JP5604090B2 - 色素増感型光電変換素子 - Google Patents
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Description
色素増感太陽電池は、シリコン系の従来型の太陽電池と比較して大幅な低価格化が可能とされているが、発電部に使用される導電性基板の価格が低価格化の障害となっている。従来構造の色素増感太陽電池においては、特に光が入射する側の電極(窓電極)には、可視光の透過性と高い伝導性が要求されるため、ガラス基板やプラスチック基板上にスズドープ酸化インジウムやフッ素ドープ酸化スズといった透明導電性金属酸化物を塗布した基板が用いられてきた。したがって、このような透明導電性基板を用いていない、全く新しい構造の色素増感太陽電池が実現するならば、太陽電池の大幅な低価格化が可能であるとして研究開発が進められている。
また、金属線を発電部の作用極に用いる新規な素子構造が提案されている(特許文献2〜4参照)。しかし、これらの構造においては、作用極に金属線を採用したがゆえに、大面積の太陽電池モジュールの構成が困難となり、本来、色素増感太陽電池が有する、大面積化が容易であるという利点を損なう結果となった。そのため、上記の利点を損なうことのない素子構造の開発が必要とされている。
大面積素子を可能とする構造として、特許文献5〜8に記載されたようなものがある。この構造は、例えば作用極をなす金属線を、複数の金属線が網目状に編まれてなるテキスタイル構造としたものであって、このような構造の作用極を用いることによって、大面積素子を構成するとともに、フレキシブルな構造の色素増感型光電変換素子の提供を可能とするものである。
この色素増感型光電変換素子101の発電極102は、テキスタイル構造の作用極103と金属板からなる対極104とから構成されている。作用極103は対極104と重ね合わされた上で、透明のフィルム105と対極104の周縁部を貼り合わせることによって形成された空間R内に封入されている。図5(b)に示すように、空間Rには、電解質も封入されている。
この構造においては、集電効率を向上させるために、作用極103を構成する第一金属線108及び/又は第二金属線109の全ての金属線を電極外部に引き出すことによって、集電部107とすることが好適であり、本例においても、第二金属線109の全てが集電部107として発電極102の外部に引き出される構成となっている。
しかしながら、この方法により封止部Sを形成する場合、封止部Sを形成する熱可塑性樹脂106の層の厚みが熱圧着の際に薄くなることによって、集電部107と対極104とが短絡し、太陽電池として機能しなくなることがあるという問題がある。
図5(c)を参照すると、封止部Sにおいて、集電部107と対極104とが接触し、短絡してしまっていることがわかる。この状態では、色素増感型光電変換素子101が正常に機能しないことは言うまでもない。
前記封止部は、平面視矩形に形成され、前記第三フィルムは、前記封止部の4つの辺部のうち集電部が封止部の内部を貫通している辺部のみに形成されていることが好ましい。
前記第五フィルムは、前記封止部において、前記透過性フィルム/前記集電部の間、および前記集電部/前記第四フィルムの間、のうち、前記集電部/前記第四フィルムの間のみに配置されていることが好ましい。
前記袋体は、平面視矩形に形成され、前記第五フィルムは、前記袋体の4つの辺部のうち集電部が封止部の内部を貫通している辺部のみに形成されていることが好ましい。
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態の光電変換素子を示す概略構成図であり、図1(a)はその平面図である。図1(b)は、図1(a)のB−B線に沿う光電変換素子の発電部の断面図、図1(c)は、図1(a)のC−C線に沿う光電変換素子の封止部の断面図である。また、図2は、光電変換素子の分解斜視図である。
発電部2は、主として作用極3と板状の対極4(第二フィルム)と可視光の透過性を有する第一フィルム5とから構成されている。図2の分解斜視図に示すように、本実施形態の構成は、第一フィルム5と対極4とで、作用極3を挟み込む構成である。第一フィルム5は、板状の対極4と略同形状をなしており、その周縁部が対極4に貼り付けられている。この接着により、第一フィルム5と対極4とによって空間Rが形成されている。作用極3は、この空間Rの中に電解質11とともに封入されており、対極4と重ねられている。
耐熱性樹脂フィルム12は、図1(a)に最も明瞭に示されるように、全ての集電部7と対極4とを絶縁するのに十分な長さ(図1(a)の上下方向の長さ)を有する。また、封止部Sを構成する熱可塑性樹脂6の幅(図1(a)の左右方向の幅)よりも広い幅を有する。
