JP5460160B2 - 設備機器の診断装置 - Google Patents
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Description
「設備機器に取り付けられ、該設備機器の状態を検知する設備状態検知手段と、前記設備状態検知手段により検知された設備状態検知情報を信号処理して出力する設備管理データ処理部と、前記設備管理データ処理部から出力された情報を管理基準値に対してレベル判定して出力する設備状態判定部と、前記設備状態判定部からレベル判定して出力された設備機器の関連情報を収集、処理して出力する設備監視部と、前記設備監視部から出力された情報を高度解析して該当する設備機器の異常の原因と、その改善対策を特定し、その特定した結果を前記設備監視部に送信する高度解析診断部と、を有し、前記設備監視部と、前記高度解析診断部とが通信網を介して相互に通信可能に構成され、前記高度解析診断部から前記設備監視部へ設備管理データ解析用プログラムをアップロードすることを特徴とする設備機器診断システム。」(特許文献1の請求項1参照)
「回転機器の診断個所に得られた各種データを用いて前記回転機器の動作異常の診断を行なう回転機器異常診断装置において、回転機器に常設したセンサと、前記センサからの各種データをオンラインで取り込む手段と、記録媒体に記録した各種データをオフラインで取り込む手段と、第1及び第2のコンピュータと、オンラインで取り込んだ各種データとオフラインで取り込んだ各種データとを選択的に第2のコンピュータに供給してそれらのデータの異常診断を行なう第1の診断手段と、オンラインで取り込んだ各種データを第1のコンピュータに供給して常時リアルタイムでモニタを行ない、前記データに異常兆候があった場合に第2のコンピュータに割込みを掛ける異常判別手段と、前記割込み時に第2のコンピュータにより前記異常兆候のあるデータを関連するデータを用いて詳細に診断する第2の診断手段と、前記第1及び第2の診断の結果を表示する表示手段とを具備することを特徴とする回転機器異常診断装置」(特許文献2の請求項1参照)
的確な診断を行うには診断に用いるデータを適切に取得できることが必須の条件となるが、従来の設備機器の診断装置においては適切にデータを取得するための技術については述べられていない。取得するデータが適切なものでなければそのデータに基づいて行う診断プログラムが優れていたとしても的確な診断が出来ない。
以下、取得するデータの重要性について詳細に説明する。
回転機器の回転数を例に挙げて説明すると、仮に3600rpm、100rpm、60rpmの三種類の回転数のものがあったとすれば、それぞれの1回転に要する時間は、0.016s、0.60s、1.0sである。取得するデータが振動データの場合、データを正確に取得するには、それぞれ0.1s、1.0s、2.0s以上のサンプリング時間を要することになる。つまり、高速回転のものではデータのサンプリング時間は短時間でよいが、低速回転のものではデータのサンプリング時間を長時間にする必要がある。
しかしながら、従来のデータ収集装置においては、サンプリング周波数は予め決められたものであるため、当該機器に最適なサンプリングを行うことができにくい。もっとも、例えば低周波のものにたいしてサンプリング周波数を高周波で取得することも可能であるが、低周波のものはサンプリング時間が長いため、そのようなものに対して高周波でサンプリングを行うとすれば、膨大なデータ量となり記憶容量が膨大になると共にデータ処理にも長時間要することになり、適切でない。
しかしながら、従来例においてはデータのサンプリング時間やサンプリング周波数を適切に設定できるものはなく、それ故に的確な診断ができないか。あるは、特別に低回転の機器などをオンライン監視から外して別途診断するということになっていた。
なお、上記の説明では回転機械を例に挙げて説明したが、上述した問題点は回転機械に限らず例えば瞬時動作をするプレス機や、往復動をする圧縮機などにおいても同様である。
前記サンプリング条件設定手段は、各センサごとにサンプリング時間及びサンプリング周波数を設定でき、かつ複数のセンサのなかから同時サンプリングするセンサを設定することができる機能を有することを特徴とするものである。
