図1は本発明によるトンネル水噴霧設備の全体構成を示した説明図である。図1において、自動弁装置1はトンネル側壁のコンクリート枠体に対し枠抜きされたスペースに50メートル間隔の水噴霧区画に1台ずつ設置されている。自動弁装置1の1次側には給水配管6が接続され、給水配管6には所定圧力の加圧消火用水が充填されている。自動弁装置1の2次側には水噴霧配管3が設けられ、水噴霧配管3はコンクリート側壁に沿って立ち上がった後に長手方向に分岐され、所定間隔で複数の水噴霧ヘッド2が接続されている。
自動弁装置1は信号線9aを介してセンタ制御装置4に接続されている。自動弁装置1はトンネル内の火災検知に基づきセンタ制御装置4から起動信号を受信して水噴霧ヘッド12から低圧による予告放水を行い、所定時間経過後に規定圧に昇圧して水噴霧ヘッド12からの本格放水を行う(2段階放水)。
センタ制御装置4に対してはポンプ制御盤5と防災受信盤8が設けられている。ポンプ制御盤5は、センタ制御装置4からの自動弁装置1の起動または遠隔テストに伴うポンプ起動信号を受けてポンプ設備を運転し、給水配管6に加圧した消火用水を供給する。
防災受信盤8は図示しないトンネル内に設置された火災検知装置からの火災検知信号を受信して火災警報を行うもので、火災警報に連動してセンタ制御装置4に火災移報信号を出力して、火災発生地区に対応した自動弁装置1の遠隔起動を行わせる。
ポンプ制御盤5に近い給水配管7の位置には流量計7が設けられる。例えば流量計は自動弁装置1に対する給水配管26のトンネル入口付近などに設けられる。流量計6は点検時に自動弁装置1で決まる放水区画単位の実放水の際に流量を計測し、水噴霧ヘッド2の性能判定に用いられる。
図2は図1の自動弁装置の実施形態を示した説明図である。図2において、自動弁装置は自動弁10、起動弁12、初期放水圧力制御弁15及び圧力調整弁16で基本的に構成され、更に圧力スイッチ46、自動排水弁48及びテスト放水弁50を設けている。また本発明にあっては、予告放水のための低圧設定から本格放水のための規定圧設定に圧力を切替える圧力調整弁16のポートP5とP6を結ぶ配管L9に、遠隔制御により動作して調整又は点検時に自動弁10を低圧設定に固定する例えば電動弁などの遠隔切替弁を用いた低圧点検設定弁100を設けている。
自動弁10は弁ボディ20の一方に流入口22を持ち、他方に流出口24を持ち、流入口22側にはポンプ設備からの配管が接続され、流出口24にはトンネル内に設置した放水ヘッド側の配管が接続されている。この自動弁10の詳細は図3に取り出して示す。
図3において、自動弁10は、弁ボディ20の内部に仕切壁26を有し、仕切壁26の弁穴55に対し主弁30を配置している。弁穴55の上部には弁座28が形成され、弁座28に対し主弁30に設けた弁シール56を押圧することで弁を閉鎖状態としている。
主弁30はスリーブ32aと一体に備えた主ピストン32に連結されている。主ピストン32は主シリンダ34に摺動自在に設けられ、主ピストン32の下側に開放加圧側シリンダ室34aを形成し、上部に閉鎖加圧側シリンダ室34bを形成している。また主シリンダ34の内側にはシリンダ筒38が配置され、シリンダ筒38に対しても主ピストン32は摺動自在に挿入されている。
主シリンダ34の上部にはカバー62が装着され、カバー62の中にスプールロッドとして機能するステム40を装着した駆動軸36が配置され、駆動軸36の下端は主弁30にナット締めにより固定されている。ステム40は途中に弁体として機能するシール66を装着しており、このシール66の近傍のカバー62内の位置にスプール弁座64を形成している。