第一基材8および第二基材9は直径50μmのTiからなるワイヤである。作用極3は、所定本数の第一基材8および第二基材9が互いに網目状に編まれてなる構造を有している。第一基材8と第二基材9とは、重複部において互いが十分接触するように編まれ、矩形をなすテキスタイル構造を有している。
第一基材8及び第二基材9としてはTiに限ることはなく、WやPtなど耐食性の高い金属およびそれらの合金も使用可能である。また、導電性を有し、かつ、電解質11に対して電気化学的に不活性な材質からなる線状基材を、例えば、Tiなどによって被覆したTi被覆金属線なども第一基材8及び第二基材9として用いることができる。
まず、Tiを押出成型等によってパイプ状に形成すると共に、Cuを押出成型等によって線状に形成し、これらTiパイプとCu線を同時に走行させつつTi製パイプの内部にCu線を挿入し、これらを絞って、両者間を密着させて、Ti被覆Cu線を得る。
このような第一基材8の太さ(直径)は、例えば、10μm〜10mmとするのが好ましい。ただし、柔軟性を十分に発揮させるためには、第一基材8の太さは細いほどよい。
多孔質酸化物半導体層13を形成する半導体は、酸化チタン(TiO2)である。この酸化チタンの膜厚は約5μmとしたが、特に限定されるものではなく、例えば、1μm〜50μmであってよい。
多孔質酸化物半導体層13を形成する半導体としては酸化チタンに限ることはなく、一般に色素増感型太陽電池に用いられるものであれば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO3)など様々な半導体電極が制限なく使用可能である。
この電解液をゲル化する際に用いられるゲル化剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などが挙げられる。
また、揮発性電解質溶液に代えて、一般に色素増感型太陽電池に用いられるものであれば、溶媒がイオン液体であるものやゲル化したものだけではなく、p型無機半導体や有機ホール輸送層といった固体であっても制限なく使用可能である。
常温溶融塩のカチオンとしては、四級化イミダゾリウム誘導体、四級化ピリジニウム誘導体、四級化アンモニウム誘導体などが挙げられる。
常温溶融塩のアニオンとしては、BF4 −,PF6 −,(HF)n −、ビストリフルオロメチルスルホニルイミド[N(CF3SO2)2 −]、ヨウ化物イオンなどが挙げられる。
イオン液体の具体例としては、四級化イミダゾリウム系カチオンとヨウ化物イオンまたはビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオンなどからなる塩類を挙げることができる。
また、導電性粒子の種類や粒子サイズなどは特に限定されるものではないが、イオン液体を主体とする電解液との混和性に優れ、この電解液をゲル化するようなものが用いられる。さらに、電解質11に含まれる他の共存成分に対する化学的安定性に優れることが必要である。
特に、電解質11がヨウ素/ヨウ化物イオンや、臭素/臭化物イオンなどの酸化還元対を含む場合であっても、酸化反応による劣化を生じないものが好ましい。
対極4の構成は、上述したようなPt被膜Ti板に限るものではなく、Pt板、またはPtを被膜した金属板であってよい。あるいは、カーボン板、またはカーボンを被膜した金属板であってよい。
一方、対極4の集電は、露出した部分からであれば、何れの場所からも集電が可能である。
さらに、本実施形態の構造は、対極4の片側の面が露出される構造であるため、露出されている対極4の何れの箇所からも集電することができるため、対極4からの集電が容易である。
以下、本発明に係る光電変換素子の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る光電変換素子の概略構成図であり、図3(a)は、その平面図である。図3(b)は、図3(a)のD−D線に沿う断面図であり、図3(c)は、図3(a)のE−E線に沿う断面図である。
第2実施形態は、第1実施形態と比較して、作用極3からの集電方法が異なる。第1実施形態が、作用極3を構成する第二基材9を空間Rの外部に延在させることで作用極3からの集電を行っていた。これに対し、第二実施形態においては、空間Rの内部において、作用極3に金属箔7aを抵抗溶接法を用いて結合させている。該金属箔7aが封止部Sを貫通することで、集電部として機能していることが、第2実施形態の特徴である。
