実施形態1の発光モジュールは、光反射面を有するモジュール基板と;正極用の給電パッド部を有して前記モジュール基板上に設けられた銀を主成分とする正極用配線パターンと;負極用の給電パッド部を有して前記モジュール基板上に設けられた銀を主成分とする負極用配線パターンと;前記両配線パターン間に位置して前記モジュール基板上に実装された複数の半導体発光素子と;この半導体発光素子と前記両配線パターンとを電気的に接続して設けられたボンディングワイヤと;樹脂から形成され、前記半導体発光素子、及び前記ボンディングワイヤを囲み前記配線パターンの一部に積層するように設けられた枠と;前記半導体発光素子、前記配線パターンの一部、及び前記ボンディングワイヤを封止して前記枠の内部であって前記モジュール基板上に設けられた透光性の封止部材と;前記両配線パターンのうちで前記封止部材により封止されない封止部材外部分が前記給電パッド部を含んでいて、このパッド部を除いて前記封止部材外部分にこの部分の周辺にわたる大きさに制限して被着された無機材料から形成された第1の保護層と;前記枠が積層されている前記配線パターンの一部分と前記枠との間に設けられ、前記配線パターンの一部分を被覆する無機材料から形成された第2の保護層と;を具備することを特徴としている。
この実施形態1で、モジュール基板は、エポキシ樹脂等の合成樹脂製、金属板に絶縁層が積層された金属ベース基板、或いは無機材料例えばセラミックス製のいずれであってもよい。そして、このモジュール基板を白色のセラミックス製とする場合、そのセラミックスには、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、フォルステライト、ステアタイト、低温焼結セラミックスから選ばれるいずれか、又はこれらの複合材料を用いることが可能であり、特に、安価で光反射率が高く、加工し易い白色のアルミナを好適に使用できる。この実施形態1で、配線パターンが銀を主成分とするとは、純銀の配線パターン、及び銀メッキなどで形成された配線パターンも含んでいる。
この実施形態1で、半導体発光素子には、例えば素子基板上に化合物半導体を設けた各種の発光素子を使用することが可能であり、特に、青色発光をするベアチップ製の青色LEDを用いることが好ましいが、紫外線或いは緑色光を発する半導体発光素子を使用することも可能である。
この実施形態1で、ボンディングワイヤには、金属細線、例えば金線、アルミニウム線、銅線、及び白金線等を用いることができるが、特に、耐湿性、耐環境、密着性、電気伝導性、熱伝導性、及び伸び率が良好である金線をボンディングワイヤとして用いることが好ましい。
この実施形態1で、封止部材には、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂等の透光性樹脂料を用いることができる他、透光性のガラスを用いることも可能である。この実施形態1で、封止部材には蛍光体が混入されていても、混入されていなくてもよい。封止部材に混入される蛍光体は、半導体発光素子が発した光で励起されて、この光とは異なった色の光を放射し、この放射された光の色と半導体発光素子の発光色との組み合わせ等により必要とする色の光を形成するものであり、例えば、半導体発光素子に青色LEDを用いた条件で白色の照明光を得るためには、黄色の蛍光体を用いればよく、又、半導体発光素子に紫外線を発するLEDを用いた条件で白色の照明光を得るためには、赤色、青色、及び黄色の各蛍光体を用いればよい。
実施形態1では、モジュール基板上に設けられた正極及び負極の銀を主成分とする配線パターンの一部が封止部材で覆われて封止されているとともに、両配線パターンの残りの部分、つまり、封止部材外に配設されてこの封止部材で封止されていない封止部材外部分が、この部分に被着された保護層で封止されている。そのため、半導体発光素子に給電をする経路を形成した両配線パターンが、大気中の硫黄成分で硫化して劣化することが抑制されるに伴い、両配線パターンが高抵抗化することを抑制可能である。
更に、保護層は、封止部材で封止されていない配線パターンの封止部材外部分に、この部分の周辺にわたる大きさに制限して設けられているので、保護層を形成するための材料の使用量を減らすことができる。
しかも、保護層は封止部材の封止領域外に設けられているので、封止部材の封止面積に対応する大きさのモジュール基板の光反射面積が、保護層によって小さくなることがない。加えて、封止領域外に給電パッド部が配設されているので、給電パッド部がモジュール基板の光反射面積を減らす因子にならないとともに、モジュール基板側での光の反射が給電パット部で乱されることもない。
