この発明の実施の一形態を図面と共に以下に説明する。
図1は苗移植機の側面図であり、苗移植機の一例として6条植えの乗用型の田植機を示すものである。図2は、図1の田植機の平面図である。
図3は、図1の田植機の粉粒体吐出装置付近の要部の側面図であり、図4は、図1の田植機の粉粒体吐出部の要部の背面図(一部簡略図)である。また、図5は図3の粉粒体吐出装置の要部の側断面図である。なお、以下の説明では、田植機の前進方向を前側、後退方向を後側といい、前進方向に向いて左右方向をそれぞれ左側、右側ということにする。
車体1の前後には走行車輪としての左右一対の前輪2,2及び後輪3,3が架設されている。車体上前部には操作ボックス4及びステアリングハンドル5等を有する操縦装置が設置され、また、車体後方部には昇降可能な苗植付部6が装備されている。操縦装置の後側に運転席9が設置され、運転席の下側に田植機の各部に動力を伝達するエンジンEが搭載されている。
苗植付部6は、車体の後部に昇降リンク機構7を介して昇降可能に装着され、昇降用油圧シリンダ8の伸縮作動により昇降する構成である。昇降用油圧シリンダ8を制御する昇降用油圧バルブV(図2)は、機体右側部のステップフロアFの下方に設けられている。
また、この苗植付部6には、左右に複数設けた各々の苗載部11eにマット苗を載せて左右に往復動し苗を一株分づつ各条における前板11aの苗取出口11bに供給すると共に横一列の苗を全て苗取出口11bに供給すると苗送りベルト11cにより苗を下方に移送する苗載台となる苗タンク11、先端が閉ループ軌跡P(図1)を描いて作動する苗植付具12で一株分の苗を切取って土中に植込む6条分の苗植付装置13、苗植付面を滑走しながら整地するフロート(サイドフロート)14L,14R、センタフロ−ト14C等を備えた構成としている。
走行車体1の前部側にミッションケース20が配置され、そのミッションケース20の左右側面部から前輪アクスルケース(図示せず)が側方に延び、その左右両端に変向可能に設けた前輪ファイナルケース21に前輪2,2が回転自在に軸支されている。また、ミッションケース20の背面部にメインフレーム22の前端部が固着されており、そのメインフレーム22の後端部から左右側方に延びるリヤフレーム(図示せず)の先端部に固定して設けた後輪伝動ケース23に後輪3,3が回転自在に支承されている。
原動機となるエンジンEからの回転動力は、ミッションケース20への入力伝動機構として、エンジン出力プーリ24からベルト25を介して油圧式無段変速装置(HST)26の入力軸に伝えられ、この入力軸から油圧ポンプを駆動し、更に、HST26の出力軸からミッションケ−ス20内のミッション入力軸に伝達されるようになっている。該ケ−ス20内のミッションに伝達された回転動力は、ケ−ス20内のトランスミッションにて変速された後、走行動力と外部取出動力とに分岐して取り出される。そして、走行動力は、前輪2,2及び後輪伝動軸27から後輪伝動ケ−ス23のギヤ機構を介して後輪3,3を駆動する。また、外部取出動力は、ミッションケース20からの出力伝動機構として、PTO出力軸57、植付クラッチケース28内に設けるマイコン制御可能な植付モータ30等を介して植付伝動軸31に伝達され、更に、植付伝動軸31によって苗植付部6へ動力伝動されるようになっている。
前記HST26は、操作ボックス4の側部に設けられた変速レバ−33の前後方向の操作で駆動し、機体の前進及び後進制御を司るように構成され、該変速レバー33を前方に向けて操作するほど前進走行速度は速くなるようになっている。また、走行速度に対する苗植付具12の作動周期を変更する株間変更手段が備えられ、操作ボックス4の下方に設けられた株間変更レバー35の操作で株間変更を行うようにしている。
苗植付部6は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、苗を載せて左右往復動して苗を一株づつ各条の苗取出口11b、…に供給する苗載部11e、苗載部11eを有する苗タンク11、及び前記苗取出口11b、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置13、…等を備えている。
