近年オゾン(元素記号:O2)の利用が、その強い酸化力を利用して上下水処理を始めとして種々の分野で進展している。中でも、半導体素子の製造分野では、Siウェーハ洗浄やTEOS−CVD(Tetra Ethyl Ortho Silicate−Chemical Vapor Deposition)への適用が検討されつつある。Siウェーハ洗浄は、オゾンガスを純水に溶かしたオゾン水を洗浄液として用いるもので、希ふっ酸水溶液等と併用することでSiウェーハ上の重金属や有機物を除去できることが発表されている(非特許文献1)。TEOS−CVDは半導体素子を多層配線化する際の層間絶縁膜の形成に用いられ、電極によるウェーハ表面の凹凸を絶縁膜で平坦化できることが特長である。このTEOS−CVDにオゾンを添加することによって平坦化の性能が向上することが報告されている(非特許文献2)。
これらは10%程度の比較的低濃度のオゾンガスを利用した例であるが、80%以上の比較的高濃度のオゾンガスを利用することで従来のオゾンガス利用では考えられなかった新たな応用の可能性が指摘され始めている。一例を挙げれば、特許文献1(特開平8−335576号公報)で開示されているSi半導体の酸化膜形成がある。この公報によれば、従来の熱酸化法では為し得ない比較的低温での酸化膜形成が可能で、亜酸化層や欠陥構造の少ない良質の酸化膜の形成が可能であることなどが紹介されている。
ところで、オゾンガスの生成には一般に無声放電方式が用いられる。これは放電により酸素ガスからオゾンと酸素の混合ガスを発生させるもので、発生効率の限度と爆発の危険性のため、常温常圧下で約10体積%以上のオゾンガスを生成することは困難であった。そこで、発生したオゾンガスを一旦液化して、その後に気化させることにより80%以上の高濃度オゾンガスを生成する方法が特許文献2(特公平5−17164号公報)で紹介されている。この方法について図9及び図10を参照しながら説明する。
液体オゾン製造装置11は図9に示されたようにオゾンガス発生排気装置51とこの装置から供給されたオゾンを液化する液体オゾン生成装置52から構成されている。酸素ボンベ53から圧力調整バルブ54を介して酸素ガスはオゾナイザー55に供される。オゾナイザー55では酸素ガスが無声放電によりオゾンガスが混合されたオゾン含有酸素ガスとなる。このオゾン含有酸素ガスは、流量を制御するためのマスフローコントローラ56、オゾン含有ガス中の微粒子を除去する微粒子除去フィルター57そして流量調整バルブ58を介して、オゾンガスを液化する液体オゾン生成装置52に導入される。
液体オゾン生成装置52では図10に示されたようにオゾンガス発生排気装置51から供されたオゾン含有酸素ガスがオゾン含有酸素ガス導入管59を介してオゾンベッセル60に導入される。オゾンベッセル60は図9に示されたコンプレッサー61によって駆動している冷凍機62によって予め冷却されたコールドヘッド63に熱的に結合されている。オゾンベッセル60はコールドヘッド63に設置されている。オゾンベッセル60は温度制御装置64によって0.1K以内の温度精度で精密に温度を制御可能であり、80K〜100Kの低温度に保たれている。コールドヘッド63には温度センサー65及びヒータ66が具備されている。温度制御装置64は温度センサー65によって測定された値に基づきヒータ66を制御する。
オゾンガスの液化の原理は、オゾンと酸素の蒸気圧の差によってオゾンガスだけを液化するものである。例えば、1気圧のもと、オゾンの沸点は161Kであるが、酸素の沸点は90Kである。したがって、90K以上161K未満の温度に冷却すれば、オゾンは大部分が液体、酸素は大部分が気体状態となるのでオゾンだけを液体として分離できる。実際には高濃度オゾンの爆発性に対する安全上から減圧条件で取り扱うので、その際の温度と圧力条件下でのオゾンと酸素の蒸気圧の差で分離条件が決まる。例えば、温度90Kで圧力10mmHg(=13.3hPa)の場合を考えると、90Kではオゾンの蒸気圧はほぼ0mmHg(=0Pa)だが、酸素は約690mmHg(=918hPa)となりオゾンだけがこの条件下で液化される。
