JP5485425B2 - 光電変換素子 - Google Patents

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Description

本発明は、色素増感型の光電変換素子に関する。
環境問題、資源問題などを背景に、クリーンエネルギーとしての太陽電池が注目を集めており、その中でも特に色素増感型太陽電池は、スイスのグレッツェルらのグループなどから提案されたもので、安価で高い光電変換効率を得られる光電変換素子として着目されている(非特許文献1を参照)。
図7は、従来の色素増感型太陽電池の一例を示す断面図である。
この色素増感型太陽電池100は、増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層103が一方の面に形成された第一基板101と、導電層104が形成された第二基板105と、これらの間に封入された例えばゲル状電解質からなる電解質層を主な構成要素としている。なお、多孔質酸化物半導体層103は多孔質であることから、その孔の中(の少なくとも一部)にまで、電解液(電解質)が浸透している。
第一基板101としては、光透過性の板材が用いられ、第一基板101の色素増感半導体層103と接する面には導電性を持たせるために透明導電層102が配置されており、第一基板101、透明導電層102および多孔質酸化物半導体層103により作用極108をなす。
第二基板105としては、電解質層106と接する側の面には電解質を反応させるために例えば炭素や白金などからなる導電層104が設けられ、第二基板および導電層104により対極109を構成している。
多孔質酸化物半導体層103と導電層104が対向するように、第一基板101と第二基板105を所定の間隔をおいて配置し、両基板間の周辺部に熱可塑性樹脂からなる封止剤107を設ける。
そして、この封止剤107を介して2つの基板101、105を貼り合わせてセルを積み上げ、電解液の注入口110を介して、両極108、109間にI/I などの酸化・還元対を含む有機電解液を充填し、電荷移送用の電解質層106を形成したものが挙げられる。
このような色素増感型太陽電池の対極として、多くの場合、透明導電性ガラス基板上に白金層を形成したものが用いられている。しかし、透明導電膜の導電性が十分に高いと言えず、特に、大面積の素子を作製する場合には、白金層を大幅に厚くするなど導電性不足を補う必要がある。
作用極については、集電用の金属グリッドなどを配することにより、導電性不足を改善する試みがある(例えば、特許文献1)。また、作用極とともに対極についても同様の試みを行った事例が知られている(例えば、特許文献2)。
また、従来の対極は、ラフネスファクタ1000以上という作用極と比較すると、電解質の反応面積が非常に小さい。
従来の透明導電性ガラス基板をベースとした対極を、金属板、金属箔をベースとしたものに替えることで、導電性不足解消を図るアイデアはあるが、ヨウ素電解質に対する耐食性が要求されるため、適用可能な材料が限られる。適用可能な材料としてチタンが挙げられるが、集電端子を直接ハンダ付けすることができない。集電金属を押し付けて接触のみで満足できるレベルまで抵抗を下げるためには、実用的とは言えない圧力が必要になってしまう。不完全な端子接合では集電端子界面で接触抵抗が大きくなり、光電変換効率向上の妨げとなってしまう。特に、大型素子ではその影響を無視できない。
特開2003−203681号公報 特表2002−536805号公報
O'' Regan B., Graetzel M., A low cost, high-efficiency solar cell based on dye-sensitized colloidal TiO2 films, Nature 1991;353:737-739
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、対極において耐食性と導電性とを両立させ、内部抵抗を低減して光電変換特性に優れた光電変換素子を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に記載の光電変換素子は、増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層を有し、窓極として機能する作用極と、少なくとも一部に電解質層を介して該作用極と対向して配される対極とを備えてなる光電変換素子であって、前記対極は、その厚さ方向に異なる部材からなる部位が重ねて配されたクラッド材であるとともに、前記電解質に対して不活性な金属板と、金属層とを重ねて構成され、該金属板は、その一面が前記電解質層の方向を向いて配されることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の光電変換素子は、請求項1において、前記金属板の一面上に、前記電解質との反応層が配されたことを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の光電変換素子は、請求項1または2において、前記金属板の一面が粗面化されていることを特徴とする。