苗植付部6の下部には中央にセンターフロート14C、その左右両側にサイドフロート14L,14Rがそれぞれ設けられている。これらフロート14C、14L,14Rを圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート14C、14L,14Rが泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置13、…により苗が植付けられる。各フロート14C、14L,14Rは圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート14Cの前部の上下動が上下動検出機構Jにより検出され、その検出結果に応じ前記昇降用油圧シリンダ8を制御する油圧バルブVを切り替えて苗植付部6を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
苗植付部6は、詳細には図示しないが、植付伝動軸31(図1)を介して走行車体側の動力により、その苗載部11e、…は左右に摺動自在であり、この左右往復動により、苗載部11eの最下段に位置する苗を苗取出口11b(図2)に供給し、該苗を苗植付装置13、…によって圃場に植え付ける。苗載部11e、…が左右行程の端部まで移動して最下段の苗が全て植付けられると、苗送りベルト11cが作動して、苗載部11e上の苗を1段分だけ下方へ移送する。
植付伝動軸31によって苗植付部6へ伝動される動力は、苗植付部6に備える植付伝動ケース50内へ伝動され、該植付伝動ケース50内から各条の苗植付装置13及び苗送りベルト11cへ伝動される。植付伝動ケース50内で動力を分岐して各2条毎の単位で苗植付装置13へ伝動する分岐伝動部50aが設けられ、該分岐伝動部50aの伝動を入切する部分クラッチ51が設けられ、部分クラッチ51により苗植付装置13を2条毎に停止させることができる。
苗植付装置13の作動及び停止を隣接する2条づつの単位で切り替える部分クラッチ51は、畦際での作業時に「切」に操作されることが多いことから、通常「畦クラッチ」と呼ばれている。なお、畦クラッチ51の操作に連動してそれに対応する植付条の苗送りベルト11cも停止させる連動機構が設けられている。畦クラッチ51を操作する各々の畦クラッチレバー52が運転席9の側方に設けられ、該畦クラッチレバー52の操作位置を検出する畦クラッチセンサ52a(図1)が設けられている。
苗タンク11のマット苗の載置面と対向する位置には、薬剤や肥料等の粉粒体を貯溜する粉粒体貯溜部15と粉粒体を所定量づつ繰り出す繰出部17と前記粉粒体貯溜部15に開閉可能に設けられた蓋部16とからなる粉粒体吐出装置18が配設されている。なお、粉粒体吐出装置18は図1及び図2に図示していない。また、繰出部17は、苗タンク11の2条毎の苗載部11eに対応して2条分づつ設けられ、2条分の苗載部11eにわたる左右長の繰出ローラ17a(図5)により粉粒体を繰り出す構成となっている。
繰出ローラ17aは、該ローラ17aに対応する各2条毎のモータ19の駆動により、該モータ19の出力ギヤ19aと噛み合う従動ギヤ53に伝動され、該従動ギヤ53と一体回転して駆動する構成となっている。前記モータ19は繰出部17の後側に配置され、繰出部17の前側には前記従動ギヤ53の歯を検出して繰出ローラ17aの回転量を検出する各2条毎の繰出回転センサ54が設けられ、該繰出回転センサ54の検出に基づいて繰出ローラ17aが設定量回転するようにモータ19を制御装置となる制御ボックス55(図4)により駆動制御する構成となっている。
なお、制御ボックス55により、モータ19は、苗送りベルト11cの作動を検出する苗送りセンサ56(図3)の検出に基づいて、苗送りベルト11cの作動に連動して駆動する。また、制御ボックス55により、畦クラッチセンサ52a(図1)が畦クラッチ51が切状態であることを検出すると、苗送りセンサ56の検出に拘らず、モータ19が駆動しない構成となっている。なお、前記モータ19と繰出回転センサ54とは、繰出部17の前後に振り分けて配置されているので、修理や取付あるいは取外し等のメンテナンス時に互いが邪魔にならず、メンテナンスを容易に行える。
粉粒体吐出装置18は、支軸36を支点として回動可能な支持アーム37に装着支持され、散布作業時の起立姿勢と非散布作業時の倒伏姿勢とに切替変更できる構成としている。粉粒体吐出装置18を倒伏姿勢に切り替えた時には、粉粒体貯溜部15の供給口が下向きとなり粉粒体が流れ落ちるようになっている。そして、この粉粒体貯溜部15に対しヒンジ16a(図3)を介して揺動開閉可能な蓋部16を開けると、この蓋部16が流れ落ちる粉粒体を受け入れできるように上向き姿勢となる構成としている。また、この蓋部16の容積は、貯溜部15の容積と略同一若しくは貯溜部より大きく設定している。