したがって、実施形態1によれば、低コストで銀を主成分とする配線パターンの高抵抗化を防止しつつ、モジュール基板側での光の反射が乱され難く、光の取出し効率を高めることが可能である。
実施形態2の発光モジュールは、実施形態1において、前記保護層に形成された逃げ部に露出される部品接続用パッド部を前記両配線パターンが有していて、これら部品接続用パッド部に接続して前記半導体発光素子の異常発光を防止する電気部品が前記モジュール基板上に装着されていることを特徴としている。
この実施形態2は、実施形態1において、更に、部品接続用パッド部及びこれに接続される電気部品が封止部材外に配設されているので、これら部品接続用パッド部及び電気部品によって、光の反射が乱されないとともに、モジュール基板側での光反射面積が減らされることがない。そのため、モジュール基板側で適正に光を反射させて光取出し効率をより高めることが可能である。
この実施形態3は、実施形態1又は2において、更に、保護層が色付きであるにも拘らず、既述のように保護層が封止部材の封止領域外に設けられているので、この保護層の色によってモジュール基板の光反射性能が低下されることを抑制可能である。
以下、実施例1の発光モジュールを備えた照明器具例えば道路灯について、図1〜図10を参照して詳細に説明する。
図1中符号1は道路照明のために設置される道路灯1を示している。道路灯1は、支柱2の上端部に灯具3を取付けて形成されている。
支柱2は、道路傍に立設され、その上部は道路上に覆い被さるように曲げられている。灯具3は、図2に示すように支柱2に連結された器具本体例えば灯体4と、道路に臨んだ灯体4の下面開口を塞いで灯体4に装着された透光板5と、この透光板5に対向して灯体4に収容された少なくとも一台の光源装置6を備えて形成されている。灯体4は、金属例えば複数個のアルミニウムダイキャスト成形品を組み合わせて形成されている。透光板5は強化ガラスからなる。
図3及び図4に示すように光源装置6は、装置ベース11の裏面に複数の放熱フィン14を突設するとともに、装置ベース11の正面に、反射器15と、光源として発光モジュール21を取付けてユニット化された構成である。
装置ベース11は、金属例えばアルミニウムダイキャスト製であって、四角形に作られている。装置ベース11はその正面に開放された四角い凹みからなるモジュール設置部12(図4及び図10参照)を有している。モジュール設置部12の底面12aは平坦であり、モジュール設置部12を区画する四つの側面12bは互に直角に連続している。放熱フィン14は装置ベース11に一体に形成されている。
反射器15は、第1の反射板15a〜第4の反射板15dをラッパ状に組み合わせて形成されている。第1の反射板15aと第2の反射板15bは、平らな構成の平面ミラーであり、互に平行に設けられている。これら第1の反射板15aと第2の反射板15bに連結された第3の反射板15cと第4の反射板15dは、湾曲した構成のカーブミラーであり、互いの間隔が次第に広くなるように設けられている。
光源装置6は、その反射器15の出射開口を透光板5に対向させて灯体4内に固定されている。この固定状態で、装置ベース11の一部例えば周部は灯体4の内面に熱伝導可能に接続されている。この熱的接続は、前記周部を灯体4の内面に直接接触させることにより実現できる他、前記周部を放熱性の高い金属やヒートパイプ等の熱伝導部材を介して灯体4の内面に接続することで実現できる。これにより、光源装置6が発した熱を金属製の灯体4を放熱面として外部に放出できるようになっている。
次に、発光モジュール21について説明する。図5等に示すように発光モジュール21は、モジュール基板22と、正極用の配線パターン25と、負極用の配線パターン26と、アライメントマーク35と、第1の保護層37と、第2の保護層38と、複数のアイデンティティーマーク例えば第1のアイデンティティーマーク41〜第4のアイデンティティーマーク44と、複数の半導体発光素子45と、ボンディングワイヤ47〜52と、枠55と、封止部材例えば封止樹脂57と、電気部品例えばコネクタ61及びコンデンサ65等を備えている。
モジュール基板22は、白色のセラミックス例えば白色の酸化アルミニウムで形成されている。このモジュール基板22は、酸化アルミニウムのみで形成されていても良いが、酸化アルミニウムを主成分としこれに他のセラミックス等が混ぜられていてもよく、その場合、酸化アルミニウムを主成分とするために、その含有率を70%以上とすることが好ましい。
白色のモジュール基板22の地肌面の可視光領域に対する平均反射率は80%以上であり、特に、85%以上99%以下であることがより好ましい。したがって、モジュール基板22は、後述する青色LEDが発する特定の発光波長440nm〜460nmの青色光、及び後述する蛍光体が放射する特定の発光波長470nm〜490nmの黄色光に対しても、同様な光反射性能を発揮する。