主シリンダ34に対しては、シリンダポートC1、C2が設けられ、図2に示したようにシリンダポートC1に対し配管L1、L2、L3を介して1次側の圧力水を導入することで主ピストン32を上方に移動することができる。このとき上側に位置する閉鎖加圧側シリンダ室34bには予め水が充填されており、閉鎖加圧側シリンダ室34bの水はシリンダポートC2から排出される。
またステム40を備えたカバー62に対しては、第1ポートとしてのポートS1と第2ポートしてのポートS2が設けられる。このポートS1、S2の間にスプール弁座64が位置する。尚、主弁30は下側にガイド部30aを一体に形成しており、主弁30の開閉時にガイド部30aを弁穴55に対し摺動させて開閉時の位置決めを行なっている。
再び図2を参照するに、自動弁10の流入口22側に開口した1次側には1次圧取出口42が設けられ、ここから配管L1を接続して遠隔操作により開閉する起動弁12に接続している。起動弁12は手動起動弁14が並列接続されている。起動弁12の2次側は配管L2により圧力調整弁16の入力ポートP1に接続される。圧力調整弁16の出力ポートP2は配管L3を介して自動弁10の開放加圧側シリンダ室34aに対するシリンダポートC1に接続されている。
また自動弁10の流出口24に開口した2次側には2次圧取出口44が設けられ、ここから配管L8が引き出され、圧力調整弁16のポートP4に接続される。更に配管L8は圧力調整弁16の圧力検知ポートP3に接続された後、初期放水圧力制御弁15側に接続される。また2次圧取出口44側に示すように配管L8には圧力スイッチ46が接続され、また排水側との間に自動排水弁48を接続し、これと並列に手動開放可能なテスト放水弁50を接続している。
自動弁10の閉鎖加圧側シリンダ室34bのシリンダポートC2は配管L5に接続され、更に配管L4を介してステム40側のポートS1に接続される。更にステム40側のポートS2は配管L6に接続され、この配管L6は圧力調整弁16側からの配管L8に接続される。
ここで自動弁10のステム40側の配管L5、配管L4、ポートS1、ステム40の周囲の流路、ポートS2、配管L6となる経路は主ピストン32を開放側に駆動した際の閉鎖加圧側シリンダ室34bからの水の流出を行なう循環経路を構成しており、この循環経路とステム40及びそのシール66により自動弁10の停止制御機構が構成されている。
この停止制御機構は起動弁12の動作により1次側圧力水を開放加圧側シリンダ室34aに導入して主ピストン32を駆動して弁座28を開放した際に、主弁30の開度を予め示した初期開度に移動して停止させるための機能を有する。即ち、図3の自動弁10を参照すると、主ピストン32が開放加圧側シリンダ室34aに対する1次側圧力水の導入を受けて上方に移動すると、これに伴って駆動軸36に装着しているステム40も上昇する。
初期状態においてステム40側のポートS1とポートS2は内部の流路を介して連通しているが、駆動軸36が上昇してシール66はスプール弁座64に当接すると、ポートS1、S2間が遮断され、この結果、図2におけるシリンダポートC2からの水の排出が止まり、主ピストン32が停止し、主弁30は所定の初期開度を維持することになる。
初期放水圧力制御弁15は自動弁10を初期開度に開いた状態で2次側に加圧用水を供給し、ヘッドからの予告放水が行なわれた際の2次側圧力の発生を受けて動作し、配管L4と配管L7の間を連通する。このため入力ポートI1、出力ポートI2、圧力検知ポートI3を有し、初期放水圧力制御弁15は、図2にあっては矢印15を配管L7側から離すことで弁の閉鎖状態を表している。
自動弁10を初期開度に開放した後に2次側圧力が発生して初期放水圧力制御弁15が開くと、シリンダポートC2からの配管L5が初期放水圧力制御弁15を通って配管L7に連通し、配管L7は配管L8を介して自動弁10の2次側に接続されているため、自動弁10の主ピストン32の停止が解除されて、開駆動可能な状態となる。