粉粒体吐出装置18を倒伏姿勢に切り替えた時、吐出装置18の後部がフロート14の後部と略同一位置若しくはそれよりもやや前方に位置するよう構成することで、外部からの干渉を防いで粉粒体吐出装置18自体の破損を防止するようにしている。
また、粉粒体吐出装置18を支持する支持フレーム38は、苗タンク11のマット苗毎に仕切られた仕切突条部11d上に沿わせて設けることにより、仕切突条部11dより内側に離れた位置に設ける場合のように苗葉の絡まりや苗滑り、苗切断の発生を防ぐことができる。
繰出部17の繰出口部17b(図5)は、ブラシ17cの取付側とは反対側の下部がブラシ取付側よりLの距離だけ下方に長くすることで、粉粒体の飛散を防止するように構成している。繰出部17の繰出口部17bに連設する粉粒体吐出筒39は、吐出装置18の保持枠40の中に収納するように構成することで、コンパクトな構成とすることができる。
そして、田植機は苗載部11eの苗を左右移動して一株分ずつ苗取出口11bへ供給し、横一列の苗が苗取出口11bから取り出されたら、次列の苗を苗送りベルト11cにより下方に移送して苗取出口11bへ送る苗タンク(苗送り装置)11と、粉粒体貯溜部15内の粉粒体を繰出部17から所定量づつ繰り出して苗載部11e上の苗に粉粒体を吐出する粉粒体吐出装置18の他に、該粉粒体吐出装置18により粉粒体を吐出する位置の苗葉に作用して該苗葉を除ける苗葉除け装置60(図3)を設けている。このように、苗葉除け装置60を設けることで、粉粒体が吐出される位置の苗葉を除けるので苗の床部に粉粒体を供給できる。
図3に示すように、モータ19のモータ軸19bに一端部が固着連結した側面視L字型のクランク43を設け、該クランク43の他端部にはピン47によってアーム41の一端部を回動可能に連結させている。L字型のクランク43は2本の上側クランク43a(短いアーム)、下側クランク43b(長いアーム)をピン46によって回動可能に連結させたものであり、更にアーム41の他端部に設けた穴に苗除けロッド45を挿入して固着連結させており、苗除けロッド45は苗載部11eの苗載面の左右方向全幅にわたって横架されている。
そして、アーム41のクランク43及び苗除けロッド45との連結部の中間付近にはピン48を設け、アーム41と支持アーム37を回動可能に連結させている。したがって、アーム41は支持アーム37との連結部(ピン)48を中心として上下方向(矢印B方向)に揺動可能な構成であり、これらモータ19、モータ軸19b、L字型のクランク43、アーム41、苗除けロッド45、ピン46、ピン47、ピン48等により苗葉除け装置60を構成している。
制御ボックス55による制御によってモータ19が駆動すると、モータ軸19bの回転により、上側のクランク43aがモータ軸19bの動きに沿って回転する。下側のクランク43bは上端部のピン46の動きに沿って上下に動き、下端部のピン47も上下動するため、アーム41は該ピン47の動きに伴い支持アーム37との連結部48を中心として上下に揺動する。したがって、アーム41に連結した苗除けロッド45は連結部(ピン)48を中心として矢印B方向に上下に揺動する。
このようにモータ19の駆動により苗除けロッド45が上方に回動すると、苗除けロッド45は苗載部11e上の苗の葉よりも上側に位置するため苗葉には当たらず作用しないが、苗除けロッド45が下方に回動すると苗除けロッド45が苗載部11e上の苗の葉に当たって葉が傾倒されることで粉粒体が吐出される位置の苗の葉を除け、粉粒体吐出筒39の下方に空間が形成されてマット苗の植付け根元である床部に薬剤などの粉粒体が散布される。
このように、苗葉除け装置60はモータ19の作動に連動していることから、粉粒体吐出装置18の繰出ローラ17aによる粉粒体の繰出動作、すなわち粉粒体吐出筒39からの吐出作動に、モータ19の駆動を介してモータ軸19bから上述のアーム41、クランク43、ピン46、47、48等の連動機構Aにより連動して、苗除けロッド45を作動させることができる。したがって、制御装置となる制御ボックス55によりモータ19の駆動を、粉粒体吐出装置18の粉粒体吐出筒39から吐出される粉粒体の吐出動作に連動させて、粉粒体の吐出時にはアーム41の苗除けロッド45側を下方に回動させて苗除けロッド45を下ろすように制御することで、粉粒体が吐出される位置の苗の葉を除けることができる。一方、粉粒体の非吐出時には、アーム41の苗除けロッド45側を上方に回動させて苗除けロッド45を上げるように制御することで、苗葉に作用しないようにすることができる。
