以下、本発明の一実施形態について、図1〜5に基づいて説明すれば、以下の通りである。本実施形態では、本発明に係る蛍光トナーの製造方法を用いて、透明蛍光トナーを製造することができる。
図1は、本発明に係るトナーの製造方法の手順の一例を示す工程図である。図1に示すように、トナーの製造方法の手順では、大きくは、トナー母粒子作製工程S1と、樹脂微粒子調製工程S2と、蛍光染料含有溶液調製工程S3と、蛍光トナー粒子調製工程S4と、外添工程S5を含む。
また、図5は、本発明に係るトナーの製造方法により製造される本発明の蛍光トナーの模式図である。図5に示すように、蛍光トナー10は、トナー母粒子11の表面に樹脂と蛍光染料13とを含む蛍光染料含有樹脂膜(被覆層)12を有し、前記蛍光染料13は蛍光染料含樹脂膜12中に凝集することなく均一に分散されている。
以下、各工程について説明する。
(1)トナー母粒子作製工程S1
トナー母粒子作製工程S1では、図5に示す蛍光トナー10の核と成るトナー母粒子11を作製する。トナー母粒子11は、結着樹脂を含む粒子であり、必要に応じて、さらに、着色剤や離型剤あるいは帯電制御剤などの添加剤(図示省略)を含有してもよい。トナー母粒子11の作製方法としては、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。例えば、粉砕法等の乾式法、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法および溶融乳化法等の湿式法を挙げることができる。以下、粉砕法によってトナー母粒子11を作製する方法について説明する。
粉砕法によるトナー母粒子11の作製では、結着樹脂および必要に応じて前記添加剤を加えたトナー母粒子11の組成物を、混合機で乾式混合した後、混練機により溶融混練する。溶融混練によって得られる混練物を冷却固化し、固化物を粉砕機により粉砕する。その後、必要に応じて分級等の粒度調整を行うことによって、トナー母粒子11を得ることができる。
混合機としては、公知のものを使用することができ、例えば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)等を挙げることができる。
混練機としては、公知のものを使用することができ、例えば、二軸押出し機、三本ロール、ラボブラストミル等の一般的な混練機を挙げることができる。さらに具体的には、例えば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)等の一軸または二軸のエクストルーダ、またはニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)等のオープンロール方式の混練機を挙げることができる。これらの中でも、オープンロール方式の混練機が特に好ましい。
粉砕機としては、公知のものを使用することができ、例えば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、または高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に固化物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機等を挙げることができる。
分級には、遠心力および風力による分級によって、過粉砕されたトナー母粒子を除去する公知の分級機を使用することができ、例えば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)等を挙げることができる。
(結着樹脂)
結着樹脂としては、特に限定はなく、カラートナー用の他、黒トナー用の公知の結着樹脂を使用することができ、例えば、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、ロジン変成マレイン酸樹脂、フェニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等を挙げることができる。
また、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応により得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は、1種を単独で使用することができ、また、2種以上を併用してもよい。
特に、非晶性ポリエステル樹脂および結晶性ポリエステル樹脂、ならびにそれらの混合樹脂は、透明性に優れ、トナーに良好な粉体流動性、低温定着性および二次色再現性等を付与することができるので、透明蛍光トナー用の結着樹脂に好適である。
ポリエステル樹脂としては、公知のものを使用することができ、例えば、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物等を挙げることができる。多塩基酸類とは、多塩基酸、および多塩基酸の誘導体、例えば、多塩基酸の酸無水物またはエステル化物等であり、多価アルコール類とは、ヒドロキシル基を2個以上含有する化合物であり、アルコール類およびフェノール類のいずれをも含む。
多塩基酸としては、ポリエステル樹脂用モノマーとして公知であるものを使用することができ、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリト酸、ピロメリト酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物等を挙げることができる。多塩基酸は、1種を単独で使用することができ、また、2種以上を併用してもよい。
多価アルコールとしては、ポリエステル樹脂用モノマーとして公知であるものを使用することができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の芳香族系ジオール類等を挙げることができる。多価アルコールは、1種を単独で使用することができ、また、2種以上を併用してもよい。
また、得られる結着樹脂の各物性は、以下の通りになるよう、各種樹脂の物性を選択することが好ましい。
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるが、得られるトナーの定着性および保存安定性などを考慮すると、30℃以上、80℃以下であることが好ましい。30℃未満であると、保存安定性が不十分になるので、画像形成装置内部でトナーの熱凝集が起こりやすくなり、現像不良が発生することがある。また、ガラス転移温度が80℃を超えると、定着性が低下するため定着不良が発生することがある。
