セラミックス製の表面反射層は、実質的に有機材料を殆ど含まない無機質であるので、例えば青色LEDチップの裏面から出射される高エネルギーの光による劣化は殆どない。しかし、無機フィラーが含有されている表面反射層の組織の密度は、無機フィラーが含有されていない表面反射層の組織の密度より粗いため、セラミックス製の表面反射層が薄い場合には、光が透過し易く、その分、反射性能が低下する。そのため、特許文献1の技術は、発光装置での光の取出し効率をより高める上では、十分ではなく、LEDチップの裏側に出射された光の反射性能をより高めるために更なる工夫が必要である、という課題がある。
なお、表面反射層がスクリーン印刷で形成される場合、何層にも重ねて印刷すれば、表面反射層の厚みを厚くできる。こうして表面反射層を厚くすれば、光が透過し難くなって、反射性能を向上できる。
しかし、表面反射層を印刷で重ね塗りして厚くすることは、それに応じて表面反射層の熱伝導性能が低下するに伴い、発光素子が発した熱を絶縁基体に放出する性能が低下する、という課題がある。更に、表面反射層を印刷で重ね塗りして厚くすることは、製造上の手間が掛かるだけではなく、表面反射層の表面にうねりを生じ易くなる。それに伴い、表面反射層の表面に実装される発光素子が、この表面に生じたうねりに従って傾いた状態で実装されることがあり、それにより実装不良を招来する恐れがある、という課題がある。
一方、合成樹脂等の有機材料からなる塗料に無機質のフィラーが混入された白色塗料が従来知られている。白色塗料からなる反射面は、銀の層からなる反射面に対して、低波長域の光成分を反射できる分、反射性能が優れている。そこで、本発明者は、こうした白色塗料を引用文献1の表面反射層に代えて用いた発光モジュールを試作した。
しかし、白色塗料は有機材料を含んでいる。そして、例えば青色LEDチップの裏面から出射される光の強度は、LEDチップの他の面である表面から光の取出し方向に出射される光の強度より強い。そのため、こうした高エネルギーの光によって、青色LEDチップの直下の塗料部位が劣化し易い。こうした光劣化により、光の取出し効率を長期に持続させることが難しい、という課題があることがわかった。
したがって、本発明の目的は、発光素子の裏側に出射された光の反射性能を向上できる発光モジュール、及びこのモジュールを備えた照明装置を提供することにある。
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明の発光モジュールは、モジュール基板と;この基板上に設けられた配線導体と;前記モジュール基板上に設けられた基板側反射部と;無機材料製のフィラーが含有された白色塗料からなり前記基板側反射部に積層された素子側反射部と;この素子側反射部上に実装されて前記配線導体に電気的に接続された複数の半導体製の発光素子と、これら発光素子を埋めて設けられた透光性の封止部材と;を具備することを特徴としている。
請求項1の発明で、モジュール基板には、一層又は複層の絶縁板からなるものを使用することもできるが、発光素子の放熱性を良好とするために、金属ベース及びこのベースの一面に積層された絶縁層を有するモジュール基板を使用することが好ましい。
請求項1の発明で、基板反射部は一層でもニ層でもよい。一層の基板側反射部は、無機又は有機材料製の白色反射層又は金属製の反射層で形成できる。前記有機材料製の白色反射層をなす材料として白色のエポキシ樹脂又は白色のポリイミド樹脂等を挙げることができ、又、金属製の反射層として金、銀、又は銅等の層を挙げることができる。金又は銀製の金属製反射層は反射効率及びモジュール基板への放熱性が銅の反射層より優れている点で好ましく、叉、銅製の金属製反射層は、低コストでモジュール基板への熱伝導性が優れているとともに前記有機材料製の白色反射層との接合性が良い点で好ましい。二層の基板側反射部は、例えばモジュール基板の絶縁層に接合固着された金属製の反射部位(金属反射層)及びこれに被着された有機材料である白色合成樹脂製の白色反射層(樹脂反射部位)で形成することができる。基板側反射部が白色合成樹脂製を少なくとも一部に有している場合は、この基板側反射部からモジュール基板への放熱性と光の反射性能を向上するために、樹脂内に無機質のフィラーが混ぜられていることが好ましい。
請求項1の発明で、素子側反射部をなす白色塗料は、無機質のフィラーが混入された白色のセラミックス等からなり、例えばスクリーン印刷により、セラミックインクをモジュール基板上に基板側反射部を覆った状態に印刷して設けることができる。この素子側反射部に混入されるフィラーとして、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン等を挙げることができ、このうちジルコニア製のフィラーを用いる場合は白色塗料の光反射率をより向上できる点で好ましい。
