JP5445941B2 - 水性粘着剤組成物 - Google Patents

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この発明は、水性粘着剤組成物、詳しくは、ウレタン及び重合性単量体の重合物との複合樹脂からなる水性粘着剤組成物に関する。
ウレタン系の粘着剤は、微粘着剤として有用である。従来使用されていたウレタン系粘着剤は、溶剤系であり、作業環境の安全性や、環境への対応等の点で、無溶剤化が求められていた。
これに対し、水系のウレタン系粘着剤が開発されている。しかし、ウレタン系粘着剤は、微粘着性であり、タックによる粘着性(初期の接着性)を付与することが難しい。これに対し、タックによる粘着性を発現させるため、低分子量化を行うことが考えられるが、この場合、凝集力が不十分となりやすい。この凝集力を向上させる方法としては、架橋剤を併用する方法があげられる。
しかし、この架橋剤を併用すると、2液配合系の粘着剤となり、取扱いが煩雑となる。このため、前記した特性を有した上で、1液化が求められている。さらにまた、ウレタン樹脂の欠点として、耐候性が十分でないという問題点を有するが、この改良も求められている。
一方、アクリル系の粘着剤も、従来、溶剤系が主流であったが、前記の安全性や環境等の問題や、凝集力のある高重合度ポリマーが得られ難いことから、被着体への糊残りや汚染等が生じやすいという問題を有しており、無溶剤化が求められていた。
これに対し、水系のアクリル系粘着剤が開発されている。これは、溶剤型に比べ、高重合度のポリマーが得られ、凝集力は十分である。さらに、タックによる粘着性を付与することもできる。しかし、水への乳化を行うために乳化剤を使用するため、耐水性等が不十分となる場合が多い。また、前記の水系のアクリル系粘着剤に、微粘着性、及び各種基材への密着性の両方を発揮することが困難となりやすい。
これらに対し、水性ポリウレタンとアクリルエマルジョンを混合した混合樹脂を用い、高分子量のもので、耐水性及び基材密着性を向上させた粘着剤組成物が知られている(特許文献1)。
しかし、前記の混合樹脂を構成する水性ポリウレタンとアクリルエマルジョンとは、相溶性があまりよくないため、相分離が起こりやすい。このため、塗膜の透明性が低下するおそれがある。また、アクリルエマルジョンに使用される乳化剤の寄与により、耐水性が不十分となりやすい。
ところで、乳化剤を使用せずに、水性ポリウレタンとビニル重合体とを複合させることにより、粒子内でウレタン樹脂とアクリル樹脂とが複合した複合樹脂が知られている(特許文献2)。この複合樹脂は、両樹脂が複合されているので、相分離を起こすことなく、乳化剤による耐水性の低下を抑制でき、ウレタン樹脂の欠点であった耐候性の向上を図ることができる。
特開2005−089666号公報 特開2000−328031号公報
ところで、粘着テープ等を製品の保護等の用途に使用する場合、剥離や貼り直しの作業が頻繁に行われるが、その際に、断続的な剥離、いわゆる「パルス剥離」が起こることがある。このパルス剥離が起こると、剥離強度が急激に変化するため、作業性の低下を招くだけでなく、場合によっては、剥離のために過剰な力が加えられることがあり、そのため、保護すべき製品自体を傷つけてしまう可能性がある。また、粘着テープが光学製品等の保護フィルムとして用いられる場合、パルス剥離によりフィルム表面に筋が生じて外観が悪化するため、保護フィルムとして、また、製品としての商品価値が失われる場合がある。
そこで、この発明は、粘着テープの剥離時にパルス剥離の発生を抑制することのできる粘着剤を得ることを目的とする。
この発明は、鎖状脂肪族系多価イソシアネート化合物とジオール成分とを反応して得られたウレタンプレポリマー(A)と、重合性単量体(B)とを含有する水性分散液中の、前記(B)成分を重合させることにより得られる組成物であり、上記(A)成分は、下記式(I)又は(II)で示されるシリコン系化合物鎖を、上記(A)成分全体に対して、0.5重量%以上50重量%以下含有し、かつ、上記(B)成分は、その単独重合体のガラス転移温度が−80℃以上10℃以下となる重合性単量体である水性粘着剤組成物を用いることにより、前記課題を解決したのである。
Figure 0005445941
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(式中、Xは、それぞれ独立して、下記式(1)に示す群から選ばれ、Yは、それぞれ独立して、下記式(2)に示す群から選ばれ、R、R、Rは、それぞれ独立して、C1〜C8のアルキル基又はアルコキシ基であり、nは1〜50の整数である。
Figure 0005445941
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式(1)中、Rは、それぞれ独立して、C1〜C8の分岐鎖を有してもよいアルキレン基であり、式(2)中、Rは、それぞれ独立して、C1〜C8の二価又は三価の炭化水素基である。)