オゾンベッセル60ではこのように冷却された温度でのオゾンと酸素の蒸気圧の差によってオゾンガスだけを液化する。オゾンガスを液化する時はバルブ62が閉じられ、オゾンキラー70につながるバルブ69を開いた状態とする。オゾンベッセル60に接続されたオゾン排出管67とバルブ69を通った液化されない酸素ガスはオゾンキラー70に導入される。オゾンキラー70は前記酸素ガスに若干残留するオゾンガスを加熱して酸素に変える。オゾンキラー70で加熱された酸素ガスは冷却のために真空計68の監視のもとでガス冷却器71及び液体窒素トラップ72を経て真空ポンプ73により外部へ排出される。液体窒素トラップ72は真空ポンプ73からの炭化物などによるオゾンベッセル60への汚染や混入を防ぐ。
オゾンベッセル60内で液化された液体オゾンを酸化処理容器75内で酸化等の使用目的に利用する時は流量調整バルブ58及びバルブ69が閉じられる一方でバルブ62を開に設定される。オゾンベッセル60の温度はヒータ66によって加温される。この加温によって液体オゾンが気化して得られたオゾンガスはバルブ74が開に設定されたオゾン排出管67を介して酸化処理容器75に供給される。液体オゾン若しくは高濃度のオゾンガスは爆発性を有するので安全弁76は万一の場合にガスを排出する。
但し、図9及び図10に示された液体オゾン生成装置では、液体オゾンの生成時と高濃度オゾンガスの供給時にバルブの切換えを行う必要があり、液体オゾンの生成しながらの高濃度オゾンガス供給を行うことができない。
そこで、連続した高濃度オゾンガス供給を行うためには図11及び図12に示したマルチベッセル構造を採ることが考えられる。両者ともに、高濃度オゾンガスの連続供給を3台のオゾンチャンバー81で実現する。図11の装置システムは冷却用金属ブロック82とコールドヘッド83とが単一となっている。一方、図12の装置システムは、冷却用金属ブロック82とコールドヘッド83をオゾンチャンバー81別に設けた分割構成とする。いずれのシステムにおいてコールドヘッド83は冷却機84に接続されている。これらのマルチベッセル構造によれば単一のオゾンチャンバー81から濃縮オゾンを供給しつづけ、これに並行して残りのオゾンチャンバー81では液体オゾンを生成しておくことができる。ここで、液体オゾン生成状態と濃縮オゾンガス供給状態では、オゾンチャンバー81に対して異なる温度制御が必要となる。
図13はオゾンチャンバー81a,81b,81cの温度制御タイムチャートを示す。オゾンチャンバー81a,81b,81cは互いに異なる時間にオゾン供給と廃棄及び蓄積のサイクルを有しており連続的に温度制御される。このような温度制御を必要とするのでコールドヘッド等を一体構成とする図11の装置システムではガス爆発を防止ししかもガスの供給と蓄積に適した温度制御が難しくなる。この点、図12の装置システムは個々のオゾンチャンバー81に対して個別にコールドヘッド82を具備させているので、温度制御を容易にする。しかし、この方式は分割構造であるので、コールドヘッド81そのものを個別構造とする必要がある。また、冷却機から個々のコールドヘッド81への配管も個別の経路で設ける必要があり、装置の大型化やコストアップとなる。
そこで、高濃度オゾンガスの連続供給が可能なマルチベッセル構造としながら、温度制御を容易にし、しかも装置の小型化及びコストダウンを図ることができるオゾン供給装置として特許文献3に開示された可変抵抗ブロックを備えたものがある。このオゾン供給装置は単一の冷却器と複数のオゾンベッセルとの間に熱抵抗可変媒体(Heガス等の熱伝導率の高いガス)が給排気される筐体を配置して単一の冷却器によって個々のオゾンベッセル内で異なる工程(例えばオゾンの液化、供給、廃棄の工程)を実現する。例えば、オゾンベッセル内でオゾンガスが液化される工程では可変抵抗ブロック内にHeガスが供されて前記オゾンベッセルと冷凍器との熱抵抗が低く設定されて前記オゾンベッセル内の温度はオゾンの液化温度である90K前後に制御される。一方、オゾンが供給及び廃棄される工程では可変熱抵抗ブロックからHeガスが真空排気され前記熱抵抗が高く設定されて前記オゾンベッセル内の温度は130K前後に制御される。
連続的にオゾンガスを発生させる場合、オゾン液化工程のベッセルはオゾンの液化、供給、廃棄の工程を繰り返しており、液化工程のベッセルの温度は低温に保たれたままである。例えば、90K〜140Kに保持されている。液化するオゾン酸素混合ガス中にはオゾン、酸素以外にも無声放電でオゾンガスを生成する際に、微量であるがH2OやCO2が発生する。これらのガスの蒸気圧が90K〜140Kの範囲では低く、連続的に液体オゾンを蓄積する工程で、オゾンベッセル内に液化して蓄積する。図14は蓄積、供給を100回繰り返した後にオゾンベッセル内に残留していたガスを昇温脱離法により調べた結果を示した特性図である。CO2とH2Oが蓄積していたことが確認できる。