結着樹脂の分子量は、通常、低温定着性、耐ホットオフセット性、定着強度を考慮して設計されるが、重量平均分子量(Mw)が5,000以上、500,000以下であることが好ましい。ここで結着樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(Gel Permeation chromatography;略称GPC)で同時に分析したポリスチレンを基準に換算した値である。
重量平均分子量が5,000未満であると、結着樹脂の機械的強度が低下し、得られるトナー粒子が現像装置内部での撹拌などによって粉砕されやすくなり、帯電性能にばらつきが生じやすくなる他、ホットオフセットが発生しやすくなる。「ホットオフセット現象」とは、加熱ローラ等の定着部材で加熱および加圧しトナーを記録シートに定着させる際、トナーの過熱によりトナー粒子同士の凝集力がトナーと定着部材との接着力を下回ってトナー層が分断されるために、トナーの一部が定着部材に付着し取り去られる現象のことである。また、重量平均分子量が500,000を超えると溶融されにくくなるため、混練工程における混練が困難になり、混練物中の着色剤、離型剤および帯電制御剤等の分散性が損なわれる他、トナーの低温定着性が低下し、定着不良が発生しやすくなる。
(着色剤)
着色剤は、透明トナー以外のカラートナーや黒トナーを製造する際に添加してもよい。着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などが使用できる。
黄色の着色剤としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等を挙げることができる。
マゼンタ色の着色剤としては、例えば、カラーインデックス名C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、およびC.I.ディスパーズレッド15等を挙げることができる。
シアン色の着色剤としては、例えば、カラーインデックス名C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー25、およびC.I.ダイレクトブルー86等を挙げることができる。
黒色の着色剤としては、例えば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、およびアセチレンブラック等のカーボンブラックを挙げることができる。
白色の着色剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の化合物を挙げることができる。着色剤は、1種を単独で使用することができ、また、2種以上の異なる色のものを併用してもよい。さらに、2種以上の同色のものを併用でしてもよい。
また、着色剤の含有量は特に制限されないが、好ましくは結着樹脂の100重量部に対して4重量部以上20重量部以下である。これにより、着色剤の添加による不都合なフィラー効果を抑え、かつ、着色力の高いトナーを得ることができる。着色剤の配合量が20重量部を超えると、着色剤のフィラー効果によって、トナーの定着性が低下することがある。また、4重量部未満であると十分な着色が得られないことがある。
着色剤は、結着樹脂中に均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。着色剤のマスターバッチは、例えば、樹脂の溶融物と着色剤とを混練することによって製造できる。樹脂としては、結着樹脂と同種の樹脂、または結着樹脂に対して良好な相溶性を有する樹脂が使用される。マスターバッチにおける樹脂と着色剤との使用割合は特に制限されないが、好ましくは合成樹脂100重量部に対して30重量部以上、100重量部以下である。マスターバッチは、例えば、粒径2mm以上、3mm以下程度に造粒されて用いられる。
また、2種以上の着色剤を複合粒子化して用いてもよい。複合粒子は、例えば、2種以上の着色剤に適量の水、極性溶媒等を添加し、ハイスピードミル等の一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造することができる。マスターバッチおよび複合粒子は、乾式混合の際にトナー組成物に混入される。
(離型剤)
離型剤は、トナーを記録シートに定着させる際に、トナーに離型性を付与する目的で、必要に応じて添加される。離型剤の添加により、高温オフセット開始温度を上昇させるので、ホットオフセット現象が発生しにくくなることがある。また、トナー定着の際の加熱によって離型剤を溶融させ、トナーの溶融温度を低下させることができるので、低温オフセット開始温度を低下させ、定着温度を低下させることができる。「低温オフセット現象」とは、加熱ローラ等の定着部材で加熱および加圧しトナーを記録シートに定着させる際、トナーが充分に溶融されず、トナーと記録シートとの接着力がトナーと定着部材との接着力を下回るために、トナーの一部が定着部材に付着し取り去られる現象のことである。
離型剤としては、この分野で常用されるものを使用することができ、例えば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体等の石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)およびその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックス等)およびその誘導体等の炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋等の植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋等の動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステル等の油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸等を挙げることができる。誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物等が含まれる。
離型剤の使用量は、特に限定されず、広い範囲から適宜選択できるが、好ましくは結着樹脂の100重量部に対して0.2重量部以上、20重量部以下であり、さらに好ましくは0.5重量部以上、10重量部以下であり、特に好ましくは1.0重量部以上、8.0重量部である。離型剤が20重量部よりも多く含まれると、感光体上へのフィルミング、キャリアへのスペントが起こりやすくなることがある。また、0.2重量部未満であると、離型剤の機能を十分発揮できないことがある。
