JP5458595B2 - 半導体装置、スイッチング装置、及び、半導体装置の制御方法。 - Google Patents

半導体装置、スイッチング装置、及び、半導体装置の制御方法。 Download PDF

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本発明は、IGBTとダイオードが形成されている半導体基板を備える半導体装置に関する。
特許文献1には、IGBTとダイオードが形成されている半導体基板を備える半導体装置が開示されている。この半導体装置では、IGBTのエミッタ領域及びボディ領域とダイオードのアノード領域が上部電極と導通しており、IGBTのコレクタ領域とダイオードのカソード領域が下部電極と導通している。すなわち、IGBTとダイオードが逆向きに並列接続されている。この半導体装置は、インバータ回路等に用いられる。IGBTは、スイッチングすることによって、モータの電流を制御する。ダイオードは、IGBTのオフ時に電流を還流することによって、IGBTを保護する。
特開2008−53648号 特開2008−192737号
ダイオードに印加される電圧が順電圧から逆電圧に切り換えられるときには、ダイオードに流れていた順電流が低下し、その後、ダイオードに逆電流が流れる。すなわち、順電圧の低下に伴って、ダイオードの順電流は低下する。その後、逆電圧が印加されると、ダイオードのカソード領域内に存在しているホールが逆電圧の印加によって上部電極に排出される。これによって、ダイオードに逆電流が流れる。逆電流は、ホールの排出が進むに従って減衰し、やがてゼロとなる。逆電流は瞬間的に大電流となり、また、逆電流が流れる際にダイオードに印加される逆電圧も極めて高くなることから、逆電流が流れる際にダイオードで高い損失が発生する。逆電流によって生じる損失は、逆回復損失と呼ばれる。
逆回復損失を低減する技術として、ダイオードのカソード領域内に軽イオンや電子線を打ち込んで、カソード領域内に結晶欠陥を形成する技術が知られている。結晶欠陥はキャリアの再結合中心として作用する。このため、カソード領域内に結晶欠陥を形成すると、逆電流が流れる際に、カソード領域内のホールが結晶欠陥近傍で電子と再結合する。これによって、ホールが消滅し、逆電流を早く減衰させることができる。しかしながら、この技術をIGBTとダイオードを有する半導体装置に適用すると、IGBTのドリフト領域内にも結晶欠陥が形成される。すると、IGBTのオン時にドリフト領域内でホールが再結合し易くなり、IGBTのオン電圧が上昇してしまう。特許文献2には、IGBTとダイオードを有しており、ダイオードのカソード領域にのみ結晶欠陥を形成することで、IGBTのオン電圧を上昇させずにダイオードの逆回復損失を低減する技術が開示されている。しかしながら、軽イオンや電子線の打ち込み範囲の正確な制御は困難であり、実際にはダイオードのカソード領域にのみ結晶欠陥を形成することは困難であった。このため、特許文献2の技術では、量産時に半導体装置の特性が安定しないという問題が生じる。
以上に説明したように、従来のIGBTとダイオードを有する半導体装置においては、IGBTのオン電圧を上昇させることなくダイオードの逆回復損失を低減することが困難であった。
本発明は上述した実情を鑑みて創作されたものであり、オン電圧が低いIGBTと、逆回復損失が低いダイオードを有する半導体装置を提供することを目的とする。
本発明の半導体装置は、上面に上部電極が形成されており、下面に下部電極が形成されており、縦型のIGBTと縦型のダイオードが形成されている半導体基板を備えている。IGBTは、上部電極と導通しているn型のエミッタ領域と、上部電極と導通しており、エミッタ領域に隣接しているp型のボディ領域と、ボディ領域に隣接しており、ボディ領域によってエミッタ領域から分離されているn型のドリフト領域と、ドリフト領域に隣接しており、ドリフト領域によってボディ領域から分離されており、下部電極と導通しているp型のコレクタ領域と、エミッタ領域とドリフト領域を分離している範囲のボディ領域に絶縁膜を介して対向しているゲート電極を有している。ダイオードは、上部電極と導通しているp型のアノード領域と、アノード領域と隣接しており、下部電極と導通しており、IGBTのドリフト領域と連続しているn型のカソード領域と、カソード領域に絶縁膜を介して対向している制御電極を有している。そして、カソード領域の絶縁膜に接する範囲内に、その周囲のカソード領域よりもn型不純物濃度が高い高濃度領域が形成されている。
