JP5460159B2 - 色素増感型光電変換素子 - Google Patents
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Description
色素増感型太陽電池は、シリコン系の従来型の太陽電池と比較して大幅な低価格化が可能とされているが、発電部に使用される導電性基板の価格が低価格化の障害となっている。従来構造の色素増感型太陽電池においては、特に光が入射する側の電極(窓電極)には、可視光の透過性と高い伝導性が要求されるため、ガラス基板やプラスチック基板上にスズドープ酸化インジウムやフッ素ドープ酸化スズといった透明導電性金属酸化物を塗布した基板が用いられてきた。したがって、このような透明導電性基板を用いていない、全く新しい構造の色素増感型太陽電池が実現するならば、太陽電池の大幅な低価格化が可能であるとして研究開発が進められている。
大面積素子を可能とする構造として、特許文献5に記載されたようなものがある。この構造は、例えば作用極をなす金属線を、複数の金属線が網目状に編まれてなる網目状構造としたものであって、このような構造の作用極を用いることによって、大面積素子を構成するとともに、フレキシブルな構造の色素増感型光電変換素子の提供を可能とするものである。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の金属線が網目状に編まれてなる網目状構造の作用極に多孔質酸化物半導体層が形成されてなる発電極を有する色素増感型光電変換素子であって、その光電変換効率を向上するとともに、その重量を軽量化し、さらに低コスト化も図れる光電変換素子を提供する。
本発明の請求項2に記載の色素増感型光電変換素子は、請求項1において、前記多孔質酸化物半導体層が、前記作用極の受光面側の表面プロファイルに沿った形状であることを特徴とする。
また、前記多孔質酸化物半導体層が、前記作用極の受光面側の表面プロファイルに沿った形状である場合、受光面における該多孔質酸化物半導体層の厚さがより均一になり、また該受光面の表面積が拡がるため、光電変換効率をより向上させることができる。
発電部2は、平面視矩形の網目状構造の作用極5と、平面視矩形の板状の対極6とがセパレータ10を介して重ね合わされるように構成されている。作用極5は、導電性を有する複数の第1基材8と複数の第2基材9とが編まれることによって矩形の網目状構造からなる領域をなしている。これら第1基材8と第2基材9とはともに線状をなす。
作用極5と対極6、およびその間に挿入されているセパレータ10は、2枚のフィルム14により挟まれており、2枚のフィルム14内は電解質18で満たされている。発電部2は4辺において、熱圧着部12によって封止されており、これにより電解質18がフィルム14内に封入されている。
前記集電部3は、集電用配線4を構成する第1基材8と、導電性を有する複数の外周基材31(外周基材)とから構成されている。外周基材31は線状をなしており、集電用配線4と網目状に編まれてなる部位をなす構造を有している。また、外周基材31は、その両端側がこの網目状に編まれてなる部位から長手方向に延在している。
図1〜3で例示した色素増感型光電変換素子1では、第1基材8、第2基材9、および外周基材31は直径0.05mmのチタン(Ti)からなるワイヤである。作用極5は、所定本数の第1基材8および第2基材9が互いに網目状に編まれてなる構造を有している。第1基材8と第2基材9とは、重複部において互いが十分接触するように編まれ、矩形をなす網目状構造を有している。
前記網目状構造の単位面積あたりの隙間面積(開口率)としては特に制限されず、例えば0%以上20%以下でよい。
複数の第1基材8は、第3辺22から第4辺23まで所定本数列設されているとともに、第1辺20から集電部3まで延在している。つまり、作用極5を構成する基材のうち第1基材8の全ては、矩形をなす発電部2の一辺より発電部2から延長されるように、外部に引き出されている。第1基材8のうち、第2辺21と集電部3との間の部分は、集電用配線4となり、作用極5にて発生した電子は、この集電用配線4を介して集電部3に集められる。
第1基材8よび第2基材9の太さ(直径)としては、例えば、10μm〜10mmとするのが好ましい。ただし、柔軟性を十分に発揮させるためには、これらの基材の太さは細いほどよい。
