JP3919989B2 - 液体オゾン製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オゾンガスを液化することにより濃縮した高濃度オゾンガスを供給する液体オゾン製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年オゾン(元素記号:O3)の利用が、その強い酸化力を利用して上下水処理を始めとして種々の分野で進展している。中でも、半導体素子の製造分野では、Siウエーハ洗浄やTEOS−CVD(Tetra Ethyl Ortho Silicate-Chemical Vapor Deposition)への適用が検討されつつある。Siウエーハ洗浄は、オゾンガスを純水に溶かしたオゾン水を洗浄液として用いるもので、希ふっ酸水溶液等と併用することでSiウエーハ上の重金属や有機物を除去できることが発表されている(電子材料1999年3月号pp.13〜18)。TEOS-CVDは、半導体素子を多層配線化する際の層間絶縁膜の形成に用いられ、電極によるウエーハ表面の凹凸を絶縁膜で平坦化できることが特長である。このTEOS-CVDにオゾンを添加することよって平坦化の性能が向上することが報告されている(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.32(1993)pp.L110-L112)。
【0003】
これらは10%程度の比較的低濃度のオゾンガスを利用した例であるが、80%以上の比較的高濃度のオゾンガスを利用することで従来のオゾンガス利用では考えられなかった新たな応用の可能性が指摘され始めている。一例を挙げれば特開平8−335576号で開示されているSi半導体の酸化膜形成がある。この公報によれば、従来の熱酸化法では、為し得ない比較的低温での酸化膜形成が可能で、亜酸化層や欠陥構造の少ない良質の酸化膜の形成が、可能であることなどが紹介されている。
【0004】
ところで、オゾンガスの生成には一般に無声放電方式が用いられる。これは放電により酸素ガスからオゾンと酸素の混合ガスを発生させるもので、発生効率の限度と爆発の危険性のため、常温常圧下で約10体積%以上のオゾンガスを生成することは困難であった。そこで、発生したオゾンガスを一旦液化貯蔵して、その後、気化させることにより80%以上の高濃度オゾンガスを生成する方法が特許公報平5−17164号で紹介されている。この方法について図8および図9に示す。
【0005】
液体オゾンの製造装置は、図8および図9に示したように、オゾンガスの発生装置および排気装置の部分とオゾンを液化する液体オゾン生成装置から構成されている。図8に示したように、酸素ボンベ3から圧力調整バルブ4を介して酸素ガスをオゾナイザー5に送られる。オゾナイザー5では酸素ガスは無声放電により酸素にオゾンガスが混合されたオゾン含有酸素ガスとなり、流量を制御するためのマスフローコントローラー6およびオゾン含有ガス中の微粒子を除去するための微粒子除去フィルター7を通ってオゾンガスを液化する液体オゾン生成装置2に導入される。
【0006】
図8および図9の液体オゾン生成装置2では、オゾンガス発生装置から導入された酸素ガスにオゾンガスが混合されたオゾン含有酸素ガスが、流量調整バルブ8とオゾン含有酸素ガス導入管25を介してオゾンチャンバー9に導入される。オゾンチャンバー9は、あらかじめコンプレッサー21で駆動されている冷凍機20により冷却されているコールドヘッド19に熱的に結合されており、温度センサー24とヒーター23および温度制御装置22により0.1K以内の温度精度で精密に温度を制御可能であり、80K〜100Kの低温度に保たれている。
【0007】
オゾンガスの液化の原理は、オゾンと酸素の蒸気圧の差によってオゾンガスだけを液化するものである。例えば、1気圧のもとではオゾンは161Kの沸点であるが、酸素は90Kの沸点を有する。したがって、90K以上〜161K未満の温度に冷却すれば、オゾンは大部分が液体、酸素は大部分が気体状態となるので、オゾンだけを液体として分離できる。実際には、高濃度オゾンの爆発性に対する安全上から減圧条件で取り扱うので、その際の温度と圧力条件下でのオゾンと酸素の蒸気圧の差で分離条件が決まる。例えば、温度90Kで圧力10mmHg(=13.3hPa)の場合を考えると、90Kでは、オゾンの蒸気圧は、ほぼ0.075mmHg(=10Pa)だが、酸素は約690mmHg(=918hPa)となり、オゾンだけこの条件下で液化される。
【0008】