この半導体装置において、ダイオードに印加される電圧が順電圧から逆電圧に切り換えられるときには、ダイオードの順電流が低下し、次に、ダイオードに逆電流が流れ、その後、ダイオードの逆電流が減衰する。この半導体装置を使用する際には、ダイオードの順電流の低下が開始してからダイオードの逆電流が減衰するまでの期間のうちの少なくとも一部の期間において、制御電極に負電位(上部電極の電位より低い電位)を印加することができる。これによって、カソード領域内に電界を発生させる。すると、カソード領域内に存在するホールが、電界によって制御電極側に引き寄せられる。制御電極の周囲の絶縁膜と接する範囲内には、高濃度にn型不純物を含有する(すなわち、高濃度に電子が存在する)高濃度領域が形成されている。このため、制御電極側に引き寄せられたホールは、高濃度領域内に流入し、高濃度領域内で電子と再結合して消滅する。これによって、カソード領域内のホールが減少し、逆電流を短時間で減衰させることができる。したがって、この半導体装置では、ダイオードで生じる逆回復損失が小さい。
また、この半導体装置の構造によれば、IGBTのドリフト領域内に高濃度領域を形成しないで、ダイオードのカソード領域内にのみ高濃度領域を形成することができる。例えば、半導体基板のダイオードの領域にカソード領域に達するトレンチを形成し、そのトレンチの底部近傍に高濃度領域を形成し、その後、そのトレンチ内に制御電極を形成することで、IGBT側に高濃度領域を形成することなくダイオード側にのみ高濃度領域を形成することができる。このようにダイオード側にのみ高濃度領域を形成すれば、IGBTのオン時にドリフト領域内でホールが再結合することが防止され、IGBTのオン電圧が上昇してしまうことはない。このように、この半導体装置は、IGBTとダイオードを容易に作り分けることができ、IGBTのオン電圧を低減することができる。
また、半導体基板にダイオードとIGBTとを間隔を設けることなく隣接して形成することもできる。この場合には、IGBTのドリフト領域の近傍にダイオードの高濃度領域が形成されるが、この場合にもIGBTのオン電圧の上昇を抑制することができる。すなわち、この場合には、IGBTの通電時に、ダイオードの制御電極に上部電極の電位以上の電位を印加する。すると、制御電極への印加電位によりカソード領域内に電界が生じ、この電界によってホールが高濃度領域に流入することが抑制される。すなわち、ホールが再結合することが抑制される。これによって、IGBTのオン電圧を低減することができる。
なお、IGBTのボディ領域とダイオードのアノード領域は、共通化することができる。また、IGBTのドリフト領域とダイオードのカソード領域は、共通化することができる。また、IGBTのゲート電極とダイオードの制御電極は、共通化することができる。このように、各部を共通化する場合にも、IGBTの通電時に、制御電極に上部電極以上の電位を印加することで、IGBTのオン電圧を低減することができる。
本発明は、上述した半導体装置を有するスイッチング装置も提供する。このスイッチング装置は、上述した半導体装置と電位制御装置を備えている。電位制御装置は、ダイオードに印加される電圧が順電圧から逆電圧に切り換えられるときに、ダイオードの順電流の低下が開始してからダイオードの逆電流が減衰するまでの期間のうちの少なくとも一部の期間において、制御電極に上部電極の電位より低い電位を印加する。
このスイッチング装置によれば、IGBTのオン電圧を低減することができるとともに、ダイオードの逆回復損失を低減することができる。
上述したスイッチング装置は、ダイオードの順電流の低下が開始してからダイオードの逆電流が減衰するまでの上記期間を除く期間においてダイオードに順電流が流れているときに、電位制御装置が、制御電極に上部電極の電位以上の電位を印加することが好ましい。
電流を還流させるためにダイオードに順電流が流れている際に、カソード領域内でホールの再結合が生じると、ダイオードの順電圧が上昇してダイオードの損失が大きくなる。このスイッチング装置では、ダイオードの順電流の低下が開始してからダイオードの逆電流が減衰するまでの期間を除く期間においてダイオードに順電流が流れているときに(すなわち、電流を還流させるために順電流が流れているときに)、電位制御装置が、ダイオードの制御電極に上部電極の電位以上の電位を印加する。このため、カソード領域内のホールが制御電極に引き寄せられず、ホールが高濃度領域に流入して再結合により消滅することが抑制される。したがって、順電流通電時におけるダイオードでの損失を抑制することができる。
上述したスイッチング装置は、IGBTの通電時に、電位制御装置が、制御電極に上部電極の電位以上の電位を印加することが好ましい。
