JP5441377B2 - 単焦点光学系及びそれを有する撮像装置 - Google Patents

単焦点光学系及びそれを有する撮像装置 Download PDF

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Description

本発明は、単焦点光学系に関し、例えば銀塩フィルム用カメラ、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、デジタルビデオカメラ等の撮像装置の撮像光学系に好適なものである。
デジタルカメラやフィルム用カメラ等のうち、一眼レフカメラに用いられる撮影光学系には、広画角でバックフォーカスが長いことが求められている。
広画角で、バックフォーカスが長い撮影光学系として、レトロフォーカスタイプの撮影光学系が知られている(特許文献1、2)。このレトロフォーカスタイプの撮影光学系では、前方(カメラ等の撮影光学系においては被写体側)に全体として負の屈折力のレンズ群を配置する。
また、撮影光学系の後方(カメラ等の撮影光学系においては像側)には全体として正の屈折力のレンズ群を配置する。このような構成によって広画角で長いバックフォーカスを有する撮影光学系を実現している。
特開平07−043606号公報 特開05−188294号公報
一般にレトロフォーカス型の撮影光学系は開口絞りに対して前方に負の屈折力のレンズ群、後方に正の屈折力のレンズ群を配置した全体として非対称のレンズ構成より成っている。
又長いバックフォーカスを確保する為に前方のレンズ群の負の屈折力の絶対値を大きくしている。この為、諸収差の発生量が多くなる傾向があった。
特にレトロフォーカス型の撮影光学系は、広画角になるにつれてこの非対称な屈折力配置の傾向が強くなり、諸収差のうち、コマ収差、非点収差、球面収差等が多く発生する傾向があった。
例えばFナンバー1.4程度の明るいレトロフォーカス型の撮影光学系においては、前方の負の屈折力のレンズ群と開口絞りより後方の正の屈折力のレンズ群で諸収差が多く発生する傾向があった。そのため、レトロフォーカス型の撮影光学系では諸収差をバランス良く良好に補正するのが大変難しいという問題点があった。
又、Fナンバー1.4程度の明るい撮影光学系においては、光学系の有効径が大型化する傾向があり、特に、開口絞りから後方のレンズ群までの距離が長くなると後玉有効径が増大してカメラとの連結が困難になるという問題があった。
これらの課題を解決するためには、開口絞りより後方のレンズ群を構成する正レンズを高屈折率の硝材で構成すれば良い。これによれば、少ないレンズ枚数で諸収差を良好に補正することが容易となり、更に開口絞りから後方のレンズ群までの距離を短くできるため後玉有効径を小さくすることができる。
しかしながら開口絞りより後方のレンズ群中の正レンズを屈折率の高い硝材で構成すると、一般的に高屈折率の硝材は分散が大きい、つまりアッベ数が小さいため、軸上色収差、倍率色収差の発生量が多くなる。
これは撮影光学系が広画角になればなる程、軸上色収差と倍率色収差の発生が多くなってくる。
以上のような理由により、レトロフォーカス型の撮影光学系においては、広画角化を図り、長いバックフォーカスを確保しつつ、画面全域において高画質の画像を得ることが大変難しい。
本発明は、軸上色収差、倍率色収差を良好に補正しつつ、球面収差、非点収差等の諸収差の発生を抑え、画面全域で高画質の画像を得るのが容易な広画角でバックフォーカスの長いレトロフォーカス型の単焦点光学系の提供を目的とする。
本発明の単焦点光学系は、物体側から像側へ順に、第1レンズ群、開口絞り、正の屈折力の第2レンズ群より構成される単焦点光学系であって、
前記第1レンズ群は、材料のアッベ数をνdGP、部分分散比をθgFGPとするとき、
θgFGP−(0.6438-0.001682×νdGP)>0.005
71.3≦νdGP
なる条件を満足する正レンズを少なくとも1枚有し、
無限遠物点に合焦しているときのバックフォーカスをBF、光学系全系の焦点距離をf、前記第2レンズ群の正レンズの材料の平均屈折率をNp、前記第1レンズ群の正レンズの像側の面から前記開口絞りまでの光軸上の距離をLpとするとき、
1.0<BF/f<3.0
1.65≦Np
0.01<Lp/f<0.80
なる条件を満足することを特徴としている。
本発明によれば、軸上色収差、倍率色収差を良好に補正しつつ、球面収差、非点収差等の諸収差の発生を抑え、画面全域で高画質の画像を得るのが容易な広画角でバックフォーカスの長いレトロフォーカス型の単焦点光学系が得られる。
以下、本発明の単焦点光学系(以下「光学系」ともいう。)およびそれを有する撮像装置について説明する。
本発明の光学系は、所謂レトロフォーカスタイプの光学系(光学系の焦点距離がレンズ全長(第1レンズ面から像面までの長さ)よりも短い光学系)である。
本発明の光学系は、物体側から像側へ順に、正又は負の屈折力の第1レンズ群、開口絞り、正の屈折力の第2レンズ群を有している。