圧力調整弁16は自動弁10の開閉制御により、図4のタイムチャートの特性Aに示すような放水圧力Pの制御を行なう。図4において、時刻t0で起動弁12を動作すると、自動弁10は初期開度に開放することで2次側に加圧用水が供給され、2次側圧力が配管L8を介して圧力調整弁16の圧力検知ポートP3に加わる。初期状態にあって圧力調整弁16は例えば2次側圧力を0.15MPaとする低圧設定の状態にあり、従って時刻t1より放水圧力P1を低圧設定に保つように圧力制御を行なう。
また圧力調整弁16は後の説明で明らかにするように、2次側圧力をポートP4に受けた際にピストンの駆動により設定圧を低圧設定から所定の遅延時間後に規定圧設定に切り替える機能を備えている。このため時刻t1から例えば5〜15秒の範囲内で設定した一定時間、例えば10秒経過する時刻t2で、それまでの低圧設定による圧力設定から規定圧、例えば0.34MPaの設定による圧力制御に段階的に切り替わる。このような図4の特性Aに示す放水圧力の圧力制御によって、時刻t0から時刻t2までが予告放水の圧力制御であり、時刻t2以降が本格放水のための圧力制御となる。
図5(A)は本発明の圧力応答型制御弁として機能する図2の初期放水圧力制御弁15の断面図であり、図5(B)に閉鎖状態のシンボルを示す。
図5(A)において、初期放水圧力制御弁15は、弁ボディ101aの上部にカバー102を配置し、下側に弁ボディ101bを装着している。弁ボディ101aの上部にはダイヤフラム104が設けられ、ダイヤフラム104の下側にダイヤフラム室106を形成している。ダイヤフラム104は、スプール弁108の上部に押え金具112とリテーナ114で挟んだ状態でナット116のボルト部への締付けで固定されている。
スプール弁108は上端から下端に連通する連通孔110を中心軸方向に形成している。ダイヤフラム104を固定したリテーナ114の上部にはスプリング118が組み込まれる。スプリング118の上部はリテーナ122に当接しており、リテーナ122に対しては設定圧力調整ネジ120の先端が当接している。
スプリング118は、設定圧力調整ネジ120のねじ込み位置で決まるスプリング荷重をスプール弁108に加え、これによってスプール弁108が開動作を行うための設定圧を決めている。
弁ボディ101aには入力ポートI1と出力ポートI2が設けられている。出力ポートI2は、この実施形態にあっては圧力検知ポートを兼ねている。出力ポートI2はダイヤフラム室106に連通している。スプール弁108のダイヤフラム室106に開口したスプール孔の部分には弁座109が形成され、ここにスプールテーパ部に設けたシール111を当接することで、入力ポートI1と出力ポートI2の連通を遮断した閉鎖位置となっている。
ダイヤフラム104の下側にはフェールセーフダイヤフラム124がタンデム配置される。フェールセーフダイヤフラム124は、弁ボディ101aと弁ボディ101bの間に外周部が固定され、中央部に押え金具128、130をナットにより固定し、押え金具128の連通孔132にスプール弁108の下部を挿入している。なお、フェールセーフダイヤフラム124の上側の空隙は連通孔125により外部と連通している。
更に、カバー102には、小孔103が形成され、ダイヤフラム104の破損により漏洩した圧力水を小孔103から流出させることで、ダイヤフラム104の破損を外部から確認できるようにしている。
このような構造を持つ図5(A)の初期放水圧力制御弁15は閉鎖状態にあり、シンボルで表わすと図5(B)のようになり、ポートI1とポートI2の連通が断たれている。
図6(A)は開動作した図2の初期放水圧力制御弁の断面図であり、図6(B)は開放状態のシンボルである。