オゾンチャンバー9ではこのように、冷却された温度でのオゾンと酸素の蒸気圧の差によってオゾンガスだけを液化する。オゾンガスを液化する時は、酸化処理容器16との間のバルブ15を閉じ、オゾンキラー11につながるバルブ10を開いた状態とする。オゾンチャンバー9に接続されたオゾン排出管26とバルブ10を通った液化されない酸素ガスは、若干残留するオゾンガスを外部へ排出させないよう加熱して酸素に変えるオゾンキラー11に導入され、オゾンキラー11で加熱された酸素ガスを冷却するためのガス冷却器12と、真空ポンプ14からの炭化物などによるオゾンチャンバーへの汚染や混入を防ぐための液体窒素トラップ13を経て真空ポンプ14により外部へ排出される。
【0009】
液化された液体オゾン27を酸化処理容器16内で酸化等の使用目的に利用する時は、流量バルブ8およびバルブ10を閉じ、バルブ15を開く。温度センサー24とヒーター23および温度制御装置22によりコールドヘッド19に熱的に結合されたオゾンチャンバー9の温度上昇させることにより、液体オゾンを気化し、オゾンガスとしてオゾン排出管26とバルブ15を介して酸化処理容器16内に導入される。また安全弁18は液体オゾンもしくは高濃度のオゾンガスが爆発性を有するので、万一の場合破壊してガスを排出するためのものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記オゾンチャンバー9の内部圧力は、5320Pa(=53hPa=40Torr)以下になるように、上記オゾン含有酸素ガスの流入量が調節されていた。これは、53hPa以上に圧力を上げてもオゾンガスの液化速度はほとんど上昇しないことに依る。しかしながら、現状のガス圧力では、液化できるオゾンの量は1時間当たり0.5cc(液体オゾン)程度でしかなく、大口径化の進んでいる半導体ウェーハプロセスに応用するにはかなり不足であった。
【0011】
以下に圧力を上げても液化速度が上がらない理由について考察する。
【0012】
図10にオゾンチャンバー9の内部圧力とオゾン液化速度との関係を示す。オゾンの液化速度を上げるには、オゾンチャンバー9内に供給されるオゾン分子数を増やす、つまりオゾンチャンバー9の内部圧力を増やす必要がある。オゾンチャンバー9内のオゾンガスを液化する能力、すなわち冷却能力が無限にある場合は、液化速度は圧力増加に伴い直線的に上昇する。実際には、冷却能力は有限であるので、液化速度はある圧力以上では飽和してしまう。従来の構造の冷却能力では、この飽和が53hPa以上で発生していたものと思われる。すなわち、53hPa以上に圧力を上げても、オゾンチャンバー9での熱交換能力の限界のために、液化できるオゾンの量が飽和してしまい液体オゾンへの液化能力の向上が望めなかった。
【0013】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、オゾンチャンバー内にカップを設けることでオゾンチャンバーに供給されるオゾン含有酸素ガスにコンダクタンスを持たせることにより、熱交換能力を向上させてオゾン液化能力の向上を図ることができる液体オゾン製造装置を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を達成するために、第1発明は、酸素を含有するガスをオゾン化してオゾン含有ガスを生成し、このオゾン含有ガスを導入管によりチャンバーに導入し、前記チャンバーの下部を冷却制御して前記チャンバーにオゾンのみを液化生成するとともに、チャンバーに導入されたオゾン含有ガスのうち液化されなかったオゾンガスおよび酸素ガスを排気管により前記チャンバーより排気するようにした液体オゾン製造装置において、
前記チャンバー内の底壁に、外周壁に複数の小孔が穿設されたカップを伏せた状態で配設するとともに、そのカップに前記導入管を挿着したことを特徴とするものである。
【0015】
第2発明は、前記カップの材質が、オゾンとの反応で表面に保護膜を形成し、かつ液体オゾンに侵されない金属部材からなることを特徴とするものである。
【0016】
第3発明は、前記カップの材質が、液体オゾンに侵されない非金属部材からなることを特徴とするものである。
【0017】
第4発明は、前記金属部材が、アルミニウム、ステンレスおよび銅からなることを特徴とするものである。
【0018】
第5発明は、非金属部材が、サファイアおよびセラミックからなることを特徴とするものである。
【0019】
第6発明は、前記カップの内部に、オゾン含有ガスの経路が形成された隔壁を水平方向に複数設けるとともに、対向する隔壁のガスの経路が重ならないようにしたことを特徴とするものである。
【0020】
第7発明は、前記カップの内部に、複数の隔壁を水平方向に設け、それら隔壁にオゾン含有ガスの経路とする多数の小孔を穿設したことを特徴とするものである。