この発明によると、特定のシリコン系化合物鎖を有するウレタンプレポリマーの存在下で、重合性単量体を重合させて水性粘着剤組成物を得ることができるので、これを用いて粘着テープや粘着シートとして使用したとき、再剥離時におけるパルス剥離の発生を抑制することができる。
パルス剥離試験の結果(剥離時の剥離強度と剥離距離との関係)を示すグラフ(基板:SUS板) パルス剥離試験の結果(剥離時の剥離強度と剥離距離との関係)を示すグラフ(基板:ガラス板)
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明にかかる水性粘着剤組成物は、特定のウレタンプレポリマー(この明細書において、「(A)成分」と称する。)と、重合性単量体(この明細書において、「(B)成分」と称する。)とを含有する水性分散液を調製し、この水性分散液中の、前記(B)成分を重合させることにより得られる組成物である。
[(A)成分]
前記(A)成分であるウレタンプレポリマーは、鎖状脂肪族系多価イソシアネート化合物とジオール成分とを反応して得られたプレポリマーである。
前記鎖状脂肪族系多価イソシアネート化合物とは、鎖状、かつ、脂肪族系の多価イソシアネート化合物をいい、具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート又はこれらの混合物をいう。これらの鎖状脂肪族系多価イソシアネートを用いることにより、ウレタンの組成に含まれるハードセグメント部を柔軟なものとすることができる。
前記ジオール成分とは、官能基として少なくとも2つの水酸基を有する化合物をいい、一般に知られているジオールが用いられる。このジオールとしては、ポリエーテルポリオール、カルボキシル基含有ジオールや、その他のジオールが挙げられ、ポリエーテルポリオールやカルボキシル基含有ジオールを必須成分として含むのが好ましい。ポリエーテルポリオールを用いることにより、生成する被膜が柔軟となり、基材への密着性を向上させることができる。また、カルボキシル基含有ジオールを用いることにより、極性基が導入されて、特に金属への密着性が改良される。また、ポリエチレングリコールとジメチルジメトキシシラン等のシロキサン類とを反応させて得られるシリコン変性ポリオールを用いると、撥水性、耐摩耗性、及び/又はスリップ性が改良されるので好ましい。さらに、ウレタン重合後、このカルボキシル基の少なくとも一部を中和することにより、得られるウレタンプレポリマー((A)成分)自体を分散剤としての役割を付与することができ、他の分散剤を使用することなく、(A)成分を後述する親水性媒体に分散させることが可能となる。
前記ポリエーテルポリオールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等をあげることができる。
このポリエーテルポリオールの数平均分子量は、2500以下がよく、1000以下が好ましい。2500より大きいと、ウレタンプレポリマーが高粘度となり、水への分散性が低下する場合がある。一方、数平均分子量の下限は、300がよく、500が好ましい。300より小さいと、ポリウレタンのセグメントが発揮すべき粘着性が不十分となることがある。なお、この数平均分子量は、JIS−K−1557に準拠して、無水フタル酸(ピリジン溶液)を用いたエステル化、及び過剰無水フタル酸の水酸化ナトリウム溶液による滴定法を用いて、水酸基価(OHV)を測定することにより、算出できる。
また、前記カルボキシル基含有ジオールの例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸があげられる。
さらに、前記その他のジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、メチルペンタンジオールアジペート等の比較的低分子量のジオールや、ポリエステルジオール、ポリエステルエーテルジオール、ポリカーボネートジオールのポリマータイプのジオールや、アルコール変性シリコーンオイル等のシリコン変性ジオール等が挙げられ、これらの1種又は複数種を用いることができる。
前記の全ジオール成分中のポリエーテルポリオールの含有割合は、60重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。60重量%より少ないと、粘着性が不十分となる場合がある。一方、含有割合の上限は、95重量%が好ましい。95重量%より多いと、カルボキシル基含有ジオールの含有量が相対的に少なくなり、水への分散性が不十分となる傾向がある。
この(A)成分は、下記式(I)又は(II)で示されるシリコン系化合物鎖を有する。このシリコン系化合物鎖を有することにより、得られる水性粘着剤組成物を用いて、粘着テープや粘着シートとして製品に貼り付け、剥離や貼り直しの作業を行ったときに、パルス剥離が生じるのを抑制することができる。