本発明に係る第一の光電変換素子では、対極を、電解質に対して不活性な金属板と、金属層とを重ねて構成したものとする。前記金属板は、その一面が前記電解質層と接する部分があり、電解質に対する耐食性が確保される。一方、前記金属板の他面が粗面化され前記金属層と接していることで、集電端子のハンダ付けが可能となり導電性が確保される。
これにより、対極において耐食性と導電性とを両立することができ、内部抵抗を低減して光電変換特性に優れた光電変換素子を提供することができる。
また、本発明に係る第二の光電変換素子では、対極をクラッド材とすることで、対極の厚さ方向において、優れた密着性が確保されることに加えて、電解質に対する耐食性とともに電極としての優れた導電性も兼ね備えることができる。これにより、内部抵抗を低減して光電変換特性に優れた光電変換素子を提供することができる。
また、本発明に係る対極の製造方法では、電解質に対して不活性な金属板を用い、その両面を同時に粗面化することで、容易に両面を粗面化することができ、さらに導電性と電解質に対する耐食性とを両立することができる。さらに、前記金属板の粗面化された一方の面に金属層を、他方の面に反応層を個別に又は同時に形成する工程を行なうことにより、一方の面には金属層による優れた導電性を確保するともに、他方の面には反応層の機能向上を付与することが容易にできる。ゆえに、本方法は、対極の両面にそれぞれ異なる機能、すなわち優れた導電性の確保と反応促進機能を持たせた対極の提供に供する。
本発明に係る光電変換素子の一例を示す概略断面図である。 図1の光電変換素子の変形例を示す概略断面図である。 本発明に係る光電変換素子の他の一例を示す概略断面図である。 図3の光電変換素子の変形例を示す概略断面図である。 本発明に係る光電変換素子の他の一例を示す概略断面図である。 図5の光電変換素子の変形例を示す概略断面図である。 従来の光電変換素子の一例を示す概略断面図である。
以下、本発明に係る光電変換素子の一実施形態を図面に基づいて説明する。
<第一実施形態>
図1は、本発明に係る光電変換素子の一実施形態を示す概略断面図である。
この光電変換素子1は、作用極14と、対極20と、これらの間に封入された電解質からなる電解質層15と、から概略構成されている。
作用極14は、透明基材11と、その一方の面11aに形成された透明導電膜12と、透明導電膜12の一面に形成され増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層13とから構成されている。なお、多孔質酸化物半導体層13は多孔質であることから、その孔の中(の少なくとも一部)にまで、電解液(電解質)が浸透している。
対極20は、金属板21と、その一方の面21a上に配された金属層22とから構成されている。
光電変換素子1において、電解質層15を作用極14と対極20で挟んでなる積層体が、その外周部が封止部材16によって接着、一体化されて光電変換素子として機能する。
そして本発明では、前記対極20は、前記電解質に対して不活性な金属板21と金属層22とを重ねて構成され、該金属板21は、その一面21bが前記電解質層15と接し、その他面21aが粗面化されており、前記金属層22と接していることを特徴とする。
本発明では、対極20を、電解質に対して不活性な金属板21と、金属層22とを重ねて構成している。ここで、電解質に対して不活性な金属とは、化学的に腐食されにくい金属を意味しており、例えば、白金(Pt)やチタン(Ti)、ニッケル(Ni)等が挙げられる。ゆえに、金属板21としては、板状のPt、Ti、Niなどが用いられる。
このような金属板21が、その一面21bを前記電解質層15の方向に向けて配されることで、電解質に対する耐食性が確保される。一方、前記金属板21の他面21aが粗面化され前記金属層22と接していることで、集電端子のハンダ付けが可能となり導電性が確保される。これにより、対極20は、集電端子のハンダ付けが可能で導電性と電解液に対する耐食性とを両立したものとなる。このような対極20を備えた光電変換素子1は、内部抵抗が低減され、優れた光電変換特性を得ることができる。その効果は、内部抵抗が大きく影響する大面積素子において特に有効である。
金属板21の種類は特に限定されないが、直接接触する電解質に容易に腐食されない材料として、前述したPt、Ti、Niの他に、モリブデン(Mo)等を選ぶことが可能であり、その中でもTiが好ましい。