該監視コンピュータは、前記データ収集装置によるサンプリング条件を入力するサンプリング条件入力手段と、前記データ収集装置から送信されるデータに基づいて設備の状態を診断する以下に示す解析プログラムのうちの少なくとも2つと、異常診断に用いる解析プログラムを選択する解析プログラム選択手段とを有することを特徴とするものである。
(a)機械の運転状態における振動波形を採取し、振動波形に基づいて振動を特徴づける複数の振動パラメータを算出し、複数の振動パラメータから主成分分析法により主成分を抽出し、主成分に基づき1個の状態評価指数である統合パラメータを算出し、該統合パラメータに基づいて機器の良否判定を行う統合パラメータ解析プログラム
(b)機械の運転状態における正常状態の波形を採取し、その波形の振幅確率密度関数を算出し、さらにカルバック情報量として数値化した値を用いて機械の良否判定を行うカルバック情報量解析プログラム
(c)機械の運転状態における複数の測定点の波形を同時採取し、それらの波形を用いて機械の実際の振動の動きをアニメーション表示によって可視化する実稼動解析機能を有する実稼動解析プログラム
(d)異なる測定部位の2つの波形を同時採取し、双方のデータに関連性が認められるかを評価するためのコヒーレンス関数(関連度関数)解析機能を有するコヒーレンス関数解析プログラム
(e)常時監視により蓄積されたパラメータの時系列データを用いて将来の寿命到達日を予測する際、統計的手法を用いて寿命予測の自動演算を行い、結果を自動表示する自動寿命予測プログラム
(f)機器の正常状態におけるデータを採取し、その正常データを用いて適切な相対判定基準値を自動設定する機能を有する判定基準自動設定プログラム
なお、本実施の形態においてはセンサとして振動センサを例に挙げて説明するが、本発明は振動センサに限られず、振動センサの他、音響センサ、AE(Acoustic Emission)センサ、変位センサ、歪センサ、圧力センサ、電流センサ、電圧センサ、電力センサのいずれか又はこれらのセンサから選択される複数のセンサを用いることができる。
各構成について詳細に説明する。
データ収集装置7は、図1に示すように、複数の振動センサ5から出力される信号を入力して各振動センサ5ごとに振動波形データを取り込むアナログ回路13、アナログ回路13で取り込まれたアナログデータをデジタルデータに変換するA/D変換回路15と、A/D変換回路15によってデジタル変換されたデータをサンプリング条件設定手段19の設定に基づいてサンプリングして記憶手段21に送るサンプリング処理回路17と、サンプリング処理回路17にデータのサンプリング条件を設定するサンプリング条件設定手段19と、サンプリング処理回路17によって送り込まれるデータを記憶する記憶手段21と、記憶手段21に蓄積されたデータを読み出して監視用PC11へ送信するデータ送信手段23と、通信回線を介して接続された監視用PC11との通信を行うための通信制御手段25を備えている。
アナログ回路13、A/D変換回路15及びサンプリング処理回路17が本発明の振動波形取り込み回路を構成している。
サンプリング条件設定手段19は、監視用PC11からの指示に従って、振動センサ5から入力される振動データのサンプリング時間、サンプリング周波数を設定し、また、複数の振動センサ5のうち同時サンプリングする振動センサ5を設定し、さらに、アナログ回路13に設けられているハイパスフィルタやローパスフィルタのうちのどのフィルタを通過させるかのフィルタ切替についても設定する。
サンプリング条件設定手段19が設定するサンプリング時間としては、例えば1.0秒〜30秒であり、サンプリング周波数としては、例えば0.1kHz〜40kHzである。
なお、サンプリング条件設定手段19やデータ送信手段23はCPUがプログラムを実行することによって実現される。
監視用PC11は、図2に示すように、異常診断に用いる種々の解析プログラムが記憶されており、診断対象に最も適切な解析プログラムが選択されて異常診断が行われる。