請求項1の発明で、半導体製の発光素子には、例えば青色に発光するLEDチップを用いることができる。このLEDチップは、サファイア等からなる透光性の素子基板の一面に半導体発光層及び素子電極を設けて形成されており、透光性のダイボンド材を用いて素子反射部上に実装して設けられる。更に、本発明で、封止部材には所望とする色の照明光を得るために蛍光体を混入することが好ましく、発光素子が例えば青色LEDチップでかつ白色の照明光を得る場合は、蛍光体に青色光で励起されて黄色の光を放射する黄色系の蛍光体を用いることができる。又、封止部材は、モジュール基板上に発光素子が実装された領域を囲む枠を配設した上で、この枠内に充填することによって設けることが好ましいが、こうした枠を用いることなくポッティングすることによって設けることも可能である。
請求項1の発明では、無機質のフィラーが混入された白色塗料からなる素子側反射部上に複数の発光素子を実装したので、各発光素子がその裏側に出射する高エネルギーの光を、素子側反射部をなした白色塗料で光の利用方向に反射させることができる。この場合、白色塗料からなる素子側反射部は、前記高エネルギーの光に晒されても劣化することがない。この高エネルギーの光の一部は素子側反射部を透過する。しかし、この透過光は、基板側反射部に入射してこの基板側反射部で光の利用方向(取出し方向)に反射されるので、発光素子の裏側に出射された光の反射性能が向上され、それに伴い発光モジュールでの光の取出し効率を向上できる。
この場合、各発光素子がその裏側に出射した光に晒される基板側反射部が、有機材料を含んでいても、この基板側反射部の光劣化を抑制できる。この理由は十分に解明されていないが、素子側反射部を透過しようとする前記高エネルギーの光が素子側反射部のフィラーで散乱されるからである、と考えられる。したがって、各発光素子の裏側での高い光反射性能を長期間にわたり維持できる。
更に、素子側反射部をなした白色塗料に混入された無機質のフィラーにより、発光素子が発する熱を基板側反射部に効率よく伝導させることができ、この基板側反射部の熱はモジュール基板に熱伝導して放出される。したがって、発光素子からモジュール基板への放熱性能が良好であり、各発光素子の温度過昇を抑制できる。
請求項2に係る発明の発光モジュールは、請求項1において、前記基板側反射部は、その少なくとも前記素子側反射部に接した反射部位が、フィラーが混入された白色合成樹脂からなることを特徴としている。
この請求項2の発明では、フィラーが混入された白色合成樹脂製の反射部位を基板側反射部が有していて、この白色の反射部位が素子側反射部に接しているので、素子側反射部を透過した光をその利用方向に反射させる性能をより高めることができるとともに、反射部位に混入されたフィラーにより、発光素子からモジュール基板への放熱性を、より高めることができる。
請求項3に係る発明の発光モジュールは、請求項2において、前記基板側反射部が、前記白色合成樹脂からなる樹脂反射部位と、この樹脂反射部位及び前記モジュール基板に接してこれらの間に設けられた金属反射部位とからなることを特徴としている。
この請求項3の発明では、基板側反射部の白色をなす樹脂反射部位により、発光素子の裏側に出射された光の反射性能と発光素子からモジュール基板への放熱性をより向上できる。更に、基板側反射部の金属反射部位により、発光素子の裏側に出射されて樹脂反射部位を透過した光をその利用方向に反射できるだけではなく、モジュール基板への放熱性をより向上できる。これとともに、金属反射部位の表面はモジュール基板の表面よりも平滑であるので、この平滑な表面に準じて樹脂反射部位及び素子側反射部が設けられるに伴い、素子側反射部に実装される発光素子の実装不良を抑制できる。
請求項4に係る発明の発光モジュールは、請求項2又は3において、前記基板側反射部のフィラー含有率が30wt%以下であるとともに、前記素子側反射部のフィラー含有率が50wt%以上であることを特徴としている。
この請求項4の発明では、素子側反射部のフィラー含有率が50wt%以上であるので、発光素子の裏側に出射された光を素子側反射部が反射する性能をより向上できるとともに、この素子側反射部を経由してのモジュール基板への放熱性をより向上できる。更に、基板側反射部のフィラー含有率が30wt%以下であるので、この基板側反射部に含有されるフィラーの使用量を減らすことができる。
請求項5に係る発明の発光モジュールは、請求項2から4のうちのいずれかにおいて、前記基板側反射部の少なくとも前記白色合成樹脂からなる反射部位の厚みが前記素子側反射部の厚みより薄いことを特徴としている。
この請求項5の発明では、素子側反射部に接した基板側反射部の白色合成樹脂製の反射部位はその厚みが薄くても十分な反射性能を発揮できる。これにより、請求項5の発明では、基板側反射部の反射部位での反射性能を確保しつつ、この反射部位の厚みが薄いので、発光素子からモジュール基板への放熱性を向上できる。
請求項6に係る発明の発光モジュールは、請求項1において、前記基板側反射部が、前記モジュール基板及び前記素子側反射部に接して設けられた金属で形成されていることを特徴としている。