IGBTの通電時にダイオードの制御電極に上部電極の電位以上の電位を印加することで、IGBTのドリフト領域内のホールがダイオードの高濃度領域に引寄せられず、ホールが高濃度領域に流入して再結合により消滅することをより抑制することができる。したがって、このスイッチング装置によれば、IGBTのオン電圧をより低減することができる。
また、本発明は、上述した半導体装置の制御方法をも提供する。この制御方法では、ダイオードに印加される電圧が順電圧から逆電圧に切り換えられるときに、ダイオードの順電流の低下が開始してからダイオードの逆電流が減衰するまでの期間のうちの少なくとも一部の期間において、ダイオードの制御電極に上部電極の電位より低い電位を印加する。
この制御方法によれば、ダイオードの逆回復損失を低減することができる。
上述した制御方法は、ダイオードの順電流の低下が開始してからダイオードの逆電流が減衰するまでの上記期間を除く期間においてダイオードに順電流が流れているときに、制御電極に上部電極の電位以上の電位を印加することが好ましい。
この制御方法によれば、順電流通電時におけるダイオードの損失を低減することができる。
上述した制御方法は、IGBTの通電時に、ダイオードの制御電極に上部電極の電位以上の電位を印加することが好ましい。
この制御方法によれば、IGBTのオン電圧をより低減することができる。
本発明によれば、オン電圧が低いIGBTと、逆回復損失が低いダイオードを有する半導体装置を提供することができる。
第1実施例の半導体装置10の断面図。 インバータ回路70の回路図。 インバータ回路70の回路図。 ダイオード40の逆回復時における各値のグラフ。 第2実施例の半導体装置110の断面図。 第3実施例の半導体装置210の断面図。 第4実施例の半導体装置310の断面図。
下記に詳細に説明する実施例の構成を最初に列記する。
(特徴1)高濃度領域は、カソード層とアノード層の境界近傍に形成されている。
(特徴2)ダイオードには、半導体基板の上面からアノード層を貫通してカソード層に達するトレンチが形成されており、そのトレンチの内面に絶縁膜が形成されており、トレンチ内に制御電極が形成されている。高濃度領域は、トレンチの底部の絶縁膜に接する範囲に形成されている。
第1実施例の半導体装置について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施例の半導体装置10の概略断面図を示している。図1に示すように、半導体装置10は、主にシリコンからなる半導体基板12を備えている。半導体基板12には、IGBT領域20とダイオード領域40が形成されている。
IGBT領域20の半導体基板12の上面12aには、複数のトレンチ30が形成されている。トレンチ30の壁面には、絶縁膜32が形成されている。トレンチ30内には、ゲート電極34が形成されている。ゲート電極34の上部にはキャップ絶縁膜36が形成されている。IGBT領域20の半導体基板12の上面12aに臨む領域には、n型のエミッタ領域22と、p型のボディ領域24が選択的に形成されている。エミッタ領域22は、絶縁膜32と接するように形成されている。ボディ領域24は、エミッタ領域22を覆うように形成されている。ボディ領域24は、p型不純物濃度が高いボディコンタクト領域24aと、p型不純物濃度が低い低濃度ボディ領域24bを備えている。ボディコンタクト領域24aは、ボディ領域24のうち上面12aに臨む領域に形成されている。低濃度ボディ領域24bは、エミッタ領域22とボディコンタクト領域24aの下側に形成されている。低濃度ボディ領域24bは、エミッタ領域22の下側で絶縁膜32と接するように形成されている。低濃度ボディ領域24bは、トレンチ30の下端より浅い位置まで形成されている。ボディ領域24の下側には、n型のドリフト層26が形成されている。ドリフト層26は、ボディ領域24によってエミッタ領域22から分離されている。ドリフト層26は、n型不純物濃度が低い低濃度ドリフト層26aと、n型不純物濃度が高いバッファ層26bを備えている。低濃度ドリフト層26aは、ボディ領域24の下側に形成されている。バッファ層26bは、低濃度ドリフト層26aの下側に形成されている。ドリフト層26の下側の、半導体基板12の下面12bに臨む領域には、p型のコレクタ層28が形成されている。コレクタ層28は、ドリフト層26によってボディ領域24から分離されている。IGBT領域20には、エミッタ領域22、ボディ領域24、ドリフト層26、コレクタ層28、及び、ゲート電極34によって、多数のIGBTが形成されている。以下では、IGBT領域20に形成されているIGBTを、IGBT20という。