そして第1レンズ群にアッベ数と部分分散比の適切なる値の材料より成る正レンズと負レンズを用いている。
図1は本発明の実施例1の光学系のレンズ断面図である。図2は実施例1の光学系が無限遠物体に合焦したときの収差図である。図3は本発明の実施例2の光学系のレンズ断面図である。図4は実施例2の光学系が無限遠物体に合焦したときの収差図である。図5は本発明の実施例3の光学系のレンズ断面図である。図6は実施例3の光学系が無限遠物体に合焦したときの収差図である。 図7はアッベ数νdと部分分散比θgFの関係を示す説明図である。図8は本発明のレトロフォーカスレンズにおける色収差の補正原理を説明するための模式図である。図9は本発明の光学系を備えるカメラ(撮像装置)の要部概略図である。
各実施例の光学系は、ビデオカメラやデジタルカメラそして銀塩フィルムカメラ等の撮像装置に用いられる撮影光学系である。レンズ断面図において、左方が物体側(前方)で、右方が像側(後方)である。
尚、各実施例の光学系をプロジェクター等の投射レンズとして用いても良い。このときは、左方がスクリーン、右方が被投射画像となる。
レンズ断面図において、iは物体側からのレンズ群の順番を示し、Liは第iレンズ群である。
レンズ断面図において、L1は正又は負の屈折力の第1レンズ群、SPは絞り(開口絞り)、L2は正の屈折力の第2レンズ群である。
ここで、屈折力とは光学的パワーのことであり、焦点距離の逆数である。
IPは像面であり、ビデオカメラやデジタルスチルカメラの撮影光学系として使用する際にはCCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面に、銀塩フィルム用カメラのときはフィルム面に相当する感光面が置かれる。
収差図においてd,gは順にd線,g線である。ΔM、ΔSはメリディオナル像面、サジタル像面である。倍率色収差はg線によって表している。FnoはFナンバー、ωは半画角である。
各実施例において、第1レンズ群L1は、材料のアッベ数をνdGP、部分分散比をθgFGPとする。このとき、
θgFGP−(0.6438-0.001682×νdGP)>0.005 ‥‥‥(1a)
71.3≦νdGP ‥‥‥(2a)
なる条件を満足する正レンズGPを少なくとも1枚有している。
いま、g線、d線、F線、C線に対する材料の屈折率をN、N、N、Nとする。このときアッベ数νdと部分分散比θgFは次のとおりである。
νd=(Nd−1)/(NF/NC)
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC)
図7はアッベ数νdと部分分散比θgFの関係を示したグラフである。図7において点Aは株式会社オハラ社製の製品名PBM2(νd=36.26、θgF=0.5828)を示す。点Bは株式会社オハラ社製の製品名NSL7(νd=60.49、θgF=0.5436)を示す。
点A、点Bを結んだ線を基準線とする。このとき、光学ガラスの分布としては大まかにはアッベ数νdが35程度より小さい高分散ガラスは基準線より上側にある。又、アッベ数νdが35から60程度までの低分散ガラスは基準線より下側に位置するものが多い。アッベ数νdが60以上で、基準線より上側に位置する異常分散ガラスが存在している。低分散ガラスに関しては基準線より上側に位置するものを使用するのが二次スペクトルの補正に対し効果的であり基準線から離れるほど補正効果が高まる。
条件式(1a)は、使用するレンズ材料のg線とF線に対する異常分散性を、部分分散の基準線を基準として規定している。具体的には、条件式(1a)の部分分散比θgFがg線とF線の使用レンズ材料の部分分散比を表しており、条件式(1a)の右辺が使用レンズ材料の基準ガラスとの部分分散比との差を表している。
つまり、条件式(1a)を満足するレンズ材料とは、一般的に異常分散ガラスと呼ばれるものである。部分分散比θgFが基準線より大きい場合とは、基準ガラスに比べて相対的にg線の屈折率が大きいことを表している。
軸上色収差を微小とするためには、全系の軸上色収差係数をゼロ近傍の値に制御する必要がある。ここで軸上色収差係数L、倍率色収差係数Tは、レンズの屈折力をφ、軸上光線入射高をh、軸外主光線入射高をhb、アッベ数をνdとしたとき、
L=Σ(h2・φ/νd)
T=Σ(h・hb・φ/νd)
で表される。
従って軸上色収差は、軸上光線の入射高hが大きいレンズ、倍率色収差は、軸外主光線の入射高hbが大きいレンズの影響が支配的である。
図8に、本発明の光学系の屈折力配置の模式図を示す。図8の光学系は、物体側より像側へ順に正又は負の屈折力の第1レンズ群L1と開口絞りSPと正の屈折力の第2レンズ群L2を有するレトロフォーカスタイプの光学系である。この光学系において、軸上、軸外の主光線について考察する。