この発明で、金属製の基板側反射部は単層又複層であってもよいとともに、その少なくとも素子側反射部に接する表面は、モジュール基板の絶縁層よりも反射率が高い金属製とすればよく、この種の金属として例えば金又は銀を挙げることができる。
請求項6の発明では、金属製の基板側反射部により、発光素子の裏側に出射された光の反射性能と発光素子からモジュール基板への放熱性をより向上できる。これとともに、素子側反射部に接する金属製の基板側反射部の表面はモジュール基板の表面よりも平滑であるので、この平滑な表面に準じて素子側反射部が設けられるに伴い、素子側反射部に実装される発光素子の実装不良を抑制できる。
請求項7に係る発明の発光モジュールは、請求項6において、前記基板側反射部が前記素子側反射部に接する面が銀製又は金製であることを特徴としている。
この発明で、基板側反射部は、全体が銀製又は金製であっても、或いは素子側反射部に接する表層のみを銀製又は金製としてもよい。又、基板側反射部での反射特性をより高く確保する上では銀製とすることが好ましい。
この請求項7の発明では、素子側反射部を透過した光を銀製又は金製の面で効率よく反射できるとともに、前記銀製の面が腐食して反射性能が劣化することが素子側反射部で抑制されるか又は前記腐食がないので、基板側反射部に高い反射特性を確保することができて、それを持続可能である。
請求項8に係る発明の発光モジュールは、請求項7において、前記素子側反射部の厚みが30μm以下であることを特徴としている。
この請求項8の発明では、素子側反射部での熱抵抗が小さいので、発光素子からモジュール基板への放熱性をより向上できる。
又、前記課題を解決するために、請求項9に係る発明の照明装置は、器具本体と;この器具本体に取付けられ請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の発光モジュールからなる光源と;を具備することを特徴としている。
この発明によれば、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の発光モジュールからなる光源を備えているので、この発光モジュールの発光素子からその裏側に出射された光の反射性能を向上できるに伴い、より明るく照明できる照明装置を提供できる。
請求項1の発明によれば、発光素子の裏側に出射された光の反射性能を向上できる発光モジュールを提供できる、という効果がある。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明において、更に、発光素子の裏側に出射された光の反射性能と発光素子からモジュール基板への放熱性をより向上できる、という効果がある。
請求項3の発明によれば、請求項2の発明において、更に、発光素子の裏側に出射された光の反射性能と発光素子からモジュール基板への放熱性をより向上できるとともに、発光素子の実装不良を抑制できる、という効果がある。
請求項4の発明によれば、請求項2又は3の発明において、更に、発光素子の裏側に出射された光の反射性能と発光素子モジュール基板への放熱性をより向上できるとともに、フィラーの使用量を減らすことができる、という効果がある。
請求項5の発明によれば、請求項2から4のいずれかの発明において、更に、基板側反射部での反射性能を確保しつつ、発光素子からモジュール基板への放熱性を向上できる、という効果がある。
請求項6の発明によれば、請求項1の発明において、更に、発光素子の裏側に出射された光の反射性能とモジュール基板への放熱性をより向上できるとともに、発光素子の実装不良を抑制できる、という効果がある。
請求項7の発明によれば、請求項6の発明において、更に、基板側反射部に高い反射特性を確保できるとともにそれを持続可能である、という効果がある。
請求項8の発明によれば、請求項7の発明において、更に、発光素子からモジュール基板への放熱性をより向上できる。
請求項9の発明によれば、発光モジュールの発光素子からその裏側に出射された光の反射性能を向上できるに伴い、より明るく照明できる照明装置を提供できる、という効果がある。
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図6を参照して詳細に説明する。
図1及び図2中符号1は第1実施形態に係る発光モジュール1を示している。この発光モジュール1は、モジュール基板3と、一対の配線導体6と、基板側反射部11と、素子側反射部15と、例えば青色発光をするLEDチップからなる複数の半導体製の発光素子17と、枠22と、封止部材25を具備している
図2に示すようにモジュール基板3は、平板からなる金属ベース3aとこの一面に積層された絶縁層3bとで形成されている。金属ベース3aは、熱伝導性に優れた金属例えばアルミニウム又はその合金からなる。絶縁層3bは、合成樹脂製であって、その厚みは金属ベース3aより遥かに薄い。このモジュール基板3の四隅に、発光モジュール1を固定するための例えば溝からなるねじ通し部4(図1等参照)が設けられている。
