが、第1吸着器側上流通路221B及び第1吸着器側下流通路221Cと連通するように、第3切り替え弁V7及び第4切り替え弁V8を制御する。また、制御装置5は、第2吸着器側中間通路222Aが、第2熱媒体導入路225及び第2熱媒体排出路226と連通するように、第5切り替え弁V9及び第6切り替え弁V10を制御する。
第1制御に際しては、蒸発器203内の吸着質(水)が蒸発することで蒸気が生成される。この蒸気は、第3遮断弁V3の開操作に伴い第2吸着器202へと流入する。その結果、吸着質の蒸気が吸着剤206に吸着する(吸着工程)。
第2吸着器202の吸着工程において、吸着剤206に吸着質が吸着する際に発熱が起こる。その点、第2熱媒体導入路225から第2吸着器側中間通路222Aへと冷水が供
給される。そのため、吸着剤206を冷水によって冷却することができ、吸着剤206の状態は吸着質の吸着可能な状態に維持される。
また、蒸発器203において吸着質が蒸発する際、気化潜熱の吸収によって冷熱が生成される。この冷熱は、蒸発器内部熱交換器218、第2の熱交換回路217を循環する熱媒体、室内機219によって外部に取り出され、これによって冷房出力が得られる。
一方、各受熱器305における熱回収によって加熱された循環液は、熱回収後通路部307から吸着式ヒートポンプ2に供給され、第1通路228から第1吸着器側通路221に導かれる。そうすると、第1吸着器側中間通路221Aを流れる循環液の温熱により、吸着剤205が加熱される。その結果、第1吸着器201における直近の「吸着工程」で吸着剤205に吸着した吸着質が蒸発し、吸着剤205から吸着質が脱着する(脱着工程)。
第1吸着器201の脱着工程においては、吸着剤205から吸着質が脱離する際に気化潜熱が吸収される。その結果、第1吸着器側中間通路221Aを流れる循環液から熱が奪われ、循環液が冷却される。
尚、第2遮断弁V2の開操作に伴って、吸着剤205から脱離した吸着質は蒸気の状態で凝縮器204へと流入する。そして、凝縮器204に導入された吸着質の蒸気は、熱交換回路212を循環する熱媒体によって冷却されて凝縮し、戻し用通路211を通って蒸発器203に戻される。
次に、第2制御に係る具体的な制御内容について説明する。第2制御の実行に際して、制御装置5は、第2遮断弁V2及び第3遮断弁V3を閉止し、且つ、第1遮断弁V1及び第4遮断弁V4を開放する。また、制御装置5は、第1通路228及び第2通路229が第2吸着器側通路222と連通するように、第1切り替え弁V5及び第2切り替え弁V6を制御する。
更に、制御装置5は、第1吸着器側中間通路221Aが、第1熱媒体導入路223及び第1熱媒体排出路224と連通するように、第3切り替え弁V7及び第4切り替え弁V8を制御する。また、制御装置5は、第2吸着器側中間通路222Aが、第2吸着器側上流通路222B及び第2吸着器側下流通路222Cと連通するように、第5切り替え弁V9及び第6切り替え弁V10を制御する。
これにより、第1制御とは逆に、第1吸着器201が「吸着工程」となり、第2吸着器202が「脱着工程」となる。
すなわち、蒸発器203における吸着質の蒸発に伴い冷熱が生成される。そして、生成された冷熱を外部に取り出すことで冷房出力が得られる。蒸発器203において生成された吸着質の蒸気は、第1遮断弁V1の開操作に伴って第1吸着器201に流入し、吸着剤205に吸着する(吸着工程)。
一方、各受熱器305での熱回収によって加熱された循環液は、熱回収後通路部307から、第1通路228を経由して第2吸着器側通路222に導かれる。そして、第2吸着器側中間通路222Aを流れる循環液の温熱により、吸着剤206が加熱されて該吸着剤206から吸着質が脱着する(脱着工程)。
そして、気化潜熱によって第2吸着器側中間通路222Aを流れる循環液の熱が奪われて循環液が冷却される。尚、第4遮断弁V4の開操作に伴って、吸着剤206から脱離し
た吸着質は蒸気の状態で凝縮器204へと流入する。そして、吸着質の蒸気は、第1熱交換回路212を循環する熱媒体に冷却されて凝縮し、戻し用通路211を通って蒸発器203に戻される。