なお、詳細は後述するが、金属板21において電解質層15と接する一面21bには、図3に示すような反応層23を配してもよい。
上記金属板21の表面を物理的、化学的エッチング処理により粗化する。これにより、金属板21と上記金属層22との密着性が向上する。また、粗面化の際に金属表面の酸化層が除かれるので、接触抵抗の低減と密着強度の向上が可能である。
金属板21の表面粗化方法は任意であるが、例えば、サンドブラストやウェットブラストなどの物理的手法や、酸性、アルカリ性のものをはじめとする各種薬液を用いた化学的手法を用いることができる。
金属板21の表面粗さは特に限定されないが、平均表面粗さRaが0.13μm以上であることが好ましい。粗さの下限については意図的な粗面化処理を施していない市販金属よりも十分に大きければよいが、Raが小さすぎると表面粗化による表面積増大の効果が小さい。上限については、例えば、金属板の両面を粗面化して片側に電解質との反応層を設ける場合には、素子の特性により有効な表面積上限はおのずと決まる。例えば、色素増感型の光電変換素子においては、入射する光または色素の吸収波長域によって単位面積当たりで発生できる電流の上限が規定されるため、対極20にそれ以上の電流密度に対応できるような表面積を与えても発電量への寄与は期待できない。また、金属板が厚くなり重量が増えるなどの不都合も生じる。さらに、貫通孔が開くような粗さは好ましくない。
金属層22は、チタン金属と集電金属(配線)とをハンダ付けで接合できるよう、金属板21表面にハンダ付け可能な別の金属層22を設ける。金属層22には、ハンダ付け可能で、且つ、金属板21よりも導電性に優れる材料が好ましい。特に、銅、銀、金が好ましい。
金属層22をめっきにより形成すると、スパッタ法などのように高価な真空プロセスを必要としない。また、金属層22を容易に厚膜化することもできるので、スパッタ法によるものと比べて対極20の導電率をより高いものにできる。必要とされる導電性の確保が容易なので、より薄いチタン板も金属板21として適用可能である。
また、金属板21に対する表面粗化から続けて金属層22を形成すると、チタン表面の酸化層成長を抑えられるので、金属板/金属層界面の抵抗をより低く制御できる。
また、金属板21の厚さをa、体積抵抗率をαとし、金属層22の厚さをb、体積抵抗率をβとしたとき、α>βであることが好ましい。
限定はされないが、a×(β/α)<bであることが好ましい。これにより、金属板21よりも低抵抗の金属層22となり、より優れた導電性を確保することができる。
本実施形態の対極20において、金属板21としてチタンと、金属層22として銅との組み合わせが好ましい。すなわち、
耐食性:チタン◎、銅×
導電率:チタン<<銅
ハンダ付け:チタン×、銅○
であるので、この組み合わせによれば、より高い導電性と電解液に対する耐食性とを両立した対極20とすることができる。
前述のとおり、チタン板上に銅層をめっき法で形成する方法に代えて、銅とチタンからなるクラッド材を用いることも可能である。電極材としてクラッド材を適用した場合には銅層の厚膜化が容易であることから、導電性により優れた対極20を得ることができる。
また、クラッド材であれば、高価な装置を必要とするスパッタ法よりも低コストで基板を作製できる。
チタン板(金属板21)上に銅層(金属層22)をスパッタ法で形成することも可能であるが、金属板21としてクラッド材を適用した場合には銅層を厚くすることができるので、導電性に優れる対極20を容易に得ることができる。一方で、銅上にチタンをスパッタ形成することも考えられるが、一切のピンホールを含まず、耐食性を満足するチタン層を形成することは極めて難しい。
本実施形態の対極20は、接続端子のハンダ付けが可能になり、高い導電率と優れた耐食性とを両立することができる。このような対極20を備えた光電変換素子1は、内部抵抗が大きく影響する大面積素子において、優れた光電変換特性を得ることができる。
作用極14は、透明導電性基板10をなす透明導電膜12の一方の面に形成され、増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層13とから構成されている。
この透明導電性基板10は、透明基材11、および、その一方の面11aに形成された透明導電膜12から概略構成されている。
透明基材11としては、光透過性の素材からなる基板が用いられ、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなど、通常、透明基材として用いられるものであればいかなるものでも用いることができる。透明基材11は、これらの中から適宜選択される。また、透明基材11としては、用途上、できる限り光透過性に優れる基板が好ましい。