つまり、第2実施形態の封止部Sは、図3(c)に示すように、集電用金属箔7aと対極4との間に耐熱性樹脂からなる第三フィルム12を配置している。封止部Sは、熱可塑性樹脂6を熱圧着することにより接着されている。
以下、本発明に係る光電変換素子の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
図4は、本発明の第3実施形態に係る光電変換素子の概略構成図であり、図4(a)は、その平面図である。図4(b)は、図4(a)のF−F線に沿う断面図、図4(c)は、図4(a)のG−G線に沿う断面図である。
第3実施形態は、樹脂製の可視光の透過性を有するフィルムからなる平面視矩形の袋状の袋体15の内部に、テキスタイル構造の作用極3と板状の対極4b(第四フィルム)とを重ね合わせた上で挿入した構造である。作用極3からは、第1実施形態と同様に、第二線材9が延在することで集電部7とされている。
この構造は、袋状の袋体15を使用することにより、封止箇所が封止部S3の一箇所で済むという利点がある。
図1に示す構造の光電変換素子を作製した。
まず、直径50μmのTi線8,9(線材)を、織機により布状(テキスタイル)に製織した。縦横のTi線が織り重ねられる矩形部分(テキスタイル部)のサイズは5cm×5cmとし、Ti線の本数は縦横それぞれ180本とした。
縦横に織られるTi線のうち一方は、集電部7として、布上部に対して外方に引き出されるように、他方のTi線に対して十分長くなるように製織した。
熱圧着されていない箇所から、メトキシアセトニトリルを溶媒とする揮発性電解質を注入した。最後に電解液注入部を熱圧着することによって、発電部を封止した。
耐熱性樹脂フィルムを対極と集電部との間に介在させない構成の色素増感型光電変換素子を作製した。しかし、作製した5個のうち2個において、集電部と対極との間で短絡が発生し、太陽電池として機能しなかった。
Claims (6)
- 可視光の透過性を有する第一フィルムと、対極として機能する第二フィルムとを重ねて配し、かつ、その間に空間が設けられるように両者の周縁部が熱可塑性樹脂を介して熱圧着されてなる収容体、
前記収容体の前記空間内に電解質ともに封入され、導電性を有する複数の線材が網目状に編まれてなる構造の作用極、
及び、前記作用極と電気的に接続され、前記熱可塑性樹脂からなる封止部の内部を貫通して前記空間内から外部へ延在する集電部、
を少なくとも備えた色素増感型光電変換素子であって、
前記封止部において、前記集電部と前記第二フィルムとの間に、耐熱性樹脂からなる第三フィルムを配したことを特徴とする色素増感型光電変換素子。 - 前記第三フィルムは、前記封止部において、前記第一フィルム/前記集電部の間、および前記集電部/前記第二フィルムの間、のうち、前記集電部/前記第二フィルムの間のみに配されていることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型光電変換素子。
- 前記封止部は、平面視矩形に形成され、
前記第三フィルムは、前記封止部の4つの辺部のうち集電部が封止部の内部を貫通している辺部のみに形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の色素増感型光電変換素子。 - 導電性を有する複数の線材が網目状に編まれてなる構造の作用極と、
対極として機能する第四フィルムと、
前記作用極と電気的に接続された集電部と、
可視光の透過性を有する透過性フィルムからなる袋体とを少なくとも備え、
前記袋体の開口部が熱可塑性樹脂を介して熱圧着されることによって、前記作用極及び前記第四フィルムが電解質とともに前記袋体中に封入され、
前記対極の少なくとも一部及び前記集電部が、前記熱可塑性樹脂からなる封止部の内部を貫通して前記袋体の外部へ延在されてなる色素増感型光電変換素子であって、
前記封止部において、前記第四フィルムと前記集電部との間に前記熱可塑性樹脂とともに耐熱性樹脂からなる第五フィルムを配置することを特徴とする色素増感型光電変換素子。 - 前記第五フィルムは、前記封止部において、前記透過性フィルム/前記集電部の間、および前記集電部/前記第四フィルムの間、のうち、前記集電部/前記第四フィルムの間のみに配置されていることを特徴とする請求項4に記載の色素増感型光電変換素子。
- 前記袋体は、平面視矩形に形成され、
前記第五フィルムは、前記袋体の4つの辺部のうち集電部が封止部の内部を貫通している辺部のみに形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の色素増感型光電変換素子。
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