以上のように、第1吸着器201(第1制御時)及び第2吸着器202(第2制御時)の「脱着工程」では、CPU6からの熱回収によって加熱された循環液の温熱、すなわちブレードサーバ(電子機器)の廃熱が吸着剤205,206から吸着質を脱離させるための熱源として再利用される。
また、吸着剤205,206から脱着した吸着質は、凝縮器204から蒸発器203に戻され、蒸発器203において蒸発する。そして、蒸発器203において吸着質が蒸発する際の気化潜熱により、第2熱交換回路217内の熱媒体が冷却される。これにより、吸着式ヒートポンプ2において冷熱が生成され、その冷熱によって室空間(空調空間)の空調を行うための冷房出力を得ることができる。従って、ブレードサーバ(電子機器)の廃熱は、吸着式ヒートポンプ2の冷熱生成のために利用されることになる。
制御装置5は、前述した第1制御及び第2制御を切り替えることで、第1吸着器201及び第2吸着器202において、吸着工程と脱着工程とを相互に切り替える。そして、第1制御及び第2制御を交互に繰り返し実行することで、吸着式ヒートポンプ2に流入した循環液の冷却と、蒸発器203における冷熱の生成とを連続的に行うことができる。
次に、吸着式ヒートポンプ2に対して加熱した循環液を供給する熱回収装置3に係る制御内容について説明する。熱回収装置3は、複数のCPU6から熱の回収を行うところ、各CPU6の発熱量はその作動状況に左右されるため、CPU6A〜6Dの温度は互いに相違することが想定される。これに対して、吸着式ヒートポンプ2に供給する循環液の温度(以下、「供給循環液温度」という)THwspが過度に低くなると吸着式ヒートポンプ2における冷熱生成能力の低下を招いてしまう。
そこで、制御装置5は、供給循環液温度THwspが許容下限温度THwlm以上に維持されるように、吸着式ヒートポンプ2への循環液の供給を制御する液温維持制御を実行する。なお、許容下限温度THwlmは、吸着式ヒートポンプ2が冷熱生成能力を充分に発揮なし得ると考えられる冷却循環液の下限温度であり、予め経験則などに基づいて設定しておいても良い。
各熱回収部302における受熱器305より下流の部分には、受熱器305より下流側を流れる循環液の温度(以下、「熱回収部循環液温度」と称す)THwcを検出する温度センサ(検温器)308が設けられている。温度センサ308により検出される熱回収部循環液温度THwcは、受熱器305においてCPU6の熱を回収した後の循環液の温度に相当する。各熱回収部302に設けられた温度センサ308の各々は、制御装置5と電気的に接続されており、その出力信号が制御装置5に入力される。
各熱回収部302には、該熱回収部302における受熱器305より下流を流れる循環液(以下、「熱回収後循環液」という)を、該受熱器305より上流側の循環通路300に還流させる還流通路309が設けられている。言い換えると、還流通路309は、循環通路300における循環液流出口2bとの接続部から受熱器305上流側に至るまでの領域のうち、何れかの部位に上記循環液を還流させる。そして、還流通路309は、熱回収部302に対応した数だけ設けられている。
本実施形態では、各還流通路309は、各熱回収部302における受熱器305より下流側の部分と、熱回収前通路部306における循環ポンプ301の上流部に位置する還流
口316とを接続している。この図では、全ての還流通路309を介して熱回収後循環液が一箇所(還流口316)に還流される態様となっているが、上述のように、熱回収後循環液は受熱器305より上流側の循環通路300に還流させれば良い。従って、熱回収後循環液が還流される部位が還流通路309ごとに相違しても良いのは勿論である。