離型剤の融点は、特に制限されないが、30℃以上、120℃以下が好ましい。融点が120℃を超えると定着性(離型性)が改善されず、30℃未満だとトナーの保存性などを損なうことがある。
(帯電制御剤)
帯電制御剤は、トナーに好ましい帯電性を付与する目的で、必要に応じて添加される。帯電制御剤としては、特に限定されず、この分野で常用される正帯電制御用および負帯電制御用の帯電制御剤を使用することができる。
正帯電制御用の帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩等を挙げることができる。
負帯電制御用の帯電制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラック等の油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウム等)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸等を挙げることができる。
帯電制御剤は、1種を単独で使用することができ、また、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
帯電制御剤の使用量は、特に限定されず、広い範囲から適宜選択することができるが、好ましくは結着樹脂の100重量部に対して0.5重量部以上、5重量部以下であり、より好ましくは結着樹脂の100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下である。帯電制御剤が5重量部を超えると、キャリアが汚染されてしまい、トナー飛散が発生することがある。また、帯電制御剤の含有量が0.5重量部未満であると、トナーに十分な帯電性を付与することができないことがある。
トナー母粒子作製工程S1において得られるトナー母粒子11は、体積平均粒径が4μm以上、8μm以下であることが好ましい。体積平均粒径が4μm以上、8μm以下であると、長期にわたり高精細な画像を安定して形成することができる。また、トナー母粒子11をこの範囲内に小粒径化することにより、付着量が少なくても高い画像濃度を得ることができ、トナー消費量を削減することができる効果も生じる。トナー母粒子11の体積平均粒径が4μm未満であると、粒径が小さいため、高帯電化および低流動化することがある。さらに、トナーが高帯電化、低流動化すると、感光体にトナーを安定して供給できなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下等が発生することがある。また、トナー母粒子11の体積平均粒径が8μmを超えると、粒径が大きいため形成画像の層厚が大きくなり、高精細な画像を得られないことがある。
(2)樹脂微粒子調製工程S2
樹脂微粒子調製工程S2では、トナー母粒子11の表面に融着して図5に示す蛍光染料含樹脂膜12となる乾燥した樹脂微粒子を調製する。樹脂微粒子は、後述する蛍光トナー粒子調製工程S4において、トナー母粒子11の表面に蛍光染料含有樹脂膜12を形成する材料として用いられる。なお、乾燥にはどのような方法を用いてもよく、例えば、熱風受熱式乾燥、伝導伝熱式乾燥、遠赤外線乾燥、マイクロ波乾燥等の方法で乾燥樹脂微粒子を得ることができる。
樹脂微粒子の原料としては、一般的にトナー材料に用いられる樹脂を用いることができ、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体等を挙げることができる。これらの樹脂微粒子の原料の中でも、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体を含むことが特に好ましい。アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体は、軽量で高い強度を有し、さらに、透明性も高く、安価で、粒径の揃った材料を得やすい等、多くの利点を有する。
樹脂微粒子は、例えば、樹脂微粒子原料である樹脂をホモジナイザー等で乳化分散させ細粒化することにより得ることができる。また、樹脂のモノマー成分の重合によっても得ることができる。樹脂微粒子の重合製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、懸濁重合法、乳化重合法などを使用することができ、ソープフリー乳化重合法が好ましい。ソープフリー乳化重合法によれば、粒度分布の幅が狭い粒子が得られる。
ビニル系としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類等を挙げることができる。これらの中でも、スチレン類が好ましく、特にスチレンが好ましい。ビニル系単量体は1種を単独で使用でき、また、2種以上を併用してもよい。
樹脂微粒子原料として異なる種類の樹脂を用いる場合、樹脂微粒子原料の樹脂のガラス転移温度が、トナー母粒子11に含まれる結着樹脂のガラス転移温度よりも高くかつ、50℃以上、70℃以下であることが好ましい。これにより、トナーの保存時における相互融着が防止されるため、保存安定性を向上させることができる。
なお、樹脂微粒子の軟化温度は、トナーが使用される画像形成装置にもよるが、80℃以上、140℃以下であることが好ましい。このような温度範囲の樹脂微粒子を用いることによって、良好な保存安定性と定着性とを兼ね備えたトナーを得ることができる。
また、樹脂微粒子の使用量は特に制限されないが、トナー母粒子表面が1層の樹脂微粒子で被覆される量が好ましい。最適な添加量については、トナー母粒子と樹脂微粒子の粒径や形状によって変化するため、実験により最適量が選択される。通常、樹脂微粒子の添加量は、トナー母粒子100重量部に対して3〜10重量部となる。
樹脂微粒子は、個数平均粒径が0.2μm以上、0.5μm以下であることが好ましい。個数平均粒径が0.2μm以上、0.5μm以下であると、トナー母粒子表面に均質な膜を形成しやすくなる。
(3)蛍光染料含有溶液調製工程S3
蛍光染料含有溶液調製工程S3では、図5に示す蛍光染料13が溶解した蛍光染料含有溶液を調製する。
(蛍光染料)
蛍光染料13は、色彩等に影響を与えないように、可視光下では無色ないし白色であることが好ましい。また、蛍光染料13は、蛍光染料含有溶液の溶媒に溶解させた状態で使用するので、使用する溶媒に可溶であることが必要であり、少なくとも溶媒1kgに対して10g以上溶解する蛍光染料が好ましい。