配線導体6は絶縁層3b上に所定のパターンで設けられている。このパターンを図3に示す。配線導体6は、例えば互に平行な給電パターン部6a,6bを有している。配線導体6は、例えば絶縁層3bの全面に貼り合わせて接合された銅層の不要な部位を、エッチングで除去することによって、絶縁層3b上に残された部位で形成されている。この配線導体6の表面にニッケルが積層され、更に、このニッケル層の表面に金が積層されている。したがって、図2に示すように配線導体6は、銅と、ニッケルと、金の三層構造をなしており、銅層は配線導体6のベース層Aを形成し、ニッケル層は配線導体6の中間層Bを形成し、金層は配線導体6の表層Cを形成している。
なお、図1〜図4中符号7は、給電パターン部6a,6bを間に置いてその両側に設けられたアライメントマークを示している。これらアライメントマーク7は、後述の発光素子17を実装する場合に、その実装位置を決める目安として用いられる。このアライメントマーク7は、配線導体6の形成手順と同様の手順で配線導体6と同時にモジュール基板3上に形成されたものである。したがって、アライメントマーク7も銅層とニッケル層と金層の三層構造であるとともに、このアライメントマーク7の各層の厚みは配線導体6及びの各層と同じである。
基板側反射部11は、絶縁層3b上でかつ給電パターン部6a,6b間に設けられている。本実施形態の場合、基板側反射部11は、後述する発光素子17の実装領域に対応した位置に配設されている。この基板側反射部11は、発光素子17からその裏側に出射された高エネルギーの光を、光の利用方向(取出し方向)に反射する第2の反射部であり、例えば、図2に示すように金属反射部位12と、樹脂反射部位13とで形成されている。
図3に示すように金属反射部位12は、略四角形状であり、図2に示すように絶縁層3bに接合固着されている。金属反射部位12は、例えば銅からなり、本実施形態では、配線導体6のベース層Aと同様に前記エッチングで形成されたものである。したがって、この金属反射部位12は配線導体6のベース層Aと略同じ厚みであり、その表面(絶縁層に接しない方の面)は平滑な面である。なお、この金属反射部位12の表面には、配線導体6が採用したニッケルと金のカバー層は設けられていない。そのため、金属反射部位12は、銅の単層(一層)からなり、前記エッチングにより配線導体6及びアライメントマーク7の銅層とともに設けられたものである。
樹脂反射部位13は、例えばエポキシ樹脂からなる樹脂材に無機材料製のフィラーが混入された白色の合成樹脂製である。樹脂反射部位13の樹脂材の含有率は70wt%以上であり、フィラーの含有率は30wt%以下である。樹脂反射部位13のフィラーは例えば酸化チタンやシリカ等からなる。この樹脂反射部位13の厚みは、後述する素子側反射部15の厚みと同じかそれ以下であり、本実施形態のように例えばフィラーの含有率を減らすために10μm以下とすることが好ましい。
この白色の樹脂反射部位13の反射率は80%以上であることが好ましい。これとともに、後述の発光素子17が実装される樹脂反射部位13の表面の粗さRaは0.4以上であることが好ましい。このようにすることで、樹脂反射部位13での光の反射性能をより向上させることができる。
樹脂反射部位13は例えばスクリーン印刷によりモジュール基板3上に塗布されている。しかも、図4に示すように本実施形態では、前記印刷により、金属反射部位12、一対の給電パターン部6a,6b、及び一対のアライメントマーク7を略囲む四角環状の領域Sと、配線導体6のその他必要な部位を除いて、絶縁層3bの略全面にわたり印刷されている。そのため、ここでは前記四角環状の領域Sの外側領域に印刷された部位をレジスト部位13aと称する。
なお、レジスト部位13aと樹脂反射部位13とは別々に設けることができる。したがって、白色の樹脂反射部位13は、金属反射部位12を覆う位置、言い換えれば、後述の発光素子17の実装領域に対応じて設けただけであってもよい。又、前記のように別々に設ける場合、レジスト部位13aにはフィラーを混入する必要がないとともに、このレジスト部位13aは白色である必要もない。
図4に示すように前記領域Sは、絶縁層3bの一部が露出された領域であり、この一部にアライメントマーク7が位置されている。更に、領域Sは複数個所で途切れている。これら途切れた部位で樹脂反射部位13とレジスト部位13aが連続されているとともに、この途切れた部位はそこを通るように配線された配線導体6の一部を覆っている。
図2に示すように素子側反射部15は基板側反射部11に積層されている。素子側反射部15は、発光素子17からその裏側に出射された高エネルギーの光を光の利用方向に反射する第1の反射部である。この素子側反射部15は、白色のセラミックインク、例えばエポキシ樹脂等の合成樹脂に無機材料製のフィラーが含有された白色塗料からなる。この白色塗料からなる素子側反射部15は、樹脂反射部位13と同様に例えばスクリーン印刷によりモジュール基板3上に塗布されて、基板側反射部11に覆着されている。そのため、素子側反射部15の裏面に基板側反射部11の樹脂反射部位13が接合されている。したがって、この樹脂反射部位13は金属反射部位12及び基板側反射部11に接してこれらの間に設けられている。