各熱回収部302には、循環液(熱回収後循環液)を、熱回収後通路部307と還流通路309の何れに導くかを切り替える流路切り替え弁310が設けられている。各流路切り替え弁310は制御装置5と電気的に接続されており、制御装置5によって制御される。尚、本実施形態における流路切り替え弁310は、熱回収部302における還流通路309との接続部に設けられた三方弁であるが、他種のバルブを採用しても良い。例えば、循環液の流路の遮断、或いは導通を切り替えるバルブを、熱回収部302における還流通路309との接続部の下流側と、還流通路309のそれぞれに配置しても良い。そして、一方のバルブに熱回収後循環液の流路を遮断させるときには、他方のバルブに熱回収後循環液の流路を導通させるように2つのバルブを制御することで、熱回収後循環液を熱回収後通路部307と還流通路309の何れに導くかを切り替えることができる。
制御装置5は、各温度センサ308の検出温度(熱回収部循環液温度THwc)に応じて、温度センサ308に対応する流路切り替え弁310を制御する。本実施形態においては、流路切り替え弁310及びこれを制御する制御装置5が流路制御装置に対応している。
以下、流路切り替え弁310の制御位置に関して、熱回収部302における流路切り替え弁310の上流部を熱回収後通路部307と連通し、還流通路309と遮断させる制御位置を「第1制御位置」と称す。また、熱回収部302における流路切り替え弁310の上流部を還流通路309と連通し、熱回収後通路部307と遮断させる制御位置を「第2制御位置」と称す。
以下、図3のフローチャートを参照して、制御装置5が実行する液温維持制御の具体的処理内容について説明する。図3は、第1実施形態に係る液温維持制御ルーチンを示したフローチャートである。本ルーチンは、制御装置5に記憶されたプログラムであり、例えばブレードサーバの通電状態において一定周期毎に繰り返し実行される。
ステップS101において、制御装置5は、各温度センサ308の出力信号に基づいて、各熱回収部302に対応した熱回収部循環液温度THwcを検出する。
ステップS102において、制御装置5は、ステップS101で検出した熱回収部循環液温度THwcの各検出値が、規定温度THwsh以上であるか否かを判定する温度判定処理を行い、当該温度判定処理結果を該制御装置5のメモリ(記憶部)に記憶し、或いは温度判定処理結果を更新する。この規定温度THwshは、各熱回収部302から熱回収後通路部307への循環液(熱回収後循環液)の流入、ひいては吸着式ヒートポンプ2への流入を許可するか否かを決定するための基準温度である。
規定温度THwshは、供給循環液温度THwspを許容下限温度THwlm以上に確保するという観点から、経験則や諸条件(例えば、発熱体であるCPU6の数、吸着式ヒートポンプ2の基本性能)などに基づいて、適宜の値に設定することができる。例えば、規定温度THwshは、許容下限温度THwlmと等しい温度に設定されても良いし、許容下限温度THwlmに所定のマージンを加えた温度として設定されても良い。
続いて、ステップS103では、制御装置5は、当該制御装置5のメモリにアクセスし、記憶している温度判定処理結果情報を読み込む。そして、温度判定処理結果に基づいて
各流路切り替え弁310に制御信号を出力する。
制御装置5は、温度センサ308による熱回収部循環液温度THwcの検出値が規定温度THwsh以上の場合には、その温度センサ308に対応する流路切り替え弁310を「第1制御位置」に制御する。その結果、熱回収部循環液温度THwcの検出値が規定温度THwsh以上と判定された熱回収部302を流れる熱回収後循環液が熱回収後通路部307を通じて、吸着式ヒートポンプ2の循環液流入口2aへと導かれる。
一方、制御装置5は、温度センサ308による熱回収部循環液温度THwcの検出値が規定温度THwsh未満の場合には、その温度センサ308に対応する流路切り替え弁310を「第2制御位置」に制御する。その結果、熱回収部循環液温度THwcの検出値が規定温度THwsh未満と判定された熱回収部302を流れる熱回収後循環液は、還流通路309を通じて、熱回収前通路部306に戻される。
ここで、具体例を挙げて上記制御を説明する。CPU6A〜6Dに対応する熱回収部302を、符号302A〜302Dにて表す。また、熱回収部302A〜302Dのそれぞれに対応する熱回収部循環液温度THwcの検出値をTHwcA〜THwcDと表す。