モジュール基板22は図4に示すようにモジュール設置部12より多少小さい略四角形である。図5に示すようにモジュール基板22の四隅は丸みを帯びている。モジュール基板22の厚みは、図10に示すようにモジュール設置部12の深さより薄い。このモジュール基板22の両面は、互に平行に作られた平坦な面からなり、そのうちの一面は光反射面を兼ねた部品実装面22aとして用いられている。
正極用の配線パターン25及び負極用の配線パターン26は部品実装面22aに設けられている。
詳しくは、図6等に示すように正極用の配線パターン25は、正極パターン基部25aとワイヤ接続部25bを有して形成されている。ワイヤ接続部25bは真っ直ぐに延びて形成されている。正極パターン基部25aとワイヤ接続部25bは略平行で、かつ、斜めのパターン部を介して一体に連続されている。正極パターン基部25aに、正極用の給電パッド部例えば第1正極パッド部25cと部品接続用パッド部例えば第2正極パッド部25dが一体に突設されている。
負極用の配線パターン26は、負極パターン基部26aと、第1のワイヤ接続部26bと、中間パターン部26cと、第2のワイヤ接続部26dを有して形成されている。この配線パターン26は正極用の配線パターン25を囲むように設けられている。
即ち、負極パターン基部26aは配線パターン25の正極パターン基部25aに対して所定の絶縁距離A(図6参照)を隔てて隣接して設けられている。この負極パターン基部26aに、第1正極パッド部25cに並べて設けられる負極用の給電パッド部として例えば第1負極パッド部26eが一体に突設されている。第1のワイヤ接続部26bは、負極パターン基部26aに対して略90°折れ曲がるように一体に連続している。この第1のワイヤ接続部26bは、配線パターン25のワイヤ接続部25bとの間に第1素子配設スペースS1を形成してワイヤ接続部25bに対し略平行に設けられている。ここに「略平行」とは、図6に示すように平行である形態、又はワイヤ接続部25bに対して多少傾いた形態、若しくは多少湾曲した形態等も含んでいる。
中間パターン部26cは、第1のワイヤ接続部26bに対して略90°折れ曲がるように一体に連続して設けられている。この中間パターン部26cの長手方向中間部に、ワイヤ接続部25bの先端(正極パターン基部25aと反対側の端)が隣接している。中間パターン部26cの両端部は互いに逆方向に傾いていて、中間パターン部26cは略湾曲形状に形成されている。それにより、中間パターン部26cの長手方向中間部はワイヤ接続部25bの先端から遠ざけられている。
第2のワイヤ接続部26dは、中間パターン部26cに対して略90°折れ曲がるように一体に連続して設けられている。それにより、第2のワイヤ接続部26dは、配線パターン25のワイヤ接続部25bとの間に第2素子配設スペースS2を形成してワイヤ接続部25bに対し略平行に設けられている。ここに「略平行」とほ、図6に示すように平行である形態、又はワイヤ接続部25bに対して多少傾いた形態、或いは多少湾曲した形態等も含んでいる。
したがって、負極用の配線パターン26は正極用の配線パターン25を三方から囲むように設けられている。負極用の配線パターン26で囲まれた領域の中央部に配設された配線パターン25のワイヤ接続部25bを境に、負極用の配線パターン26の第1のワイヤ接続部26bと第2のワイヤ接続部26dは対称に配設されている。
第2のワイヤ接続部26dの先端に一体に連続して部品接続用パッド部例えば第2負極パッド部26fが、第2正極パッド部25dに対応して設けられている。これら第2負極パッド部26fは第2正極パッド部25dから離間しているとともに、これらの間に位置して部品接続用パッド部例えば中間パッド27が部品実装面22aに形成されている。
なお、配線パターン25を負極用とするとともに配線パターン26を正極用としてもよく、この場合、前記説明の「正極用」又は「正極」を「負極用」又は「負極」に読み替えるとともに、「負極用」又は「負極」を「正極用」又は「正極」に読み替えればよい。
更に、部品実装面22aに、点灯確認試験用の点灯検査用パッド28,29と、温度測定用の温度検査パッド31と、部品固定用の実装パッド33が設けられている。
即ち、点灯検査用パッド28は正極用の配線パターン25に接続されている。具体的には、正極パターン基部25aから枝分かれして一体に突出されたパターン部28aを介して点灯検査用パッド28が設けられている。同様に、点灯検査用パッド29は負極用の配線パターン26に接続されている。具体的には、負極パターン基部26aから枝分かれして一体に突出されたパターン部29aを介して点灯検査用パッド29が設けられている。
