JP4036622B2 - オゾン生成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はオゾンガスを液化することにより濃縮した高濃度オゾンガスを供給する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、オゾン(元素記号:O3)の利用が、その強い酸化力を利用して上下水処理を始めとして種々の分野で進展している。中でも、半導体素子の製造分野では、Siウェーハ洗浄やTEOS-CVD(Tetra Ethyl Ortho Silicate-Chemical Vapor Deposition)への適用が検討されつつある。
【0003】
Siウェーハ洗浄は、オゾンガスを純水に溶かしたオゾン水を洗浄液として用いるもので、希ふっ酸水溶液等と併用することでSiウェーハ上の重金属や有機物を除去できることが発表されている(電子材料1999年3月号pp.13〜18)。
【0004】
TEOS-CVDは、半導体素子を多層配線化する際の層間絶縁膜の形成に用いられ、電極によるウェーハ表面の凹凸を絶縁膜で平坦化できることが特長である。このTEOS-CVDにオゾンを添加することによって平坦化の性能が向上することが報告されている(JPn.J.Appl.Phys.Vol.32(1993)PP.L110-L112)。
【0005】
これらは、10%程度の比較的低濃度のオゾンガスを利用した例であるが、80%以上の比較的高濃度のオゾンガスを利用することで従来のオゾンガス利用では考えられなかった新たな応用の可能性が指摘され始めている。
【0006】
一例を挙げれば、特開平8−335576号公報で開示されているSi半導体の酸化膜形成がある。この公報によれば、従来の熱酸化法では為し得ない比較的低温での酸化膜形成が可能で、亜酸化層や欠陥構造の少ない良質の酸化膜の形成が可能であることなどが紹介されている。
【0007】
ところで、オゾンガスの生成には一般に無声放電方式が用いられる。これは放電により酸素ガスからオゾンと酸素の混合ガスを発生させるもので、発生効率の限度と爆発の危険性のため、常温常圧下で約10体積%以上のオゾンガスを生成することは困難であった。そこで、発生したオゾンガスを一旦液化貯蔵し、その後気化させることにより80%以上の高濃度オゾンガスを生成する方法が特公平5一17164号公報で紹介されている。
【0008】
この方法による液体オゾン製造装置は、図2に示すように、オゾンガス発生装置および排気装置1の部分と、オゾンを液化する液体オゾン生成装置2から構成されている。酸素ボンベ3から圧力調整バルブ4を介して酸素ガスがオゾナイザー5に送られる。オゾナイザー5では酸素ガスは無声放電により酸素にオゾンガスが混合されたオゾン含有酸素ガスとなり、流量を制御するためのマスフローコントローラー6およびオゾン含有ガス中の微粒子を除去するための微粒子除去フィルター7を通ってオゾンガスを液化する液体オゾン生成装置2に導入される。
【0009】
液体オゾン生成装置2では、図3にその詳細を示すように、オゾンガス発生装置から導入された酸素ガスにオゾンガスが混合されたオゾン含有酸素ガスが、流量調整バルブ8とオゾン含有酸素ガス導入管25を介してオゾンチャンバー9に導入される、オゾンチャンバー9は、あらかじめコンプレッサー21で駆動されている冷凍機20により冷却されているコールドヘッド19に熱的に結合されており、温度センサー24とヒーター23および温度制御装置22により0.1K以内の温度精度で精密に温度を制御可能であり、80K〜100Kの低温度に保たれている。
【0010】
オゾンガスの液化の原理は、オゾンと酸素の蒸気圧の差によってオゾンガスだけを液化するものである。例えば、1気圧のもとではオゾンは161Kの沸点であるが、酸素は90Kの沸点を有する。したがって、90K以上161K未満の温度に冷却すれば、オゾンは大部分が液体、酸素は大部分が気体状態となるのでオゾンだけを液体として分離できる。実際には高濃度オゾンの爆発性に対する安全上から減圧条件で取り扱うので、その際の温度と圧力条件下でのオゾンと酸素の蒸気圧の差で分離条件が決まる。例えば、温度90Kで圧力10mmHg(=13.3hPa)の場合を考えると、90Kではオゾンの蒸気圧はほぼ0mmHg(=0Pa)だが、酸素は約690mmHg(=918hPa)となりオゾンだけがこの条件下で液化される。