例えば、許容下限温度THwlmが60℃、規定温度THwshが70℃に設定された条件下において、ステップS101で検出された検出値THwcA〜THwcDのそれぞれが75℃、55℃、45℃、70℃であったとする。この場合、THwcA及びTHwcDは規定温度THwsh以上であるため、制御装置5は、熱回収部302A及び302Dに設けられている流路切り替え弁310を「第1制御位置」に制御することになる。
一方、THwcB及びTHwcCは規定温度THwshを下回っているため、熱回収部302B及び302Cを流れる熱回収後循環液を、熱回収部302A及び302Dを流れる熱回収後循環液と熱回収後通路部307で合流させてしまうと、供給循環液温度THwspを許容下限温度THwlm以上の温度に維持することが難しくなる。そこで、制御装置5は、熱回収部302B及び302Cに設けられている流路切り替え弁310を「第2制御位置」に制御することになる。
その結果、熱回収部302Aを流れる熱回収後循環液(THwc=75℃)及び熱回収部302Dを流れる熱回収後循環液(THwc=75℃)のみが熱回収後通路部307に導かれ、該熱回収後通路部307において合流した上で吸着式ヒートポンプ2に供給される。一方、温度の低い熱回収部302B及び302Cを流れる熱回収後循環液は、還流通路309を経由して再び熱回収前通路部306へと還流させられる。熱回収前通路部306へと戻された熱回収後循環液は、還流口316の上流側から流れてくる循環液と混ざりつつ分岐部303に到達した後、何れかの熱回収部302に流入する。そして、このように熱回収部302に再び流入した循環液は、対応する受熱器305を通じてCPU6から熱を奪うことで昇温する。
制御装置5は、ステップS103の処理を終了すると、本ルーチンを一旦終了する。制御装置5は、一定周期毎に本ルーチンを繰り返し実行する。これにより、熱回収部循環液温度THwcの検出値が規定温度THwsh未満の場合に、当該検出値が規定温度THwsh以上となるまで、その熱回収部循環液温度THwcに対応する熱回収部302に設けられている流路切り替え弁310が「第2制御位置」に維持され、その熱回収部302を流れる熱回収後循環液が還流通路309に導かれる。
本実施形態に係る液温維持制御によれば、熱回収部循環液温度THwcが規定温度THwsh以上であると判定された熱回収部302の熱回収後循環液のみを、吸着式ヒートポ
ンプ2に供給することができる。そして、熱回収部循環液温度THwcが規定温度THwshよりも低い場合、受熱器305を含む閉じた経路内(還流通路309→熱回収前通路部306→熱回収部302(受熱器305)→還流通路309)を循環させることで昇温させることができる。これにより、規定温度THwsh以上の温度まで昇温させた熱回収後循環液を吸着式ヒートポンプ2に供給することができる。
従って、液温維持制御によれば、各CPU6における作動状況の違いに起因してその発熱量が変化しても、吸着式ヒートポンプ2に供給される循環液の温度が過度に低くなることが抑制される。より具体的には、供給循環液温度THwspを好適に許容下限温度THwlm以上に確保することができる。従って、各CPU6の作動状況にかかわらず、吸着式ヒートポンプ2の冷熱生成能力が低下することを抑制できる。
尚、本実施形態に係る熱回収装置3は、循環通路300(熱回収前通路部306、分岐部303、熱回収部302、合流部304、熱回収後通路部307、還流口316)、還流通路309、受熱器305、循環ポンプ301、温度センサ308、流路切り替え弁310を含む。また、本実施形態において、循環通路300及び還流通路309は、例えばバイトン製のチューブを採用しているが、これに限定される趣旨ではない。また、循環ポンプ301は、熱回収部302以外であれば、その設置位置を適宜変更することができ、例えば熱回収後通路部307に配置しても良い。
図4は、熱回収装置に係る還流通路の変形配置例を説明する説明図である。図4において、各還流通路309は、対応する熱回収部302における受熱器305より下流側の部分と、(受熱器305より)上流側の部分とを接続している。
