JP5460198B2 - 色素増感型光電変換素子 - Google Patents
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Description
色素増感型太陽電池は、シリコン系の従来型の太陽電池と比較して大幅な低価格化が可能とされているが、発電部に使用される導電性基板の価格が低価格化の障害となっている。従来構造の色素増感型太陽電池においては、特に光が入射する側の電極(窓電極)には、可視光の透過性と高い伝導性が要求されるため、ガラス基板やプラスチック基板上にスズドープ酸化インジウムやフッ素ドープ酸化スズといった透明導電性金属酸化物を塗布した基板が用いられてきた。したがって、このような透明導電性基板を用いていない、全く新しい構造の色素増感型太陽電池が実現するならば、太陽電池の大幅な低価格化が可能であるとして研究開発が進められている。
大面積素子を可能とする構造として、特許文献5に記載されたようなものがある。この構造は、例えば作用極をなす金属線を、複数の金属線が網目状に編まれてなる布状構造としたものであって、このような構造の作用極を用いることによって、大面積素子を構成するとともに、フレキシブルな構造の色素増感型光電変換素子の提供を可能とするものである。
この構成は、互いに直交する金属線の重複部における金属線どうしの抵抗が、無視できるほど小さい場合は問題とはならない。しかし実際は、金属線に塗布される酸化チタンや、作用極と対極の間に介在する電解液の影響により、金属線どうしの接触が不十分となり、作用極の抵抗が上昇するという現象が見られた。この結果、作用極で発生した電子の集電効率が低下し、ひいては光電変換素子の光電変換効率が低下するという問題があった。
本発明の請求項2に記載の色素増感型光電変換素子(第2発明)は、請求項1において、前記第1基材または前記第2基材の一方の両端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の色素増感型光電変換素子(第3発明)は、導電性を有するとともに線状をなす複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域とからなる作用極と、前記第1基材および前記第2基材の両方の一端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の色素増感型光電変換素子(第4発明)は、請求項3において、前記第1基材または前記第2基材の両方の両端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする。
第2発明の光電変換素子によれば、第1基材または第2基材の一方の両端側が、複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線を有するものとしたため、第1発明の光電変換素子と比較して、作用極において発生する電子と集電部との距離が短くなるため、より光電変換効率が向上するという効果が得られる。
第3発明の光電変換素子によれば、第1基材および第2基材の両方の一端側が、複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線を有するものとしたため、作用極を構成する第1基材および第2基材の全ての基材から直接集電することが可能となるため、第1発明と比較してより光電変換効率が向上するという効果が得られる。
第4発明の光電変換素子によれば、第1基材または第2基材の両方の両端側が、複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線を有するものとしたため、第3発明と比較して、作用極において発生する電子と集電部との距離が短くなるため、より光電変換効率が向上するという効果が得られる。
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態の光電変換素子を示す概略構成図、図2は、図1のII−II線に沿う、光電変換素子の断面図である。また、図3は、光電変換素子の分解斜視図である。
発電部2は、平面視矩形の布状構造の作用極5と、平面視矩形の板状の対極6とがセパレータ10を介して重ね合わされるように構成されている。布状構造の作用極5は、導電性を有する複数の第1基材8と複数の第2基材9と、該第1基材8と第2基材9の周囲に配され色素を担持した多孔質酸化物半導体層13とから構成されており、該多孔質酸化物半導体層13は、増感色素とともに電解質18をも含浸している。
第1基材8と第2基材9とはともに線状をなし、これら第1基材8と第2基材9とが網目状に編まれることで矩形の布状構造をなしている。
作用極5と対極6、およびその間に挿入されているセパレータ10は、2枚のフィルム14により挟まれており、2枚のフィルム14内は電解質18で満たされている。発電部2は4辺において、熱圧着部12によって封止されており、これにより電解質18がフィルム14内に封入されている。