透明導電膜12は、透明基材11に導電性を付与するために、その一方の面11aに形成された薄膜である。本発明では、透明導電性基板の透明性を著しく損なわない構造とするために、透明導電膜12は、導電性金属酸化物からなる薄膜であることが好ましい。
透明導電膜12を形成する導電性金属酸化物としては、例えば、スズ添加酸化インジウム(ITO)、フッ素添加酸化スズ(FTO)などが用いられる。また、透明導電膜12は、FTOのみからなる単層の膜、または、ITOからなる膜にFTOからなる膜が積層されてなる積層膜であることが特に好ましい。
透明導電膜12を、FTOのみからなる単層の膜、または、ITOからなる膜にFTOからなる膜が積層されてなる積層膜とすることにより、可視域における光の吸収量が少なく、導電率が高く、かつ、耐熱性に優れる透明導電性基板を構成することができる。
多孔質酸化物半導体層13は、透明導電膜12の上に設けられており、その表面には増感色素が担持されている。多孔質酸化物半導体層13を形成する半導体としては特に限定されず、通常、光電変換素子用の多孔質酸化物半導体を形成するのに用いられるものであれば、いかなるものでも用いることができる。このような半導体としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)、酸化タングステン(WO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb)などを用いることができる。
多孔質酸化物半導体層13を形成する方法としては、例えば、市販の酸化物半導体微粒子を所望の分散媒に分散させた分散液、あるいは、ゾル−ゲル法により調製できるコロイド溶液を、必要に応じて所望の添加剤を添加した後、スクリーンプリント法、インクジェットプリント法、ロールコート法、ドクターブレード法、スプレー塗布法など公知の塗布方法により塗膜形成した後、この塗膜を焼成する方法などを適用することができる。
増感色素としては、ビピリジン構造、ターピリジン構造などを配位子に含むルテニウム錯体、ポルフィリン、フタロシアニンなどの含金属錯体、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの誘導体といった有機色素などを適用することができ、これらの中から、用途、使用半導体に適した挙動を示すものを特に限定なく選ぶことができる。
電解質層15は、多孔質酸化物半導体層13を含む両電極間に電解液を含浸させてなるものか、または、この電解液を適当なゲル化剤を用いてゲル化(擬固体化)したものが用いられる。
上記電解液としては、酸化還元種を含む有機溶媒、室温溶融塩(イオン液体)などを用いることができる。また、このような電解液を適当なゲル化剤(高分子ゲル化剤、低分子ゲル化剤、各種ナノ粒子、カーボンナノチューブなど)を導入することにより疑固体化したもの、いわゆるゲル電解質を用いても構わない。溶媒として特に限定されるものは無いが、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンなどの有機溶媒、イミダゾリウム系カチオンやピロリジニウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン等といった四級化された窒素原子を有するカチオン等とヨウ化物イオン、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオン、ジシアノアミドアニオン、チオシアン酸アニオン等からなる常温溶融塩などを選ぶことができる。酸化還元種も特に限定されるものでは無いが、ヨウ素/ヨウ化物イオン、臭素/臭化物イオンなどを加えて形成されるものを選ぶことができ、例えば前者であればヨウ化物塩(リチウム塩、四級化イミダゾリウム塩の誘導体、テトラアルキルアンモニウム塩などを単独、あるいは、複合して用いることができる。
)とヨウ素を単独、あるいは、複合して添加することにより与えることができる。電解液には、さらに、必要に応じて、4−tert−ブチルピリジン、N−メチルベンズイミダゾール、グアニジニウム塩の誘導体など種々の添加物を加えても構わない。
封止部材16としては、対極20に対する接着性に優れるものであれば特に限定されないが、例えば、ハイミラン(三井デュポンポリケミカル社製)、バイネル(デュポン社製)などが挙げられる。
このような光電変換素子1は、接続端子のハンダ付けが可能で高い導電率と優れた耐食性とを両立した対極20を備えているので、内部抵抗が低減され、優れた光電変換特性を得ることができる。その効果は、内部抵抗が大きく影響する大面積素子において特に有効である。