ダイオード領域40の半導体基板12の上面12aには、複数のトレンチ50が形成されている。トレンチ50は、トレンチ30と略同じ深さまで伸びている。トレンチ50の壁面には、絶縁膜52が形成されている。トレンチ50内には、トレンチ電極54が形成されている。トレンチ電極54の上部にはキャップ絶縁膜56が形成されている。ダイオード領域40の半導体基板12の上面12aに臨む領域には、p型のアノード層42が形成されている。アノード層42は、p型不純物濃度が高いアノードコンタクト領域42aと、p型不純物濃度が低い低濃度アノード層42bを備えている。アノードコンタクト領域42aは、半導体基板12の上面12aに臨む領域のうち、2つのトレンチ50の中間部に位置する領域に形成されている。低濃度アノード層42bは、アノードコンタクト領域42aを覆うように形成されている。低濃度アノード層42bは、IGBT領域20の低濃度ボディ領域24bと略同じ深さまで形成されている。アノード層42の下側には、n型のカソード層44が形成されている。カソード層44は、カソードドリフト層46と、高濃度領域47と、カソードコンタクト層48を備えている。カソードドリフト層46は、アノード層42の下側に形成されている。カソードドリフト層46はIGBT20の低濃度ドリフト層26aと連続しており、カソードドリフト層46のn型不純物濃度は低濃度ドリフト層26aのn型不純物濃度と略等しい。カソードコンタクト層48は、カソードドリフト層46の下側の半導体基板12の下面12bに臨む領域に形成されている。カソードコンタクト層48はIGBT20のバッファ層26bと連続しており、カソードコンタクト層48のn型不純物濃度はバッファ層26bのn型不純物濃度と略等しい。高濃度領域47は、トレンチ50の下端近傍のカソードドリフト層46内(絶縁膜52と接する領域)に形成されている。高濃度領域47のn型不純物濃度は、カソードドリフト層46のn型不純物濃度より高い。ダイオード領域40には、アノード層42とカソード層44によって、ダイオードが形成されている。以下では、ダイオード領域40に形成されているダイオードを、ダイオード40という。
半導体基板12の下面12b上には、全面に亘って下部電極60が形成されている。下部電極60は、コレクタ層28及びカソードコンタクト層48とオーミック接触している。
半導体基板12の上面12aには、上部電極64が形成されている。上部電極64は、キャップ絶縁膜36、56を覆うように形成されている。上部電極64は、ゲート電極34及びトレンチ電極54から絶縁されている。上部電極64は、エミッタ領域22、ボディコンタクト領域24a及びアノードコンタクト領域42aとオーミック接触している。
各ゲート電極34は、図示しない位置で半導体基板12の上面12a上に形成されている電極と接続されている。各トレンチ電極54は、図示しない位置で半導体基板12の上面12a上に形成されている電極と接続されている。ゲート電極34とトレンチ電極54は導通していない。
図2は、半導体装置10を有するインバータ回路70を示している。インバータ回路70は、6個の半導体装置10(すなわち、半導体装置10a〜10f)を備えている。図2においては、各半導体装置10の上側の端子が図1の下部電極60であり、下側の端子が図1の上部電極64である。半導体装置10aは、電源ライン74(電源電位Vccに接続されているライン)とモータ80の第1相ライン71の間に接続されている。半導体装置10bは、電源ライン74とモータ80の第2相ライン72の間に接続されている。半導体装置10cは、電源ライン74とモータ80の第3相ライン73の間に接続されている。半導体装置10dは、グランドライン75(接地されているライン)とモータ80の第1相ライン71の間に接続されている。半導体装置10eは、グランドライン75とモータ80の第2相ライン72の間に接続されている。半導体装置10fは、グランドライン75とモータ80の第3相ライン73の間に接続されている。各IGBT20のゲート電極34は、電位制御装置82に接続されている。電位制御装置82によって、各IGBT20のゲート電極34の電位が制御され、これによって各IGBT20のオン−オフが制御される。各IGBT20が適切なタイミングでオン−オフされることで、モータ80に三相交流電流が供給され、モータ80が回転する。各ダイオード40のトレンチ電極54は、電位制御装置82に接続されている。電位制御装置82は、各ダイオード40のトレンチ電極54の電位も制御する。