この態様によれば、熱回収部302を流れる熱回収後循環液の温度が規定温度THwshより低い場合、循環液を、現在流れている熱回収路302における受熱器305の上流側に還流させることができる。すなわち、還流通路309を介して受熱器305の上流側に還流させられた循環液は、受熱器305を通るたびにCPU6からの熱回収によって確実に昇温する。したがって、規定温度THwsh以上の温度まで上昇した循環液を熱回収後通路部307へと流入させ、他の熱回収部302からの循環液と合流させた上で吸着式ヒートポンプ2へと供給することができる。
また、本実施形態では、熱回収装置3、或いは冷却システム1の適用対象としてブレードサーバを例に説明したが、複数の発熱体(発熱源)を有する他の電子機器に適用することができる。また、熱回収装置3を、単一のブレード内に設けられている複数の発熱体(例えば、CPU、グラフィックボード、ハードディスク等)から個別に熱を回収する装置として実現することもできる。CPU、グラフィックボード、ハードディスク等の発熱状況は互いに相違するため、本熱回収装置3を適用することで吸着式ヒートポンプ2の作動安定性が向上する。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態に係る冷却システム1のハードウェア構成は第1実施形態と共通する。以下、第2実施形態に係る液温維持制御において、第1実施形態と相違する点を中心に説明する。
第1実施形態で説明したように、液温維持制御は原則的に、熱回収部循環液温度THwcが規定温度THwshよりも低い場合、対応する熱回収部302を流れる循環液の吸着式ヒートポンプ2への流入が禁止される。しかし、場合によっては、全ての熱回収部302において、熱回収部循環液温度THwcが規定温度THwsh未満となる場合も想定され得る。このような場合にまで上記原則通りに制御すると、吸着式ヒートポンプ2を作動
させるための循環液が吸着式ヒートポンプ2に一切供給されなくなるという事態を招いてしまう。
そこで、本実施形態に係る液温維持制御においては、制御装置5は、全ての温度センサ308による熱回収部循環液温度THwcの検出値が規定温度THwsh未満の場合、最も高い検出値を検出した温度センサ308が設けられている熱回収部302を流れる熱回収後循環液のみを吸着式ヒートポンプ2の循環液流入口2aに導き、他(残り)の熱回収部302を流れる熱回収後循環液を還流通路309に導くこととした。
図5は、第2実施形態に係る液温維持制御ルーチンを示したフローチャートである。本ルーチンも、制御装置5に記憶されたプログラムであり、例えばブレードサーバの通電状態において一定周期毎に繰り返し実行される。図3と共通する処理内容については、同一の参照番号を付すことでその説明を省略する。
制御装置5は、ステップS102の処理が終了すると、ステップS201に進む。ステップS201において、制御装置5は、ステップS102において記憶した判定処理結果情報を読み込み、全ての温度センサ308による熱回収部循環液温度THwcの検出値が規定温度THwsh未満であるか否かを判定する。肯定判定された場合(S201;Yes)にはステップS202に進む。一方、否定判定された場合(S201;No)、すなわち何れかの熱回収部循環液温度THwcの検出値が規定温度THwsh以上であった場合には、既述のステップS103に進む。ステップS103の処理が終了すると、制御装置5は本ルーチンを一旦終了する。
ステップS202において、制御装置5は、最も高い検出値を検出した温度センサ(以下、「最高出力センサ」という)308を特定する。続くステップS203において、制御装置5は、ステップS202で特定した最高出力センサに対応する熱回収部302に配置されている流路切り替え弁310を「第1制御位置」に制御する。そして、他(残り)の熱回収部302に配置されている流路切り替え弁310を「第2制御位置」に制御する。本ステップの処理を終了すると、制御装置5は、本ルーチンを一旦終了する。