蛍光染料として、具体的には、クマリン、4,4’−ビス(4−フェニル−1,2,3−トリアゾール−2−イル)スチルベン−2’,2’−ジスルホン酸ナトリウム、3−フェニル−7−(4−メチル−5−フェニル−1,2,3−トリアゾール−2−イル)クマリン、3−フェニル−7−(2H−ナフト〔1,2−d〕−トリアゾール−2−イル)クマリン、1−(4−アシドスルホニルフェニル)−3−(4−クロロフェニル)−2−ピラゾリン等のクマリン誘導体、ナフタールイミド誘導体、スチルベン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンジジン誘導体等が挙げられるが、これらの中ではクマリンおよびクマリン誘導体が好ましい。
蛍光染料含有溶液の濃度としては、溶媒1kgに対して蛍光染料が10g〜50gの溶解している程度の濃度が好ましく、蛍光染料含有溶液の噴霧量としては、蛍光トナー中の蛍光染料の含有量として、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜5重量部になるように調整されるのが好ましい。蛍光染料の含有量が0.5重量部より少ない場合、トナーに蛍光効果を付与することができないことがある。他方、蛍光染料の含有量が5重量部より多い場合、トナーに蛍光むら等を引き起こすことがある。
(溶媒)
蛍光染料含有溶液の溶媒(本発明においては、単に溶媒とも称する)としては、蛍光染料13を溶解し、かつ、樹脂微粒子の融着を促進する溶媒であって、樹脂微粒子およびトナー母粒子11を溶解せず可塑化させる作用のあるものであれば、特に限定されない。
なお、溶媒は、後述する蛍光トナー粒子調製工程S4の蛍光染料含有溶液噴霧工程S4cにおける蛍光染料含有溶液の噴霧後に、除去される必要があるため、蒸発し易い(沸点が30℃以上、100℃以下)ものであることが好ましい。
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等を挙げることができ、エタノールが好ましい。これにより、樹脂微粒子のトナー母粒子11に対する濡れ性を高めることができ、トナー母粒子11の表面全体または大部分に、樹脂微粒子と蛍光染料13とを付着させ、さらに、変形および膜化させることが容易になる。また、極性のある溶媒は、蒸気圧が大きいので、溶媒を除去する際の乾燥時間をより短縮でき、トナー母粒子11同士の凝集を抑制することができる。
溶媒の粘度は、5cP以下であることが好ましい。粘度は、25℃において測定し、例えば、コーンプレート型回転式粘度計により測定することができる。粘度が5cP以下の溶液で特に好ましいものとして、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトニトリル等を挙げることができる。これらの溶媒は、粘度が小さく、また、蒸発しやすいので、後述する噴霧手段203から噴霧される蛍光染料含有溶液の噴霧液滴径が粗大化することなく、微細で均一に噴霧することができる。これにより、後述する膜化工程S4dにおいて、トナー母粒子11および樹脂微粒子の表面を均一に濡らし、馴染ませることができる。
(4)蛍光トナー粒子調製工程S4
蛍光トナー粒子調製工程S4では、トナーの製造装置を使用して、トナー母粒子作製工程S1で作製したトナー母粒子11の表面に、樹脂微粒子調製工程S2および蛍光染料含有溶液調製工程S3において調整した樹脂微粒子および蛍光染料含有溶液を用いて蛍光染料含有樹脂膜12を形成する。図1に示すように、蛍光トナー粒子調製工程S4は、温度調整工程S4aと、樹脂微粒子付着工程S4bと、蛍光染料含有溶液噴霧工程S4cと、膜化工程S4dと、回収工程S4eと、乾燥工程S4fとを含む。
本発明では、蛍光染料含有溶液噴霧工程S4cにおいて、トナー母粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合粒子を気流中で循環させながら、蛍光染料と溶媒とを含む蛍光染料含有溶液を複合粒子に向かって噴霧することにより、トナー母粒子表面に樹脂微粒子と蛍光染料含有溶液とが付着した湿潤複合粒子を形成させる。
また、膜化工程S4dにおいて、湿潤複合粒子を気流中で循環させることによって溶媒を除去し、トナー母粒子表面に樹脂微粒子と蛍光染料とを膜化させる。
さらに、トナー母粒子表面に樹脂微粒子と蛍光染料を膜化する際に、湿潤複合粒子の凝集を抑えることができ、蛍光トナーの生産効率を向上させることができるため、蛍光染料含有溶液噴霧工程と膜化工程とが、複合粒子または湿潤複合粒子を気流中で循環させる循環手段と、気流中で循環する複合粒子または湿潤複合粒子に対して蛍光染料を含む蛍光染料含有溶液を噴霧する噴霧手段と、気流中で循環する複合粒子または湿潤複合粒子に衝撃力を加える回転攪拌手段とを備えたトナー製造装置を用いて、繰り返し連続的に実施されることが好ましい。まず、蛍光トナー粒子調製工程S4で使用するトナーの製造装置について説明する。
(トナーの製造装置)
図2および図3
図2は、本発明の樹脂層被覆トナーの製造方法で用いるトナーの製造装置201の構成を示す概略断面図である。図3は、図2に示すトナーの製造装置201を切断面線A200―A200からみた概略断面図である。被覆工程S4では、たとえばトナーの製造装置201を用い、トナー母粒子作製工程S1で作製したトナー母粒子に樹脂微粒子調製工程S2で調製した微粒子混合物を付着させ、前記装置内での循環と撹拌の相乗効果による衝撃力でトナー母粒子に樹脂膜を形成させる。
トナーの製造装置201は回転撹拌装置であり、粉体流路202と、噴霧手段203と、回転撹拌手段204と、図示しない温度調整用ジャケットと、粉体投入部206と、粉体回収部207とを含んで構成される。回転撹拌手段204と、粉体流路202とは循環手段を構成する。
(粉体流路(循環手段))
本発明では、粉体流路において、トナー母粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合粒子、またはトナー母粒子表面に樹脂微粒子と蛍光染料含有溶液とが付着した湿潤複合粒子を気流中で循環させることが好ましい。