これらのガスが液化工程のベッセルに蓄積していくにつれ、液体オゾンガスの蓄積速度が低下することが確認された。図15には液体オゾン蓄積回数と液化率(オゾン酸素混合ガスから液体オゾンとして貯蔵されたオゾンガスの割合)の変化が開示されている。オゾン液化工程のベッセルにオゾナイザーからのガスを導入する前に120K程度に予備冷却するチェンバーを設け、オゾンガスより蒸気圧の小さいガス(CO2、H2Oガス等)をトラップするような構造を設けたところ下記のように蓄積工程の繰り返しに伴う液化率の低下速度は抑えられる。但し、この方法でも繰り返し蓄積による液化率の低下は避けられない。
また、積算蓄積回数が増えるにつれて、供給オゾンガス中のオゾン濃度が減少することが分かった。図16(a)は1回目の蓄積工程を経た供給ガスの質量分析スペクトルである。図16(b)は100回目の蓄積工程を経た供給ガスの質量分析スペクトルである。これらのデータを比較すると100回目の蓄積工程を経た供給ガスの重量分析スペクトルは1回目の蓄積工程を経た供給ガスの重量分析スペクトルに比べm/e+=48のスペクトルの減少が確認できる。すなわち、CO2やH2O等の不純物がベッセル内に蓄積するに従い、液体オゾンの蓄積速度が低下するだけでなく、液体オゾンから気化するオゾンガスの濃度も低下することも分かった。但し、100回の蓄積工程、供給工程の繰り返しの後も、オゾンガス中のCO2、H2O等の不純物ガス量の増大は起きていないことが確認できる。すなわち、気化されるガスは低不純物が保たれている。
一方、無声放電式のオゾンガス発生法において、原料ガスに高純度酸素ガスに加え高純度窒素ガスを数%添加することにより、オゾンガスの発生効率が上昇することが知られている。すなわち、窒素ガスを添加するオゾンガス発生器を液体オゾン貯蔵ベッセルに導入してやることにより、一定の液化率の場合、液体オゾンの蓄積速度が上昇するので、高濃度オゾンガス発生装置としての連続オゾンガス流量も増大することになり、装置のパフォーマンスの向上が実現できる。しかし、この場合、H2OやCO2に加え、微量ではあるが窒素酸化物(NO、NO2やN2O)も液化工程のベッセルにオゾンガスと一緒に導入される。
図17は前記ベッセルに導入されるガスの蒸気圧を示した特性図である。N2OやNO2ガスは蒸気圧が低いため、CO2やH2Oガスと同様にベッセルに蓄積する可能性がある。上記と同様、繰り返し蓄積及び供給により、液体オゾンの蓄積速度の低下及び供給オゾンガスの濃度の低下が起きる可能性がある。また、窒素酸化物はH2Oと反応して硝酸を形成、ベッセルの腐食の原因となるため、定期的に不純物ガスを排出する工程が必要となる。
このことから、液化工程を経たベッセルから蓄積した不純物分子を除外する工程が必要となる。但し、全不純物ガスが気化する温度である250K以上にベッセル温度を上昇させる工程をオゾンの蓄積、供給、廃棄の工程を有するタイムチャートに定期的に組み込むのは有利ではない。なぜなら、一冷却機マルチベッセル方式の場合、他のベッセル(90K〜140K)の温度から大きく離れているため、同時にこれらの温度を実現しようとした場合、液体オゾン貯留ベッセル間及び各オゾン貯留ベッセルと冷凍器の間の熱抵抗のダイナミックレンジ(熱抵抗の最大値と最小値の差)を大きくする必要があり、熱設計上難しくなる。また、ベッセルの加熱と冷却の温度範囲が広いほど、温度上昇及び冷却に時間がかかり、この過程で時間的ロスが発生する。すなわち、連続発生装置としてのオゾンガス供給流量が低下する。また、温度スイングが大きいほどベッセルに熱的負荷が蓄積しやすく、ベッセルの長期的な信頼性が低下する懸念がある。したがって、不純物ガスの除外工程の温度の制御を他の工程の温度範囲から離れていない温度で短時間に行なうことが望ましい。また、不純物脱ガスの除外工程のタイミングをセンサー等で把握する手法があれば無駄な脱ガスを行なうことによる時間的ロスを省くことができる。
以上のことから他のシーケンスの温度範囲内で溜まった不純物をタイムリーに高速に廃棄できる手段がオゾンの高速蓄積と高純度(低不純物)オゾンガスの供給を継続するために必要となる。また、連続発生オゾンガス流量を高める観点から、不純物ガスの除外を短時間にタイムリーに行なうこと以外に、液体オゾンの蓄積速度の向上、蓄積工程から供給工程の開始、供給(または廃棄)工程から蓄積工程の開始等の各工程が切り替わる時間をできるだけ短縮できることが望ましい。