温度検査パッド31は、点灯検査用パッド29及び負極用の配線パターン26の近傍に、これらとは電気的な接続関係を有することなく独立して設けられている。この温度検査パッド31に熱電対を接続して発光モジュール21の温度を測定できるようになっている。
実装パッド33は一対形成されていて、これらは点灯検査用パッド28,29の間に位置して設けられている。
アライメントマーク35は、ワイヤ接続部25b、この両側の第1素子配設スペースS1及び第2素子配設スペースS2、第1素子配設スペースS1に隣接した第1のワイヤ接続部26b、及び第2素子配設スペースS2に隣接した第2のワイヤ接続部26dを間に置いて、その両側に夫々複数設けられている。そのため、アライメントマーク35の一部は、所定間隔で第1のワイヤ接続部26bの長手方向に沿って一列に設けられており、他のアライメントマーク35も、同様に所定間隔で第2のワイヤ接続部26dの長手方向に沿って一列に設けられている。
前記配線パターン25,26、中間パッド27、点灯検査用パッド28,29、実装パッド33、及びアライメントマーク35は、いずれもの銀を主成分として例えば単層に形成されており、これらは印刷例えばスクリーン印刷で部品実装面22aに印刷して設けられたものである(第1製造工程)。なお、印刷に代えてメッキにより設けることもできる。
前記第1の保護層37及び第2の保護層38は、電気絶縁性例えばガラス製でモジュール基板22の地肌色とは異なる色例えば白色との区別が明確な黒色をなしている。そのために、これら保護層の主成分をなすSiO2に黒色の顔料を混ぜた材料が使用されている。これら第1の保護層37及び第2の保護層38は、部品実装面22a上に印刷例えばスクリーン印刷により設けられている(第2製造工程)。
この印刷により、第1の保護層37は、図7に示すように配線パターン25のワイヤ接続部25bを除いた部位、及び配線パターン26の第1ワイヤ接続部26bと第2ワイヤ接続部26dを除いた部位に被着して設けられている。
具体的には、第1の保護層37は、後述する封止樹脂57で封止されない配線パターン25の封止部材外部分のうちで、この部分に含まれる第1正極パッド部25c及び第2正極パッド部25dを除いて正極パターン基部25aに被着されているともに、点灯検査用パッド28を除いてパターン部28aにも被着されている。
更に、第1の保護層37は、配線パターン26の後述する封止樹脂57で封止されない封止部材外部分のうちで、この部分に含まれる第1負極パッド部26eを除いて負極パターン基部26aに被着されている。しかも、第1の保護層37は、正極パターン基部25aと負極パターン基部26aとの間の絶縁距離Aを確保した隙間部分にも被着されているとともに、点灯検査用パッド29を除いてパターン部29aにも被着されている。加えて、第1の保護層37は、後述する封止樹脂57で封止されない配線パターン26の封止部材外部分のうちで、この部分に含まれる第2のワイヤ接続部26dの第2負極パッド部26f側の端部に、第2負極パッド部26fを除いて被着されているとともに、中間パッド27の両端部を除いてこの中間パッド27にも被着されている。
以上の被着のために、図7等に示すように第1の保護層37は、第2正極パッド部25dと中間パッド27の一端部にわたってこれらを露出させる第1逃げ部37aを有しているとともに、第2負極パッド部26fと中間パッド27の他端部にわたってこれらを露出させる第2逃げ部37bを有している。そして、この第1の保護層37は、前記封止部材外部分に、この部分の周辺にわたる大きさに制限して、以上のように被着されている。
図7に示すように第2の保護層38は、配線パターン26の後述する封止樹脂57で封止されない封止部材外部分に含まれる中間パターン部26cの略全体に被着されている。この第2の保護層38も、前記封止部材外部分に、この部分の周辺にわたる大きさに制限して、以上のように被着されている。
前記第1のアイデンティティーマーク41〜第4のアイデンティティーマーク44は、後述する封止樹脂57の外側でこの周りに配設してモジュール基板22の部品実装面22aに印刷例えばスクリーン印刷で設けられている(第3製造工程)。更に、この印刷により「+」「−」の極性表示等も部品実装面22aに設けられている。第1のアイデンティティーマーク41は製造者を示す社名であり、第2のアイデンティティーマーク42は商品名であり、第3のアイデンティティーマーク43は製品番号であり、第4のアイデンティティーマーク44は発光モジュール21についての情報を示した二次元バーコード(QRコード)である。