本実施形態の監視用PC11には、統合パラメータ解析プログラム27、カルバック情報量解析プログラム29、実稼動解析プログラム31、コヒーレンス解析プログラム33、自動寿命予測プログラム35、判定基準自動設定プログラム37がインストールされている。
もっとも、使用できる解析プログラムはこれに限られるものではなく、既存の種々の解析プログラムを用いることができる。
なお、各解析プログラムについては後に詳細に説明する。
また、サンプリング条件入力手段41は、例えば、各データ収集装置7の各振動センサ5ごとにサンプリング時間、サンプリング周波数、同時サンプリング対象、フィルタ切替を入力できる入力枠をモニタに表示し、オペレータがキーボードなどの入力手段51によって入力することができるように構成される。
いずれの解析プログラムを用いる場合であっても、診断対象となる機器に対して最適なサンプリング時間やサンプリング周波数を設定する必要がある。また、使用する解析プログラムによっては同時サンプリングが必須となる場合がある。そこで、オペレータは、サンプリング条件入力画面をモニタに表示させ、キーボードによって画面に表示された各データ収集装置7の各振動センサ5ごとにサンプリング時間、サンプリング周波数及び同時サンプリング対象センサなどを入力する。
オペレータが必要な情報を入力して送信指示をすると、入力されたデータが通信制御手段39によって通信回線を介して各データ収集装置7に送信される。
より具体的には、上記の例で示したように、モータ側のデータと減速機側のデータがそれぞれの特性に応じて適切にサンプリングされているので、モータと減速機からなる設備全体を的確に診断できる。例えば、従来のように、低回転の機器について適切なデータ収集ができなければ、モータ側のみの診断しかできず、必ずしも正しい診断結果を得ることはできない。モータ側と減速機側とを同時に検証してこそ正しい診断が実現できるのであるが、本実施の形態によればこれを実現できる。
<統合パラメータ解析プログラム>
統合パラメータ解析とは、回転機械の異常診断に用いる解析手法であって、機械の運転状態における振動波形を採取し、振動波形に基づき振動を特徴づける複数の振動パラメータを算出し、複数の振動パラメータから主成分分析法により主成分を抽出し、主成分に基づき1個の状態評価指数(統合パラメータ)を算出し、算出した状態評価指数に基づいて機械の良否判定を行う解析手法である。
そして、使用するデータが各設備機器ごとに適切なサンプリング時間で、かつ適切なサンプリング周波数でサンプリングされたデータであるので、統合パラメータ解析を効果的に行うことができ、的確な診断が可能になる。
(i)初期データ解析のため、診断対象の機器の初期状態(正常状態)の波形データ収集を設定回数分行う。この操作は自動で行うことができる。
(ii)初期波形データ収集完了後、統合パラメータ算出のための演算を実行し、演算式を確定する。
(iii)初期データ解析の完了以降、あらかじめ設定した時間周期で定期的に振動波形データを収集する。
(iv)収集したデータを自動解析する。
(v)自動解析された結果に基づいて判定処理を行い、異常値と診断された場合は警報出力する。
(vi)解析結果については傾向管理データとして保存する。
(vii)上記の(i)〜(vi)の処理を繰り返す。
[設備仕様]
診断対象設備:誘引通風機用電動機
回転数 :985rpm ,モータ容量:1900kW ,軸受:滑り軸受
潤滑方式:オイルバス
図4は、統合パラメータ解析プログラム27によって上記診断対象をオンライン監視したときのグラフを示しており、縦軸が統合パラメータを示し、横軸が時間を示している。
図4に示されるように、上記設備をオンラインで監視中、統合パラメータ値が上昇し始め、警報発生となった。
振動波形の詳細分析を行った結果、変化している主なパラメータはACC-fr(加速度の回転周期)、ACC-IP(加速度・衝撃指数)、ACC−β2(加速度・尖り度)等であり、これらの振動成分を主成分分析で統合した値(統合パラメータ値)で異常を検知した事例である。
これにより、オイルリングの不具合により1回転周期の衝撃振動が発生していたことが判明した。
図5、図6に示されるように、ACC−P(加速度ピーク値)やVEL−P(速度ピーク値)にはほとんど変化は認められず、正常領域であることからこのような手法では異常を早期に検知することができない。