広角レンズにおいて、g線とC線の軸上色収差を光軸上で同一位置になるように補正した場合、図8に示すように、その位置はd線の結像位置に対して、オーバー側にずれることになる。
またg線とC線の倍率色収差を像面上で同一位置になるように補正した場合、その位置はd線に対して、光軸外側にずれることになる。LaはFナンバーを決定する軸上光線である。
上記g線の軸上色収差は以下のような原理によって補正される。第1レンズ群L1の正レンズに異常分散ガラスを用いた場合、光軸内側にg線を曲げる力が強くなる。これは異常分散ガラスのg線の屈折力が通常の硝材に対して相対的に高いからである。
ここで第1レンズ群L1中の軸外主光線Lbの高さhbに注目すると、開口絞りSPに近い位置ではhbが小さくなるため、倍率色収差の影響が小さくなる。そのため、開口絞りSPに近い位置に条件式(1a)を満たすレンズを配置することで倍率色収差をさほど悪化させることなく軸上色収差の二次スペクトルを大きく改善することができる。
したがって、条件式(1a)の下限を超えた場合、第1レンズ群L1に使用するレンズ材料の異常分散性が小さくなり、軸上色収差を充分小さく補正することが難しくなる。
また、条件式(2a)の下限を超えた場合、各レンズ群の色消しが不十分になり、近距離物体へのフォーカシングを第2レンズ群L2のみを繰り出す方式とした場合、倍率色収差及び軸上色収差のフォーカスによる収差変動が大きくなってしまう。
又、各実施例において無限遠物点に合焦しているときのバックフォーカスをBFとする。光学系全系の焦点距離をfとする。第2レンズ群L2中の正レンズの材料の平均屈折率をNpとする。第1レンズ群L1の正レンズの像側の面から開口絞りSPまでの光軸上の距離をLpとする。このとき
1.0<BF/f<3.0 ・・・(3)
1.65≦Np ・・・(4)
0.01<Lp/f<0.80 ・・・(5)
なる条件を満足している。
条件式(3)は、光学系のレトロ比(Rf=BF/f)を最適に保つための条件式である。
レトロフォーカス型の光学系において、負の屈折力のレンズ群(第1レンズ群)L1と正の屈折力のレンズ群(第2レンズ群)L2のパワー(屈折力)のバランスとバックフォーカスBFの大小とには相対的な因果関係がある。
長いバックフォーカスを必要とすることは、レトロ比を大きくすることに等しい。また、大きなレトロ比は、負の屈折力の第1レンズ群の屈折力が著しく大きくなる。そうすると負の屈折力の第1レンズ群と正の屈折力の第2レンズ群とのパワーバランスが崩れてきて、光学性能が劣化し、特にペッツヴァール和が悪化し像面湾曲、歪曲等の軸外収差が悪化してくる。そして結果的に光学系が大型化してくる。
そこで各実施例では条件式(3)を満足するようにしている。
条件式(3)の上限を超えると、レトロ比が大きくなるため、負の屈折力の第1レンズ群のパワーが大きくなる。
したがって、本発明のようなレンズ構成の光学系では、ペッツヴァール和の最適な値の設定が困難になり、軸外収差が悪化してしまう。中でも、歪曲収差と非点収差及び像面湾曲の補正が困難になってしまう。
また、前玉有効径も増加し、光学系全体が大型化してしまうため好ましくない。
一方、条件式(3)の下限を超えると、レトロ比が小さくなりすぎて、例えば一眼レフカメラに適用する場合、最適な長さのバックフォーカスを確保することが困難になってくる。
条件式(4)は第2レンズ群L2を構成する正レンズの材料の屈折率の平均を規定するものである。条件式(4)の下限を超えると、ペッツヴァール和が正の方向で過大な値となり、像面湾曲等の軸外収差の悪化を招いてしまい、結果的に光学系が大型化してくるので良くない。
条件式(5)は第1レンズ群L1中の正レンズGPの像側の面から開口絞りSPまでの光軸上の距離を規定するものである。
本発明のようなFナンバーの明るいレトロフォーカス型の光学系においては、条件式(4)のように開口絞りSPより後方の第2レンズ群L2中の正レンズの材料を屈折率の高い硝材で構成することが必要になる。
しかしながら開口絞りSPより後方の第2レンズ群L2中の正レンズを屈折率の高い硝材で構成すると、一般的に高屈折率の硝材は分散が大きい、つまりアッベ数が小さいため、軸上色収差、倍率色収差の発生量が多くなる。
軸上色収差を補正するためには開口絞りSPの前側の第1レンズ群L1にアッベ数の大きい硝材が必要になる。また、F線とg線の軸上色収差の差を小さくし、c線からg線まで軸上色収差を良好に補正するためには、部分分散比の大きい硝材が必要になる。
しかしながら、開口絞りSPより前側の第1レンズ群L1中の正レンズにアッベ数、部分分散比の大きい硝材を用いることは広角レンズにおいて倍率色収差を悪化させる方向となる。このため、瞳近軸光線の通過する高さ(光軸からの距離)hbが比較的低くなる位置に、アッベ数、部分分散比の大きい正レンズを適切な屈折力を与えて配置するのが良い。
条件式(5)の上限を超え、正レンズGPから開口絞りSPまでの距離が長くなりすぎると、倍率色収差の悪化が大きくなり良くない。