第1のアイデンティティーマーク41〜第4のアイデンティティーマーク44は、モジュール基板22とは異なる色で印刷されており、例えば、第1の保護層37及び第2の保護層38と同じ印刷材料からなり、したがって、黒色で、モジュール基板22の周部に第1の保護層37及び第2の保護層38と同時に印刷により設けられている。
このように第1の保護層37及び第2の保護層38と同じ材料からなる第1のアイデンティティーマーク41〜第4のアイデンティティーマーク44をモジュール基板22に設けたので、第1の保護層37及び第2の保護層38と、第1のアイデンティティーマーク41〜第4のアイデンティティーマーク44を、印刷により同時にモジュール基板22上に設けることができる。そのため、発光モジュール21の製造において、第1の保護層37及び第2の保護層38を設ける工程と、第1のアイデンティティーマーク41〜第4のアイデンティティーマーク44を設ける工程を分ける必要がなく、低コスト化を図ることが可能である。
複数の前記半導体発光素子45の夫々には、発光状態で発熱を伴う発光素子、例えば青色発光をするチップ状の青色LEDが用いられている。これら半導体発光素子45は、好ましくはサファイアガラス製の透光性素子基板上に半導体発光層を設けるとともに、この発光層上に一対の素子電極を設けた構成を備えるベアチップからなる。
LEDの発光は、半導体のp−n接合に順方向電流を流すことで実現されるので、LEDは電気エネルギーを直接光に変換する固体素子である。こうした発光原理で発光する半導体発光素子は、通電によりフィラメントを高温に白熱させて、その熱放射により可視光を放射させる白熱電球と比較して、省エネルギー効果を有している。
各半導体発光素子45のうちの半数は、前記第1素子配設スペースS1内でモジュール基板22に直に実装されている。この実装は、透明なダイボンド材を用いて素子基板を部品実装面22aに接着することで実現されており、第1素子配設スペースS1に実装された複数の半導体発光素子45は縦横に整列してマトリックス状に配設されている。同様に、残りの半導体発光素子45は、前記第2素子配設スペースS2内でモジュール基板22に直に実装されている。この実装も、透明なダイボンド材を用いて素子基板を部品実装面22aに接着することで実現されており、第2素子配設スペースS2に実装された複数の半導体発光素子45も縦横に整列してマトリックス状に配設されている。
第1素子配設スペースS1に配設された複数の半導体発光素子45と、第2素子配設スペースS2に配設された複数の半導体発光素子45は、ワイヤ接続部25bを境に対称に設けられている。
配線パターン25のワイヤ接続部25bと配線パターン26の第1のワイヤ接続部26bとが並んだ方向に列をなした半導体発光素子45同士は、ボンディングワイヤ47で直列に接続されている。こうして直列接続された素子列の一端に配置された半導体発光素子45は、ワイヤ接続部25bにボンディングワイヤ48で接続されている。これとともに、前記素子列の他端に配置された半導体発光素子45は、第1のワイヤ接続部26bにボンディングワイヤ49で接続されている。
同様に、配線パターン25のワイヤ接続部25bと配線パターン26の第2のワイヤ接続部26dとが並んだ方向に列をなした半導体発光素子45同士は、ボンディングワイヤ50で直列に接続されている。こうして直列接続された素子列の一端に配置された半導体発光素子45は、ワイヤ接続部25bにボンディングワイヤ51で接続されている。これとともに、前記素子列の他端に配置された半導体発光素子45は、第2のワイヤ接続部26dにボンディングワイヤ52で接続されている(第4製造工程)。なお、ボンディングワイヤ47〜52はいずれも金属細線好ましくは金線からなり、ワイヤボンディングにより設けられている。
モジュール基板22上に実装された複数の半導体発光素子45を以上のように電気的に接続したことにより、COB(Chip On Board)形の発光モジュール21が構成されている。前記電気的接続により、各素子配設スペースS1、S2に設けられた複数の半導体発光素子45は、例えば7個の半導体発光素子45を直列接続してなる例えば12個の素子列を、電気的には並列接続した配列となっている。
直列となっている素子列の延長線上に前記アライメントマーク35が夫々配設されている。そして、前記延長線上に位置された左右(図において)のアライメントマーク35を基準に、これらを通る直線上に半導体発光素子45が実装機により実装されるようになっている。