カルバック情報量解析とは、機械の運転状態における正常状態の波形を採取し、その波形の振幅確率密度関数を算出し、さらにカルバック情報量として数値化した値を用いて機械の良否判定を行う解析手法である。
そして、使用するデータが各設備機器ごとに適切なサンプリング時間で、かつ適切なサンプリング周波数でサンプリングされたデータであるので、カルバック情報量解析を効果的に行うことができ、的確な診断が可能になる。
具体的な処理手順は以下の通りである。
(ii) 初期波形データ収集完了後、カルバック情報量の演算を実行し、初期値を確定する。
(iii) 初期解析完了以降、あらかじめ設定した時間周期で定期的に波形データを収集する。
(iv) 収集データを自動解析する。
(v) 判定処理を行い、異常値と診断された場合は警報出力する。
(vi)解析結果については傾向管理データとして保存する。
(vii)上記の(i)〜(vi)の処理を繰り返す。
[設備仕様]
診断対象設備:プランジャ型ポンプ吸入弁
回転数 :276rpm
サンプリングデータ:ACC波形データ
図7は、カルバック情報量解析プログラム29によって上記診断対象をオンライン監視したときのグラフを示しており、縦軸が振幅カルバック情報量(振幅確率密度ID)を示し、横軸が時間を示している。
図7に示されるように、時間経過とともに振幅カルバック情報量は上昇傾向を示している。初期データと比べて最終データは約96倍に変化している。分解点検を実施した結果、吸入弁のバルブおよびシート面に浸食摩耗が認められ、完全リークしている状態であったことを確認した。
カルバック情報量解析プログラム29によって的確な診断ができたことが実証された。
比較例として、従来手法による加速度のPeak値の傾向監理グラフを図8に示す。
図8から分かるように、Peak値は初期データ以降Peak値の上昇傾向は認められず、逆に低下する傾向がある。
このように従来手法では、実際の設備の破損状況を的確に診断できない。
実稼動解析とは、機械の運転状態における複数の測定点の振動波形を同時採取し、それらの波形を用いて機械の実際の振動の動きをアニメーション表示によって可視化する解析手法である。今現在生じている振動の様子をモニタなどの画面でアニメーション表示するので正常状態と異常状態の差を容易に判断することが可能となる。
また、実稼動解析は複数の測定点の振動波形を同時採取する必要があるが、本実施の形態のデータ収集装置7は、同時サンプリング設定手段を備えており、データ収集装置7に入力される振動センサ5からのデータのうち実稼動解析に用いる振動センサ5については同時サンプリングするように設定する。これにより、容易にデータの同時サンプリングを実行でき、適切な実稼動解析を行うことができる。
さらに、使用するデータが各設備機器ごとに適切なサンプリング時間で、かつ適切なサンプリング周波数でサンプリングされたデータであるので、実稼動解析を効果的に行うことができ、的確な診断が可能になる。
また、必要に応じてバンドパスフィルターなどで信号処理することで、特定の周波数の時間経過の挙動を観測することができる。
(i)実稼働解析の対象となる設備の振動波形を収集する。
(ii)収集した波形に対して、必要に応じてフィルタ処理を行う。
(iii)実稼働解析を実行する。
(iv)解析結果をアニメーション表示する。
コヒーレンス解析とは、異なる測定部位の2つの振動波形を同時採取し、双方の振動データに関連性が認められるかを評価するためのコヒーレンス関数(関連度関数)を用いた解析手法である。
コヒーレンス関数とは、異なる測定部位の2つの振動波形データ間の関連度合を示すもので、まったく関連がない場合は0、完全に関連している場合は1の値をとり、周波数別にその関連性を示すものである。
コヒーレンスの計算は2つの波形データ間のクロススペクトルとそれぞれの波形データのパワースペクトルによって計算される。コヒーレンスとクロススペクトルの関係は相関係数と共分散の関係と同じであり、クロススペクトルの大きさをパワースペクトルで割り、正規化したものがコヒーレンスである。