粉体流路202は、撹拌部208と、粉体流過部209とから構成される。撹拌部208は、内部空間を有する円筒形状の容器状部材である。回転撹拌室である撹拌部208には、開口部210、211が形成される。開口部210は、撹拌部208の軸線方向一方側の面208aにおける略中央部において、撹拌部208の面208aを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。また、開口部211は、撹拌部208の前記軸線方向一方側の面208aに垂直な側面208bにおいて、撹拌部208の側面208bを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。循環管である粉体流過部209は、一端が開口部210と接続され、他端が開口部211と接続される。これによって撹拌部208の内部空間と粉体流過部209の内部空間とが連通され、粉体流路202が形成される。この粉体流路202を、トナー母粒子、樹脂微粒子および気体等が流過する。粉体流路202は、トナー母粒子および樹脂微粒子の流動する粉体流動方向が一定となるように設けられる。
粉体流路202内の温度は、トナー母粒子のガラス転移温度以下に設定されることが好ましく、より好ましくは30℃以上であり、トナー母粒子の流動により、どの部分においてもほぼ均一となる。流路内の温度がトナー母粒子のガラス転移温度を超えると、トナー母粒子が軟化し過ぎ、トナー母粒子が凝集するおそれがある。また温度が30℃未満であると、分散液の乾燥速度が遅くなり生産性が低下する。したがって、トナー母粒子の凝集を防止するため、粉体流路202および後述の回転撹拌手段204の温度をトナー母粒子のガラス転移温度以下に維持する必要があり、そのため、内径が粉体流路管の外径よりも大きい、後述の温度調整用ジャケットを、粉体流路202および回転撹拌手段204の外側の少なくとも一部に配設する。
(回転撹拌手段)
本発明では、回転撹拌手段によって、気流中で循環する複合粒子または湿潤複合粒子に衝撃力を加えることが好ましい。
回転撹拌手段204は、回転軸部材218と、回転盤219と、複数の撹拌羽根220とを含む。回転軸部材218は、撹拌部208の軸線に一致する軸線を有しかつ撹拌部208の軸線方向他方側の面208cに、面208cを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される貫通孔221に挿通されるように設けられ、図示しないモータによって軸線回りに回転する円柱棒状部材である。回転盤219は、その軸線が回転軸部材218の軸線に一致するように回転軸部材218に支持され、回転軸部材218の回転に伴って回転する円盤状部材である。複数の撹拌羽根220は、回転盤219の周縁部分に設置され、回転盤219の回転に伴って回転する。
被覆工程S4において、回転撹拌手段204の最外周の周速度は、30m/sec以上に設定するのが好ましく、50m/sec以上に設定するのがさらに好ましい。回転撹拌手段204の最外周とは、回転撹拌手段204の回転軸部材218が延びる方向に垂直な方向において、回転軸部材218の軸線との距離がもっとも長い回転撹拌手段204の部分204aである。回転撹拌手段204の最外周における周速を30m/sec以上に設定することにより、トナー母粒子を孤立流動させることができる。最外周における周速度が30m/sec未満であると、トナー母粒子および樹脂微粒子を孤立流動させることができないため、トナー母粒子を樹脂膜で均一に被覆できなくなる。
トナー母粒子および樹脂微粒子は、回転盤219に対して垂直に衝突することが好ましい。これにより、トナー母粒子および樹脂微粒子が充分に撹拌され、トナー母粒子が樹脂微粒子でより均一に被覆されるので、被覆層が均一なトナーの収率を向上させることができる。
(噴霧手段)
本発明では、噴霧手段によって、気流中で循環する複合粒子または湿潤複合粒子に対して蛍光染料を含む蛍光染料含有溶液を噴霧することが好ましい。
噴霧手段203は、粉体流路202の外壁に形成される開口に挿通されて設けられ、粉体流過部209において、トナー母粒子および樹脂微粒子の流動方向における開口部211に最も近い側の粉体流過部に設けられる。噴霧手段203は、液体(蛍光染料を含む蛍光染料含有溶液)を貯留する液体貯留部と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給部と、液体とキャリアガスとを混合し得られる混合物を粉体流路202内に存在するトナー母粒子に向けて噴射し、液体の液滴をトナー母粒子に噴霧する二流体ノズルとを備える。二流体ノズルは、粉体流路202の外壁に形成される開口に挿通されて設けられる。液体は送液ポンプによって一定流量で噴霧手段203に送液され、噴霧手段203によって噴霧されガス化し、ガス化した液体がトナー母粒子および樹脂微粒子表面に展延する。これによってトナー母粒子および樹脂微粒子が可塑化する。また、蛍光染料含有溶液が連続にまたは不連続に噴霧される場合、噴霧手段中へ蛍光染料含有溶液を一度に投入する場合と比べて、湿潤複合粒子の凝集をより抑えることができ、蛍光トナーの生産効率をさらに向上させることができる。
(温度調整用ジャケット)
温度調整手段である図示しない温度調整用ジャケットは、粉体流路202の外側の少なくとも一部に設けられ、ジャケット内部の空間に冷却媒または加温媒を通して粉体流路202内と回転撹拌手段204を所定の温度に調整する。これにより、後述の温度調整工程S4aにおいて、粉体流路内および回転撹拌手段の外側の温度をトナー母粒子および樹脂微粒子が軟化変形しない温度以下に制御することができる。また蛍光染料含有溶液噴霧工程S4cおよび膜化工程S4dにおいて、トナー母粒子、樹脂微粒子および液体にかかる温度のばらつきを少なくし、トナー母粒子および樹脂微粒子の安定な流動状態を保つことが可能となる。
通常トナー母粒子および樹脂微粒子は、粉体流路内の内壁に何度も衝突するが、その際衝突エネルギーの一部が熱エネルギーに変換され、トナー母粒子および樹脂微粒子に蓄積される。衝突回数の増加とともに、それらの粒子に蓄積される熱エネルギーが増加し、やがてトナー母粒子および樹脂微粒子は軟化して粉体流路の内壁に付着する。温度調整用ジャケットを粉体流路202の外側全体に設けることにより、装置内の温度が急上昇することを防ぎ、トナー母粒子および樹脂微粒子の軟化を抑制し、粉体流路202内壁へのトナー母粒子および樹脂微粒子の付着を確実に防ぎ、粉体流路内が狭くなることを回避できる。その結果、トナー母粒子が樹脂微粒子で均一に被覆され、クリーニング性に優れるトナーを高い収率で製造できる。