図9に示すように前記枠55は、例えば四角環状をなして、その内側に各ワイヤ接続部25b,26b,26d、複数の半導体発光素子45、及び各ボンディングワイヤ47〜52を収めて部品実装面22a上に装着されている。枠55は白色の合成樹脂でつくることが好ましい。この枠55は第1の保護層37の一部及び第2の保護層38の一部に被着されている。
前記封止樹脂57は、枠55内に充填されて、各ワイヤ接続部25b,26b,26d、複数の半導体発光素子45、及び各ボンディングワイヤ47〜52を埋設した状態でこれらを封止して、モジュール基板22上に設けられている(第5製造工程)。部品実装面22aうちで封止樹脂57により覆われた領域が光反射面として用いられる。封止樹脂57は、蛍光体(図示しない)が混ぜられた透明なシリコーン樹脂等からなり、透光性でかつガス透過性を有している。蛍光体には、半導体発光素子45が発した青色の光によって励起されて黄色の光を放射する黄色の蛍光体が用いられている。
前記青色の光とこれに対して補色の関係にある黄色の光が混じることによって白色の光が形成され、この白色光は封止樹脂57の表面から光の利用方向に出射される。そのため、封止樹脂57の表面、つまり、光出射面によって、発光モジュール21の発光面57aが形成されている。この発光面57aの大きさは枠55によって規定されている。
封止樹脂57で覆われた銀製の部分の面積をCとし、発光面57aの面積をDと置いた場合、面積Dに対する面積Cの占有率は、5%以上40%以下に設定されている。配線パターン25,26の封止樹脂57で覆われた部分とは、各ワイヤ接続部25b、26b、26dである。
なお、枠55に相当する型部材を設けて、この内部に封止樹脂57を設けた後に、型部材をモジュール基板22上から離脱させることにより、封止樹脂57を設けても良い。
図5に示すように部品実装面22aには、電気部品例えば面実装部品からなる1個のコネクタ61及び2個のコンデンサ65が実装されている(第6製造工程)。
即ち、コネクタ61は、その一側面から突出された第1の端子ピン61aと第2の端子ピン61bを有した2ピンタイプの構成である。このコネクタ61は、前記実装パッド33に半田付けされ、それにより、前記点灯検査用パッド28,29間に配設されている。これとともに、第1の端子ピン61aが第1正極パッド部25cに、第2の端子ピン61bが第1負極パッド部26eに夫々田付けされている。このコネクタ61には図示しない電源装置に接続された直流給電用の絶縁被覆電線が差し込み接続される。それにより、コネクタ61を経由して発光モジュール21への給電が可能となっている。
2個のコンデンサ65のうちの一方は、第1の保護層37の第1逃げ部37a内で、配線パターン25の第2正極パッド部25d及び中間パッド27の一端部に半田付けされて、これらにわたって配設されている。同様に、2個のコンデンサ65のうちの他方は、第1の保護層37の第2逃げ部37b内で、配線パターン26の第2負極パッド部26f及び中間パッド27の他端部に半田付けされて、これらにわたって配設されている。各半導体発光素子45に直流が供給される通常の点灯状態では、コンデンサ65に電流が流れることはない。しかし、例えばサージ電圧等のノイズが重畳して交流が流れるような事態に至った場合、コンデンサ65に電流が流れて配線パターン25,26が短絡され、各半導体発光素子45に交流が供給されることがないようにできるので、それにより、各半導体発光素子45が異常発光することを防止している。
図10に示すように前記構成の発光モジュール21は、そのモジュール基板22の裏面、つまり、部品実装面22aと反対側の面を、前記モジュール設置部12の底面12aに密接させて装置ベース11に支持されている。それにより、モジュール基板22からモジュール設置部12への放熱ができるように発光モジュール21が装置ベース11に支持されている。このように支持された発光モジュール21が灯体4に取付けられた状態で、発光面57aは、透光板5に対向されている。
前記モジュールの支持のために、図4及び図10に示すように装置ベース11に複数例えば2個の金属製の押え板71がねじ止めされている。これら押え板71の先端部はモジュール基板22の周部に対向していて、この先端部にモジュール基板22の周部を押圧する金属製のばね72が取付けられている。これらのばね72のばね力でモジュール基板22の裏面が底面12aに密接された状態が保持されている。こうした保持によって、発光モジュール21の点灯に伴う温度上昇と消灯に伴う温度下降によるヒートサイクルで、セラミックス製のモジュール基板22にストレスが作用しても、このモジュール基板22が損傷することを防止できるように構成されている。