図2の矢印90は、IGBT20a、20e、20fがオンしており、IGBT20b、20c、20dがオフしているときの電流経路を示し手いる。矢印90に示すように、この状態では、電源ライン74から、第1相ライン71(すなわち、IGBT20a)を介してモータ80に電流が供給される。モータ80に入力された電流は、第2相ライン72(すなわち、IGBT20e)と第3相ライン73(すなわち、IGBT20f)のそれぞれを介して、グランドライン75へと流れる。
図2の状態において、IGBT20aをオンからオフに切り換えると、図3の矢印92に示すように電流が流れる。すなわち、IGBT20aをオフすると、モータ80への電流の供給が停止される。すると、モータ80の端子間に誘導起電力が生じる。IGBT20e、20fがオンしているので、モータ80の誘導起電力によって、ダイオード40dに順電圧が印加される。これによって、矢印92に示すように、モータ80から、第2相ライン72(すなわち、IGBT20e)及び第3相ライン73(すなわち、IGBT20f)と、グランドライン75と、ダイオード40dと、第1相ライン71を介してモータ80に戻るように電流が還流する。
図3の状態からIGBT20aをオンすると、再度、図2の矢印90に示すように電流が流れる。IGBT20aが適宜オン−オフされることによって、図2の状態と図3の状態が適宜切り換えられる。これによって、モータ80への供給電流が制御される。図3の状態から図2の状態に切り換えられるときには、ダイオード40dに印加される電圧が順電圧から逆電圧に切り換えられる。この際に、ダイオード40dに逆電流が流れる。
次に、ダイオード40への印加電圧が順電圧から逆電圧に切り換えられる際の半導体装置10の動作について説明する。なお、各半導体装置10は略同様に制御されるので、以下では、半導体装置10dの動作について説明する。
図4は、図3に示す状態から図2に示す状態へ切り換える際(すなわち、図3に示す状態においてIGBT20aをオフからオンに切り換える際)における、各値のグラフを示している。グラフA1は、IGBT20aのゲート電極34への印加電位VGIを示している。グラフA2は、ダイオード40dを流れる電流IDを示している。グラフA3は、ダイオード40dのトレンチ電極54への印加電位VGDを示している。
タイミングT1以前の期間では、電位VGIが0VとされることでIGBT20aはオフしており、インバータ回路70が図3に示すように動作している。この状態では、ダイオード40dに順電流が流れている。この状態(電流還流のための順電流通電時)においては、電位制御装置82は、電位VGDを0Vとしている。
タイミングT1において電位VGIがオン電位に上昇すると、IGBT20aがオンする。IGBT20aがオンすると、第1相ライン71の電位が徐々に上昇し、タイミングT2においてダイオード40dを流れる電流IDが減少し始める。そして、タイミングT4において、ダイオード40dのカソードドリフト層46内に存在するホールの上部電極64への排出が開始されて、ダイオード40dに逆電流が流れ始める。逆電流は、徐々に上昇してピーク値となり、その後は、カソードドリフト層46内のホールの排出に伴って減衰してタイミングT5で0となる。
電位制御装置82は、電位VGIが0VとなるタイミングT1から所定時間経過後のタイミングT3において、電位VGDを負電位(グランド電位より低い電位)に制御する。タイミングT3は、電流IDが減少を始めるタイミングT2よりも少し遅いタイミングに設定されている。電位制御装置82は、逆電流が0に減衰するタイミングT5まで電位VGDを負電位に制御し、その後、電位VGDを0Vに切り換える。
電流IDが減少を始めるタイミングT2から逆電流が減衰するタイミングT5の間の期間において、トレンチ電極54に負電位が印加されていると、以下の減少が起こる。すなわち、トレンチ電極54に負電位が印加されると、カソードドリフト層46内に存在するホールが、トレンチ電極54に引寄せられる。上述したように、カソードドリフト層46内のトレンチ50の下端近傍には、高濃度領域47が形成されている。このため、トレンチ電極54に引寄せられたホールが、高濃度領域47内に流入する。高濃度領域47は高濃度にn型不純物を含有しているので、高濃度領域47内には多数の電子が存在している。このため、高濃度領域47に流入したホールは電子と再結合して消滅する。これによって、カソードドリフト層46内のホールが減少し、ホールの排出により生じる逆電流が低減される。図4の例では、タイミングT2と略等しいタイミングT3からタイミングT5の間の期間においてトレンチ電極54に負電位を印加しており、これによって、逆電流を低減している。その結果、逆電流のピーク値が低減されているとともに、逆電流が発生してから減衰するまでの時間(タイミングT4からT5までの時間)が短縮化されている。これによって、ダイオード40dの逆回復損失が低減されている。