素子側反射部15のフィラー含有率は50wt%以上であり、特に含有率を70〜85wt%とすることが、より高い反射性能を得る上で好ましい。素子側反射部15のフィラーは、樹脂反射部位13のフィラーと同様に例えば酸化チタンやシリカ等からなる。素子側反射部15の厚み、正確には基板側反射部11に積層されている部分の厚みは、50μm以下好ましくは30μm以下例えば20μmである。
各発光素子17をなした青色LEDチップは、サファイア製の透光性素子基板の一面に半導体発光層と一対の素子電極を設けて形成されている。半導体発光層は、例えば455nm〜465nmのピーク波長を有した青色の光を放射する。この青色の光は、半導体発光層から光の利用方向である表側に出射されるだけではなく、素子基板を透過して発光素子17の裏側にも出射される。そして、裏側に出射される光のエネルギー強度の方が、表側に出射される光のエネルギー強度より強い。
図2に示すように各発光素子17は、素子側反射部15上に実装されている。この実装は、透光性ダイボンド材例えば透明なシリコーン樹脂等のダイボンド材18を用いて、素子基板の半導体発光層が設けられていない方の面を素子側反射部15に接着して行われている。給電パターン部6a,6b間にこれらが延びる方向と直交する方向に並べられた複数の発光素子17がなす素子列(図2に一列のみ図示する。)は、給電パターン部6a,6bの長手方向に沿って複数配設されている。個々の発光素子列をなした複数の発光素子17同士はボンディングワイヤ19で直列に接続されている。つまり、ボンディングワイヤ19は、前記列が延びる方向に隣接した発光素子17の異極の素子電極同士を接続して設けられている。
更に、発光素子列の一端に配置された発光素子17とこれに隣接された配線導体6の給電パターン部6aとは、これらにわたる端部ボンディングワイヤ20aで接続されている。同様に、発光素子列の他端に配置された発光素子17とこれに隣接された配線導体6の給電パターン部6bとは、これらにわたる端部ボンディングワイヤ20bで接続されている。発光素子列は、複数の発光素子17、ボンディングワイヤ19、及び端部ボンディングワイヤ20a,20bを含んでいる。ボンディングワイヤ19及び端部ボンディングワイヤ20a,20bは金属細線例えば金の細線からなる。
枠22はモジュール基板3上に取付けられている。この枠22は、例えば白色のシリコーン樹脂製であり、未硬化の状態で前記領域Sに沿って塗布され、硬化処理されることにより領域Sに接着されて、複数の発光素子17が実装された領域を囲んで設けられている。この枠22が接着された領域Sは、白色塗料からなる素子側反射部15で覆われておらず、既述のようにモジュール基板3の絶縁層3bが露出した部位であるので、接着強度が高い。そのため、枠22が剥がれ難い。これに対して、シリコーン樹脂は白色塗料への接着性が低いので、枠22の接着対象としては好ましくない。
枠22内に封止部材25が充填されている。この封止部材25は、各発光素子17、各ボンディングワイヤ19、端部ボンディングワイヤ20a,20b、給電パターン部6a,6b、及びアライメントマーク7等を埋めて設けられている。こうして各発光素子17等を封止する封止部材25は、透光性材料例えば透明シリコーン樹脂等からなる。
この封止部材25には蛍光体(図示しない)が混ぜられている。蛍光体には、例えば白色の照明光を得るために黄色の蛍光体が用いられている。
以上説明した第1実施形態の発光モジュール1は、その金属部、つまり、配線導体6及び金属反射部位12に銀メッキを用いないで構成されている。そのため、銀メッキを用いるとともにそれが封止部材25に接して設けられた場合のように、封止部材25を透過して周囲環境から作用するガスや絶縁層3bからの蒸発成分により、銀メッキの表面がくもって光反射性能が低下することがなく、高い光束維持率を長期にわたり保持することができる。しかも、配線導体6は銅のベース層A上にニッケルと金を積層してなるので、この配線導体6に対して、通常、金の細線からなる端部ボンディングワイヤ20a,20bの接合強度を高めることができる。
前記構成の発光モジュール1は、無機質のフィラーが混入された白色塗料からなる素子側反射部15上に複数の発光素子17を実装したので、各発光素子17がその裏側に出射する高エネルギーの光を、素子側反射部15をなした白色塗料で光の利用方向に反射させることができる。この場合、白色塗料からなる素子側反射部15製の光反射面は、銀の層からなる反射面に対して、低波長域の光成分を反射できるので、その分、銀メッキ層の反射面よりも光反射性能が優れている。
又、素子側反射部15は、セラミックインク等の無機系白色塗料からなるので、前記高エネルギーの光に晒されても劣化することがない。