そこで、請求項1のオゾン供給装置は、オゾン含有ガスが供されると共に液体オゾンを貯留するベッセルと、このベッセル内で赤外光領域の光を照射する光源とを備え、前記光源は発光の出力を調整して前記ベッセル内の圧力を調節することよりオゾンの気化量を制御する。
この請求項1の発明は以下の作用を奏する。
前記発明に係るベッセル内の光源は赤外光領域の光の出力の調整が可能であるので前記ベッセル内の任意のオゾン圧力がより俊敏に得られる。特に、前記ベッセル内の液体オゾンの表面温度を局所的に上昇させることができるので、高い圧力が瞬間的に得られる。
前記光源か供給される熱により前記ベッセルの内面のみが局所的に加熱されるので前記内面に吸着した不純物ガスは効率的に除去される。
前記ベッセル内で液体オゾンを気化する場合は、前記光源の発光の出力を調整することでオゾンの蒸気圧を制御できる。尚、外部からの加熱手段による前記ベッセル全体の温度を制御する場合でも、前記光源の出力の調整によって気化量を制御できる。
前記光源から供給される熱によって液体オゾンを廃棄する時間の短縮が可能となる。オゾンの供給及び廃棄は前記光源からの熱で制御できるので必要以外の部分(例えば液体オゾンの液面より上のベッセル内壁)の温度は低温に保持できる。これによりオゾンが廃棄及び供給された後に前記ベッセルの温度が冷却される時間(蓄積準備時間)が短縮される。結果、連続発生できるオゾンガス流量が増大する。
また、前記ベッセルは前記オゾン含有ガスが供される区画と前記液体オゾンが貯留される区画に区分すると共に前記光源の光の照射を受けてオゾンより蒸気圧を有する不純物をトラップする隔壁ブロックを備え、前記光源は前記オゾン含有ガスが供される区画の圧力値に基づき発光の出力を調整して前記隔壁ブロックの温度を制御する。
前記ベッセルが具備されたことにより、先に述べた作用に加えて以下の作用を奏する。
隔壁ブロックの温度が制御されることにより、オゾン含有ガスが供される区画の蒸気圧が調節されて前記オゾン含有ガスに含まれたオゾン、酸素以外の不純物が効率的に前記隔壁ブロックにトラップされる。したがって、前記ベッセル内の不純物ガスの除去を行なう頻度が軽減される。
前記光源の出力調整により、隔壁ブロックと液体オゾン貯蔵部のそれぞれの温度制御を独立して行えるので、ベッセルの外部からヒーター等でベッセルの温度(オゾン圧力)の調整を行なった加熱に比べ、俊敏にオゾン圧力の変化を実現できる。
前記隔壁ブロックに吸着した不純物ガスを除外している過程でオゾンガスの供給が可能なので、液体オゾンの貯留及びオゾンガスの排気のサイクルが短縮化される。
前記隔壁ブロックは液体オゾン貯蔵量の上限センサーとしても機能する。すなわち、液体オゾンの残量が常に正確に把握できる。したがって、不必要に多量の液体オゾンを貯めることなく、装置の安全性が高まる。
前記隔壁ブロックはオゾンベッセルに比べて熱容量の小さい材料で構成すると、より少ない熱で不純物の気化が行なえる。さらに、前記隔壁ブロックは液体オゾン貯蔵部の上流側に配置されるようにすると、H2O、NOx等の不純物が液体オゾン貯蔵部ではなく前記隔壁ブロックにトラップされるので、ベッセル内面の腐食が起こらない。
請求項2のオゾン供給装置は、請求項1のオゾン供給装置において、前記液体オゾンが貯留される区画に紫外線領域の光を照射する光源を備える。
この請求項2の発明によれば、先に述べた請求項1の発明の作用に加えて、紫外線照射によりオゾンガスを酸素に分解でき、安全に高速に液体オゾンを廃棄できる。なお、ここで照射される紫外線としては、例えば波長210〜300nmの範囲であることが挙げられる。
請求項3のオゾン供給装置は、請求項2のオゾン供給装置において、前記紫外光線領域の光が照射された区画内の照度を検出する照度検出手段を備え、この照度検出手段によって検出された照度に基づき前記区画内のオゾンガス濃度が算出される。
この請求項3の発明によれば、液体オゾンから気化したオゾンガスの濃度が測定されるので、先に述べた請求項2の発明の作用に加えて、不純物の蓄積により気化したオゾンガスの濃度が低下していないか確認できる。すなわち、前記ベッセル内の不純物ガスを除去するタイミングの把握が可能となり、無駄なくタイムリーにベッセル内の不純物ガスを取り除くことができる。
請求項4のオゾン供給装置は、請求項1のオゾン供給装置において、前記隔壁ブロックは器状に形成され、その内面には複数のフィンを備える。