従来技術では、苗載台11上の苗を下方に移送して苗が苗葉除け用の抵抗棒の横架された位置に到達すると、抵抗棒が常時作用する。そして、苗が抵抗棒の横架された位置よりも下方に移送されるまでの間、ずっと抵抗棒による作用を受けることになる。したがって、従来技術による苗葉除けでは、苗載台11上の苗に常時長く作用するため、苗を下方に送る際の抵抗となってしまう。
しかし、田植機の苗葉除け装置60は、粉粒体吐出装置18の粉粒体の吐出動作に連動して粉粒体吐出装置18から粉粒体が吐出される位置の苗葉に作用して苗葉を除けるので、粉粒体の非吐出時には苗葉に作用しない。したがって、苗葉除け装置60の苗除けロッド45が苗送りの抵抗となることがなく、苗タンク11上の苗の位置が不適正になることが防止でき、苗の植付け作業が適正に行える。
また、図3及び図4に示すように、苗タンク11の両側面(最も外側)に、薬剤などの粉粒体が外へ飛散することを防止するフェンス63を設けると良い。苗タンク11の両側面にフェンス63を設けることで、粉粒体吐出装置18の繰出ローラ17aから吐出する粉粒体が苗タンク11の外側に飛散しないため、粉粒体が無駄に散布されることがなくなって、散布効率を高めることができる。
図6は8条植えの乗用型の田植機の畦クラッチの正面図であり、図7には図6の畦クラッチの第3,4条アーム80bと第3,4条苗植付ケーブル72b及び第3,4条苗送りケーブル73bとの連結部分の斜視図を示す。
図1に示す6条植えの乗用型の田植機によれば、畦クラッチ51を各2条ごとに設け、更に各畦クラッチ51を操作するための畦クラッチレバー52を各々設けている。8条植えの乗用型の田植機においても、畦クラッチ自体は6条植えの乗用型の田植機と同じであり、6条植えの乗用型の田植機では畦クラッチ51が3個、8条植えの乗用型の田植機では畦クラッチ51が4個となる。
そして、図6に示す8条植えの乗用型の田植機では苗タンク11の裏面に畦クラッチユニット61を設けて、畦クラッチユニット61の入り切りにより各2条毎の苗植付装置13とそれに対応する植付条の苗送りベルト11cの作動用のケーブル72、73の作動方向(畦クラッチユニット61が「入り」又は「切り」となる方向)がモータ70の上下で対称且つ左右で対称となるようにする。
図6に示すように、畦クラッチユニット61には、支持プレート65に支持されたモータ70と該モータ70の回転軸部に設けられたギア70aと噛合するギア71が設けられており、ギア71の回転軸71aにはカム75が固着連結している。モータ70が駆動して、例えばモータ70の回転軸部に設けられたギア70aが矢印B方向に回転すると、ギア70aと噛合するギア71が矢印C方向に回転することでギア71の回転軸71aに固着したカム75も同様に矢印C方向に回転する。カム75の回転軸71a(ギア71の回転軸)には角度センサ83が設けられ、該角度センサ83によってカム75の回転角度が検出され、カム75は所定角度範囲で揺動可能な構成である。
更に、苗植付装置13の作動用の苗植付ケーブル72と苗送りベルト11cの作動用の苗送りケーブル73に接続された上下2対の第3,4条アーム80bと第5,6条アーム80c(以上、図面上側アーム)及び第1,2条アーム80aと第7,8条アーム80d(以上、図面下側アーム)の基部側の端部にそれぞれ設けられたコロ81b、81c、81a、81dとカム75の側面同士が当接するように配置されている。また、上下2対のアーム80b、80c(上側)、アーム80a、80d(下側)の先端部には苗植付装置13の作動用の苗植付ケーブル72b、72c、72a、72dと苗送りベルト11cの作動用の苗送りケーブル73b、73c、73a、73dがそれぞれ接続している。なお、図7には、各アーム80と苗植付ケーブル72及び苗送りケーブル73との連結関係が分かりやすいように、第3,4条アーム80bと第3,4条苗植付ケーブル72b及び第3,4条苗送りケーブル73bとの連結部分の斜視図を示している。
第1,2条の苗植付ケーブル72aと第1,2条の苗送りケーブル73aの先端部はアーム80aの先端部に連結しており、それぞれのケーブル72a、73aの他端部(図示を省略)は植付畦クラッチ51、苗送り畦クラッチ(図示せず)の操作部材に繋がっており、分岐伝動部50a(図2)に植付畦クラッチ51を設け、苗送り畦クラッチは苗送りベルト11cの作動機構Sに噛み合う構成となっている。