この高エネルギーの光の一部は無機質のフィラーが混入された素子側反射部15を透過する。この透過光は、基板側反射部11に入射してこの基板側反射部11で光の利用方向に反射される。こうした一次、二次の光反射によって、発光素子17の裏側に出射された光の反射性能が向上される。言い換えれば、光の取出し性能が向上されるので、それに伴い、発光モジュール1の発光効率を向上できる。
この場合、基板側反射部11が、白色合成樹脂製からなる樹脂反射部位13と、この樹脂反射部位13及び絶縁層3b層に接してこれらの間に設けられた金属反射部位12とからなるので、基板側反射部11の白色をなす樹脂反射部位13により、発光素子17の裏側に出射された光の反射性能を向上できるに伴い、光の取出し性能を更に向上できる。そして、素子側反射部15に接した基板側反射部11の反射部位、つまり、樹脂反射部位13は、その厚みが薄くても十分な反射性能を発揮できる。
更に、以上のように各発光素子17がその裏側に出射した光に晒される基板側反射部11の樹脂反射部位13は、有機材料である合成樹脂成分を含んでいるにも拘らず、この樹脂反射部位13の光劣化を抑制できる。
この理由は十分に解明されていないが、素子側反射部15をなした白色塗料に無機質のフィラーが50wt%以上好ましくは70〜85wt%混入されていることにより、素子側反射部15を透過しようとする前記高エネルギーの光が前記フィラーで散乱される結果、基板側反射部11の樹脂反射部位13に入射される光のエネルギー強度が低下するからである、と考えられる。したがって、既述のように向上された光の反射性能を長期間にわたり維持できる。
しかも、基板側反射部11の樹脂反射部位13のフィラー含有率が30wt%以下であるとともに、前記素子側反射部15のフィラー含有率が50wt%以上であるので、発光素子17の裏側に出射された光を素子側反射部15で反射する性能をより向上できるとともに、基板側反射部11でのフィラー使用量をすくなくできる。
その上、基板側反射部11は樹脂反射部位13以外に金属反射部位12を有しているので、樹脂反射部位13を透過した光が、金属反射部位12での光の利用方向に反射される。それにより、光の取出し性能を向上できる。
又、LEDチップからなる各発光素子17は、その発光に伴い熱を発生する。この熱は、素子側反射部15及び基板側反射部11を経由してモジュール基板3の金属ベース3aに放出され、更に、この金属ベース3aから外部に放出される。
こうした放熱経路中の素子側反射部15と基板側反射部11の樹脂反射部位13の夫々には無機質のフィラーが混入されているので、それらの熱伝導性能は、各反射部が樹脂製分のみで形成されている場合に比較して遥かに高い。そのため、各発光素子17からモジュール基板3への放熱性を向上できる。
この場合、素子側反射部15のフィラー含有率が50wt%以上であるので、モジュール基板3への放熱性がよい。しかも、厚みが30μm以下の基板反射部15は熱抵抗が小さいので、発光素子17からモジュール基板3への放熱性が良い。これとともに、この素子側反射部15に接した樹脂反射部位13はその厚みが素子側反射部15の厚みより薄いので、樹脂反射部位13からモジュール基板3への放熱性がよい。加えて、基板側反射部11は、樹脂反射部位13が積層された金属反射部位12を有しているので、この金属反射部位12がヒートスプレッダとして作用する。したがって、各発光素子17からモジュール基板3への放熱性をより向上できる。それにより、各発光素子17の温度が上がり過ぎることが抑制されるに伴い、これら発光素子17の発光性能と発光色を維持することができる。
又、本実施形態では、基板側反射部11が金属反射部位12を有していて、この金属反射部位12の表面はモジュール基板3の絶縁層3bよりも平滑である。そのため、この平滑な表面に準じて樹脂反射部位13及び素子側反射部15が設けられるに伴い、絶縁層3bに影響されることなく、素子側反射部15の平面度を確保できる。それにより、素子側反射部15上に実装される発光素子17が傾いて実装される等の実装不良を抑制できる。
更に、基板側反射部11が有した樹脂反射部位13の合成樹脂含有率が70wt%以上であるので、この樹脂反射部位13に含有されるフィラーの含有率は30wt%以下であり、フィラーの使用量を減らしてコストダウンを図ることができる。
図5および図6は照明装置の一例であるスポットライト100の具体的な構成を開示している。スポットライト100は、一対の前記発光モジュール1、器具本体をなす本体102および反射鏡103を備えている。発光モジュール1はスポットライト100の光源として用いられている。
図6に示すように、スポットライト100の本体102は、ヒートシンク107と受熱部108とを備えている。ヒートシンク107は、例えばアルミニウムのような熱伝導性に優れた軽量な金属材料で構成されている。ヒートシンク107は、円盤状のベース部109と、ベース部109の裏面から突出された複数の放熱フィン110とを備えている。放熱フィン110は、平坦な板状をなすとともに、互いに間隔を存して平行に並んでいる。