前記Ti被覆Cu線の製造方法としては、公知の方法で行うことができる。例えば、Tiを押出成型等によってパイプ状に形成すると共に、Cuを押出成型等によって線状に形成し、これらTiパイプとCu線を同時に走行させつつTi製パイプの内部にCu線を挿入し、これらを絞って、両者間を密着させて、Ti被覆Cu線を得ることができる。
このような線引き加工法により作製されたTi被覆Cu線は、スパッタ法やめっき加工法等によって製造されたものよりも被覆層の密着性に優れ、その製造コストを低く抑えることができる。
このようにして、第1基材8および第2基材9が網目状に編まれてなる網目状構造の領域からなる作用極5を得ることができる。
例えば、多孔質酸化物半導体を溶媒に懸濁したものをスクリーン印刷法によって、前記受光面側Aに塗布することができる。この場合、塗布量及び塗布圧力を厳密に調整できるので、前記受光面側Aの表面プロファイル(網目状構造を構成する縦線と横線とによって形成される凹凸形状)に沿って薄く塗布することができる。塗布後乾燥し、さらに500℃程度の高温で焼結することによって、前記受光面側Aに形成される多孔質酸化物半導体層13からなる受光面(表面)が、前記受光面側Aの表面プロファイルに沿った形状で形成される。
このような形状で形成された前記受光面の場合、平板状の受光面(表面)よりも光電変換効率を向上させることができるので好ましい。
光電変換効率が向上する理由としては、前記受光面側Aの表面プロファイルに沿った形状の受光面において、多孔質酸化物半導体層13の厚さがより均一になり、相対的に厚い部分が無いためであること、さらに、その受光面は凹凸形状であるので、平坦な受光面よりも表面積が広いこと、が考えられる。なお、前記相対的に厚い部分では、色素から作用極5へ電子が移動する際の多孔質酸化物半導体層13による抵抗が増してしまい、光電変換効率が相対的に低くなる傾向がある。また、該多孔質酸化物半導体層13が薄すぎる部分では、担持される色素量が少ないので作用極5へ移動する電子自体が少なくなり、光電変換効率が低くなる傾向がある。この2つのトレードオフの関係において、該多孔質酸化物半導体層13の厚さとしては、5μm以上40μm以下が好ましく、10μm以上30μm以下がより好ましく、15μm以上20μm以下が最も好ましい。
多孔質酸化物半導体を溶媒に懸濁してペースト状にしたものを、前記受光面側Aに塗布して、ドクターブレード法によって平板状に展ばして成膜する。これを乾燥し、さらに500℃程度の高温で焼結することによって、多孔質酸化物半導体層13を形成することができる。
なお、多孔質半導体層13は、集電配線4には形成されない。
その増感色素としては、例えば、N719、N3、ブラックダイなどのルテニウム錯体、ポルフィリン、フタロシアニン等の含金属錯体をはじめ、エオシン、ローダミン、メロシアニン等の有機色素などを適用することができ、これらの中から用途、使用半導体に適した励起挙動をとるものを適宜選択すれば良い。
この電解液をゲル化する際に用いられるゲル化剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などが挙げられる。
また、揮発性電解質溶液に代えて、一般に色素増感型太陽電池に用いられるものであれば、溶媒がイオン液体であるものやゲル化したものだけではなく、p型無機半導体や有機ホール輸送層といった固体であっても制限なく使用可能である。
常温溶融塩のカチオンとしては、四級化イミダゾリウム誘導体、四級化ピリジニウム誘導体、四級化アンモニウム誘導体などが挙げられる。
常温溶融塩のアニオンとしては、BF4 −,PF6 −,(HF)n −、ビストリフルオロメチルスルホニルイミド[N(CF3SO2)2 −]、ヨウ化物イオンなどが挙げられる。
イオン液体の具体例としては、四級化イミダゾリウム系カチオンとヨウ化物イオンまたはビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオンなどからなる塩類を挙げることができる。
また、導電性粒子の種類や粒子サイズなどは特に限定されるものではないが、イオン液体を主体とする電解液との混和性に優れ、この電解液をゲル化するようなものが用いられる。さらに、電解質18に含まれる他の共存成分に対する化学的安定性に優れることが必要である。
特に、電解質18がヨウ素/ヨウ化物イオンや、臭素/臭化物イオンなどの酸化還元対を含む場合であっても、酸化反応による劣化を生じないものが好ましい。