一方、条件式(5)の下限を超え、正レンズGPの像側の面から開口絞りSPまでの距離が短くなりすぎると、正レンズGPと開口絞りSPが干渉してくるので良くない。
尚、各実施例において、更に好ましくは条件式(3)(5)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
1.05<BF/f<2.50 ・・・(3a
0.05<Lp/f<0.60 ・・・(5a)
各実施例では以上のように各条件式を満足することにより、諸収差、特に軸上色収差を良好に補正した光学系を得ている。
各実施例の光学系において、更に好ましくは次の条件式(6)乃至(9)のうち1以上を満足するのが良い。
それによれば各条件式に対応した効果が得られる。
材料のアッベ数をνdGN、部分分散比をθgFGNとする。このとき第1レンズ群L1は、
θgFGN−(0.6438-0.001682×νdGN)<0 ・・・(1b)
50>νdGN ・・・(2b)
なる条件を満足する負レンズGNを少なくとも1枚有している。
ここで条件式(1b)、(2b)の技術的意味は前述した条件式(1a)、(2a)と同じである。
そして負レンズGNの像側の面から開口絞りSPまでの光軸上の距離をLnとする。このとき
0.01<Ln/f<0.80 ・・・(6)
なる条件を満足することである。
開口絞りSPから第2レンズ群L2の最終レンズ面までの光軸上の距離をLRとする。このとき、
0.5<LR/f<1.5 ・・・(7)
なる条件を満足することである。
第1レンズ群L1は、材料のアッベ数をνdGNF、部分分散比をθgFGNFとする。このとき、
θgFGNF−(0.6438-0.001682×νdGNF)>0 ・・・(1c)
なる条件を満足する負レンズGNFを少なくとも1枚有している。
ここで条件式(1c)の技術的意味は前述の条件式(1a)と同じである。
そして負レンズGNFの像側の面から開口絞りSPまでの光軸上の距離をLnFとする。このとき
0.80<LnF/f<2.00 ・・・(8)
なる条件を満足することである。
第2レンズ群L2の焦点距離をf2とする。このとき
1.0<f2/f<2.0 ・・・(9)
なる条件を満足することである。
条件式(6)は第1レンズ群L1中の負レンズGNの後面(像側の面)から開口絞りSPまでの光軸上の距離を規定するものである。条件式(6)を満足すると倍率色収差を悪化させることなく、軸上色収差を補正することができ、更に良好なる光学性能が得られる。
条件式(7)は開口絞りSPから第2レンズ群L2の最終レンズ面までの距離を適切に設定することにより、後玉有効径を小さくしつつ、収差補正を良好に保ちながら第2レンズ群L2に必要な屈折力を得るための条件である。
条件式(7)の上限を超え、開口絞りSPから第2レンズ群L2の最終レンズ面までの距離LRが長くなりすぎると、後玉有効径が増大してカメラとの連結が困難となる。逆に下限を超え、開口絞りSPから第2レンズ群L2の最終レンズ面までの距離LRが短くなりすぎると、第2レンズ群L2に必要な屈折力を得るためには球面収差の補正に必要な発散面を設けることができなくなる。
条件式(8)は第1レンズ群L1中の負レンズGNFから開口絞りSPまでの光軸上の距離を規定するものである。前述のように、条件式(5)、(6)を満足することで軸上色収差を補正することができるが、倍率色収差が悪化する傾向がある。
条件式(8)は倍率色収差を良好に補正するための条件である。レトロフォーカス型の光学系において、開口絞りSPよりも物体側の第1レンズ群L1で倍率色収差を補正するためには、次のようにするのが良い。瞳近軸光線の通過する高さ(光軸からの距離)hbが高くなる位置に、アッベ数、部分分散比の大きい負レンズを適切な屈折力を与えて配置することである。条件式(8)を満足することで倍率色収差を良好に補正することができる。
条件式(9)は第2レンズ群L2の焦点距離を規定するものである。条件式(9)の上限を超えると、レトロフォーカス型のレンズタイプを良好に維持しつつ、充分な長さのバックフォーカスを得ることが困難となる。逆に、負の歪曲収差と負の球面収差の補正が困難となる。
尚、各実施例では前述した条件式(6)〜(9)のうち、少なくとも1以上を満足するのが良く、必ずしもすべてを満足する必要はない。
各実施例において、更に好ましくは条件式(6)〜(9)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
0.1<Ln/f<0.6 ・・・(6a)
0.6<LR/f<1.3 ・・・(7a)
0.85<LnF/f<1.50 ・・・(8a)
1.1<f2/f<1.8 ・・・(9a)
各実施例によれば、前述の通りのレンズ構成にすることにより諸収差、特に軸上色収差、倍率色収差が良好に補正された撮影画角63°から84°程度と広画角で、しかもFナンバー1.45と明るいレトロフォーカス型の光学系が得られる。