この請求項4の発明によれば、先に述べた請求項1の発明の作用に加えて、オゾンと蒸気圧の異なる不純物ガス成分をより確実に分離できると共に前記器状の隔壁ブロックの表面積が高まりオゾンと蒸気圧の異なる不純物ガス成分の吸着効率が高まる。
請求項5のオゾン供給装置は、請求項4のオゾン供給装置において、前記光源は前記赤外線領域の光を透過する材料からなる照射筒に収納され、この照射筒は外面に複数のフィンを備える。
この請求項5の発明によれば、先に述べた請求項4の発明の作用に加えて、前記照射筒によって前記光源が保護される。また、前記照射筒の外面は複数のフィンによって表面積が広く確保されており、不純物ガス成分の吸着効率が高まり、オゾンの純度が高まる。
請求項6のオゾン供給装置は、請求項1のオゾン供給装置において、前記オゾン含有ガスが供される区画と前記液体オゾンが貯留される区画とを連通させる配管を備える共に前記配管には前記両者のうちいずれかの区画内の圧力を計測する圧力計を備え、前記光源は前記圧力計によって計測された前記いずれかの圧力値に基づいて発光の出力を調節する。
この請求項6の発明によれば、前記圧力計が設けられたことにより、先に述べた請求項1の発明の作用に加えて、液体オゾン蓄積時の圧力に基づき効率よくオゾンガス以外の不純物が前記隔壁ブロックでトラップされる。特に前記圧力計によって計測された圧力値によって隔壁ブロック内でオゾン以外の不純物が分留される共に前記隔壁ブロック外でオゾンガスのみが分留される前記光源の照射条件が明らかになる。また、前記液体オゾンを蓄積する時の前記光源の照射条件が明らかになる。
請求項7のオゾン供給装置は、請求項6のオゾン供給装置において、前記光源は液体オゾンの蓄積工程時に前記オゾンガス濃度の値に基づき発光の出力を調節することにより前記ベッセル内の酸素オゾン混合ガスの排気量を調整する。
この請求項7の発明によれば、先に述べた請求項6の発明の作用に加えて、効率的且つ任意にオゾンガスをトラップできる。例えば前記オゾンガス濃度が最小となるように排気量(区画の圧力)を設定することで、オゾンガスのトラップ効果が最大となる。
請求項8のオゾン供給装置は、請求項6のオゾン供給装置において、前記光源は前記ベッセル内のオゾンの廃棄工程時に前記オゾンガス濃度の値に基づき発光の出力を調節する。
この請求項8の発明によれば、先に述べた請求項6の発明の作用に加えて、前記ベッセルに滞留している不純物濃度を把握できる。
請求項1から8のいずれかのオゾン供給装置において、前記光源としては、請求項9のオゾン供給装置のように、前記赤外線領域の光として波長400nmより長い波長を有する光を発するものが挙げられる。
したがって、以上の発明によれば連続運転に伴う液体オゾンガスの蓄積速度の低下及び供給オゾンガスの純度の低下(不純物濃度の上昇)を防止できる。これによりオゾン蓄積の工程からオゾン供給の工程への切り替え時間、オゾン廃棄の工程からオゾン蓄積の工程への切り替え時間が短縮されてオゾンガスの連続発生流量が増大する。
図1は発明の実施形態に係るオゾン供給装置1の構成図である。
オゾン供給装置1は液体オゾンを貯蔵すると共にオゾンが減圧排気されるベッセル10内に赤外光領域の光を照射する光源11を備えている。ベッセル10はその粗上半分が室温の外気に曝される一方で粗下半分が伝熱ブロック12内に配置されている。これによりベッセル10内に室温領域と熱伝領域が形成されている。
ベッセル10はアルミナ、ガラス(石英)、ステンレスに例示されるようなオゾンに対して不活性な材料すなわちオゾンにより酸化されて物性が変化しない材料からなる。ベッセル10の外気に暴露される箇所には圧力計13及び配管類が具備される。圧力計13は液体オゾンの蓄積、高純度オゾンガスの供給、余剰液体オゾンの廃棄、不純物ガスの排出を制御するためにベッセル10内の圧力を監視する。配管14はオゾン含有ガスを導入するため配管である。配管14にはオゾン含有ガスの導入を制御するためのバルブ15が設置されている。また、配管14にはベッセル10内の不純物ガスを排出するための配管16が接続されている。配管16には不純物ガスの排出を制御するためのバルブ17が設置されている。また、配管18はベッセル10内の高純度ガスを系外に供給するための配管である。配管18には高純度ガスの排出を制御するためのバルブ19が設置されている。また、配管18にはベッセル10内のオゾンガスを廃棄するための配管20が接続されている。配管20にはオゾンガスの廃棄を制御するためのバルブ21が設置されている。以上の配管類及びバルブ類もオゾンに対して不活性な材料例えばアルミナ、ガラス(石英)、ステンレス製の材料で構成すればよい。