対極6の構成は、上述したようなPt被膜Ti板に限るものではなく、Pt板、またはPtを被膜した金属板であってよい。あるいは、カーボン板、またはカーボンを被膜した金属板であってよい。
対極6の厚みは約40μm、膜の厚みは30nmとするとよいが、電流を流すことができ、触媒能を発揮できる厚みであればこれに限定されることはない。
フィルム14は、作用極5の網目状構造部分、および対極6と略同形状の矩形形状をなしており、その4辺において熱圧着部12が形成されている。
また、発電部2は、網目状構造の作用極5、薄板状の対極6、およびPETからなるフィルム14の組合せであるため、フレキシブル性に優れた光電変換素子の製造が可能となる。また、光電変換素子1の薄型化も可能となる。
また、第1基材8と第2基材9とからなる作用極5を互いに交差するように網目状に編む際、同時に第1集電部3を網目状に編むことによって、より短時間で作用極5と集電部3を形成することが可能となる。
また、複数の第1外周基材31のそれぞれが、複数の第1基材8と網目状に編まれることで、第1基材8および/または第1外周基材31の一部に断線が発生した場合においても、他の部分によって集電が実施されるため、より信頼性の高い集電が可能となる。
また、第1基材8の両側から集電することが可能となるため、より光電変換効率が向上するという効果が得られる。
図1〜3に示す構造の光電変換素子を実施例1として、以下のとおり作製した。
まず、直径0.050mmのTi線を縦線及び横線として使用して、開口率が0.5%である密な網目状構造を平織りで製織した。縦横のTi線が網目状に編まれてなる矩形の領域(作用極)のサイズは5cm×5cmとし、Ti線の本数は縦横それぞれ900本とした。
集電部を構成するTi線の本数はそれぞれ180本とし、集電部の幅は1cmとした。
つぎに、TiO2を成膜した作用極を、電気炉で500℃、1時間焼結して、その網目状の凹凸に沿った形状の多孔質TiO2層が形成された作用極からなる発電極を得た。その多孔質TiO2層の厚さは15μmであった。
そして、発電極の多孔質TiO2層が形成されていない面を対極に向かい合わせて、厚さ12μmのセパレータを介して重ね合わせた。
セル内に、メトキシアセトニトリルを溶媒とする揮発性電解質を注入した。最後に電解液注入部を熱圧着することによって、発電部を封止した。
なお、セルの側面を封止する際、集電部および作用極と集電部をつなぐ集電配線を、セルの外へ引き出してから、セルを封止した。
比較例1として、作用極の両面(一方の面および他方の面)に多孔質TiO2層が形成されたこと以外は、実施例1と同じ構成をもつ色素増感型光電素子を作製した。前記作用極の両面に形成された、網目状の凹凸に沿った形状の多孔質TiO2層は、それぞれ15μmの厚さであった。
以上のようにして作製された実施例1および比較例1の各色素増感型光電変換素子のセルに対して、ソーラーシミュレータ(AM1.5、100mW/cm2)を用いて光を照射し、電流電位曲線を測定し、その光電変換効率を求めた。
その結果、実施例1の光電変換効率は3.5%であり、比較例1の光電変換効率は3.0%であった。
また、本発明に係る実施例1の色素増感型光電変換素子の作用極に形成された多孔質TiO2層の重量は、比較例1の色素増感型光電変換素子の作用極に形成された多孔質TiO2層の重量のおおよそ半分であるため、単位面積あたりの発電極の重量について、実施例1の方が比較例1よりも軽くなることは明らかである。したがって、本発明に係る実施例1の色素増感型光電変換素子は、比較例1の色素増感型光電変換素子に比べて、軽量性に優れることが明らかである。
このことから、本発明に係る実施例1の色素増感型光電変換素子は、屈曲性(フレキシブル性)に富むことが確認された。
Claims (1)
- 導電性を有するとともに線状をなす複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域から構成される作用極を備える色素増感型光電変換素子であって、
前記作用極の受光面側にのみ多孔質酸化物半導体層が形成されており、
前記多孔質酸化物半導体層が、前記作用極の受光面側の表面プロファイルに沿った形状であることを特徴とする色素増感型光電変換素子。
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