同様に、第3,4条の苗植付ケーブル72bと苗送りケーブル73bはアーム80bに連結し、第5,6条の苗植付ケーブル72cと苗送りケーブル73cはアーム80cに連結し、第7,8条の苗植付ケーブル72dと苗送りケーブル73dはアーム80dに連結しており、各条の苗植付ケーブル72b、72c、72dと各条の苗送りケーブル73b、73c、73dは、それぞれ各条の植付畦クラッチ51、苗送り畦クラッチの操作部材に繋がっている。なお、図6において、一部ケーブル(苗植付ケーブル72b及び苗送りケーブル73c、苗送りケーブル73a及び苗送りケーブル73dなど)が図面上重複している。
モータ70の回動によりカム75が矢印C方向に回転すると、カム75に当接したコロ81a、81b、81c、81dがそれぞれ矢印Da、Db、Dc、Dd方向に移動してアーム80a、80b、80c、80dが支持プレート65に支持された支点部82a、82b、82c、82dを中心として回動し、アーム80a、80b、80c、80dの先端部がそれぞれ矢印Ea、Eb、Ec、Ed方向に移動することで、上下2対のアーム80a、80b、80c、80dが二点鎖線位置から実線位置に移動して、畦クラッチユニット61が作動する(入りになる)。
したがって、第1,2条苗送りケーブル73aは矢印Fa方向に引かれて、第1,2条苗送り畦クラッチが入りとなって第1,2条の苗送りベルト11cが駆動して苗を下方に移送する。同様に第3,4条苗送りケーブル73bは矢印Fb方向に引かれて、第3,4条苗送り畦クラッチが入りとなって第3,4条の苗送りベルト11cが駆動し、更に第5,6条苗送りケーブル73cも矢印Fc方向に引かれて、第5,6条苗送り畦クラッチが入りとなって第5,6条の苗送りベルト11cが駆動し、第7,8条苗送りケーブル73dも矢印Fd方向に引かれて、第7,8条苗送り畦クラッチが入りとなって第7,8条の苗送りベルト11cが駆動して各条で同時に苗を下方に移送する構成である。
同様に、第1,2条植付ケーブル72aは矢印Fa方向に引かれ、第3,4条植付ケーブル72bは矢印Fb方向に引かれ、第5,6条植付ケーブル72cは矢印Fc方向に引かれ、第7,8条植付ケーブル72dは矢印Fd方向にそれぞれ引かれて各ケーブル72a、72b、72c、72dと連結している各条の分岐伝動部50a(図2)の伝動が入りになって苗植付装置13が作動する。
このように、モータ70一つで畦クラッチユニット61(各条の植付畦クラッチ51及び苗送り畦クラッチを備えたユニット)の入り切りができる構成であるので、各条ごとに畦クラッチユニット61の入り切りを行う必要がなく、畦クラッチユニット61の操作が簡易になる。また、上下対称、左右対称の作動機構となるので全体のバランスが良い。
図6に示すように、各2条毎の苗植付装置13の作動用のケーブル72とそれに対応する植付条の苗送りベルト11cの作動用のケーブル73の作動方向(畦クラッチユニット61が「入り」又は「切り」となる方向)が、上下で対称且つ左右で対称となるようにしている。
すなわち、畦クラッチユニット61が切りから入りになる時は、上下方向に対称位置にある第3,4条ケーブル72b,73bと第1,2条ケーブル72a,73aでは、図面上方左側の第3,4条苗送りケーブル73b及び第3,4条植付ケーブル72bの作動方向は矢印Fb方向であるが、図面下方左側の第1,2条植付ケーブル72a及び第1,2条苗送りケーブル73aの作動方向は矢印Fa方向であるため、ケーブル72,73の作動方向が互いに逆向き(反対方向)になっている。同様に、上下方向に対称位置にある第5,6条ケーブル72c,73cと第7,8条ケーブル72d,73dでは、図面上方右側の第5,6条苗送りケーブル73c及び第5,6条植付ケーブル72cの作動方向は矢印Fc方向であるが、図面下方右側の第7,8条植付ケーブル72d及び第7,8条苗送りケーブル73dの作動方向は矢印Fd方向であるため、ケーブル72,73の作動方向が互いに逆向きになっている。
また、畦クラッチユニット61が切りから入りになる時は、左右方向に対称位置にある第3,4条ケーブル72b,73bと第5,6条ケーブル72c,73cでは、図面上方左側の第3,4条苗送りケーブル73b及び第3,4条植付ケーブル72bの作動方向は矢印Fb方向であるが、図面上方右側の第5,6条苗送りケーブル73c及び第5,6条植付ケーブル72cの作動方向は矢印Fc方向であるため、ケーブル72,73の作動方向が互いに逆向き(反対方向)になっている。同様に、左右方向に対称位置にある第1,2条ケーブル72a,73a及び図面下方右側の第7,8条植付ケーブル72d,73dでは、図面下方左側の第1,2条植付ケーブル72a及び第1,2条苗送りケーブル73aの作動方向は矢印Fa方向であるが、図面下方右側の第7,8条植付ケーブル72d及び第7,8条苗送りケーブル73dの作動方向は矢印Fd方向であるため、作動方向が互いに逆向きになっている。