図6(A)において、圧力検知ポートを兼ねた出力ポートI2には図2に示すように、配管L7、L8を介して自動弁10の2次側の放水圧力が主弁30を初期開度に開放した際に加わる。この出力ポートI2に加わる2次側圧力はダイヤフラム室106に導入され、導入圧がスプリング118の押圧荷重で決まる設定圧を超えると、ダイヤフラム104が上方に変形し、スプリング118に抗してスプール弁108を上方にリフトする。
このため、スプール弁108のシール111が弁座109から離れて開動作し、閉鎖加圧側シリンダ34bの水を圧力水として配管L5、L4を介し入力ポートI1、開放した弁座109の隙間部分、ダイヤフラム室106を通って、出力ポートI2に連通し、入力ポートI1から出力ポートI2に圧力水が流れる。
この初期放水圧力制御弁15の開動作の状態は、図6(B)のシンボルに示すように、ポートI1とポートI2が2次側圧力Paを受けて連通した状態となる。
次にダイヤフラム104が破損した場合のフェールセーフ動作を説明する。ダイヤフラム104が破損した状態で出力ポートI2に2次側圧力が加わると、2次側圧力はダイヤフラム室106を介して破損したダイヤフラム104に加わり、ダイヤフラム104の破損部分からスプリング118を収納したカバー102内に流出する。
カバー102内に流出した圧力水は、スプール弁108の中心軸方向に形成した連通孔110を通って下部のフェールセーフダイヤフラム室126に流れ込み、フェールセーフダイヤフラム124を上方に変形し、押え金具128をスプール弁108の下側段部を当接し、これによってスプール弁108を図6と同じ開動作の状態に押し上げ、入力ポートI1と出力ポートI2を連通させる。
このため本発明の初期放水圧力制御弁15にあっては、ダイヤフラム104が破損した場合、圧力検知ポートを兼用した出力ポートI2に2次側圧力が加わると、この圧力水は破損したダイヤフラム104から流出した後に下部のフェールセーフダイヤフラム室126に流入してフェールセーフダイヤフラム124を押圧することとなり、破損したダイヤフラム104に代わってフェールセーフダイヤフラム124が機能することとなり、出力ポートI2からの導入圧がスプリング118で決まる設定圧を超えたときに、フェールセーフダイヤフラム124の力によりスプール弁108が開動作を行い、正常に初期放水圧力制御弁15を動作することができる。
図7は図2の圧力調整弁16の断面図であり、図8はポートP2側を見た断面図を示している。図7において、圧力調整弁16は下部の圧力調整部70と上部の圧力設定部72で構成されている。圧力調整部70には入力ポートP1、圧力検知ポートP3、更に図8に示す出力ポートP2が設けられている。
入力ポートP1はスプール弁76に対し連通され、スプール弁76は中間の鍔状の弁体部に対応してボディ側に弁座78を形成している。このため入力ポートP1から流入した圧力水はスプール弁76の周囲を通り、図8に示す出力ポートP2に流れる。この入力ポートP1から出力ポートP2に対する圧力水の流れに対し、圧力検知ポートP3に2次側圧力水を導入し、上部の圧力設定部72によりダイヤフラム弁74に加わる荷重との差圧に基づいてスプール弁76を開閉制御し、2次圧力がスプリング80で決まる設定圧となるように自動弁10に対する出力ポートP2の圧力を調整する。
この圧力調整動作は、ダイヤフラム弁74に加わる圧力がスプリング80による設定圧を越えると、ダイヤフラム弁74が上方に変形してスプール弁76をリフトし、入力ポートP1と出力ポートP2(図8参照)の間を遮断し、自動弁10の開放加圧側シリンダ室34aに対する圧力水の供給を遮断することで、スプリング60(図3参照)の力で主弁30を閉方向に動作する。
逆に、ダイヤフラム弁74に加わる圧力がスプリング80による設定圧を下回ると、ダイヤフラム弁74が下方に変形してスプール弁76を押し下げ、入力ポートP1と出力ポートP2(図8参照)の間を連通し、自動弁10の開放加圧側シリンダ室34aに圧力水を供給して主弁30開方向に動作する。これによって2次側圧力を設定圧に保つように自動弁10が制御される。