【0011】
オゾンチャンバー9では、このように冷却された温度でのオゾンと酸素の蒸気圧の差によってオゾンガスだけを液化する。オゾンガスを液化する時は、酸化処理容器16との間のバルブ15を閉じ、オゾンキラー11につながるバルブ10を開いた状態とする。オゾンチャンバー9に接続されたオゾン排出管26とバルブ10を通った液化されない酸素ガスは、若干残留するオゾンガスを外部へ排出させないよう加熱して酸素に変えるオゾンキラー11に導入され、オゾンキラー11で加熱された酸素ガスを冷却するためのガス冷却器12と、真空ポンプ14からの炭化物などによるオゾンチャンバーへの汚染や混入を防ぐための液体窒素トラップ13を経て真空ポンプ14により外部へ排出される。
【0012】
液化された液体オゾン27を酸化処理容器16内で酸化等の使用目的に利用する時は、流量バルブ8およびバルブ10を閉じ、バルブ15を開く。温度センサー24とヒーター23および温度制御装置22によりコールドヘッド19に熱的に結合されたオゾンチャンバー9の温度を上昇させることにより、液体オゾンを気化しオゾンガスとしてオゾン排出管26とバルブ15を介して酸化処理容器16内に導入される。また、安全弁18は、液体オゾンもしくは高濃度のオゾンガスが爆発性を有するので、万一の場合にその破壊によってガスを排出させるためのものである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
オゾンガスの爆発は、オゾンガスが急激な反応を起こして酸素に分解する現象である。オゾンの分解反応は次の2式で表される。
【0014】
O3+24kcal→O2+O …式1
O3+O→2O2+94kcal …式2
以上の反応が急激に起こり、結果的に爆発に至る。式2の発熱の一部は式1の反応を起こすために一部消費されるとしても、94−24=60kcalの発熱が、つまりオゾンガス1mol当たり30kcalが発生することになる。酸素ガスの定圧熱容量は7cal/mo1なので、オゾンガスは約1.5倍の酸素ガスに分解し、分解した酸素ガスの温度は60k/7/3=2857℃上昇する。これによりガスの体積が急激に膨張し、爆発現象を引き起こすものと考えられる。
【0015】
このオゾンガスの爆発が前記の液体オゾン生成装置のチャンバー内で発生した場合、チャンバー下部に生成蓄積された液体オゾンもまた爆発反応を起こす。これは、液体オゾンの蒸発熱がわずか130cal/ccしか無いため、オゾンガスの爆発で発生した熱により液体オゾンが一気にオゾンガスとなり、上記の爆発的な反応を引き起こすものと考えられる。
【0016】
この急激な反応には最初にエネルギー源が必要で、主にオゾン分子同士の衝突時のエネルギーが寄与する。ただし、オゾン分子同士の衝突で必ず爆発現象が起こる分けではなく、衝突エネルギー全体の値がある値を越えた時に起こるものである。すなわち、オゾン分子数が増加すれば、オゾンガスの圧力が上がり、平均自由行程も短くなるため、必然的に発生するエネルギーが増加して爆発しやすくなる。オゾン分子同士の衝突確率Oはオゾン分子数nの関数として、O(n!)で表される。
【0017】
図4にオゾンガスの圧力と爆発限界濃度の関係を示す。オゾンガスの温度は150K付近で計算してある。大気圧の約1000hPaに近づくにつれ、比較的低濃度のオゾンガスでも爆発反応が起こることが分かる。
【0018】
実際のチャンバー内では、減圧に制御されていて、かつチャンバー内に導入されるオゾン含有酸素ガスのオゾン濃度がたかだか10%程度であることから、通常は爆発反応は起こらない。
【0019】
よって、爆発が起こるのは、何らかの事故でこのバランスが崩れ、爆発条件を満たしたときである。中でも最も危険なのは、停電が発生して冷凍機20の温度制御ができなくなった場合である。制御が不能になった場合、液体オゾンの温度が上昇し、チャンバー内のオゾン蒸気圧が急激に上昇する。
【0020】