また、コヒーレンス解析は複数の測定点の振動波形を同時採取する必要があるが、本実施の形態のデータ収集装置7は、同時サンプリング設定手段を備えており、データ収集装置7に入力される振動センサ5からのデータのうちコヒーレンス解析に用いる振動センサ5については同時サンプリングするように設定する。これにより、容易に必要なデータの同時サンプリングを実行でき、適切なコヒーレンス解析を行うことができる。
具体的な処理手順は以下のとおりである。
(i) コヒーレンス解析の対象となる設備機器の振動波形データを収集する。
(ii)収集した振動波形データに基づいてコヒーレンス関数解析を実行する。
(iii)解析結果を表示する。
モータ軸受部とファン軸受部の双方に現れている45Hzの振動はコヒーレンス関数解析の結果、関連度が1.0を示していることから関連性がある。よってファンのアンバランス振動がモータ側に伝播していると診断された例である。
自動寿命予測とは、常時監視により蓄積された振動パラメータの時系列データを用いて将来の寿命到達日を予測する際、統計的手法を用いて寿命予測の自動演算を行うことにより、装置の寿命予測を行うことをいう。
従来の寿命予測方法は、振動パラメータの時系列データを見て、最適と思われる直線や曲線などの数式を人の判断により当てはめ、その線の延長線と限界値との交点を求め、その日を寿命到達日とする方法が一般的に行われており、そのような処理を行うソフトウェアが製品化されている。
しかしながら、このような一般的な方法によって寿命予測を行う場合、どのような曲線を用いればよいかをデータを見ながら自己判断する必要がある。しかし、これは人による判断であるため信頼性が低いという問題がある。
また、機械によっては負荷変動や環境変化などの影響によって振動値に大きなバラツキが生じる場合もあり、単純な曲線では当てはめにくいという問題もある。
複数のモデル式を用いて初回予測演算を行い[初回演算工程]、複数のモデル式ごとに自由度調整済み決定係数を算出する[決定係数算出工程]。そして、複数のモデル式の中で自由度調整済み決定係数が最大となったモデル式を当該振動パラメータにおける寿命予測モデル式として決定する[モデル式決定工程]。選択されたモデル式を用いて各振動パラメータ毎に予測演算を行い、注意値到達日、限界値到達日を算出する[寿命予測演算工程]。さらに、振動パラメータ毎の区間推定計算を行い、最短限界到達日(最短寿命)、最長限界到達日(最長寿命)を算出する[予測値の区間推定工程]。
そしてさらに、寿命予測演算の結果、限界到達日が最短となったデータのグラフと限界到達日を表示する[表示工程]。
以下、各工程を詳細に説明する。
複数のモデル式を用いて、初回の予測演算を実施する。
1次回帰:y=ax+b
2次回帰:y=ax2+bx+c
3次回帰:y=ax3+bx2+cx+d
指数回帰:y=axb
対数回帰:y=aloge(bx)
ARIMAモデル:
上記モデル式毎に下式で示される自由度調整済み決定係数R2´を算出する。
なお、R2´は予測モデルの最適次数を決定する評価基準であり、AIC(赤池の情報量基準)と等価の結果が得られる。
決定係数算出工程によって算出されたR2´値(最大は1.0)が最大となったモデル式をその振動パラメータにおける予測モデル式とする。
例えば、振動センサ5の01部位と02部位の二箇所に設置されおり、各部位において3つのレンジ(「VER-RMS」、「ACC-P」、「ACC-RMS」)を切り替えてデータ収集している場合であれば以下のようになる。
01部位 VEL-R ・・・ 1次回帰
01部位 ACC-P ・・・ 指数回帰
01部位 ACC-R ・・・ ARIMAモデル
02部位 VEL-R ・・・ 2次回帰
02部位 ACC-P ・・・ 3次回帰
02部位 ACC-R ・・・ ARIMAモデル
決定したモデル式を用いて各振動パラメータ毎に予測演算を行い、注意値到達日、限界値到達日を算出する。
振動パラメータ毎の区間推定計算を行い、最短限界到達日(最短寿命)、最長限界到達日(最長寿命)を算出する。
寿命予測演算の結果、限界到達日が最短となったデータのグラフと限界到達日を表示する。表示項目としては例えば以下のものを表示する。
・測定データ
・予測に用いたモデル式と各係数値
・理論値線