図2は、上述した図1の光電変換素子の変形例を示す概略断面図である。図1の光電変換素子では、封止部材16が対極20と作用極14の間に挟まれるのに対して、図2の光電変換素子においては、対極20を構成する金属板21が作用極14を構成する透明基材11よりも狭い面積を有し、電解質層15と金属板21の側面部を少なくとも被覆するように封止部材16を配した点が相違している。なお、図2に示した封止部材16は更に、対極20の作用極14と反対側の面上であって、外縁部も被覆するように配されている。
図2の構成によれば、作用極14よりも狭い面積を有する対極20と電解質層15との側面部を少なくとも被覆するように封止部材16を配することによって封止しているので、封止部材および封止法の選択肢が増えるとともに、封止部材による電極間距離の制限も避けられ、優れた発電特性を有する光電変換素子を提供することができる。
<第二実施形態>
図3は、本実施形態に係る光電変換素子を示す概略断面図である。なお、以下の説明では、上述した第一実施形態と異なる部分について主に説明し、第一実施形態と同様の部分についてはその説明を省略する。
本実施形態では、対極20において、前記金属板21の一面21bが粗面化されており、該一面21b上に電解質との反応層23が配されていることを特徴とする。
反応層23としては、電解質中の酸化還元種が反応層表面にて円滑に酸化還元反応を起こすことができる材料であればよく、特に好ましくは、白金、炭素、導電性高分子の少なくとも1つを含む材料から選ばれる。白金層は、蒸着法、スパッタ法、印刷法や塩化白金酸塩の熱処理といった手法により形成することができる。
炭素層は、蒸着法、スパッタ法や炭素粉末の塗布といった手法により形成することができる。炭素材として、グラファイト化炭素、非晶質炭素、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン類など、特に限定されることなく適用可能である。導電性高分子層は、電解重合、分散液または溶液の塗布などの手法により形成可能である。導電性高分子として、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン:PEDOT)などのポリチオフェン誘導体やポリピロール、ポリアニリンなどの誘導体を用いることが可能であり、特に限定されるものはない。
特に、金属板21の反応層形成面を粗面化することで、反応層21の表面積も増え、電解質との反応面積が増大し、光電変換素子が機能する際の電解質との反応をより円滑に進めることができる。これにより、本実施形態の対極20を備えた光電変換素子は、光電変換効率の面でより好ましいものとなる。
次に、このような対極20の製造方法について説明する。
本発明の対極の製造方法は、前記電解質に対して不活性な金属板の両面を同時に粗面化する工程と、前記金属板の粗面化された一方の面21aに金属層を、他方の面21bに反応層を個別にまたは同時に形成する工程と、を少なくとも備えることを特徴とする。
電解質に対して不活性な金属板を用い、その両面を同時に粗面化することで、容易に両面を粗面化することができ、さらに導電性と電解質に対する耐食性とを両立することができる。さらに、前記金属板の粗面化された一方の面に金属層を、他方の面に反応層を個別に又は同時に形成する工程を行なうことにより、一方の面には金属層による優れた導電性を確保するともに、他方の面には反応層による反応促進機能を付与することが容易にできる。ゆえに、本方法は、対極の両面にそれぞれ異なる機能、すなわち優れた導電性の確保と反応促進機能を持たせた対極の提供に供する。
金属板の表面粗化方法は特に限定されないが、例えば、サンドブラストやウェットブラストなどの物理的手法や、酸性、アルカリ性のものをはじめとする各種薬液を用いた化学的手法を用いることができる。
金属層22の形成方法は特に限定されないが、めっきにより形成されることが好ましい。めっきによれば、スパッタ法などのように高価な真空プロセスを必要としない。また、金属層22を容易に厚膜化することもできるので、スパッタ法によるものと比べて対極20の導電率をより高いものにできる。
また、金属板21に対する表面粗化から続けて金属層22を形成すると、金属板表面の酸化層成長を抑えられるので、金属板/金属層界面の抵抗をより低く制御できる。
反応層23の形成方法は特に限定されないが、反応層23が白金層であれば、蒸着法、スパッタ法、印刷法や塩化白金酸塩の熱処理といった手法により形成することができる。反応層23が炭素層であれば、蒸着法、スパッタ法や炭素粉末の塗布といった手法により形成することができる。反応層23が導電性高分子層であれば、電解重合、分散液または溶液の塗布などの手法により形成可能である。