Figure 0005445941
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なお、式中、Xは、それぞれ独立して、下記式(1)に示す群から選ばれ、Yは、それぞれ独立して、下記式(2)に示す群から選ばれ、R、R、Rは、それぞれ独立して、C1〜C8のアルキル基又はアルコキシ基であり、nは1〜50の整数である。
Figure 0005445941
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式(1)中、Rは、それぞれ独立して、C1〜C8の分岐鎖を有してもよいアルキレン基であり、式(2)中、Rは、それぞれ独立して、C1〜C8の二価又は三価の炭化水素基である。
なお、本発明において、C1〜C8の分岐鎖を有してもよいアルキレン基とは、直鎖アルキレン基の他に、アルキレン基の一部の水素が炭化水素基で置換された分岐鎖アルキレン基を含むものであって、合計の炭素原子数が1〜8である炭化水素基のことである。
ところで、上記シリコン系化合物鎖を含有する化合物としては、下記式(III)又は(IV)で示される化合物を例としてあげることができる。
Figure 0005445941
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なお、式中、R,R,Rは、上記と同様であり、Zは、C1〜C8のヒドロキシアルキル基、C1〜C8のアルキル置換の第1級又は第2級アミノ基、C1〜C8のアルキルイソアナト基、水酸基、第1級又は第2級アミノ基、及びイソシアナト基から選ばれる基であり、Wは、C1〜C8のジヒドロキシアルキル基、及びC1〜C8のアルキル置換第1級アミノ基から選ばれる基である。
上記のシリコン系化合物鎖の含有割合は、(A)成分全体に対して、0.5重量%以上がよく、1重量%以上が好ましい。0.5重量%より少ないと、シリコン系化合物鎖の添加の効果が十分に得られないおそれがある。一方、含有割合の上限は、50重量%がよく、30重量%が好ましい。50重量%より多いと得られる水性粘着剤組成物の粘着力が低下するおそれがある。
次に、前記の鎖状脂肪族系多価イソシアネート化合物、ジオール成分、及び上記シリコン系化合物鎖を含有する化合物を混合し、ウレタン化反応させることにより、内部にシリコン系化合物鎖を有する前記(A)成分が製造される。
上記シリコン系化合物鎖を含有する化合物を添加する時期としては、例えばウレタン化反応の前又は反応初期に、ジオール成分と同様にして添加することができる。また、この他に、上記鎖状脂肪族系多価イソシアネート化合物とジオール成分とのウレタン化反応終了後に添加して残存イソシアネート基と反応させてもよく、ウレタン化反応の終了後にエマルジョン化させ、鎖伸長剤と併せて添加してもよい。
前記の鎖状脂肪族系多価イソシアネートとジオール成分との混合比は、当量比で、鎖状脂肪族系多価イソシアネート化合物/ジオール成分=1.2/1.0以上がよく、1.4/1.0以上が好ましい。1.2/1.0より小さいと、ウレタンプレポリマーの粘度が
高くなり、水への分散性が低下して凝集したり、粗大粒子が発生することがある。一方、前記混合比の上限は、2.0/1.0がよく、1.9/1.0が好ましい。2.0/1.0より大きいと、未反応の多価イソシアネートが過剰となり、水分散時に凝集したり、発泡が起こって、分散状態が悪化することがある。
上記ウレタン化反応の反応温度や反応時間は、通常のウレタンプレポリマーの製造条件と同様の製造条件を選択することができる。具体的には、反応温度は、50〜120℃がよく、70〜100℃が好ましい。また、反応時間は、0.5〜15時間がよく、3〜5時間が好ましい。
得られた(A)成分は、カルボキシル基を含む場合がある。この場合、塩基性化合物により、少なくとも一部を中和すると、得られる水性分散液がより安定化すると共に、後述するように、親水性媒体に分散させる際、分散剤を使用しなくても、分散させることも可能となるので好ましい。前記塩基性化合物は、カルボキシル基を中和できるものであれば特に限定されるものではなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン等があげられる。
上記の塩基性化合物の中でも、トリアルキルアミンを、使用する塩基性化合物の少なくとも一部に用いると、耐水性の点で好ましい。
得られた前記(A)成分は、水や、水と親水性有機溶剤(メタノール、エタノール等)との混合物である親水性媒体に分散させることにより、水性分散液を得ることができる。なお、得られた(A)成分に、少なくとも一部が中和されたカルボキシル基を含む場合、(A)成分自体が分散剤としての役割を果たすことが可能となるので、他に分散剤を使用することなく、前記親水性媒体に分散させることが可能となる。なお、得られた(A)成分に、カルボキシル基を含まない場合は、一般に使用される分散剤を使用することにより、前記親水性媒体に分散させることが可能となる。