本構成を採用することにより、畦クラッチユニット61が「入り」又は「切り」となる時の作動用のケーブル72,73の作動方向を上下で対称且つ左右で対称とすることで、畦クラッチユニット61のユニット全体に作用する力のバランスがとれるため、畦クラッチユニット61に無理な力がかからず畦クラッチユニット61の耐久性が向上する。
ところで、田植機を畦越えして隣の圃場に移動させる場合には、車体1前部の浮き上がりを防止するために、作業者が田植機から降りてハンドル5を操作して操向する必要がある。しかし、作業者が車体1から降りた姿勢での操向は容易ではない。
また、走行車体1の前部に畦越えアームを上下回動自在に設けて、畦越えアームを下方に回動して前方に突出した状態として押し下げることにより、畦越え時の車体1前部の浮き上がりを防止し、また、通常作業時には、畦越えアームを上方に回動した後方収納状態にする田植機がある。畦越えアームとは手で該アームを握って下に押さえながら田植機の操作をして、畦を出るために設けられているものである。この場合、片手で畦越えアームを押さえ、もう一方の手でハンドル5を操作して後ろへ歩いて進んでいかなければならず、非常に不安定な状態であり、作業者の負担が重い。
したがって、畦越えの際の操作の容易化を図り、非常に不安定な状態を防止して作業者の負担を軽減する必要がある。
図8には、畦越えアームの例を示しており、図8(a)は田植機の前部の簡略斜視図であり、図8(b)は田植機の前部の簡略側面図である。また、図8(c)には、作業者Wが畦越えアーム90に座ったときの背面図を示している。
図8に示す畦越えアーム90は、作業者が当該畦越えアーム90に座ることができる構成である。以下に畦越えアーム90について詳しく説明する。
車体1の前方下部に一本のパイプ91を固着して車体1の前方中央で鉛直方向上方に延長し、該パイプ91をハンドル5の高さ付近又はハンドル5の高さよりも少し低い位置で前方に屈曲させる。そして、パイプ91の先端部とステップフロアFの高さ位置付近にそれぞれ水平方向にパイプ92,93を取り付けた構成である。作業者Wは車体1に対して後ろを向いて、ハンドル5の高さ位置にある上側の水平パイプ93に腰掛けて、ステップフロアFの高さ位置にある下側の水平パイプ92に足を掛けることにより、畦越えアーム90に座ったままハンドル5を操作して、安全に田植機を畦から出すことができる。
更に、パイプ91の屈曲部91aには平面視で上側の水平パイプ93を囲むようにリング状(円状、長方形、正方形状などいずれでも良い)のパイプ95を溶接等により固着して設けている。リング状パイプ95がない場合は、作業者Wが上側の水平パイプ93に座るだけで体が固定されないため、畦越えの反動により、田植機が傾いた場合にバランスを取りにくくなる。しかし、図8(c)に示すように、作業者Wがリング状パイプ95内に臀部を入れて上側の水平パイプ93に腰掛けるようにすると、作業者Wの背中や脇をしっかりと固定することができ、操作性や安全性が高まる。
本構成を採用することにより、作業者は車体1の前方に体重をかけて両手でハンドル5を操作できるため、片手で畦越えアーム90を押さえ、もう一方の手でハンドル5を操作しながら後ろへ歩いて進んでいくような不安定な状態で操作をすることがなくなり、操作性や安全性が高まる。そして、畦越えの際の操作の容易化を図ることができ、安定な状態で畦越えができるため、作業者の負担が軽減する。
次に、図1の苗移植機の苗植付部6を直播装置102に代えて乗用4輪駆動走行形態の直播機とした場合の構成について説明する。図9は、施肥装置付きの乗用型の直播機の左側面図を示すものであり、この乗用型の直播機は、走行車体1の後側に昇降リンク装置7を介して直播装置102が昇降可能に装着され、走行車体1の後部上側に施肥装置120の本体部分が設けられている。