また、電位制御装置82は、タイミングT1以前の期間(すなわち、電流還流のためにダイオード40dに順電流が流れている期間)において、トレンチ電極54への印加電位VGDを0V(すなわち、上部電極64と同じ電位)とする。このため、ダイオード40dの順方向通電時には、カソードドリフト層46内のホールはトレンチ電極54側に引寄せられない。これによって、順方向通電時にホールが高濃度領域47内に流入して再結合することが抑制されている。これによって、順方向通電時においてダイオード40dで生じる損失が低減されている。
なお、第1実施例では、電流還流のためにダイオード40dに順電流が流れている期間において、トレンチ電極54への印加電位VGDを0Vとした。しかしながら、このときの印加電位VGDは、0V以上(すなわち、上部電極64の電位以上)であれば何れの値であってもよい。電位VGDを0V以上とすることで、ホールの高濃度領域47への流入を抑制することができる。
一方、半導体装置10dでは、IGBT10dのオン電圧の低減が図られている。すなわち、半導体装置10dでは、ダイオード40dのカソードドリフト層46内にのみ高濃度領域47が形成されており、IGBT20dのドリフト層26内に高濃度領域47が形成されていない。したがって、IGBT20dの通電時に、ドリフト層26内のホールがダイオード40dの高濃度領域47に流入し難い。これによって、IGBT20dの通電時に、ドリフト層26内のホールが再結合により消滅することが抑制され、IGBT20dのオン電圧が低減されている。
また、電位制御装置82は、IGBT20dの通電時には、ダイオード40dのトレンチ電極54への印加電位VGDを0V(すなわち、上部電極64と同じ電位)とする。このようにトレンチ電極54の電位を制御することで、IGBT20dの通電時に、IGBT20dのドリフト層26内のホールが、ダイオード40dの高濃度領域47に接近することを防止することができる。これによって、ドリフト層26内のホールが再結合により消滅することをさらに抑制することができ、IGBT20dのオン電圧をより低減することができる。
なお、第1実施例では、IGBT20dの通電時において、ダイオード40dのトレンチ電極54への印加電位VGDを0Vとした。しかしながら、このときの印加電位VGDは、0V以上(すなわち、上部電極64の電位以上)であれば何れの値であってもよい。電位VGDを0V以上とすることで、ホールの高濃度領域47への流入を抑制することができる。
次に、半導体装置10の製造方法について説明する。
半導体装置10は、低濃度ドリフト層26a及びカソードドリフト層46と略同じ濃度のn型不純物を含有するシリコンウエハから製造される。
最初に、イオン注入及び熱拡散等によって、シリコンウエハの上面に、ボディ領域24、エミッタ領域22、及び、アノード層42を形成する。
次に、CVD法等によって、シリコンウエハ上にトレンチ30に対応するパターンのマスクを形成する。そして、シリコンウエハの上面をRIE法によりエッチングして、IGBT20側のトレンチ30を形成する。トレンチ30を形成したら、トレンチ30の内面に熱酸化膜を形成し、その熱酸化膜をウェットエッチングにより除去することで、トレンチ30の内面を表面処理する。このウェットエッチングの際に、マスクも除去する。
次に、トレンチ30の内面に熱酸化膜を成長させて、絶縁膜32を形成する。そして、CVD法によりトレンチ30内にポリシリコンを充填する。その後、ポリシリコンをエッチバックしてトレンチ30内にのみポリシリコンを残存させることによって、ゲート電極34を形成する。ゲート電極34の形成後に、熱酸化膜によりゲート電極34上にキャップ絶縁膜36を形成する。
次に、CVD法等によって、シリコンウエハ上にトレンチ50に対応するパターンのマスクを形成する。そして、シリコンウエハの上面をRIE法によりエッチングして、ダイオード40側のトレンチ50を形成する。トレンチ50を形成したら、トレンチ50の内面に薄い熱酸化膜を形成する。
次に、シリコンウエハの上面に向けて、リンイオンを注入する。トレンチ50の底面は薄い酸化膜に覆われているが、リンイオンはその酸化膜を貫通して半導体層中に注入される。一方、イオンの注入方向とトレンチ50の側面は略平行であり、トレンチ50の側面は熱酸化膜に覆われているため、トレンチ50の側面ではリンイオンは全て熱酸化膜中で停止する。また、シリコンウエハの上面のうち、トレンチ50以外の領域はマスクに覆われているため、この領域ではリンイオンはマスク中で停止する。したがって、リンイオンは、トレンチ50の底面近傍でのみ半導体層中に注入される。リンイオンを注入したら、熱処理により注入したリンイオンを熱拡散させる。これによって、トレンチ50の下端近傍にのみ高濃度領域47が形成される。この熱処理の際に、トレンチ50の内面に熱酸化膜を成長させて、絶縁膜52を形成する。その後、シリコンウエハの上面のマスクをウェットエッチングにより除去する。