図7の初期状態において、スプリング80はダイヤフラム弁74の上部と、ガイドスリット86に対するピン84の挿入で位置決めされたスライダ82との間隔で決まるスプリング力により低圧設定の状態にある。
圧力調整弁16の上部に設けた圧力設定部72にはシリンダ90が設けられ、シリンダ90の中にジスク88が摺動自在に設けられている。ジスク88の下側にはフレーム95を介してプランジャ94が設けられており、プランジャ94の先端は下部のスライダ82にスプリング85を介して対向配置されている。シリンダ90のシリンダ室90aにはポートP4で連通され、ここに2次側圧力水を導入する。
またジスク88には逆止弁96が設けられ、初期的にポートP4に圧力水を導入した際に上側のシリンダ室90aから下側のシリンダ室90bに水を流して充満させるようにしている。これに対し、水が充満した状態でポートP4に2次側圧力が加わった際のジスク88の下降に対し、逆止弁96は下側から上側への水の流れを阻止する。
シリンダ90のシリンダ室90a、90bのそれぞれに対してはポートP5、P6が設けられ、この間を配管L9で接続し、配管L9の途中には流量を調整自在なニードル18と、低圧設定の調整時又は点検時に閉状態に遠隔制御される低圧点検設定弁100が設けられ、通常時、低圧点検設定弁100は開状態となっている。
このためポートP4に2次側圧力水を導入した際のジスク88の移動速度はシリンダ室90bからシリンダ室90aに水を流すニードル18の設定流量により決まり、これによってジスク88が初期位置から先端のプランジャ94がスライダ82に挿接してスプリング80を押圧することで低圧設定から規定圧設定に切り替えるまでの遅延時間が決まる。
一方、低圧点検設定弁100を調整時又は点検時に遠隔操作により閉状態としていると、シリンダ室90aに対し加圧水が供給されず、低圧設定を維持し続けることとなる。
次に図2の実施形態における放水制御を説明する。図2の通常監視状態にあっては自動弁10の主弁30は閉鎖しており、主ピストン32の上側の閉鎖加圧側シリンダ室34b、ステム40の周囲、ポートS1、S2及びシリンダポートC2に接続している配管L4、L5、L6、L7、更に配管L8は充水されている。このとき起動弁12は閉鎖状態にある。また圧力調整弁16のポートP5,P6を結ぶ配管L9に設けた低圧点検設定弁100は開状態として低圧固定設定を解除している。
トンネル火災の発生により放水を行なう際には、図1に示したセンタ制御装置4からの遠隔操作などにより起動弁12を動作して開放させる。起動弁12を開放すると1次圧取出口42から配管L1、L2を介して1次側消火用水が圧力調整弁16の入力ポートP1に供給され、出力ポートP2から配管L3を通って自動弁10の開放加圧側シリンダ室34aに供給される。
このため主ピストン32が上方に移動し、図10に示すように主弁30が開き始める。この主弁30の開放に伴い、駆動軸36も上方に移動するが、スプール弁座64(図3参照)に当接すると流路が遮断され、シリンダポートC2からの液の流出ができなくなり、主ピストン32が停止して主弁30を所定の初期開度に維持する。
主弁30が初期開度に開放して1次側から2次側に加圧消火用水が供給されると、ヘッドからの放水に伴い2次側に圧力が発生する。この2次側に発生した圧力は2次圧取出口44から配管L8を経由して初期放水圧力制御弁15に加わり、矢印15で示す閉鎖位置から破線の矢印15bで示す開放位置に作動する。これは図6(A)においてダイヤフラム104の力によりスプリング118に抗してスプール弁108が上方に移動し、入力ポートI1と出力ポートI2が連通した状態である。