走行車体1は、駆動輪である各左右一対の前輪2,2及び後輪3,3を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース20が配置され、そのミッションケース20の左右側方に前輪ファイナルケース21,21が設けられ、該前輪ファイナルケース21の操向方向を変えることができる前輪支持部から外向きに突出する前輪車軸に前輪2,2が取り付けられている。また、ミッションケース20の背面部にメインフレーム22の前端部が固着されており、そのメインフレーム22の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示せず)を支点にして後輪ギヤケース(後輪伝動ケース)23,23がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース23,23から外向きに突出する後輪車軸に後輪3,3が取り付けられている。
原動機となるエンジンEはメインフレーム22の上に搭載されており、該エンジンEの回転動力が、第一ベルト伝動装置121及び第二ベルト伝動装置123を介してミッションケース20に伝達される。ミッションケース20に伝達された回転動力は、該ケース20内のトランスミッションにて変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース21,21に伝達されて前輪2,2を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース(後輪伝動ケース)23,23に伝達されて後輪3,3を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体1の後部に設けたクラッチケース115に伝達され、施肥伝動機構108によって施肥装置120へ伝動される。
エンジンEの上部はエンジンカバー130で覆われており、その上に座席9が設置されている。座席9の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット132があり、その上方に前輪2,2を操向操作するハンドル5が設けられている。エンジンカバー130及びボンネット132の下端左右両側は水平状のフロアステップFになっている。フロアステップFの後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップRとなっている。
昇降リンク装置7は平行リンク構成であって、1本の上リンク7aと左右一対の下リンク7b,7bを備えている。これらリンク7a,7b,7bは、その基部側がメインフレーム22の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム142に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク143が連結されている。そして、メインフレーム22に固着した支持部材と上リンク7aに一体形成したスイングアーム145の先端部との間に昇降油圧シリンダ146が設けられており、該シリンダ146を油圧で伸縮させることにより、上リンク7aが上下に回動し、直播装置102がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
直播装置102の下部にはセンターフロート155及びサイドフロート156,156が設けられている。これらフロート155,156を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート155,156が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に直播装置102,…により種子が播かれる。各フロート155,156,156は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、直播作業時にはセンターフロート155の前部の上下動が上下動検出機構157により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ146を制御する油圧バルブを切り替えて直播装置102を昇降させることにより、種子の播種深さを常に一定に維持する。
施肥装置120は、肥料貯留タンク(粉粒体貯留タンク)160に貯留されている肥料(粉粒体)を走行車体1の左右方向に複数設けられた肥料繰出部(粉粒体繰出部)161,…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース(粉粒体移送ホース)162,…でフロート155,156,156の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず),…まで導き、施肥ガイド,…の前側に設けた播種用作溝器164,…によって播種条の側部近傍に形成される施肥溝内に吐出するようになっている。モータ(図示せず)で駆動のブロア(図示せず)で発生させた圧力風を左右方向に長いエアチャンバ169を経由して施肥ホース162,…内に吹き込み、施肥ホース162,…内の肥料を植付部側の肥料吐出口へ強制的に移送するようになっている。