光源11はベッセル10内に室温領域に保持されている。光源11は石英等の光透過性の材料からなる照射筒22内に収納されている。光源11の光は照射筒22を介してベッセル10内に貯留された液体オゾンの液面に向けて照射される。光源11は0.3μmより長い波長の輝線を発するものであれば既知のものでよい。例えばハロゲンランプが挙げられる。
光源11としては例えば短時間に急速にランプに通電、瞬間的に熱線を放射できるフラッシュランプタイプのものが挙げられる。光源11の光は図2のタイムチャートに示されるように液体オゾンの蓄積工程S1を経て得られた液体オゾンの気化(高純度オゾンの供給工程S2、余剰液体オゾンの廃棄工程S3)の促進に利用される。次いで、オゾン廃棄工程S1後は液体オゾンが貯蔵されたベッセル10の内面(例えばステンレス製)に吸着していた不純物の気化(不純物ガスの除去工程S4)に利用される。
光源11はベッセル10内に設けられているので、従来のベッセルの外部から銅等の熱伝導のよい伝熱ブロック12に配置したヒーターユニットに通電してベッセル10全体(伝熱ブロック12を含む)の温度を上げる場合に比べ、瞬間的にベッセル10内の液体オゾンの液面温度が高められ、オゾンの蒸気圧の上昇(液体オゾンの蓄積工程S1)または液体オゾンの貯留工程以外の工程(例えば不純物ガスの除去工程S4)の実現が容易となる。
また、光源11はオゾン蓄積工程S1からオゾンガス供給工程S2に移行する過程でオゾンを供給できる蒸気圧を短時間で得るための補助的手段として利用してもよい。具体的には伝熱ブロック12に具備されたヒーターユニットの熱を利用する際に熱容量が大きく蒸気圧の上昇が遅い場合などに短時間で供給準備を完了(一定以上の蒸気圧を得てベッセル10との圧力差を得て、一定のガス流量を得る)させるために蒸気圧を高めるためのアシストとして光源11の光照射を利用するとよい。但し、オゾンの気化アシストとして光照射を用いる場合、光源11としてはオゾンガスを分解しない(化学的反応を起こさずに熱的にオゾンを励起するという観点から)410nmより長波長域で輝線を有する仕様のものが必要である。
そして、オゾンガスの供給工程S2の終盤では、液体オゾンの残量が減少するため、ベッセル10の前記ヒーターユニットによる伝熱ブロック12の温度制御に対応する蒸気圧追随性が低下する。この場合、ベッセル10の上限温度を所定の温度(例えば140K)に予め定めておけば、その温度でも蒸気圧が不足する場合には光源11の照射により蒸気圧を得ることができる。このように熱容量の大きいベッセル10全体が不必要に高い温度となるようなことがなくなり、次の液体オゾンの蓄積工程S1に移行するためのベッセル10の冷却時間が短縮される。すなわち、ベッセル10の全体温度(外部からの伝熱ブロック12及びベッセル10)の上昇は最小限に抑えられ、次の工程に移行する時間(例えば不純物ガス除去工程の終了から液体オゾン蓄積工程の開始に至るまでの冷却時間)が短縮される。さらに、ベッセル10にかかる熱履歴と熱負荷も軽減するので信頼性が向上する。
以上のようにオゾン供給装置1は光源11の照射により短時間に高いオゾン蒸気が得られるので短時間に高いオゾン蒸気を用いて処理するようなプロセス例えばALD(原子層堆積法)などに適用しやすい。
図3は発明の第二の実施形態に係るオゾン供給装置2の構成図である。
オゾン供給装置2は隔壁ブロック23をベッセル10内に備えること以外はオゾン供給装置1と同じ構成となっている。隔壁ブロック23はベッセル10内を前記オゾン含有ガスが供される区画と前記液体オゾンが貯留される区画に区分すると共に前記光源の光の照射を受けてオゾンより低い蒸気圧を有する不純物をトラップする。圧力計13は前記両区間を連結する配管24に設けられる。配管24には配管24内の気体の流量を制御するバルブ25,26が設置されている。光源11の光は照射筒22を透過して隔壁ブロック23の表面に照射される。