・理論値の下限値と上限値線
・自由度修正済み決定係数
振動値のバラツキが大きいような場合、そのバラツキを考慮した予測手法としてARIMAモデルがある。
ARIMAモデルとは、時系列分析における予測手法のひとつで、Auto Regressive Integrated Moving
Average:自己回帰和分移動平均モデルの頭文字をとったものである。ARIMAモデルを簡単に説明すると、現在までの測定データのくせ(トレンド成分や周期変動成分、不規則変動成分)を分析して自己の回帰式を作成し、その回帰式を用いて将来の値を予測する、というものである。この予測法は、傾向が一様ではない振動値の予測には最適であるといった特徴を持っている。つまり、測定データにばらつきがある設備などの予測には極めて有効な手法であると考えられる。
この問題を解決する改善策として、図12のように内部的に仮想データを与え、等間隔データとみなしARIMAモデルの予測を行うようにした。
具体的には全データの中からまず最短となっている周期を求め、その周期内にデータが存在しているかどうかを確認する。もしその期間内にデータが存在しなかった場合はその前後のデータを直線で結び、中央値をその区間の仮想データを与え、等間隔データとする。その後ARIMAモデルによる予測を行う。
手動操作にて各モデル式の決定係数の確認を行ったところ、3次回帰(決定係数=0.84で最大)が選択されていることが確認できた。
ARIMAモデルについてはデータの間隔が均等でないため使用不能であった。
判定基準自動設定とは、診断対象となる機械の正常状態における振動データを採取し、その正常データを用いて適切な相対判定基準値を自動設定する機能をいう。
以下、判定基準値の設定のもつ意味と従来の課題について説明する。
よりも若干小さい値の2種類を設定する。前者を限界値、後者を注意値と呼ぶ。
注意値は、限界値に比べれば余裕のある値である。注意値に達した状態では、機械設備は正常状態から劣化状態にさしかかったものの、一定期間は継続運転可能である。振動上昇原因を特定し改善計画を決定するための調査をする。設備寿命の点からは、この時点での修理はいわゆるオーバーメンテナンスであり不経済である。
そして、基準設定の考え方には、絶対値判定基準、相対判定基準、相互判定基準がある。
従来、基準値を設定する場合、どの判定法を用いるか、基準値の設定値をいくつにするかを設備毎の特性を考慮した上で個別に検討し、人の判断で設定している。このように判定基準値をあらかじめ人が判断し、システムに入力設定してオンライン監視する方法が一般的に行われる。
従来、この作業を各設備機器ごとにオフラインで個別に行っていたため、作業に多くの時間と手間を要していた。しかも、各設備機器は高速回転、低速回転など種々のものがあり、適切なデータ収集ができていないのが現状である。
以下、判定基準値自動設定プログラムによる判定基準値自動設定の手順を具体的に説明する。
(ii) 収集が完了した時点で収集したデータを用いて平均値を算出する。
(iii) 平均値のn倍、m倍を計算し、それぞれ注意値、限界値に自動設定する。これによって、相対判定基準値が決定される。なお、n、mの具体的な値は対象となる機器ごとに予め設定しておくようにする。
(iv) 設定された基準値を適用し、以降の判定処理が行われる。
対象となるポンプを分解整備後、運転開始から設定時間まで初期データを収集した。設定時間経過後、初期データを用いて平均値(8.8m/s2)を算出し、さらに平均値の2倍(17.6m/s2)を注意値、4倍(52.8m/s2)を算出した。
以降、自動設定基準により状態を監視した。監視の状態を図15のグラフに示す。
図15に示されるように、X年9月には限界値を超えたため、ポンプ運転を停止し、分解点検を実施した。
分解点検の結果、転がり軸受の転動体にフレーキングが発生しておりこれ以上の運転は危険であったことが判明した。
従って、初期値を基に自動設定された相対判定基準値は適合していたと判断できた。
3 回転機械
5 振動センサ
7 データ収集装置
9 ハブ
11 監視用PC
13 アナログ回路
15 A/D変換回路
17 サンプリング処理回路
19 サンプリング条件設定手段
21 記憶手段