受熱部108は、例えばアルミニウムあるいは銅のような熱伝導性に優れた金属製であり、所定の厚みを有する四角い板状をなしている。受熱部108は、ベース部109の表面の中央部に前記ねじ通し部4を通るねじ111を介して固定されている。そのため、受熱部108は、ベース部109の表面から放熱フィン110の反対側に向けて突出されているとともに、ベース部109に熱的に接続されている。
図6に示すように、受熱部108は、第1の側面113aおよび第2の側面113bを有している。第1および第2の側面113a,113bは、互いに平行であるとともに、鉛直方向に沿って延びている。
発光モジュール1のモジュール基板3が、受熱部108の第1および第2の側面113a,113bに前記ねじ通し部4を通る図示しないねじを介して固定されている。モジュール基板3は、その金属ベース3aが受熱部108の第1および第2の側面113a,113bの方向を向いており、これら金属ベース3aと第1および第2の側面113a,113bとの間に夫々伝熱シート114が介在されている。伝熱シート114は、モジュール基板3と受熱部108との間を熱的に接続している。
反射鏡103としては、凹面鏡が用いられている。反射鏡103は、一対の反射板115a,115bを有している。反射板115a,115bは、夫々ヒートシンク107のベース部109の表面にねじ116で固定されている。反射板115a,115bは、受熱部108を間に挟んで互いに対称に配置されている。そのため、受熱部108の第1の側面113aに固定された一方の発光モジュール1が反射板115aの光反射面117aと向かい合い、受熱部108の第2の側面113bに固定された他方の発光モジュール1が反射板115bの光反射面117bと向かい合っている。
一対の発光モジュール1から放射された光をスポットライト100の光軸Lと平行に反射させるために、発光モジュール1の発光領域の中心が反射板115a,115bの焦点に位置されている。
図5および図6に示すように、反射鏡103は、カバー120によって囲まれている。カバー120は、円筒状の本体部121を備えている。本体部121の一端は、ヒートシンク107のベース部109の表面の外周部に同軸状に突き当たっている。本体部121の他端にフレア部122が同軸状に形成されている。フレア部122は、本体部121から遠ざかるに従い本体部121の径方向に沿う外側に向けて拡開されている。フレア部122は、反射鏡103の開口端部の外周部に外側から接している。
このような構成のスポットライト100において、発光モジュール1を発光させると、その封止部材25から出射された白色の光が反射板115a,115bの光反射面117a,117bに入射される。光反射面117a,117bに入射された光は、スポットライト100の光軸Lと平行となるように光反射面117a,117bで反射されて、反射鏡103の開口端から照射対象に向けて放射される。
発光モジュール1の発光時に発光素子17が発する熱は、モジュール基板3の金属ベース3aから本体102の受熱部108に伝えられる。受熱部108に伝えられた発光素子17の熱は、受熱部108からヒートシンク107のベース部109に伝わるとともに、ヒートシンク107の放熱フィン110から大気中に放出される。
このため、スポットライト100の本体102を利用して発光モジュール1の熱を積極的に放出することができる。よって、発光モジュール1が有する発光素子17の過度の温度上昇を防止して、発光モジュール1の発光効率を良好に維持することができる。
本発明に係る照明装置は、スポットライトに特定されるものではなく、例えばダウンライト、防犯灯、ブラケットライト、ペンダントライト、その他の照明装置にも同様に実施できる。
図7は本発明の第2実施形態を示している。第2実施形態は以下説明する事項以外は、第1実施形態と同じである。そのため、第1実施形態と同じ構成については第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
第2実施形態では、基板側反射部11は、金属反射部位を備えておらず、一層の樹脂反射部位のみで形成されていて、モジュール基板6の絶縁層3bと素子側反射部15に接してこれらの間に設けられている。基板側反射部11は、モジュール基板3の絶縁層3b上にスクリーン印刷により印刷して積層されている。そして、図7に示されていない構成を含めて、基板側反射部11の材質、厚み、フィラーの含有率、及び素子側反射部15との関係等は、第1実施形態と同じである。
この第2実施形態は、発光素子17からモジュール基板3への放熱性能は若干第1実施形態より劣るが、第1実施形態で既に説明したのと同様な理由によって、本発明の課題を解決することができる。
図8は本発明の第3実施形態を示している。第3実施形態は以下説明する事項以外は、第1実施形態と同じである。そのため、第1実施形態と同じ構成については第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