このためシリンダポートC2からの初期放水圧力制御弁15を通って配管L8に流れる循環経路が形成され、自動弁10における主ピストン32の停止状態が解除され、開閉駆動可能な状態となる。
また2次側に発生した圧力は圧力調整弁16の圧力検知ポートP3にも供給され、このとき圧力調整弁16は図6及び図7に示したように低圧設定状態にあり、放水圧力を低圧設定に保つように自動弁10に対する出力ポートP2からの供給圧力を遮断し、低圧設定による放水圧力を維持する。
また自動弁10の初期開度により2次側に発生した圧力は、加圧ラインL8を介して圧力調整弁16のポートP4にも加わる。ポートP4に2次側圧力が加わると図7の圧力調整部70に設けているジスク88がニードル18の流量で決まる速度で下降を開始する。
ジスク88は所定の遅延時間後に図9に示すようにプランジャ94をスプリング80の上部を支持しているスライダ82を押圧する位置に移動し、このジスク88によりスライダ82を押し込みによりスプリング80を圧縮して低圧設定から規定圧設定に切り替える。具体的にはジスク88がストッパー92の下端に当接する位置にジスク88がストロークすると、その時点で所定の規定圧設定に切り替わる。
このように圧力調整弁16が低圧設定から規定圧設定に切り替わると、設定規定圧を維持するように主ピストン32の開放加圧側シリンダ室34aに対する供給圧力を調整し、これによって規定圧設定による本格放水を行なうことになる。
放水の停止は起動弁12を遠隔操作により非作動状態として閉鎖すればよい。起動弁12の閉鎖で圧力調整弁16に対する1次側圧力用水の供給が断たれれば出力ポートP2の圧力もなくなり、自動弁10の開放加圧側シリンダ室34aの圧力もなくなり、主弁30はスプリング60の力および主ピストン32の上部に作用する2次側圧力の力で閉鎖位置に戻る。この主弁28が閉鎖状態に戻る時の主ピストン32の動きを決める水の流出は圧力調整弁16、出力ポートP2から圧力検知ポートP3に戻る流路による遅延動作により、緩やかに行なわれる。
一方、自動弁の設置工事が完了した後に、圧力調整弁16について実放水をしながら予告放水に必要な低圧設定の値を調整する場合には、遠隔操作により低圧点検設定弁100を閉状態に制御した後に起動弁12を動作する。このため自動弁10が初期開度に開放することで2次側に加圧用水が供給され、2次側圧力が配管L8を介して圧力調整弁16の圧力検知ポートP3に加わる。
初期状態にあって圧力調整弁16は低圧設定(未調整)の状態にあり、放水圧力P1を設定低圧に保つように圧力制御を行なう。しかし、低圧点検設定弁100を閉状態としているため、図3の特性Bに示すように例えば10秒経過する時刻t2を過ぎても低圧設定のままで規定圧設定に切り替わることがなく、この状態で圧力調整弁16の設定圧を0.15MPaの低圧設定となるように調整する。
圧力調整弁16の設定低圧の調整が済んだならば、例えば本格放水を確認するため低圧点検設定弁100を開状態にして低圧設定を解除すると、図4の特性Aに示すように、例えば10秒後に調整済みの低圧設定による圧力設定から規定圧、例えば0.34MPaの設定による圧力制御に段階的に切り替わる。
また水噴霧設備を定期点検する際には、図1に示したセンタ制御装置4から点検を行う水噴霧区画の自動弁装置1を順次指定して遠隔操作により低圧点検設定弁100を閉制御したあと起動弁12を開制御する。
起動弁12を開制御すると自動弁10が初期開度に開放することで2次側に加圧用水が供給され、2次側圧力が配管L8を介して圧力調整弁16の圧力検知ポートP3に加わる。
初期状態にあって圧力調整弁16は低圧設定の状態にあり、放水圧力P1を設定低圧に保つように圧力制御を行なう。しかし、低圧点検設定弁100を閉状態としているため、図4の特性Bに示すように例えば10秒経過する時刻t2を過ぎても低圧設定のままで規定圧設定に切り替わることがなく、圧力調整弁16は自動弁10の水噴霧ヘッドに対する圧力を0.15MPaの低圧設定となるように調整する。