以上のようにして得られる対極20は、接続端子のハンダ付けが可能で、高い導電率と優れた耐食性とを両立することができる。このような対極20を備えた光電変換素子1は、内部抵抗が低減され、優れた光電変換特性を得ることができる。
図4は、上述した図3の光電変換素子の変形例を示す概略断面図である。図3の光電変換素子では、封止部材16が対極20と作用極14の間に挟まれるのに対して、図4の光電変換素子においては、対極20を構成する金属板21が作用極14を構成する透明基材11よりも狭い面積を有し、電解質層15と金属板21の側面部を少なくとも被覆するように封止部材16を配した点が相違している。なお、図4に示した封止部材16は更に、対極20の作用極14と反対側の面上であって、外縁部も被覆するように配されている。
図4の構成によれば、作用極14よりも狭い面積を有する対極20と電解質層15との側面部を少なくとも被覆するように封止部材16を配することによって封止しているので、封止部材および封止法の選択肢が増えるとともに、封止部材による電極間距離の制限も避けられ、優れた発電特性を有する光電変換素子を提供することができる。
<第三実施形態>
図5は、本実施形態に係る光電変換素子を示す概略断面図である。なお、以下の説明では、上述した第一実施形態と異なる部分について主に説明し、第一実施形態と同様の部分についてはその説明を省略する。
本実施形態では、対極20C(20)が、その厚さ方向に異なる部材からなる部位20Ca、20Cbを重ねて配してなるクラッド材を用いたことを特徴とする。
ここで、クラッド材とは、異なる種類の金属を圧延加工により貼り合わせた材料のことを意味する。対極をクラッド材とすることで、対極の厚さ方向において、優れた密着性が確保されることに加えて、電解質に対する耐食性とともに電極としての優れた導電性も兼ね備えることができる。
本実施形態では、対極20を、電解質に対して不活性な金属からなる第一の部位20Caと、ハンダ付けが可能な金属からなる第二の部位20Cbとを重ねて配した二層構造とし、第一の部位20Ca側が前記電解質層15と接するように配している。これにより、対極20は、第二の部位20Cbを有することから集電端子のハンダ付けが可能であるとともに、第一の部位20Caの存在により導電性と電解液に対する耐食性も同時に確保される。
このような対極20を備えた光電変換素子1は、内部抵抗が低減され、優れた光電変換特性を得ることができる。その効果は、内部抵抗が大きく影響する大面積素子において特に有効である。
しかしながら、本発明の対極は、上記の例に限定されるものではなく、例えば三層以上の構造であってもよいし、その配置方法も上記の例に限定されない。
また、金属板を構成する第一の部位20Caの一面21b上に、電解質との反応層(不図示)が配された構成を採ってもよい。さらに、前述した第二実施形態と同様に、金属板を構成する第一の部位20Caの一面21bは、粗面化されていてもよい。
対象となる対極がクラッド材であるかは、以下の点から確認することができる。
スパッタ形成層などは、一般に厚みが異なる:スパッタ形成層がせいぜい数百nm〜数μm厚レベルであるのに対して、クラッド材であれば数μm〜数十μm以上厚みをもつ箔の組み合わせでなる。また、めっき法などでも厚膜形成は不可能ではないが、その場合にも金属組織の様子が異なる。
貼り合わせたままのクラッド材の場合:(作製時、一般に圧延工程を含むので)金属箔の長手方向(圧延作業方向)に向かって結晶方位の揃った長い結晶粒となる。これは、金属組織を直接観察するほか、X線回折でシャープなピークが現れることで確認できる。特に、対象が銅層である場合には、(111)面に由来するシャープなピークが現れる。
アニール処理を経たクラッド材の場合:対象が銅、銀、金といった再結晶温度の低い金属であれば、上記同様方位の揃った非常に大きな結晶粒となる。
圧延を加えためっき層なども想定できるが、その場合にも以下のように判別できる。クラッド材の場合、圧延しながら貼り合せていくので、表層に存在する酸化層を巻き込みながら新たに露出した面同士が接合していく構造となる。つまり、接合面では酸化層を島状に取り込んだ状態で金属結合が形成されている。この構造は、透過電子顕微鏡(TEM)等により確認することができる。一方で、めっき法などによる金属層では、接合界面は酸化層を介した状態で存在する。
以上いずれかの状態を見出すことにより、対象の対極がクラッド材かそれ以外の手法によるものかを判別することができる。
図6は、上述した図5の光電変換素子の変形例を示す概略断面図である。図5の光電変換素子では、封止部材16が対極20と作用極14の間に挟まれるのに対して、図6の光電変換素子においては、対極20を構成する金属板21が作用極14を構成する透明基材11よりも狭い面積を有し、電解質層15と金属板21の側面部を少なくとも被覆するように封止部材16を配した点が相違している。なお、図6に示した封止部材16は更に、対極20の作用極14と反対側の面上であって、外縁部も被覆するように配されている。