次に、CVD法によりトレンチ50内にポリシリコンを充填する。その後、ポリシリコンをエッチバックしてトレンチ50内にのみポリシリコンを残存させることによって、トレンチ電極54を形成する。トレンチ電極54の形成後に、熱酸化膜によりトレンチ電極54上にキャップ絶縁膜56を形成する。
その後、従来公知の方法によって、バッファ層26b、コレクタ層28、カソードコンタクト層48、上部電極64、及び、下部電極60を形成することで、図1の半導体装置10が完成する。
以上に説明したように、IGBT20のドリフト層26内に高濃度領域47が形成されておらず、ダイオード40のカソードドリフト層46内にのみ高濃度領域47が形成されている構造は、容易に形成することができる。このようにして、ダイオード40の逆回復損失が低く、IGBT20のオン電圧が低い半導体装置10が製造される。
図5は、第2実施例の半導体装置110を示している。半導体装置110では、IGBT20のゲート電極34の下端近傍(すなわち、ドリフト層26内)にも高濃度領域47が形成されている。その他の構造は、第1実施例の半導体装置10と等しい。
この半導体装置110では、トレンチ電極54への印加電位の制御は、第1実施例の半導体装置10と同様に行われる。したがって、ダイオード40の逆回復損失が低減されている。
また、IGBT20のオン時においては、ゲート電極34にオン電位(上部電極64の電位より高い電位)が印加される。ゲート電極34へのオン電位の印加によって、ボディ領域24にチャネルが形成される。これによって、電子が、エミッタ領域22から、チャネルとドリフト層26を介して、コレクタ層28へ流れる。また、ホールが、コレクタ層28から、ドリフト層26内に流入する。これによって、ドリフト層26内で伝導度変調現象が起こり、IGBT20内を低損失で電流が流れる。このとき、ゲート電極34にオン電位が印加されていることによってドリフト層26内に電界が発生する。この電界によって、ドリフト層26内のホールがゲート電極34の近傍に向かって流れることが防止される。すなわち、ホールがドリフト層26内の高濃度領域47に流入して再結合することが防止される。したがって、半導体装置110においても、IGBT20のオン時に、ドリフト層26内のホールが再結合により消滅することが防止される。半導体装置110においても、IGBT20のオン電圧は低減されている。
このように、高濃度領域47がゲート電極34の下端近傍に形成されていても、IGBT20のオン電圧は低減される。また、このようにゲート電極34の下端近傍にも高濃度領域47を形成すると、ゲート電極34とトレンチ電極54を同一工程で製造することが可能となり、半導体装置110の製造がより容易となる。
図6は、第3実施例の半導体装置210を示している。半導体装置210では、IGBT20とダイオード40が交互に形成されている。そして、IGBT20のゲート電極34とダイオード40のトレンチ電極54が共有化されている。全てのゲート電極34の下端近傍には、高濃度領域47が形成されている。
この半導体装置210では、IGBT20のオフ時においては、ゲート電極34への印加電位の制御は、第1実施例のトレンチ電極54と同様に行われる。したがって、ダイオード40の逆回復損失が低減されている。
また、IGBT20のオン時においては、ゲート電極34にオン電位が印加される。したがって、第2実施例と同様にして、ドリフト層26内のホールが再結合により消滅することが防止される。半導体装置210においても、IGBT20のオン電圧は低減される。
図7は、第4実施例の半導体装置310を示している。半導体装置310では、上面側の構造が全てIGBTの構造となっている。その他の構造は、第3実施例の半導体装置210と同様である。この半導体装置310では、IGBT20のボディ領域24とダイオード40のアノード層42が共有化されている。また、IGBT20の低濃度ドリフト層26aとダイオード40のカソードドリフト層46が共有化されている。
この半導体装置310では、IGBT20のオフ時においては、ゲート電極34への印加電位の制御は、第1実施例のトレンチ電極54と同様に行われる。したがって、ダイオード40の逆回復損失が低減されている。