[(B)成分の重合体]
前記(B)成分である重合性単量体とは、ラジカル重合性を有する単量体をいい、エステル基含有ビニル単量体、スチレン及びその誘導体、その他のビニル単量体等があげられる。
前記エステル基含有ビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物があげられる。なお、この明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
前記スチレン及びその誘導体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン等があげられる。
前記その他のビニル単量体としては、前記(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の(メタ)アクリル系単量体、ハロゲン化ビニル系化合物、多官能性不飽和単量体等のビニル基含有単量体等があげられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等があげられる。
前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル等があげられる。
前記(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の(メタ)アクリル系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等があげられる。
前記ハロゲン化ビニル系化合物としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等があげられる。
また、前記多官能性不飽和単量体としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びそれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンや、3個以上のビニル基を持つ化合物があげられる。
なお、前記の各重合性単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記(B)成分は、前記(A)成分と混合することにより乳化・分散して、水性分散液にし、ラジカル重合反応を行うことにより、(B)成分の重合体を得ることができる。この(B)成分の前記(A)成分への混合方法としては、前記(A)成分であるウレタンプレポリマーの生成反応前に混合する方法、前記(A)成分であるウレタンプレポリマーの生成反応後、かつ、水系媒体への分散前に混合する方法、前記(A)成分であるウレタンプレポリマーの生成反応後、かつ、水系媒体への分散後に混合する方法等があげられる。これらの方法の中でも、前記(A)成分のウレタン重合前に混合する方法を採用すると、得られる水性粘着剤組成物において、ウレタン樹脂と(B)成分の重合体とがより緊密に複合化し得るので、好ましい。
前記したいずれかの混合方法を用いて、前記水性分散液を調製したとき、この水性分散液中の(A)成分と(B)成分との混合比は、固形分重量比で、(A)/(B)=20/80以上が好ましく、40/60以上がより好ましい。20/80より小さいと、水への分散性が不足する傾向となる。一方、混合比の上限は、90/10が好ましく、80/20がより好ましい。90/10より大きいと、初期の粘着性が低下することがある。
次に、上記ラジカル重合は、前記の(B)成分を含む水性分散液を用い、ラジカル重合開始剤を用いて行う。このラジカル重合反応の重合温度は、通常50〜100℃程度、反応時間は、通常2〜16時間程度とすることが好ましい。
前記重合開始剤としては、通常のラジカル重合で使用される重合開始剤を使用することができる。このラジカル重合開始剤の例としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物等のラジカル重合開始剤があげられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらラジカル重合開始剤と、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸等の還元剤とを併用してレドックス系重合開始剤として用いることもできる。
前記ラジカル重合反応の終了後、50〜80℃で1〜5時間程度、加熱・熟成すること
により、前記重合性単量体の残余成分を重合させてもよい。
このようにして得られた水性粘着剤組成物中の(B)成分を構成成分とする重合体のガラス転移温度は、10℃以下が必要で、0℃以下が好ましい。10℃より高いと、粘着性が不十分となるおそれがある。一方、ガラス転移温度の下限については、−80℃より低いものは、得られにくいため、この温度を下限としてもよい。