第1基材8および第2基材9は直径50μmのTiからなるワイヤである。作用極5は、所定本数の第1基材8および第2基材9が互いに網目状に編まれてなる構造を有している。第1基材8と第2基材9とは、重複部において互いが十分接触するように編まれ、矩形をなす布状構造を有している。
第1基材8としてはTiに限ることはなく、WやPtなど耐食性の高い金属およびそれらの合金も使用可能である。また、導電性を有し、かつ、電解質18に対して電気化学的に不活性な材質からなる線状基材を、例えば、Tiなどによって被覆したTi被覆金属線なども第1機材8として用いられる。
以下、Ti被覆金属線としてTi被覆Cu線の製造方法の一例を記す。
まず、Tiを押出成型等によってパイプ状に形成すると共に、Cuを押出成型等によって線状に形成し、これらTiパイプとCu線を同時に走行させつつTi製パイプの内部にCu線を挿入し、これらを絞って、両者間を密着させて、Ti被覆Cu線を得る。
このような第1基材8の太さ(直径)は、例えば、10μm〜10mmとするのが好ましい。ただし、柔軟性を十分に発揮させるためには、第1基材8の太さは細いほどよい。
複数の第1基材8は、第3辺22から第4辺23まで所定本数列設されているとともに、第1辺20から集電部3まで延在している。つまり、作用極5を構成する基材のうち第1基材8の全ては、矩形をなす発電部2の一辺より発電部2から延長されるように、外部に引き出されている。第1基材8のうち、第2辺21と集電部3との間の部分は、集電用配線部4となり、作用極5にて発生した電子は、この集電用配線部4を介して集電部に集められる。
延長された第1基材8は、発電部2の外部で集電構造をなすように結線処理が施される。結線する手段としては、特に限定はされず、例えば、導電性のある板材上に全ての第1基材8を半田付けするなどして結線してもよい。
多孔質酸化物半導体層13を形成する半導体は、酸化チタン(TiO2)である。この酸化チタンの膜厚は約5μmとしたが、特に限定されるものではなく、例えば、1μm〜50μmであってよい。
多孔質酸化物半導体層13を形成する半導体としては酸化チタンに限ることはなく、一般に色素増感型太陽電池に用いられるものであれば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO3)など様々な半導体電極が制限なく使用可能である。
この電解液をゲル化する際に用いられるゲル化剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などが挙げられる。
また、揮発性電解質溶液に代えて、一般に色素増感型太陽電池に用いられるものであれば、溶媒がイオン液体であるものやゲル化したものだけではなく、p型無機半導体や有機ホール輸送層といった固体であっても制限なく使用可能である。
常温溶融塩のカチオンとしては、四級化イミダゾリウム誘導体、四級化ピリジニウム誘導体、四級化アンモニウム誘導体などが挙げられる。
常温溶融塩のアニオンとしては、BF4 −,PF6 −,(HF)n −、ビストリフルオロメチルスルホニルイミド[N(CF3SO2)2 −]、ヨウ化物イオンなどが挙げられる。
イオン液体の具体例としては、四級化イミダゾリウム系カチオンとヨウ化物イオンまたはビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオンなどからなる塩類を挙げることができる。
また、導電性粒子の種類や粒子サイズなどは特に限定されるものではないが、イオン液体を主体とする電解液との混和性に優れ、この電解液をゲル化するようなものが用いられる。さらに、電解質18に含まれる他の共存成分に対する化学的安定性に優れることが必要である。
特に、電解質18がヨウ素/ヨウ化物イオンや、臭素/臭化物イオンなどの酸化還元対を含む場合であっても、酸化反応による劣化を生じないものが好ましい。
対極6の構成は、上述したようなPt被膜Ti板に限るものではなく、Pt板、またはPtを被膜した金属板であってよい。あるいは、カーボン板、またはカーボンを被膜した金属板であってよい。
対極6の厚みは約40μm、膜の厚みは30nmとするとよいが、電解液に耐え、作用極5と対極6とを絶縁可能であれば、これらに限定はされない。
フィルム14は、作用極5の布状構造部分、および対極6と略同形状の矩形形状をなしており、その4辺において熱圧着部12が形成されている。
また、発電部2は、布状構造の作用極5、薄板状の対極6、およびPETからなるフィルム14の組合せであるため、フレキシブル性に優れた光電変換素子の製造が可能となる。また、光電変換素子1の薄型化も可能となる。
以下、本発明に係る光電変換素子の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図4(a)は、本実施形態に係る光電変換素子第2の実施形態を示す概念図である。なお、本実施形態では、上述した第1実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