図5に液体オゾンの温度と蒸気圧との関係を示す。同図より液体オゾンの温度上昇に伴い、蒸気圧が急激に上昇することが分かる。さらに温度が上昇すると、液体オゾンは沸点を越えて完全に蒸発する。この過程、つまり液体オゾンの気化の過程で、チャンバー内圧力は上昇し続け、図4で示した爆発条件を満たす領域に入る。
【0021】
このように、停電で冷凍機の制御が不能になると、液体オゾン温度が上昇し、結果的にオゾンガス圧力が上昇し、爆発が発生する可能性がある。
【0022】
本発明の目的は、オゾンチャンバー内の温度制御が困難になった場合にも、チャンバー内でのオゾン爆発を防止できるようにしたオゾン生成装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
前記のオゾン爆発のメカニズムによれば、オゾン爆発を防ぐにはチャンバー内の液体オゾンガス圧を上昇させなければ良い。そこで、本発明では、冷凍機の制御が不能になった場合など、オゾンチャンバー内の温度制御が困難になった場合に、あらかじめ真空に保持した比較的容量の大きい予備チャンバーにオゾンチャンバーを連通させることにより、蓄積された液体オゾンが全て気化してもオゾン爆発が発生する圧力まで上昇しないようにしたものであり、以下の構成を特徴とする。
【0024】
オゾンガス発生装置によってオゾン含有ガスを発生してオゾンチャンバーに導入し、冷凍機によって前記オゾンチャンバー内部を冷却することにより前記オゾンチャンバー内に液化オゾンを生成し、オゾンキラーと真空ポンプを有するオゾン排気装置によって前記オゾンチャンバー内で液化されなかったオゾンガスおよび酸素ガスを排気できるオゾン生成装置において、
あらかじめ真空に保持され、前記オゾンチャンバーとの間に常閉のバルブを介して連結される予備チャンバーを備え、
前記オゾンチャンバーに蓄積される液体オゾンの最大蓄積量をx(cc)、前記予備チャンバーの内容積をy(リットル)とすると、前記予備チャンバーの内容積は、y>1 . 66xの関係を満たす容積とし、
前記オゾンチャンバー内の温度制御が困難になった場合に前記バルブを開いて前記オゾンチャンバー内のオゾン含有ガスおよび液化オゾンを前記予備チャンバー内に真空排気させる制御手段を備えたことを特徴とする。
【0025】
また、前記予備チャンバーのあらかじめ保持されている真空度は100hPa以下にしたことを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態を示す要部構成図であり、図2または図3と同等の部分は同一符号で示す。
【0028】
予備チャンバー29は、あらかじめ真空排気されてバルブ30および31を閉じることにより真空に保持されている。バルブ30は、予備チャンバー29とオゾンチャンバー9との間を通常時には閉じ(常閉)、チャンバー9内でオゾンガス爆発が予測されるときまたは検出されるときに開にされてチャンバー9内のオゾンガスを急速に予備チャンバー29に排気する。バルブ31は、予備チャンバー29を真空排気するときに開き、予備チャンバー29を真空排気装置(真空ポンプ14を利用または別の真空ポンプ装置)に連通し、予備チャンバー29の真空排気が終了したときに閉じられる(常閉)。
【0029】
以上の構成において、停電等で冷凍機の制御が不能になった場合、バルブ30が開放されてチャンバー9と予備チャンバー29が連通されて、液体オゾンが気化する空間が増加した分だけチャンバー内オゾンガス圧力の上昇が緩和される。例えば、予備チャンバーが内径30cm、高さ20cmで約14.13リットルの内容積をもち、チャンバー9に蓄積されている液体オゾンの量が5ccの場合を考える。5ccの液体オゾンは全て気化して常温常圧で約4.1リットルのオゾンガスになる。この気化したオゾンガスが予備チャンバーを常温で満たしたときの圧力は次の式で求められる。
【0030】
4.1÷14.13×1013=287(hPa)
この圧力は図4より100%オゾンにおける爆発限界内の圧力である。すなわち、予備チャンバー29にチャンバー9が連結されたことにより、停電等で冷凍機の制御が不能になって蓄積された液体オゾンが全て気化してしまった場合でも、チャンバー内圧力が爆発限界内に抑えられて、爆発を回避できる。
【0031】