【0021】
第8発明は、前記カップの内部に、オゾン含有ガスの経路が形成された隔壁を水平方向に複数設けるとともに、その隔壁に厚みをもたせ、前記カップの内側と外側の圧力差を検出し、蓄積される液体オゾンの液面が隔壁の厚み分の位置だけ圧力差が液面位置より変化しないことからチャンバー内の液体オゾンの液面位置を検出することを特徴とするものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
(第1形態)
図1は本発明の実施の第1形態を示すに、図1において、29はカップで、このカップ29をオゾンチャンバー9内の底部に伏せた状態に配置する。カップ29の底部には、オゾン含有酸素ガス導入管25の先端が挿入接続されている。カップ29はオゾン含有酸素ガス導入管25に接着されていても良いが、貫通部を組み合わせるだけで固定しても良い。
【0024】
図2A,Bにカップの外観図と断面図を示す。カップ29は、有底筒体を伏せた形状からなり、オゾン含有酸素ガス導入管25が挿入される挿入孔30と、外周壁面に複数の小孔31が穿設されている。形状は、もちろん円筒形である必要はなく、矩形の箱型でも良い。カップ29の材質は、オゾンとの反応で表面に保護膜を形成することで、液体オゾンに侵されない金属部材からなるアルミニウム、ステンレス、銅などの金属が適している。また、金属以外(非金属)でも、サファイヤやセラミックを用いることもできる。
【0025】
カップ29は、オゾンチャンバー9の底壁に接するように設けられていて、オゾンチャンバー9の底壁よりの熱伝導により比較的低温に保持される。カップ29の内側と外側ではコンダクタンスが生じ、カップ29の内側では従来より高圧にガス圧が保持される。つまりカップ29内のオゾンガス分子数が増加し、液化効率が向上する。さらに、比較的低温に保持されているカップにより、液化のための熱交換面積が増加するために、さらに液化効率が向上する。
(第2形態)
図3は本発明の実施の第2形態を示すに、図3において、前記カップ29の内部に、ガスの経路である開口部32aが重ならないように、カップ29の内周壁から互い違いに複数の隔壁32を突設する。これら隔壁32によりガス圧と熱交換面積がさらに増加するため、第1形態よりさらに液化効率が向上するようになる。
(第3形態)
図4は本発明の実施の第3形態を示すに、図4において、前記カップ29の内周壁には、ほぼ一定の間隔を隔てて水平方向に複数の隔壁33を設け、かつ各々の隔壁32には、ガスの経路として多数の小孔34が穿設されている。この第3形態でも同様に、隔壁32によりガス圧と熱交換面積がさらに増加するため、第1形態よりさらに液化効率が向上するようになる。
(第4形態)
図5および図6は本発明の実施の第4形態を示すに、図5および図6において、前記カップ29の内周壁には、中央にガスの経路である開口部35が穿設された厚い隔壁36が、ほぼ一定の間隔を隔てて水平方向に複数設けられている。さらにカップ29の内圧を測定するための圧力計P2(圧力値P(2))と、カップ29の外側のオゾンチャンバー9の内圧を測定するための圧力計P1(圧力値P(1))が設けられている。この第4形態の利点は、第2形態および第3形態と同様に、隔壁32によりガス圧と熱交換面積がさらに増加するため第1形態よりさらに液化効率が向上することはもちろんであるが、液体オゾンのだいたいの液面の位置を検出できることである。
【0026】
この液面位置検出ができることについて図7により述べるに、液体オゾンの液面位置と圧力差P(2)−P(1)の関係を図7に示す。図7で圧力差が変化しないテラス部は、液面が隔壁36の位置に達した後、隔壁36の厚み以上に液面が増加するまで圧力差が変化しないことによって発生する現象である。この現象を利用して、圧力差を検出することにより、液面がどの隔壁36の位置にあるか、またはどの隔壁間の位置にあるかを検出することができる。
【0027】
上述したように液体オゾンの製造装置において、本発明の実施の各形態を採用することにより、実用的な液化速度で液体オゾンを安全に生成することが可能となる。これまでの液体オゾン製造装置では、液化できるオゾンの量は1時間当たり0.5cc(液体オゾン)程度であったが、本発明の実施の各形態を適用することにより、10倍の5ccの生成が可能となる。
【0028】