各実施例において、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングは第1レンズ群L1を固定(不動)とし、第2レンズ群L2全体を繰り出す(移動する)ことで行っている。
レンズ断面図中のGPは第1レンズ群L1中の正レンズである。正レンズGPの材料のアッベ数と部分分散比νdGP、θgFGPは前述の条件式(1a)、(2a)を満足している。
GNは第1レンズ群L1中の負レンズである。負レンズGNの材料のアッベ数と部分分散比νdGN、θgFGNは前述の条件式(1b)、(2b)を満足している。
GNFは第1レンズ群L1中の負レンズである。負レンズGNFの材料のアッベ数と部分分散比dGNF、θgFGNFは前述の条件式(1c)を満足している。
図1の実施例1において、第1レンズ群L1は物体側から像側へ順に物体側に凸面を向けた2つのメニスカス形状の負レンズ、両凸形状の正レンズ、両凹形状の負レンズGNFと正レンズとの接合レンズを有している。この実施例においては、第1レンズ群L1は正の屈折力を有している。
更に両凸形状の正レンズ、両凸形状の正レンズGPと両凹形状の負レンズGNとの接合レンズを有している。又、第2レンズ群L2は物体側から像側へ順に、物体側に凹面を向けた負レンズと像側に凸面を向けた正レンズとの接合レンズ、両レンズ面が凸形状の正レンズ、像側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズを有している。
図3の実施例2のレンズ構成は、図1の実施例1と同じである。この実施例においては、第1レンズ群L1は正の屈折力を有している。
図5の実施例3において、第1レンズ群L1は物体側から像側へ順に凸面を向けた2つのメニスカス形状の負レンズ、両凸形状の正レンズ、両凹形状の負レンズGNFと正レンズとの接合レンズを有している。この実施例においては、第1レンズ群L1は正の屈折力を有している。
更に両凸形状の正レンズと両凹形状の負レンズとの接合レンズ、物体側に凹面を向けた負レンズGN、両凸形状の正レンズGPを有している。
又、第2レンズ群L2は物体側から像側へ順に、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の正レンズと像側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズとの接合レンズ、両レンズ面が凸形状の正レンズ、像側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズを有している。
また、上述の実施例においては、第1レンズ群L1の屈折力を正としたが、負の屈折力としても構わない。また、第1レンズ群L1の焦点距離は、第2レンズ群L2の焦点距離の1.5倍以上(好ましくは2倍以上)であることが望ましい。
次に実施例1〜3に示した光学系を撮像装置に適用した実施例を図9を用いて説明する。
図9は一眼レフカメラの要部概略図である。図9において、10は実施例1〜3の光学系1を有する撮影光学系である。
撮影光学系1は保持部材である鏡筒2に保持されている。20はカメラ本体である。カメラ本体20はクイックリターンミラー3、焦点板4、ペンタダハプリズム5、接眼レンズ6等によって構成されている。
クイックリターンミラー3は、撮影光学系10からの光束を上方に反射する。焦点板4は撮影光学系10の像形成位置に配置されている。ペンタダハプリズム5は焦点板4に形成された逆像を正立像に変換する。観察者は、その正立像を接眼レンズ6を介して観察する。
7は感光面であり、像を受光するCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)や銀塩フィルムが配置される。撮影時にはクイックリターンミラー3が光路から退避して、感光面7上に撮影光学系10によって像側形成される。
尚、本発明の光学系は、デジタルカメラ・ビデオカメラ・銀塩フィルム用カメラ等の他に望遠鏡、双眼鏡、複写機、プロジェクター等の光学機器にも適用できる。
以下に、実施例1〜3に各々対応する数値実施例1〜3を示す。
各数値実施例において、iは物体側からの面の順番を示し、riは第i番目(第i面)の曲率半径である。diは第i面と第i+1面との間の間隔である。ndi、νdiはそれぞれd線を基準とした屈折率、アッベ数を示す。BFはバックフォーカスである。*はその面が非球面であることを示す。
(非球面データ)には、非球面を次式で表した場合の非球面係数を示す。
但し、
x:光軸方向の基準面からの変位量である。
h:光軸に対して垂直な方向の高さである。
R:ベースとなる2次曲面の半径である。
Cn:n次の非球面係数である。
なお、「E−Z」の表示は「10−Z」を意味する。
各数値実施例における正レンズGP、負レンズGN、負レンズGNFのアッベ数νd、部分分散比θgFの値を表−1に示す。
又前述の各条件式と数値実施例における諸数値との関係を表−2に示す。