前記構成の道路灯1への給電が行われると、発光モジュール21が有した複数の半導体発光素子45が一斉に発光するので、発光面57aから出射された白色の光は、透光板5を直接透過し、若しくは反射器15の内面で反射された上で透光板5を透過して、照明対称の道路を照射する。この照明で、平面ミラーからなる第1の反射板15a及び第2の反射板15bで反射された光は、略広がらずに主に道路の長手方向に照射される。これとともに、カーブミラーからなる第3の反射板15c及び第4の反射板15dで反射された光は、道路の幅方向に対する照射角を制御されて主に道路の幅方向に照射される。
こうした照明において発光面57aから光の取出し方向に出射される光は、半導体発光素子45から封止樹脂57を直接透過した光、封止樹脂57内の蛍光体から放射されて封止樹脂57を直接透過した光の他に、半導体発光素子45の素子基板及びダイボンド材を通って部品実装面22aに入射されるとともに、この部品実装面22aで反射されて封止樹脂57を透過した光、及び蛍光体から放射されて封止樹脂57を通って部品実装面22aに入射されるとともに、この部品実装面22aで反射されて再び封止樹脂57を透過した光、及び封止樹脂57で封止された銀を主成分とする配線パターン25,26の一部(つまり、ワイヤ接続部25b、並びに第1ワイヤ接続部26b,第2ワイヤ接続部26d)に入射されるとともに、これらの部分で反射されて再び封止樹脂57を透過した光を含んでいる。
このように入射光を光の取出し方向に反射させる封止樹脂57で覆われたモジュール基板の光反射領域、及びこの領域内に配置された配線パターン25,26の各一部は、封止樹脂57で覆われて封止されている。これとともに、配線パターン25,26の残りの部分、つまり、封止樹脂57で封止されることなくその外側に設けられた封止部材外部分は、この部分に被着された第1の保護層37又は第2の保護層38で封止されている。
これにより、銀を主成分とした両配線パターン25,26が大気中の硫黄成分で硫化することが抑制されるため、各半導体発光素子45に給電をする経路を形成した両配線パターン25,26が、劣化し高抵抗化することを抑制可能である。
この場合、第1の保護層37及び第2の保護層38は、封止樹脂57で封止されていない配線パターン25,26の封止部材外部分に、この部分の周辺にわたる大きさに制限して設けられているので、モジュール基板22の大きさに比較して遥かに小さく、モジュール基板22の一部に限定して設けられているに過ぎない。そのため、第1の保護層37及び第2の保護層38を形成するための材料の使用量を、略必要最小限に減らすことができるに伴い、低コストで、銀を主成分とした配線パターン25,26の高抵抗化を防止することが可能である。
しかも、第1の保護層37及び第2の保護層38は、封止樹脂57が封止した領域外に設けられている。そのため、第1の保護層37及び第2の保護層38が前記封止領域に入り込んで、封止樹脂57の面積に対応する大きさのモジュール基板22の光反射面積を小さくすることがない。これとともに、第1の保護層37及び第2の保護層38がモジュール基板22の光反射面をなす地肌色とは異なる黒色であるにも拘らず、これら第1の保護層37及び第2の保護層38での光の吸収によって、モジュール基板22側での光反射性能が低下することがない。
更に、封止樹脂57の封止領域外に、給電用のコネクタ61が半田により接続される第1正極パッド部25c及び第1負極パッド部26eが設けられているので、これら給電パッド部が封止樹脂57の封止領域内に設けられた場合のようにモジュール基板22の光反射面積が減ることがない。これとともに、第1正極パッド部25c及び第1負極パッド部26eが、モジュール基板22側での光反射を乱だす因子となることがない。これに加えて、これら第1正極パッド部25c及び第1負極パッド部26eにわたって取付けられたコネクタ61を原因として、封止領域内でモジュール基板22側が凸凹にならないので、モジュール基板22側での光の反射が乱されることがない。
同様に、封止領域外に位置する第1の保護層37の第1逃げ部37a及び第2逃げ部37bに、部品接続用パッド部である第2正極パッド部25d、第2負極パッド部26f、及び中間パッド27が露出されていて、これらの部位にコンデンサ65が半田付けされている。すなわち、半導体発光素子45の異常発光を防止するコンデンサ65が前記封止領域の外側に取付けられているので、これら部品接続用パッド部が封止樹脂57の封止領域内に設けられた場合のように、部品接続用パッド部によってモジュール基板22の光反射面積が減ることがないとともに、モジュール基板22側での光反射面が乱され難くなることに加えて、これら部品接続用パッド部にわたって取付けられたコンデンサ65を原因として、封止領域内でモジュール基板22側が凸凹にならない。したがって、モジュール基板22側での光の反射が乱されることがない。なお、以上はっこうを防止する電気部品としてコンデンサに変えてツェナーダイオードを用いることもできる。