図6の構成によれば、作用極14よりも狭い面積を有する対極20と電解質層15との側面部を少なくとも被覆するように封止部材16を配することによって封止しているので、封止部材および封止法の選択肢が増えるとともに、封止部材による電極間距離の制限も避けられ、優れた発電特性を有する光電変換素子を提供することができる。
以上、本発明の光電変換素子について説明してきたが、本発明は上記の例に限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更が可能である。
(第一実験例)
本発明による電極基板の効果を調べるため、下記のクラッド材を用意し、色素増感型太陽電池の対極としての性能を評価した。
対極T1〜T6では、表1に示すような材質、厚さからなる金属板(寸法130mm×400mm)の一方の面に表1に示すような材質、厚さからなる金属層を貼り合わせたものを用いた。金属板の他方の面に、スパッタ法により白金層を形成し、対極を作製した。
対極T7〜T9では、比較用として、純チタン板、および、FTO膜付きガラス基板を用意し、表面には同様に白金層を形成し、対極を作製した。
Figure 0005485425
作製した対極の特性を評価するため、下記の要領で評価用素子(試料1〜試料11)を作製した。
スプレー熱分解法により表面にFTO/ITO層を形成したガラス基板(140mm×410mm)にスクリーン印刷にて銀回路を格子状(および周辺部)に形成した(回路幅300μm、膜厚5μm)。印刷用銀ペーストとして、焼結後の体積抵抗率3×10−6Ω・cmのものを用いた。更に、幅600μmとして、銀回路が完全に覆われるよう回路形成部分と重ねてスクリーン印刷により低融点ガラスペーストを印刷し、これを焼成することで、遮蔽層を形成した。また、当該基板上には、TiOナノ粒子を含むペーストをスクリーン印刷にて塗布し、乾燥後、500℃で60分焼成して酸化物半導体多孔質膜を形成した。これをルテニウムビピリジン錯体(N719色素)のt−ブタノール/アセトニトリル(1:1)溶液中に24時間以上浸漬して色素担持させて作用極とした。
電解液は、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨウ化物とヨウ素とを10:1のモル比で混合したものに、LiIと4-tert-ブチルピリジンとを加えたものを用いた。また、この電解液にSiOナノ粒子を加えて凝固体化したもの(ゲル電解質と呼ぶ)も併せて適用した。
前述の作用極に液体電解質またはゲル電解質を塗布し、作製した対極基板を(Pt面を内側にして)貼り合せ、周辺部を紫外線硬化樹脂で封止した。
作用極では外周銀層の数箇所にリード線をはんだ付けにて取り付け、対極(チタン基材)では銅層の数箇所にリード線をはんだ付けにて取り付け、特性評価を行った。
対極T7〜T9の比較用対極において、金属層を形成していない純チタン板対極については、ハンダ付けできないため、端子用のリード線をテープ止めして評価した。ガラス基板型の対極については、対極と作用極とをわずかにずらして貼り合わせることで、FTO面から作用極と同様にして端子を取り付けた。
作製した素子の光電変換特性を、AM1.5、100mW/cmの擬似太陽光照射下にて評価した。その結果を表2に示す。ここでは、複数のリード線をまとめた上で先端に測定端子を接続することで測定を行なった。
Figure 0005485425
表2から明らかなように、実施例の各試料(S1〜S8)では、良好な光電変換特性を示したのに対し、比較例の各試料(S9、S10)は著しく低い出力となった。銅層未形成の試料(S9)では、対極基材/リード線界面の抵抗が大きいため、また、ガラス基板を対極に用いた試料(S10)では、透明導電膜の導電性が不十分であるために、いずれもIR降下の影響を大きく受けたことが原因と考えられる。
以上から明らかなように、本発明の対極を用いることで、外部回路につながる集電材(例えば、リード線)との接続を低抵抗化でき、且つ、対極自体を低抵抗化できるため、色素増感太陽電池に用いた場合、そのような措置を施していない対極を用いた素子と比べて優れた出力を得ることができることがわかる。
(第二実験例)
対極用の金属板として、およそ130mm×400mmサイズのチタン板(t40μm、300μm)を用意した。
チタン板の片面を、フッ酸処理またはウェットブラスト処理により、平均表面粗さRaが約0.5μm、1μm、10μmとなるように粗化した。
引き続き、一方の粗化面上に電解めっきにより銅層を設け、他方の粗化面上に白金層を形成して対極(T10〜T16)を作製した。