第3実施形態では、基板側反射部11は、樹脂反射部位を備えておらず、例えば一層(単層)の金属反射部位12のみで形成されていて、モジュール基板6の絶縁層3bと素子側反射部15に接してこれらの間に設けられている。このように基板側反射部11が金属より熱伝導性が劣る樹脂反射部位を有していないので、基板側反射部11での熱抵抗は小さく、よって、発光素子17からモジュール基板3への放熱性が良い。そして、図8に示されていない構成を含めて、基板側反射部11の材質、厚み、フィラーの含有率、及び素子側反射部15との関係等は、第1実施形態と同じである。
この第3実施形態は、素子側反射部15を透過した光に対する例えば銅製の基板側反射部11での反射性能は若干第1実施形態より劣るが、第1実施形態で既に説明したのと同様な理由によって、本発明の課題を解決することができる。
図9は本発明の第4実施形態を示している。第4実施形態は以下説明する事項以外は、第1実施形態と同じである。そのため、第1実施形態と同じ構成については第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
第4実施形態では、三層構造の配線導体6の表層Cは金に代えて銀製である。更に、基板側反射部11は樹脂反射部位を備えておらず、複層例えば三層構造の金属反射部位12で形成されている。基板側反射部11(金属反射部位12)は、銅製のベース層Aと、このベース層A上にめっきされたニッケル製の中間層Bと、この中間層B上にめっきされた銀製の表層Cにより形成されていて、ベース層Aをモジュール基板6の絶縁層3bに接するとともに基板側反射部11の表面をなす表層Cを素子側反射部15に接して、モジュール基板6と素子側反射部15との間に設けられている。
この基板側反射部11は、配線導体6及びアライメントマーク7の形成手順と同様の手順で配線導体6と同時にモジュール基板3上に形成されたものである。したがって、基板側反射部11の各層の厚みは配線導体6及びアライメントマーク7の各層と同じである。
この基板側反射部11を覆って塗布された素子側反射部15をなす白色塗料の厚みは50μm以下好ましくは30μm以下である。そして、図9に示されていない構成を含めて、基板側反射部11の材質、厚み、フィラーの含有率、及び素子側反射部15との関係等は、第1実施形態と同じである。
この第4実施形態は、第1実施形態で既に説明したのと同様な理由によって、本発明の課題を解決することができる。
しかも、無機材料製のフィラーが含有された白色塗料からなる素子側反射部15を透過した光を反射する基板側反射部11の面が銀製であるから、銅の反射面で反射する構成に比較して光の取出し方向への反射性能が高い。これにより、基板側反射部11と素子側反射部15による反射率を85%以上に確保できる。
基板側反射部11の銀製の表層Cはこれに接した素子側反射部15で覆われていて、ガス透過性を有するシリコーン樹脂製の封止部材25から隔てられている。このため、素子側反射部15が邪魔となって、封止部材25を透過したSO2やNO2等の腐食ガスは基板側反射部11の表層Cに波及し難い。したがって、発光モジュール1の発光中に基板側反射部11の表層Cが腐食して反射性能の低下が抑制される結果、前記85%以上の反射率を維持することが可能である。
これに対して、第3実施形態のように基板側反射部11が銅の単層で形成されている構成で、反射率を85%以上にするには、無機材料製のフィラーが含有された白色塗料からなる素子側反射部15の厚みを100μm以上にする必要がある。こうした構成では、素子側反射部15での熱抵抗が増えて、発光素子17からモジュール基板3への放熱性が低下される結果、発光素子17の発光効率も低下することがある。
しかし、第4実施形態では、銅より遥かに反射率が高い銀の表層Cを基板側反射部11が有していることにより、素子側反射部15の厚みを50μm以下例えば30μm以下にすることが可能である。そのため、こうした薄肉の素子側反射部15での熱抵抗は小さくなる。更に、基板側反射部11は金属より熱伝導性が劣る樹脂反射部位を有していないので、基板側反射部11での熱抵抗は小さい。したがって、第4実施形態の発光モジュール1では、発光素子17からモジュール基板3への放熱性が良好である。
なお、第4実施形態において、基板側反射部11は少なくともその表層Cを銀に代えて金製とすることが可能である。この構成であっても、素子側反射部15に接する金の面による光の反射性能(反射特性)は、銅製のベース層A及びモジュール基板3の絶縁層3bより高いので、発光モジュール1に高い反射特性を確保する上で適している。それだけではなく、金は腐食ガスが作用しても劣化しないので、高い反射特性を維持することが可能である。なお、このように基板側反射部11の表層Cを金製とした場合、配線導体6の表層及びアライメントマーク7の表層も金製とすることが好ましい。