23 データ送信手段
25 通信制御手段
27 統合パラメータ解析プログラム
29 カルバック情報量解析プログラム
31 実稼動解析プログラム
33 コヒーレンス解析プログラム
35 自動寿命予測プログラム
37 判定基準自動設定プログラム
39 通信制御手段
41 サンプリング条件入力手段
43 解析プログラム選択手段
45 診断処理手段
47 記憶手段
49 表示手段
51 入力手段
Claims (3)
- データ収集装置と通信回線で接続された監視コンピュータを有し、
前記データ収集装置が複数のセンサから出力される信号を入力して各センサごとにデータを取り込むデータ取り込み回路と、外部から入力される指示信号を入力して前記データ取り込み回路に対してデータサンプリング条件を設定するサンプリング条件設定手段と、サンプリングしたデータを外部へ送信するデータ送信手段とを有し、
前記サンプリング条件設定手段は、各センサごとにサンプリング時間及びサンプリング周波数を設定でき、かつ複数のセンサのなかから同時サンプリングするセンサを設定することができる機能を有し、
前記監視コンピュータは、前記データ収集装置によるサンプリング条件を入力するサンプリング条件入力手段と、前記データ収集装置から送信されるデータに基づいて設備の状態を診断する以下に示す解析プログラムのうち自動寿命予測プログラムと少なくとも他の1つと、異常診断に用いる解析プログラムを選択する解析プログラム選択手段とを有し、
前記自動寿命予測プログラムは、複数のモデル式を用いて初回予測演算を行う初回演算工程と、複数のモデル式ごとに自由度調整済み決定係数を算出する決定係数算出工程と、複数のモデル式の中で自由度調整済み決定係数が最大となったモデル式を当該パラメータにおける寿命予測モデル式として決定するモデル式決定工程と、選択されたモデル式を用いて各パラメータ毎に予測演算を行い、注意値到達日、限界値到達日を算出する寿命予測演算工程とを備えてなることを特徴とする設備機器の診断装置。
(a)機械の運転状態における振動波形を採取し、振動波形に基づいて振動を特徴づける複数の振動パラメータを算出し、複数の振動パラメータから主成分分析法により主成分を抽出し、主成分に基づき1個の状態評価指数である統合パラメータを算出し、該統合パラメータに基づいて機器の良否判定を行う統合パラメータ解析プログラム
(b)機械の運転状態における正常状態の波形を採取し、その波形の振幅確率密度関数を算出し、さらにカルバック情報量として数値化した値を用いて機械の良否判定を行うカルバック情報量解析プログラム
(c)機械の運転状態における複数の測定点の波形を同時採取し、それらの波形を用いて機械の実際の振動の動きをアニメーション表示によって可視化する実稼動解析機能を有する実稼動解析プログラム
(d)異なる測定部位の2つの波形を同時採取し、双方のデータに関連性が認められるかを評価するためのコヒーレンス関数(関連度関数)解析機能を有するコヒーレンス関数解析プログラム
(e)常時監視により蓄積されたパラメータの時系列データを用いて将来の寿命到達日を予測する際、統計的手法を用いて寿命予測の自動演算を行い、結果を自動表示する自動寿命予測プログラム
(f)機器の正常状態におけるデータを採取し、その正常データを用いて適切な相対判定基準値を自動設定する機能を有する判定基準自動設定プログラム - 複数のモデル式の一つがARIMAモデル式であり、該ARIMAモデル式を用いて寿命予測演算を行う場合において、全データの中から最短となっている周期を求め、その周期内にデータが存在しているかどうかを確認し、その周期内にデータが存在しなかった場合はその前後のデータから当該区間のデータを仮想データとして与えてARIMAモデル式を適用するようにしたことを特徴とする請求項1記載の設備機器の診断装置。
- 前記センサは、振動センサ、音響センサ、AEセンサ、変位センサ、歪センサ、圧力センサ、電流センサ、電圧センサ、電力センサのいずれか又はこれらのセンサから選択される複数のセンサであることを特徴とする請求項1又は2に記載の設備機器の診断装置。
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