比較用として、粗面化処理を施していないチタン板上に同様に電解めっきにより銅層を設けた(対極T17〜T19)が、密着力が極めて低く、粘着テープで表面をなぞる程度の操作でめっき層が容易に剥離したため、色素増感型太陽電池の対極への適用には至らなかった。なお、粗化基板ではそのような剥離はみられなかった。
さらに、比較用として、銅層を形成していないチタン板(対極T20)、および、FTO/ITOガラス基板上に同様にして白金層を形成したもの(対極T21)も作製した。
Figure 0005485425
作製した対極の特性を評価するため、第一実験例と同様にして評価用素子(試料S12〜S24)を作製した。
作製した素子の光電変換特性を、第一実験例と同様にして評価した。その結果を表4に示す。
Figure 0005485425
表4から明らかなように、実施例(試料S12〜S20)では、良好な光電変換特性を示したのに対し、比較例(試料S21〜S24)では著しく低い出力となった。金属層未形成の系(試料S21,S22)では、対極基材/リード線界面の抵抗が大きいため、また、ガラス基板を対極に用いた系(試料S23,S24)では、透明導電膜の導電性が不十分であるために、いずれもIR降下の影響を大きく受けたことが原因と考えられる。
以上から明らかなように、本発明の対極を用いれば、外部回路につながる集電材(例えば、リード線)との接続を低抵抗化でき、且つ、対極基板自体を低抵抗化できるため、色素増感太陽電池の対極として用いた場合、そのような措置を施していない対極材を用いた素子と比べて優れた出力を得ることができることがわかった。
(第三実験例)
対極用の基材として、およそ130mm×400mmサイズのチタン板(t40μm、300μm)を用意した。
チタン板の両面を、フッ酸処理またはウェットブラスト処理により、平均表面粗さRaが約0.5μm、1μm、10μmとなるように粗化した。
表面粗化済み(または未処理)基板のうち、粗面化した一方の面上には電解めっきにより銅層を設け、他方の面上には白金層またはPEDOT層を形成して対極(T22〜T29)とした。白金層はスパッタ法により、PEDOT層は水分散液中に基材をディップすることによりそれぞれ得た。また、比較用として、ITOガラス基板上に同様にして白金層を形成したもの(対極T30)も作製した。
Figure 0005485425
作製した対極の特性を評価するため、第一実験例と同様にして評価用素子(試料S25〜S38)を作製した。
作製した素子の光電変換特性を、第一実験例と同様にして評価した。その結果を表6に示す。
Figure 0005485425
表6から明らかなように、試料S25〜S33では、金属板表面を粗面化して実効面積を増大させることにより、未処理品、および、導電性で劣るITOガラス基板を使用した場合(試料S34〜S38)よりいずれも高い出力を得ることができた。
以上から明らかなように、本発明による対極を用いれば、従来のガラス基板を用いたものよりも、高い導電性を容易に確保できる上、その表面を粗面化することにより対極の実効面積を増大させることが可能となり、未処理の金属板を用いたものよりもさらに優れた出力を得ることができる。
本発明は、色素増感型の光電変換素子および該光電変換素子用の対極の製造方法に適用可能である。本発明の光電変換素子は色素増感型太陽電池として好適に用いられる。
1 光電変換素子、10 透明導電性基板、11 透明基材、12 透明導電膜、13 多孔質酸化物半導体層、14 作用極(窓極)、15 電解質層、16 封止部材、20 対極、21 金属板、22 金属層、23 反応層。

Claims (3)

  1. 増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層を有し、窓極として機能する作用極と、少なくとも一部に電解質層を介して該作用極と対向して配される対極とを備えてなる光電変換素子であって、
    前記対極は、その厚さ方向に異なる部材からなる部位が重ねて配されたクラッド材であるとともに、前記電解質に対して不活性な金属板と、ハンダ付けが可能となる金属層とを重ねて構成され、該金属板は、その一面が前記電解質層の方向を向いて配されることを特徴とする光電変換素子。
  2. 前記金属板の一面上に、前記電解質との反応層が配されたことを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記金属板の一面が粗面化されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換素子。
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