[数値実施例1]
面データ
面番号 ri di ndi νdi 有効径
L1 1 131.721 2.70 1.51742 52.4 51.15
2 26.789 8.10 41.76
3 84.345 3.30 1.48749 70.2 41.55
4* 26.762 3.94 38.86
5 49.974 6.16 1.88300 40.8 38.88
6 -249.304 4.23 38.32
7 -45.194 2.10 1.61293 37.0 37.47
8 51.936 6.44 1.83481 42.7 36.27
9 -104.883 5.03 35.95
10 44.614 5.67 1.83481 42.7 34.71
11 -147.133 0.09 34.35
12 80.063 5.84 1.49700 81.5 32.02
13 -48.382 1.70 1.65412 39.7 30.83
14 30.631 7.90 26.86
絞り 15 ∞ 6.44 25.52
L2 16 -20.281 1.40 1.80000 29.9 24.92
17 207.522 4.59 1.80400 46.6 28.09
18 -56.354 0.25 29.21
19 79.507 7.92 1.59240 68.3 31.04
20 -32.694 0.25 32.38
21* -119.896 4.93 1.77250 49.6 33.41
22 -39.518 37.98 34.91

非球面データ
c4 c6 c8 c10
第4面 -8.24273E-06 -8.75030E-09 -2.15137E-12 -1.21085E-14
第21面-9.26947E-06 -3.03922E-09 -1.77751E-13 -1.10418E-14