また、噴霧手段203より下流の粉体流過部209内部では、噴霧された液体が乾燥せず残存しており、温度が適正でないと乾燥速度が遅くなるため液体が滞留しやすい。これにトナー母粒子が接触すると、粉体流路202内壁にトナー母粒子が付着しやすくなり、トナーの凝集が発生する原因となる。開口部210付近の内壁では、粉体流過部209から撹拌部208に流入するトナー母粒子と、回転撹拌手段204により撹拌部208内を流動するトナー母粒子とが衝突し、トナー母粒子が開口部210付近に付着しやすい。このようなトナー母粒子が付着しやすい部分に温度調整用ジャケットを設けることにより、粉体流路202内壁へのトナー母粒子の付着をより確実に防ぐことができる。
(粉体投入部および粉体回収部)
図4
粉体流路202の粉体流過部209には、粉体投入部206と、粉体回収部207とが接続される。図4は、粉体投入部206および粉体回収部207まわりの構成を示す正面図である。
粉体投入部206は、トナー母粒子および樹脂微粒子を供給する図示しないホッパと、ホッパと粉体流路202とを連通する供給管212と、供給管212に設けられる電磁弁213とを備える。ホッパから供給されるトナー母粒子および樹脂微粒子は、電磁弁213により供給管212内の流路が開放されている状態において、供給管212を介して粉体流路202に供給される。粉体流路202に供給されるトナー母粒子および樹脂微粒子は、回転撹拌手段204により、一定の方向に流動する。また電磁弁213により供給管212内の流路が閉鎖されている状態においては、トナー母粒子および樹脂微粒子は粉体流路202に供給されない。
粉体回収部207は、回収タンク215と、回収タンク215と粉体流路202とを連通する回収管216と、回収管216に設けられる電磁弁217とを備える。電磁弁217により回収管216内の流路が開放されている状態において、粉体流路202を流過するトナー粒子は回収管216を介して回収タンク215に回収される。また電磁弁217により回収管216内の流路が閉鎖されている状態においては、粉体流路202を流過するトナー粒子は回収されない。
上述のようなトナーの製造装置201を用いる被覆工程S4は、温度調整工程S4aと、樹脂微粒子付着工程S4bと、蛍光染料含有液液噴霧工程S4cと、膜化工程S4dと、回収工程S4eとを含む。
(4−1)温度調整工程S4a
温度調整工程S4aでは、回転撹拌手段204を回転させながら、粉体流路202内および回転撹拌手段204を、これらの外側に配設した温度調整用ジャケットに媒体を通じて所定の温度に調整する。これにより粉体流路202内の温度を、後述する樹脂微粒子付着工程S4bで投入されるトナー母粒子および樹脂微粒子が軟化変形しない温度以下に制御できる。
本工程では、粉体流路202内の一部だけでなく、粉体流路202内全体および回転撹拌手段204の温度が調整されることが好ましい。これにより、粉体流路の一部の温度だけが調整された場合と比べ、トナー母粒子への樹脂微粒子の付着および膜化が円滑に進む。また、これらの粒子の粉体流路内壁面への付着を抑制できるので、粉体流路内が狭くなることを抑制できる。その結果、トナー母粒子が樹脂微粒子で均一に被覆され、膜状態や粒度分布が均一なトナーを長時間にわたってより安定に製造することができる。
(4−2)樹脂微粒子付着工程S4b
樹脂微粒子付着工程S4bでは、回転撹拌手段が回転している状態で、粉体投入部206からトナー母粒子および樹脂微粒子を粉体流路202に供給する。粉体流路202に供給されたトナー母粒子および樹脂微粒子は、回転撹拌手段204によって撹拌され、粉体流路202の粉体流過部209を矢符214方向に流動する。これにより、樹脂微粒子がトナー母粒子表面に付着する。
(4−3)蛍光染料含有溶液噴霧工程S4c
蛍光染料含有溶液噴霧工程S4cにおいて、トナー母粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合粒子を気流中で循環させながら、蛍光染料と溶媒とを含む蛍光染料含有溶液を複合粒子に向かって噴霧することにより、トナー母粒子表面に樹脂微粒子と蛍光染料含有溶液とが付着した湿潤複合粒子を形成させる。
具体的には、蛍光染料含有溶液噴霧工程S4cでは、流動状態にあるトナー母粒子および樹脂微粒子に、それらの粒子を溶解せずに可塑化し付着を補助する効果のある液体に蛍光染料を溶解したものを、前述の噴霧手段203からキャリアガスによって噴霧する。
噴霧された液体は、粉体流路202内のガス濃度が一定となるようにガス化され、ガス化した液体は貫通孔221を通って粉体流路外へ排出されることが好ましい。ガス化した液体の濃度を一定に保つことにより、濃度が一定に保たれていない場合と比べ液体の乾燥速度を上げることができる。よって未乾燥の液体の残存するトナー粒子が互いに付着することを防ぎ、トナー粒子の凝集を抑制できる。その結果、被覆層が均一なトナーの収率をより向上できる。
ガス排出部222において濃度センサにより測定されるガス化された液体の濃度は、3%以下程度であることが好ましい。濃度が3%以下程度であると、液体の乾燥速度を充分に大きくでき、未乾燥の液体の残存するトナー母粒子が互いに付着することを防ぎ、トナー母粒子の凝集を抑制できる。またガス化された液体の濃度は、0.1%以上3.0%以下であることがさらに好ましい。液体濃度がこのような範囲内であると、生産性を低下させることなく、トナー母粒子の凝集を防止できる。液体の濃度は、トナー母粒子および樹脂微粒子の原料の種類および量によって調整する。また、トナーの製造装置201のスケールにより液体の噴霧速度を変更することによっても調整できる。
本実施形態では、粉体流路202におけるトナー母粒子表面および樹脂微粒子の流動速度が安定してから、噴霧を開始することが好ましい。これにより、トナー母粒子および樹脂微粒子に液体を均一に噴霧でき、被覆層が均一なトナーの収率を向上させることができる。
(キャリアガス)
キャリアガスとしては、圧縮エアなどを用いることができる。キャリアガスの流量は、液体の噴霧速度に合わせて適宜調整する。キャリアガスの好ましい流量は、液体の噴霧速度に依存し、トナーの製造装置201のスケールとトナー母粒子および樹脂微粒子の量とによって異なる。また、キャリアガスが圧縮エアを含む場合、より安全に蛍光トナーを製造することができる。
噴霧手段203の二流体ノズルの軸線方向である液体噴霧方向と、粉体流路202においてトナー母粒子および樹脂微粒子が流動する方向である粉体流動方向との成す角度θは、0°以上45°以下であることが好ましい。θがこのような範囲内であると、液体の液滴が粉体流路202内壁で反跳することが防止され、樹脂膜で被覆されたトナー母粒子の収率を一層向上させることができる。θが45°を超えると、液体の液滴が粉体流路202内壁で反跳し、液体が滞留しやすくなり、トナー粒子の凝集が発生して収率が悪化する。