隔壁ブロック23はベッセル10よりも小容積な器状に形成されている。隔壁ブロック23の内表面には複数のフィン231が形成されている。これにより前記内表面の面積が広く確保されてオゾン含有ガスとの接触効率が高まりオゾンと蒸気圧の異なる不純物ガス成分を効率的にトラップできるようになる。また、照射筒22の外面にも複数のフィン221を設けると照射筒22の表面積が高まり前記不純物ガス成分の吸着効率が高まる。隔壁ブロック23はオゾンに対して不活性な材料で構成する必要がある。例えば、アルミナ、ガラス(石英)、ステンレスが挙げられる。また、必要に応じて表面を親水化処理、あるいは表面に熱が吸収されやすいようにメッキまたはコートされる。
隔壁ブロック23は図3に示されたようにベッセル10の内壁面に接触するかまたは一定の熱抵抗を介して接するように配置される。オゾン供給装置1と同様に波長0.3μmより長い範囲の輝線を有する光源11の光がこの隔壁ブロック23に向けて照射される。隔壁ブロック23の材質及び肉厚は隔壁ブロック23の内壁側表面がベッセル10の内壁温度に比べ20K程度高い温度が実現されるように設計される。例えば、表面がポーラス化した不透明石英や表面がフッ素コートされたステンレスのような表面が熱線遮蔽機能を有する材料が適用されることにより、ランプ照射により効率的に隔壁ブロック23の表面のみの温度を上げることができる。また、液体オゾンの貯蔵部(ベッセル10の内壁部)の温度との干渉が最小限に抑えられ、光源11が光を照射した場合の隔壁ブロック23の温度を制御しやすくなる。さらに、光源として金属光の吸収の深さの浅い可視光や紫外領域の波長の光を放射するランプを使用することにより隔壁ブロック23の表面のみを効率的に熱することができる。
ベッセル10内に導入されたオゾン含有ガスは液体オゾン蓄積温度(例えば90K)に保たれたベッセル10の内壁に接触する前に前記内壁の温度より20K程度高く保たれた隔壁ブロック23の表面に接触する。110K前後では液体オゾンの蓄積の圧力(例えば1000Pa〜100000Pa程度)では液体オゾンの蒸気圧は高いため、CO2やH2Oガスが選択的に吸着される。オゾンガスは図3に示されたように室温領域の配管24を経た後に低温の隔壁ブロック23とベッセル10の内壁の間を通過し、ベッセル10の底部付近に内壁面に吸着される。
実際に隔壁ブロック23の温度がベッセル10の温度に比べ20K程度高くなり、隔壁ブロック23にオゾン以外の低蒸気圧の不純物が効率よくトラップされる条件で満たしているかが図4に示された方法で確認できる。すなわち、オゾン酸素混合ガスからオゾンガスのみを分留液化する際、一定の排気速度で排気すると、光源11の出力の増大と共に図4のようにベッセル10内の圧力変化が起こる。すなわち、光源11の光を照射しない場合はベッセル10の外部の伝熱ブロック12と冷凍機により液体オゾン蓄積温度(例えば90K)に制御されたベッセル10との温度差が小さいため、隔壁ブロック23にオゾンガスと不純物ガスがトラップされる。このとき光源11の光の照射につれて隔壁ブロック23の温度のみが上昇し、ベッセル10の温度は外部のヒーターユニットの調整で光源11の照射も一定に制御され、隔壁ブロック23でオゾンガスがトラップされる割合が減少する。その結果、隔壁ブロック23とベッセル10間の圧力値が上昇する。光源11の出力はある一定以上になるとその後圧力変化が起こらなくなる。これはオゾンガスが隔壁ブロック23にトラップされず、オゾンガスより蒸気圧が低いガスが隔壁ブロック23にトラップされていることを示している。このような条件になると光源11の照度を調整することにより、オゾン以外の不純物のみを高効率にトラップできる条件が定められる。
図5はオゾン供給装置2の動作例を示したシーケンスである。蓄積工程S1が終了した後のブロックに吸着した不純物ガス除去工程S2と同時にオゾンガス供給工程S3が開始される。隔壁ブロック23とベッセル10内のオゾン貯留部の間の室温領域に配置されたバルブ25が開に設定される一方でバルブ26が閉じられ、圧力計13の計測値が大きくなるまで光源11の出力を増大させる。これにより隔壁ブロック23の表面温度が上昇し、吸着していた不純物が気化する。気化した不純物はバルブ17を介して排出される。不純物ガスの除去完了は隔壁ブロック23内の圧力の減少で確認できる。
一方、この不純物ガス除去工程S2の時間帯に液体オゾンの気化によるオゾンガス供給工程S3も同時に実行される。ベッセル10で温まった隔壁ブロック23から熱輻射によっても、液体オゾンの貯蔵部に熱線が到達する。その結果、ベッセル10の圧力上昇は光源11を備えない従来のシステムに比べて短時間で所定の値まで上昇する。すなわち、短時間に高い圧力のオゾン蒸気を得ることができ、オゾンガス供給工程S3の初期のスタンバイ時間(供給処理室に流し込めるだけの十分な圧力を得るための時間)を短縮できる。また、余剰の液体オゾンを廃棄する工程S4も短縮できる。さらに、オゾンガス供給工程S3中も光源11の出力を制御することにより、外部からの伝熱によるベッセル10の温度制御では制御、追随できなかった俊敏なオゾン圧力の制御が可能となる。