前記のラジカル重合反応、及び加熱・熟成反応は、水系での反応であるので、この反応において、(A)成分の鎖伸長反応が生じる場合がある。この鎖伸長反応が生じた場合、(A)成分であるウレタンプレポリマーは、重合度が増し、ポリウレタンとなる。また、前記加熱・熟成反応の後、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、アミノ変性シリコーンオイル等のイソシアネート基と反応可能な活性水素を2個以上有する化合物を用いて、積極的に(A)成分の鎖伸長反応を行い、ポリウレタンを得てもよい。
これらにより、ウレタンプレポリマー((A)成分)又はポリウレタンと、重合性単量体(B)を構成成分とする重合体とからなる複合重合体混合物を含む水性粘着剤組成物を得ることができる。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。まず、評価方法及び使用した原材料について説明する。
(評価方法)
[ガラス転移温度]
ビニル重合体中の各構成単量体(重合性単量体)a,b,…の構成重量分率をWa,Wb,…とし、各構成単位a,b,…の単独重合体のガラス転移温度をTga,Tgb,…としたとき、下記に示すFOXの式で、共重合であるビニル重合体のTgの値を求めた。
1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tgb+…
[初期粘着力]
常温(23℃)下において、被着体をステンレス(SUS)板(日本テストパネル(株)製:SUS304−BA)、又はガラス板(市販品)とし、JIS Z 0237に準じて180°引き剥がし接着力の測定を行った。
また、糊残りの有無を、下記の基準にしたがい、目視で判断した。
○…糊残りなし。
×…糊残りあり。
[経時粘着力]
被着体を前記のSUS板又はガラス板とし、60℃、90%Rh下で24時間放置後、20℃、50%Rh下で20分間条件調製した後、JIS Z 0237に準じて180°引き剥がし接着力の測定を行った。
また、糊残りの有無を、下記の基準にしたがい、目視で判断した。
○…糊残りなし。
×…糊残りあり。
[耐水性試験]
被着体をSUS板とし、常温(23℃)と40℃の各条件で、水道水に浸漬し、24時間経過後の粘着状態を、下記の基準にしたがい、目視にて判断した。
○…剥がれなし。
×…剥がれあり。
また、糊残りの有無を、下記の基準にしたがい、目視で判断した。なお、粘着状態が「×」の場合は、判断しなかった。
○…糊残りなし。
×…糊残りあり。
−…粘着状態が「×」だったので、判断せず。
[ボールタック]
JIS Z0237に記載されたJ.DOW法により、傾斜角度30度、測定温度23℃におけるボールタックを測定した。数字はボールナンバーを表す。
[パルス剥離試験]
初期粘着力の測定方法と同様の方法で引き剥がし測定を行い、強度曲線を描くと共に、強度曲線上で剥離中の瞬間的な強度の低下と回復をパルス剥離の発生として、判断した。パルスが観察されない場合は、「なし」、パルスが観察される場合は、「あり」とした。
(原材料)
[多価イソシアネート]
・トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート…Degussa−Huls社製:VESTANAT TMDI(商品名)、以下「TMDI」と略する。
[ポリオール](なお、以下において、「OHV」とは、水酸基価(単位:mgKOH/g)を意味する。)
・ポリテトラメチレンエーテルグリコール…三菱化学(株)製:PTMG1000、OHV:109.8mgKOH/g、数平均分子量:1022、以下「PTMG」と略する。
・1,4−ブタンジオール…三菱化学(株)製、以下「14BD」と略する。
[カルボキシル基含有ポリオール]
・ジメチロールプロピオン酸…Mallinckrodt Chemical Inc.社製、以下「DMPA」と略する。
[シリコン系化合物鎖含有化合物]
・X−22−160AS…信越シリコーン(株)製、式(III)の化合物、R=R=メチル基、Z=ヒドロキシアルキル基(両方とも)。以下、「160AS」と称する。
・X−22−161A…信越シリコーン(株)製、式(III)の化合物、R=R=メチル基、Z=アルキル置換の第1級アミノ基(両方とも)。以下、「161A」と称する。
・X−22−176DX…信越シリコーン(株)製、式(IV)の化合物、R=R=R=メチル基、W=ジヒドロキシアルキル基。以下、「176DX」と称する。
[中和剤]
・トリエチルアミン…和光純薬工業(株)製:試薬、以下、「TEA」と称する。
[重合性単量体]
・メタクリル酸メチル…三菱化学(株)製、以下、「MMA」と称する。
・アクリル酸ブチル…三菱化学(株)製、以下、「BA」と称する。
[重合開始剤]
・t−ブチルハイドロパーオキサイド…和光純薬工業(株)製:試薬、以下、「PO」と称する。
・アスコルビン酸…武田薬品(株)製、以下「AsA」と略する。
(実施例1〜3、比較例1)