ここで、予備チャンバー29の真空度は、最終的な圧力寄与分として考慮すれば、100hPa以下の低真空で十分である。ただし、排気にオイルポンプを用いると逆流したオイルがオゾン爆発の触媒となる可能性があるので、オイルフリーポンプを排気に使用することが望ましい。
【0032】
また、バルブ30はノーマリーON型のバルブを使用すれば、停電によりバルブの制御が不能になっても開放が可能になる。
【0033】
爆発を回避できる予備チャンバーの内容積をy(リットル)、チャンバー9に蓄積される液体オゾンの量をx(cc)とすると、100%オゾンガスの爆発限界圧力が図4より約500hPaであるから、次のような関係が成り立つ。
【0034】
0.82x÷y×1013<500
ここで、0.82x(リットル)は液体オゾンが全て気化したときの常温常圧での体積。すなわち、y>1.66xの関係が成り立つ。
【0035】
また、本発明は停電時の処置法であるが、停電以外でも冷凍機等の故障等によってチャンバーの温度制御が不能となった場合でも、温度制御部の電源を切り、同様の処置を行うことでオゾン爆発を回避することができる。これら爆発回避の制御は、手動によることもできるが、停電が一定時間以上継続したことを検出することでバルブ30を開にする制御装置、チャンバー内のオゾンガス圧や温度が一定値を越えたことを検出することでバルブ30を開にする制御装置などその自動化制御装置を用意するのが好ましい。
【0036】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、オゾンチャンバー内の温度制御が困難になった場合、あらかじめ真空に保持した比較的容量の大きい予備チャンバーにオゾンチャンバーを連通させるようにしたため、蓄積された液体オゾンが全て気化してもオゾン爆発を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す要部構成図。
【図2】従来の液体オゾン製造装置の構成図。
【図3】図2の液体オゾン生成装置の詳細。
【図4】オゾンガス圧−爆発限界特性。
【図5】液体オゾン温度−蒸気圧特性。
【符号の説明】
1…オゾンガス発生装置および排気装置
2…液体オゾン生成装置
3…酸素ボンベ
9…オゾンチャンバー
11…オゾンキラー
14…真空ポンプ
19…コールドヘッド
20…冷凍機
21…コンプレッサー
29…予備チャンバー
30、31…バルブ
Claims (2)
- オゾンガス発生装置によってオゾン含有ガスを発生してオゾンチャンバーに導入し、冷凍機によって前記オゾンチャンバー内部を冷却することにより前記オゾンチャンバー内に液化オゾンを生成し、オゾンキラーと真空ポンプを有するオゾン排気装置によって前記オゾンチャンバー内で液化されなかったオゾンガスおよび酸素ガスを排気できるオゾン生成装置において、
あらかじめ真空に保持され、前記オゾンチャンバーとの間に常閉のバルブを介して連結される予備チャンバーを備え、
前記オゾンチャンバーに蓄積される液体オゾンの最大蓄積量をx(cc)、前記予備チャンバーの内容積をy(リットル)とすると、前記予備チャンバーの内容積は、y>1 . 66xの関係を満たす容積とし、
前記オゾンチャンバー内の温度制御が困難になった場合に前記バルブを開いて前記オゾンチャンバー内のオゾン含有ガスおよび液化オゾンを前記予備チャンバー内に真空排気させる制御手段を備えたことを特徴とするオゾン生成装置。 - 前記予備チャンバーのあらかじめ保持されている真空度は100hPa以下にしたことを特徴とする請求項1に記載のオゾン生成装置。
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JP2001202921A Expired - Lifetime JP4036622B2 (ja) | 2001-07-04 | 2001-07-04 | オゾン生成装置 |
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2001
- 2001-07-04 JP JP2001202921A patent/JP4036622B2/ja not_active Expired - Lifetime
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