すなわち、本実施形態の光電変換素子は、第1基材8が、発電部2の左右両側の外部で集電が可能であるのに十分な長さを有している。第1基材8の両端部は、集電が可能となるように結線され、さらに左右の集電部3が、集電用配線部11によって結線される構成となる。
以下、本発明に係る光電変換素子の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
図4(b)は、本実施形態に係る光電変換素子第3の実施形態を示す概念図である。なお、本実施形態では、上述した第1実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
すなわち、本実施形態の光電変換素子は、第1基材8および第2基材9が、発電部2の外部で集電が可能であるのに十分な長さを有している。第1基材8および第2基材9の端部は、集電が可能となるように結線され、さらにそれぞれの集電部3が、集電用配線11によって結線される構成となる。
この実施形態によれば、第1基材8の全てが外方へ引き出されるとともに、第2基材9の全てが外方へ引き出され、第1基材8と第2基材9とが集電用配線部4を有するものとしたため、第1基材8および第2基材9の全てから電子を取り出すことが可能となり、光電変換効率が向上するという効果が得られる。
以下、本発明に係る光電変換素子の第4実施形態を図面に基づいて説明する。
図4(c)は、本実施形態に係る光電変換素子第4の実施形態を示す概念図である。なお、本実施形態では、上述した第1実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
この実施形態によれば、第1基材8および第2基材9の全てから電子が直接集電されるともに、第1基材8および第2基材9の両側から集電することが可能となるため、光電変換効率が向上するという効果が得られる。
図1に示す構造の光電変換素子を作製した。
まず、直径50μmのTi線を、織機により布状に製織した。縦横のTi線が織り重ねられる矩形部分(布状部)のサイズは5cm×5cmとし、Ti線の本数は縦横それぞれ180本とした。
縦横に織られるTi線のうち一方は、集電のため、布上部に対して外方に引き出されるように、他方のTi線に対して十分長くなるように製織した。
N719と呼ばれる)の0.3mM、アセトニトリル/tert-ブタノール=1:1溶液に浸漬し、室温で24時間放置してTiO2表面に色素を担持した。色素溶液から引き上げた後、上記混合溶媒で洗浄し、これを作用極とした。
熱圧着されていない1辺から、メトキシアセトニトリルを溶媒とする揮発性電解質を注入した。最後に電解液注入部を熱圧着することによって、発電部を封止した。
また、この光電変換素子を折り曲げてみたところ、変換効率は変動することがなく、一定値を維持した。
以上のことから、フレキシブル性に富む、光電変換効率の良好な光電変換素子を提供できることが判明した。
布状の作用極を発電部の外部に集電部を設けず、Ti線の単線のみを、発電部の外部に取り出した光電変換素子を作製した。
この構造の光電変換素子においては、光電変換効率は0.05%ほどであり、実施例に対して、約1/44の光電変換効率しか得ることができなかった。
Claims (3)
- 導電性を有するとともに線状をなす複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域とからなる作用極と、
前記第1基材または前記第2基材の一方の両端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、
該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする色素増感型光電変換素子。 - 導電性を有するとともに線状をなす複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域とからなる作用極と、
前記第1基材および前記第2基材の両方の一端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、
該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする色素増感型光電変換素子。 - 前記第1基材および前記第2基材の両方の両端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、
該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする請求項2に記載の色素増感型光電変換素子。
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