温度計、撹拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、表1に示すポリオール、カルボキシル基含有ポリオール、及びシリコン系化合物鎖含有化合物の各成分、重合性単量体の各成分を表1に記載の量ずつ加え、内温を50℃とし、表1に記載の量の多価イソシアネートを加え、90℃に加温し、この温度で5時間反応させてウレタンプレポリマー溶液を得た。
得られたウレタンプレポリマー溶液を50℃に冷却し、表1に記載の量の中和剤を加えて、ウレタンプレポリマー溶液中のカルボキシル基を中和した。
次いで、このウレタンプレポリマー溶液に、表1に記載の量のイオン交換水(転相水)を、10分間かけて滴下し、乳白色の水性分散液を得た。
その後、この水性分散液を50℃に保温し、表1に記載の量のPOをイオン交換水で希釈した液を添加し、その後、AsAをイオン交換水で溶解した液を添加して、ビニル重合(ラジカル重合反応)を開始した。発熱終了後、さらに70℃に昇温して3時間維持することにより、ポリウレタンとビニル重合体の水性分散複合体を得た。
得られた水性分散複合体について、前記の方法にしたがって、初期粘着力、経時粘着力、及びボールタック、パルス剥離の有無を測定した。その結果を表1に示す。
また、パルス剥離試験の結果のグラフを図1及び図2に示す。なお、図1は、基板をSUSとしたときの結果を示し、図2は、基板をガラスとしたときの結果を示す。グラフ上で下向きの鋭いピーク(瞬間的な強度の著しい低下)が、パルス剥離の発生を示すものである。
なお、本願明細書における微粘着性は、ボールタック試験から判断可能である。また、凝集性は、粘着力と糊残り性から判断可能である。
Figure 0005445941

Claims (6)

  1. 鎖状脂肪族系多価イソシアネート化合物と、数平均分子量が300〜2500であるポリエーテルポリオール及びカルボキシル基含有ジオールの少なくとも一方を含むジオール成分とを反応して得られたウレタンプレポリマー(A)、並びにエステル基含有ビニル単量体並びにスチレン及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種を含有する重合性単量体(B)を、(A)成分と(B)成分との混合比が固形分重量比で、(A)/(B)=20/80〜90/10で含有する水性分散液中の、前記(B)成分を重合させることにより得られる組成物であり、
    上記(A)成分は、下記式(I)又は(II)で示されるシリコン系化合物鎖を、上記(A)成分全体に対して、0.5重量%以上50重量%以下含有し、
    かつ、上記(B)成分は、その単独重合体のガラス転移温度が−80℃以上10℃以下となる重合性単量体である水性粘着剤組成物。
    Figure 0005445941
    Figure 0005445941
    (式中、Xは、それぞれ独立して、下記式(1)に示す群から選ばれ、Yは、それぞれ独立して、下記式(2)に示す群から選ばれ、R、R、Rは、それぞれ独立して、C1〜C8のアルキル基又はアルコキシ基であり、nは1〜50の整数である。
    Figure 0005445941
    Figure 0005445941
    式(1)中、Rは、それぞれ独立して、C1〜C8の分岐鎖を有してもよいアルキレン基であり、式(2)中、Rは、それぞれ独立して、C1〜C8の二価又は三価の炭化水素基である。)
  2. 上記シリコン系化合物鎖を含有する化合物は、下記式(III)又は(IV)で示される化合物である請求項1に記載の水性粘着剤組成物。
    Figure 0005445941
    Figure 0005445941
    (式中、R,R,Rは、上記と同様であり、Zは、C1〜C8のヒドロキシアルキル基、C1〜C8のアルキル置換の第1級又は第2級アミノ基、C1〜C8のアルキルイソアナト基、水酸基、第1級又は第2級アミノ基、及びイソシアナト基から選ばれる基であり、Wは、C1〜C8のジヒドロキシアルキル基、及びC1〜C8のアルキル置換第1級アミノ基から選ばれる基である。)
  3. 前記鎖状脂肪族系多価イソシアネート化合物のイソシアナト当量と、上記式(I)の鎖の重合前の水酸基に相当する基又はアミノ基に相当する基の当量の比が、(イソシアナト当量)/(水酸基又はアミノ基の当量)で、1.2〜2.0/1.0である請求項1又は2に記載の水性粘着剤組成物。
  4. 前記(A)成分中の酸成分の少なくとも一部をトリアルキルアミンで中和した請求項1〜3のいずれかに記載の水性粘着剤組成物。
  5. 前記トリアルキルアミンは、トリエチルアミンである請求項に記載の水性粘着剤組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の水性粘着剤組成物を用いた保護フィルム用粘着テープ。
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