このため点検時には0.15MPaとなる低圧に調整された消火用水が水噴霧ヘッドに供給されて実放水され、低圧設定時の放水量が所定の放水量かどうかを確認することで水噴霧設備の点検を行うことができ、0.34Mpaの規定圧設定による実放水に比べ、点検時の放水量が大幅に低減し、点検放水に伴う貯水槽の渇水を極力抑制し、水噴霧区画単位に行う点検時の実放水の回数を増やすことができる。なお、一時的に規定圧放水を行って点検を行いたい場合は、低圧点検設定弁100を開放制御することで低圧放水から規定圧放水に移行させることができ、従来技術のように必ず低圧放水から規定圧放水に自動的に移行する設備に比べて点検時の消火用水の消費量を抑えることができる。
また実放水を伴う点検中に火災が起きたとしても、貯水槽は渇水状態には至らないため、点検を遠隔操作により解除して点検中の自動弁10を閉鎖したあとに起動することで、適切に対応できる。点検中の自動弁10の水噴霧区画で火災が発生したときは、低圧点検設定弁100を開放するのみで、低圧設定から規定圧設定に移行して放水を行うことができる。
点検時の実放水による性能判定は、低圧設定による正常な水噴霧ヘッド当りの放水量を予め定めておき、図1に示した流量計7により点検実放水による流量を計測し、実放水したヘッド数で決まる正常時の放水量と比較判断する。なお、水噴霧ヘッドからの実放水量を測定する点検を行っても良い。
図11は本発明で用いる圧力調整弁に対する低圧点検設定弁の他の設置状態の実施形態を示した説明図である。
図11に於いて、予告放水のための低圧設定から本格放水のための規定圧設定に圧力を切替える圧力調整弁16のポートP4に対する加圧ラインL8に、遠隔制御により動作して調整又は点検時に自動弁10を低圧設定に固定する例えば電動弁などの遠隔切替弁を用いた低圧点検設定弁100を設けている。
通常時、低圧点検設定弁100は開状態にあり、点検時には遠隔制御により閉制御され、図7に示すポートP4への加圧水の供給を停止し、ジスク88の動きをなくして低圧設定に固定し、水噴霧ヘッドから低圧による実放水を行わせる。
なお、上記の実施形態にあっては、低圧点検設定弁100として電動弁を設けているが、電磁弁であっても良い。
また、自動弁を圧力調整弁により低圧設定による予告放水から所定時間後に規定圧設定に切り替えて本格放水する自動弁装置としては上記の実施形態に限定されず、2段階の圧力調整を行う自動弁装置を含み、その圧力調整機構に対し低圧設定に固定する低圧点検設定弁等の制御手段を設ける場合を含む。また上記実施形態のような圧力設定部に設けた低圧点検設定弁による配管の連通状態を変えての水圧制御による低圧固定設定制御に限らず、例えば自動弁10自体に設けて弁体開度を低圧設定に固定する制御であっても良いし、消火用水の水圧をつかった低圧設定に限らず、電気的、機械的に低圧設定に固定する制御をおこなってもよい。
また、本実施形態は水噴霧ヘッドから直接放水する点検に限らず、自動弁装置1の2次側の水噴霧配管3に点検用配管を分岐させて設け、点検用配管は水噴霧ヘッド2の放水量と同程度の放水をおこなうオリフィス等を介して排水側に接続し、点検時に自動弁の2次側を点検用配管に電動弁等で切替えて、道路側に放水することなく低圧設定時の放水を点検できるようにしてもよい。排水管の消火用水はストレーナを介して不純物を除去して貯水槽に戻すようにして消火用水の再利用をおこなっても良い。
また、点検の方法としては放水量を測定するだけに限らず、低圧設定時の水圧を測定するようにしても良い。
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。