以上のように前記構成の発光モジュール21よれば、そのモジュール基板22に形成された各保護層及び各パッド部、並びにモジュール基板22に実装された電気部品によって、封止樹脂57で封止された領域のモジュール基板22側での光反射面積が減ることがないとともに、光の反射が乱され難くモジュール基板22側で適正に光を反射させることができる。そのため、光取出し効率を高めることが可能である。
又、実施形態1の発光モジュール21は、既述のように部品実装面22aを有したモジュール基板22が白色のセラミックス製で、その平均反射率は80%以上であるので、部品実装面22aに入射された光、つまり、半導体発光素子45をなす青色LEDが発した発光波長440nm〜460nmの青色光、及び蛍光体が放射した発光波長470nm〜490nmの黄色光を、道路方向、言い換えれば、光の取出し方向に効率良く反射させることができる。特に、モジュール基板22の部品実装面22aの平均反射率を85%以上99%以下とした場合は、更に効率よく、部品実装面22aに入射された光を光の取出し方向に効率良く反射させることができる。
このように光を反射する部品実装面22aを有したモジュール基板22は、白色のセラミックス製であり、その地肌面を部品実装面22aとして利用しているので、このモジュール基板22での反射性能は、発光モジュール21の使用開始からの経過時間に拘らず、一定に維持される。
更に、モジュール基板22側での光の反射は、部品実装面22aだけではなく、封止樹脂57で封止された配線パターン25のワイヤ接続部25b、及び配線パターン26の第1のワイヤ接続部26b並びに第2のワイヤ接続部26dでも行われるが、これらワイヤ接続部25b,26b,26dは、道路灯1が設置された時からの経過時間が長くなるほど、黒ずみが進行して、その光反射性能は次第に低下する。
しかし、前記構成の発光モジュール21は、既述のように発光面57aの面積に対する銀を主成分としたワイヤ接続部25b,26b,26dの面積占有率が40%以下に規定されている。言い換えれば、部品実装面22aでの反射面積が、発光面57aの面積の60%を超える大きさに確保されている。この場合、銀を主成分とした配線パターン25の正極パターン基部25a、及び配線パターン26の中間パターン部26cは、封止樹脂57で封止されておらず、発光面57aの外側に外れているので、前記面積占有率を40%以下にする上で好ましい。
前記面積占有率の規定により、ワイヤ接続部25b,26b,26dの黒化の進行に伴う光反射性能の低下が発光モジュール21全体の光反射性能に与える影響を、小さく制限できる。したがって、実施例1の発光モジュールによれば、発光モジュール21の光束維持率の低下を緩慢にすることが可能である。言い換えれば、発光面57aで覆われた反射領域での光反射性能の低下が緩慢である。それに伴い光の取出し効率が高く維持されるので、省エネルギー効果を促進することが可能である。
そして、このように光束維持率の低下が緩慢であることに伴い、光源としての発光モジュール21が規定寿命例えば光束維持率が70%に達するまでに要する時間が長い道路灯1を提供することが可能である。言い換えれば、封止された銀の部分の発光面57aに対する面積占有率が40%以下であることにより、道路灯(照明器具)1が推奨寿命を超えて使用された場合にも、前記銀の部分の黒化に拘らず、発光モジュール21の光束維持率を70%以上に保持することができる。なお、道路灯1の交換の目安となる推奨寿命としては、光束維持率が70%に達する時期をもって規定されている。
なお、封止された銀の部分の発光面57aに対する面積占有率が40%を超えると、前記銀の部分の黒化の進行による発光モジュール21全体の光反射性能に与える影響が大きくなり過ぎ、それに伴い発光モジュール21の光束維持率の低下が早められて、光束維持率が70%に達するまでに要する時間が短くなる。そのため、本実施形態の課題を解決できなくなるので不適当である。
又、封止樹脂57で封止された配線パターン25,26のワイヤ接続部25b,26b,26dの発光面57aに対する面積占有率は5%以上である。それにより、ワイヤ接続部25b,26b,26dの幅を、これらの部分に対するボンディングワイヤ48,49、51,52のワイヤボンディングに支障がないように、ある程度広く形成できる。したがって、製造上の問題を招かないようにできる。