各種データ
焦点距離 34.59
Fナンバー 1.45
画角 32.02
像高 21.64
レンズ全長 126.93
BF 37.98

各群焦点距離
L1 102.5
L2 43.5
[数値実施例2]
面データ
面番号 ri di ndi νdi 有効径
L1 1 126.933 2.70 1.51742 52.4 50.86
2 26.727 8.15 41.59
3 87.278 3.30 1.48749 70.2 41.37
4* 27.694 3.81 38.76
5 52.883 5.94 1.88300 40.8 38.75
6 -192.056 3.55 38.28
7 -45.007 2.10 1.60342 38.0 37.98
8 49.133 6.48 1.83481 42.7 36.65
9 -111.47 4.72 36.34
10 46.511 5.35 1.83481 42.7 34.36
11 -151.76 0.09 34.02
12 106.328 5.82 1.56907 71.3 32.17
13 -43.299 1.70 1.65412 39.7 31.12
14 31.509 8.47 27.05
絞り 15 ∞ 6.59 25.56
L2 16 -19.704 1.40 1.80000 29.9 24.97
17 2353.87 4.60 1.77250 49.6 28.2
18 -49.934 0.25 29.49
19 85.705 7.85 1.59240 68.3 31.49
20 -32.265 0.25 32.36
21* -101.111 4.97 1.75500 52.3 33.33
22 -37.105 38.47 34.89

非球面データ
c4 c6 c8 c10
第4面 -7.6914E-06 -7.6187E-09 -3.5704E-12 -6.7948E-15
第21面-9.5317E-06 -2.9975E-09 -2.4628E-13 -1.1618E-14

各種データ
焦点距離 34.81
Fナンバー 1.45
画角 31.86
像高 21.64
レンズ全長 126.57
BF 38.47

各群焦点距離
L1 103.5
L2 43.5
[数値実施例3]
面データ
面番号 ri di ndi νdi 有効径
L1 1 64.588 2.90 1.83481 42.7 54.54
2 27.134 8.59 43.79
3 78.633 3.35 1.58373 59.0 43.49
4* 26.588 6.91 39.29
5 104.899 5.15 1.883 40.8 39.12
6 -104.899 0.89 38.77
7 -72.964 2.10 1.497 81.5 38.69
8 46.394 5.95 1.83481 42.7 35.93
9 -224.128 3.78 35.24
10 37.165 6.85 1.834 37.2 27.97
11 -46.716 1.50 1.60342 38.0 26.11
12 19.654 5.07 23.04
13 -76.688 1.30 1.65412 39.7 23.11
14 76.688 0.20 23.76
15 26.781 6.55 1.497 81.5 25.16
16 -64.437 3.40 25.15
絞り 17 ∞ 6.64 24.16
L2 18 -18.579 3.55 1.48749 70.2 23.65
19 -15.481 1.60 1.84666 23.8 24.36
20 -42.869 0.20 28.1
21 103.587 8.20 1.618 63.4 30.9
22 -28.2 0.20 31.6
23* -116.641 6.00 1.851 40.4 32.83
24 -33.79 38.48 34.92