また、隔壁ブロック23は液体オゾンガスの液面がこの位置に達したときに大きな圧力上昇が発生するので、液体オゾンの液面の上部センサーとしても寄与する。すなわち、蓄積中に圧力表示が大きく上昇するときに液体オゾンガスがベッセル10に到達したと判断され、隔壁ブロック23は液体オゾンの上限センサー、蓄積量センサーとして利用される。供給ガス流量が正確に把握できれば、液体オゾンの残量が常に正確に把握できるので、個々のベッセル10に残った液体オゾンを無駄なく使い切ることができる。すなわち、オゾンガスの利用効率が上昇する。
図6は第三の実施形態に係るオゾン供給装置3の構成図である。
オゾン供給装置3は波長400nmより短波長の光である紫外光領域の光を照射する光源31をベッセル10内に備えていること以外はオゾン供給装置2と同じ構成となっている。光源31は隔壁ベッセル23の下面に設置されている。光源31の光はベッセル10内の液体オゾンの液面に照射される。前記光は液体オゾンの気化及び分解に利用される。
液体オゾンの液面に紫外光を照射した場合、オゾンの光吸収断面が10-19cm2以上の場合、液体オゾンの紫外光吸収により熱を受け、気化することが実験的に明らかになった。図7に液体オゾンの液面の上方から紫外光(波長210nm〜300nm、照度:10mW及び100mW)を1cm2の領域に照射したときのオゾン分子の気化量を示す。縦軸の数値1E+17、1E+18、1E+19及び1E+20はそれぞれ数値1017、1018、1019及び1020を意味する。光の照度及び照射面積に比例して気化分子数は増大する。例えば、波長300nmの光を10mWで照射すると、毎秒2×1018個のオゾン分子が100mWで照射すると毎秒2×1019個のオゾン分子が気化する。これはオゾンガス流量に換算すると、それぞれ5sccm、50sccmとなる。波長が短いほど、また光照度が大きければ大きいほどオゾンは酸素分子に分解した状態で気化する。すなわち、紫外光の照射により、ベッセル10の温度を上昇させるのではなく、液体オゾンを酸素分子に気化して廃棄する。ベッセル10の温度を必要以上に上げることなく高速に廃棄できるので、ベッセル10の温度の冷却時間を短縮できる。
また、停電時など、バックアップ電源にて、多量の液体オゾンを高速に緊急に高速に廃棄したい場合など、紫外光の照射により予め液体オゾンまたはオゾンガスをある程度分解し酸素分子にしておくことにより、オゾン分解剤やポンプへの負荷もなく安全に高速な排気が可能となる。
図8は第四の実施形態に係るオゾン供給装置4の構成図である。
オゾン供給装置4は照度検出器32を備えていること以外はオゾン供給装置3と同じ構成となっている。オゾン供給装置4では液体オゾンの蓄積工程の初期段階で紫外光吸光度をベッセル10内のオゾンガス濃度の指標として利用している。
照度検出器32は液体オゾンが気化したオゾンガスが通る場所で400nm以下の紫外領域の光を検出する。照度検出器32としては例えばシリコンまたはGaAs等のフォトダイオードが挙げられ、紫外光吸光度からこの部分のオゾンガス濃度を推定することができる。
オゾン供給装置4によれば液体オゾンの蓄積工程の初期段階に測定することによりベッセル面でトラップされなかった(すなわち無駄に廃棄される)オゾンガスの濃度がわかる。
そして、このオゾンガス濃度が最小となるように、バルブ21によって液体オゾンの蓄積工程でオゾンと酸素の混合ガスの排気ラインの排気量が制御される。すなわち、液体オゾンの蓄積工程で最もトラップ効果がよいベッセル10の圧力の設定が可能となる。これによりオゾンガスの液化率(液体オゾン貯蔵速度)が向上する。
一方、高濃度オゾンガス供給終了後に、残存液体オゾンの廃棄を行う際に、上記と同様に気化したオゾンガス濃度を測定すれば、貯蔵していたオゾンガスの濃度の測定ができる。このオゾンガス濃度の低下の度合いを測定することにより、液体オゾンの液面に不純物が蓄積し、不純物ガス除去工程の実行が必要であるタイミングを把握できる。そして、ベッセル10の内面を赤外光または紫外光の照射によって加熱できるようにすれば吸着不純物を気化し、不純物ガスの除去が可能となる。