以上述べたように、本制御によれば、全ての熱回収部302を流れる熱回収後循環液の温度が規定温度THwshより低い場合であっても、吸着式ヒートポンプ2の作動熱源たる循環液が吸着式ヒートポンプ2に一切供給されなくなるという事態を回避できる。その際に、熱回収部302を流れる熱回収後循環液のうち、最も温度の高い循環液が吸着式ヒートポンプ2に供給されるので、吸着式ヒートポンプ2の作動安定性を可及的に維持することができる。
また、本制御によれば、熱回収後通路部307における循環液の流れが停止することがなく循環通路300内に急激な圧力変化が起こることがない。そのため、ウォーターハンマ(水撃作用)の発生を抑止できる。従って、ウォーターハンマに起因する衝撃により、熱回収後通路部307及び熱回収部302の接続部等が損傷を受けて循環液が外部に漏れたり、吸着式ヒートポンプ2が損傷することを抑止できる。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。図6は、第3実施形態に係る冷却システム10の概略構成を示す図である。図1と共通する部材、装置については、共通の参照符号を付すことで詳しい説明を省略する。
本実施形態に係る冷却システム10は、複数の吸着式ヒートポンプを備える。ここでは、冷却システム10が第1及び第2の吸着式ヒートポンプ20,21を備える場合を例に
説明する。尚、第1及び第2の吸着式ヒートポンプ20及び21のそれぞれは、第1実施形態に係る吸着式ヒートポンプ2と同等である。
図6では、熱回収後通路部307及び熱回収前通路部306には第1の吸着式ヒートポンプ20が接続されている。熱回収後通路部307の途中に形成された第2の分岐部311には第1の吸着式ヒートポンプ20をバイパス(迂回)するバイパス通路部312の一端が接続され、バイパス通路部312の他端は熱回収前通路部306の途中に形成された第2の合流部313に接続されている。そして、バイパス通路部312の途中には、第2の吸着式ヒートポンプ21が設けられている。
バイパス通路部312は、循環液が循環する循環通路300の一部であり、循環通路300には第1及び第2の吸着式ヒートポンプ20,21が並列に接続されている。第2の分岐部311には、第2の分岐部311の上流側から流れてくる循環液の流路を変更する流路変更弁314が設けられている。
流路変更弁314は、熱回収後通路部30における分岐部311の上流部が該分岐部311の下流部のみと連通する「第1の連通状態」、分岐部311の上流部がバイパス通路部312のみと連通する「第2の連通状態」、分岐部311の上流部、バイパス通路部312、分岐部311の下流部の全てが連通する「第3の連通状態」の何れかに、循環液の流路を切り替える。流路変更弁314は電気配線を介して制御装置5と接続されており、制御装置5によって制御される。
流路変更弁314が循環液の流路を「第1の連通状態」に切り替えると熱回収部302から流れてくる循環液の全てが第1の吸着式ヒートポンプ20に流入し、「第2の連通状態」に切り替えると同循環液の全てが第2の吸着式ヒートポンプ21に流入する。また、流路変更弁314が循環液の流路を「第3の連通状態」に切り替えると、熱回収部302から流れてくる循環液が第1及び第2の吸着式ヒートポンプ20,21の双方に流入する。
第1及び第2の吸着式ヒートポンプ20,21は、図2で説明した吸着式ヒートポンプ2と同様に、第1制御及び第2制御が交互に行われる。そのため、各吸着式ヒートポンプ20,21の第1吸着器201及び第2吸着器202においては、吸着工程と脱着工程とが交互に繰り返し行われる。より詳しくは、各吸着式ヒートポンプ20,21において、第1制御の実施時に、第1吸着器201で脱着工程が行われ、第2吸着器202で吸着工程が行われる。また、第2制御の実施時に、第1吸着器201で吸着工程が行われ、第2吸着器202で脱着工程が行われる。
ところで、CPU6からの熱回収により加熱された循環液の温熱は、各吸着式ヒートポンプ20,21における第1吸着器201又は第2吸着器202の脱着工程時に利用される。従って、各吸着式ヒートポンプ20,21のうち、第1吸着器201と第2吸着器202の少なくとも何れかが「吸着工程が終了している状態」になっていないと、脱着工程に移行することができず、その状態で循環液を供給してもその温熱を有効に利用することができない。