噴霧手段203により噴霧した液体の拡がり角度φは、20°以上90°以下であることが好ましい。拡がり角度φがこの範囲から外れると、トナー母粒子に対する液体の均一な噴霧が困難となるおそれがある。
本工程において、前述した構造の二流体ノズルを用いることで、循環風、ならびに循環しているトナー母粒子および樹脂微粒子が二流体ノズルに衝突しても、液管および空気管の中心がずれることを防止できる。これにより、空気管先端の断面において、噴霧されるキャリアガスの単位面積当たりの量が一定となり、噴霧される液体の方向および噴霧量を一定に保ち、噴霧状態を安定に維持することができる。したがって、粉体流路内の液体濃度を一定に保ち、膜状態や粒度分布が均一なトナーを長時間にわたり安定に製造することができる。
(4−4)膜化工程S4d
膜化工程S4dにおいて、湿潤複合粒子を気流中で循環させることによって溶媒を除去し、トナー母粒子表面に樹脂微粒子と蛍光染料とを膜化させる。
具体的には、膜化工程S4dでは、樹脂微粒子が軟化し膜化するまで、所定の温度で回転撹拌手段204の回転を続けトナー母粒子および樹脂微粒子を流動させ、トナー母粒子を蛍光染料含有樹脂層で被覆する。
(4−5)回収工程S4e
回収工程S4eでは、噴霧手段からの液体噴霧と回転撹拌手段204の回転を停止し、粉体回収部207から蛍光染料含有樹脂層被覆トナーを装置外に排出し、回収する。
このようなトナーの製造装置201としては、上記の構成に限定されることなく、種々の変更が可能である。たとえば、温度調整用ジャケットは粉体流過部209と撹拌部208との外側の全面に設けられてもよく、粉体流過部209または撹拌部208の外側の一部に設けられてもよい。粉体流過部209と撹拌部208との外側の全面に温度調整用ジャケットを設けた場合、トナー母粒子の粉体流路202内壁への付着をより確実に防ぐことができる。
また、トナーの製造装置は、市販の撹拌装置と噴霧手段とを組合せて構成することもできる。粉体流路および回転撹拌手段を備える市販の撹拌装置としては、たとえば、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)などが挙げられる。このような撹拌装置内に液体噴霧ユニットを取付けることによって、この撹拌装置を本発明のトナーの製造に用いるトナーの製造装置として用いることができる。
(4−6)乾燥工程S4f
乾燥工程では、回収したトナーに温風をあてることによって溶媒を完全に蒸発させる。これにより、図5に示すトナーを得ることができる。
図5に示すように、トナーは、表面に蛍光染料13が均一に微細分散している。このため、透明性が高く発光効率に優れた蛍光トナーを得ることができる。
以上のように、本実施形態に係るトナーの製造方法1によれば、微細化した蛍光染料含有溶液の噴霧と、衝突エネルギーとの相乗効果によって、定着画像の彩度および明度の優れたトナーを製造することができる。
(5)外添工程S5
トナーには粉体流動性などの機能を向上させるために、個数平均粒径が7nm〜50nmの無機微粒子(外添剤)が添加(外添)される。
外添剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、例えば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末等を挙げることができる。これらの無機微粉末は、疎水化、帯電性コントロール等の目的で、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等で処理されていることが好ましく、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
外添剤の添加量としては、一般にトナーの100重量部に対して1〜5重量部添加される。
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。本実施例では、本発明に係るトナーの製造方法によって、実際に蛍光トナーを製造し、比較実験を行った。
<トナー体積平均粒径>
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料(トナー母粒子)20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:卓上型2周波超音波洗浄器VS−D100、アズワン株式会社製)によって超音波周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒径を求め、試料粒子の個数粒度分布から個数平均粒径を求めた。
<キャリアの体積平均粒径>
レーザ回折式粒度分布測定装置HELOS(SYMPATEC社製)に乾式分散装置RODOS(SYMPATEC社製)を用いて、分散圧3.0barの条件下で測定した値をコートキャリアの体積平均粒径とした。
<個数平均粒径/平均一次粒径>
粒子の一次粒径を走査型電子顕微鏡で測定し、その平均値を平均一次粒径とした。
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
<軟化温度>
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)を用い、荷重10kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えて試料1gがダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、フロー軟化温度(Tf)とした。
(実施例1)
(トナー母粒子作製工程S1)
結着樹脂として、ポリエステル樹脂(商品名:ダイヤクロン、三菱レイヨン株式会社製、ガラス転移温度56℃、軟化温度130℃)2kgと、離型剤としてパラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9)100gとを、ヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)を用いて前混合した後、二軸押出混練機(商品名:PCM65、株式会社池貝製)により溶融混練した。この時の最高混練温度を二軸押出混練機に備えられている温度計では152℃であった。