液体オゾンの密度は1.573g/ccで、オゾンガスの密度は、1気圧で2.144g/リットルであるから、5ccの液体オゾンは、気化して1気圧で3.67リットルの体積になる。つまり1時間当たり3.67リットルの高純度オゾンガスの利用が可能となる。この高純度オゾンガスを用いて、現在、LSI等で標準に用いられている直径200mmのSiウエーハを処理する場合について考えてみる。Siウエーハの表面積が、314cm2であるから、バッチ式で処理した場合、ウエーハ間隔5mmに保持するとして、20枚程度のSiウエーハを処理できる。また、枚葉式で処理する場合、61cc/分の流量のオゾンガスが利用できる。オゾンガスのシャワーヘッドを、ウエーハ上2mmの距離に置くとすれば、シャワーヘッドとウエーハ間の空間の体積は、63ccであるから、ウエーハの移動搭載時は、オゾンガス供給が不要であることを考慮して、実用的な流量としては十分であると言える。
【0029】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、液化効率を大幅に向上することができるようになるため、半導体プロセスに適用するために充分な液体オゾンの生成が可能となる利点がある。また、液体オゾンの液面のだいたいの位置を検出することができるようになるため、液体オゾン量を把握することができるようになる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1形態を示す概略構成説明図。
【図2】A,Bは第1形態の要部の外観図および断面図。
【図3】本発明の実施の第2形態を示す要部の断面図。
【図4】本発明の実施の第3形態を示す要部の断面図。
【図5】本発明の実施の第4形態を示す概略構成説明図。
【図6】第4形態の要部の断面図。
【図7】液体オゾン液面と圧力差との関係特性図。
【図8】液体オゾン製造装置の概略構成説明図。
【図9】液体オゾン製造装置における液体オゾン生成装置の詳細を示す構成説明図。
【図10】圧力と液化速度の関係を示す特性図。
【符号の説明】
1…オゾンガス発生装置および排気装置
2…液体オゾン生成装置
8…流量調整バルブ
9…オゾンチャンバー
10、15…バルブ
17…真空計
18…安全弁
19…コールドヘッド
20…冷凍機
28…冷却用金属ブロック
29…カップ
30…貫通孔
31、34…小孔
32、33、36…隔壁
35…開口部

Claims (8)

  1. 酸素を含有するガスをオゾン化してオゾン含有ガスを生成し、このオゾン含有ガスを導入管によりチャンバーに導入し、前記チャンバーの下部を冷却制御して前記チャンバーにオゾンのみを液化生成するとともに、チャンバーに導入されたオゾン含有ガスのうち液化されなかったオゾンガスおよび酸素ガスを排気管により前記チャンバーより排気するようにした液体オゾン製造装置において、
    前記チャンバー内の底壁に、外周壁に複数の小孔が穿設されたカップを伏せた状態で配設するとともに、そのカップに前記導入管を挿着したことを特徴とする液体オゾン製造装置。
  2. 請求項1記載の液体オゾン製造装置において、
    前記カップの材質は、オゾンとの反応で表面に保護膜を形成し、かつ液体オゾンに侵されない金属部材からなることを特徴とする液体オゾン製造装置。
  3. 請求項1記載の液体オゾン製造装置において、
    前記カップの材質は、液体オゾンに侵されない非金属部材からなることを特徴とする液体オゾン製造装置。
  4. 請求項2記載の液体オゾン製造装置において、
    前記金属部材は、アルミニウム、ステンレスおよび銅からなることを特徴とする液体オゾン製造装置。
  5. 請求項3記載の液体オゾン製造装置において、
    前記非金属部材は、サファイアまたはセラミックからなることを特徴とする液体オゾン製造装置。
  6. 請求項1〜5記載の液体オゾン製造装置において、
    前記カップの内部に、オゾン含有ガスの経路が形成された隔壁を水平方向に複数設けるとともに、対向する隔壁のガス経路が重ならないようにしたことを特徴とする液体オゾン製造装置。
  7. 請求項1〜5記載の液体オゾン製造装置において、
    前記カップの内部に、複数の隔壁を水平方向に設け、それら隔壁にオゾン含有ガスの経路とする多数の小孔を穿設したことを特徴とする液体オゾン製造装置。
  8. 請求項1〜5記載の液体オゾン製造装置において、
    前記カップの内部に、オゾン含有ガスの経路が設けられた隔壁を水平方向に複数設けるとともに、その隔壁に厚みをもたせ、前記カップの内側と外側の圧力差を検出し、蓄積される液体オゾンの液面が隔壁の厚み分の位置だけ前記圧力差が変化しないことからチャンバー内の液体オゾンの液面位置を検出することを特徴とする液体オゾン製造装置。
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