非球面データ
c4 c6 c8 c10
第4面 -5.6034E-06 -8.8149E-09 3.9223E-12 -2.2756E-14
第23面-1.1961E-05 -2.8659E-09 -7.0647E-12 -1.3455E-14

各種データ
焦点距離 24.54
Fナンバー 1.45
画角 41.4
像高 21.64
レンズ全長 129.35
BF 38.48

各群焦点距離
L1 116.7
L2 37.4
実施例1のレンズ断面図 実施例1の無限遠物体における収差図 実施例2のレンズ断面図 実施例2の無限遠物体における収差図 実施例3のレンズ断面図 実施例3の無限遠物体における収差図 アッベ数νdと部分分散比θの関係を示す説明図 本発明のレトロフォーカスレンズにおける色収差の補正原理を説明するための模式図 本発明の撮像装置の要部概略図
符号の説明
L1:第1レンズ群
L2:第2レンズ群
GP:第1レンズ群中絞りから0.4Lまでの範囲に正レンズ
SP:開口絞り
IP:像面
d:d線
g:g線
ΔM:メリディオナル像面
ΔS:サジタル像面

Claims (7)

  1. 物体側から像側へ順に、第1レンズ群、開口絞り、正の屈折力の第2レンズ群より構成される単焦点光学系であって、
    前記第1レンズ群は、材料のアッベ数をνdGP、部分分散比をθgFGPとするとき、
    θgFGP−(0.6438-0.001682×νdGP)>0.005
    71.3≦νdGP
    なる条件を満足する正レンズを少なくとも1枚有し、
    無限遠物点に合焦しているときのバックフォーカスをBF、光学系全系の焦点距離をf、前記第2レンズ群の正レンズの材料の平均屈折率をNp、前記第1レンズ群の正レンズの像側の面から前記開口絞りまでの光軸上の距離をLpとするとき、
    1.0<BF/f<3.0
    1.65≦Np
    0.01<Lp/f<0.80
    なる条件を満足することを特徴とする単焦点光学系。
  2. 前記第1レンズ群は、材料のアッベ数をνdGN、部分分散比をθgFGNとするとき、
    θgFGN−(0.6438-0.001682×νdGN)<0
    50>νdGN
    なる条件を満足する負レンズを少なくとも1枚有し、
    前記負レンズの像側の面から前記開口絞りまでの光軸上の距離をLnとするとき、
    0.01<Ln/f<0.80
    なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の単焦点光学系。
  3. 前記開口絞りから前記第2レンズ群の最終レンズ面までの光軸上の距離をLRとするとき、
    0.5<LR/f<1.5
    なる条件を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の単焦点光学系。
  4. 前記第1レンズ群は、材料のアッベ数をνdGNF、部分分散比をθgFGNFとする
    とき、
    θgFGNF−(0.6438-0.001682×νdGNF)>0
    なる条件を満足する負レンズを少なくとも1枚有し、
    前記少なくとも1枚の負レンズの像側の面から前記開口絞りまでの光軸上の距離をLnFとするとき
    0.80<LnF/f<2.00
    なる条件を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の単焦点光学系。
  5. 前記第2レンズ群の焦点距離をf2とするとき、
    1.0<f2/f<2.0
    なる条件を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の単焦点光学系。
  6. 光電変換素子に像を形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の単焦点光学系。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項の単焦点光学系と、該単焦点光学系によって形成される像を受光する光電変換素子とを備えることを特徴とする撮像装置。
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