また、整地ロータ127a,127bの支持構造には、左右方向の支持杆と上下方向に伸びる両側辺部材からなる矩形の支持枠体165の両側辺部材に上端を回動自在に支持された梁部材166と該梁部材166の両端に固着した支持アーム167と該支持アーム167に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム168が設けられている。該ロータ支持フレーム168の下端には整地ロータ127aの駆動軸(図示せず)が取り付けられている。センタフロート155の前方にあるロータ127bはサイドフロート156の前方にあるロータ127aより前方に配置されている。また、ロータ127bは梁部材166に上端部が支持された一対のリンク部材176,177によりスプリング178を介して吊り下げられている。なお、整地ロータ127a,127bはロータ上下位置調節レバー181で上下動させることができる。
図9に示す直播機の直播装置102は、図10の直播装置102部分の拡大側面図に示す構成を備えている。直播装置102は、上部の種子タンク105から種子を繰り出す種子繰出部187、種子を繰出案内する種子ロート188、更に、この種子ロート188から繰出案内される種子を下方へ空気搬送により放出する放出筒190と種子導管191等からなり、左右方向に延びるフレーム189により支持されている。
そして、放出筒190は、種子ロート188に接続する移送管193と、種子導管191の下部に種子搬送用に空気を供給するための空気分配管197と該空気分配管197に空気を供給するブロア199からなる。
直播装置102の下方には、播種フレ−ム110の下方に吊持され、土壌面に接地して滑走するフロ−ト155,156を配置しており、また、フロート155,156の両側には一対の播種用作溝器164と該播種用作溝器164でできた圃場の溝を埋める一対の覆土板159が設けられているので、圃場の溝内に打ち込まれた種子の上を覆土板159により土で覆うことができる。
そして、種子導管191の下部に空気分配管197から吹き出される空気の流路となるエア流路(エアーチューブなど)194を設け、作溝器164の前方から後方に向かって空気を吹き出す構成としたことを特徴としている。
図10に示すように、作溝器164とほぼ同じ位置にエア流路194の先端がくるように配置し、作溝器164の前方から後方に向けて空気を吹き出す構成とすることで、種籾が播種前の、ちょうど作溝器164によって溝が形成される箇所の表土に空気を吹き出すことができる。種籾が播種される箇所の表土に水が溜まっていると、場所によって水の量が相違することから播種深さが異なってしまい、播種深さの安定性に欠ける。しかし、本構成を採用することにより、作溝器164によって溝が形成される箇所の前方から後方に向けて空気を吹き出す構成とすることで、播種箇所の表土の水を除去した後、種籾が播種されるため、播種深さの安定性が図れる。
図11は、図10に示す作溝器164の別の例を示した正面断面図である。
また、図11に示すように、作溝器164の内周に種子導管191を設け、種子導管191を中央部の種籾の供給部191aと該供給部の外周の空気吹出し部191bからなる二重構造として、種籾の落下位置の外周部分に空気吹出し部191bから空気を噴出させる構成としても良い。
空気分配管197から供給された空気はエア流路194を通って種子導管191の側壁内周に設けられた空気吹出し部191bから矢印K方向に流れて種籾の供給部191a下方の種籾の落下位置の周囲にエアーカーテンを形成する。そして、このように作溝器164の内部に空気が噴出されることで作溝位置である種籾の落下位置の周囲の水を吹き飛ばして集中的に除去することができる。
本構成を採用することにより、種籾の落下位置に確実に空気を吹き出すことができ、播種箇所の表土の水の除去効果も高まる。そして、表土の水の除去による播種深さの安定性が更に高まる。また、種子導管191の径が上部に比べて下部ほど小さくなるような形状にすれば、種籾の落下位置の外周から吹き出される空気が集中してちょうど落下位置に勢いよく噴出され、噴出効果も高まるため、一層の播種箇所の表土の水の除去効果や播種深さの安定性が図れる。