また、IGBT20のオン時においては、ゲート電極34にオン電位が印加される。したがって、第2実施例と同様にして、ドリフト層26内のホールが再結合により消滅することが防止される。半導体装置310においても、IGBT20のオン電圧は低減される。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
10:半導体装置
12:半導体基板
12a:上面
12b:下面
20:IGBT
22:エミッタ領域
24:ボディ領域
24a:ボディコンタクト領域
24b:低濃度ボディ領域
26:ドリフト層
26a:低濃度ドリフト層
26b:バッファ層
28:コレクタ層
30:トレンチ
32:絶縁膜
34:ゲート電極
36:キャップ絶縁膜
40:ダイオード
42:アノード層
42a:アノードコンタクト領域
42b:低濃度アノード層
44:カソード層
46:カソードドリフト層
47:高濃度領域
48:カソードコンタクト層
50:トレンチ
52:絶縁膜
54:トレンチ電極
56:キャップ絶縁膜
60:下部電極
64:上部電極
70:インバータ回路
71:第1相ライン
72:第2相ライン
73:第3相ライン
74:電源ライン
75:グランドライン
80:モータ
82:電位制御装置
110:半導体装置
210:半導体装置
310:半導体装置

Claims (7)

  1. 上面に上部電極が形成されており、下面に下部電極が形成されており、縦型のIGBTと縦型のダイオードが形成されている半導体基板を備える半導体装置であって、
    IGBTは、
    前記上部電極と導通しているn型のエミッタ領域と、
    前記上部電極と導通しており、エミッタ領域に隣接しているp型のボディ領域と、
    ボディ領域に隣接しており、ボディ領域によってエミッタ領域から分離されているn型のドリフト領域と、
    ドリフト領域に隣接しており、ドリフト領域によってボディ領域から分離されており、前記下部電極と導通しているp型のコレクタ領域と、
    エミッタ領域とドリフト領域を分離している範囲のボディ領域に絶縁膜を介して対向しているゲート電極、
    を有しており、
    ダイオードは、
    前記上部電極と導通しているp型のアノード領域と、
    アノード領域と隣接しており、前記下部電極と導通しており、IGBTのドリフト領域と連続しているn型のカソード領域と、
    カソード領域に絶縁膜を介して対向している制御電極、
    を有しており、
    カソード領域の絶縁膜に接する範囲内に、その周囲のカソード領域よりもn型不純物濃度が高い高濃度領域が形成されていることを特徴とする半導体装置。
  2. 請求項1に記載の半導体装置と、
    ダイオードに印加される電圧が順電圧から逆電圧に切り換えられるときに、ダイオードの順電流の低下が開始してからダイオードの逆電流が減衰するまでの期間のうちの少なくとも一部の期間において、ダイオードの制御電極に前記上部電極の電位より低い電位を印加する電位制御装置を備えていることを特徴とするスイッチング装置。
  3. ダイオードの順電流の低下が開始してからダイオードの逆電流が減衰するまでの上記期間を除く期間においてダイオードに順電流が流れているときに、電位制御装置が、ダイオードの制御電極に前記上部電極の電位以上の電位を印加することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング装置。
  4. IGBTの通電時に、電位制御装置が、ダイオードの制御電極に前記上部電極の電位以上の電位を印加することを特徴とする請求項2または3に記載のスイッチング装置。
  5. 請求項1に記載の半導体装置の制御方法であって、
    ダイオードに印加される電圧が順電圧から逆電圧に切り換えられるときに、ダイオードの順電流の低下が開始してからダイオードの逆電流が減衰するまでの期間のうちの少なくとも一部の期間において、ダイオードの制御電極に前記上部電極の電位より低い電位を印加することを特徴とする制御方法。
  6. ダイオードの順電流の低下が開始してからダイオードの逆電流が減衰するまでの上記期間を除く期間においてダイオードに順電流が流れているときに、ダイオードの制御電極に前記上部電極の電位以上の電位を印加することを特徴とする請求項5に記載の制御方法。
  7. IGBTの通電時に、ダイオードの制御電極に前記上部電極の電位以上の電位を印加することを特徴とする請求項5または6に記載の制御方法。
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