この溶融混練物を、カッティングミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕した後、ジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)により微粉砕し、さらに風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製)で分級し、体積平均粒径6.5μm、ガラス転移温度55℃のトナー母粒子を作製した。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
(樹脂微粒子調製工程S2)
本実施例では、樹脂微粒子として、個数平均粒径が0.3μmのスチレン−アクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体微粒子(総研化学社製 乳化重合樹脂微粒子、Tg60℃)を用意した。
(蛍光染料含有溶液調製工程S3)
蛍光染料として、クマリン(和光純薬工業社製 特級試薬、融点69℃)を使用し、溶媒として、エタノールを用いた。エタノール100g中に、クマリン20gを溶解させて、蛍光染料含有溶液を調製した。
(蛍光トナー粒子調製工程S4)
本実施例では、トナーの製造装置として、蛍光染料含有溶液を噴霧することができる二流体ノズルを取付けた表面改質装置(商品名:ハイブリダイゼーションシステムNHS−1型、株式会社奈良機械製作所製)を用いた。
本実施例では、トナー製造装置内部の循環流路を50℃に設定し、トナー母粒子(体積平均粒径6.5μm)1kgと樹脂微粒子(個数平均粒径0.3μm)100gをトナー製造装置に投入して、回転数8000rpmで10分間滞留させ、複合粒子を作製した。トナー製造装置から1gの複合粒子を取り出して、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、ほぼ一層の樹脂微粒子によって、トナー母粒子表面が均一に被覆されていた。
次に、二流体ノズルに圧縮エアを送り、トナー母粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合樹脂粒子を気流中で循環させながら、蛍光染料含有溶液を2g/分の割合で50分間噴霧することにより、複合樹脂粒子表面を湿潤させて、その湿潤複合粒子に衝撃力を加えることにより樹脂微粒子と蛍光染料とをトナー母粒子の表面で膜化し、続いて温風乾燥させることにより実施例1の透明蛍光トナーを得た。なお、上記透明蛍光トナーにおける計算上の蛍光染料含有量は、トナー1kgに対して約1.8gとなる。
得られた実施例1の透明蛍光トナーを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、トナー表面に樹脂微粒子の形状に起因する凹凸はなく、トナー母粒子表面が均一に膜化されていた。
次に、実施例1の透明蛍光トナー1kgとシリカ粒子(日本アエロジル社製R974、平均一次粒径 12nm)10gをヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)で外添することにより、実施例1の外添透明蛍光トナーを作製し、発光効率および透明性の評価を行った。
(比較例1)
結着樹脂として、ポリエステル樹脂(商品名:ダイヤクロン、三菱レイヨン株式会社製、ガラス転移温度56℃、軟化温度130℃)2kgと、蛍光染料として、クマリン(和光純薬工業社製 特級試薬、融点69℃)38gと、離型剤としてパラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9)100gとを、ヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)を用いて前混合した後、二軸押出混練機(商品名:PCM65、株式会社池貝製)により溶融混練した。この時の最高混練温度を二軸押出混練機に備えられている温度計では148℃であった。
この溶融混練物を、カッティングミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕した後、ジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)により微粉砕し、さらに風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製)で分級し、個数平均粒径7μm、ガラス転移温度53℃の比較例1の透明蛍光トナーを作製した。なお、上記透明蛍光トナーにおける計算上の蛍光染料含有量は、トナー1kgに対して約1.8gとなる。
(比較例2)
蛍光染料として、クマリンの代わりに、青色蛍光顔料(シンロイヒ社製FZ−SB)を使用した点を除いて、比較例1と同様の方法で、個数平均粒径7μm、ガラス転移温度53℃の比較例2の透明蛍光トナーを作製した。なお、上記透明蛍光トナーにおける計算上の蛍光染料含有量は、トナー1kgに対して約1.8gとなる。
<評価>
作製した外添透明蛍光トナーを用いて、以下の方法により、発光効率および透明性の評価を行った。
なお、比較例1の透明蛍光トナーは、透明蛍光トナー1kgに対してシリカ粒子(日本アエロジル社製R974、平均一次粒径が12nmの)10gをヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)で外添することにより、外添透明蛍光トナーを作製した後、下記発光効率と透明性の評価を行った。
<発光効率の評価方法>
透明なOHPシートの上に、1平方センチメートルあたりのトナー付着量が0.6mgとなるベタ画像(透明画像)を形成した定着シートを、発光効率の測定装置として、3次元分光蛍光光度計(島津製作所社製RF−5300PC)を使用し、励起波長および蛍光波長を360nmおよび500nmに設定し、発光効率として蛍光光度に対する励起光度の比を求めた。
<透明性の評価方法>
透明なOHPシートの上に、1平方センチメートルあたりのトナー付着量が0.6mgとなるベタ画像(透明画像)を形成した定着シートを、透明性の測定装置として、分光光度計(島津製作所社製UV1240)を使用し、入射光の波長を400nm〜700nmに設定し、透明性としてその入射光の透過率を求めた。
表1に、実施例および比較例の蛍光トナーについて、発光効率および透明性の評価結果を示す。
実施例1の蛍光トナーは、発光効率と透明性ともに良好な結果が得られた。一方、比較例1の蛍光トナーは、発光効率が低く、明るい室内でブラックライトを用いた目視の簡易テストでも蛍光の確認が困難であった。
比較例1の蛍光トナーは、発光効率が低く、明るい室内でブラックライトを用いた目視の簡易テストでも蛍光の確認が困難であった。
比較例2の蛍光トナーは、透明性が低く、ブラックライトなしでもOHPシート上の透明トナー画像が目に付いた。