そこで、制御装置5は、吸着工程が終了している状態の吸着器を有する吸着式ヒートポンプへと熱回収部302から流れてくる循環液が導かれるように、流路変更弁314を制御する流路変更制御を行うこととした。ここでいう、「吸着工程が終了している状態」とは、吸着工程が終了してから、次の脱着工程が終了するまでの状態を意味する。
本実施形態に係る流路変更制御をより詳しく説明する。第1吸着器201及び第2吸着
器202の何れもが同時期に「吸着工程が終了していない状態」となる一因として、例えば、吸着剤205(206)への吸着質の吸着速度と、脱離速度の相違が挙げられる。
そして、吸着質の吸着速度及び脱離速度の差に起因して、第1制御では、第1吸着器201における脱着工程の終期よりも、第2吸着器202における吸着工程の終期が遅くなる場合がある。そうすると、第1吸着器201での脱着工程が終了してから第2吸着器202での吸着工程が終了するまでの期間(以下、「第1タイムラグ期間」という)に亘り、第1吸着器201及び第2吸着器202の何れもが「吸着工程が終了していない状態」に維持されてしまう。
一方、第2制御においては、第2吸着器202における脱着工程の終期よりも、第1吸着器201における吸着工程の終期が遅くなる場合がある。そうすると、第2吸着器202での脱着工程が終了してから第1吸着器201での吸着工程が終了するまでの期間(以下、「第2タイムラグ期間」という)に亘り、第1吸着器201及び第2吸着器202の何れもが「吸着工程が終了していない状態」に維持されてしまう。
そこで、第1の吸着式ヒートポンプ20に対する第1制御に際して第1タイムラグ期間(第2制御に際して第2タイムラグ期間)が生じる場合、制御装置5は、第1タイムラグ期間(第2タイムラグ期間)に亘って、流路変更弁314に循環液の流路を「第2の連通状態」に切り替えさせる。これによれば、第1の吸着式ヒートポンプ20における第1吸着器201及び第2吸着器202の何れもが同時に「吸着工程が終了していない状態」となる期間に亘り、熱回収部302から流れてくる循環液の全てを第2の吸着式ヒートポンプ21に供給することができる。
一方、第2の吸着式ヒートポンプ21に対する第1制御に際して第1タイムラグ期間(第2制御に際して第2タイムラグ期間)が生じる場合、制御装置5は、第1タイムラグ期間(第2タイムラグ期間)に亘って、流路変更弁314に循環液の流路を「第1の連通状態」に切り替えさせる。これによれば、第2の吸着式ヒートポンプ21における第1吸着器201及び第2吸着器202の何れもが同時に「吸着工程が終了していない状態」となる期間に亘り、熱回収部302から流れてくる循環液の全てを第1の吸着式ヒートポンプ20に供給することができる。
本実施形態に係る流路変更制御によれば、CPU6から熱回収した循環液の温熱が無駄になることを抑制し、より一層の有効活用を図ることができる。なお、第1及び第2の吸着式ヒートポンプ20,21の何れもが第1及び第2タイムラグ期間に該当しない期間、すなわち、第1吸着器201及び第2吸着器202の何れかが「吸着工程が終了している状態」となっている場合、制御装置5は、流路変更弁314に循環液の流路を「第3の連通状態」に切り替えさせる。これにより、第1及び第2の吸着式ヒートポンプ20,21の双方に循環液が供給され、脱着工程を円滑に行うことができる。本実施形態においては、流路変更弁314及びこれを制御する制御装置5が第2の流路制御装置に対応している。
本実施形態に冷却システム10は、本旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得る。例えば、冷却システム10は、3つ以上の吸着式ヒートポンプを備えても良い。例えば、吸着式ヒートポンプの配置数を増やすほど、第2の分岐部311から分岐して第2の合流部313で合流するバイパス通路部の数を増やし、各バイパス通路部に吸着式ヒートポンプを配置しても良い。